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EXECUTION-Another 03-『LeadingDancing』 - (2007/03/29 (木) 20:32:09) のソース
<p> </p> <p> </p> <p> ―PM:12:02 March XX, 203X LosAngels-Time.<br /> ―MMS-Shop『Hexa』 Century City..<br /> ―in L.A.</p> <p><br /> 時は遡り、ミラがまだロサンゼルスを発つ数十時間前の事。</p> <p><br /> MMSショップ『ヘキサ』の自動ドアを開ける人物が、いつに無い深刻な面持ちで来た。<br /> 『ヘキサ』の店主であるラルフ・バーンスタインは入ってきた人物に気軽に声を掛けた。<br /> 「おぅ、ミラじゃねぇか。今日は何の用件だ?」<br /> 「………」<br /> ミラは暫く沈黙したままラルフを見据える。<br /> 「お、おい? 何だってんだ??」<br /> 店には言ってきたきりずっと沈黙し、ずっと自分を見据えられてはどう対処すればいいか分からない。<br /> 「……『アルカナ』が四度目の予告してきた。だから、またアレを貸して欲しい」<br /> その、爆弾テロリストの名前を聞いてラルフは仰天した。<br /> 「な、『アルカナ』だとっ!? ここ暫く、でっかい大会はないと思っていたが、なんでだ?」<br /> アルカナの狙いは、テレビ中継が行なわれ賞金も莫大な大きなオープンマッチを狙ってきた筈。神出鬼没にして世界中で反抗を繰り返してきたアルカナだが、ミラには三度も阻止された。<br /> 「日本だ。日本で行なわれる大会で、22個もの爆弾が仕掛けられる」<br /> 「に、に、22個だとぉ!!? 正気とは思えねぇ……ってか、ミラ。幾らお前でもそこまでして行く必要は無いんじゃないのか?」<br /> 老婆心と言うものだろうか、それなりに長い付き合いとなるミラを気遣っての言葉だったが、<br /> 「依頼主は、私でなければ阻止出来ないと信じている。それだけだ」<br /> 「し、然しだな…幾らなんでも遠すぎる。それに、烈風らがいるとは言え、お前一人では無理に決まっている!」<br /> それでもミラの、決意から来る言葉は止まらない。<br /> 懐かしむように、昔話を始める。<br /> 「……あれは、最初のケースだったな。あの時の主催者は若き私の事など信じず、唯単純に警備を強化させてきた。その過度な警備が裏目に出て、爆弾が一般人に発見されてしまった。お陰で大会は混乱状態になり、参加者達の不信を買って次々と棄権していったがそのまま進められ、主催者は涙からがらに神姫BMAに懇願してきた」<br /> ミラのその声はあまりに冷たく冷淡だった。<br /> 「最初と言うとおよそ一年半近く前…随分と懐かしい話だな。16個もの爆弾が設置されていたあれか。あの後確か開催元の会社は……」<br /> 「その翌日に潰れた。世界中での『アルカナ』の9度目の犯行でやっと、神姫の手でないと解体出来ないと世界中の機関が突きとめたにも拘らず、神姫ではなく人間のセキュリティを信じてな。そして、人間の手による解除を推し進めたお陰で、殆どの爆弾を解除不可能にさせた……」<br /> 淡々と、然しミラの声色は低い。それは怒りを通り越した何か故に。<br /> 「あの時は……どうやって止めたんだよ?」<br /> 「無謀な賭けだったが……連山のドレインシステムを使い、時限爆弾のバッテリーを強制的に吸引して無理矢理止めた。残りの爆弾は烈風と震電、それとクリスのアナトが神姫の武装の中で工具になりそうなものを厳選して何とか解体した」<br /> 「………」<br /> 爆弾の正しい解除方法を無視したそれを行った連山に、自らの死の恐怖はなかったのだろうか。そもそも神姫に、人間用の時限爆弾の危険性を教え込む方が無理がある。<br /> 連山でなくとも、リスクの高い爆弾解体にあたった他の神姫BMAのAIESも同様の恐怖を感じていたに違いない。