武装神姫SSまとめ@wiki内検索 / 「妄想神姫:第三十三章(中編)」で検索した結果
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妄想神姫:第三十三章(中編)
約束されし、王妃の宝剣(中編) 力を“受け流す”という策を用い、見事“隻腕”の一撃を逃れたアルマ。 だが、この一瞬生き延びただけではいかん。見事反撃を加えて、勝たねば 真に彼女を乗り越えたと言えない。現に腰のエルテリアは、まだ動かぬ。 魔剣もまた、アルマの真髄を見極めようとしている所なのだろう。有無。 「なかなか考えたな……だが、それだけで勝てると思うかッ!」 「ッ……!?そこっ、く……そうですね、守勢に回っていては負けます」 「それに、完全にノーダメージという訳でもない様だ……ならば!」 「なっ……ふっ。せあっ!れ、連撃?!……くっ!」 「推して参るのみ。どこまで耐えきれるか!」 ぱっと見では防戦一方のアルマ。前の様な致命傷は一つも喰らわない。 だが、僅かずつながら拳の衝撃がレーラズ等の装甲を抜けて、アルマに 疲労を与え始めている。このままでは、... -
妄想神姫
妄想神姫:メインメニュー 注意 本作品は“突飛な設定”の類を多分に含有しております。 意図的に行っているので、その手の要素を苦手とする方は 閲覧に細心の注意を払って下さいます様、お願いします。 あらすじ 登場人物紹介 本編 外伝 後日談 各種解説 おまけ 協力・引用 あらすじ アキバの隅にMMSショップを構える幼女店長、槇野晶。 彼女の側には“妹”と言うべき、三人の武装神姫がいた。 長女“アルマ”と、次女“ロッテ”に、三女“クララ”。 これは、そんな姉妹のマッドで百合気味な日常とバトル、 更に武装神姫を逸脱気味なメカを、妄想のみで綴るお話。 登場人物紹介 登場人物MMSショップ“ALChemist” ライバルの神姫達 黄昏よりの使者+α(ネタバレ有り) 本編 序章 「苛烈なる少女?と、目覚めし神の姫」 第一章 「晴れた日には、2... -
妄想神姫:第五十三章(中編)
樹海の如く、業の深き竜(中編) “博士”とシレイが呼んだオーナーはその名にふさわしく、白衣と眼鏡を 身につけた青年だった……少々浮いているが、アキバでそんな人間は凡そ 珍しい物ではない。好意的に無視してやる。で、問題はクララ達の方だ。 「ち、小手先の業が効かねぇ……力押しだ!“レイキ”、“ホオウ”!」 「……レインディアバスターをアーマーに直して、支援メカが変形?」 『大型のぷちマスィーンズとも言うべき連中だろう、気を付けろ!』 “リュウ”と呼ばれていたビット入りのコンテナが変形して、着陸用の スキッドと隠し腕で四肢を形成する。同時に首と尾が展開して、一匹の “亀”が姿を現した。一方の“キリン”と呼ばれたトナカイもどきは、 四肢を折り畳み、その上で首・尾と翼を展開させ“鳳凰”の姿になる。 そしてそれらを率いるシレイは、ツガル型本来のアーマー姿に変じた... -
妄想神姫:第三十三章(前編)
約束されし、王妃の宝剣(前編) いよいよその日がやってきた。覚悟を決めたアルマが、前回敗北を喫した 兎型の軍神・“隻腕の”ティールに申し込んだ指名再戦。その受理通知が 私のPHSに届いたのだ。これを乗り越えねば、アルマのセカンド入りは 恐らく成し得ないだろうな。私・槇野晶は、深夜彼女にこの旨を伝えた。 “ヨルムンガルド”での剣術練習をしていたアルマの面も、引き締まる。 「ついに明日、ですか……マイスター。兼ねてのお願い通り、明日は!」 「有無。シルフィードに“レーラズ”と幾多の剣、か……良いのだな?」 「ええ……それこそが、あたしが今為すべき戦いなんだと思いますから」 「一応アルマのオーダー通りに剣を改良し、“マビノギオン”もあるが」 「“マビノギオン・アサルト”ですね?……これで、準備は万端ですっ」 そう言って私は、改良が終わったばかりの“ヨルムン... -
妄想神姫:第四十章(中編)
蒼天にて、星を描きし者(中編) 会話によって、敵神姫……狛恵さんの砲撃は、一旦止みました。ここから わたしは反撃を開始しましたの!腰のジャマダハル・ライナストを抜き、 片膝立ちのポーズで構えて……じっくり狙いを、定めますの。そしてっ! 「“放て”、ライナストッ!」 「うぁっ!?ぷ、プラズマライフル……まさか、あのサイズで!?」 「ただの剣だと思っちゃいけませんのッ、フィオナ!」 『Yes,sir(了解しました)』 わたしの剣から放たれた雷撃は、手にあった銃器を吹き飛ばしましたの。 その隙にフィオナはUFOの様な姿から、銃を持つ騎士の姿になります。 この銃は、“ジェスター・フィギュア”の背部ブースターが変形した物。 あくまでも“アルファル”は、己の躯のみで神姫を助ける存在ですのッ! 「さぁ、撃ち合いといきましょう。お互い全力ですの、ね?」 「... -
妄想神姫:第十五章(中編)
暗き過去に、深き眠りを(中編) ポリゴンが寄せ集まり現出した戦いの舞台は、薄暗い鍾乳洞であった。 床面には水が張られ、一部は深くなっている。第五弾への配慮だろう。 従って今後は、水中戦闘を考慮した位置取りも重要となってくる訳だ。 そんな分析を始めていると、程なくバトルフィールドに双方が現れた。 既に戦闘を開始している様であり、銃撃音と金属音が交互に聞こえる。 銃を手にした兵士と、双振りの“ウィング”を手にしたアルマだった。 「……どうして、あんな人の為にまだ尽くすんですかッ!!」 「小官は、あの人の元に産まれその為に尽くすのが定めです」 「そんなの定めなんかじゃないです!……貴方の、意思をッ」 「問答は無用です、小官を倒したら……聞いてみましょうか」 相手である“かまきりん”は、フォートブラッグの先行発売品を 多数寄せ集め、魔改造を施した様な感じの... -
妄想神姫:第二十五章(中編)
