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戦うことを忘れた武装神姫-30 - (2007/05/17 (木) 10:18:32) の最新版との変更点
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**戦うことを忘れた武装神姫 その30
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とある街の片隅。 集合住宅の一階テナントにちょこんと入っている、ごく
ごく小さなバイク屋。。。 店内には1990年代のロックが響く。 整備台
には、ハイブリッドバイクの先駆けとも言われる大型のアメリカンバイクが。
ツナギを着た、この店唯一の「ニンゲン」がセルスイッチを押す。
キュキュキュ・・・
キュキュキュ・・・
どぅん! どどどどど・・・
・・・ぼすっ
「あ。」
マフラーから黒煙を軽く吐き出し、エンジン停止。
「ほら、止まった。 言ったとおりだろ?」
かのメカニックが呟くように言った。 すると、シートを外したあたりで何
やら部品がモゾモゾ動いた。 そこから出てきたのは・・・
「やはりセンサーの不調でしたねー。あたしもまだまだ・・・ ドクターの
目立てには敵わないっすよ。」
武装神姫・フォートブラッグ、通称「砲子」。 ずるずると吸気センサーを
引っぱり出し、目前で待つメカニックに手渡した。
「そりゃそうだ。 こうでなけりゃ、この仕事は勤まらないって。」
メカニックは砲子に新しいセンサーを渡し取付作業を命じた。 砲子は傍ら
に置かれた自らのバックパックに接続されたFB256・・・改め自在電動小型
汎用工具を片手に、再びバイクの中へと潜り込んでいった。
・ ・ ・ ・ ・
彼- この店を一人で切り盛りする、メカニックの浅川 -が、武装神姫と出会
ったのは半年程度前のこと。
店を開けた当初からのお客さんの一人が、武装神姫を胸に入れて尋ねてきた
事がきっかけだった。
その神姫は、やたらと機械が好きだった。 いつしか、そのお客さんが来る
時にはかならずその神姫も付いてきて、お客さん以上にあれこれとバイクの
事を質問された。。。
それからしばらく経った日のこと。急ぎの修理が入った。出たばかりの最新
ハイブリッド・V4フルカウルツアラー。 経験と検電・目視により故障の
個所はすぐに判明。 だが、問題はその場所。 センサーに繋がるカプラー
の不具合。 すなわちカプラーを新品に取り替えればいいだけ。
だけなのだが・・・バイクの形状のため、すんなりと手が入らない。
カウルを外し、タンクを外し・・・とても時間が足りない。。。
そこへ偶然にもやってきた、神姫付きのそのお客。 彼に頼み、神姫に修理
をさせてみることにしたのである。 神姫は、メカニックが用意した新しい
カプラーを手に指示された箇所を目指しごそごそ潜り込んでいった。
数分後。 神姫は振動で配線が一部切れかけている古いカプラーを手にして
無事に帰還。 そしてバイクは・・・、何事もなかったかのように、力強い
エンジン音が戻った。
一人では時間が足りない。 とはいっても、人を雇う余裕もない。
そこで。 メカニックは武装神姫をひとり、そのお客さんを通し手元に置く
事にし・・・かくして、看板娘・砲子のDrusilla(ドゥルシラ)がやって
きたのであった。
・ ・ ・ ・ ・
「そうだ、スロットルセンサーも交換して。 大丈夫だとは思うけど、念の
ために換えておくわ。」
浅川は奥から持ってきた新品のセンサーを袋から出し、ドゥルシラが居る傍
へと置いた。 すっと手が伸びてパーツは引き込まれていった。
ドゥルシラが内部で作業をしている間に、浅川はブレーキフルードの交換に
かかった。
浅川が好きな、ロックのかかる店内。 当たり前の作業を、当たり前に手際
よくこなしてゆく、一人とひとり- 。
やがてCDが終わる頃、独特のエンジン音が店内に響き渡った。
「ふぅ・・・治ったっすねー。」
「ドゥルシラ、次はお前が一人で故障箇所も洗い出せるようにがんばろうな。」
「はーい。」
手を洗い、コーヒー片手に戻ってきた浅川。 イグニッションを切り、再び
店内には90年代のロックのみが空気を支配する- 。
傍らのイスに腰掛け、同じく身体を洗ってきたドゥルシラを膝に乗せた浅川
は、ざっと店内を見回した。 独り必死に店を守っていたときとは比べもの
にならないほど、小綺麗になっている。 それはもちろん・・・
「こいつが生み出したゆとり、だよな・・・。」
砲子のドゥルシラを視界の隅に置きながら、誰に言うわけでもなくぼそりと
言った。 ロックに聴き入っていたドゥルシラは一瞬振り返って浅川を見た
が、浅川の幸せそうな顔付きに、ひとり何も言わずに小さく頷き、ふたたび
ロックに聴き入るのであった。
ココロに、ゆとりとシアワセを運ぶ神姫がいる。
