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第六話
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「そう、カタロンがイナクトを・・・。最新鋭のモデルだからまだ正規軍しか持っていないと思ったけど、事は思っていた以上になりそうね」
翌日、優一は自宅で聡美とボイスチャットを繋げ、任務達成とイナクトの出現を報告していた。
「それで?アカツキの具合はどうなの」
「現在エルゴにてオーバーホール中だよ。メンテ用のクレードルじゃ応急処置が限界だったからね」
「可哀想に、余程悔しかったみたいですね」
不意に聡美の神姫、セイレーン型のアインが割って入ってきた。
エウクランテタイプは本来は紫を素地にしたトリコロールだが、治安局に所属する彼女の素体はライトグレーに赤紫のアクセントを施した地味なカラーリングとなっている、武装の方も同様に。
「おかえり、アイン。作戦の方はどうだった?」
「全て予定通りに実行、テロを鎮圧しました」
「オッケー、それじゃあ報告書を書いたら休んでよし」
「承知」
「あ、そうだ。ちょっと待ってくれアイン」
自分の机に戻ろうとするアインに優一は思い出したように声をかけた。
「何か?」
「仕事が終わったらエルゴに来てくれないか?もちろんアネゴも一緒に。アインが来てくれるだけでもあいつ、少しは励みになるんじゃないかなって」
「アカツキの事ですね。承知しました、後で姐さんと一緒に伺います」
「ちょっと勝手に決めないでよ。けど、まあ・・・いっか」
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-午後4時37分・ホビーショップエルゴ-
「いらっしゃいませー、おや優一君じゃないか。彼女も一緒か?」
「違いますよ、大学の後輩です」
店内に入ってきた優一と由佳里をエルゴの店長、日暮 夏彦が出迎えた。
ちなみに由佳里は途中で優一と出会した、ものの序でである。
「ヤッホー、ジェニー。調子はどう?」
「あらメリッサ、貴女も来てたの。調子は上場よ」
メリッサも由佳里のカバンからひょっこりと顔を出してエルゴの看板神姫、同じくヴァッフェバニーのジェニーに挨拶する。
ノリが同じなのはさすがは同型だからか、初めて会った時に意気投合していた。
「それよりさー、いい加減素体に入ったらどう?せっかくスタイルのいいバニーに生まれたんだからさ」
「どうせ私を押し倒そうと言う魂胆でしょう?その手には乗りませんよ」
「たはは、ばれたか」
「こら、メリッサ、だめでしょう。すいません店長さん」
「バニー同士のユリか・・・、意外と無い組み合わせじゃないか優一君」
「あ、やっぱりですか?俺もそう思っていたっすよ。一言で言うなら「面白い」ってヤツですかね?」
「あのー・・・、先輩も店長も何をコソコソ話しているんですか?」
「由佳里さん、後でキツーク言っておきますから」
「はぁ・・・?」
カウンターの端でなにやらコソコソ密談していた店長はあとでジェニーさんにお説教されたのだが、またそれは別の話。
「えっと、それでアカツキちゃんだっけ?二人のお目当ては」
三分ほど後、店長はボコボコにされた顔でカウンターに立っていた。
「ええまあ、どうしているかなって・・・」
「彼女ならもうピンピンしていますよ」
「えぇ?!背後にマイナスエネルギーを感じるくらい落ち込んでいたのに!?」
優一はジェニーさんから帰ってきた答えに驚愕する。それもそのはず、大好物のソース焼きそばを出してもちっとも反応を見せなかったから。
「何試合か観戦させたら、一からやり直そうって気になったみたいです」
「ありがと、ジェニーさん」
そう言うと優一は二階へと階段を上がっていった。そこに神姫用のレクルームがあるからだ。
「アカツキ!元気にしてたか?」
「マスター、会いたかったですぅ!!」
優一の顔を認めた途端、アカツキは泣き顔で飛びついて来た。
「ほらね、言ったでしょう」
「ありがとう、ジェニーさん。ようしリハビリがてら、由佳里一戦組んでくれ」
「そうしたいんですけど・・・、私、一度ジェニーさんと手合わせしたいんですけど・・・」
「だってさ、どうするジェニーさんよ」
「私は構いませんけど・・・、装備の方は?」
「デフォルトでいいだろ。今日までほぼ未開封だし。良いよ由佳里ちゃん」
「わかりました。先輩、ごめんなさい」
「いや良いって、また今度で良いから。つーか泣くなや」
「「女の涙は核にも勝る」とはよく言った物で、準備してくれ」
「わかりました、マスター」
「ばとるふぃーるど・市街地、各神姫ノおーなーハばとるの準備ヲシテクダサイ」
「メリッサ、準備は大丈夫よね?」
「大丈夫だよユカリン。心配しないで」
メリッサの武装はヴァッフェバニー本来の高い射撃能力をさらに強化したものだった。
しかし、鶴畑の下の子二人がやっているような自身の動きを妨げるものかと言うと実はそうでない。言うなれば「洗練された重火力」である。
背中にはストラーフのサブアームを装備し、右側にはSTR-6ミニガン、左側には蓬莱壱式を装備している。本体の方には両脚のふくらはぎにハンドガン、太ももにはブルパップ・マシンガン、腰にはグレネードランチャー二丁づつと、緊急用のビームサーベルを一本だけ装備している。両手にはメインとなるアサルトライフルが握られている。