舞い踊る、白鳥の乙女達(中編) 一見すると、それはミサイルにしがみついた鳥というフォルムであった。 白鳥の“スヴェン”と隼型の“ファルケン”、百舌鳥型・“ビルガー”。 これが“Valkyrja”進化の最終形として私が考えついた、追加武装だッ! 三羽の鳥はレーザーで“天使達”を威嚇しつつ、各々の主へと寄り添う。 「“SSS”着装!“Valkyrja・Skjald-maer・Phase”へっ!!」 『な、何?晶ちゃんのお手製かな?……い、一度下がってっ』 「う、うんっ!何アレっ?!」 次の瞬間“SSS”は分解されて、姿を現したばかりの“Valkyrja”に 接続。伝承に伝わる“白鳥の乙女”をイメージした姿へと変貌させる。 その手には、棺桶風コンテナミサイルランチャーと剣、そして……槍。 音叉の様な形状の槍、と言えば神姫に詳しい諸兄には察しも付こうな。 ... -
妄想神姫:第四十二章(中編)
翠の月を越え、天翔る者(中編) アルサスの光刃・角……そして電撃“スプライト・ボルト”のコンボと、 ボクの一撃によって、リュミエールさんは大理石の床に叩き付けられる。 鎧の所々にクラックが入り、ダメージ量が少なくない事を物語るんだよ。 でも……相手は秋葉原・サードリーグ数千名の首座に在る神姫。まだまだ 仕留めるに至らないもん。案の定、彼女はゆっくり身を起こしたんだよ。 「く……非力とは言いつつも、タイミングは的確……なかなかですね」 「ボクが貴女の様な神姫に勝つならば、真正面以外からも攻めないとね」 「なら……回り込む隙も与えない程に、攻め立てればいいのです!」 「え──────?」 そして彼女が吼えた時、壊れ掛かっていた鎧は弾け飛び……羽が舞う。 その一瞬で姿を見失ったボクは、低空・真正面から突撃してくる彼女に 対応しきれず、コライセルの斥力場を... -
妄想神姫:第五十一章(中編)
猛り狂いし、地を灼く竜(中編) このガルラという娘。セイレーン型をベースとしていながら、機動性能は さほどでもない……というより、ピーキーな調整となっている様だった。 何故か?パッと見飛べないアルマの先手を取るならば、上空に舞い上がり 彼女の攻撃を回避しようと努める筈だ。だが、浮遊こそすれ飛び上がらぬ その飛行能力は……恐らく、大剣を活かした突進の為に用いる物なのだ。 読み通り彼女は騎乗するアルマの高さまで浮かび……一直線に突撃した! 「では、行きます……その愚鈍なトカゲで何処まで耐えられますか!」 「ッ!?は、速いッ!きゃうっ!?……っと!」 「……と言いつつ、その小さな盾で凌ぐとは。侮れませんわね」 「痛……作ってくれたマイスターの、御陰です!せぁぁぁっ!!」 「くっ、この槍も……鋭い!?いえ、これは貴女自身の……!」 だがアルマの反射とて生半... -
妄想神姫:第三十三章(後編)
約束されし、王妃の宝剣(後編) “舞剣”エルテリアを抜き放つ事に成功したアルマ。まるで産まれた時に 持っていたが如き軽妙な剣捌きを持って、静かにティールを待ち受ける。 対するティールは、今までと全く違うアルマの“明鏡止水”が如き気迫を 受け、飛び込む機を狙っていた……だが先に動いたのは、アルマだった! 「行きます……はぁぁっ!!」 「ぬぁ、っ!!速い……斬撃の重さも鋭さも、今までとは違う!?」 「もう一撃……せやっ!!」 「くそっ!……そこを動くなぁぁっ!!」 一振り、双斬り、三流れ。紅き星が空に飛び散る様な、鋭い刃が着実に ティールの装甲を斬り飛ばし、抉っていく!実剣としてのマテリアルや 異能による強度。それ自体が、アルマのセンスと合致して強大な威力を 発揮しているのだ。だが、これが魔剣の“真の力”とは私には思えぬ。 アルマは、わざわざリクエス... -
妄想神姫:第五十二章(中編)
天より降りし、白霜の竜(中編) ロッテが得ていた位置的アドバンテージは、対戦神姫・ハニエルの曲芸で あっという間にひっくり返された。相手火器のロックオンは、私の方でも 感知する所となる。多分使われるのは、機首のレーザーキャノンだろう。 直線的な攻撃しか出来ぬと言って侮れば、一巻の終わりともなりかねん! 「じゃあ見せてください。早くしないとアタシ、待ち切れませんよ?」 「今見せますの、この娘……ウィブリオが竜である事を!ねっ?」 『キュィィ……キュイッ!!』 「ッ!?そんな、いきなり反転……ッ!?」 だが、ハニエルとやらは若干堅い思考を拭えなかったらしいな。何故、 竜という空想の生物をモチーフとしたか。それは、士気高揚など様々な 意図を含んでいるが、その一つには『常識に囚われない戦法』がある。 “変幻自在”と言っても、常識や生半可な経験で推し量れる程... -
妄想神姫:第十六章(中編)
叡智を刃に、想いを力に(中編) 目測0.24ミリのワイヤーで作られた檻。その中にクララが封じられた。 藻掻けば、防御力に富む“Heiliges Kleid”といえどズタズタだろう。 だが、クララは自らの腕から引き抜いたダガーを軽く構え……投げる。 その軌道は、一見するとアラクネーとは完全に違う方向を狙っていた。 「……そなた、ハウリンタイプの癖に体力や汎用性もないのか?」 「そうだよ。ボクは同型の姉妹と比べても貧弱……だけどッ!」 「なっ……!?く、ぅうあああぁっっ!?」 だがその直後に、檻の監守・アラクネーは閃光で目を塞ぐ格好となった! 同時に鋼の糸で作られた“蜘蛛の巣”を覆う形で紫電が奔り、銀糸を壁に 固定していたアンカーボルトが、壁を破壊する形で次々と抜けていくッ! 莫大な電力が流されて、ワイヤー全体が必要以上の破壊力を持ったのだ。 そして糸... -
妄想神姫:第四十六章(中編)
