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ドキドキハウリン 外伝9 - (2007/02/11 (日) 00:19:01) の編集履歴(バックアップ)
「Aブロック第六戦! 赤コーナー、“花の女后”『ブルーメ・ケーニギン』こと、花姫っ!」
アナウンサーにその名を呼ばれた花姫は、バトルフィールドの入口で元気良く手を振っている。
「すごいねぇ、花姫」
ボクはその様子を、プレイヤーシートに座る静姉の隣で眺めていた。いわゆるセコンドのポジションだ。
「当たり前でしょ。あたしの姫だもん」
ボクとジルの出番はもう二戦後。第一試合はAブロックとBブロックで同時進行だったけど、残り試合数が十試合を切った今は、ひとつのフィールドで両ブロックの試合を交互に行っている。
だんだん短くなってくる神姫のメンテや補給の時間を稼ぐ意味もあるだろうけど、何よりみんな強豪同士の対決を見たい……んだと思う。
「対する青コーナーは、一直線の戦闘スタイル! 『ストレイト』クウガっ!」
こちらは花姫のように観客に愛想を振りまく様子もなく、腕組みをしたまま静かに立っているだけ。
足だけ武装したハウリンの登場に、ジルは渋い顔を浮かべている。
「花姫は空中からの高機動砲撃、クウガは地上での超高速戦! それぞれ、今大会での空中戦・地上戦での最短試合時間の記録保持者です!」
花姫のレコードは予選リーグでの記録なんだけど。まあ、盛り上がってるみたいだからいいか。
「姫。準備はいいわね?」
「静香の整備は完璧だもん! あのコに勝って、お姉ちゃんの悔しい顔見てやるんだからっ!」
静姉はいつの間にか、花姫からの通信をオープンに設定していたらしい。花姫は気付いてないみたいだけど、二人の会話はボク達にも丸聞こえだ。
「……ま、アンタと決勝で戦えるなら、それも悪くないけどね」
あれ。もうちょっと怒るかと思ってたけど。
さすがに決勝だからか、ジルも大人しい……。
「へっ!? お姉ちゃん、なんで聞こえてるの?」
「……気をつけろよ。あいつ、速い上に無茶苦茶強えぞ」
いや、真剣なのか。
オリジナル装備ルールが適用されてからもう一年。クウガとは大会で何度か戦ったけど、ジルは一度も勝ったこと無かったもんな。
「うん! がんばるっ!」
アナウンサーにその名を呼ばれた花姫は、バトルフィールドの入口で元気良く手を振っている。
「すごいねぇ、花姫」
ボクはその様子を、プレイヤーシートに座る静姉の隣で眺めていた。いわゆるセコンドのポジションだ。
「当たり前でしょ。あたしの姫だもん」
ボクとジルの出番はもう二戦後。第一試合はAブロックとBブロックで同時進行だったけど、残り試合数が十試合を切った今は、ひとつのフィールドで両ブロックの試合を交互に行っている。
だんだん短くなってくる神姫のメンテや補給の時間を稼ぐ意味もあるだろうけど、何よりみんな強豪同士の対決を見たい……んだと思う。
「対する青コーナーは、一直線の戦闘スタイル! 『ストレイト』クウガっ!」
こちらは花姫のように観客に愛想を振りまく様子もなく、腕組みをしたまま静かに立っているだけ。
足だけ武装したハウリンの登場に、ジルは渋い顔を浮かべている。
「花姫は空中からの高機動砲撃、クウガは地上での超高速戦! それぞれ、今大会での空中戦・地上戦での最短試合時間の記録保持者です!」
花姫のレコードは予選リーグでの記録なんだけど。まあ、盛り上がってるみたいだからいいか。
「姫。準備はいいわね?」
「静香の整備は完璧だもん! あのコに勝って、お姉ちゃんの悔しい顔見てやるんだからっ!」
静姉はいつの間にか、花姫からの通信をオープンに設定していたらしい。花姫は気付いてないみたいだけど、二人の会話はボク達にも丸聞こえだ。
「……ま、アンタと決勝で戦えるなら、それも悪くないけどね」
あれ。もうちょっと怒るかと思ってたけど。
さすがに決勝だからか、ジルも大人しい……。
「へっ!? お姉ちゃん、なんで聞こえてるの?」
「……気をつけろよ。あいつ、速い上に無茶苦茶強えぞ」
いや、真剣なのか。
