「もうっ!いつまで隠れてんのよ!」
アタシの対戦相手のハウリン、たしか凛っていったっけ?正直、あのコには同情する。起動直後でバトル?ありえない。アタシなら絶対イヤ。
そもそもこのバトルの原因の、アイツが絡んでたあの娘。そりゃあ、原因はあっちかもしれないけど、よそ見して歩いてたアイツも悪いんだし。向こうも謝ってるんだからそれでいいのに、なんでまたこんな面倒な事にするのかしら?
いっつもそうなのよ、アイツは!態度ばっかりでかくてイヤになっちゃう。
……いや、悪いトコばっかりってワケでもないのよ?たまにだけど優しいコトもあるし……あ、今は関係ないわよね。
とにかく、そんなワケであのコには同情してるワケ。でも、それはそれ。バトルになった以上は恨みっこなしという事で、さっさと勝たせてもらうつもりだったんだけど。
初心者ってワリにはなかなかやるのよね、あのコ。攻撃はもらっちゃうし、さっきので決めるつもりだったのに逃げられちゃうし。
いい加減探すのにも飽きてきた時、ようやくあのコの姿を見つけた。
巨大な砲身、蓬莱を手に待ち構えていたみたい。まともに撃ったってどうせ当たらないのに、まだ懲りないみたいね。エネルギーを使いきっちゃうけど、次の一撃で、レインディアバスターで止めよ!
「蓬莱ッ!」
相手の砲撃。そんなの何度も当たるモンじゃない。軽く避けて終わり――
「きゃっ!」
不意に背中に走る衝撃。たいしたことないけど何?撃たれた?今のは……
「プチマスィーンズ……!やってくれるじゃない」
小型の半自動支援メカ、プチマスィーンズ。銃器を取り付けられた四機のビットが、いつの間にかアタシの周囲を取り囲んでいる。でもこんなの、モノの数じゃないわ!所詮はムダなあがき……
「わっ!だからムダだって言ってんでしょ……わっ!きゃっ!」
あ~、うっとおしい!ムダだって言ってんのに、しつこく撃ち続けてくる。一発一発はたいしたコトないけど、耐久力に自信がないアタシとしてはこれ以上撃たれるのはかなりマズイ。
回避の為に一度大きく迂回。するとハウリンが背を向けてどこかへ走りだした。また逃げるつもり?冗談じゃないわ、これ以上の面倒はゴメンよ!早く帰って、今日買った服を着たいんだから!
ビットの銃撃をくぐり抜けてハウリンを追い掛ける。どうせスピードなら、圧倒的にアタシのが上。逃げたってムダよ!
建物の隙間を縫って走るハウリンを追い掛け、ちょうど四方をビルに囲まれた空間に飛び込んだその時、アタシはハウリンの姿を見失ってしまった。そんなはずない、確かにこっちに逃げて来たし、すぐ近くにいるはずよ。一旦足を止めて周りを見渡す。と、辺りの柱に取り付けられた妙なモノに気が付いた。どこかで見覚えのあるその『何か』。そしてそれが『何か』を察知すると同時に、レインディアを急発進させる。直後に響く爆音と衝撃、ヤバい。
アタシは逃げ場を求めてレインディアを急加速させる。四方を囲まれてる以上、上に逃げるしかない。爆発に巻き込まれるのもマズイけど、このままじゃ生き埋めになっちゃう。
「くぅっ!」
急加速、急旋回、急上昇。さすがにキツイ。体の芯まで響く派手な爆音、もし気付くのが遅かったらと思うとゾっとする。
今のはヤバかった。取り付けられていた『何か』、蓬莱のマガジンだ。炸裂弾が満載のマガジンを爆弾の代わりにするなんて、こすっからい手使ってくれるわね。初心者でここまでやれたのはたいしたモノだけど、もう頭にきた。ここを脱出したら、すぐに終わりにしてあげる。
アタシの対戦相手のハウリン、たしか凛っていったっけ?正直、あのコには同情する。起動直後でバトル?ありえない。アタシなら絶対イヤ。
そもそもこのバトルの原因の、アイツが絡んでたあの娘。そりゃあ、原因はあっちかもしれないけど、よそ見して歩いてたアイツも悪いんだし。向こうも謝ってるんだからそれでいいのに、なんでまたこんな面倒な事にするのかしら?