一方のジェニーはヴァッフェバニーのデフォルト装備だ。
「ばとるろんどせっとあっぷ、れでぃーGO!!」
「っしゃあ!!狙い撃つ!!!」
メリッサはどこぞのアニキのセリフを言うと、両手のアサルトライフルとサブアームの蓬莱とミニガンを一斉に放つ。
しかし、ジェニーは寸前で跳躍してその場から逃れる。彼女がいた場所に銃弾が、成形炸薬弾が雨あられの如く降り注ぎ、爆風が起こる。
「ジェニー、このまま距離を詰めて接近戦に持ち込むんだ」
「了解ですマスター」
弾幕の間隙を縫って距離を詰めるジェニー、それに対しメリッサはサブアームを折りたたむと白兵戦の用意をするが、なぜかアサルトライフルを両手に持ったままだ。
「銃で両手が塞がっているのに・・・、正気なのかしら?」
「こっからがボクの真骨頂さ」
「今更持ち替えようとした所で!!」
ジェニーがハグダント・アーミーブレイドを振り下ろすと、メリッサはそれをなんとアサルトライフルの銃身で受け止めた、否、受け流した。そこへさらに発生した隙を狙ってライフルを三点バーストで撃つ。
「くっ、やりますね。これが噂の「ガン・カタ」ですか」
「懐に潜った所で、有利になったと思わない方が身のためだよ。さあ、イッツ・ショータイム!!」
剣と銃とが交錯し、火花が散る。二人はその場から少しくらいしか動いていないが、その攻防は激しく、映画のワンシーンを見ているような迫力があった。
「隙有りです!!」
「ウワッチ!!」
しかし、その均衡もジェニーがブレードでサブアームを破壊し、メリッサがそれをパージしてから徐々に崩れ始める。火力が減ぜられたので決定力が無くなって来たからだ。
「くぅせめてミニガンが使えれば・・・」
「恨むならゴテゴテと武器を持ってきた自分を恨むんですね。トドメです!!」
「うわぁぁぁ!!」
ジェニーはガードを弾くと開いた脇腹にハグダント・アーミーブレイドを叩き込む。
「ばとるおーばー、Winnerじぇねしす」
メリッサのノックダウンを確認し、ジャッジCPUがジェニーの勝利を告げる。
「いやー負けた、負けたよ。そんでもってさ、いずれどう?」
「その「どう?」ってどういう意味ですか・・・?ちょっと!!こっち来ないでぇ!!!」
「ボク、もう我慢できない、お持ち帰りぃー!!」
押さえ込もうとしたサブアームをスルリとすり抜けると、ジェニーはバーニアを噴かして一目散に逃げ出した。
「ああもう、こらぁメリッサー!待ちなさーい!!」
逃げるジェニーを追ってサブアームを翼のように動かし、脚のバーニアで追いかけるメリッサをさらに追って由佳里は階下へ走っていった。
「いやぁ、若いって良いねぇ優一君」
「けど、ジェニーさんって普段は胸像みたいな感じですからユリは無理じゃぁ、所で、例のものはどうなっているんですか日暮さん、いやGさん」
「やはりそっちが本来の目当てだったようだね、トルネード君」
「G」、ハッカーとしての日暮店長のコードネームであり、同時に二つ名でもある。
実を言うと優一は彼にカタロンの情報収集を依頼していたのだ。
「機密の多いとこだからジェネシスでもこいつがやっとだったよ」
そう言うと店長は懐からUSBメモリを取り出すと、優一のジャケットのポケットに忍ばせた。
「とか言っておきながらUSBをだすあたり、結構な量を持ってきてるじゃないですか」
「それで、見返りは?」
「口に合うかはわかりませんが・・・、とりあえずサイフォスの調教モンを」
「サイフォスか・・・、結構コアなのを持ってきたじゃないか。有り難く受け取っておこう」
この後、そのDVDがジェニーさんに見つかって散々怒られると言う店長の運命は誰も知る由は無かった。
「あの、マスター私・・・」
「うん何だ?」
エルゴからの帰り道、アカツキは優一に話しかけた。
「その・・・、どうして私なんかを選んだんですか?他にもっと性能の良い神姫がいっぱいいるじゃないですか」
「何でだろうなぁ、特に理由は無いけど、強いて言うなら「本能」かな?」
「「本能」ですか?」
「仮にお前がストラーフだったとしても、俺はアカツキって名前を付けていただろうし、性格も似たような感じにしていたと思う。どっちみち俺たちは出会うことを天が決めていたんじゃあないか?」
「天が・・・ですか。ところで、私の名前はどうやって付けたんですか?」
「名前の由来か・・・、実を言うとお前を起動させたのは夜明けだったのさ。名前を付けようとして窓を眺めるとちょうど太陽が昇って来たんだ。その瞬間を漢字一字で「暁」って書くんだ。だから「アカツキ」。神姫の世界の夜明けみたいな活躍を期待していないことも無かったがな」
「マスター、私はまだまだ未熟者の上にふつつか者ですが、これからもよろしくお願いします!!」
優一に対し深々と頭を下げるアカツキ、それは小さいながらも静かに決意を語っていた。
「おいおい、顔を上げてくれよ、仮にも俺とお前の仲じゃないか。そこには誰も口を挟む余地は無い。さてと、今日の晩飯はあんかけ焼きそばにでもするかな。アカツキは材料出すの手伝ってくれ」
「はい、あと私は大盛りでお願いします」
「やれやれ、焼きそばのことになると目の色を変えるのはさすがに予想外だったが」
「ま、それも必然と言うことで」
「そうだな、そうしておくか」
今日一日でアカツキは色々と吹っ切れたらしく、敗北のショックはもう引きずっている様には見えなかった。
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