雷帝の御剣、神殺しの槍(中編) それはアルマにとっても、私にとっても予期していなかった奇襲。ミラの 籠手はこの為にあったのだ。即ち、蛇腹部から伸展させての遠距離打撃。 見ればミラの脚部装甲はパイルバンカーになっており、腕の反動を完全に 受け止める土台を作っている。それを確認してか、籠手が更に変形した。 神姫の細腕より一回り大きかった掌はさらに巨大化し、巨大な拳となる! 「さぁ、思いっきり叩きのめしてあげるわ!私は“力”の象徴よッ!!」 「ち、力?……きゃぁああっ!?」 『アルマッ!?』 壁に投げつけられたアルマは、すんでの所で翼をはためかせて制止した。 だが、ミラの剛腕は凄まじく躯の各所にも影響が残っている……拙いな。 ミラの方は止める筈もなく、伸びた腕を縦横無尽に振り回して薙ぎ払う! 「いたたた……これ、リーチが長いのにストラーフよりも柔軟... -
妄想神姫:第四十一章(中編)
紅き星の下、月を臨む者(中編) 海中に潜ったティテュスさんの姿は見えないまま、相変わらずミサイルが 驟雨の如く降り注ぎます。海上基地の床は爆風で徐々に破壊されていき、 あたし達が避ける空間もそれに伴って狭まっていきます……不利でした。 「おお~っほっほっほっほ!そのままスクラップにしてあげますわ!!」 「……そんな事。あたしのちっぽけな誇りでも、許しませんッ!」 『No problem(その意図は叶えられます)』 「モリアン……有り難うございます、行きましょうッ!」 『アルマよ!水中では剣のみが頼りだ、気を抜くなよッ!』 マイスターの助言に肯いて、あたしとモリアンは海上に飛び出します。 そのまま疑似重力に沿って堕ちて、その間に“レーラズ”のスカートが 窄まる様に変形します。同時に腰には“ヨルムンガルド”が装着され、 それと同時に、あたし達……ううん... -
妄想神姫:第五十七章(中編)
光の刃と、真心の白き翼(中編) それは一瞬の隙だった。乱戦の中で組み付いた飛竜・ウィブリオが、その “吐息”を解き放ったのだ。それは、液体窒素を詰め込んだ砲弾である! ロッテはその余波を騎士・フィオナの変じたシールドで防ぎつつ、氷塊に 雷の弓を突き込み……凍結したフリッグの躯へと、閃光を叩き込むッ!! 「ぐ、ぁぅ……無謀だな。だが、乱戦を活かした良い一撃だ……!」 「でも、もう同じ戦法は使えないですの。さっきの強襲を凌いだ様に」 「如何にも。ならば尚の事、推して参る……往くぞ、ロッテ!!」 だがダメージを受けたフリッグも、決して怯んでいなかった。その手に 握られた大剣を開き、中心のエネルギーブレード部を青く発光させる! これによって一回り……いや、二周り程巨大化したブレードを掲げて、 青き剣士が“剣の竜巻”と形容出来る姿となり、勇猛果敢に突っ込む! ... -
妄想神姫:第三十章
次女の生い立ち、遠くて近き過去 暑苦しい夜が訪れる。地下は常に快適な物、と思いきや気を抜くとすぐに 湿っぽくなるので、この時期は空調をしっかりしないと寝苦しいのだな。 とは言え過度に湿気を取り去ると、今度は肌や髪によろしくない。神姫の 人工毛髪も、その影響を受けてしまう。私・槇野晶は勿論、“妹達”にも 気を遣い設定は厳密にしてある……だが、日々のコンディションもある。 「今晩は、こうか……よし、エアコンの設定終わりッ!寝るか……」 「──────なら、ロッテお姉ちゃんが神姫として産まれたのは」 「ええ、その暫く後なんですの。リーグ登録は昨年末ですけどね?」 「意外と昔から、なんですね……あたし達の中にある“コレ”って」 ……部屋に入ろうとした所で、何やらロッテ達の会話が聞こえてくる。 否、それは寝物語という感覚の物であり……ロッテがアルマとクララに ... -
妄想神姫:第三章(後半)
戦乙女は、かく降臨せし(後半) 相手はサイフォスタイプ。但しその手には片手剣でも大型の槍でもなく、 専用にチューンしたであろう、厳ついツヴァイハンダーが握られている。 全身の装甲は重装型と軽装型の折衷。背部には……ツガルタイプの翼か。 ともあれ剣一本を極めようとしているようで、油断はできそうもないな。 「仕掛けぬのか?では、一本往くぞ……ハイヤァーッ!!」 「はいですの……畏れず突進ッ、いやぁああーっ!!」 白兵戦に強いとされている第三シリーズだけあり、一太刀の威力は重い。 私のロッテにもフレーム換装を施してあるとはいえ、地力では一歩譲る。 それでもロッテは懸命に、右に構えた長大な細身のランスで受けている。 ヴァーチャルとはいえ飛び散る火花に、私は興奮と期待を全く隠せない。 「うっ、く……サイフォスタイプの剣技は、やっぱり凄いですの」 「そな... -
妄想神姫:第三章(前半)
戦乙女は、かく降臨せし(前半) ヒートアイランド現象の所為であたたかいと言え、今は冬真っ只中。 流石に冷えるが、ここは今日も賑やかで熱気に満ちているな。有無。 秋葉原神姫センター3階、ヴァーチャル式バトルフィールド装置前。 ここではサードリーグとセカンドリーグの試合を、年中やっている。 設置台数は、両リーグを合わせて凡そ……16基という所だろうか? 「お兄さんお姉さん達でいっぱいですの~、それとわたしの妹達もッ」 「そうだぞロッテ。今日はここで初バトルをやるんだ……大丈夫か?」 「はい。ちょっぴり緊張しますけど……精一杯がんばってきますの♪」 「良い娘だ~……こほん、勝ったらご褒美も考えてやろうか、有無?」 「むむむっ。そう聞いたら、もっとも~っと頑張っちゃいますの~♪」 そう、我々は先日“解除”と並行してサードリーグに登録したのだ。 草リーグとは... -
妄想神姫:第五十三章(後編)
樹海の如く、業の深き竜(後編) 漆黒の球体とも言うべき独特のプラズマ弾は、ゴーレム・シルエットごと クララを呑み込み、フィールド唯一の陸地である孤島へと叩き付けたッ! 凄まじい爆風が巻き起こり、島が消し飛んでいく。だが、希望はあった。 ジャッジシステムは、クララの大ダメージでも敗北を宣言していないッ! 「はは、ははははっ!これなら、生きてたってボロボロだろっ!?」 「……そうでもないんだよ、まともに直撃していればダメだったけど」 「なっ!?……平然と生きてる、だと!?」 「そうかな、結構堪えたんだよ?」 『クル……♪』 黒煙の向こうにいたのは、大型の杖を構えて佇む生身のクララだった。 そう、彼女が使わなかった初期武装の大杖“センチュリオン”と、盾の “ティンクルスター”。これらは“魔術”を旨とするクララに合わせ、 “Valkyrja”同様の簡易魔... -
