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激突!健四郎vs晶 - (2007/07/16 (月) 21:51:09) のソース
*激突!健四郎vs晶 ---- 「さーって、どれにするかなぁ…」 前回、無事?に戸田さんに仕事を依頼出来た俺 しかし今回訪問する『Electro Lolita』の槇野晶さんはMMSショップ“ALChemist”を経営してるから平日の昼過ぎが良いとの事なので、一人で行く事となった なんでも晶さんという人は四人姉妹の長女で、他の三人を面倒見ているしっかり者だそうだ それでいて職人気質も強く、結構頑固な所もあるらしい そんな所に一人で乗り込むのだから、それなりの準備が必要だ という訳で、『やっぱり女性へのお土産には甘いモノ』という皐月の助言を受け普段は寄りもしない大規模小売店舗の地下にある食料品専門店街(早い話デパ地下)に来たまではいいが、まさかこれほどの種類があるとは… 「正直、どれが良いのかワカラン…」 和風・洋風・中華風etc… 「こんな事なら皐月に…イヤイヤ」 ちゃんと自分で選ばないと真心は伝わらないって部長も言ってたじゃないか などと考えていると、甘い匂いが漂ってきた その匂いに釣られ見てみると 「ワッフルか…いいかもな…」 俺は『山葉堂』と書かれた暖簾の向こうへと声を掛けた ---- やってきました秋葉原 『聖地』とも呼ばれる場所であるが、さすがに平日となれば、普通の商業地区とさほど変わらない …まぁやはりバックパックを背負いメガネを掛けたガリだのピザだのが居るのが秋葉らしいといえば秋葉らしいが 「…って、俺もそう見られてる?」 結構ラフな恰好に、サンプルの入ったアタッシュケースとお土産の箱を持っている俺って異様じゃないか? 「やっぱ車で…いやいや、道が大変だしなぁ…」 昔に比べ、交通事情が良くなったとはいえ、一方通行だらけで迷路と化した地域を慣れない人間が走るのは、いくらナビがあっても自殺行為だ 「…っと、こんな所でウロウロしててもしょうがない」 俺は中心部からややはずれた所にあるという“ALChemist”へと向かっていった 「へっへっへ、お嬢さん。ボクと遊ばない?」 「あの…困ります…」 店へと向かう途中、なにやらベタな光景が目に入った どう見ても小汚いオッサンが少女にいかがわしい事をしようとしてるようにしか見えない …見ちまった以上、ほっとく訳には行かないよな 「おい、そこのオッサン。こんな日中に何やってるんだ?」 「へっ?なんだチミは?関係ないだろ。ボクはこのお嬢さんに用があるんだ」 「私は貴方に用なんて無いです…」 弱々しくも、キッパリと否定する彼女 「だ、そうだ。警察に突き出される前に消えた方がいいぞ?」 「う、うるさい!お前には、か、関係ないんだな」 「お前にも関係無いだろ、ホラ、さっさと逃げな」 「あ、はい…」 俺に一礼した後、トテトテを逃げ出す彼女 ん?どこかで見覚えが…? 「あ、待って…」 追いかけようとするオッサンの前を立ち塞ぐ俺 「ホラホラ、しつこい男は嫌われるぞ。尤も、その性格じゃずっと嫌われっぱなしだろうけど」 「う、うるさい!これでもくらえ!」 キレたオッサンが俺に襲いかかってくる ひょい それを避ける俺 ガキッ! 「あたたっ!」 「あ、ガードレール…」 勢い余ってガードレールに当たるオッサン。おもいっきり脛で蹴ってら 「痛そー…」 「くそう!覚えてやがれ!」 ぴょんぴょん跳ねながら逃げるオッサン 「あっ!待てっ!」 「誰が待つか!」 ガキッ! 「そっちは工事中だから、柵があるぞ…だから待てっていったのに」 ズシャァ! Aバリケードに絡まり、派手にコケる しかも現場では最近、揉め事が起きた時に備えカメラで撮ってるから、アイツが自分で突っ込んだのも撮られてるんだよなぁ あ、警備員に連れてかれた 「ちっとは懲りるといいんだけどな」 懲りるって事を知ってれば、あーはならないんだろうけど 「…あの」 ふと可愛らしい声を聞き、そっちを見る そこにはさっきの少女が立っていた 「あの…有り難う御座いました」 ペコリ 「なんだ、まだいたのか。