武装神姫SSまとめ@wiki内検索 / 「妄想神姫:第四十章(後編)」で検索した結果
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妄想神姫:第四十章(後編)
蒼天にて、星を描きし者(後編) 対戦相手である所の神姫・狛恵さんは、邪魔になる砲を全てパージして、 大剣と四脚を活かした高速突撃を仕掛けてきましたの。わたしは宙に飛び そこから降下の勢いを利用して、決闘に応じるべく斬りかかりますのッ! 左手で展開した“マビノギオン・ガード”の斥力場が、瞬時に撓みます。 「はぁぁっ!!……ぬう、うっ!バリア如きにぃぃっっ!!」 「くうっ……この圧力、ただの砲撃型神姫じゃないですの!?」 「当然!サードから抜け出す為、砲撃も剣技も学んだのですッ!」 「ぐ、っ……!こ、これはちょっぴりキツいですの……」 楕円状のシールドと“マビノギオン・ガード”の斥力場の二重防壁、更に アルファルに備わった『一定レベルまでの衝撃を減殺する』特性によって 狛恵さんの斬撃を、一合……二合、三合まで受け止めましたの。ですけど このままではジリ... -
妄想神姫:第四十一章(後編)
紅き星の下、月を臨む者(後編) 光弾でボロボロになり、蛇の尻尾と獣の頭部を失ったティテュスさんが、 自らの装備を組み換えて最期の姿を形取ります。それは、神姫の躯をほぼ 覆い隠した、鳥の脚と巨大な走行用バックパックを備えた騎士の姿です。 飛行能力まで棄てた様で、エウクランテの翼も先端部がパージされます。 その姿に、マイスターが驚いています……新商品のアイデアでしょうね? 「今まで、この姿を取ったのは数える程しかありませんわ!屈辱……!」 「ならば戦って、その汚名を殺いでください……あたしもそうします」 「言われなくてもッ!この槍で串刺しにしてあげますわ、小娘ッ!!」 「モリアン、ここが正念場です──────“アクセプト!”」 『No problem(ロック解除。“アクセプト・フィギュア”承認します)』 槍を構えて地を蹴る彼女を見て、あたしもモリアンに檄... -
妄想神姫:第四十二章(後編)
翠の月を越え、天翔る者(後編) 右腕に“鬼の手”を身につけたボクは、左手にコライセルを構えたまま、 その巨大な爪を使って、空に印を描くんだよ。そう、この腕は白兵戦より 魔術のブーストに適した物なんだよ。ボクが強く意思するまま、禍々しい 指は前方に複雑な制御用環状魔法陣を描き出して、準備は整ったんだよ。 「彼方の城より疾く来たれ剣王の宝具よ、超越せし力を顕現せよ!」 「な、光球が幾多も生まれて……剣ッ!?剣が光球から生えた……!?」 「これが“呪法錬成宝剣群”……“スペリオル・イグナイト”、だよ」 「……くッ!しかし、そんな十数本も貴女が振るうのですかッ!!」 羽根の様な刃を持った、優雅な光の剣を幾つも周囲に展開する。そう、 この姿のボクは“剣の巫女”。剣型に圧縮した攻撃魔法を産み出す事に 特化した、特殊攻撃モードなんだよ……それは、こうして七種類もあ... -
妄想神姫:第四十六章(後編)
雷帝の御剣、神殺しの槍(後編) 仲間の姉妹を全て失い、万策尽き果てたかに見えたイリン。ロッテ一人と 戦うのならば単独でもまだ戦えたのだろうが、アルマとクララの加勢をも 凌ぎきるには、不十分……だからこそ、彼女は奇策を残しておいたのだ。 「私達は、負けられないの!姉様にぎゅって抱きしめてもらうのッ!」 「まさか──────いけない、皆迎撃してくださいですのっ!」 「……ダメだよ、もう間に合わないッ!」 即ち、自らの強化パーツを姉妹に分割する事……そう、ミラとティニアが 残したあのパーツは、イリンが本来扱う強化パーツという事になる……! そのパーツへと、ガンランスの反動で跳んだイリンは一直線に飛び込む。 「“花(フルール)”行くわよ……!さぁ、邪魔よッ!!!」 「ティニアさんの装甲スカートを装着して……更に変形しますの?!」 「“エアリアルフェザ... -
妄想神姫
妄想神姫:メインメニュー 注意 本作品は“突飛な設定”の類を多分に含有しております。 意図的に行っているので、その手の要素を苦手とする方は 閲覧に細心の注意を払って下さいます様、お願いします。 あらすじ 登場人物紹介 本編 外伝 後日談 各種解説 おまけ 協力・引用 あらすじ アキバの隅にMMSショップを構える幼女店長、槇野晶。 彼女の側には“妹”と言うべき、三人の武装神姫がいた。 長女“アルマ”と、次女“ロッテ”に、三女“クララ”。 これは、そんな姉妹のマッドで百合気味な日常とバトル、 更に武装神姫を逸脱気味なメカを、妄想のみで綴るお話。 登場人物紹介 登場人物MMSショップ“ALChemist” ライバルの神姫達 黄昏よりの使者+α(ネタバレ有り) 本編 序章 「苛烈なる少女?と、目覚めし神の姫」 第一章 「晴れた日には、2... -
妄想神姫:第四十章(前編)
蒼天にて、星を描きし者(前編) そしてその日はやってきましたの。わたし達三姉妹がセカンドに向けて、 ついに扉を通る日がッ!……あ、申し遅れましたの~♪わたしはロッテ。 “マイスター(職人)”槇野晶お姉ちゃんと共にある、神姫が一人ですの♪ 今は皆、準備でてんてこ舞いですの。武装は用意出来たんですけど……。 「クララや、躯の洗浄が終わったなら服を選んでおくれ!時間がない!」 「分かってるんだよマイスター、ボクのは決まってるけど……大丈夫?」 「あうぅ……これも可愛くていいんですけど、こっちも棄てがたいです」 「わたしの予定時刻まで、もう一時間弱ですのアルマお姉ちゃん~!?」 わたし達は“服を着る神姫”、素体のまま外に出る習慣はないですの。 だから今日は下着と戦闘用補助アーマードレスに、お気に入りの一着を 着込んで、近所の秋葉原神姫センターに赴く事になった... -
妄想神姫:第四十章(中編)
