「…………」
その日の事は実はあんまり思い出したくない。
けど、忘れる事は出来ない。
思い出したくも無い、忘れられない日。
けど、忘れる事は出来ない。
思い出したくも無い、忘れられない日。
夢絃と約束した日……つまりなぜかアタシが神姫を譲り受けてしまった日の次の日、アタシは柄にも無く凄く緊張して、そして待ち合わせの場所で待ち人を待っていた。
一応デートと呼べる物なのだろうか?
実際夢絃にそんな気があろうが無かろうが、アタシとしてはそれ以外の何物でもなく、そして好きになった人とのデートである訳だから嬉しくも緊張していて気温は高いけどそのせいではなくて顔は真っ赤で熱い訳だけど心臓は激しく鼓動を繰り返しそして昨日はよく眠れなかった。
うぅ……思考もなんだか暴走気味。
静かに深く呼吸を繰り返す。
そしてウィンドウに写る自分の姿を確認した。
淡い色合いのキャミソールにジーンズのショートパンツ。暑さ対策でもないんだけど、大き目のキャスケット。足元には編み上げストラップのウェッジサンダル。かばんは小さめのボストンバッグ。
似合ってる……よね?
元々多くの服を持ってこの町に来ていないアタシは、昨日夢絃と別れてから急いで服を買いに走った。
曽祖父の家に持ってきている服から選んでも良かったんだけど、やっぱりこんな時くらいは新調したい。
でも、そんな風にフワフワしてるアタシも、少し恥ずかしい気がする。
はっきりと浮かれている事を自覚すると、なんだか自分が酷くマヌケに見えてくる。
「なに変な顔してんだよー?」
「ふわひゃあ!」
真後ろ至近距離から突然声をかけられた。
「……斬新な挨拶だな」
「い……いきなり後ろから声かけられれば、普通驚くモンなの!」
「えー。だってウィンドウ見てたから、ガラス越しにあたしたち確認出来てると思ってたんだぜー」
「確認してたら声かけられる前に振り向いてるでしょ!」
「……相変わらず賑やかだな、お前は」
少し呆れたように、息を吐きつつ夢絃は言う。
ううぅ……かっこ悪いよう。
「そ……そんな事より! さっさと神姫センターとかに案内してよ!」
「まぁまぁ。それより先に喫茶店でも入らないか? 暑くてかなわん」
と言うなり夢絃はアタシの了解も得ずに歩き出す。
……まぁ、暑いと言う点においては反論の余地も無い訳で。
それにただ用件だけを済まして終わりなんてイヤなのも確かだし。
だからアタシは、一応非難めいた事を言い訳のように一言口にしてから、夢絃と並んで歩く事を選択した。
一応デートと呼べる物なのだろうか?
実際夢絃にそんな気があろうが無かろうが、アタシとしてはそれ以外の何物でもなく、そして好きになった人とのデートである訳だから嬉しくも緊張していて気温は高いけどそのせいではなくて顔は真っ赤で熱い訳だけど心臓は激しく鼓動を繰り返しそして昨日はよく眠れなかった。
うぅ……思考もなんだか暴走気味。
静かに深く呼吸を繰り返す。
そしてウィンドウに写る自分の姿を確認した。
淡い色合いのキャミソールにジーンズのショートパンツ。暑さ対策でもないんだけど、大き目のキャスケット。足元には編み上げストラップのウェッジサンダル。かばんは小さめのボストンバッグ。
似合ってる……よね?
元々多くの服を持ってこの町に来ていないアタシは、昨日夢絃と別れてから急いで服を買いに走った。
曽祖父の家に持ってきている服から選んでも良かったんだけど、やっぱりこんな時くらいは新調したい。
でも、そんな風にフワフワしてるアタシも、少し恥ずかしい気がする。
はっきりと浮かれている事を自覚すると、なんだか自分が酷くマヌケに見えてくる。
「なに変な顔してんだよー?」
「ふわひゃあ!」
真後ろ至近距離から突然声をかけられた。
「……斬新な挨拶だな」
「い……いきなり後ろから声かけられれば、普通驚くモンなの!」
「えー。だってウィンドウ見てたから、ガラス越しにあたしたち確認出来てると思ってたんだぜー」
「確認してたら声かけられる前に振り向いてるでしょ!」
「……相変わらず賑やかだな、お前は」
少し呆れたように、息を吐きつつ夢絃は言う。
ううぅ……かっこ悪いよう。
「そ……そんな事より! さっさと神姫センターとかに案内してよ!」
「まぁまぁ。それより先に喫茶店でも入らないか? 暑くてかなわん」
と言うなり夢絃はアタシの了解も得ずに歩き出す。
……まぁ、暑いと言う点においては反論の余地も無い訳で。
それにただ用件だけを済まして終わりなんてイヤなのも確かだし。
だからアタシは、一応非難めいた事を言い訳のように一言口にしてから、夢絃と並んで歩く事を選択した。
「何コレー!! これすっげ可愛い☆☆☆」
「へへへー」
刹奈が身に付けたその服は、もうそのまま抱えて持って帰りたくなるくらい似合っていて、もうアタシはメロメロだったりする。
刹奈も満更じゃなさそうで、くるりとまわってポーズをつけたりしている。
その仕草がまた、破壊的に可愛い!
