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扉を開いたらまた次の扉

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扉を開いたらまた次の扉  ◆xkf1s1CVio


おぼろげな月光が降り注ぐ市街地の中、男達は闘争を始めていた。
金髪の少年は鋭い刃と化した鋼の義手と長年の修練で手に入れた格闘術を武器に、青髪の青年は規格外の身体能力を武器に、闘いを続ける。

(おいおいおい! 何なんだよこいつは! 動きが有り得なさすぎだろ!!)

その勝負は端から見る限りでは余りに一方的なものであった。
追い詰められているのは真紅のコートを身に纏った少年―――エドワード・エルリック
息つく暇も与えられる事なく、烈風のような敵の攻撃を避けて避けて避けまくる。
距離を開け、起死回生の錬金術を発動させようとするも、圧倒的すぎるスピード差に両手を合わせる事すら叶わない。
スピードもパワーも何もかもがデタラメな敵であった。
判断力や格闘術が劣ってる訳ではない、身体能力の差が余りに大きすぎるのだ。
両手を合わせ、対象物を触る……たった二つの動作で発動する錬金術さえ行使できない程に。
青髪の男―――レガート・ブルーサマーズとエドワード・エルリックの身体能力には差があった。

「ちっく……しょ!」

悪態と共に刃付きの機械鎧(オートメイル)を、レガートの胴体目掛け横薙ぎに振るう。
だが、そんな破れかぶれの一撃が届く訳もなく、半歩後ろに退がっただけでレガートはそれを回避。
続いて放った顔面への左ストレートも首を傾け避けられる。
守ったら負けるとばかりに尚も攻撃を続けようとするも、重い衝撃が腹部を襲いその小柄な身体が重力に逆らって吹き飛んだ。
数メートルの距離を滑空し、地面に墜落。
本能的に受け身を取るも、内臓を揺らす程の衝撃が身体中を襲った。

「拍子抜けだな」

地面に手をつき、脳内と内臓を襲う鈍痛にえずくエドを見下ろしながら、レガートは口を開く。
見下ろす視線は氷のように冷たく、そして失望の色が見て取れる。

「体捌きはなかなかのものだが、身体能力は超人の域には程遠い。
それをその不思議な術でカバーすると思いきやそれもしない……つまらないな、君は」

レガートは思う、所詮こんなものかと。
自分はあの世界で死を待つだけであった。
プラントの救済と人類への贖罪……ナイブズ様の目的達成に力を尽くし、ナイブズ様の手で殺される。
それが自分の終焉であった。
願わくば自分の忠誠心の強さをナイブズ様に知って欲しかったが、それはある男を殺す事でしか伝えられない。
自信はある。
金属糸による束縛を使用せずとも勝利できる自信が、正面からの戦闘であの人間台風を殺害できる自信が―――。
だが所詮は叶わぬ夢。
ナイブズ様の目的を達成する為、自分は能力を使う。
この忠誠はナイブズ様に知られる事なく、我が命と共に散る。
今まで感じた事のない感情―――後悔という名の感情が心中に渦巻いていた。

―――そしてそうした中、自分は殺し合いに呼ばれた。

当初は欠片の興味すら湧かなかった。
ナイブズ様がいる限り、未来は決定付けられているようなもの。
未来―――つまりは一方的な虐殺だ。
それは人間如きが抗えるものではない。
言うなれば天災。
あのお方からすれば、狭い箱庭に閉じ込められた数十人を狩るなど、呼吸をすると同意気の行動だ。
そして、あの主催者達を含めた全てを殺した後、ノーマンズランドへ戻り全てに終止符を打つ。
変わらない、何も変わらないのだ。
ほんの数分、もしくは数時間、人類の生存時間が伸びただけ。
この箱庭に集められた人々は死に、ノーマンズランドに住む人々もまた死ぬ。
全ては必然。
決して変わることのない事項。
運命と言い換えても良い。

だから、この殺し合いには興味がなかった―――眼前の少年を見るまでは―――

そう、眼前の少年は不思議な術を使った。
青白いスパークと共に義手を変形させる、見た事も聞いた事もない不思議な術。
もしかしたら、と考えが浮かんだ。
―――もしかしたら、この少年を通して自分の忠誠を示せるのではないか?
―――もしかしたら、この少年はそれだけの実力を持っているのではないか?
―――あの人間台風にも値する実力を。
それは心底から喜ばしい事であった。
叶わない夢に僅かな光が射し込んだ気がした。
見た目は小さな少年なれど未知なる術―――ナイブズ様にも似た術を使う少年。
自分の忠誠を示す試練に、値するかもしれない少年。
心が高ぶった。あのお方へ自分の忠誠を示せるかもしれないと感じた。
そして、歓喜に心を染め戦いを挑み―――その結果、待っていたのは失望。
格闘術はそれなりのレベルに達していたが、総合的な実力は自分には程遠い。
使わないのか、使えないのか、謎の術を見せたのも最初の一度のみ。
自分の忠誠と比較するには余りにちっぽけ過ぎる存在。
つまらない。
とことんつまらない相手であった。