とっとと逃げた方が良かったと思うが…あれ?」 改めて見ると、この子、やはり… 「あの…どうかしましたか?」 「いや、もしかして、槇野 梓さん?鳳凰カップに出てた」 あの時、出展してた“ALChemist”へは行けなかったが、中継されていた決勝トーナメントはチラチラと見ていた 全くの無名ながら勝ち進んでいった彼女は一躍ヒロインとなっていた 「えっ?なんで知ってるのですか?」 「この前の鳳凰カップを見てたからね。あっと、俺はこういう者です」 と言って彼女に名刺を渡す 「國崎技研…香田瀬…健四郎さんですか」 「丁度貴方のお姉さんに用意があってきたのです」 「そういえばお姉ちゃん、今日はお客さんが来るって言ってたっけ」 「お姉さんの服を、全国へ販売させてくれないかってね」 「ええっ!そうなんですか?」 「とは言っても、お姉さんの服は精巧な手縫いだからね。とても機械じゃ再現しきれないから、それ用にデザインを起こして頂こうかと…」 俺は、梓さんと話しながら“ALChemist”へと向かっていった ---- 「あっ!そうだ!香田瀬さん、少し待ってて欲しいの」 「ああ。いいけど、なんで?」 「実はボク、ちょっと前にも男の人に襲われて、助けて貰った事があるんだよ」 「…秋葉原って、そんなに物騒なのか?」 「あっ、たまたまだもん…普段はそんな事起きない、良い所だもん。で、その時に、助けてくれた男の人もお姉ちゃんに用事があったんで一緒に帰ったんだけど、お姉ちゃんがその人をいきなり蹴っちゃって、大変だったんだよ」 「…なんか激しいんだね、お姉さん…」 「という訳で、説明してくるんだよ」 「ああ、分かった。説明が終わったら呼んでくれ」 「うん、分かったの」 トテトテと建物へと入っていく梓ちゃん ふと彼女の事を考える …別にやましい事じゃないぞ 「どう思う?ユキ」 胸ポケットにいるユキへと問いかける 「声帯の固有パターンのゆらぎがほぼ一定。行動への反応速度、その他色々を考慮してもほぼ間違いないよ」 「やっぱりインターフェイスか…」 「…たぶんね。それも美子ちゃんや優奈ちゃんクラスの。反応速度がほぼ同一だったし」 いくら精巧なインターフェイスでもそれが機械である以上、人間とは決定的に異なる部分という物はある 仕事柄様々な神姫を見てきた俺には、暫く話してるとそういった『神姫ならでは』の物がおぼろげながら分かってしまうのだった 「しかしなんで晶さんはインターフェイスを…しかもあんな精巧な」 店を切り盛りするのには一人じゃ大変というのは分かる しかしその為にあんな(梓ちゃんには失礼だが)化け物じみたインターフェイスを使う必要は無いだろう コストだって馬鹿にはならないはずだ 「一体、どんな人なんだろうな」 彼女に会うのがとても楽しみで、とても不安になった俺であった ---- 「お待たせしたの。ついてきて」 梓ちゃんに連れられて雑居ビルの階段を下りる その地下2階にその店はあった 入り口のドアを開け中に入るとそこには 一人の少女と、二人の神姫がいた この子は妹さんかな。たしか四姉妹って聞いてたし 「あれ?梓ちゃんの妹さん?お店を手伝って…」 「誰が妹だ!」 「うわっ!」 ブゥン! いきなりの回し蹴り 「あの、香田瀬さん、私が末っ子なの」 梓ちゃんの言葉を聞き、納得する 「それは失礼。それで、お姉さんの晶さんは…わわっ!」 ゴゥッ! 再び蹴りが飛んでくる なんで?見た目の幼さで末っ子と勘違いされて怒ってるんじゃないの? 「香田瀬さん、その人が私達のお姉ちゃんなの。晶お姉ちゃんもやめて!」 「えっ?この子が…晶…ちゃん?」 「私をちゃん付けするなぁ!というか避けるな!」 避けるなっていってもなぁ…ってマズイ! ガシッ! 「くううっ!