蒼天にて、星を描きし者(中編) 会話によって、敵神姫……狛恵さんの砲撃は、一旦止みました。ここから わたしは反撃を開始しましたの!腰のジャマダハル・ライナストを抜き、 片膝立ちのポーズで構えて……じっくり狙いを、定めますの。そしてっ! 「“放て”、ライナストッ!」 「うぁっ!?ぷ、プラズマライフル……まさか、あのサイズで!?」 「ただの剣だと思っちゃいけませんのッ、フィオナ!」 『Yes,sir(了解しました)』 わたしの剣から放たれた雷撃は、手にあった銃器を吹き飛ばしましたの。 その隙にフィオナはUFOの様な姿から、銃を持つ騎士の姿になります。 この銃は、“ジェスター・フィギュア”の背部ブースターが変形した物。 あくまでも“アルファル”は、己の躯のみで神姫を助ける存在ですのッ! 「さぁ、撃ち合いといきましょう。お互い全力ですの、ね?」 「... -
妄想神姫:第十五章(後編)
暗き過去に、深き眠りを(後編) どうやら“かまきりん”の制御は、本体たる神姫素体から蟷螂頭の方に 移ったらしい。恐らく昆虫の頭に専用のAIが仕込んであるのだろう。 AIの導入自体は誰もがやっている事なので構わないが、この使い方は 少々解せなかった。神姫の意思を無視する事は、私もアルマも赦せん! そしてアルマは“アサルトキャリバー”を起動させ、距離を詰める!! 「……ここからは、本気で行きますッ!!」 「Shaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaa!!!」 「行け“かまきりん”!何かされる前に切り裂いちゃえ!!」 そっと、アルマが自らの腰に手を当てた。ベルトのバックル部分だ。 縁に偽装されたレバーを半分起こすと同時に、“Heiliges Kleid”の アーマーが浮き上がり、垂れ下がっていたマント部分が水平に立つ。 その縁は実剣... -
妄想神姫:第五十二章(後編)
天より降りし、白霜の竜(後編) 『空を蹴って敵の頭上を取る』という、ロッテの奇策は奏功した。彼女の 纏う“ゴーレム”は、両腕が巨大な銃と言うべきユニットとなっている。 スペースの問題で、弾薬こそ少ない上に細身だが……その分一発の威力や 射程距離・徹甲性能を限界まで高めてある。例え直撃せずとも、その弾は 掠めただけで“バイザー”の装甲越しにダメージを与えるパワーを持つ! 「きゃ、ううっ!?痛……や、やりますね先輩っ!!」 「全てはマイスターの為ですの。その為なら、わたしは頑張れますの!」 「マスターの為……先輩の強さの秘密が、分かった気がします。でも」 『キュィ?』 短時間で撃ち込まれる弾丸を必死に避けたハニエルだったが、軽装甲な 彼女の鎧……“バイザー”は、少なくないダメージを負っていた。一方 ロッテの方も足場となっていた浮島の欠片が無くなり、お互... -
妄想神姫:第五十一章(後編)
猛り狂いし、地を灼く竜(後編) 閃光の刃を両手で受け止めている、“ゴーレム・シルエット”のアルマ。 その均衡を打ち崩す為、彼女は背にしている二基の二連装ブースターを、 肩に接続し……一気に点火した!その大推力で刃を押し返す魂胆なのだ! 「これが勝機……一気に、推して参ります!はぁああっ!!!」 「う、ぅっ……うわぁっ!?」 「“フルメタル・クラッカー”、“ブレイズ・ストーム”!一斉砲撃!」 「なっ……!?きゃうううっ!!ビームと鉛玉の、制圧射撃……!?」 その目論見は成功、浮いていたガルラはバランスを大きく崩す。そこを 狙って、アルマは両腕と両肩の補助火砲を一斉に解き放ったのだ!即ち 一種の指向性地雷を模したベアリング弾の散布装置と、拡散ビーム砲の 四連続近距離射撃である。実体・光学の両面から攻められたガルラは、 地に倒れ伏す。それを見たアルマは、... -
妄想神姫:第五十三章(後編)
樹海の如く、業の深き竜(後編) 漆黒の球体とも言うべき独特のプラズマ弾は、ゴーレム・シルエットごと クララを呑み込み、フィールド唯一の陸地である孤島へと叩き付けたッ! 凄まじい爆風が巻き起こり、島が消し飛んでいく。だが、希望はあった。 ジャッジシステムは、クララの大ダメージでも敗北を宣言していないッ! 「はは、ははははっ!これなら、生きてたってボロボロだろっ!?」 「……そうでもないんだよ、まともに直撃していればダメだったけど」 「なっ!?……平然と生きてる、だと!?」 「そうかな、結構堪えたんだよ?」 『クル……♪』 黒煙の向こうにいたのは、大型の杖を構えて佇む生身のクララだった。 そう、彼女が使わなかった初期武装の大杖“センチュリオン”と、盾の “ティンクルスター”。これらは“魔術”を旨とするクララに合わせ、 “Valkyrja”同様の簡易魔... -
妄想神姫:第十六章(後編)
叡智を刃に、想いを力に(後編) “Heiliges Kleid”の武器は弾切れを読みとられて、そして今もまた “ぷちマスィーンズ”達が、決定打を与える前に沈黙してしまった。 誰が見ても、クララの不利と見ただろう。そんな状況を物ともせず、 クララは抱えていた本を展開し、花弁状の盾として左腕に装着した。 「……どういう事だ、魔術などと非科学的な物をここでやるのか」 「科学的だから、出来る事なんだよ……ライデンシャフト、起動!」 「光……光の環?いや、これは……魔法陣か!?」 「これが、銃を使えないボクにマイスターが与えてくれた、力だよ」 数日程前だが、私・槇野晶のMMSショップ“ALChemist”に客が訪れた。 外国人のディープなオタクと、肩に乗る氷の様なサイフォスタイプだ。 一見してカタギの者でないと分かったが、これでも私の目は確かでな? しっかり... -
妄想神姫:第五十七章(後編)