<br /> 「……世間的には、現在でも神姫は高価な玩具で定着しているとは言え、神姫を蔑視し信じなかった報いが、私の最初の解体成功となった。だが、腹立たしくて誇りたくもない」<br /> 「まあ、そんな主催者じゃ『アルカナ』がいなくとも潰れたかもしれんがよ」<br /> 神姫を唯の商売道具と見た人間の愚かさ故か。<br /> 当時は、『アルカナ』の目論見が結果的に果たせたものだと苦汁を飲んだものだった。<br /> 「そして、二度目と三度目からは神姫BMAに依頼するようになったが……二度目の時は莫大な報奨金を掛けて裏で一般オーナーまで巻き込もうとし、三度目の時に至っては神姫BMAそのものに経済的圧力を掛けてきた」<br /> 「あんときゃ俺もムカついたぜ。けど結局、両方とも悪事が発覚して最終的にはポシャッたな」<br /> 何より大事なのは、客そのものではないのだろうか。報奨金を掛けて素人に解体させようと考えるなど信じられない。それどころか依頼する相手に対し脅迫を掛けるなど、まるであり得ない話だ。<br /> ミラの三度もの奇跡は決して、ミラ自身にとって輝かしいものではなかった。<br /> 「だが四度目の相手は、報奨金などではなく本物の誠意を示して私に依頼してきた。大企業の長たる人物が、遥かに若き私に頭を下げて…信じられるか?」<br /> 「そうか……お前にとって、断りたくなかったということでもあるワケか」<br /> そのラルフの言葉の後に続く言葉がなかった。ミラの言いたいことはこれで全てだった。<br /> ラルフは大きな溜息を吐きながら、<br /> 「…しゃぁねぇ、分かった。あれで三度目の正直になると思っていたがな……シーミュー!!」<br /> と、ラルフは店の奥で在庫整理をしていた忍者型MMSを呼びかけた。<br /> 「はい、どうしました?」<br /> 「…『アルカナ』の四度目の予告だ。神姫専用EODキットを大至急取ってこい。ナイフのコーナーにある筈だ」<br /> 表情を作れない忍者型MMSはぱちくりと瞳を瞬かせた。<br /> 「分かりました。あの……ミラさん」<br /> 「?」<br /> と、シーミューがミラに何か言いたそうだった。<br /> 「あの、その……気をつけてくださいね」<br /> と、それだけ言うとシーミューは店の奥へと駆け出した。<br /> 続いてラルフが喋りかけてきた。<br /> 「四度目で22個もか……『アルカナ』も本気って訳だ。いつも通りの解体が通じると思うなよ」<br /> 「それは承知済みだ」<br /> と、ミラが言うと同時に三つの小箱を抱えたシーミューが戻ってきた。<br /> 「全く、唯のMMSショップにEODキットの製作を頼んできたあの時のミラは忘れらんねぇな」<br /> 「こっそり違法品も扱っておいて何を言っている」<br /> ミラはシーミューから小箱を受け取りトランクに仕舞い、すぐに店を出ようとしたが、<br /> 「お前なら問題ないと思うがよ、こういうのは常にポーカーフェイスだぜ……無事に戻ってこいよ」<br /> ラルフの言葉を背に受け、ミラは『ヘキサ』を後にした。</p> <p> </p> <p> </p> <p> ANOTHER PHASE-03<br /> 『LeadingDancing』</p> <p> </p> <p> </p> <p> ―AM:08:28 March XX, 203X.<br /> ―Defence Headquarters, Extra-LargeStadium of 『Houjouin-Group』.<br /> ―in Japan.</p> <p><br /> 開会はまだだと言うのに、スタジアムの周囲はすさまじい熱気で覆われていた。<br /> 一般参加者だけではない、スタジアムのスタッフが彼方此方駆け巡り、更にはテレビクルーまで殺到していた。<br /> 「うひょぉ、初日だってのにすっげぇ人数だな」<br /> 「そうだな。戦いに来たオーナーは何人いるか分からないが、明日で一気に16人に絞られるのか」<br /> 「ところでよ、今日でノルマ11個って事になるわけだが…本当に大丈夫か?」<br /> ミラの肩の上で器用に逆立ちをしつつ烈風が訊ねてきた。