ハウリングソウル
第九話
『許せない真相』
「・・・それで? ど~してうちに転がり込んでくるのかしらぁ?」
「あのままあそこにいたら危険だろう。こっちは危うく火事になりかけたんだぞ」
「それはノワールちゃんのミサイルのせいでしょっ! アンタの話し聞いてると食らった被害は武装の損壊と窓ガラスが割れただけじゃないっ!!」
深夜12時。
ぎりぎり明日が来ていない時間に私たちは吉岡の家に転がり込んでいた。
・・・・あの謎の神姫を金属バットでかっ飛ばした後、私はノワールとハウの様子を見た。幸いにして彼女達に怪我は無く、私は安心したのだが・・・・このままこの家にいるとまたアレが襲ってくるような気がして、私は二人を手のひらで包むと車に乗って吉岡のマンションに来ていた。
普段ならオカマバーに行っていていないはずの吉岡が、今日に限っていてくれたのが助かった。女一人と神姫二人じゃ野宿なんてとてもじゃないが無理だったしな。
ちなみにうちの神姫二人はリビングに置かれたテーブルに乗って意気消沈している。彼女達からしてみれば寝起きに襲い掛かられたようなものだし、何より良く判らないが敵の神姫が圧倒的に強かったらしい。ノワールの一斉射撃を食らって無傷でいるとは。
ぎりぎり明日が来ていない時間に私たちは吉岡の家に転がり込んでいた。
・・・・あの謎の神姫を金属バットでかっ飛ばした後、私はノワールとハウの様子を見た。幸いにして彼女達に怪我は無く、私は安心したのだが・・・・このままこの家にいるとまたアレが襲ってくるような気がして、私は二人を手のひらで包むと車に乗って吉岡のマンションに来ていた。
普段ならオカマバーに行っていていないはずの吉岡が、今日に限っていてくれたのが助かった。女一人と神姫二人じゃ野宿なんてとてもじゃないが無理だったしな。
ちなみにうちの神姫二人はリビングに置かれたテーブルに乗って意気消沈している。彼女達からしてみれば寝起きに襲い掛かられたようなものだし、何より良く判らないが敵の神姫が圧倒的に強かったらしい。ノワールの一斉射撃を食らって無傷でいるとは。
「旦那様、そこはプラスドライバーですわ」
「ありがとう美代子さん。・・・・あぁもぅ! これからバーにショーを見に行く予定がキャンセルじゃないのよぅ! それにノワールちゃんのチーグル! コレどうしたのよ!? 普通こんなにあっさり切れないわよぅ! 石川五右衛門にでも斬られたって言うのぉ!? だったらジョイントにコンニャクでも装備すればいいじゃなぁい!? 衝撃も吸収できていざとなったら食べれるのよぅ!! エコロジーで地域の文化再興にも役立つわよぉぅ!!」
吉岡は不機嫌そうにチーグルを修理しながら悪態をつく。その様子を見てマーメイド型の美代子さんがにこにこ笑っていた。
「・・・・いや、本当に申し訳ない。でもあんな事があった以上、女三人じゃ不安で・・・男で頼れそうなのはお前しかいないし」
“あんな事”の部分でハウが僅かに震えた。
ノワールはそんなハウを庇うように抱きしめて離さない。
ノワールはそんなハウを庇うように抱きしめて離さない。
「・・・・そう、それよ。一体何があったっていうの? この切り口と言い一斉射撃の話といい、襲ってきた神姫が違法改造なのは判るけど、肝心の襲われた理由がサッパリよぅ。アンタ、何か知らないのぉ?」
吉岡は一旦手を止めてサングラスを外してこちらを見つめる。
かなりダンディな面が私を見ていた。
私は、正直に話すべきか少し悩んでから結局話すことにした。
かなりダンディな面が私を見ていた。
私は、正直に話すべきか少し悩んでから結局話すことにした。
「・・・・確証はまるで無いけど、心当たりなら一つだけある」