オリジナル装備ルールが適用されてからもう一年。クウガとは大会で何度か戦ったけど、ジルは一度も勝ったこと無かったもんな。
「うん! がんばるっ!」
魔女っ子神姫ドキドキハウリン外伝
~Stahlern Kaiserin~
その9
俺のヘッドセットに、静かな声が流れてくる。
「風力・温度・湿度、一気に、確認」
荒野のフィールドに見えるのは、右腕を天に掲げ、指を一本だけ立てている相棒の姿。
「準備はいいか? クウガ」
奴の名は、ハウリンタイプ・クウガ。
どっちかっつーと肉食獣とかロボットっぽいイメージで付けたんだが……クーガーがネコ科なんて知らなかったんだよ。悪いか。何となく見せたビデオが悪かったのか、あいつ的には一直線に突っ走る快速野郎から取った名前だと受け取ってしまったらしい。
「防御フィールドで守りを固め、遠距離砲で空からやりたい放題。そのうえ名前が速い姫。……どっちかと言うと、後者の方が気に入らない!」
「……相変わらず人の話聞かねえなぁ。あと相手の名前はハナヒメな。英語で言やあフラワー・プリンセスだ」
まあ、別にいいっちゃあいいんだが。
バカだし名前も覚えやしないが、根は悪いヤツじゃないし、何より俺自身あいつとのやり取りを気に入ってる。
「ならとっとと行ってこい。まだ、世界は縮められるんだろ?」
クウガの武装は両足の脚甲のみ。ラディカル・グッドスピードと銘打たれたそれは、あいつの望むがままの軌道を描き、機動と速度を叩き出す。
「ならば、やってやりますか」
やれやれ。
相変わらず、俺の話を聞いているやらいないやら。
「行くぞ、タケヨシ」
……聞いてるんじゃねえか。
あと、俺の名前は隆芳な。
「風力・温度・湿度、一気に、確認」
荒野のフィールドに見えるのは、右腕を天に掲げ、指を一本だけ立てている相棒の姿。
「準備はいいか? クウガ」
奴の名は、ハウリンタイプ・クウガ。
どっちかっつーと肉食獣とかロボットっぽいイメージで付けたんだが……クーガーがネコ科なんて知らなかったんだよ。悪いか。何となく見せたビデオが悪かったのか、あいつ的には一直線に突っ走る快速野郎から取った名前だと受け取ってしまったらしい。
「防御フィールドで守りを固め、遠距離砲で空からやりたい放題。そのうえ名前が速い姫。……どっちかと言うと、後者の方が気に入らない!」
「……相変わらず人の話聞かねえなぁ。あと相手の名前はハナヒメな。英語で言やあフラワー・プリンセスだ」
まあ、別にいいっちゃあいいんだが。
バカだし名前も覚えやしないが、根は悪いヤツじゃないし、何より俺自身あいつとのやり取りを気に入ってる。
「ならとっとと行ってこい。まだ、世界は縮められるんだろ?」
クウガの武装は両足の脚甲のみ。ラディカル・グッドスピードと銘打たれたそれは、あいつの望むがままの軌道を描き、機動と速度を叩き出す。
「ならば、やってやりますか」
やれやれ。
相変わらず、俺の話を聞いているやらいないやら。
「行くぞ、タケヨシ」
……聞いてるんじゃねえか。
あと、俺の名前は隆芳な。
バトル開始の合図と同時に、私はブースターに点火した。
クウガはどの戦いでもまずは一直線に突っ込んでくる。接敵までは約五秒。それ以内に飛ばないと、その段階で負けてしまう。
「姫っ!」
スラスター全開っ!
急上昇の中で視線だけを下に落とせば、舞い上がる砂煙がさっきまで私のいた場所を貫いてて……。
「お前がハヤヒメかっ!」
声は、すぐ後ろからした。
「は、花姫だよっ!」
慌ててブースターを蹴って急速ターン。崩れたバランスをサブスラスターで無理矢理補いながら、相手との距離を少しでも稼ごうとするけど。
「お前に足りないものは、それは……」
速い!
っていうか、何で翼もないハウリンが空を飛んでるの!?
「ミサイ……」
とにかく時間稼ぎだ。マイクロミサイルを放って、その隙に左腕のフィールド発生装置をフル稼働。弾幕と反発フィールドの二重の壁があれば、相手はとりあえず近寄れないはず。
「情熱思想理念頭脳気品優雅さ勤勉さ!」
「な、なにこいつっ!」
もう目の前にいるっ!
「姫! そいつ、姫の弱点を分かってる!」
もぅっ!