「もっと楽しめると思っていたが……本当に拍子抜けだ。しかし、君はほんの僅かな時間だが僕に希望をくれた。
その礼と言っては何だが君は僕の手で殺して上げよう。ナイブズ様の手ではなく、僕の手で」

一歩、レガートがエドへと近付く。
エドは腹を抑えたままうずくまり、動かない。顔を上げる事すらしない。
人体すら貫通するレガートの豪腕が、満月を背に振り上げられる。
二人の間に存在する距離は約五メートル程。レガートの移動速度からすれば、あって無いようなもの。
刹那の希望を見せてくれた少年を殺害すべくレガートは両の脚に力を込め―――




―――そして、見た。

「とったぜ」

―――満面の笑顔を張り付かせ顔を上げるエドの姿を。
―――腹を抑えていた両手が拝むように合わせられ、そのまま流れるような動作で地面へ向かうところを。

「ッ!?」

瞬間、青白い閃光が闇夜を消し飛ばし視界を埋めた。
同時にレガートが感じたものは腹部への衝撃。それも一度ではなく二度、三度連続で。
余りの衝撃にレガートの痩躯が宙に浮き、後方へと流れる。
浮遊感に身体を支配される中、レガートが見た物は不思議な光景であった。
数秒前は平坦だった筈の地面から突き出した何本もの柱。
その数は現在進行形で増やており、まるで意志を持つかのようにレガートへと迫ってきている。

(これは―――)

何の変哲もない地面からスパークと共に増殖する土色の柱。
何本などと生易しい数ではない。数十本単位で地面が続々と柱に変化し、迫ってくる。
空中に身を置くレガートにそれらを回避する術はない。
ついには柱の津波はレガートへと到達、防御の構えを取っていた彼に柱達が突き刺さる。
先程とは比にならない程の衝撃がレガートを襲った。
その身体は、まるで蹴鞠のように軽々と森林の中に消えていった。




幸運は唐突に舞い降りた。
男のカウンターの蹴りにより偶然ながら開いた間合い。
アホみたいな威力の蹴りだったが、こっちだってアホみたいにハードな旅で心身共に鍛えられているのだ。
ようやく見つけた勝機をみすみすと見逃す訳にはいかなかった。
腹部から湧き上がる吐き気を抑え、両腕を合わせ地面に触れる。
普段のようにハイセンスな装飾を付ける余裕も、手加減をする余裕もなかった。
幸いにも錬成は上手くいき、地面から飛び出した柱達が白コートの全身にめり込み、吹き飛ばした。
手加減をする余裕などなく、目の前一帯は様々な角度から突き出た柱が占領していた。

「やべ、やりすぎたかも……」

化け物のような強さを持っていた上に殺し合いにも乗っていた敵。
この殺戮ゲームを止める為には絶対に倒さなくてはならない相手であったが、流石にコレはやり過ぎた感がある。

「まあ、死んじゃいねぇとは思うけど……ってか、奴が目ぇ覚ます前に拘束しとかねぇとな。次戦っても、勝てる気全くしねぇし……」

先程までの戦いを思い出し、ぶるりと身体を震わすエド。
一人の敵にここまで圧倒されたのはスカーやグリードとの戦い以来であった。
いや、今の自分はあの二人とだってそこそこ戦えるようには成長している。
なのに、あの男には手も足も出なかった。
錬金術は使えないようだったが、それでも異常な強さを誇っていた。
錬成する暇さえ見つけられないスピード、ブリッグズに現れたホムンクルスすら越えているかもしれないパワー。
運が味方しなければ一太刀と与える事なく敗北していたかもしれない。

「ここには、あんな奴がウジャウジャいんのか? ……あ゛ー気が重くなってきた。ホムンクルスの奴等も止めなくちゃならないってのになあ」

国家錬金術師ですら常勝は有り得ないゲーム。
そしてそんな強者揃いの参加者達を集め、爆弾付きの首輪を装着させた主催者達。
これからの事を考えれば考えるほど気が滅入っていく。

「とはいえ立ち止まる訳にもいかねえだよな、これがまた。……よっしゃ、こんな腐れゲームちゃっちゃっと終わらせるぞ! まずはさっきの男をふんじばって、次にタカマチって女を助けに行く!
でもって首輪の解除法を考えて、主催者達をぶっ飛ばす!速攻でカタつけてやるから、ガン首揃えて待ってろよ!」

だが、彼はそんな事で諦めを見せる男ではない。
力強い視線で前を向き、両の脚で強く地面を進む。
どんな状況だろうと諦めず打開への道を模索する―――それが鋼の錬金術師、エドワード・エルリックの生き方であった。