光の刃と、真心の白き翼(後編) 全く予期しない言葉だった。私を、そして姉妹を“大切な人”であると、 認識して立ち直った夜の事が思い出される。あの時に、ロッテのCSCを 満たした想いの正体。それが、その……私への“恋慕”だったとは……! アルマとクララも、ロッテの言葉に衝撃を隠せない。黙りこくっている。 指示……否、声援さえ出すのも忘れ、皆がロッテの戦いに見入っていた。 「退けさせてもらいますの。大好きな人の、笑顔の為に……!」 「私もだ、命より大事な主の為……ここは最後まで戦うッ!」 「……ライナスト、フィオナ、ウィブリオ。行きますのッ!!」 『キュィィッ!!』 『Yes,sir(姿勢維持に気を付けて下さい)』 超高速で肉薄を計るロッテに対し、フリッグは剣からエネルギーの刃を 撃ち出した。だが、ロッテはそれを避けようともせず、真正面に進む! しか... -
妄想神姫:第二十五章(後編)
舞い踊る、白鳥の乙女達(後編) まずは、空中に存在しているアルマとミラの戦いだった。重力設定が低い この月面基地では、どんな神姫でも比較的容易に垂直軸への移動が可能。 即ちこの空中は、決着が付いた仲間が一番合流しやすい場所であるのだ。 そうとなれば、早く決着を付けないと一気に押しきられてしまうだろう。 お互いにそこは直感しているらしく、先に仕掛けてきたのはミラだった。 「行くわよ……いぇぁああっ!」 「くぅ!?ミラさん、でしたよね?……いい太刀筋です!」 「私は、他の二人より接近戦が得意なのよ!えいっ!!」 「っ!ならっ、何故三人一緒の武装なんですか!?」 「えっ?!」 「何故、自分を主張しないんですか……?!」 鋭い槍の連撃を喰らいつつ、アルマが問いかける。“適材適所”の理。 私がいつも胸に刻み、そして“妹達”に常々実践している事でもある。 ... -
妄想神姫:第三十三章(後編)
約束されし、王妃の宝剣(後編) “舞剣”エルテリアを抜き放つ事に成功したアルマ。まるで産まれた時に 持っていたが如き軽妙な剣捌きを持って、静かにティールを待ち受ける。 対するティールは、今までと全く違うアルマの“明鏡止水”が如き気迫を 受け、飛び込む機を狙っていた……だが先に動いたのは、アルマだった! 「行きます……はぁぁっ!!」 「ぬぁ、っ!!速い……斬撃の重さも鋭さも、今までとは違う!?」 「もう一撃……せやっ!!」 「くそっ!……そこを動くなぁぁっ!!」 一振り、双斬り、三流れ。紅き星が空に飛び散る様な、鋭い刃が着実に ティールの装甲を斬り飛ばし、抉っていく!実剣としてのマテリアルや 異能による強度。それ自体が、アルマのセンスと合致して強大な威力を 発揮しているのだ。だが、これが魔剣の“真の力”とは私には思えぬ。 アルマは、わざわざリクエス... -
妄想神姫:第四十八章(後半)
遙かに見据えし巨神の宴(後半) ロッテの“心”を持つ葵の言葉に、目前の日暮はふと疑問符を浮かべた。 此処までの評価は良好。とすれば次に何を相談されるのか、という事だ。 私も少々方針に悩んでいた所であったので、神姫たる彼女らに言わせる。 「えと……あたし達が悩んでいるのは、二つです。一つ目は武装の傾向」 「もう一つは、生まれ来る“相棒”の傾向なんだよ……結構、大事な事」 「武装の傾向、というと……ああ、種類とか数の話かいアルマちゃん?」 日暮の言葉に、アルマが何度も肯く。それは、私の生来の性分だけでは フォローしきれない、新たな戦い方の模索であったのだ。同時にそれは その戦法を体現する“相棒”の模索でもある。皆が矢継ぎ早に語った。 「今の重量級ランクは、バイザー派と神姫パーツ派が主流です……が」 「それと別に、“重武装派”と“単武装派”という区分... -
妄想神姫:第四十五章(後半)
山と森の台、響く神の音(後半) まずは信州名物・蕎麦を昼食に供する為、国宝・松本城の方へと赴いた。 流石に他の有名な城程ではないが、なかなか風情があって良い天守閣だ。 その正門近くには、よい蕎麦屋が幾つか有ると聞く。その一店を訪ねた。 人当たりの良さそうな所謂“おばちゃん”が、私達を座敷へと案内する。 「もし、ざるを……二人前もらおうか。出汁は小分けに、四人前頼もう」 「四人……?そっちのお人形さんまで食べるのかい、こりゃ珍しいねぇ」 「まぁ、普通ではないがな……?それより灯、お前は何を食べるのだ?」 「あ、ええと……ミニセット一つ。この娘らの分は、いらないのですな」 「あら、可哀想じゃない~?ああいいのよ、ここはおばさんに任せてっ」 灯が『ぅ゛ぁ゛~……』と止めるのも聞かず、おばちゃんは勝手に注文を 書き換えて、厨房へと入っていってしまった。肝心な... -
妄想神姫:第十章(後半)
再誕せし、哀しき神の姫(後半) 人間から逃げ出そうと走り出した“彼女”を、ロッテが抱き留める。 移動中に武装は解除したが、琥珀色の瞳で“彼女”には分かる様だ。 人間である私達に対して程ではないが、少し怯えの色が見て取れた。 「……あたしは、自分の誇りに気付いてそれに従い戦いました」 「はいっ。それは……誇らしくて素敵でしたの、お姉ちゃんは」 「でも、あの人は応えてくれなかった……あたしを“殺した”」 感極まったのか、涙声でロッテの胸板をぽかぽかと叩く“彼女”。 ロッテは言葉もなく、暫くの間自らの胸で泣く神姫を撫でてやる。 落ち着くのを見計らい、クララがそっと挟み込む様に背中を抱く。 物理的に涙を流せずとも、間違いなく“彼女”は泣いているのだ。 「ずっと、あたしはあの人に喜んでほしかっただけなのに」 「その為に痛くても辛くても……我慢し続けたん... -
妄想神姫:第四十九章(後半)
騎士姫と、覚醒せし鋼竜(後半) USBを経由し、三機の“竜”に0と1で出来た魂が刻み込まれていく。 既に充電を済ませてあるそれは、超AIのデータ焼き込みさえ完了すれば 私のキータッチ一つで起動するのだ……皆が動向を、固唾を呑み見守る。 「80……90……よし、完了だ。これから起動する、気を付けろよ?」 「え、え?気を付けるって……ちょっと不安です。でも、分かりました」 「どんな性格になるかは私も分からぬ。襲いかかる事はないだろうがな」 アルマが少々怯えているので、私は彼女の頭を撫でつつ……キーを押す。 それと同時に、乱雑に分解されていたフレームにエネルギーが満ち渡り、 程なく“己の形”を取り戻すべく変形を開始したッ!紅い塊は、爬虫類を 想像させる四肢を持った、二足歩行の獣……恐竜の様な形態へと変じる。 「まずは一体。これがアルマの“竜”だ……と... -
