~無名の市民による市内の案内風景~
ここが南門。市民でないものは入門の際に銀貨一枚の通行税を払う決まりだ。この正面にあるのが『ザナソー食料雑貨店』。ちと変わった食材やら雑貨ならまあここだね。道は左に曲がって、市壁にそってすこし進む……で右に曲がるとぶつかる、この大通りが『黒曜通り』だ。ぐるっと回って、街を一周する環状道路のいちばん外側さ。この通り沿いは、まあ、高級住宅街だね。
そんなわけでここを西へと進むと、右手に見えてくるのが『市長公邸』だ。反対側が『コード寺院』。このまま道は壁沿いに北に上り始める――左手に、建物の向こう側、『西門』がみえるかい?この街の門からは、どの道もすぐに左に折れて、ゆっくりと下って黒曜通りに繋がるようにできてる。一つには防衛のためと、もう一つは、ほら、この街はボウルのようになっているだろ?だからセンター湖方面へまっすぐ下る道を造ると、角度が付いて危険なんだ。
だから、この辻を左に曲がって戻ったところが西門になる。目印はこの角に立つ酒場、『酔いどれモッコス亭』だ。道はここから東へと傾きながら北へ延びていく――左手、この大きな門が『兵舎』の入り口だ。常備軍は7~800人だそうだよ。その隣が『公会堂』、役場だね。どちらも北の市壁にくっつけて建てられている。ほら、西門と同じように、建物の向こうに『北門』が見えてきた。道は東へ進み、うん、この角から左に曲がると北門へ戻るわけだね。で、この北門から出てきた道の正面に見えるのが、『聖カスバート教会』だ。このまま道は南へと曲がり始める。
この左手の高い建物が『昇日の尖塔亭』。ぼくらみたいな貧乏人はお呼びじゃない、おハイソな会員制の店だよ。――言ったろ?黒曜通りは高級住宅街だって。特にこの辺は歓楽街の色が濃いかな。ほら、この先、『東門』の手前に見えてきたのが『コイ・ニクシー』、“はにかむ水霊亭”さ。こっちは会員制じゃないそうだし、踊り子さんも随分美人が多いと聞くけれど――まあ僕らには関係ないだろうな。
この角の尖塔が『ウィー・ジャス大聖堂』。見ての通り、この街で一番大きい神殿はウィー・ジャスのものなんだ。地勢のせいもあって、この辺の葬式はだいたい火葬なんだよ。お金持ちだけがウィー・ジャスのカタコンベで永遠の眠りにつく、ってことかな。あと、ウィー・ジャスの大司祭さまが大変な実力者だってことも、聖堂が大きい理由だろうね。
この角を左に、市壁の手前に建ってるあの小さい店が『ウェストキー大地図店』。わりと遠くの国の地図まで手に入るよ。
……と、そろそろ一周したね。ほら、ザナソー食料雑貨店だ。ゆっくり歩いてだいたい小一時間、ってところだろう。まだ平気かい?じゃあ、その角を右へ下って、つぎは『マグマ通り』を案内してあげよう。
よし、じゃあマグマ通りだ。目の前の左に曲がる辻が南門に戻る道。で、ここを右に下るとマグマ通りに出る。このまま北に上ろう。ここ、左手が市長公邸の表口だね。ずんずん行く。ほら、左手上のほうに西門が見える。……で、ここが『ガースーン輸入品店』。大きいだろう? 酔いどれモッコス亭の下手になるね。高級輸入品はここかな。酒・煙草・異国の菓子・ちょっと変わった魚介類とかも扱うそうだよ。海なんか随分遠いのにねえ!
道はゆるゆると北門方面へ曲がっていく。手前の狭い間口の宿屋が『ぬるぬるウナギ亭』、安いし量は多いしでお勧めだ。ここだけの話、さしてお上品ではないからきれいなお姉ちゃんもいる。……そりゃ値段は交渉次第だろう?