「何よ? まさか前振った男が送り込んできた刺客とか言うつもりじゃないでしょうね」
そう茶化す吉岡を無視して私はハウを見る。帽子を深くかぶってその表情は窺えない。
次にノワールを見る。ノワールはハウを抱きしめていたが、こちらの視線に気づくと僅かに肯いた。
私は同じようにノワールに肯き返すと、少し息を吸ってから口を開いた。
次にノワールを見る。ノワールはハウを抱きしめていたが、こちらの視線に気づくと僅かに肯いた。
私は同じようにノワールに肯き返すと、少し息を吸ってから口を開いた。
「・・・・・・・・・多分、あいつは『切り裂き』だと思う」
・・・・場を静寂が支配した。
吉岡は口を開けて停止しているし吉岡の神姫である美代子さんも真面目な顔をして黙り込んでいる。ハウは私が『切り裂き』と言った瞬間に顔を上げてこっちを見ていた。
吉岡は口を開けて停止しているし吉岡の神姫である美代子さんも真面目な顔をして黙り込んでいる。ハウは私が『切り裂き』と言った瞬間に顔を上げてこっちを見ていた。
「・・・・・ちょっち待ちなさいよ。百歩譲ってその神姫が『切り裂き』だったとして、どうしてあんたが襲われるわけ?」
最初に言葉を発したのは、口を開けっ放しにしていた吉岡だった。
「違うよ、あいつが狙っていたのは・・・・ハウだ」
全員の視線が一斉にハウに注がれる。
当のハウは今にも泣きそうな顔で困惑していた。
当のハウは今にも泣きそうな顔で困惑していた。
「ま、マスター・・・・ぼ、僕は・・・・」
そのまま目尻に涙を溜め、ハウは私の方を見つめる。
私は黙ってノワールを見る、私の意思を理解したのかノワールはハウに絡めていた腕を無言で解いた。私はそのままハウを手のひらに乗せ、顔の高さまで持っていく。
ハウはぺたんと座り込んだまま、泣きそうにこちらを見ている。
私は黙ってノワールを見る、私の意思を理解したのかノワールはハウに絡めていた腕を無言で解いた。私はそのままハウを手のひらに乗せ、顔の高さまで持っていく。
ハウはぺたんと座り込んだまま、泣きそうにこちらを見ている。
「今のは単なる推理だよ・・・当たっているとは限らないさ」
右手の親指で涙を拭ってやる。
泣いてるハウなんて見たくない。それはノワールだってそうだろう。
泣いてるハウなんて見たくない。それはノワールだってそうだろう。
「・・・・でも、・・・でもマスター・・・・僕は・・・僕はあいつを見たことがあるんです・・・・! 夢の中で!」
またも全員の視線がハウに注がれる。
そのままハウは堰を切ったように話し出した。
彼女が見た、悪夢の事を・・・・・・・・・。
そのままハウは堰を切ったように話し出した。
彼女が見た、悪夢の事を・・・・・・・・・。
「・・・・・・ねぇ、教えなさいよ。アンタ、今回の事について大体見当ついてんでしょ」
ハウが悪夢について語った後、私はかなり無理やりにハウとノワールを寝かせつけた。
今はとにかく休憩が必要だと判断したからだ。かく言う私も疲れていたため、寝たかったが吉岡が寝させてくれなかった。
ベランダで煙草を吸いながら、私たちは話していた。
今はとにかく休憩が必要だと判断したからだ。かく言う私も疲れていたため、寝たかったが吉岡が寝させてくれなかった。
ベランダで煙草を吸いながら、私たちは話していた。
「人づてに聞いた話な上に、本当かどうかなんてわからない情報があって、尚且つ今の状況から私が推測した奴でいいなら」
夜中にも拘らず、サングラスをかけ直した吉岡が無言で頷いた。
「・・・まず、初めにある男がいてだな、この男は老人であると推測される。なぜならハウが夢で見た老人と、男は同一人物であると推測されるからだ」
灰皿に灰を落とす。