妄想神姫:第五十章(後半)
そして姫を護る、神竜へ(後半) 暢気にじゃれ合う竜達を横目に、アルマ達三人の神姫は己の服に新たなる パーツを付け足していく。まずは“セイクレール”だ。大柄のケープに、 長手袋とブーツ。そして、四肢に嵌め込む“リング”で構成されている。 ケープの留め金には、“階級章”を用いたペンダントヘッドを流用する! これで“シルフィード”標準装備のロザリオを併用出来る、という訳だ。 「流石マイスターなんだよ、デザインも色味もボクらにぴったりだもん」 「“シルフィード”のデザインも殺さないですしね、良い感じですっ♪」 「後は、この盾を利き腕の逆に嵌めて武器を持って……出来ましたの~」 「よし!では早速、見せてやれ……私もそうだが、何より彼女らにな?」 『グオオオォォンッ♪』 待ちこがれたッ!という感じの“プルマージュ”達が一斉に飛びかかる! そう、彼女らは全機飛行... -
妄想神姫:第四十六章(前編)
雷帝の御剣、神殺しの槍(前編) 松本小旅行も中盤である二日目となったこの日、私・槇野晶と従姉である 碓氷灯は、松本駅前よりほど近い繁華街ど真ん中の大規模神姫センターに 二人で入った。自身は無論、灯の服装も私がファッション専門店ビルにて 見立てたのだぞ?灯は異様に恥ずかしがっていたが、度胸を付ける為だ。 『さあ着るのだ灯ッ!神姫達が華やかなのに貴様は野暮ったいのか!?』 『ギャァー!?だ、だからってサングラスや首輪まで取らないでもッ!』 『昨日のパイプオルガンコンサート、あの衣装も良かったがまだ温い!』 『そ、そんな事言われたってこんな街でまでなんて~!?あ~れ~……』 というわけで、パステル系の華やかな服を着せてやった上で、不格好な サングラスと首輪は取り上げた。有無、可憐。女子はこうでなくては! 私も、フリルの整ったワンピースを買いこんで着る。一張... -
妄想神姫:第四十三章
晩夏の空に響くは、遙かなる凱歌 私・槇野晶と“三姉妹”たる神姫三人の戦いは、無事に終わった。無論、 ロッテ達がこれで引退と言う事ではない。むしろ今以上の激戦が行く手に 立ちはだかるだろう。だが、セカンドに昇格出来たという喜びに浸るのも 今だけならば悪くはない。そう想い、皆と連れ立ってセンター内を歩く。 ただ“アルファル”のギガノイド・フィギュア……合体形態を試す機会は 訪れなかった……当然の話だがな?……のでそれが今後の課題か、有無。 「大儀だ……本当に、本当によく頑張ったぞ皆ッ!凄い娘達だ、有無!」 「も、もうマイスターこれで何度目ですか~?はしゃいじゃってますよ」 「アルマお姉ちゃん……これはこれでこれでいいんだよ。喜んでるもん」 「そうですの♪マイスターに笑顔が灯せれば、それだけで誇りですの!」 「お、お前達ってば……本当にこのこのっ!私を狂喜させる... -
妄想神姫:第四十七章
変わり往く者達、帰り往く少女達 盛大にして此処最近で一番の大勝負を追えた翌日。私・槇野晶と神姫達は 帰り支度を進めていた。旅行の宿としては、従姉たる碓氷灯の家に泊めて 頂いたのでな?チェックアウト等の手間が不要なのは楽だ。何より……。 「ではこれにて失礼する、伯母貴に伯父貴。その……料理、旨かったぞ」 「あらそぉ?晶ちゃんにそう言ってもらえると嬉しいわぁ、伯母さん♪」 「灯!ちゃんと晶ちゃんを送ってやるんだぞ。最近お前も変わったしな」 「だ、大丈夫ですぞパパッ!……コストはかかったけど、その色々とっ」 家庭の味。というより家庭そのものか、私達の住む秋葉原にはイマイチ 不足していた要素である。こういう雰囲気を“妹”達に味わわせるのも 良かれと思い、日程調整の時に言われた伯母貴の申し出を呑んだのだ。 「本当においしかったです、あの辛味噌とかも御飯に... -
妄想神姫:終章(後半)
前を見た少女と、煌めく神の姫達(その二) 第四節:真心 楽しかった夕餉も終わり、私達は電車で次の場所へと向かった。そこは、 冬のお台場である。バレンタインには相当早い為か、夜と言ってもさほど カップルの数は多くない。私達の邪魔をされないという意味では、上等! 「とりあえず、観覧車にでも乗るか?街の夜景を見るのも、いいだろう」 「はいっ!あたし達も、こんな所に来るのは初めてですから緊張します」 「……多分それは、マイスターも同じなんだよ?だって頬が、紅いから」 「マイスターも来た事無かったの?大丈夫かしら……でも付いていくわ」 「折角のデートですから、デートコースはマイスターにお任せですの♪」 民放キー局が遠くないこの場所にあるのは、湾岸地区の夜景を楽しむには 最適と、午前中に買い求めた雑誌の記事で書かれていた大観覧車である。 なるほど……目の前... -
妄想神姫:第四十四章
旅立ちて、待つは永き野の松が本 窓の外を流れていく防音壁と、その隙間に見える風景。格別な物がある。 そう……これは高速自動車道を走る、電気駆動バスからの光景なのだな。 即ちコレを見ている私・槇野晶は、車に揺られて小旅行の途上にあるッ! 「あ、マイスター!お山が見えますの、お山!おっきぃですの~……♪」 「何処までも続く田圃も、澄んだ秋の空も、東京じゃ見ない景色ですね」 「……どうでもいいけど皆、周りのお客さんも考えないとダメなんだよ」 「クララの言う通り……なのだが!この光景はいつでも心躍るな、有無」 無論私が、可愛い“妹”達を残して旅立つ訳はない。三連休が続くのを 良い事にその内の一週分、我が侭を言って臨時休業とさせてもらった! そして神姫バトル用の装備と私達“四人の”旅装を携え、東京を出た。 無論、これには理由がある。そう、あれは先週の……とある... -