この先は倉庫や小商いの店が続くんだ。ほら、北の斜面ってことは南向きの傾斜ってことで、こっち側は日当たりがいいんだよ。市が立つのもこっちのほうがおおいかな。珍しい店っていうと……そうそう、この商店街の外れにあるのが『ティゴット骨董品店』。商品どころか、飼い犬のレプークもあるじのティゴット爺さんも骨董品って店だ。ただ、この骨董品ってのはバカにならないらしくて、街の貴族連もお得意にいるそうだよ。
ずーっと南に下ってくると、この辺から職人街だ。この左手に建ってるのが『鍛冶屋グーネザーン』。腕はいいんだが値段がね……まあ、ラゼンマイアさんになびかない鍛冶屋はここくらいのもんだから仕方ないのかな。
随分南に下ってきたろう。この小さな(失礼!)社が『ペイロア寺院』。まあ、ペイロア様の話はいまさらすることでもないね。慈善には一番熱心だ。
南門を過ぎて、さあ、ここが『ブルークレーター・アカデミー』だ。大きいだろう!ここの蔵書はすごいぞ、メンバーになれれば古今東西のありとあらゆる<知識>の研鑽にどれほど役にたつことか!――ま、貴族でも魔法使いでもない僕らには関係のないことだけれど。
っと、ここを曲がって降りていくと次は『溶岩通り』だが――この小さい店が『ゲルブ錠前店』。彼の作る錠前はすごいぜ、さすがノームってところじゃないかね?ああもちろん、僕にはさっぱりだ。街の噂じゃ、アレを破れるのは魔法使いくらいだろうってさ。
さあ、ここが溶岩通りだが――ちょっと趣向を変えて、左回りに切り替えようか。え? はは、もちろんお目当てがあるのさ。あれだ――
『オラックの湯』。
公衆浴場だよ。ドワーフのオラックが運営している。……ははあ、裸になるのがいやかい? なに、入浴着もあるから気にすることはないさ、脱衣所は男女別々だしね。昼から深夜までの営業なんだ、今時分だと丁度空いているかな、ってね。入浴が銀貨1枚、棒石鹸が銀貨1枚。タオルは只で貸してもらえるよ。さ、ちょっと休んでいこう!
さて、この辺から治安はあんまりよろしくなくなる。まあ、夜は避けたほうがいい、って程度だけれど。めぼしい店もないしね。しかし僕ら位の懐具合だと、高級住宅地よりもこっちのほうが落ち着かないかい?
そうだな、ここも珍しい建物かもしれない。『ランタンストリート孤児院』だ。たしか50人くらいの孤児が養われているはずさ。街の貴族連からの募金で賄われてるって話だ。
そうだな、ここも珍しい建物かもしれない。『ランタンストリート孤児院』だ。たしか50人くらいの孤児が養われているはずさ。街の貴族連からの募金で賄われてるって話だ。
『マーヴ商会』。輸入品商いだからガースーン輸入品店とはライヴァルで、街で唯一の本屋でもある。主のマーヴさんは近くのレッドゴージ村に自宅があるんだってさ。街に住んだほうが便利なのに、物好きだよね。
おっと、ちょっと寄り道になるがマグマ通りに戻る小道に入るよ。――ここが『スキー宝飾店』。高級装身具商い……いやいやいやいや、僕らがここに立ち寄ったのは別の目的さ。パーマネント・イメージのド派手な看板を見なかったかい?ここはマジックアイテムも商うのさ。只今ご奉仕品が全品一割引……どうだい、この素晴しい+1ロングソードがいまなら2,084gpだ!――いやすまん、君もそんなに余裕のあるほうじゃなかったな。
と、この界隈はこのくらいかな――下宿を探すならこのへんでもいいかもね。安いし。ここから最後の環状道路に向かおうか。こっちが『灰色通り』。ここも左回りで行こうか。……ここが最下級かな、『下宿ミヌタ』。普通の宿より2割は安いけど、「盗賊被害の補償はしません」って看板が梁に掛けてあるって話だよ。
空き家も多いんだよね……ああ、ここも実は穴場だ。『ウィーアの霊薬店』はポーションと錬金術アイテムの店なんだ。時々ビックリするようなアイテムが売られてたりね……問題は店主のウィーアがもの凄い偏屈だってことかな……まあ、一度入ればわかるよ……
『シュアフット家畜店』。“ステキな脚の”って駄洒落じゃないぜ。店主のハーフリングがシュアフットってのさ。馬やら犬やらはここで買うのがいいだろう。この先にあるのが『レイクサイド大天幕』。街の重要事項の発表とか選挙とか演説とか、まあここでするらしいね。それ以外のときは旅の一座が借りたりもできるんじゃないかな。どっちも見たことはないけれど。
おや、センター湖に船が出ている。……うーん、あれは雑貨屋のザナソー船長かな?……ああ、やっぱりそうだ。ん?なんで船長なんだって?ははは、ザナソー船長はセンター湖に潜む伝説の巨大生物、「モッコス」を吊り上げようとしている英雄なんだ。モッコスがどんな怪物なのかは酔いどれモッコス亭の看板を見てくるといいよ。
さ、そろそろ一通り見物し終わったかな。〆はやはり乾杯といこう、この『ひび割れタンカード亭』でね。仕事が引けた職人さん衛兵さんたちも贔屓の、賑やかでいい店だよ、さあ入った入った!