「……ナギ、見つからなかったかな?」
『ええい、何をするのだ!!』
『ええい、何をするのだ!!』
そう言うとナギはポケットから身体を出し、ハヤテの眼前へ飛んだ。
『ハヤテのバカ! 乱暴に扱うとはどういうことだ!!
しかも息苦しかったぞ!』
「ご、ごめんナギ……でも、見つかりたくなかったから……」
『まったく、ハヤテは本当にまったく!』
しかも息苦しかったぞ!』
「ご、ごめんナギ……でも、見つかりたくなかったから……」
『まったく、ハヤテは本当にまったく!』
怒っているようだ、当然であるが。
「……でも、人が来ちゃったら教室じゃゆっくり話も出来ないね」
『……そうだな、私も人がいるところは好かん』
『……そうだな、私も人がいるところは好かん』
ナギは忘れられがちではあるが、人見知りという設定である。
「そうだ、学校を探索してみようか?
二人きりで話せるところがあれば、そこで時間まで話してようよ」
『ん、ん~……そうだな、それが一番暇を潰せそうだ』
「よし、それじゃあ……どこがいいかな」
二人きりで話せるところがあれば、そこで時間まで話してようよ」
『ん、ん~……そうだな、それが一番暇を潰せそうだ』
「よし、それじゃあ……どこがいいかな」
今日が登校初日であり、特に思いつく場所などない。
先程見取り図を見たとはいえ、鮮明に覚えているわけではないのである。
先程見取り図を見たとはいえ、鮮明に覚えているわけではないのである。
「……見取り図……見取り図?
そうだ、下駄箱の所に学校の見取り図が張ってあった、ひとまず戻ってみようか」
『そうだな、ではそうするといい』
そうだ、下駄箱の所に学校の見取り図が張ってあった、ひとまず戻ってみようか」
『そうだな、ではそうするといい』
ナギは興味なさそうに返す。
ナギらしいと思いつつも、ハヤテはその場所へ行こうと階段を降りる。
ナギらしいと思いつつも、ハヤテはその場所へ行こうと階段を降りる。
「ん」
そこで一人、少年が階段を上がってくるのが見えた。
制服は同じである、同級生だろうと分かった。
ハヤテはナギの方をチラと見ると、ナギはすでにポケットの奥へ首をひっこめていた。
制服は同じである、同級生だろうと分かった。
ハヤテはナギの方をチラと見ると、ナギはすでにポケットの奥へ首をひっこめていた。
「あ、あの」
「ん?」
「ん?」
すれ違い様、その少年が話しかけてきた。
風貌は青色の髪と眼をしている。
風貌は青色の髪と眼をしている。
「はい、何ですか?」
「えぇと……君もこの学校の生徒だよね」
「えぇと……君もこの学校の生徒だよね」
ハヤテはその問いに頷くと、少年は話を続けた。
「教室、僕1組なんだけど……こっちでいいんだよね」
「うん、教室なら向こうだよ、僕も1組なんだ」
「あぁ、ありがとうございます。
よかった、誰もいないから学校か日にちを間違えたかと思っちゃった」
「あはは……確かにね」
「うん、教室なら向こうだよ、僕も1組なんだ」
「あぁ、ありがとうございます。
よかった、誰もいないから学校か日にちを間違えたかと思っちゃった」
「あはは……確かにね」
学校に来て誰もいないと確かに不安にはなるであろう、
早く来ておいて何を言うのだということもあるが、ハヤテも先程同じ気分ではあった。
早く来ておいて何を言うのだということもあるが、ハヤテも先程同じ気分ではあった。
「そう言えば君はどうして階段を下りてるの?」
「それは、ちょっと学校の中を探索してみようと思って。
まだ時間たくさんあるし……」
「君は好奇心旺盛なんだね。
じゃあ僕はこれで、君も一組ならまた後で会うことになるね」
「そうだね、じゃあまた」
「またね」
「それは、ちょっと学校の中を探索してみようと思って。
まだ時間たくさんあるし……」
「君は好奇心旺盛なんだね。
じゃあ僕はこれで、君も一組ならまた後で会うことになるね」
「そうだね、じゃあまた」
「またね」
そう言いながら少年は頭を下げ、教室の方へ向かった。
「好奇心旺盛……ねぇ」
苦笑いしてそう呟きながら少年が見えなくなったのを確認し、ハヤテはナギの入ったポケットを軽く叩く。
するとナギは顔を出して……
するとナギは顔を出して……
『もう少し軽く叩けよ』
「ごめん、痛かった?」
『まったく……』
「ごめん、痛かった?」
『まったく……』
そんな会話を交わしながら、ハヤテは下駄箱に向かった。
「考えてみると、ナギに片付けさせてたら家の中が滅茶苦茶になってたような気がする……
密航してきてくれててよかったかも……」
密航してきてくれててよかったかも……」
ナギは料理同様、掃除も壊滅的に下手である。
『どぉいう意味だそれは!!』
「わあ、静かに!