妄想神姫:第四十二章(中編)
翠の月を越え、天翔る者(中編) アルサスの光刃・角……そして電撃“スプライト・ボルト”のコンボと、 ボクの一撃によって、リュミエールさんは大理石の床に叩き付けられる。 鎧の所々にクラックが入り、ダメージ量が少なくない事を物語るんだよ。 でも……相手は秋葉原・サードリーグ数千名の首座に在る神姫。まだまだ 仕留めるに至らないもん。案の定、彼女はゆっくり身を起こしたんだよ。 「く……非力とは言いつつも、タイミングは的確……なかなかですね」 「ボクが貴女の様な神姫に勝つならば、真正面以外からも攻めないとね」 「なら……回り込む隙も与えない程に、攻め立てればいいのです!」 「え──────?」 そして彼女が吼えた時、壊れ掛かっていた鎧は弾け飛び……羽が舞う。 その一瞬で姿を見失ったボクは、低空・真正面から突撃してくる彼女に 対応しきれず、コライセルの斥力場を... -
妄想神姫:第四十二章(前編)
翠の月を越え、天翔る者(前編) ロッテとアルマ、二人のお姉ちゃんは苦戦しながらもセカンドへの切符を 見事に掴んだ……後はボクだけ。ボクさえ勝機をもぎ取れば、上がれる。 そんな重責を背負った戦いを控えて、つい緊張してきちゃうんだよ……。 あ、ボクの名前はクララ。“マイスター(職人)”達・最後の妹なんだよ。 「さぁクララよ。後はお前一人だ……だがな、気負う事はないのだぞ?」 「マイスター?……そうだね、今日だけがチャンスじゃないもん。でも」 今日掴めたのに、ボクの所為でお預け。これはちょっと頂けないもん。 だからこそ、信じる人の喜びを失いたくないからこそ……ボクは戦う。 そして、抱き合うんだよ。お姉ちゃん達と……マイスターと一緒にね? 「……頑張ってくるんだよ、皆。必ず、この喜びを完全にするもん!」 「クララちゃん、頑張って下さいですの♪大丈夫、き... -
妄想神姫:第四十六章(中編)
雷帝の御剣、神殺しの槍(中編) それはアルマにとっても、私にとっても予期していなかった奇襲。ミラの 籠手はこの為にあったのだ。即ち、蛇腹部から伸展させての遠距離打撃。 見ればミラの脚部装甲はパイルバンカーになっており、腕の反動を完全に 受け止める土台を作っている。それを確認してか、籠手が更に変形した。 神姫の細腕より一回り大きかった掌はさらに巨大化し、巨大な拳となる! 「さぁ、思いっきり叩きのめしてあげるわ!私は“力”の象徴よッ!!」 「ち、力?……きゃぁああっ!?」 『アルマッ!?』 壁に投げつけられたアルマは、すんでの所で翼をはためかせて制止した。 だが、ミラの剛腕は凄まじく躯の各所にも影響が残っている……拙いな。 ミラの方は止める筈もなく、伸びた腕を縦横無尽に振り回して薙ぎ払う! 「いたたた……これ、リーチが長いのにストラーフよりも柔軟... -
妄想神姫:第四章
私と彼女、小さな小さな“幸せ”を 対戦相手に名刺を渡して意気揚々と帰る、私・槇野晶と神姫・ロッテ。 とは言えそろそろ、夕食の時間であるな……。買い物を手早く済ませ、 外食へ赴く事にしようか。たった2人のささやかな祝宴だが、十分だ。 「マイスターっ、わたしチキンのサンドが食べたいですの♪ねっ?」 「む?遠出になるが……よし、今日は頑張ったからな!いいだろう」 「やった!マイスター、マイスター、大好きですの。えへへ~……」 「わぷ、こらっ。すりすりするなっ!?うぅ、しょうがない娘だッ」 我々が帰りの足で向かったのは、神田神保町にあるサブウェイである。 少し秋葉原からは離れているが、ロッテの好物なのだ。仕方あるまい? 何、「神姫の食事って電気じゃないか」だと?……その筈、なのだが。 「いっただ~きま~すの~、マイスターっ!!チキン、チキンっ」 「冷... -
妄想神姫:第四十一章(前編)
紅き星の下、月を臨む者(前編) まずは“妹”のロッテちゃんがセカンドへの昇格権をゲットしましたッ! こうなると三姉妹の“長姉”であるあたし・アルマも負けてられません。 心の奥では不安と期待に闘志でいっぱいですけど、まずはそれを押し殺し 勝利の凱旋をしてきたロッテちゃんを、皆で労う為に出迎えてあげます。 「ロッテ、見事だっ!これで一歩上に望めるな、良い働きだぞ有無ッ!」 「……正直ヒヤヒヤしたけど、あの逆転劇とかかなり出来過ぎなんだよ」 「みんな、ありがとうございますの~♪でも、まだ気は抜けませんの!」 「そう、ですね……皆で上に行かないと意味はないですからね、うんッ」 『槇野晶さん、アルマのバトルが開始出来ます。オーナー席までどうぞ』 あたしとマイスターの名前が喚ばれました。マイスターが作っている、 “Electro Lolita”製のジャンパースカ... -
妄想神姫:第四十一章(中編)
紅き星の下、月を臨む者(中編) 海中に潜ったティテュスさんの姿は見えないまま、相変わらずミサイルが 驟雨の如く降り注ぎます。海上基地の床は爆風で徐々に破壊されていき、 あたし達が避ける空間もそれに伴って狭まっていきます……不利でした。 「おお~っほっほっほっほ!そのままスクラップにしてあげますわ!!」 「……そんな事。あたしのちっぽけな誇りでも、許しませんッ!」 『No problem(その意図は叶えられます)』 「モリアン……有り難うございます、行きましょうッ!」 『アルマよ!水中では剣のみが頼りだ、気を抜くなよッ!』 マイスターの助言に肯いて、あたしとモリアンは海上に飛び出します。 そのまま疑似重力に沿って堕ちて、その間に“レーラズ”のスカートが 窄まる様に変形します。同時に腰には“ヨルムンガルド”が装着され、 それと同時に、あたし達……ううん... -
妄想神姫:第四十五章(前半)