妄想神姫:第五十三章(前編)
樹海の如く、業の深き竜(前編) アルマ・ロッテと勝ち上がり、残る挑戦者はクララ一人となった。私達は 持参の簡易クレイドルで充電を受ける二人を眺めつつ、思いを巡らせる。 私・槇野晶が最も憂慮しているのは、他でもないクララのバトルなのだ。 「むにゃ……マイスター、寒いからだきしめてくださいですの~……♪」 「ぅぅん、そッ!そんな所だめですマイスター……ふにゅ……んんぅっ」 「……なぁ、クララや。この二人は何を夢見ているのだ?私は不安だぞ」 「多分、マイスターにご褒美をもらってる夢なんだよ。そう解釈すべき」 淡々とクララは告げる。確かにこれは……深く考えない方がよいのかも しれん、というか考えてはならない。私の本能は、そう警鐘を鳴らす。 と……思考が脱線し掛かった所で、係員のアナウンスが聞こえてきた。 『槇野晶さん。クララの対戦相手が見つかりました、... -
妄想神姫:第三十四章
剣の王妃、戦場を去れば神の姫君 アルマの戦績記録カードを受け取った後も、私・槇野晶は現実感が今一つ 乏しかった。いくら小さな島とは言え、天空に浮かぶ大陸ごと対戦相手を 斬り捨てて……否、消し飛ばしてしまったのである。そんな中で冷静さを 保てたのは、当事者の神姫二人……そしてクララのみである。ロッテも、 普段の彼女からすれば落ち着いていた方だ。神姫のみのシンパシー故か? 「しかしアルマや。あの巨大な爆炎……魔剣の能力、ではないな?」 「はい。電磁加熱機構をオーバードライブさせただけですよ、ただ」 「……エネルギーを無駄にせず、魔剣に蓄熱させて活用したんだよ」 「そうですの。わたしとアルマお姉ちゃんの剣は、頑丈ですから♪」 「あ、あたしの言葉~……とにかく、あれはマイスターの力ですっ」 確かに“ヨルムンガルド”と“マビノギオン・アサルト”の発生熱量を ... -
妄想神姫:第三十二章
葉の香り、初夏に麗し四人の姉妹 アルマの苦い敗北ではあったが、決して無為ではない貴重な一戦だった。 次への活路も見出したらしいので、普段通りに打ち上げへ赴く事とした。 私・槇野晶とHVIF・葵は気合を込めた夏用ドレスで、神姫素体である アルマとクララは“シルフィード”に装飾用パーツを付加したドレスで。 行き先は今回もちょっと捻って、非チェーン展開の喫茶店に入ってみる。 「ふむ。“LEN”とはまた少々違うが、落ち着いた店で何よりだ」 「お会いしたのは三月が最後ですの。また行ってみたいですの~♪」 「……しかも、あの時は移動店舗で本来の場所じゃなかったもんね」 「そうですねぇ……あ、ウェイターさんが来ましたよマイスター!」 「お帰りなさいませ、御嬢様。何かお飲みになられますでしょうか」 ──────なんだその顔は。秋葉原にメイド喫茶や執事喫茶があって ... -
妄想神姫:第三十九章
星空に想うは、遙か遠けき人の影 夜。うだる様な陽炎も収まった……と思いきや、温暖化著しい東京では、 深夜になろうとも熱気は収まらぬ。冷房がなければとても寝ていられんが 私・槇野晶は何となく作業が終わっても眠る気になれなかった。そこで、 肩ひものない服を纏って、地上に赴く。胸元に、ロッテを入れてな……。 「どうしましたの、マイスター?“アルファル”完成して脱力ですの?」 「ん……それもあるのだが、ふいに思い出してな……“あの人”の事を」 「“歩さん”、ですの?そう言えばあの人が失われたのも、こんな……」 「夏の日だったと記憶している。地中海の沿岸だったからな、より暑い」 何を惚けている?そうか。以前“歩”について、私は語らなかったな。 私には姉が居てな、いや……居たんだ。その人こそ“槇野歩”だった。 技術者だった彼女の薫陶を、受けていないとは言えない。... -
妄想神姫:第三十七章
妖精の騎士、その御印は虹の如し “W.I.N.K.”の搭載・定着と充電の為に、我が“妹”達が眠って数時間。 その間に私・槇野晶もシャワーや仮眠を取り、目覚めたのはつい先程だ。 見れば充電は完了していた……傍らに収納してある“アルファル”もだ。 チェックプログラムも異常なし。起動して良さそうだ……では起こすか! 「ん……そろそろいいぞ。起きてくれんか、アルマ・ロッテ・クララ?」 「……むにゃ。あ、後三分寝かせてください~……ぅぅん、ふぇ……?」 「アルマお姉ちゃん、寝坊しちゃダメだよ。晩御飯に間に合わないもん」 「ば、ばんごは……ええっ、もうそんな時間ですかクララちゃんッ!?」 「ふふふっ。アルマお姉ちゃんってば~、まだおやつの時間ですの~♪」 寝惚けていた事に気付き赤面するアルマ、それを見て笑う二人の神姫。 ロッテもクララも……慣れた故とはいえ人が悪... -
ホワイトファング・ハウリングソウル
ホワイトファング・ハウリングソウル 作者:ミヤコン 世を捨て、竹の生い茂る山に引き篭もった老人と、銀色の狼の物語。 『――――それは、恋でもなく愛でもない』 5/26 最終話を更新、いままでありがとうございました! コラボ大歓迎です! 前作クラブハンド・フォートブラッグと前々作ハウリングソウル(外部リンク注意)とリンクしています。 もし宜しければそちらとあわせて読んでみてくださいm(_ _)m WFHS 登場人物紹介 WFHS 武器紹介 WFHS 設定 WFHS 白狼型MMS 『神凛』 * ホワイトファング・ハウリングソウル本編 第一話『老人と犬』 第二話『砂漠よりの使者』 第三話『爺の心労』 第四話『Prophet of amethyst』 ... -