こんな静かな朝の学校でナギが喋ったら、すぐにバレちゃうよ……」
『む……すまん。
……いやそもそも、さっきも私を隠すようにポケットに突っ込んだが……バレてまずいことがあるのか?』
「……う~ん。
僕が恥ずかしい?」
『恥じらうくらいならオタクなど止めてしまえ!』
「えええ、どうしてそうなる……っと、下駄箱だ」
「わあ、静かに!
こんな静かな朝の学校でナギが喋ったら、すぐにバレちゃうよ……」
『む……すまん。
……いやそもそも、さっきも私を隠すようにポケットに突っ込んだが……バレてまずいことがあるのか?』
「……う~ん。
僕が恥ずかしい?」
『恥じらうくらいならオタクなど止めてしまえ!』
「えええ、どうしてそうなる……っと、下駄箱だ」
話している間に着いたようだ、会話をしていると時間が経つのは早い……と言っても、下駄箱は階段を降りてすぐではあるのだが。
「さてと……ん?」
『どうしたハヤテ?』
「女の子がいる。
ナギ、隠れて」
『どうしたハヤテ?』
「女の子がいる。
ナギ、隠れて」
ナギはその言葉を聞き、ポケットの中へ隠れる。
それを確認するとハヤテは見取り図を確認しに向かう。
それを確認するとハヤテは見取り図を確認しに向かう。
「……」
どうやら少女は壁に貼ってあるクラス分け表を見ているようだ、察するに今登校してきたのだろう。
「……?」
少女は近づいてくるハヤテに気付くと会釈をする。
ハヤテはそれに対して会釈をすると、少女は再び壁に貼ってある紙を見た。
ハヤテはそれに対して会釈をすると、少女は再び壁に貼ってある紙を見た。
「……」
その少女の風貌は、長い緑の髪をして、帽子をかぶり、赤縁のメガネを掛けている。
眼鏡越しながら顔立ちは整っいると感じられる少女だった。
ハヤテが見取り図を見るために隣りに来てからも、かわらずに壁に貼ってあるクラス分け表をまじまじと見ている。
眼鏡越しながら顔立ちは整っいると感じられる少女だった。
ハヤテが見取り図を見るために隣りに来てからも、かわらずに壁に貼ってあるクラス分け表をまじまじと見ている。
「……ない」
そんな声が聞こえる。
しかしハヤテは自分には関係ないと思い、横の学校の見取り図を確認する。
が、しかし。
しかしハヤテは自分には関係ないと思い、横の学校の見取り図を確認する。
が、しかし。
「私の名前がない……」
「え?」
「え?」
その言葉でハヤテは驚き、思わず反応してしまった。
「名前がない?」
「……」
「……」
その少女はハヤテの方を少し見ると、口を開いた。
「……ええ。
このクラス別表、私の名前がないの」
「そ、それは……」
「……学校間違えたかしら」
「いやいや、そんなはずないと思うよ」
このクラス別表、私の名前がないの」
「そ、それは……」
「……学校間違えたかしら」
「いやいや、そんなはずないと思うよ」
こんな丘の上にある学校を間違えることは恐らくないだろう。
「名前は?」
「天陵高校」
「いや、学校じゃなくて君の」
「あぁ……そうよね」
「天陵高校」
「いや、学校じゃなくて君の」
「あぁ……そうよね」
少女は少しの間をおいて答えた。
「……緑川 」
「緑川さんね……」
「緑川さんね……」
それを聞いてハヤテも探す、確かに見つからない。
しかし端の方まで眼を動かしたとき、その文字は目に入った。
しかし端の方まで眼を動かしたとき、その文字は目に入った。
「あ、あったよ」
「嘘、どこに?」
「ここ、家政科のところ」
「嘘、どこに?」
「ここ、家政科のところ」
そこには緑川 芽衣と書かれていた。
他には緑川という名前は見つからないため、間違いはないだろうと思った。
他には緑川という名前は見つからないため、間違いはないだろうと思った。
「……家政科?」
彼女は少し考えるが、すぐにそれをやめたようにハヤテの方を見た。
「ああそっか、私家政科を受けたんだっけ……」
「え、忘れてたの?」
「……まあ、いろいろあってね」
「え、忘れてたの?」
「……まあ、いろいろあってね」
そう言うと芽衣は横目で見取り図を確認し、家政科の教室の方へ歩き出した。
「そうだ」
芽衣はそう言いながら振り向いてハヤテの方を見る。
「名前、探してくれてありがとう。
じゃあね」
じゃあね」
そう言うとまた元の方へ歩き出した。
芽衣が見えなくなり、周りにも誰もいないのを確認してから、ポケットを軽く叩いてナギへ合図を送る。
芽衣が見えなくなり、周りにも誰もいないのを確認してから、ポケットを軽く叩いてナギへ合図を送る。
『行ったか?』
制服のポケットから顔を出すナギに対し、無言でうなずく。
『それにしてもさっきの奴、随分忘れっぽいのだな』
「そうだね、よほど忙しいとかかな?」
『まさか、この学校にいるということは去年まで中学生だぞ?