山と森の台、響く神の音(前半) 結論から言えば、相変わらずであり同一ではなかった。従姉・碓氷灯だ。 人目を気にするが故の“奇行”は全く治っていないが、そもそもからして 奴は一人でハンバーガー屋に入る様な性格ではない。待ち合わせでもだ。 その細かい変化に、私・槇野晶も少々驚いている。色々と聞いてみるか。 「で、だ。引っ込み思案の田舎娘な貴様が、どういう風の吹き回しだ?」 「い、田舎などと馬鹿にせんでほしいですぞ?!……で、ええぇーと?」 「貴様は用がなければ、決して表に出んだろう?学業等、最低限以外は」 「あー……これでありますか?はは、私も偶にはハン……ギャアー!?」 「貴様正直に吐かぬとためにならんぞっ!さぁ何があった、さぁさぁ!」 躊躇無く私は、灯のコメカミに拳を当ててグリグリと捻る。梅干しだ! だが、そんな私の横暴を止めたのは六人・十二本の神姫... -
妄想神姫:第四十八章(前半)
遙かに見据えし巨神の宴(前半) 息抜きとしては十全たる小旅行も一段落して暫く。私・槇野晶は神姫達の アルマ・クララとロッテのHVIF・葵を引き連れて外出する事とした。 ……こう書くと遊び歩いてばかりの様に見えるが、店は毎週営業中だぞ! 依って今日は折角の定休日まで裂いて、わざわざ外出している事になる。 というのもだ、試験運用中の“重量級クラス”に関する依頼が増えてな? 「何時までも私達自身が実践せぬ訳には、行かなくなったという事だな」 「それに……多少ですけど実力も付いてきましたしね。自信ないですが」 「大丈夫ですの!でもだからこそ、重量級の壁にも参戦したいですの♪」 「というわけで今、ボクらは試作部品を持ってエルゴへ移動中なんだよ」 「クララ、何処を見て会話している?……まぁ、実際その通りなのだが」 そんな会話をしながら、最早見知った商店街へと入る... -
妄想神姫:外伝・その十二(後編)
白鳥の乙女──あるいは予選その二(後編) 相手は精密砲撃のプロ、空に舞い上がるなんて愚考は考えられない。 それでもロッテお姉ちゃんは私の指示で、迷う事なく空を目指した。 一重に“SSS”の最後の機能、“アーマメント”による行為の為。 マントを格納して、肩アーマーになっていた翼を展開、空中に静止。 背部には、さっきまで盾だった白鳥の翼をブースターとしてセット。 同時にマスクを開いて、アンテナを立てる。これが、武装形態だよ。 「……“正気”なの?」 「はい、これは“勝機”ですの!」 「……ッ。なら、撃ってあげる」 この時、プル軍曹は見落としていたけど……先程より僅かに相対距離を 詰めていたロッテお姉ちゃん。これが実は、お姉ちゃん用“SSS”の 必殺のレンジなんだもん。その理由こそ、前方に先端を向けた“盾”。 涙滴状のシールドが上下左右、四方に展開して... -
妄想神姫:第十章(前半)
再誕せし、哀しき神の姫(前半) 常連・田中の車に乗る事、およそ数十分。着いたのはM市である。 ロッテ及びクララ用の保全用部品一式を店から担ぎ出して、猪刈に 破壊された神姫の修復を手伝ってもらおうと、ここを訪れたのだ。 無論金は掛かるが、そんな物を惜しんで彼女を死なせはせんッ!! 「電話をした槇野だ!夕方なのにすまんが、頼めるか!!」 「はいっ、おにーさまが待っています!はやくはやくっ!」 「つ、ツガルタイプ?……分かった、案内してくれんか?」 そうして2人と3体の神姫で飛び込んだ先は、あの東杜田技研。 出迎えてくれたのは、レインディア・バスターに跨ったツガル。 話を聞くに、Dr.CTa女史は本業の方がアップアップ気味らしい。 女史の……会社の専門分野はマイクロマシン系。神姫ばっかりを 面倒見ている訳にはいかんしな……我が侭を、心中で詫びよう。 そ... -
妄想神姫:第十一章(後半)
神は降りて、姫とならん(後半) シャッターの奥にあったのは、女性三人の裸体……より厳密には、 それは機械だった。外見では判別できないが、私のカンが告げる。 フェレンツェめ同様、伊達でマイスター(職人)を名乗りはしない。 人を模した肉の噐とでも言うべきか。それが3つ、目の前にある。 「マイスター、これって……なんだか感じますの」 「その感覚が事実ならば、フェレンツェ……貴様」 「如何にも。本来はロッテ君の為に用意したのさ」 ここで私は数年来の付き合いで初めて、博士の研究を知る事となる。 それは即ち『人と神姫のコミュ二ケーション』。高度知性体・人類と 人が産み出した新たな高度知性体・AI……その代表格たるMMS。 更にその中でも氾世界的にメジャーな存在となりつつある、神姫達。 「なるほど。博士の研究とは、相互交流に於ける諸問題か……」 「そう言... -
妄想神姫:第二十章
働いた“妹”の、心意気に触れて “鬼の霍乱”という言葉の通り、誰しも意外な行動を見せる事がある。 私・槇野晶とて、それは例外ではない。まあ、その……なんだ、有無。 なんとも情けない事だが、数年ぶりに風邪を引いてしまったのである。 かといって、店を空けるわけにも行かない。これでも一応、客商売だ。 「こほ、こほっ……店はどうなっている、葵……っと、客が来たか」 「いらっしゃいませですの、中野さん♪今日はマイスターの代役で」 「お、アルバイトの……あ、あー。君ら名前が紛らわしいからなぁ」 時刻は既に夕方。こっそり寝床を抜け出して様子を見に来た所で、 丁度接客を始めたロッテのHVIF……葵の姿を見る事となった。 今日がロッテの“当番日”だったのは、病床の私にとって幸運だ。 たまに店番をロッテに頼むが、今日は葵に一日中頼む事が出来た。 一番私との付き合いが長... -
妄想神姫:外伝・その十六半(後編)
