「「Black God Aftermath」」の編集履歴(バックアップ)一覧に戻る
「Black God Aftermath」 - (2008/06/23 (月) 04:58:11) のソース
槙縞ランキング上位を意味する「ナイン」。その中で9位に位置するストラーフ「[[ジルベノウ>http://akibahobby.net/2008/06/toho_sofui_nine.html]]」 は、最強厨全開の重装甲+過剰な大火力、高機動で、本人の資質とは無関係の、所謂「装備勝ち」だけでこの順位を保つ、ある意味究極の非公式武装主義者である その品性、戦闘スタイル(機動性に任せて飛びまくって、装甲に任せて耐えまくって、火力に任せて射ちまくるだけ)から、槙縞ランキングがレベルの低い大会と思われ勝ちな所以でもあるが、彼女を除く上位八名はいずれもセカンド級の化物が居並ぶ為、彼女の、言い方は悪いが「実の無い」力では此処迄が限界だったと言える その彼女の順位が、今一人の挑戦者によって危うくなっていた * 「Black God Aftermath」 『くっそぅ!!これでも喰らえっ!!!』 どう見てもそれ程の装弾数があるとは思えない右肩のミサイルポッドから無数のマイクロミサイルを放出する「ジルベノウ」。飽和射撃で相手の視界を遮り、その間に水平移動して左右二択のキャノン攻撃を迫るのが、彼女の本来の戦術である 装甲と積載量に余裕のある装備である為、冷静にやれば並大抵の相手に負ける事は無い。実際、彼女は華墨に一度も敗北した事が無かった・・・というよりも、紅緒の最もと迄は言わない迄も、相当に苦手なタイプである事は確かである 切れ味は良くても、規格外の装甲相手には無力な日本刀、速射性能に欠ける火縄銃、威力はあっても小回りの効かない十字薙刀・・・いずれもジルベノウの装甲、機動性の敵ではなく、ましてや紅緒の装甲だけではジルベノウの火力に耐え抜く事は非常に難しかった(注1) その砲撃が・・・である (凌がれている・・・悉く・・・) マスター、阿部川ちる(注2)は恐怖していた 戦力で言えばあの華墨とそう変わらないか、少し強い程度に考えていたが、攻撃が全く当たらない上に、当たった筈の砲撃が何故か効果を挙げていない (以前にも・・・似た様な事があった様な・・・) 無謀にも「クイントス」に挑んだ時の「砲弾斬り」の記憶が蘇る・・・とは言え、あの技は軽量で取り回しの良い日本刀だから出来た技であって、決して薙刀・・・それも、武装神姫の身長の約1.2倍以上はあろうかという非常に大振りな代物だ・・・でこなせるような技ではない 事実、「ジルベノウ」の前に立つ神姫・・・紅緒タイプ・・・は音速剣を使っている様子は無かった。ソニックブームは発生していないし、時折着弾の衝撃で吹き飛ばされてさえいる にも関わらず、目の前の紅緒は全くの無傷だ。華墨の、どこか真面目というか、堅さのある表情ではなく、吹き飛ばされる際には不謹慎な喜悦すら読み取れる (どうにも・・・) 「ホークウインド」を瞬殺した(注3)という噂は本当の様ね・・・と口に出しかけたちるの目が驚愕に大きく見開かれた 『温いぞ・・・牝餓鬼!この程度の実力しかもって居らぬのか?』 明らかに人間の目で追える速さで動いた対戦相手の薙刀が、砲弾を事も無げに切り裂いたのだ 『・・・ば・・・っ・・・!』 『ほう?一応悔しがる程度の脳は持っておるようだの?』 にまり・・・と、人の悪い笑みを浮かべて、狐面の様に目を細める紅緒。薙刀の刀身を、蛇の様な舌で舐めて見せる 『ばっ・・・!!』 「駄目!!ジル!!!!」 『バカにしてええええええええええええええええええええええぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇッッ!!!!』 ジルベノウの最大の弱点がこれであった 高レベルの装備を使いこなすだけの精神が、彼女にはまだ育っていない 『莫迦であろ?』 リニアライフルという触れ込みの、右手の銃を乱射しながら、左手の光剣を起動させる「ジルベノウ」。強烈なイオン臭が、ヴァーチャルの空気を焦がす 「仁竜」や「ストリクス」に匹敵する重量級のボディが、有り得ない速度で疾駆する。その様はまるでドラッグレーサー・・・異形の車両を無理矢理加速する感覚だ *ごうっ!! ちるの父拘りの、光剣が空を切る独特の音が響いた だが、地面には紅緒の首も胴も転がっては居ない 『やはり莫迦であろ?お主』 「ジルベノウ」の半分以下の直径しか持たない細腕が、振り切る直前の「ジルベノウ」の左肘にかかり、完全に攻撃を止めている 『な・・・んで・・・!?』 にたり・・・と歯を見せて笑う紅緒。犬歯が発達した、大きな口は、本来のタイプを見失わせる程の凶悪さを秘めている 「逃げてぇッ!!」 「ジルベノウ」の左腋に、薙刀が突き刺さる(注4)。その顔が苦痛に歪むより迅く、踏み込みながら引き抜かれた脇差が左肘の関節を封じ、そのまま出足が止まらずに、「ジルベノウ」の脚を刈る 『ぐぅッ!!』 重装甲が倒れた際の重い衝撃を背中に受けながら「ジルベノウ」が倒れる 『ふはっ・・・!!』 喜悦に歪んだ紅緒の左手にサイドボード転送の輝き・・・1秒程でダイヤ型の穂先を持つ2sm程の短槍が出現する 『がああぁぁっ!!』 槍を思い切り「ジルベノウ」の右肩に突き立て、自身は左腰の飾太刀をぬるりと引き抜く 『はっはっはっ!!良き悲鳴!苦しう無いぞ!!』 再び左手に転送光・・・鬼面が鍔にあしらわれた禍々しい大剣が転送される 『死ぬが良い』 二つの刀身でジルベノウの首を挟みこみ、そのまま鈍い音を立てながら引き裂く 「いやああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁッ!!」 敗北表示の後ろでジルベノウの首を高々と掲げる紅緒の姿を、ちるは直視する事が出来なかった ---- 「上機嫌だな・・・斬黒(ざくろ)」 恰幅の良いスキンヘッドの大男が、重々しく自身の神姫を迎える 「当然であろ?あるじ(主人)。二日で12も勝ち星を挙げて、不機嫌になれという方が難しいというものぢゃ!」 「そうだな・・・だが俺とてそういつも暇な訳では無い。明日からはまた仕事だ・・・一人で待てるか?」 「うむ、待つぞ?あるじが一仕事終える迄に、ここのランキングを制覇しておいてやろう」 そう言って歯を見せて笑う紅緒・・・斬黒・・・に対して、獰猛な笑みだけで答え、男は皆川 彰人に横柄に声を掛ける 「おい店主!俺が居ない間にも、萩原厳十郎と『斬黒』名義でここのランキングに挑戦出来るよう便宜を図っておいて貰おう」 言いながら、黒光りするクレジットカードとセカンドランカーを表すワールドパスを放り投げるのだった [[剣は紅い花の誇り]] [[前へ>第壱幕 「リライト」]] [[次へ>第参幕 ]] 注1.とは言え、槙縞ランキングにはそもそも今迄華墨以外の紅緒など居もしなかったのだが 注2.名前、今迄無かったね。性格はジルと殆ど同じ。生意気そうなツインテールのメスガキw 注3.この時点で、「ウインダム」は「リフォー」と二位を争い、4位「ズィータ」、5位「ストリクス」、6位「タスラム」、7位「仁竜」、8位「ニビル」、9位「ジルベノウ」。である 注4.語呂から今迄薙刀と書いてきたが、本来は刺突にも向いた尖った切先を持つ、西洋の「グレイブ」という武器を意識している