<br /> 「今日中に14個は解除しておきたいものだが…せめて遅れを取りたくないものだ」<br /> そう言いながらミラは関係者専用スペースの、警備隊本部に足を運んだ。</p> <p><br /> テーブルに広げられた施設の全体図を前に、桜は報告書を軽くまとめていた。<br /> 「おはよう御座います、ミラさん」<br /> 「現状は……何も無しのようだな」<br /> と、ミラは施設の全体像を見渡した。最初に解体すべき爆弾のあると踏んだ位置を睨んでいた。<br /> 「はい。ですが、今は人の出入りが多い為、捜索困難となっております」<br /> 「警備員にあまりちょろちょろと動いてもらってはそれはそれで困る。万が一発見されたとしても今まで通りなら、一見爆弾のように見えないのが救いだ……烈風、震電、連山。通常装備に加え、例のEODキットを装備し始めるんだ」<br /> 机の上にどかっと大きなトランクを置いて、大きく開けた。中で眠っていた震電と連山はほぼ同時に目を覚ました。<br /> 「…了解した」<br /> 「わ~い、みんなで~頑張ろ~ね~♪」<br /> 「へへっ、やってやるぜ…!」<br /> と、烈風もミラの肩から下りて、武器庫の様になっているトランクの中に入って装備を始めた。<br /> その様子を眺めつつミラは、熱いコーヒーポットの中身を紙コップに移しながら桜に喋りかけた。<br /> 「それで水無月様には、不審物及び不審者に不審神姫の発見に務めるようお願いする」<br /> 「承知しております」<br /> 淹れたての熱いコーヒーを飲んで睡魔を払いながらミラは言葉を続けた。<br /> 「それと……私の勘ではここにも設置されているかもしれない」<br /> 「そ、そんな!?」<br /> 「……烈風、匂いはするか?」<br /> とミラが一言訊ねると、烈風は軽く匂いをかいだ。<br /> 「……おぅ、コーヒーの匂いと一緒にTNTっぽいのが微かにな」<br /> 「だが、ここで速やかに解除しては『アルカナ』の思う壺だ。まぁ、これからの解体も奴の手の上に乗せられている可能性もあるが」<br /> 淡々と言う烈風とミラに、桜は問い訊ねる。<br /> 「勝算は……あるのですか?」<br /> その問いにミラはこう返した<br /> 「三度の挑戦に勝ってきたとは言え、今回の『アルカナ』は本気だ。二日に分けられて行なわれる大会に、22個もの爆弾が設置されている。勝率は嘗ての三例より遥かに低い」<br /> 「………」<br /> それでも、ミラは桜の顔を真っ直ぐに見つめながら言った。<br /> 「だが、私は兼房様にこの解体の成功を誓った……負けるつもりはない」<br /> そう言った時に烈風ら3体が、<br /> 「いいから、さっさとやりにいこうぜ」<br /> 烈風は通常の黒き翼は変わらず身に付け非武装にしつつも左右非対称のシルエットを取り、<br /> 「…準備完了した」<br /> 震電は、『テンペスト』ユニットを右肩に担ぎ、<br /> 「えへ~ミラちゃん、張~りきっていこ~♪」<br /> 連山は普段より身軽に構えつつ、スラスターを持つパーツだけを装備していた。<br /> 爆発物解体とは言え、普通の神姫が人間用に作られた爆発物に耐えられることはない為、バーニアや飛行ユニットを重視した機動性重視の装備にしてあるのだ。幾ら神姫に、人間用のボムスーツを改良して何とか着せたところで、その激しい衝撃に耐え切れるものか、当然だが答えは否である。<br /> 準備万端だと思われだが、ミラは連山に、<br /> 「こら……『ミラージュコロイド』を忘れていないか?」<br /> 「ふぇ? ふにゃ~うっかり~っ!!」<br /> 大いに慌てる連山と、大いに溜息を吐いたミラと震電と、少し不安そうな桜と烈風だった。</p> <p> </p> <p> </p> <p> To be continued...</p> <p> </p> <p> <a href="http://www19.atwiki.jp/shinkiss_matome/pages/754.html">Prev</a> Next</p> <p> </p>