いっつもそうなのよ、アイツは!態度ばっかりでかくてイヤになっちゃう。
……いや、悪いトコばっかりってワケでもないのよ?たまにだけど優しいコトもあるし……あ、今は関係ないわよね。
とにかく、そんなワケであのコには同情してるワケ。でも、それはそれ。バトルになった以上は恨みっこなしという事で、さっさと勝たせてもらうつもりだったんだけど。
初心者ってワリにはなかなかやるのよね、あのコ。攻撃はもらっちゃうし、さっきので決めるつもりだったのに逃げられちゃうし。
いい加減探すのにも飽きてきた時、ようやくあのコの姿を見つけた。
巨大な砲身、蓬莱を手に待ち構えていたみたい。まともに撃ったってどうせ当たらないのに、まだ懲りないみたいね。エネルギーを使いきっちゃうけど、次の一撃で、レインディアバスターで止めよ!
「蓬莱ッ!」
相手の砲撃。そんなの何度も当たるモンじゃない。軽く避けて終わり――
「きゃっ!」
不意に背中に走る衝撃。たいしたことないけど何?撃たれた?今のは……
「プチマスィーンズ……!やってくれるじゃない」
小型の半自動支援メカ、プチマスィーンズ。銃器を取り付けられた四機のビットが、いつの間にかアタシの周囲を取り囲んでいる。でもこんなの、モノの数じゃないわ!所詮はムダなあがき……
「わっ!だからムダだって言ってんでしょ……わっ!きゃっ!」
あ~、うっとおしい!ムダだって言ってんのに、しつこく撃ち続けてくる。一発一発はたいしたコトないけど、耐久力に自信がないアタシとしてはこれ以上撃たれるのはかなりマズイ。
回避の為に一度大きく迂回。するとハウリンが背を向けてどこかへ走りだした。また逃げるつもり?冗談じゃないわ、これ以上の面倒はゴメンよ!早く帰って、今日買った服を着たいんだから!
ビットの銃撃をくぐり抜けてハウリンを追い掛ける。どうせスピードなら、圧倒的にアタシのが上。逃げたってムダよ!
建物の隙間を縫って走るハウリンを追い掛け、ちょうど四方をビルに囲まれた空間に飛び込んだその時、アタシはハウリンの姿を見失ってしまった。そんなはずない、確かにこっちに逃げて来たし、すぐ近くにいるはずよ。一旦足を止めて周りを見渡す。と、辺りの柱に取り付けられた妙なモノに気が付いた。どこかで見覚えのあるその『何か』。そしてそれが『何か』を察知すると同時に、レインディアを急発進させる。直後に響く爆音と衝撃、ヤバい。
アタシは逃げ場を求めてレインディアを急加速させる。四方を囲まれてる以上、上に逃げるしかない。爆発に巻き込まれるのもマズイけど、このままじゃ生き埋めになっちゃう。
「くぅっ!」
急加速、急旋回、急上昇。さすがにキツイ。体の芯まで響く派手な爆音、もし気付くのが遅かったらと思うとゾっとする。
今のはヤバかった。取り付けられていた『何か』、蓬莱のマガジンだ。炸裂弾が満載のマガジンを爆弾の代わりにするなんて、こすっからい手使ってくれるわね。初心者でここまでやれたのはたいしたモノだけど、もう頭にきた。ここを脱出したら、すぐに終わりにしてあげる。
崩れていくビルの合間を抜け出ると、目の前には空が広がっていて。バーチャル空間ではあるけど、雲一つない青空が広がっていて。だけどその直後に、アタシの視界は塞がれた。雲一つない空に現れた影。
「はあああああああっ!!」
体に走る衝撃と、砕け散る機体。翼を失ったアタシは、真っ逆さまに落ちていくしかなかった。
目の前にあるのは、雲一つない空、そしてあのハウリン、凛だった。
「はあああああああっ!!」
体に走る衝撃と、砕け散る機体。翼を失ったアタシは、真っ逆さまに落ちていくしかなかった。
目の前にあるのは、雲一つない空、そしてあのハウリン、凛だった。
「ふぅ、これで全部セットしました」
『よし。もう少し経ったら姿を見せるぞ』
「ほ、本当に誘いに乗ってくれますかね?罠だと気付かれたら、打つ手がありませんよ?」
隼人の言う通りの場所に蓬莱の残弾、即席の爆弾を仕掛け終えた私は、何度目かの同じ質問をしていました。だってなんというか、あまりにもこの作戦は……