妄想神姫:外伝・その十二(中編)
白鳥の乙女──あるいは予選その二(中編) 徹甲弾を直撃させたのに、対戦相手がまだ生きている。流石に誰もが 信じられない状況に、“サンドワーム”のプル軍曹が姿を現したよ。 それは2~3人分の装備を贅沢に使った、“多脚戦車”に乗る神姫。 二挺の滑空砲を備え、近距離でもアサルトライフル・拳銃……更には “ハグタンド・アーミーブレード”までも備えた、重装型の戦車兵。 そんな見るからに強そうな娘が、ゆっくりと周囲を検分するんだよ。 「……確か、この辺りの筈……ッ!?」 「クェェーッ!!」 「……あれは、ぷち?でも、大きすぎる……!」 その脚を止めたのは、“SSS”に搭載した防御用ぷちマスィーンズ。 ロッテお姉ちゃんの伴侶は“スヴェンW”、白鳥型の戦闘機なんだよ。 予期しない小型レーザーガンポッドにより、怯むプル軍曹。その好機を 見逃さずにロッテお姉ちゃんが... -
妄想神姫:第十三章(前半)
適材を誂え、適所に与え(前半) 密かにビル屋上へ作った集光タワーが、光を地下に運ぶ……眩しい。 平日だが“ALChemist”は定休日、そして現時刻は東京の騒がしい朝。 恐らく昭和通り等は大渋滞だろうが、それも関係のない事であるな。 「……ん、マイスターってばもう起きたんだよ」 「って……え、うわっ!?梓何をしているッ!」 「何って、添い寝だよ。昨日からの当番だもん」 意識を取り戻したその先にいたのは、ブロンドの短い髪をシーツへ 投げ出した美しい少女……クララのHVIFである所の梓である。 白く柔らかい腕が私の躯を優しく抱きしめて、実に心地よい……。 その姿は私と同じく、一糸纏わぬ……って、貴様何を見ている!? いいだろう私の癖なのだから!分かったら視線を逸らせぇッ!?! 「そ、それもそうだが……身を整えたら素体に戻っておくれ」 「分かった... -
妄想神姫:第十三章(後半)
適材を誂え、適所に与え(後半) 私・槇野晶は、当初彼女ら“槇野晶の神姫”に戦わせる気がなかった。 より正確に言えば、神姫バトルを無理強いする気は私になかったのだ。 だが、ロッテは戦いを望んだ……自らの存在意義を求めた故だったか? そうして“誇り”を培った彼女に刺激され、アルマとクララも望んだ。 「さて、ロッテが“フェンリル”を気に入ったのならば次は此方か」 「あっ、はいっ!クララちゃんがまだなら、これはあたしの……?」 「そうだ、こっちも拘って作ったぞ……数が少々多いがな、ほれッ」 “客のニーズには全力を以て応える”……それが私のモットーである。 ならば“妹達”の求めにも全力を以て応じるのが、私の役目であろう? という信念の元、アルマに用意したのは……6振りの黒い刃であった。 専用の鞘も2本セットだ。強化セラミックの輝きには、自信があるッ! ... -
妄想神姫:第三十六章(後半)
禍つ刃を抜き、競う白日(後半) それは一瞬の出来事だ……クララを中心にして解放された巨大な紫電は、 柱の影にいたアルマとクララを呑み込もうと蠢きだした。そこにアルマが “ヨルムンガルド”を数本投げ込んで、避雷針代わりとして電気の流れを 阻害した。白熱化させる関係から、“ヨルムンガルド”のセラミック刃は 電気を通す構造なのだ。そして出来た大きな風穴に、ロッテが撃ち込む! 奇襲を受けて不発に終わった紫電が、虚空に散るのは数秒も掛からない。 「ぅ……既知現象の再現をベースにする“情報魔導学”の弱点かな……」 「ですけど紫電の壁に遮られて、雷撃も十分な打撃になってませんの」 「かといってあたしの突撃では反撃のリスクもありますし……さてと」 「……そろそろ〆に行くんだよ。アルマお姉ちゃん、ロッテお姉ちゃん」 「望む所ですの♪現時点で最大の一撃を、お見舞いしますの……... -
妄想神姫:第四十三章
晩夏の空に響くは、遙かなる凱歌 私・槇野晶と“三姉妹”たる神姫三人の戦いは、無事に終わった。無論、 ロッテ達がこれで引退と言う事ではない。むしろ今以上の激戦が行く手に 立ちはだかるだろう。だが、セカンドに昇格出来たという喜びに浸るのも 今だけならば悪くはない。そう想い、皆と連れ立ってセンター内を歩く。 ただ“アルファル”のギガノイド・フィギュア……合体形態を試す機会は 訪れなかった……当然の話だがな?……のでそれが今後の課題か、有無。 「大儀だ……本当に、本当によく頑張ったぞ皆ッ!凄い娘達だ、有無!」 「も、もうマイスターこれで何度目ですか~?はしゃいじゃってますよ」 「アルマお姉ちゃん……これはこれでこれでいいんだよ。喜んでるもん」 「そうですの♪マイスターに笑顔が灯せれば、それだけで誇りですの!」 「お、お前達ってば……本当にこのこのっ!私を狂喜させる... -
妄想神姫:外伝・その十五(中編)
激烈なる拳──あるいは決勝その一(中編) そうしてボク・槇野梓とロッテお姉ちゃんは、決勝ブロックの舞台へ 上がっていったんだよ……でも、クローズアップされるのはこの後。 この第一回戦を勝ち上がった八人で再度組み合わせ抽選が行われて、 そこから大々的な演出が行われるんだよ……ここはまだ入口だもん。 と言っても、専用のヴァーチャル型バトルフィールドは大きいけど。 「それじゃ行くぜ、リアル系!ちょこまかすんじゃねぇぞッ!!」 「いえいえ、全力で参りますの。それじゃあ……始めましょう!」 『ハンゾー・ヴァーサス・ロッテッ!!レディ──────ゴー!!』 『“W.I.N.G.S.”……Execution!』 「変身、しやがったっ!?」 「流石に“フィオラ”のままでは、勝てませんの」 戦闘開始と同時にロッテお姉ちゃんは、瞬時に“Heiliges Kleid”へ... -
妄想神姫:外伝・その十六半(中編)
