戦うことを忘れた武装神姫 その6
・・・Dr.CTa。久遠とは大学の同期であり、両人とも腐れ縁を認めている。
Dr.と付くだけあって、所属する会社に於いてはそれなりの地位にあり、特にロボット工学では相当の研究成果を出してはいる才女・・・なのだが、その実は「腐女子」だと陰で囁かれている。
Dr.と付くだけあって、所属する会社に於いてはそれなりの地位にあり、特にロボット工学では相当の研究成果を出してはいる才女・・・なのだが、その実は「腐女子」だと陰で囁かれている。
そんな彼女の手元には、サイフォス型の「ヴェルナ」と紅緒型の「沙羅」の、2体の神姫が住み着いている。しかしこの2体、顔が・・・明らかに通常のタイプと違う。
「雨、降ってきたっすね・・・。」
デスクで打ち出されたデータとにらめっこするCTaの脇で、コーヒーの缶に腰掛けた沙羅が、窓の外を見ながら呟いた。
「うむ。確か今朝の予報では、降水確率は70%だったな。」
ちらりと目を窓に向け、再びデータの山に向かうCTa・・・と、彼女の袖をヴェルナが引っ張っていた。
「マスター、そろそろ休憩の時間です。お茶菓子を用意しました。」
「おぉ、ありがと。」
ヴェルナから茶菓子のあんまんを受け取ると、ちぎって沙羅とヴェルナにも分け与えた。
「雨、降ってきたっすね・・・。」
デスクで打ち出されたデータとにらめっこするCTaの脇で、コーヒーの缶に腰掛けた沙羅が、窓の外を見ながら呟いた。
「うむ。確か今朝の予報では、降水確率は70%だったな。」
ちらりと目を窓に向け、再びデータの山に向かうCTa・・・と、彼女の袖をヴェルナが引っ張っていた。
「マスター、そろそろ休憩の時間です。お茶菓子を用意しました。」
「おぉ、ありがと。」
ヴェルナから茶菓子のあんまんを受け取ると、ちぎって沙羅とヴェルナにも分け与えた。
CTaが勤務するのは、通称「ちっちゃいもの研」。体内マイクロマシンなど超小型機器の研究施設である。仕事上のつながり・・・というより腐れ縁の立場を利用されてか、久遠の神姫のメンテナンスもCTaは受け持っている。
顔見知りなのでタダではあるが、その代わり自らの研究材料としての利用もしている。そのひとつが、久遠の神姫にも搭載されている「食事」機能。
「あっちー!!」
渡されたあんまんにすぐかじりつき、餡の熱さに思わず声をあげた沙羅。
「これこれ沙羅、餡は熱いんだから。十分冷ましてからにせぇよ。」
と言いながら、CTaも餡を冷ましている。
「ところでマスター、今日は夕刻より久遠様と会議なのでは?」
一足先に食べ終えたヴェルナは、PDAを操作して予定表を確認していた。 そこには、「久遠・緊急用件@居酒屋・時刻1830」の文字が。
「あっ! 忘れてたっ!! いっけねぇ、何も用意してないぞっ!!」
あんまんを押し込むように食べ、むせ返るCTa。
「マスター・・・。」
その手元からは、沙羅とヴェルナの寒い視線がCTaに向けられていた。
顔見知りなのでタダではあるが、その代わり自らの研究材料としての利用もしている。そのひとつが、久遠の神姫にも搭載されている「食事」機能。
「あっちー!!」
渡されたあんまんにすぐかじりつき、餡の熱さに思わず声をあげた沙羅。
「これこれ沙羅、餡は熱いんだから。十分冷ましてからにせぇよ。」
と言いながら、CTaも餡を冷ましている。
「ところでマスター、今日は夕刻より久遠様と会議なのでは?」
一足先に食べ終えたヴェルナは、PDAを操作して予定表を確認していた。 そこには、「久遠・緊急用件@居酒屋・時刻1830」の文字が。
「あっ! 忘れてたっ!! いっけねぇ、何も用意してないぞっ!!」
あんまんを押し込むように食べ、むせ返るCTa。
「マスター・・・。」
その手元からは、沙羅とヴェルナの寒い視線がCTaに向けられていた。
沙羅とヴェルナは、いわゆる「捨てられた」神姫だった。