反発フィールドが効果を発揮するのは、発生装置を中心とした半径三十センチの球体の『表層部』。その内側にあるものは、反発フィールドの影響を受けることがない。
そして、クウガがいるのは……
「そしてなによりも…………」
私の目の前。
フィールドの影響を受けない、私の一番の死角。
「速さが足りない!!」
装甲に覆われたクウガの踵が振り下ろされて、フィールド発生装置が砕け散り。
私はそのまま大地へ叩き落とされる。
クウガはどの戦いでもまずは一直線に突っ込んでくる。接敵までは約五秒。それ以内に飛ばないと、その段階で負けてしまう。
「姫っ!」
スラスター全開っ!
急上昇の中で視線だけを下に落とせば、舞い上がる砂煙がさっきまで私のいた場所を貫いてて……。
「お前がハヤヒメかっ!」
声は、すぐ後ろからした。
「は、花姫だよっ!」
慌ててブースターを蹴って急速ターン。崩れたバランスをサブスラスターで無理矢理補いながら、相手との距離を少しでも稼ごうとするけど。
「お前に足りないものは、それは……」
速い!
っていうか、何で翼もないハウリンが空を飛んでるの!?
「ミサイ……」
とにかく時間稼ぎだ。マイクロミサイルを放って、その隙に左腕のフィールド発生装置をフル稼働。弾幕と反発フィールドの二重の壁があれば、相手はとりあえず近寄れないはず。
「情熱思想理念頭脳気品優雅さ勤勉さ!」
「な、なにこいつっ!」
もう目の前にいるっ!
「姫! そいつ、姫の弱点を分かってる!」
もぅっ!
反発フィールドが効果を発揮するのは、発生装置を中心とした半径三十センチの球体の『表層部』。その内側にあるものは、反発フィールドの影響を受けることがない。
そして、クウガがいるのは……
「そしてなによりも…………」
私の目の前。
フィールドの影響を受けない、私の一番の死角。
「速さが足りない!!」
装甲に覆われたクウガの踵が振り下ろされて、フィールド発生装置が砕け散り。
私はそのまま大地へ叩き落とされる。
地上に撃ち落とされた花姫を見て、ジルはやれやれとため息をついた。
「……ありゃ、負けだな」
言い方は軽いけど、表情はこれ以上ないほどに渋い。
「うん」
けど、ボクもその意見には頷くしかなかった。
花姫が得意とするのは、高速移動で間合を稼いでの遠距離砲撃戦。寄ってくる相手はマイクロミサイルと反発フィールドで牽制するのがセオリーなんだけど、あそこまで桁外れの速攻を掛けられちゃ、ミサイルもフィールドも何の役にも立たないはずだ。
「静姉……」
静姉の指示もクウガの速さには追いつけないだろう。
なら、出来ることはただ一つ。
「ええ……」
コンソールにある、赤いボタン……棄権指示を送ることだけ。
「だめぇっ!」
その瞬間、コンソールのスピーカーに花姫の声が響き渡った。
「決勝でなら使っていいけど……今は使わないでっ!」
フィールドにあるのは、立ち上がり、スラスターを吹かして舞い上がろうとする花姫の姿。
「私、絶対に勝つか……きゃあああっ!」
上空から来たクウガの追撃が、砕かれた大地に砂塵を巻き起こす。
「……よかったぁ」
その中から勢いよく飛び出したのは白い大型機。所々煤け、フィールド発生装置は砕かれていたけど、いまだ健在な花姫のブロッサム・ストライクだ。
「静姉。どうするの?」
ボクの言葉に、静姉は赤いボタンから指先をそっと離した。
「姫はちゃんと約束を守る子よ。なら、あたしも姫を信じなきゃね」
わずかに距離を稼いだところでマイクロミサイルを二セット展開。まだ砂塵の中にいるであろうクウガに向けて、216発の誘導弾を解き放つ。
同時、砂塵の中から小さな影が飛翔した。
「!」
軌道は直線。
牙を剥く216発の高速弾を216回の鋭角機動で続けざまに避け抜けて。
「きゃああっ!」
フィールドが展開するよりも早く再接敵。
容赦ない蹴打で、花姫を大地に叩き落とす。
「……ありゃ、負けだな」
言い方は軽いけど、表情はこれ以上ないほどに渋い。
「うん」
けど、ボクもその意見には頷くしかなかった。
花姫が得意とするのは、高速移動で間合を稼いでの遠距離砲撃戦。寄ってくる相手はマイクロミサイルと反発フィールドで牽制するのがセオリーなんだけど、あそこまで桁外れの速攻を掛けられちゃ、ミサイルもフィールドも何の役にも立たないはずだ。
「静姉……」
静姉の指示もクウガの速さには追いつけないだろう。
なら、出来ることはただ一つ。
「ええ……」
コンソールにある、赤いボタン……棄権指示を送ることだけ。
「だめぇっ!」
その瞬間、コンソールのスピーカーに花姫の声が響き渡った。
「決勝でなら使っていいけど……今は使わないでっ!」