『単純でいいんだよ。あのツガル、あんまり気の長いヤツじゃないみたいだからな。あの性格じゃあ、もうこの戦いにも飽きてる頃だ。格下相手だし、多少無理をしてでも決着をつけにくるハズだよ』
「ハズ……?」
『はず』
隼人の作戦はこうです。まず、いくつかの建物に爆弾を仕掛けておく。そして相手の前に姿を見せ、指定の場所まで誘導。タイミングを見計らってそれを起爆。四方で同時に爆発が起これば、必然的に退路は上に限られる。それを私が迎撃。相手がどんなに素早くとも、どこに来るのかわかっていれば命中させられる、という事です。
しかし、この作戦は全て予測に基づいたものに過ぎません。全て仮定で語られている以上、決して成功率の高い作戦ではありません。ですが――
『俺はお前を、俺の相棒を信じる。だからお前も、俺を信じろ。お前の相棒を。な?』
「隼人……はい、わかりました!」
私は信じました。隼人の作戦を、隼人の言葉を。だってそう、私達はパートナー、相棒なんですから。
そして彼女は、アルさんは見事にこちらの思惑に乗ってくれました。そうなればあとは私の役目。放ったのは『獣牙爆熱拳』。捉えたのは私の持つ、最強の必殺技。その一撃は彼女を機体もろともに打ち砕き、強烈に地表へと叩き付けました。
「がはっ……」
彼女の体は固いアスファルトに放射状の亀裂を刻み付けると、そのまま力を失い横たわりました。もとより機動性重視で、防御や耐久力は低いツガルタイプ。もう立ち上がることは出来ないようです。そして――
『K.O!Winner,Howling,RIN!』
コンピュータが試合終了のコールを鳴らします。そしてそのコールは同時に、私達、私と隼人の初勝利を告げるものでもありました。
「勝っ……た?私が……?本当に……」
『ぃぃぃいよっしゃあああああああ!!勝ったーーーーーーー!!!』
聴覚センサーが割れる程の歓声をあげる隼人。びっくりしました。ただでさえ信じられないことで驚いているのに、お陰で喜ぶタイミングを失ってしまったじゃないですか。
「わ、わーい」
一応喜びを表現しようとしてみたのですが。なんかもうダメっぽいですね。
『なーんだよ凛!もっと全身で喜びを表現しろって!ほーら、バンザー……おふぁ!?』
「!?」
な、なんですか、今の奇声は?
『うるさい!騒ぎすぎ!凛ちゃんがびっくりしてるでしょー!?』
えーと、この声はたしか、舞、さん?こちらからでは姿が見えないので、あまり外で盛り上がってもらっても困るんですが。
『だからって殴るこたぁねーだろ!?』
『うるさい!うるさいからうるさいって言ったの!』
『なんだと!?お前のがよっぽどうるせぇよ!!』
ああ、なんだか子供みたいなケンカが始まってしまいました。こんな時私はどうしたらいいんでしょう。戦闘中は夢中だったので特に気にしませんでしたが、素の応対にはまだ戸惑いがあるんですから。
「あ、あの、お二人共とにかく落ち着いて……」
『うるさいって言った方がうるさいんだよ!』
『なによそれ!バカなんじゃないの!?』
『バカ!?バカって言ったか、このバカは!?』
『誰がバカよ!?』
ああ、ダメそうです。聞いてません。完全無視です。もう、泣いてもいいですか?私。
「……信じらんない」
喧騒の中、天を仰いでいた彼女が、アルさんが小さく呟きました。
「このアタシが……負けた?アンタみたいな初心者に?」
「……」
信じられない、のは私も同様です。勝利の実感等、未だに沸いて来ないのですから。
「おかしいでしょ?せいぜい笑えばいいわよ」
「いえ、そんな事ありません。私なんかが勝てたのは隼人の、マスターのお陰なんですから」
「あんたのマスター?ソイツだって初バトルだったんでしょ?それとも、それだけアタシが情けないって言いたいワケ?」
「違います!ただ私は……隼人を信じる事が出来たから。隼人が、信じてくれたから」
「……?」