零より来る者──あるいは準々決勝(後編) ロッテお姉ちゃんが構えたのは、天使の輪によって極限まで収束した 閃光の槍。対する弁慶さんの相棒は、刃を集め力を束ねた旋風の槍。 どちらも、まともに喰らえば必死……全身全霊を込めた一撃だもん。 距離は十分取り……互いに残ったブースターを、全開にするんだよ! 「……ドライ!」 「……ツヴァイ!!」 「……アインッ!!!」 『ゲーン(往きます)!!!!』 そしてきっかり三カウントの後、二人はアスファルトを蹴って走る! 瞬きする間にも距離は詰まっていき……互いの力が高まるんだよ!! 「穿て閃光ッ!!……神儀、ブリッツ・シュピッツェッ!!」 「偽りよ、全てを覆せ……ストラーダフェイクゥッ!!」 そして、僅かコンマ0.24秒……互いの槍は大気を切り裂いて交錯ッ! 互いのエネルギーがスパークした衝撃で、フ... -
妄想神姫:第九章(後半)
哀れなる傀儡に、祝福を(後半) 『己の戦いに自信を持て』。ロッテの言葉に、対戦相手である所の “あくまたん”は、何処か迷いを吹っ切った様な笑みを浮かべる。 猪刈に抑圧されていた何かが、どうやら湧き上がってきた様だな。 彼女の姿勢保持を待って、お互いに全力での砲撃戦を開始するッ! 「えいっ、えいっ……!!このバズーカで……貴方を倒しますっ!」 「わたしも、マイスターと自分の誇りに賭けて……負けませんのっ!」 「きゃうっ!御主人様の……ううん、あたしの為に、っあッ……!」 「ぶ、ぶっ!?何してるんだ“あくまたん”っ!早く壊せっ!!」 思いも寄らぬ展開に猪刈が大慌てを始めた。貴様の戦術ミスだぞ? 元々射撃管制に秀でたアーンヴァルタイプだ、砲撃戦なら負けん。 実弾中心の“あくまたん”に威力は補えても、精度までは無理だ。 ストラーフタイプの真髄は白兵戦闘、そ... -
妄想神姫:第四十九章(前半)
騎士姫と、覚醒せし鋼竜(前半) 意識が闇の淵よりゆっくりと引き揚げられていく……嗚呼、この様な事が 前にもあったな。あれはそう、私・槇野晶が“アルファル”を作った時。 そして今宵もまた徹夜を重ねて、『新製品のテストベッド』という建前の 装備を、我が“妹”達を重量級ランクへと送る為の“相棒”を創造した。 彼女らの挑戦を支えるだけでなく、我がMMSショップ“ALChemist”の収益 拡大という意味でも、この徹夜は極めて重要な……むぅ、意識がッ……。 「お姉ちゃん、お姉ちゃんっ!もう朝ですの、起きてくださいですの!」 「……う、む?葵か……ふぁ、あぁぁ……いかん、寝てしまう所だった」 「全く、日暮さんの所から帰ってきてから根詰めっぱなしで……もうっ」 「すまんな、つい興が乗ってしまった。もう朝か、アルマとクララは?」 「御飯食べて、今はお風呂ですの。わたしも元... -
妄想神姫:第八章(後半)
総てを司る、脆き神の姫(後半) 数時間後。そっとCSCを装填し直し、バッテリー確認……満タン。 彼女の起動を開始、20%……50%……起動を完了。モーターの微細な 音の後、私にとって二人目である彼女、“クララ”が目を醒ました。 初めツガルタイプを装備していた名残として頭髪は緑色に変更され、 大きな瞳はロッテと同様に、琥珀色の澄んだ逸品へ取り替えてある。 その上に眼鏡。これは、彼女の特質を象徴する為に選んだ品なのだ。 「ここ……ボクは?マスター登録後に、火器が使えなくて……」 「そうだ。そして解析の結果、お前を私が引き取る事にしたよ」 「……ボクを?ボクの名前は?貴女がボクのマスター、なの?」 「有無。私の名前は槇野晶、お前に与えし名前は“クララ”だ」 「クララ……それがボクの新しい名前なの?了解だよ、マ……」 「“マイスター”と呼ぶといいとおもいますの~... -
妄想神姫:第三章(後半)
戦乙女は、かく降臨せし(後半) 相手はサイフォスタイプ。但しその手には片手剣でも大型の槍でもなく、 専用にチューンしたであろう、厳ついツヴァイハンダーが握られている。 全身の装甲は重装型と軽装型の折衷。背部には……ツガルタイプの翼か。 ともあれ剣一本を極めようとしているようで、油断はできそうもないな。 「仕掛けぬのか?では、一本往くぞ……ハイヤァーッ!!」 「はいですの……畏れず突進ッ、いやぁああーっ!!」 白兵戦に強いとされている第三シリーズだけあり、一太刀の威力は重い。 私のロッテにもフレーム換装を施してあるとはいえ、地力では一歩譲る。 それでもロッテは懸命に、右に構えた長大な細身のランスで受けている。 ヴァーチャルとはいえ飛び散る火花に、私は興奮と期待を全く隠せない。 「うっ、く……サイフォスタイプの剣技は、やっぱり凄いですの」 「そな... -
妄想神姫:外伝・その十五(後編)
激烈なる拳──あるいは決勝その一(後編) ロッテお姉ちゃんの“光と闇の舞い”を受けてなお、ハンゾーさんは 立っていて……流石にダメージは大きいけど……しかも、周囲の気を 掻き集め、二匹の“ゲキビースト”と自身の鎧に集積してるんだよ。 そして不意に竜巻が立ち上って、煙幕を巻き込み吹き飛ばす……!? 「マオッ!!……トージャァァッ!!!!」 「“ゲキビースト”を脚にして、合体しましたの……」 『ハンゾー、無理はするなよ。まだ使い慣れてないんだ』 「なぁに、さっさとブチ倒せば問題ねぇだろ!?」 「……ロッテちゃん、気を付けてほしいよ。エネルギーが!」 風の中心にいたのは……ヌンチャクを振り回して型を決める、拳法家。 上半身は“マオタイガー”と余り変わらないけど、下半身に先程までの “ゲキビースト”が合体していて、その所為か出力も規約上限レベル。 ヴァー... -
妄想神姫:第十三章(後半)
適材を誂え、適所に与え(後半) 私・槇野晶は、当初彼女ら“槇野晶の神姫”に戦わせる気がなかった。 より正確に言えば、神姫バトルを無理強いする気は私になかったのだ。 だが、ロッテは戦いを望んだ……自らの存在意義を求めた故だったか? そうして“誇り”を培った彼女に刺激され、アルマとクララも望んだ。 「さて、ロッテが“フェンリル”を気に入ったのならば次は此方か」 「あっ、はいっ!クララちゃんがまだなら、これはあたしの……?」 「そうだ、こっちも拘って作ったぞ……数が少々多いがな、ほれッ」 “客のニーズには全力を以て応える”……それが私のモットーである。 ならば“妹達”の求めにも全力を以て応じるのが、私の役目であろう? という信念の元、アルマに用意したのは……6振りの黒い刃であった。 専用の鞘も2本セットだ。強化セラミックの輝きには、自信があるッ! ... -