零より来る者──あるいは準々決勝(中編) 煙幕弾とは言ってもミサイルだから、弁慶さんには相応のダメージを 与えてる。でも、ロッテお姉ちゃんは追加装甲でもあり武器でもある “SSS”を、三分の二は失ってるんだよ。この攻防は、一進一退。 どちらかでも気を抜いた方が負ける……そんな予感がするんだもん。 ここで仕掛けたのは、ボクら……レーザーキャノンが、火を噴くよ! 「今度はこちらから仕掛けますの!“アインホルン”、フォイエル!」 「ぐ、ぅっ!?……近距離で、レーザー……なんて奴ッ」 『弁慶!大丈夫?!』 「ほっとけ、問題ない……!」 「……確かに、すんでの所で直撃を避けられてますの」 戦慄するロッテお姉ちゃん……無理もないんだよ。およそ5smって 近距離でのレーザー攻撃を、脚部後のブースターと自前の脚力だけで ジャンプして避けてしまうんだもんね。そして... -
妄想神姫:第六十三章
新しき風と、揺れ動く錬金術師達(その三) 第六節:宿業 アルマとクララが飛び出し、葵……ロッテが後を追って、どれ位の時間が 過ぎただろうか。物音が止んだのを確認し、私・槇野晶も漸く動き出す。 暇潰しに一人で淹れたココアは、苦い。だがそれも、三人の心中に湧いた “澱”の苦さと思えば、敢えて飲み干さねばならぬという想いが勝った。 「なんで……あたし達なんて、所詮ただのお人形遊びだったんです?」 「ボクらは、歩さんとクリスティアーネさんの……代わりなのかな?」 嘆きが聞こえる。黙っていたが為、傷つけてしまった二人の哀しみが。 改めて己の愚かさと弱さを悔いつつ、そっと聞き耳を立てる。今の私が 何を喚いた所で、容易には聞き入れてくれぬだろう。ロッテが頼りだ。 「あたし達の所為で、マイスターのお姉さんが死んじゃったなんて……」 「ボクらの存在意義が分... -
妄想神姫:第二十三章
春爛漫とは、“全て”が花開く時 色々と一段落し、我がMMSショップ“ALChemist”にも平穏が戻ってきた。 忙しさで気付かなんだが、あっという間に春ではないか。季節が巡るのは 実に早い物である。となれば、これを楽しまない訳には行かないだろう。 何せ、四人で春を迎えるのは初めてなのだぞ。季節の変わり目故なのか、 ロッテは勿論、アルマとクララも何処か落ち着かぬ……そうと決まれば。 「皆、今日は少々遊びに出かけぬか?店も幸い、定休日の事だしな」 「お出かけですの?!春ですし、わたしは公園に行きたいですの♪」 「えっと、そうですね……そう言えば、そろそろ桜が咲いてますよ」 「……ボクらは、何時でも出られるよ。マイスターも、準備して?」 ……落ち着かない所か、既に私・槇野晶の考えは見透かされていたか。 彼女らは隠しておいた外出用衣装を、めいめいに引っ張り出... -
妄想神姫:第三十五章(前半)
疲れた時は、玉を磨いて(前半) 意識が闇の淵から、ゆっくり浮上していく。同時に、己の置かれた状況も 徐々に認識していく……そうだ、私・槇野晶は“アルファル”を製作中。 百枚近い設計図を引き終わり、コストも含めた要求に合致する電装部品を アキバ全域のパーツ屋から調達……構造部品は自分でも作成していたな。 そして、そうだな。パーツを揃えた直後に朝六時の時報を聞いて……ん? 「し、しまった寝坊したッ!?今日は定休日じゃないぞロッテ!!」 「マイスター、落ち着いてくださいですの~っ!今日は定休日ッ!」 「な、何……ふ、うぅぅぅ……寿命が縮むかと思ったぞ。おはよう」 「おはよう、じゃないですよ!もうとっくにお昼過ぎですよ?全く」 「……それに、目の下にすごい隈。この三日間、根詰めすぎだよ?」 「む、むぅ……すまん。アイデアが大凡固まったので、つい……な」 半... -
妄想神姫:第三十八章(前半)
成長、戦乙女を護る騎士(前半) 新たなる力“アルファル”を与えてから数日。私の“妹”たる神姫達は、 模擬戦のみならず普段の手伝いにまで、騎士を動員する事が多くなった。 マスターの“クセ”を学習して成長する以上、確かにこれはいい選択だ。 私・槇野晶もそれを容認し、微笑ましく見ている。今日も……の様だな。 ちょっとした用事から帰ってきた私は、その様子を暫し眺める事とする。 「その湯飲み持ってくださいですの、フィオナ~♪んしょ、んしょ……」 『Yes,sir(重いですが、やります)』 「あれ……も、モリアン?三月分のレシートはこれで全部なんですか?」 『Negative(他にもありますよ)』 「……ん、それ位で拭き掃除は十分なんだよアルサス。指令は以上かな」 『Ja(お疲れ様でした)』 ん?『受け答えしているではないか』だと?有無、妹達が少し寂しいと ... -
妄想神姫:第三十一章(前半)
剣の目覚めは、未だ遠く(前半) 神浦琥珀嬢に“妹達の魔剣”を仕立ててもらってから、暫くが経過した。 それぞれの練度にも、若干の違いが出てきている様でなかなか興味深い。 例えば、今ここで模擬戦を行っているロッテとクララの方を見てみよう。 敢えて今回“Valkyrja”は装備せず、基本武装と魔剣のみで戦っている。 「まだまだ行きますの♪……“放ち刺し穿て、ライナスト”ッ!!」 「くっ……不可視の傘、疾く来たれ!“ソニック・アンブレラ”!」 「う、うわ……あの雷撃が三つも一遍に出ましたよ、マイスター」 「有無。だが、クララの防御も……いや、防御とは呼べんがな」 並みの装甲を射抜く、ロッテの雷撃。クララが“魔術”とコライセルに 備わる防御障壁を駆使しても、超音速のそれを凌ぐのは非常に厳しい。 そこで彼女は、受けきらず……己が避ける為の時間稼ぎを行っている。 ... -
妄想神姫:第三十五章(後半)