私自身、事態を受け入れきることは出来ていません。ですが、私なりに精一杯、彼女に応えなければなりません。私とのバトルに、全力で挑んでくれた彼女に。
「隼人が言ってくれたんです。俺も信じる、だからお前も信じろって。私は、それに応えたかったんです」
「……ハッ、なによそれ?信じるだの信じろだの……マスターとの信頼ってワケ?会ったばっかのマスターがそんなに好きなワケ?」
自然と顔が綻ぶのが自分でもわかりました。その質問だけは迷わずに、そして心から答える事が出来ます。
「はい!大好きですよ。だから私はがんばれたんです」
「……………よく恥ずかし気もなくそんなコト言えるわね。はぁ、なんかもう、どーでもいいわ」
あれ?もしかして呆れられてますか?彼女、アルさんは溜め息まじりに起き上がると、背中を向けたまま言葉を続けました。
「アンタ、バトルは続けるんでしょーね?」
「もちろんです!もっと強くなって、いろんな方と戦ってみたいんです!」
「……ふん、せいぜいがんばりなさいよ。…………また、ね」
それだけ言い残すと、彼女はさっさとフィールドから離脱してしまいました。『また』、一人の神姫として、そしていずれ戦う相手として、認めてもらえたという事でしょうか。
「はい。ありがとう、ございました!」
私は見えなくなった彼女の背中に一礼。心からの感謝を贈りました。
『よし。もう少し経ったら姿を見せるぞ』
「ほ、本当に誘いに乗ってくれますかね?罠だと気付かれたら、打つ手がありませんよ?」
隼人の言う通りの場所に蓬莱の残弾、即席の爆弾を仕掛け終えた私は、何度目かの同じ質問をしていました。だってなんというか、あまりにもこの作戦は……
『単純でいいんだよ。あのツガル、あんまり気の長いヤツじゃないみたいだからな。あの性格じゃあ、もうこの戦いにも飽きてる頃だ。格下相手だし、多少無理をしてでも決着をつけにくるハズだよ』
「ハズ……?」
『はず』
隼人の作戦はこうです。まず、いくつかの建物に爆弾を仕掛けておく。そして相手の前に姿を見せ、指定の場所まで誘導。タイミングを見計らってそれを起爆。四方で同時に爆発が起これば、必然的に退路は上に限られる。それを私が迎撃。相手がどんなに素早くとも、どこに来るのかわかっていれば命中させられる、という事です。
しかし、この作戦は全て予測に基づいたものに過ぎません。全て仮定で語られている以上、決して成功率の高い作戦ではありません。ですが――
『俺はお前を、俺の相棒を信じる。だからお前も、俺を信じろ。お前の相棒を。な?』
「隼人……はい、わかりました!」
私は信じました。隼人の作戦を、隼人の言葉を。だってそう、私達はパートナー、相棒なんですから。
そして彼女は、アルさんは見事にこちらの思惑に乗ってくれました。そうなればあとは私の役目。放ったのは『獣牙爆熱拳』。捉えたのは私の持つ、最強の必殺技。その一撃は彼女を機体もろともに打ち砕き、強烈に地表へと叩き付けました。
「がはっ……」
彼女の体は固いアスファルトに放射状の亀裂を刻み付けると、そのまま力を失い横たわりました。もとより機動性重視で、防御や耐久力は低いツガルタイプ。もう立ち上がることは出来ないようです。そして――
『K.O!Winner,Howling,RIN!』
コンピュータが試合終了のコールを鳴らします。そしてそのコールは同時に、私達、私と隼人の初勝利を告げるものでもありました。
「勝っ……た?私が……?本当に……」
『ぃぃぃいよっしゃあああああああ!!勝ったーーーーーーー!!!』
聴覚センサーが割れる程の歓声をあげる隼人。びっくりしました。ただでさえ信じられないことで驚いているのに、お陰で喜ぶタイミングを失ってしまったじゃないですか。
「わ、わーい」
一応喜びを表現しようとしてみたのですが。なんかもうダメっぽいですね。
『なーんだよ凛!もっと全身で喜びを表現しろって!ほーら、バンザー……おふぁ!?』
「!?」
な、なんですか、今の奇声は?