「もうコレ買うしかないって♪ こんなに可愛いのに買わないなんて罪!」
「えええぇぇぇ? ……あぁー……うーん」
アタシの勢いに押されて、夢絃は真剣に悩み始める。
あの後アタシ達は神姫センターには行かず、こんな風にショッピングし、ランチを食べ、町を歩き、そしてまたショップで時間を楽しんでいた。
二人きりではないけど、刹奈も一緒だけど、コレってやっぱデートだよね!?
……昨日、いきなりキスなんかされたけど、期待してもいいんだよね?
そう思うと本当に楽しくって、今までずーっと笑顔だった気がする。
だから、あっという間に時が過ぎた。
「よし! 昨日朔良にプレゼントしたしな。今日は刹奈にプレゼントしてやろう」
「うおっ! 本当に!? やったー」
刹奈は本当に嬉しそうに笑みを浮かべ、そして踊りだす。
「っと、そろそろ本当に神姫センターに行かないと。時間が無くなる」
夢絃は腕時計で時間を確認すると、今刹奈が試着しているのと同じ製品を一つとった。
「ちょっと待っててくれ。後刹奈はその試着品を脱いでおけよ」
「うん。待ってるよ」
「おう! さっさと片付けとくぜー」
アタシ達の返事を聞いて、夢絃はレジに向かう。
アタシと刹奈の二人だけがその場に残った。
「あ……あの、さ。こんな事、刹奈に聞くのも自分でもどうかって思うんだけど」
「ん? なにー?」
刹奈は器用に服を脱ぎながら答える。
「アタシ、期待していいのかな?」
つまり、夢絃もアタシの事好きでいてくれてるのか? と。
アタシは知っていてこんな質問を神姫である刹奈にした。
神姫とオーナーの関係がどれだけ特別なのか、親友とその神姫の関係を知っているのに刹奈に質問した。
何て浅はかな自分。
それを少しだけ悔いながら、でもやっぱり聞いておきたかった。
「んー……そうだなぁ…… 少なくとも、アイツは朔良が好きなんだと、思うけど。でも、朔良が言う『期待』に応えるかどうかまでは、あたしには答えられないよ」
いつに無く真面目な、真剣な口調で、確かめるように刹奈は言う。
そこに少しばかりの悲哀を感じ、そしてその意味を本当に理解するのには後少しだけ時間が必要で。
そのときのアタシは神姫特有の寂しさを感じているのだと、そう思い込んでしまっていた。
「……なんか、ゴメン」
「何だよー? 朔良が謝る事なんて、何も無いじゃんかー」
「でも」
「あー……うん。多分朔良が気にしてる事もわかんだけど、でもそれって誤解で――」
「よ。お待たせー」
刹奈の言葉は夢絃が帰ってきた事で途切れてしまい、その続きを問う事は出来ず仕舞いで。
結局疑問符だけが頭の中に残ったまま、アタシは二人と共に店を出る。
「おぉ。空が暮れかかってきた。本当にもう行かないと」
そう言って一歩、夢絃が足を踏み出す。
それに合わせて刹奈は夢絃の肩に飛び移る。
更に夢絃は足を一歩踏み出す。
それに伴って、アタシが店舗から一歩外に出る。
アタシの方を見て、何かを話そうと口を開く夢絃がまた一歩通りに出る。
同じようにアタシも通りに向かい歩を進める。
だから、その通りを走る人が居る事に三人とも気付けない。
その走っていた人から見れば、アタシ達はいきなり歩道に現れたワケで。
慣性の法則に逆らう事はできず歩道を見ていなかった夢絃とぶつかった。
その衝撃は当たり前に運動量と比例し、半ば吹っ飛ばされるように夢絃はよろける。
当然衝撃は刹奈にも伝わり、刹奈は夢絃の肩の上から本当に飛ばされた。
飛ばされた刹奈は体の制御も出来ない。
そして刹奈の落下地点は車道で。
そしてここは駅のロータリーの入り口で。
夕刻のこの時間の交通量は増えていて。
思わずアタシは刹奈を拾い上げるために車道へ飛び出していた。
車道の刹奈を拾い上げたのと同じに、アタシの耳朶を打つクラクション。
迫る車体。
衝撃――
――――――――
――――――――――――――――
だけどその衝撃は車との衝突によるものではなく――
背中から誰かに強く押し飛ばされた衝撃だった。
次の瞬間、アタシの背後でタイヤが鳴り、次いで嫌な衝撃音が聞こえる。
ゴムが焦げる様なイヤな匂いが鼻腔を刺激する。
瞬間的にアタシは振り返った。
「――――――――――――――――――――――――――――――――!!!」
その時アタシは何を言ったのか?
それともただ叫んだだけなのか?