フィールドにあるのは、立ち上がり、スラスターを吹かして舞い上がろうとする花姫の姿。
「私、絶対に勝つか……きゃあああっ!」
上空から来たクウガの追撃が、砕かれた大地に砂塵を巻き起こす。
「……よかったぁ」
その中から勢いよく飛び出したのは白い大型機。所々煤け、フィールド発生装置は砕かれていたけど、いまだ健在な花姫のブロッサム・ストライクだ。
「静姉。どうするの?」
ボクの言葉に、静姉は赤いボタンから指先をそっと離した。
「姫はちゃんと約束を守る子よ。なら、あたしも姫を信じなきゃね」
わずかに距離を稼いだところでマイクロミサイルを二セット展開。まだ砂塵の中にいるであろうクウガに向けて、216発の誘導弾を解き放つ。
同時、砂塵の中から小さな影が飛翔した。
「!」
軌道は直線。
牙を剥く216発の高速弾を216回の鋭角機動で続けざまに避け抜けて。
「きゃああっ!」
フィールドが展開するよりも早く再接敵。
容赦ない蹴打で、花姫を大地に叩き落とす。
ばしゅ、というスラスターのひと吹かしで、落下速度を瞬時に相殺。クウガは音もなく、荒れた大地に降りたった。
着地と同時に脚部各所から顔を見せていた複合スラスターが、装甲の内側へ瞬時に格納される。
このスラスター群こそが、ラディカル・グッドスピードの真骨頂。長時間の連続噴射こそ出来ないものの、瞬間的に得られる爆発的な推力は、クウガが空を駆ける事さえ可能にする。
高速移動と蹴り技を信条とするクウガの、唯一最強のオリジナル武装だ。
「タケヨシ。タイムは?」
相棒の言葉に、手元のストップウォッチをちらりと一瞥。
一分と二十秒。
一戦四十秒程度の速攻が中心のクウガにしては、かなりの長丁場だ。
「もう一分半だぜ。推進剤もそろそろ限界じゃねえのか?」
さっきのミサイル回避でも相当の燃料を消費しているはず。推進剤は最初から大して積んでない(積めない、といったほうが正しいが)し、あと一回の機動が限界ってとこだろう。
「……」
「あー。この野郎、シカトしやがったな」
まあ、相手もボロボロだし、後はオーナーのタオルか神姫のTKO待ちってとこか。
着地と同時に脚部各所から顔を見せていた複合スラスターが、装甲の内側へ瞬時に格納される。
このスラスター群こそが、ラディカル・グッドスピードの真骨頂。長時間の連続噴射こそ出来ないものの、瞬間的に得られる爆発的な推力は、クウガが空を駆ける事さえ可能にする。
高速移動と蹴り技を信条とするクウガの、唯一最強のオリジナル武装だ。
「タケヨシ。タイムは?」
相棒の言葉に、手元のストップウォッチをちらりと一瞥。
一分と二十秒。
一戦四十秒程度の速攻が中心のクウガにしては、かなりの長丁場だ。
「もう一分半だぜ。推進剤もそろそろ限界じゃねえのか?」
さっきのミサイル回避でも相当の燃料を消費しているはず。推進剤は最初から大して積んでない(積めない、といったほうが正しいが)し、あと一回の機動が限界ってとこだろう。
「……」
「あー。この野郎、シカトしやがったな」
まあ、相手もボロボロだし、後はオーナーのタオルか神姫のTKO待ちってとこか。
左腕防御フィールド発生装置、反応なし。
パージ。
パージ。
右腕メガ・ビーム砲、反応なし。
パージ。
パージ。
腰部兵装コンテナ、反応なし。
パージ。
パージ。
ヘッドセンサー、反応なし。
パージ。
パージ。
左足に付けられていたライトセイバーを取る。
……これもダメ。
……これもダメ。
残ったただ一つの武装。右足のセイバーを抜けば、淡いレーザーの刃が長く伸び上がる。
いける。
「ハヤヒメ!」
「花姫だよっ!」
相手もこちらの動きを窺っている。
良く分からないけど、たぶん向こうも最後の一撃なんだろう。ってことは、この一撃に勝ち残れば私の勝ちってことだ。
「花姫っ! 花姫は近接戦、苦手だろ!」
耳元に十貴子の声が聞こえてきた。
相変わらず優しいね、十貴は。
でも、私だって武装神姫。
あのコに勝てば、お姉ちゃんと戦える決勝戦まであと一戦。お姉ちゃんとの決勝戦なら、勝っても負けても悔いはないけど……ここで負けるわけにはいかないんだ。
「十貴子は黙ってて!」
静香と、十貴と、お姉ちゃんと、私。
こんな大舞台で四人揃って遊べるなんて、もう一生かけても無いかもしれないから。
「……だってよ、マスター」
私の言葉に、十貴子はそれ以上何も言わなかった。
「花姫ぇ。絶対勝てよ!」
「うん!」
お姉ちゃんの優しい声が、私に力をくれる。
「姫……勝ちなさい!」
そして静香も、私が一番欲しい言葉を言ってくれた。
「うん!」
その言葉があれば、私は無敵。
勝てる。
じゃなくて、勝つ!