疲れた時は、玉を磨いて(後半) 極力、意識を反らす。普段からやっている事と言え、凝視すると彼女らも 私も……どうにも気恥ずかしくて堪らぬ。シチュエーションの魔力だな。 『何をしてるか』?見ての通り……否、見るな!今すぐ目を潰すぞッ!? 「んん……♪はぁ。気持ちいいです、マイスター。本当、優しい手」 「……アルマお姉ちゃんは、とっても気持ちよさそうなんだよ……」 「そうですねぇ、こんなに惚けた評定しちゃってますの……えい♪」 「ふにゃん!?へ、へんな所突っつかないで下さいロッテちゃん!」 「……お、お前達ッ……頼むから、もう少し大人しくしてくれんか」 ……何を想像している?神姫素体と人工毛髪を洗っているだけだッ!! だが、その。彼女らは“服を着る”神姫である。故に、服のデザインを 邪魔しない様、素体のペイントは私が考案した特殊なパターンなのだ。 ... -
妄想神姫:第三十一章(後半)
剣の目覚めは、未だ遠く(後半) 奇襲とも言える一撃を胸に喰らい、アルマのSSSは機能を発揮する間も 与えられずに脱落した。一応戦績を重ね、サードリーグとは言えど上位に 上がり始めてきたアルマなのだが、ここまで手酷い先制攻撃を受けたのは 初めてだ……よもやアルマよ、魔剣に気を取られているのではないか!? 「どうした、剣を抜かぬのか」 「うぅ……エルテリア、まだダメなんですか!?」 「両脇のはさておき、腰のは飾りか……下らぬッ!!」 「あっ……速いっ!?“アイゼンナーゲル”……きゃああっ!」 奴の、兎型神姫の拳を受けるな!……そう叫ぶ間もなく、胸に装着した “アイゼンナーゲル”が打ち砕かれる。黒き翼……“フリューゲル”の 防御機能が死んだ瞬間だった。咄嗟にアルマは、背部の“チーグル”を 展開し、鋼の翼をもぎ取って炎の剣……“ヒッツェメッサー”と為す。 ... -
妄想神姫:第三十八章(後半)
成長、戦乙女を護る騎士(後半) ロッテが大群衆の三分の一を率い、フィールドの端へと駆け去っていく。 それは、撃ち漏らしによってアルマとクララの負担を増やさない配慮だ。 そのクララはと言えば、なんと“魔術”を封印して模擬戦に望んでいる。 彼女が念じれば何時でも“マビノギオン・ウィザード”を召喚出来るし、 コライセルが手にある以上、マニュアル実行でも十分“魔術”は使える。 「クララは、と……おお、それは例の光刃か!」 「そうだよマイスター。偶にはボクも、魔剣を示さないと……ふっ!」 『Gyaaaaaaaaaaaaaaaaa!!!!』 だが敢えて、ギリギリまで使わずに戦う。クララはそう約束したのだ。 コライセルの力は魔術のブーストだけではない。クララの意思する力は 三姉妹の中でも誰より強固であり、それを“魔剣”が巧く利用すれば、 大きな“力場”の剣・盾を... -
妄想神姫:第三十六章(前半)
禍つ刃を抜き、競う白日(前半) 北欧神話の亡霊戦士・エインヘリヤル。彼らは日中殺し合って腕を磨き、 夜は生き返って戦乙女との酒宴に興じたという……“終末の日”までな。 アルマ・ロッテ・クララの三姉妹。戦乙女であって、エインヘリヤルでは ない彼女らだが……その実践トレーニング風景は、まさに亡霊のそれだ。 私・槇野晶はいつも彼女らの“訓練”を見て思う。心臓に悪いな、有無。 「──────“刺し”“穿ち”“抉れ”、ライナストッ!!」 「きゃっ!?雷撃の三点バースト、完全に物にしましたね……」 「速射性能を補う為ですの。さ、クララちゃんにもっ!」 「ッ!?……弾速は相当な物、避けるだけでも一苦労なんだよ……!」 今日は、皆が“魔剣”の力を何処まで引き出せているか……が課題だ。 一足先に三人分完成した、“マビノギオン”と“レーラズ”のテストも 兼ねている。そ... -
妄想神姫:第七十三章
呪いと嘆きの縛鎖を、断ち切って(その一) ──正直言って、まだ全てを信じ切れた訳じゃない。けど、あの人達は。 “お姉ちゃん”達は、こんなアタシを受け入れてくれると言った。だから 掴みかけた暖かい幸せは、絶対に放さない。それが、アタシの願い──! 第一節:呪縛 アタシ・“五女”エルナが、皆に受け入れられて数時間。戦いで疲労した 皆は、“マイスター”……晶さんのチェックを受けていたわ。仮想空間で 戦っていたとは言え、予想外の出来事を受け……皆、ガタが来てたのね。 「ロッテの全チェック終了……特に、異常なし。負荷は掛かった様だが」 「何よりですの♪でもマイスター、“アレ”は結局何だったんですの?」 「CSCに同名のルーチンはあるが、名前以外は特に問題ない要素だな」 「だけどあの時のアタシを倒した光の槍は、間違いなく普通じゃないわ」 予想外と... -
妄想神姫:終章(後半)
前を見た少女と、煌めく神の姫達(その二) 第四節:真心 楽しかった夕餉も終わり、私達は電車で次の場所へと向かった。そこは、 冬のお台場である。バレンタインには相当早い為か、夜と言ってもさほど カップルの数は多くない。私達の邪魔をされないという意味では、上等! 「とりあえず、観覧車にでも乗るか?街の夜景を見るのも、いいだろう」 「はいっ!あたし達も、こんな所に来るのは初めてですから緊張します」 「……多分それは、マイスターも同じなんだよ?だって頬が、紅いから」 「マイスターも来た事無かったの?大丈夫かしら……でも付いていくわ」 「折角のデートですから、デートコースはマイスターにお任せですの♪」 民放キー局が遠くないこの場所にあるのは、湾岸地区の夜景を楽しむには 最適と、午前中に買い求めた雑誌の記事で書かれていた大観覧車である。 なるほど……目の前... -
妄想神姫:第四十章(後編)
蒼天にて、星を描きし者(後編) 対戦相手である所の神姫・狛恵さんは、邪魔になる砲を全てパージして、 大剣と四脚を活かした高速突撃を仕掛けてきましたの。わたしは宙に飛び そこから降下の勢いを利用して、決闘に応じるべく斬りかかりますのッ! 左手で展開した“マビノギオン・ガード”の斥力場が、瞬時に撓みます。 「はぁぁっ!!……ぬう、うっ!バリア如きにぃぃっっ!!」 「くうっ……この圧力、ただの砲撃型神姫じゃないですの!?」 「当然!サードから抜け出す為、砲撃も剣技も学んだのですッ!」 「ぐ、っ……!こ、これはちょっぴりキツいですの……」 楕円状のシールドと“マビノギオン・ガード”の斥力場の二重防壁、更に アルファルに備わった『一定レベルまでの衝撃を減殺する』特性によって 狛恵さんの斬撃を、一合……二合、三合まで受け止めましたの。ですけど このままではジリ... -
