第十間幕。
ライト点灯。
ライト点灯。
いつしかの、何も無い、がらんとした廊下のような場所。
ただ、煌々と。赤く四角いライトだけは灯り。そこには。
今ははっきりと読み取れる『手術中』。という白い文字が浮かび上がっている。
ただ、煌々と。赤く四角いライトだけは灯り。そこには。
今ははっきりと読み取れる『手術中』。という白い文字が浮かび上がっている。
そのライトの下。壁によりかかるようにして、シーツに身を包んだ一体の神姫。
マーチ。
マーチ。
マーチ「・・・」
マーチ、目を閉じたまま。動こうとしない。その顔を伏せられ、表情は隠れて見えはしない。
体中をすっぽり覆ってしまっているシーツ。うつむいている彼女の頭しか見えはしない。
しばらくの沈黙。ガタタン。という遠い音。
体中をすっぽり覆ってしまっているシーツ。うつむいている彼女の頭しか見えはしない。
しばらくの沈黙。ガタタン。という遠い音。
マーチ「・・・お久しぶりです。皆さん。2036の風。第十幕。ご覧頂きありがとうございます」
マーチ。顔を上げる。その目の部分には、引き裂いたような白い布がぐるぐるに巻かれていた。
マーチ「これよりは最終第四編になります。冬。十二月も末。2036年も、あと一週間で終わります」
淡々と紡がれる、抑揚さえ無い無機質な声。
マーチ「それは・・・落ちていくとき。高い高い崖から落ちていくとき。
周りは暗闇。落ちているという事さえ解らないとき。貴方は。目を開けますか?」
周りは暗闇。落ちているという事さえ解らないとき。貴方は。目を開けますか?」
感情が無い声を、マーチは続ける。
マーチ「もしも、目を開けたとして。
落ちていく感覚だけ。近づいてくる最期の時だけをはっきりと認識してしまうとき。
周りは暗闇。何も無く。何も聞こえず。何も救いとして存在しないとき。
貴方は、目を開け続けますか?」
落ちていく感覚だけ。近づいてくる最期の時だけをはっきりと認識してしまうとき。
周りは暗闇。何も無く。何も聞こえず。何も救いとして存在しないとき。
貴方は、目を開け続けますか?」
かちゃん。
何かが落ちる音が鳴った。
がちゃん。
もう少し近いところで、もう少し大きな音が鳴った。
マーチ「・・・夢を見続けること。目を閉じ続ける事。
貴方は、それを。責めますか?」
貴方は、それを。責めますか?」
何も何も、何も込められていない声。
マーチ「・・・芽を、出さない種は」
マーチ、再び顔を伏せる。その声に。しかし、僅かに哀しみの感情だけ宿る。
マーチ「・・・。生きて。いるのかなぁ・・・?」
目を覆う白い布に。
じんわりと涙の染みが広がる。震える声。しゃくりあげる泣き声が、その小さな唇の端から零れだす。
じんわりと涙の染みが広がる。震える声。しゃくりあげる泣き声が、その小さな唇の端から零れだす。
ふっと、ライト消灯。赤い手術中と書かれたランプだけ煌々と灯る無機質な廊下。
ふっと。ライト点灯。落ちているシーツに、マーチの姿は無い。
ただ。
ヒビ割れた種だけが。そこに転がっていた。
ふっと。ライト点灯。落ちているシーツに、マーチの姿は無い。
ただ。
ヒビ割れた種だけが。そこに転がっていた。
ガタン!!
何かが落ちるような、大きな音と共に。
突如として照明消灯。
突如として照明消灯。
第十幕。
了。
了。