ここに居るのは、戦うことを忘れた武装神姫。。。
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**戦うことを忘れた武装神姫 その30
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とある街の片隅。 集合住宅の一階テナントにちょこんと入っている、ごく
ごく小さなバイク屋。。。 店内には1990年代のロックが響く。 整備台
には、ハイブリッドバイクの先駆けとも言われる大型のアメリカンバイクが。
ツナギを着た、この店唯一の「ニンゲン」がセルスイッチを押す。
キュキュキュ・・・
キュキュキュ・・・
どぅん! どどどどど・・・
・・・ぼすっ
「あ。」
マフラーから黒煙を軽く吐き出し、エンジン停止。
「ほら、止まった。 言ったとおりだろ?」
かのメカニックが呟くように言った。 すると、シートを外したあたりで何
やら部品がモゾモゾ動いた。 そこから出てきたのは・・・
「やはりセンサーの不調でしたねー。あたしもまだまだ・・・ ドクターの
目立てには敵わないっすよ。」
武装神姫・フォートブラッグ、通称「砲子」。 ずるずると吸気センサーを
引っぱり出し、目前で待つメカニックに手渡した。
「そりゃそうだ。 こうでなけりゃ、この仕事は勤まらないって。」
メカニックは砲子に新しいセンサーを渡し取付作業を命じた。 砲子は傍ら
に置かれた自らのバックパックに接続されたFB256・・・改め自在電動小型
汎用工具を片手に、再びバイクの中へと潜り込んでいった。
・ ・ ・ ・ ・
彼- この店を一人で切り盛りする、メカニックの浅川 -が、武装神姫と出会
ったのは半年程度前のこと。
店を開けた当初からのお客さんの一人が、武装神姫を胸に入れて尋ねてきた
事がきっかけだった。
その神姫は、やたらと機械が好きだった。 いつしか、そのお客さんが来る
時にはかならずその神姫も付いてきて、お客さん以上にあれこれとバイクの
事を質問された。。。
それからしばらく経った日のこと。急ぎの修理が入った。出たばかりの最新
ハイブリッド・V4フルカウルツアラー。 経験と検電・目視により故障の
個所はすぐに判明。 だが、問題はその場所。 センサーに繋がるカプラー
の不具合。 すなわちカプラーを新品に取り替えればいいだけ。
だけなのだが・・・バイクの形状のため、すんなりと手が入らない。
カウルを外し、タンクを外し・・・とても時間が足りない。。。
そこへ偶然にもやってきた、神姫付きのそのお客。 彼に頼み、神姫に修理
をさせてみることにしたのである。 神姫は、メカニックが用意した新しい
カプラーを手に指示された箇所を目指しごそごそ潜り込んでいった。
数分後。 神姫は振動で配線が一部切れかけている古いカプラーを手にして
無事に帰還。 そしてバイクは・・・、何事もなかったかのように、力強い
エンジン音が戻った。
一人では時間が足りない。 とはいっても、人を雇う余裕もない。
そこで。 メカニックは武装神姫をひとり、そのお客さんを通し手元に置く
事にし・・・かくして、看板娘・砲子のDrusilla(ドゥルシラ)がやって
きたのであった。
・ ・ ・ ・ ・
「そうだ、スロットルセンサーも交換して。 大丈夫だとは思うけど、念の
ために換えておくわ。」
浅川は奥から持ってきた新品のセンサーを袋から出し、ドゥルシラが居る傍
へと置いた。 すっと手が伸びてパーツは引き込まれていった。
ドゥルシラが内部で作業をしている間に、浅川はブレーキフルードの交換に
かかった。
浅川が好きな、ロックのかかる店内。 当たり前の作業を、当たり前に手際
よくこなしてゆく、一人とひとり- 。
やがてCDが終わる頃、独特のエンジン音が店内に響き渡った。
「ふぅ・・・治ったっすねー。」
「ドゥルシラ、次はお前が一人で故障箇所も洗い出せるようにがんばろうな。」
「はーい。」
手を洗い、コーヒー片手に戻ってきた浅川はCDを入れ替えた。
イグニッションを切り、再び店内には90年代のロックのみが空気を支配する- 。
傍らのイスに腰掛け、同じく身体を洗ってきたドゥルシラを膝に乗せた浅川
は、ざっと店内を見回した。 独り必死に店を守っていたときとは比べもの
にならないほど、小綺麗になっている。 それはもちろん・・・
「こいつが生み出したゆとり、だよな・・・。」
砲子のドゥルシラを視界の隅に置きながら、誰に言うわけでもなくぼそりと
言った。 ロックに聴き入っていたドゥルシラは一瞬振り返って浅川を見た
が、浅川の幸せそうな顔付きに、ひとり何も言わずに小さく頷き再びロック
に聴き入るのであった。
ココロに、ゆとりとシアワセを運ぶ神姫がいる。
ここに居るのは、戦うことを忘れた武装神姫。。。
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