「この老人は神姫同士の違法バトルなどに深いかかわりを持っていた。そして自らも参加していたんじゃないかと思うよ。これはハウの夢に出てきた『神姫たちの墓場』からの推測だけど。さもなきゃサディステックな性格だったんだろう。でなきゃそんな真似はしない。そしてハウの夢の『次々に消えていく神姫たち』・・・・・・これは、性能試験なのかただの加虐趣味の延長なのかはわからないが、とにかくその老人が持っていた神姫に・・・殺させていたんだろうな」
吉岡は黙って私の言葉を聞いている。
その顔は真剣だ。
その顔は真剣だ。
「そして今から五ヶ月前、その老人は死亡した。これはニュースにもなったから覚えているだろう? 豪邸にすむ一人暮らしの爺さんが殺されたって事件だ。これは・・・・『不自然に赤く濡れた床』と『倒れていた老人』に該当するんじゃないかな。そしてハウの夢では黒い神姫が自分を狙っていて、悪魔型が自分を庇った際に『神姫たちの墓場』の壁に穴があいたそうじゃないか。その後そこから飛び降りたら老人が倒れていて床が血まみれだったんだろう?」
私が問いかけると、今まで黙っていた吉岡は少し青ざめた顔で口を開いた。
「・・・・つまり、こういう事? 『切り裂き』のオーナーが五ヶ月前に殺された富豪の老人で、ハウちゃんたちを殺させて楽しもうとしてたときに・・・・うっかり自分が『切り裂き』の攻撃を食らって・・・死んじゃったって?」
「っていうかそれ以外に考えようが無いんだ。私にはね。・・・・話を戻すぞ。ちょうど老人が殺されていた頃に、私とノワールは雨の中散歩していた・・・・・あいつが、死んで落ち込んでたからね、あの時の私は。同じ頃ハウは雨の中逃げ回っていたんだろう。歪んだフレームを引きずって、黒い神姫の影に怯えながら。・・・・そして、もう動けなくなって倒れこんだ所で私が通りかかった。それで今に至る、と言うことじゃないか?」
「・・・・ちょっち待ちなさいよ。確かに筋は通ってるかもしれないけど。だったら何でハウちゃんが襲われるわけ?」
「ハウが教われる理由は、多分『破壊しろ』と命令されたからだと思うよ。まだ命令を遂行できていないんだろう。違法バトルにはCSCを改造され、自我を持たない神姫が少なくないと聞く」
「バッテリーとかの問題は? いっとくけどぉ、あたしは専門家よ。バッテリーを節約すれば、どうにか二日くらいなら持つかもしれないけれど、他の神姫を殺し続けてたんなら一日が限界よ? オーナーが死んだ状態でどうやって充電なんか・・・・」
吉岡はそのまま考え込んでしまった。
私は、あまり言いたくない答えを口にする
私は、あまり言いたくない答えを口にする
「・・・・そりゃお前、神姫を殺してクレイドルを奪ったんだろう。殺された神姫のオーナーは『切り裂き』を見ていない。・・・大方、オーナーが寝ている間にでも殺されたんじゃないか」
私は想像する。
夜、寝ている間にハウとノワールが殺されて、二人がいたクレイドルにあの『切り裂き』が入る姿を。
・・・・気分が悪い。
夜、寝ている間にハウとノワールが殺されて、二人がいたクレイドルにあの『切り裂き』が入る姿を。
・・・・気分が悪い。
「・・・なんて事なの・・・・許せねぇなぁ・・・・!」
何かが軋む音がした。
吉岡がベランダの手すりを握り締めているらしい。
吉岡がベランダの手すりを握り締めているらしい。
「話は以上だ。・・・・これからについては明日、考えさせてくれないか。もうくたくただよ。一日の間に・・・色んなことが起きすぎた」
「・・・そうね。あたしも疲れたわ。アンタはベッド使いなさいよ。あたしは床で寝るから」
床で寝ようと思っていたら先手を打たれた。
オカマの癖に男らしい奴だ。
オカマの癖に男らしい奴だ。
「・・・恩に着るよ」