そんなヤツが忙しいわけないだろう』
「まあ、確かに……」
『学校に関心がなさ過ぎて忘れてただけだな。
うむ、その気持ちは分かるぞ』
「そうだね、よほど忙しいとかかな?」
『まさか、この学校にいるということは去年まで中学生だぞ?
そんなヤツが忙しいわけないだろう』
「まあ、確かに……」
『学校に関心がなさ過ぎて忘れてただけだな。
うむ、その気持ちは分かるぞ』
そんなことはないんじゃないかな。
そう心の中で思いながら、ハヤテは見取り図を見た。
そう心の中で思いながら、ハヤテは見取り図を見た。
「……別にめぼしい部屋は無いね」
『まあ、普通の学校だからな。
丘の上にある以外は』
「丘の上に……」
『まあ、普通の学校だからな。
丘の上にある以外は』
「丘の上に……」
丘の上。
丘の上といえば景色、そして景色といえば……
丘の上といえば景色、そして景色といえば……
「そうだ、屋上とかはどうかな」
『え、入れるのか?
普段は上がってはいけないものだと思うが』
『え、入れるのか?
普段は上がってはいけないものだと思うが』
確かに、屋上を開放している学校は少ないものである、むしろほとんどないだろう。
「ちょっと、確認がてら行ってみようか」
『まあ私も興味があるし、行ってみる価値はあるかもな』
「それに入れなくても、5階からの景色でも充分に綺麗だと思うし。
入っちゃダメだったとしても、初日だし知りませんでした、でなんとか……」
『なんとかなればいいがな。
まぁいいさ、ハヤテが決めたなら私は止めはしない』
「ありがとう。
じゃあ、行こうか」
『まあ私も興味があるし、行ってみる価値はあるかもな』
「それに入れなくても、5階からの景色でも充分に綺麗だと思うし。
入っちゃダメだったとしても、初日だし知りませんでした、でなんとか……」
『なんとかなればいいがな。
まぁいいさ、ハヤテが決めたなら私は止めはしない』
「ありがとう。
じゃあ、行こうか」
「ここが5階、最上階だね」
『そして、まだ階段は続いているぞ』
「じゃあこの上が屋上だね。
それじゃ確認して……」
『そして、まだ階段は続いているぞ』
「じゃあこの上が屋上だね。
それじゃ確認して……」
ハヤテはゆっくりその階段を上る。
「あ、あいてる……」
通常どの学校も屋上というものは立ち入り禁止であるが、この高校は違うようだ。
その扉を開けると、そこには……
その扉を開けると、そこには……
「……あれ?」
「……」
「……」
景色を眺めている、紫の髪をした制服を着た背の小さな少女がいた。
髪は短いが、前髪は両目が隠れるくらいに長く、それが逆に彼女を印象付けた。
髪は短いが、前髪は両目が隠れるくらいに長く、それが逆に彼女を印象付けた。
『どうしたのだ?』
「誰かいるみたいだ」
「誰かいるみたいだ」
それを聞くと、ナギはポケットの奥へ身を隠した。
「……あの子も新入生なのかな?」
「……?
ぇ……ぁ」
「……?
ぇ……ぁ」
その少女はハヤテの方を向くと、怯えたように後ずさりをした。
「え?
……っと、おはよう?」
「は……い。
……お、おは……よぅ……
……ござい……」
「……えっと」
……っと、おはよう?」
「は……い。
……お、おは……よぅ……
……ござい……」
「……えっと」
その少女はかなり声が小さく、ハヤテにはその多くは聞き取れなかった。
「だ、大丈夫?