なんて蹴りだ…」 ちっちゃな体をめいいっぱい使っての蹴りは予想以上に重い。でも倒れる訳にはいかなかった 「お姉ちゃん!やめてってば!」 梓ちゃんが俺のすぐ脇で叫ぶ 「はっ!梓…?」 梓ちゃんの声に我に返った晶ちゃんが俺から離れる 「全く…危うく自分の可愛い妹に当たるとこだったんじゃないか? まぁもっとも、うっかりそっちに避けた俺にも責任はあるが」 俺は蹴りを受け止め痺れる腕を振りながら言った 「かっ!可愛いだなんて、そんな…照れちゃうんだよ…」 俺の言葉に照れる梓ちゃん 「なにを言う。そもそも貴様が私を見た目だけで愚弄するのが悪いのだ!」 なんか無茶苦茶な事を言う人だな… 「そうですね、スイマセンでした」 ここは素直に謝っておく 「分かれば良いのだ」 「ごめんね香田瀬さん。お姉ちゃん、子供扱いされるのが嫌いなの」 「…じゃあ、中身も考慮するよ。えっと、ちょっと気に入らないだけで手加減無しに蹴りを入れようとする気の短さ、自分の行動がどのような結果をもたらすか考えない思慮の無さ…」 「なっ!」 「…色々考えたが、やはりまだ子供だな、晶ちゃん」 「きっ!貴様ぁ!」 再び頭に血が上り、俺に蹴りを喰らわせようとする晶ちゃん。しかし ぱしっ! 「なっ、なんだと?」 必殺の蹴りをアッサリと受けられ驚く彼女 「くそっ!このっ!」 ぱしっ!ぱしっ! 苦し紛れに連発するも、全てをいなす俺 「あの、香田瀬さん…あんまりお姉ちゃんを苛めないで…」 「はぁ…はぁ…なんでだ…?」 「簡単な事さ。晶ちゃんの蹴りの威力は、その全体重を乗せさらに遠心力により増幅される事によって初めて驚異となる。しかし、その前に止めてしまえば普通の女の子の蹴りに過ぎない」 「香田瀬さん、すごーい…」 「まぁとりあえず、子供扱いされたくらいで怒るなんて子供のする事だぞ」 「ぐっ…」 まだ怒りは収まらないが、必死に押さえてる彼女 「でも香田瀬さんって、お姉ちゃんと交渉に来たんだよね?そのお姉ちゃんをこんなに怒らせたらマズイと思うの」 「大丈夫さ。仕事に私情は挟まないのが職人というものさ。そうですよね、晶さん?」 「貴様…面白いヤツだな…」 怒りに震えながらも、それを必死に押さえてる晶ちゃん 「あ、そうだ。梓ちゃん、コレおみやげ。あとでみんなで食べてね」 「わぁ~っ!コレ、『山葉堂』のワッフルじゃないですか!」 「なんだと!貴様、なかなかやるな…」 どうやら多少は機嫌が良くなったらしい。実は内心どうしようかとヒヤヒヤしてた所だ 有り難う、さつき… ---- 「なるほどな。量産型のElectro Lolitaと、新型スーツのデザインを私にしろと…」 「まぁそういう事です。ウチの新型縫製マシンで、ここまでの縫製が出来ます。さすがに晶さんの手先には遠く及びませんが、従来の物よりずっと細かい装飾等も可能です」 「確かに、従来の物とは比べ物にならんな」 縫製サンプルを見ながら感心している晶さん 「スーツに関してはレギュレーションにより形状は決まってしまっていますが、タイプ毎のバリエーションの組み合わせと、それに合わせたデザインをして頂くという物です」 「ふむ…なるほどな」 「服の方は3点、インナースーツの方も出来たら3点程を作って頂きたいというのが今回の企画です。依頼料としてはこれほど、そしてロイヤリティの方がこのくらいです」 資料を提示しながら説明をする 「正直、貴様は気に入らないが、この仕事は気に入った。引き受けよう」 「…え?」 「だから、仕事を受けると言ったのだ」 「わぁーっ!良かったね、香田瀬さん」 「あ、ああ。有り難う、晶ちゃん、梓ちゃん」 「だから、ちゃん付けするなぁ!」 げしっ! 「ぐは…しまった…」 仕事を受けてくれた事に驚き、蹴りへの反応が遅れた俺は、晶ちゃんの必殺キックをマトモに喰らってしまった 「きゃーっ!香田瀬さん!しっかりしてっ!」 「さすがに、お兄ちゃんが悪いよね…」 梓ちゃんの悲鳴とユキの冷静なツッコミを聞きながら、俺の意識は暗転していった… ----