「魔女っ子神姫マジカル☆アーンヴァル! みんなの願いではいぱぁ……降臨!」
私が大地を蹴る。
「瞬殺の! ファイナル・ブリットォォォォ!」
クウガもスラスターを解き放ち、大地を蹴る。
「てえええええええいっ!」
クウガのキックが迫ってくる。
でも、私のセイバーも負けてない。
当てられる!
当ててみせる!
いける。
「ハヤヒメ!」
「花姫だよっ!」
相手もこちらの動きを窺っている。
良く分からないけど、たぶん向こうも最後の一撃なんだろう。ってことは、この一撃に勝ち残れば私の勝ちってことだ。
「花姫っ! 花姫は近接戦、苦手だろ!」
耳元に十貴子の声が聞こえてきた。
相変わらず優しいね、十貴は。
でも、私だって武装神姫。
あのコに勝てば、お姉ちゃんと戦える決勝戦まであと一戦。お姉ちゃんとの決勝戦なら、勝っても負けても悔いはないけど……ここで負けるわけにはいかないんだ。
「十貴子は黙ってて!」
静香と、十貴と、お姉ちゃんと、私。
こんな大舞台で四人揃って遊べるなんて、もう一生かけても無いかもしれないから。
「……だってよ、マスター」
私の言葉に、十貴子はそれ以上何も言わなかった。
「花姫ぇ。絶対勝てよ!」
「うん!」
お姉ちゃんの優しい声が、私に力をくれる。
「姫……勝ちなさい!」
そして静香も、私が一番欲しい言葉を言ってくれた。
「うん!」
その言葉があれば、私は無敵。
勝てる。
じゃなくて、勝つ!
「魔女っ子神姫マジカル☆アーンヴァル! みんなの願いではいぱぁ……降臨!」
私が大地を蹴る。
「瞬殺の! ファイナル・ブリットォォォォ!」
クウガもスラスターを解き放ち、大地を蹴る。
「てえええええええいっ!」
クウガのキックが迫ってくる。
でも、私のセイバーも負けてない。
当てられる!
当ててみせる!
ALERT:対戦相手からのダメージシミュレート 規定値オーバー
ALERT:対戦相手へTKO信号発……強制停止
ALERT:対戦相手へTKO信号発……強制停止
「だめぇっ!」
あと一歩! あと一歩なんだから!
あと一歩! あと一歩なんだから!
ALERT:対戦相手からのダメージシミュレート 規定値オーバー
ALERT:対戦相手へTKO信号発……強制停止
ALERT:対戦相手へTKO信号発……強制停止
これが当たれば、クウガに勝てるんだから!
ALERT:対戦相手からのダメージシミュレート 規定値オーバー
ALERT:対戦相手へTKO信号発……強制停止
ALERT:対戦相手へTKO信号発……強制停止
あと一歩! 一歩だけ!
ALERT:対戦相手からのダメージシミュレート 規定値オーバー
ALERT:対戦相手へTKO信号発……強制停止
ALERT:対戦相手へTKO信号発……強制停止
あと……。
ALERT:対戦相手からのダメージシミュレート 規定値オーバー
ALERT:対戦相手へTKO信号発……強制停止
ALERT:対戦相手へTKO信号発……強制停止
いっ……。
その一撃は、半歩だけ届かない。
「…………っ」
花姫のCSCが蹴り砕かれた音は、ぱき、というあまりにもあっけないものだった。