『蝶の見た夢』 - (2008/02/12 (火) 00:00:57) の1つ前との変更点
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何でこんな事になったんだろう。
パソコンの中に再現されたバーチャルの街を眺めながら記四季はそう考える。
『・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・』
『zzzzzzzz・・・・・・・』
街の中では放心状態の彩女といびきを立てて寝ている蝶型、シュメッターリングのせせりーがいた。
確か・・・そう、確かこれはパソコンを使ったネット対戦だったはずだ。記四季が風呂に入っている間、好きに戦闘していいと彩女に言ったのは覚えている。そして風呂から上がってみればこの有様だ。空白の時間に一体何があった。
「・・・その・・・なんだ。・・・なんなんだ?」
よく見てみると二人ともダメージが無い。
となるとここで二人の戦意を喪失させる何かがあったのだろうか・・・考えてみるが何も浮かばない。っていうか彩女は大丈夫なのだろうか。さっきからずっと放心状態だけど。
「・・・・・・」
記四季は無言でバトルログを見ている。
ログを見るに十分位前からこの惨状は続いているらしい。とりあえずバトル開始からのログを見てみる。
「・・・こいつか」
記四季はそう呟くと、ログを開いた。
*『蝶の見た夢』
WEB上に再現された仮想現実の街。そこで彩女と蝶型の彼女・・・せせりーは向かい合っていた。
彩女は刀を構えているが、対するせせりーは徒手空拳。正真正銘何も持っていない。
「・・・・・・・・」
警戒しつつ彩女は考える。
徒手空拳、つまりは格闘家だろうか。それとも何か隠し玉があるのだろうか。いずれにしろ蝶型という彼女からは、只者ではない気迫は感じている。先程から武器を持った相手に無言で仁王立ちしている時点で只者ではない。普通は構えたり何かアクションをするはずだからだ。
しかしいくら考えようとも彼女の戦闘スタイルが思い浮かばない。その一見すると隙だらけな立ち姿も、ともすればこちらの攻撃を誘っているようにも見受けられる。
「(・・・面倒な相手と会ってしまいました。何を考えているのかまるで読めない。・・・仕方ないですね)」
腰を低くし、刀に手をかける。
結局のところ彩女がとった策は先手必勝だった。
「―――――――――――――覇ッ!!」
それは一瞬よりもなお早い、零の瞬きだった。
彩女が振るった白銀の刃は確かに彼女を両断するはずだった。しかし蝶型の彼女はそれを予想だにしない動きでかわす。
一太刀では足りぬと判断し即座に抜刀。上下左右からのほぼ同時の斬撃を繰り出す。
それはもはや逃げ場の無い檻。だが ――――――
「―――――――――――」
彼女、せせりーはあっさりとそれすらもかわす。
「・・・信じられません。貴女、何者ですか」
彩女の問いかけにせせりーは応じない。
その表情は前髪に隠されうかがい知る事すら出来なかった。
彩女はせせりーの挙動に注意を払いながらゆっくりと柄に手をかける。
せせりーは動かない。まるで目の前の彩女よりも重要な事があるかのように。
「―――――――――っ!!」
一瞬で踏み込み、抜刀。
横薙ぎに繰り出されたその一撃を、またもせせりーは背筋を後ろに反らしてかわす。
彩女は即座に刀の軌道を切り替え今度は頭から叩き切ろうとする。しかしそれすらも彼女は予測不可能な動きでかわした。
もはやこうなっては彩女も後に引けない。
上下左右に加え突きや踏み込み、更には鞘を使った二刀までも試すがその事如くをせせりーは予想できない必要最低限の動きでかわす。
もはやかすりもしない。
「・・・馬鹿な。こんなことが・・・」
斬りあいに限らず戦闘というのは相手の一歩先を予測する事から始まる。相手の動きをあらかじめ予測できているならば、かわす事も可能だし攻撃も容易となるのだ。
しかし、彩女にはせせりーの動きが予測できない。
全ての攻撃をかわし、決してこちらを攻撃しない彼女の真意がまるで読めないのだ。
「(・・・次こそは・・・・!)」
その思いをこめて、彩女はせせりーに一気に踏み込む。
「―――――なッ!?」
抜刀前にせせりーの細い手が、彩女の両腕をがっちりと掴んでいた。
これでは何も出来ない。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・は」
と、無言だったせせりーが口を開く。
ゆっくりと俯いていた顔を上げ、彩女を見据える。その表情は・・・なぜか真っ青で今にも泣きそうな顔だった。
「・・・・吐きそうなのら・・・・」
「・・・・・・・・・・・・・はい?」
「・・・・もう・・・無理・・・ら・・・」
「え、ちょっと、待っ・・・・きゃああああ!?」
恐らくは、二度と聞けないであろう彩女の悲鳴が響き渡った。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・そいつぁ・・・災難だったな」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・はい」
記四季の言葉に、制限時間が来てバトルフィールドから叩き出された彩女が肯く。
「・・・・・・まぁ・・・なんだ・・・気になるようなら風呂はいって来い。・・・・・・・・別にリアルバトルじゃないから問題は無いんだが・・・」
「・・・・・・・・・・・是非に」
おしまい
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後書きみたいな
敬称略
せせりーちゃんの原作・・・うさぎなひと作『[[Gene Less]]』
彩女と記四季の原作・・・・ミヤコン作『[[ホワイトファング・ハウリングソウル]]』
書いた人・・・ミヤコン
うさぎなひとさんが某所で『バトルもの書きたいなー。でも誰で書こうかなー』と仰いました。
私は『せせりーちゃんがいいよ!』といいました。
うさぎなひとさんは『彼女じゃどうやってもギャグ路線にしか走れない!』と仰いました。
私は『だったら書くよ!せせりーちゃんのバトル書くよ!』と書きました。
で、出来たのが『蝶の夢』です。
まぁ結果としてギャグになってるけど気にしちゃいけないぜ(何
その後なんだかんだでこちらに置かせていただく事に・・・あ、加筆修正ですが加筆しかしてないです。ごめんなさい(ぇ
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