妄想神姫:第五十五章(後半)
僅かな慢心、産まれた闇(後半) これはロッテが初めて直面する、己の意義・信念を揺さぶられる事態だ。 “奇襲”による戦意喪失とダメージもあって、反撃は精彩を欠いている。 何より機動力を最大の武器とするウィブリオが、その翼をやられる始末。 彼女の不利は火を見るより明らか……そう、前例がない程の逆境だった。 「その雷を放つ剣も、恐らく私達神姫の“心”に敏感なのだろうな」 「ぅ……ライナスト、どうしましたの?!出力が、上がらない……!」 『キュ、キュィッ!!?』 ロッテの“惑い”に、魔剣たるライナストも感づいたのだろう。能力を 十分に発揮出来ていない……いや、発揮させようとしない。フリッグは 僅かに改造された“ソードダンサー”を己の身に纏い、ロッテの射撃を 受ける。ダメージは通っているのだが、命中率も低く逆転には至らぬ! 「では此方も往くぞ……ふっ!... -
妄想神姫:第五十九章(後半)
主の無き華と、新しき風(後半) 私は、アルマ・ロッテとクララに強請られて新作を着せてやる事とした。 尤も“菫色”だけは、そのまま手を付けぬ。誰に着せるべきか、結局私は 判断が付かなかったのだ。いずれ打開策が見いだせたら……とは思うが、 それよりも今は目の前の着替えだ。こう、なんというかドキドキしてな? 「ん……ニーソックスとブーツまで、ちゃんと細かく出来てますの~♪」 「そ、そうか?お前達の“硬質の肌”を侵さぬ様に、質感を厳選したが」 「大丈夫です、よマイスター!これ、引っかからないし快適ですっ!!」 「な、ならいいのだがな!?……う、うぅ。ほれ、ブラウスだぞクララ」 「よいしょ……マイスター、何故か顔赤いけど風邪でも引いたのかな?」 「う゛!?そ、そんな事はないッ!至って健康だぞ私は!!……多分っ」 実は“告白”以後、私が手ずから服飾を着させるのは... -
妄想神姫:第五十章(前半)
そして姫を護る、神竜へ(前半) 奇妙な住人が増え、数日。私・槇野晶は日々彼女らのアップトゥデートに 追われていた……ロッテ達“妹”を護る竜、“プルマージュ”の三機だ。 “アルファル”と同じくぷちマスィーンズの超AIを使用した彼女らには 宵闇を翔ける者“星龍姫(ライナー)”という称号まで与えた物の、難題が 山積していた。見るがいい、今日も作業台の上で皆の挑戦が続いている! 「ほら、大丈夫。飛べますの♪ゆっくり羽ばたいて~……わ、わわっ!」 『キュ、キュィ……ッ』 「……大丈夫ですの~、わたしが側にいますの。それとも重いですの?」 『キュイ、キュィッ!?』 「有り難うですの♪でも、困りましたの。怖がってばかりじゃ、ね……」 『キュイィィ……』 そう、ロッテの“霜天龍ウィブリオ”からしてコレだ。何をやるにも怯え 自信の無さを露呈させている。無論の事、戦... -
妄想神姫:第三十一章(後半)
剣の目覚めは、未だ遠く(後半) 奇襲とも言える一撃を胸に喰らい、アルマのSSSは機能を発揮する間も 与えられずに脱落した。一応戦績を重ね、サードリーグとは言えど上位に 上がり始めてきたアルマなのだが、ここまで手酷い先制攻撃を受けたのは 初めてだ……よもやアルマよ、魔剣に気を取られているのではないか!? 「どうした、剣を抜かぬのか」 「うぅ……エルテリア、まだダメなんですか!?」 「両脇のはさておき、腰のは飾りか……下らぬッ!!」 「あっ……速いっ!?“アイゼンナーゲル”……きゃああっ!」 奴の、兎型神姫の拳を受けるな!……そう叫ぶ間もなく、胸に装着した “アイゼンナーゲル”が打ち砕かれる。黒き翼……“フリューゲル”の 防御機能が死んだ瞬間だった。咄嗟にアルマは、背部の“チーグル”を 展開し、鋼の翼をもぎ取って炎の剣……“ヒッツェメッサー”と為す。 ... -
妄想神姫:第三十五章(後半)
疲れた時は、玉を磨いて(後半) 極力、意識を反らす。普段からやっている事と言え、凝視すると彼女らも 私も……どうにも気恥ずかしくて堪らぬ。シチュエーションの魔力だな。 『何をしてるか』?見ての通り……否、見るな!今すぐ目を潰すぞッ!? 「んん……♪はぁ。気持ちいいです、マイスター。本当、優しい手」 「……アルマお姉ちゃんは、とっても気持ちよさそうなんだよ……」 「そうですねぇ、こんなに惚けた評定しちゃってますの……えい♪」 「ふにゃん!?へ、へんな所突っつかないで下さいロッテちゃん!」 「……お、お前達ッ……頼むから、もう少し大人しくしてくれんか」 ……何を想像している?神姫素体と人工毛髪を洗っているだけだッ!! だが、その。彼女らは“服を着る”神姫である。故に、服のデザインを 邪魔しない様、素体のペイントは私が考案した特殊なパターンなのだ。 ... -
妄想神姫:第三十章
次女の生い立ち、遠くて近き過去 暑苦しい夜が訪れる。地下は常に快適な物、と思いきや気を抜くとすぐに 湿っぽくなるので、この時期は空調をしっかりしないと寝苦しいのだな。 とは言え過度に湿気を取り去ると、今度は肌や髪によろしくない。神姫の 人工毛髪も、その影響を受けてしまう。私・槇野晶は勿論、“妹達”にも 気を遣い設定は厳密にしてある……だが、日々のコンディションもある。 「今晩は、こうか……よし、エアコンの設定終わりッ!寝るか……」 「──────なら、ロッテお姉ちゃんが神姫として産まれたのは」 「ええ、その暫く後なんですの。リーグ登録は昨年末ですけどね?」 「意外と昔から、なんですね……あたし達の中にある“コレ”って」 ……部屋に入ろうとした所で、何やらロッテ達の会話が聞こえてくる。 否、それは寝物語という感覚の物であり……ロッテがアルマとクララに ... - @wiki全体から「妄想神姫:第四十章(後編)」で調べる