『うるさい!騒ぎすぎ!凛ちゃんがびっくりしてるでしょー!?』
えーと、この声はたしか、舞、さん?こちらからでは姿が見えないので、あまり外で盛り上がってもらっても困るんですが。
『だからって殴るこたぁねーだろ!?』
『うるさい!うるさいからうるさいって言ったの!』
『なんだと!?お前のがよっぽどうるせぇよ!!』
ああ、なんだか子供みたいなケンカが始まってしまいました。こんな時私はどうしたらいいんでしょう。戦闘中は夢中だったので特に気にしませんでしたが、素の応対にはまだ戸惑いがあるんですから。
「あ、あの、お二人共とにかく落ち着いて……」
『うるさいって言った方がうるさいんだよ!』
『なによそれ!バカなんじゃないの!?』
『バカ!?バカって言ったか、このバカは!?』
『誰がバカよ!?』
ああ、ダメそうです。聞いてません。完全無視です。もう、泣いてもいいですか?私。
「……信じらんない」
喧騒の中、天を仰いでいた彼女が、アルさんが小さく呟きました。
「このアタシが……負けた?アンタみたいな初心者に?」
「……」
信じられない、のは私も同様です。勝利の実感等、未だに沸いて来ないのですから。
「おかしいでしょ?せいぜい笑えばいいわよ」
「いえ、そんな事ありません。私なんかが勝てたのは隼人の、マスターのお陰なんですから」
「あんたのマスター?ソイツだって初バトルだったんでしょ?それとも、それだけアタシが情けないって言いたいワケ?」
「違います!ただ私は……隼人を信じる事が出来たから。隼人が、信じてくれたから」
「……?」
私自身、事態を受け入れきることは出来ていません。ですが、私なりに精一杯、彼女に応えなければなりません。私とのバトルに、全力で挑んでくれた彼女に。
「隼人が言ってくれたんです。俺も信じる、だからお前も信じろって。私は、それに応えたかったんです」
「……ハッ、なによそれ?信じるだの信じろだの……マスターとの信頼ってワケ?会ったばっかのマスターがそんなに好きなワケ?」
自然と顔が綻ぶのが自分でもわかりました。その質問だけは迷わずに、そして心から答える事が出来ます。
「はい!大好きですよ。だから私はがんばれたんです」
「……………よく恥ずかし気もなくそんなコト言えるわね。はぁ、なんかもう、どーでもいいわ」
あれ?もしかして呆れられてますか?彼女、アルさんは溜め息まじりに起き上がると、背中を向けたまま言葉を続けました。
「アンタ、バトルは続けるんでしょーね?」
「もちろんです!もっと強くなって、いろんな方と戦ってみたいんです!」
「……ふん、せいぜいがんばりなさいよ。…………また、ね」
それだけ言い残すと、彼女はさっさとフィールドから離脱してしまいました。『また』、一人の神姫として、そしていずれ戦う相手として、認めてもらえたという事でしょうか。
「はい。ありがとう、ございました!」
私は見えなくなった彼女の背中に一礼。心からの感謝を贈りました。
さて、神姫での決着は着いた。これで解決すべき問題は、あと一つ。
「おい、なんか言う事は?」
俺は半ば放心状態の残った『問題』に声を掛けた。このバトルに至ったそもそもの原因、彼にもそろそろご退場願おう。
「な、なんだよ!どうせこんなのマグレだ!」
「昔の人は言いました。『勝てば官軍』。さ~あ、なんか言うことは?」
「お……覚えてろよ!そのうち絶対リベンジしてやるからな!」
散々使い古された捨て台詞を残すと、騒ぎの元凶は慌てて走り去って行った。結局最後までオヤクソクを大事にするヤツだったな。名前すらわからないままだったのは気の毒だが。
「隼人。そ、その……ありが――」
「ったく、いつまでたっても手間がかかるヤツだな、お前は」