とある雨の日、久遠がシンメイを連れて買い物に出た帰り道だった。近道でもある河川敷を歩いていた際に、シンメイが消え入りそうな神姫のSOSシグナルを受信、周囲を捜索するとコアユニット、すなわち頭部が無惨にも破壊された
神姫を2体発見する。 それが、沙羅とヴェルナだった。
とても自らの手では修理できないと判断した久遠は、CTaに修復を依頼。コアユニットの修復はCTaも初めてであったようだが、他機種のガワを上手いこと流用し、数日後には見事に美しく修復させた。
当初、久遠が2体とも引き受ける予定であったのだが、情が移ってしまったのであろうか、CTaが自らのサポート用として、引き取ったのである。
とある雨の日、久遠がシンメイを連れて買い物に出た帰り道だった。近道でもある河川敷を歩いていた際に、シンメイが消え入りそうな神姫のSOSシグナルを受信、周囲を捜索するとコアユニット、すなわち頭部が無惨にも破壊された
神姫を2体発見する。 それが、沙羅とヴェルナだった。
とても自らの手では修理できないと判断した久遠は、CTaに修復を依頼。コアユニットの修復はCTaも初めてであったようだが、他機種のガワを上手いこと流用し、数日後には見事に美しく修復させた。
当初、久遠が2体とも引き受ける予定であったのだが、情が移ってしまったのであろうか、CTaが自らのサポート用として、引き取ったのである。
「ふぇ・・・へぶしっ! 冷たいっ雨すねぇ。。。」
「おっと、ごめんよ。沙羅は雨が苦手だったよね。」
雨の中、待ち合わせの居酒屋へ急ぐCTaは、肩に乗せていた沙羅に小さな傘を持たせた。と、CTaの持つ鞄から、合羽を着込んだヴェルナが顔を出した。
「待ち合わせ時刻まで、残り6分と30秒です。間に合いますか?」
「だーっ!わかっとるわぃ!だからこうして急いでいるんじゃないかっ!」
「あ、マスター・・・あと20m先なんですが、私の計算ですと・・・」
「うん? なに?」
「工事に伴う歩道上の段差で、おそらく蹴躓い・・・」
「おっと、ごめんよ。沙羅は雨が苦手だったよね。」
雨の中、待ち合わせの居酒屋へ急ぐCTaは、肩に乗せていた沙羅に小さな傘を持たせた。と、CTaの持つ鞄から、合羽を着込んだヴェルナが顔を出した。
「待ち合わせ時刻まで、残り6分と30秒です。間に合いますか?」
「だーっ!わかっとるわぃ!だからこうして急いでいるんじゃないかっ!」
「あ、マスター・・・あと20m先なんですが、私の計算ですと・・・」
「うん? なに?」
「工事に伴う歩道上の段差で、おそらく蹴躓い・・・」
どんがらがっちゃ。 ばしゃ、べっちゃり。
ヴェルナの方を振り向いた瞬間。見事、ヴェルナの予測通りの段差に蹴躓き、資材置き場にダイブするCTa。そして水のたまったブルーシートの上へ沈む。
「い、いてて・・・ ヴェルナっ!そういう事はもっと早く言うことっ!」
「も、申し訳ありません!」
鞄から転がり落ちて、ヴェルナは水たまりに填っている。
「ん、んん? あっ!沙羅っ!!」
体を起こしたCTaは、肩に乗せていた沙羅がどこかへ飛んでいったことに気がついた。ずぶ濡れのまま、あたりを見回すと・・・
「・・・。」
目の前には、気の毒な表情を作ろうとしているものの笑いをこらえているのが一目でわかる、なんとも変な顔付きをした久遠が立っていた。そして彼の左手には、目を回した沙羅が。
「何やっているんだ? いきなり沙羅は飛んでくるし。何かしでかして思わず
投げ飛ばしたんじゃないかと思ったぞ。」
「うるさい。滑って転んだだけだ。」
むくれっ面で、ヴェルナと鞄を拾い上げるCTa。
「いえ、私の不注ぃ・・・むぐっ!」
と、CTaの手の中でヴェルナが何か言いかけたが、CTaは遮るようにヴェルナの口を塞いだ。
「沙羅じゃないけど、あたしも雨は苦手でね。目も悪いしぃ。」
「でも、私が・・・」
と、何か言いたそうなヴェルナを黙らせるかのように、どこからか取り出したタオルに包み込む。