妄想神姫:第五章
“職人”として、私達にできること 冬の昼さがり、店の会計処理を一通り終えた私・晶は店のシャッターを がらごろと降ろし始めた。この作業がいつでも大変だ……私一人では。 だが、彼女がいればそれも苦にならぬ。本当に手伝いはありがたいな。 「よっこらしょ……はい、マイスター持ってくださいですのっ」 「うむ、御苦労。いつもすまぬな、私の身長が足りぬばかりに」 「もう。おとっつぁんそれは言わない約束だよぉ、ですの~♪」 「おとっつぁん言うなッ。まったく、ワンセグの見すぎだぞ?」 ロッテが滞空しながら引き降ろしたシャッターを完全に閉じ、施錠。 そしてフックに、ラミネート加工を施した張り紙をこしらえてやる。 “外出につき、本日は臨時休業いたします”。これで準備は整った。 「これでよしと……では往こうかロッテ、奴めの店にな」 「はいですの~、いいお返事がもらえ... -
妄想神姫:第四十章(前編)
蒼天にて、星を描きし者(前編) そしてその日はやってきましたの。わたし達三姉妹がセカンドに向けて、 ついに扉を通る日がッ!……あ、申し遅れましたの~♪わたしはロッテ。 “マイスター(職人)”槇野晶お姉ちゃんと共にある、神姫が一人ですの♪ 今は皆、準備でてんてこ舞いですの。武装は用意出来たんですけど……。 「クララや、躯の洗浄が終わったなら服を選んでおくれ!時間がない!」 「分かってるんだよマイスター、ボクのは決まってるけど……大丈夫?」 「あうぅ……これも可愛くていいんですけど、こっちも棄てがたいです」 「わたしの予定時刻まで、もう一時間弱ですのアルマお姉ちゃん~!?」 わたし達は“服を着る神姫”、素体のまま外に出る習慣はないですの。 だから今日は下着と戦闘用補助アーマードレスに、お気に入りの一着を 着込んで、近所の秋葉原神姫センターに赴く事になった... -
妄想神姫:第一章
晴れた日には、2人でそぞろ歩きを 今日、私・槇野晶は渋谷センター街へと繰り出している。 レディたるもの、ファッションの一つや二つは気を遣わねば。 ……「どうみても幼女」とか「その眼鏡は邪魔」とか言った奴。 即刻前に出てこい、顎に飛び膝蹴り入れてやろう。返品不可。 「コワイ顔してどうしましたですの、マイスター?」 「ああいや、不埒な読者諸兄にちょっと釘をな、ロッテ」 「よくわかりませんけど、マイスターも大変ですの~」 「それよりもだ、この服はロッテ的にどうだ?」 「わぁ……この色合いがステキですの~♪」 そう。今日来たのは何も私の為ではない、ロッテの為でもある。 開発当初こそ様々な色眼鏡で見られまくった“神姫”ではあるが、 アミューズメント施設にバトルフィールドが普及した努力もあり、 昨今では趣味としての市民権を得ている。故に、今日の私の様に お... -
妄想神姫:第四章
私と彼女、小さな小さな“幸せ”を 対戦相手に名刺を渡して意気揚々と帰る、私・槇野晶と神姫・ロッテ。 とは言えそろそろ、夕食の時間であるな……。買い物を手早く済ませ、 外食へ赴く事にしようか。たった2人のささやかな祝宴だが、十分だ。 「マイスターっ、わたしチキンのサンドが食べたいですの♪ねっ?」 「む?遠出になるが……よし、今日は頑張ったからな!いいだろう」 「やった!マイスター、マイスター、大好きですの。えへへ~……」 「わぷ、こらっ。すりすりするなっ!?うぅ、しょうがない娘だッ」 我々が帰りの足で向かったのは、神田神保町にあるサブウェイである。 少し秋葉原からは離れているが、ロッテの好物なのだ。仕方あるまい? 何、「神姫の食事って電気じゃないか」だと?……その筈、なのだが。 「いっただ~きま~すの~、マイスターっ!!チキン、チキンっ」 「冷... -
妄想神姫:第十六章(前編)
叡智を刃に、想いを力に(前編) “かまきりん”と称されていたフォートブラッグは、本人の意思によって 外道・猪刈久夫の手を離れ、今は私のスーツケースで眠りに付いている。 前回の事もあった為か、それを咎める者は誰もいなかった。まあ恐らくは 彼奴めの事だ。懲りもせずに再び神姫を虐げるのだろうが……今はいい。 偽善だろうが見栄だろうが、私達に出来る事をしただけだ。悔いはない。 「さて……騒がしかったが、これでクララのバトルも出来るか?」 「そうですの。今日はアルマお姉ちゃんだけじゃないですのッ!」 「頑張ってくださいね、クララちゃん?あたし達、応援しますッ」 クララにも専用の“Heiliges Kleid”と変身道具の“W.I.N.G.S.”を 装備させてやる。その腰はやはり、他の“姉達”と比べ些か寂しい。 彼女に欠けている物……普段から全形態で使う為の、彼... -
妄想神姫:第六章
世に一人しかいない、あなただから エルゴから帰ってきた私達は、シャッターの前で待っていた常連客の 応対を終えて、預かった“ツガルタイプオプション付きハウリン”の チェックをしている。研鑽中の情報処理技術も総動員しての作業だ。 その傍らでは私服のロッテが心配そうに、眠る神姫を見つめている。 ちなみにこの神姫、昨日買われていったばかりなのだが、有無……。 「ふむ。むぐ……むむ、これはどうにも深刻かもしれんな」 「マイスター。この娘は治せませんの?火器管制システム」 「うむ。論文で読んだ事も、日暮に聞いた事もあるのだが」 「だが~……?だがってどの事なんですの、マイスター?」 「所謂あれだ、“ワン・オブ・サウザンド”という奴だよ」 銃器職人の伝説であるそれは、千挺に1つの偶然の産物を意味する。 微細な部品加工時のミスや、手作業による部品同士の相性。これら... - @wiki全体から「妄想神姫:第三十三章(中編)」で調べる