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始まりの午前9時 - (2012/02/23 (木) 21:40:52) のソース
幼なじみのおにいさんの家で見せてもらった15センチの金髪の人形 クレイドルに横たわったそれ・・・いや彼女が目を覚まし僕に声をかけたその時から 僕は、神姫(カノジョ)に恋をした ---- 連続神姫ラジオ 浸食機械 1:始まりの午前9時 暗い道をずっと歩いて今日も僕は彼女に会いに行く。やがて単調な道の先に光の玉が現れた。僕が触れるとそれは小さく震えて僕に声をかけてきた。 「おはようございます、マスター!今日も張り切っていきましょう」 周りの闇がぱんとはじけ、工場の中のような光景が目の前に広がっていく。 2020年後半から始まった急激なロボットの社会進出は2030年に開発された新型制御系によって一つの完成を見た。CSCと呼ばれる高密度集積回路を使用したロボットたちはMMS規格と呼ばれ社会のあらゆる場所に進出した。人と会話して判断を下せるほどにファジーな思考回路を実現し、作業専門の体を持ったMMSは様々な社会問題に直面しながらも世に認知され広まっていった。 「マスター、2時方向300先に反応確認。ジグザグに攻めてきてます」 僕の神姫”プルミエ”が伝えてくる報告に緊張する。 だけど彼女が落ち着いているのに僕が慌てるわけにはいかない。 <バズーカを用意して。煙に紛れて左から攻めるんだ> 2036年、CSCのファジーな機能を生かしたMMSが開発される。"心と感情"を持ち、最も人々の近くにいる存在。多様な道具・機構を換装し、オーナーを補佐するパートナー。15センチの胸ポケットの住人達。神姫の誕生である。 遮蔽物の影から相手が飛び指してきたのを確認してプルミエは作戦を実行した。タイミングは完璧、だけど相手のイーダ型は僕らの側面攻撃を躱すどころか 「マスター、再ロック確認、きゃぁああ」 僕らのピコハンが届く前に発動した大剣リレーアクションがすべてをなぎ払っていた。 神姫は心という魅力的な要素で人気を集め瞬く間に普及したが、心を持ち考えることができる人のもっとも近くにいる機械故に特異な事件が起こってしまった。 サイバーフロント事件、アルテミス事件、プラムネリーレポート…そしてイリーガル 何かにぶつかったような衝撃を感じたかと思うと突然体が動かせなくなり目の前の景色が地面から天井、また地面へとめまぐるしく入れ替わっていた。プルミエがとっさにターンで攻撃を回避してリレーアクションを発動させたのだ。リレーアクション中は行動のイニシアチブが神姫に移る。全力の神姫の動きは人間の認識を遙かに凌駕する。 様々な問題に頭を抱えたMMS機構神姫部門はマスターの登録制度と共に、特に神姫の独走による事件の防止のため新システムを導入した。ライドシステムと呼ばれたそれはCSCの空き容量を利用して人間の脳波を受信させ、命令をダイレクトに伝えるシステムである。と同時に脳波を鍵として「神姫の性能リミットを段階的に解除していく」というシステムでもある。ライドオン可能神姫の性能は通常はライド時の一割以下に抑えられている。ライドすることで初めて神姫は性能を発揮できるがそれも神姫とマスターの親密度によって大きな違いができる。今や特別な理由無くライドシステムを搭載していない神姫もまたイリーガルと呼ばれるようになっていた。 バズーカを放ちながら距離をとってビームランチャーで一蹴、それが僕とプルミエがリレーアクション中に立てた対策だった。ライドシステムのおかげでタイムラグも齟齬も無くお互いの思考がつながる。エネルギーをチャージしながら相手に狙いを定める、あと少し。 「うがぁぁあ!!」 突然相手のイーダ型が吠えると大量のミサイルを放った。だけど狙いがでたらめで壁やコンテナを破壊して粉塵をまき散らすばかりだ。 <プルミエ、今だ!> 僕のかけ声と共に放たれたビームは逆転の一撃になる…はずだった。 「うふふ、づがまえだ」 周囲に舞った粒子のせいで軽減されたビームでは彼女を大いに痛めつけたものの倒し切るには至らなかったのだ。 「やっばりバドル、だのしい。あだじ、勝つ、あなだ、まげる」 イーダ型のリアの強靱な爪がランチャーとプルミエの腹を鷲掴みにしている。 神姫を巡る事件はその後も起こり、一時は大会すらも行えなくなった。しかしとある神姫マスターの活躍により再び神姫バトルが行える日がやってきた。そして2041年ついに神姫マスターすべてが注目する大会が開かれる。 かつてドッキドキトレジャーアイランドが行われた島すべてが決戦の舞台 神姫だけでなく疑似ライドオンシステム積載のメカすべての参加を承認 同時参加可能神姫1000体によるサバイバルゲーム バトルアルテマニアの開催である 「残念です、もう少し時間があれば・・・・・・あなたの勝ちだったのに」 プルミエがにっこり笑う、と同時にきょとんとしたイーダ型のアームに握られたランチャーが大爆発を起こす。リアを完全破壊されたイーダ型が地面に転がる。よろよろと起き上がろうとした彼女の前にプルミエが立ちふさがり 「えいっ☆」 ぴこっと軽い音を立ててピコハンがおでこにヒットすると会場のアナウンスが僕たちの勝利を高らかに伝えた。 次章:[[月は陰る>月は陰る]]に続く