「いんだよ。さぁ、沙羅もいつまでも目ぇ廻してないで。」
そう言いながら久遠から沙羅を受け取ると、ヴェルナを入れたタオルに併せて放り込むと、ちょっと乱暴に、がしがしと拭きあげる。そして。。。
「お前、風邪ひくぞ。」
その脇では、CTaに拾い上げた傘をずっとさし続ける久遠。
「何だよ。別にそこでつっ立っていなくて・・・ひっくしょん!」
振り返った瞬間、CTaは久遠にくしゃみをぶっかけてしまう。
「あ・・・ごめん・・・。」
「・・・。とりあえずこいつらは俺が拭いておくから。お前はそこの中武で服買ってこいや。」
久遠はひったくるようにヴェルナと沙羅の入ったタオルをCTaの手から取ると、代わりに傘を差しだした。
「くっそぉ、こんな事でポイント稼がれるとは・・・。」
ブツブツ言いながらも素直に中武へと消えるCTa。
「全く、素直じゃないんだから。」
ため息混じりにその後ろ姿を追う久遠。
「い、いてて・・・ ヴェルナっ!そういう事はもっと早く言うことっ!」
「も、申し訳ありません!」
鞄から転がり落ちて、ヴェルナは水たまりに填っている。
「ん、んん? あっ!沙羅っ!!」
体を起こしたCTaは、肩に乗せていた沙羅がどこかへ飛んでいったことに気がついた。ずぶ濡れのまま、あたりを見回すと・・・
「・・・。」
目の前には、気の毒な表情を作ろうとしているものの笑いをこらえているのが一目でわかる、なんとも変な顔付きをした久遠が立っていた。そして彼の左手には、目を回した沙羅が。
「何やっているんだ? いきなり沙羅は飛んでくるし。何かしでかして思わず
投げ飛ばしたんじゃないかと思ったぞ。」
「うるさい。滑って転んだだけだ。」
むくれっ面で、ヴェルナと鞄を拾い上げるCTa。
「いえ、私の不注ぃ・・・むぐっ!」
と、CTaの手の中でヴェルナが何か言いかけたが、CTaは遮るようにヴェルナの口を塞いだ。
「沙羅じゃないけど、あたしも雨は苦手でね。目も悪いしぃ。」
「でも、私が・・・」
と、何か言いたそうなヴェルナを黙らせるかのように、どこからか取り出したタオルに包み込む。
「いんだよ。さぁ、沙羅もいつまでも目ぇ廻してないで。」
そう言いながら久遠から沙羅を受け取ると、ヴェルナを入れたタオルに併せて放り込むと、ちょっと乱暴に、がしがしと拭きあげる。そして。。。
「お前、風邪ひくぞ。」
その脇では、CTaに拾い上げた傘をずっとさし続ける久遠。
「何だよ。別にそこでつっ立っていなくて・・・ひっくしょん!」
振り返った瞬間、CTaは久遠にくしゃみをぶっかけてしまう。
「あ・・・ごめん・・・。」
「・・・。とりあえずこいつらは俺が拭いておくから。お前はそこの中武で服買ってこいや。」
久遠はひったくるようにヴェルナと沙羅の入ったタオルをCTaの手から取ると、代わりに傘を差しだした。
「くっそぉ、こんな事でポイント稼がれるとは・・・。」
ブツブツ言いながらも素直に中武へと消えるCTa。
「全く、素直じゃないんだから。」
ため息混じりにその後ろ姿を追う久遠。
彼の手元では、沙羅とヴェルナがタオルの隙間から顔を出し、ぼそっとため息混じりに呟いていた。
「あーあ、ダメっすねー。 素直じゃないのも、朴念仁なのも・・・」
「お互い様、ですねぇ。これじゃ苦労しますよ、久遠様の4人も・・・。」
そして顔を見合わせて、
『はぁ・・・。』
大きくため息の二人。
「あーあ、ダメっすねー。 素直じゃないのも、朴念仁なのも・・・」
「お互い様、ですねぇ。これじゃ苦労しますよ、久遠様の4人も・・・。」
そして顔を見合わせて、
『はぁ・・・。』
大きくため息の二人。
マスターの将来までをも心配する、お節介な神姫がいる。
そう、ここに居るのは、戦うことを忘れた武装神姫。。。
そう、ここに居るのは、戦うことを忘れた武装神姫。。。
・・・>その7へ続くっ!!>・・・