「な、なによ!人がせっかくお礼言ってんのに!」
わざわざ礼を言う必要なんてないのに、そんな改まった態度をとられると調子が狂ってしまう。だから俺はあくまでいつも通りに対応した。舞もいつも通りの憎まれ口を叩けるように。
「あの……」
「へーんだ、お前なんかに感謝されなくたっていいよー」
「なっ、調子にのるな!このバカ隼人!」
「んだと!?この泣き虫舞!」
「……あのー」
「誰が泣き虫よ!?私は泣いてなんかないわよ!」
「ウソつけ。さっきだってめそめそ泣いてたクセに」
「…………くすん」
「「あ」」
不意に聞こえた声に、俺達はようやく我に返る。はぐらかすだけのつもりが、つい白熱し過ぎてしまったようだ。舞と同時に視線を落とすと、そこにはいつの間にか凛が立ち尽くしていた。なかなか気付いてやらなかったせいか、凛は目尻に涙を溜めてすねているようだった。
「よ、よお、凛。お疲れ」
「えと、お、おかえり、凛ちゃん」
慌てて取り繕うが、どうしようもない程白々しい。凛はうるんだままの目で俺達を見上げると、哀しそうに抗議の声をあげる。
「二人とも、今私のこと忘れてませんでしたか?」
「「ま、まさか!」」
「…………ぐすっ」
「じょ、冗談だよ冗談!凛。よくやったな」
今にも泣き出しそうな凛。あやすようにその頭を指先で撫でてやると、恥ずかしいのか少し頬を赤らめながら目を細めた。
「ごめんね、私のせいで無茶させちゃって。ありがとう、凛ちゃん」
「いえ、そんなこ――」
「り、ん、ちゃーーーん!!」
「うわぁ!?」
舞の謝罪に応えようと口を開いた凛に、突然情熱的なタックルが浴びせられた。勢い余ってそのまま数回転した凛は、ようやく自分に抱きついたままの彼女に気が付く。
「あ、あなたは?」
「あたしヒカリ!舞の神姫だよ。それより凛ちゃん強いね!かっこよかったよー!」
「あ、ありがとうございます」
「ね、友達になろ!一緒に遊ぼーよ!あ!あたしともバトルしよ!」
凛のバトルを見て興奮しているのか、ヒカリは凛の肩を揺すりながら一方的に喋り続けている。勢いに呑まれた凛はしどろもどろに言葉を発しているが、完全にされるがままだった。
「こーら、ヒカリ。ちょっと落ち着きなさい」
「よかったな凛。早速友達出来て」
「はい!……あの、ヒカリ、さん?とりあえず離してくれませんか?」
「ヒカリさんじゃないの!ヒカリ!友達なんだからヒカリでいいのー!」
「だ、だからヒカリ!はーなーしーてー!」
すっかり気に入られたらしい。凛もまんざらでもないようで、これならお互いいい友達になれそうだ。二人を見つめていた舞も、俺の顔を覗きこむと嬉しそうに微笑んだ。
「よっぽど嬉しいのね。隼人が神姫買うって言ってから、ずーっと楽しみにしてたもん。近くに持ってる人もいなかったしね」
「ま、凛もなんだかんだで嬉しそうだし、よかったよかった」
「はーやーとー!助けてくださーい!」
「あはは、こんやはかえさないよー!」
やれやれ、なんだか賑やかになったものだ。こんな調子じゃあ、明日からも大変そうだ。
これからどんなオーナーと出会い、どんな神姫と戦うのか。きっと色んなヤツがいるのだろう。その全てが、俺は楽しみで仕方なかった。まだ目指す場所もわからないが、これから起こる全てを乗り越えて行こう。小さな相棒、武装神姫と。
「凛!これからよろしくな!」
「はい、隼人!こちらこそ!」
「おい、なんか言う事は?」
俺は半ば放心状態の残った『問題』に声を掛けた。このバトルに至ったそもそもの原因、彼にもそろそろご退場願おう。
「な、なんだよ!どうせこんなのマグレだ!」
「昔の人は言いました。『勝てば官軍』。さ~あ、なんか言うことは?」
「お……覚えてろよ!そのうち絶対リベンジしてやるからな!」