今にも卒倒しそうなんだけど、保健室行く?」
「……ゃ……」
今にも卒倒しそうなんだけど、保健室行く?」
「……ゃ……」
その少女は俯き、首を横に振った。
どうやら体調が悪いというわけでは無いようだ。
どうやら体調が悪いというわけでは無いようだ。
「あの……
もしかして、1人の時間をお邪魔しちゃった、とか?」
「……!!」
もしかして、1人の時間をお邪魔しちゃった、とか?」
「……!!」
その少女はハッとして、顔を真っ赤にしながら首を横に振る。
この様子からすると、図星のようだとハヤテは察した。
この様子からすると、図星のようだとハヤテは察した。
「そ、そう……君も新入生、だよね?」
「ん……」
「ん……」
彼女は無言で首を縦に振った。
「僕は1組なんだ、君は?」
「…………」
「…………」
彼女は顔を真っ赤にして俯き、無言で指を一本立てた。
要するに、自分も1組ですと言いたいようだ。
要するに、自分も1組ですと言いたいようだ。
「そっか、じゃあ長い付き合いになるのかな。
1年間よろしくね」
「…………」
1年間よろしくね」
「…………」
彼女は無言で首を縦に振った。
「……」
会話が続かない。
というより、返ってこない。
もちろん無理に会話を続ける必要もないと言えばなく、彼女からするとハヤテは邪魔者であり、
すぐに出て行った方がいいということはハヤテにとってもわかるのだが、
すぐに出ると彼女に対して失礼なのではないかという気持ちから、ハヤテはなかなか行動に移せなかったのである。
そしてハヤテは会話が得意というわけでもなく、気の利いた返しなどは思いつかなかった。
というより、返ってこない。
もちろん無理に会話を続ける必要もないと言えばなく、彼女からするとハヤテは邪魔者であり、
すぐに出て行った方がいいということはハヤテにとってもわかるのだが、
すぐに出ると彼女に対して失礼なのではないかという気持ちから、ハヤテはなかなか行動に移せなかったのである。
そしてハヤテは会話が得意というわけでもなく、気の利いた返しなどは思いつかなかった。
「…………」
「ん? 何か言った?」
「……け……き……」
「けき……?
あ、景色?」
「ん? 何か言った?」
「……け……き……」
「けき……?
あ、景色?」
少女はうなずく。
そう言えば、ナギと屋上の景色を見に来たんだったとハヤテは思い出す。
しかし、人のいる前でナギを出すわけにもいかなかった。
そう言えば、ナギと屋上の景色を見に来たんだったとハヤテは思い出す。
しかし、人のいる前でナギを出すわけにもいかなかった。
「……き……れい……
です……」
「あ……うん、綺麗だね」
です……」
「あ……うん、綺麗だね」
小高い山の上にそびえたつ学校から眺めるこの景色は、絶景という言葉がふさわしかった。
夜にでも来れば街の明かりと合わせて綺麗な夜景が一望できるだろう。
ナギにも見せたかったが、今は無理そうである。
夜にでも来れば街の明かりと合わせて綺麗な夜景が一望できるだろう。
ナギにも見せたかったが、今は無理そうである。
「さっきの話からすると、
君も暇つぶし……なのかな?」
「…………え……
あ…………
………………はい」
「……そ、そっか。
僕もなんだ、でも、お邪魔しちゃったみたいで……」
「…………」
君も暇つぶし……なのかな?」
「…………え……
あ…………
………………はい」
「……そ、そっか。
僕もなんだ、でも、お邪魔しちゃったみたいで……」
「…………」
彼女は首を横に振った。
「……だれかに…………
おしえ……たかった……です」
「え?」
おしえ……たかった……です」
「え?」
彼女が言うには、この景色を誰かと共有したかったらしい。
それをなんとなく汲み取ったハヤテは……
それをなんとなく汲み取ったハヤテは……
「そう、だよね、綺麗だもんね」
「…………」
「…………」
彼女は首を縦に振った。
「……」
「あ……の……
また…………」
「あ……の……
また…………」
そのとき、何のかはわからないがチャイムが鳴り響いた。
「……そろそろ時間かな?
君も1組なんだよね、一緒に戻ろうか」
「あ…………はい……」
君も1組なんだよね、一緒に戻ろうか」
「あ…………はい……」
彼女はうなずくと、入口の扉へ歩き出した。
ハヤテも横に並んで階段を降りる。
ハヤテも横に並んで階段を降りる。
「あの……」
「ん、なに?」
「……おなまえ……」
「え? 名前?
鷹峰、鷹峰ハヤテだよ」
「……たかみね、くん……」
「君の名前は?」
「……」
「ん、なに?」
「……おなまえ……」
「え? 名前?