もう何も覚えていない。
「へへへー」
刹奈が身に付けたその服は、もうそのまま抱えて持って帰りたくなるくらい似合っていて、もうアタシはメロメロだったりする。
刹奈も満更じゃなさそうで、くるりとまわってポーズをつけたりしている。
その仕草がまた、破壊的に可愛い!
「もうコレ買うしかないって♪ こんなに可愛いのに買わないなんて罪!」
「えええぇぇぇ? ……あぁー……うーん」
アタシの勢いに押されて、夢絃は真剣に悩み始める。
あの後アタシ達は神姫センターには行かず、こんな風にショッピングし、ランチを食べ、町を歩き、そしてまたショップで時間を楽しんでいた。
二人きりではないけど、刹奈も一緒だけど、コレってやっぱデートだよね!?
……昨日、いきなりキスなんかされたけど、期待してもいいんだよね?
そう思うと本当に楽しくって、今までずーっと笑顔だった気がする。
だから、あっという間に時が過ぎた。
「よし! 昨日朔良にプレゼントしたしな。今日は刹奈にプレゼントしてやろう」
「うおっ! 本当に!? やったー」
刹奈は本当に嬉しそうに笑みを浮かべ、そして踊りだす。
「っと、そろそろ本当に神姫センターに行かないと。時間が無くなる」
夢絃は腕時計で時間を確認すると、今刹奈が試着しているのと同じ製品を一つとった。
「ちょっと待っててくれ。後刹奈はその試着品を脱いでおけよ」
「うん。待ってるよ」
「おう! さっさと片付けとくぜー」
アタシ達の返事を聞いて、夢絃はレジに向かう。
アタシと刹奈の二人だけがその場に残った。
「あ……あの、さ。こんな事、刹奈に聞くのも自分でもどうかって思うんだけど」
「ん? なにー?」
刹奈は器用に服を脱ぎながら答える。
「アタシ、期待していいのかな?」
つまり、夢絃もアタシの事好きでいてくれてるのか? と。
アタシは知っていてこんな質問を神姫である刹奈にした。
神姫とオーナーの関係がどれだけ特別なのか、親友とその神姫の関係を知っているのに刹奈に質問した。
何て浅はかな自分。
それを少しだけ悔いながら、でもやっぱり聞いておきたかった。
「んー……そうだなぁ…… 少なくとも、アイツは朔良が好きなんだと、思うけど。でも、朔良が言う『期待』に応えるかどうかまでは、あたしには答えられないよ」
いつに無く真面目な、真剣な口調で、確かめるように刹奈は言う。
そこに少しばかりの悲哀を感じ、そしてその意味を本当に理解するのには後少しだけ時間が必要で。
そのときのアタシは神姫特有の寂しさを感じているのだと、そう思い込んでしまっていた。
「……なんか、ゴメン」
「何だよー? 朔良が謝る事なんて、何も無いじゃんかー」
「でも」
「あー……うん。多分朔良が気にしてる事もわかんだけど、でもそれって誤解で――」
「よ。お待たせー」
刹奈の言葉は夢絃が帰ってきた事で途切れてしまい、その続きを問う事は出来ず仕舞いで。
結局疑問符だけが頭の中に残ったまま、アタシは二人と共に店を出る。
「おぉ。空が暮れかかってきた。本当にもう行かないと」
そう言って一歩、夢絃が足を踏み出す。
それに合わせて刹奈は夢絃の肩に飛び移る。
更に夢絃は足を一歩踏み出す。
それに伴って、アタシが店舗から一歩外に出る。
アタシの方を見て、何かを話そうと口を開く夢絃がまた一歩通りに出る。
同じようにアタシも通りに向かい歩を進める。
だから、その通りを走る人が居る事に三人とも気付けない。
その走っていた人から見れば、アタシ達はいきなり歩道に現れたワケで。
慣性の法則に逆らう事はできず歩道を見ていなかった夢絃とぶつかった。
その衝撃は当たり前に運動量と比例し、半ば吹っ飛ばされるように夢絃はよろける。
当然衝撃は刹奈にも伝わり、刹奈は夢絃の肩の上から本当に飛ばされた。
飛ばされた刹奈は体の制御も出来ない。
そして刹奈の落下地点は車道で。
そしてここは駅のロータリーの入り口で。
夕刻のこの時間の交通量は増えていて。
思わずアタシは刹奈を拾い上げるために車道へ飛び出していた。
車道の刹奈を拾い上げたのと同じに、アタシの耳朶を打つクラクション。
迫る車体。
衝撃――
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だけどその衝撃は車との衝突によるものではなく――
背中から誰かに強く押し飛ばされた衝撃だった。
次の瞬間、アタシの背後でタイヤが鳴り、次いで嫌な衝撃音が聞こえる。
ゴムが焦げる様なイヤな匂いが鼻腔を刺激する。
瞬間的にアタシは振り返った。
「――――――――――――――――――――――――――――――――!!!」
その時アタシは何を言ったのか?
それともただ叫んだだけなのか?
もう何も覚えていない。