散々使い古された捨て台詞を残すと、騒ぎの元凶は慌てて走り去って行った。結局最後までオヤクソクを大事にするヤツだったな。名前すらわからないままだったのは気の毒だが。
「隼人。そ、その……ありが――」
「ったく、いつまでたっても手間がかかるヤツだな、お前は」
「な、なによ!人がせっかくお礼言ってんのに!」
わざわざ礼を言う必要なんてないのに、そんな改まった態度をとられると調子が狂ってしまう。だから俺はあくまでいつも通りに対応した。舞もいつも通りの憎まれ口を叩けるように。
「あの……」
「へーんだ、お前なんかに感謝されなくたっていいよー」
「なっ、調子にのるな!このバカ隼人!」
「んだと!?この泣き虫舞!」
「……あのー」
「誰が泣き虫よ!?私は泣いてなんかないわよ!」
「ウソつけ。さっきだってめそめそ泣いてたクセに」
「…………くすん」
「「あ」」
不意に聞こえた声に、俺達はようやく我に返る。はぐらかすだけのつもりが、つい白熱し過ぎてしまったようだ。舞と同時に視線を落とすと、そこにはいつの間にか凛が立ち尽くしていた。なかなか気付いてやらなかったせいか、凛は目尻に涙を溜めてすねているようだった。
「よ、よお、凛。お疲れ」
「えと、お、おかえり、凛ちゃん」
慌てて取り繕うが、どうしようもない程白々しい。凛はうるんだままの目で俺達を見上げると、哀しそうに抗議の声をあげる。
「二人とも、今私のこと忘れてませんでしたか?」
「「ま、まさか!」」
「…………ぐすっ」
「じょ、冗談だよ冗談!凛。よくやったな」
今にも泣き出しそうな凛。あやすようにその頭を指先で撫でてやると、恥ずかしいのか少し頬を赤らめながら目を細めた。
「ごめんね、私のせいで無茶させちゃって。ありがとう、凛ちゃん」
「いえ、そんなこ――」
「り、ん、ちゃーーーん!!」
「うわぁ!?」
舞の謝罪に応えようと口を開いた凛に、突然情熱的なタックルが浴びせられた。勢い余ってそのまま数回転した凛は、ようやく自分に抱きついたままの彼女に気が付く。
「あ、あなたは?」
「あたしヒカリ!舞の神姫だよ。それより凛ちゃん強いね!かっこよかったよー!」
「あ、ありがとうございます」
「ね、友達になろ!一緒に遊ぼーよ!あ!あたしともバトルしよ!」
凛のバトルを見て興奮しているのか、ヒカリは凛の肩を揺すりながら一方的に喋り続けている。勢いに呑まれた凛はしどろもどろに言葉を発しているが、完全にされるがままだった。
「こーら、ヒカリ。ちょっと落ち着きなさい」
「よかったな凛。早速友達出来て」
「はい!……あの、ヒカリ、さん?とりあえず離してくれませんか?」
「ヒカリさんじゃないの!ヒカリ!友達なんだからヒカリでいいのー!」
「だ、だからヒカリ!はーなーしーてー!」
すっかり気に入られたらしい。凛もまんざらでもないようで、これならお互いいい友達になれそうだ。二人を見つめていた舞も、俺の顔を覗きこむと嬉しそうに微笑んだ。
「よっぽど嬉しいのね。隼人が神姫買うって言ってから、ずーっと楽しみにしてたもん。近くに持ってる人もいなかったしね」
「ま、凛もなんだかんだで嬉しそうだし、よかったよかった」
「はーやーとー!助けてくださーい!」
「あはは、こんやはかえさないよー!」
やれやれ、なんだか賑やかになったものだ。こんな調子じゃあ、明日からも大変そうだ。
これからどんなオーナーと出会い、どんな神姫と戦うのか。きっと色んなヤツがいるのだろう。その全てが、俺は楽しみで仕方なかった。まだ目指す場所もわからないが、これから起こる全てを乗り越えて行こう。小さな相棒、武装神姫と。
「凛!これからよろしくな!」
「はい、隼人!こちらこそ!」
『武装神姫-PRINCESS BRAVE-』