鷹峰、鷹峰ハヤテだよ」
「……たかみね、くん……」
「君の名前は?」
「……」
彼女は何も言わず、携帯電話を取り出して何かを打ち込み始めた。
「……」
打ち終えると、その画面をハヤテに見せる。
そこには、影森 真宵と書かれていた。
そこには、影森 真宵と書かれていた。
「……これ、名前?」
「……」
「……」
彼女は静かにうなずく。
「ええと……読みは、『かげもり』?
下の名前は『まよい』かな?」
「……」
下の名前は『まよい』かな?」
「……」
彼女はうなずいた、読みはそれであっているらしい。
「そっか、それじゃあよろしくね影森さん」
「……」
「……」
真宵は前を向いたままうなずく。
相当無口な子なようだ、とハヤテは思った。
相当無口な子なようだ、とハヤテは思った。
二人は教室に戻ると、教室の中は人であふれていた。
おそらくもうほとんどの者が登校しているのだろう。
時計を見ると、8時30分だった。
おそらくもうほとんどの者が登校しているのだろう。
時計を見ると、8時30分だった。
「時間、ちょうどよかったね」
「……です。
……あの、また……」
「うん、また。
といっても、同じクラスだけどね」
「…………
……です……」
「……です。
……あの、また……」
「うん、また。
といっても、同じクラスだけどね」
「…………
……です……」
彼女は軽く会釈をし、1組の人ごみに紛れていった。
もちろん教室には1組の人数分程度しか入っていないので、見えなくなるということはないが。
もちろん教室には1組の人数分程度しか入っていないので、見えなくなるということはないが。
「さて、と……」
ハヤテはバッグを置いておいた机に戻る。
そして誰にも気付かれないように、ナギをこっそりとバッグの中へ戻したのだった。
そして誰にも気付かれないように、ナギをこっそりとバッグの中へ戻したのだった。
「ゴメンねナギ、あんまり話せなかったね」
『……ま、いいさ、暇は潰せたよ』
「……入学式終わるまで待っててね」
『……ま、いいさ、暇は潰せたよ』
「……入学式終わるまで待っててね」
ナギは頷いて、了承したことを示す。
ハヤテはそれを確認すると、バッグを閉めた。
そして顔を上げると、教卓の方にはさっきまではいなかった、メガネをかけスーツを着た女性がいた。
制服の少年少女ばかりいる中でかなり浮いている、おそらくこの人が先生であろう。
ハヤテはそれを確認すると、バッグを閉めた。
そして顔を上げると、教卓の方にはさっきまではいなかった、メガネをかけスーツを着た女性がいた。
制服の少年少女ばかりいる中でかなり浮いている、おそらくこの人が先生であろう。
「はい、注目」
その先生らしき人の一言で、教室は沈黙に包まれた。
「一組のみなさん、これが座席表です」
先生(仮)は黒板に座席表を張り出し始めた。
「それじゃあ、この通りに座ること、できるだけ早く」
それを言うと先生は教室の入り口に移動した。
黒板の前は人でごった返している。
黒板の前は人でごった返している。
「僕の席は……えっと」
背伸びをして座席表を確認する。
すると偶然にも、バッグを置いた席がハヤテの席であるということが分かった。
すると偶然にも、バッグを置いた席がハヤテの席であるということが分かった。
「ラッキー」
ハヤテは席に座って待っていると、少しづつ黒板前から人は減っていき、
全員が着席すると、先生は教卓に出た。
全員が着席すると、先生は教卓に出た。
「物分かりのいい生徒達でよろしい。
それじゃあ、私の自己紹介をするわね」
それじゃあ、私の自己紹介をするわね」
黒板に名前を書き始めた。
「このクラスを担当します、久遠 雅美 よ。
一年間よろしく」
一年間よろしく」
見た目はメガネをかけた知的な感じの女性である。
優しそうではあるため、一先ずハヤテは安堵した。
優しそうではあるため、一先ずハヤテは安堵した。
「さてわかってると思うけれど、あなた達はこの後第一体育館に行って入学式。
それが終わったら戻ってきて一人一人自己紹介、それで教材を受け取ったあと、帰りの会で今日はおしまい」
それが終わったら戻ってきて一人一人自己紹介、それで教材を受け取ったあと、帰りの会で今日はおしまい」
大体、どの学校も初日は同じ流れであろう。
「それじゃあみんな廊下に出て、速やかに移動するように」
そう言うと先生は廊下に出た。
生徒達もそれを追って廊下に並ぶ。
生徒達もそれを追って廊下に並ぶ。
「皆揃ったわね、それじゃ行くわよ」
生徒全員は整列し、先生に先導されながら入学式会場である体育館に向かった。