「君に一つ謝らなくてはな」


―――だが、そんな彼に試練は容赦なく立ち塞がる。
エドの瞳が唐突に掛けられた声の方へと動き、そして捉えた。
錬成により作られた柱の森に浮き上がる白と蒼。
氷のような冷たさが宿る金色の瞳。
闇夜をバックに男は悠然と立っていた。

「嘘だろ、おい……あんだけの攻撃くらって何で立って……」
「さっきはつまらないなんて言って悪かった。撤回しよう、君はなかなかに面白い男だ。僕の興味を引く位には―――」

見ただけで寒気が込み上げてくる程の歪んだ笑顔を浮かべ―――白色の死神、レガート・ブルーサマーズがそこに立っていた。
その姿を確認したエドはほぼ反射的に動作を始めていた。
幸いにも距離は開いてる。
両手を合わせ地面を叩く。先程同様、手加減なしの錬成。
足元から数本の柱が飛び出し、以前に錬成した柱を粉砕しながらレガートへ向かっていく。
不意を付かれたのか、対するレガートは回避する気配すら見せない。

(―――当たる!)

エドがそう確信するのも無理はない話であった。
こちらの攻撃は敵の目と鼻の先にまで到達している。
今まで戦ったどんな敵であろうと回避など出来る訳のない距離。
男の異常な身体能力でさえも回避は不可能な距離。
だが――

「え?」

―――男は易々とそれを回避した。
消えたと錯覚するほどスピードで、右方向に数メートルほど移動し、迫る柱の群集を避けた。

「マジかよ……」

有り得ない。
あまりに有り得ない動きだった。
先程までの異常なスピードを更に上回るスピード。
鍛錬で身に付くレベルのものではない。人間の限界点を超越している。

「君の技は、物体の形状を変化させる能力だね。必要な動作は両手を合わせ、対象に触れることかな?
タネは分からないが使い勝手の良い強力な技だ。面白い。実に面白いよ」

地面から生えた柱に手を掛け、レガートが淡々と言葉を紡ぐ。
だが、エドの耳にその言葉は届いていなかった。
どうやってこの窮地を脱するか―――ただそれだけをエドは考え続けていた。
もはや目の前の男を倒そうなどとは思ってもいない。
あまりに大きすぎる実力差に、エドの心は本人も気付かぬ内に折れかかっていた。

「どうした、来ないのか?」

しかし、白き死神は考える暇を与えてくれない。
エドが気付いた時には、レガートは吐息が掛かる程の距離にまで接近していた。
エドの視点からでは、レガートが瞬間移動したようにしか見えなかった。
瞬間、エドの視界が漆黒に染まり、身体はこの日二回目の滑空を始めていた。
視界は漆黒に染まったまま、二度三度と身体が地面にバウンドし、後方の木に背中から叩き付けられる。

「がっ……!」

肺の中の空気が苦悶になって外へ押し出される。
同時に視界を覆う漆黒も消え去るが、ダメージの所為か霧が掛かったかのように全てがぼやけて見えた。

「殺すつもりの一撃だったが……流石だね、無意識の内に防御行動をとっていた。相当な修練を積まないと出来ない動きだ」
「そう、かい……お褒めに預かり光栄だね……」

何とか顔を上げるとそこには見下ろす形でレガートが立っていた。
虚勢の籠もった瞳でそれを睨み上げながら、エドは震える両手を必死に動かす。
まだ諦める訳にはいかなかった。
勝つ事を諦めても、生き延びる事は諦められない。
身体を取り戻すと約束した弟のため、支えてくれた仲間のため、帰りを待つ幼なじみのため、諦める訳にはいかない。
そして両手が合わせられ―――それと同時に視界が闇に染まる。
三度目の浮遊感。身体が地面に墜落した。

「その技はもう使わせないよ」

サッカーボールを蹴るかのようにエドを吹き飛ばしたレガートが、淡々と紡いだ。
顔に狂気を張り付かせたまま、圧倒的な高みからエドを見下ろし、レガートは語る。

「君には感謝しているよ。君は僕に希望を与えてくれた。このゲームには君みたいな強者が参加している。
その強者達との戦いを通して僕はあの方に忠誠を知ってもらう」
「……長々とうっせぇんだよ……感謝してんなら見逃せっつーの……」

フラリ、と身体を揺らしながらもエドはゆっくりと立ち上がる。
その様子からも相当なダメージが伺えるが、眼光はまだ力強い。
それをみてレガートの笑みがより一層深く歪む。

「良い眼だ……これだけの力の差を見せられても、まだ諦めていない」
「諦めの悪さなら……誰にも負けない自信があるんでね……」
「そうか、でもね、意志だけじゃあどうにもならない事もあるんだよ。君はこれから首を折られてこの世から消える。
せめてもの礼だ。出来るだけ苦しまないよう、一瞬で逝かせてあげよう。それじゃあ―――さよならだ」

その言葉を告げると共にレガートが動き出す。
レガートとエドとの間合いが一瞬で0となり、レガートの拳がエドの首元へと迫る。
周囲にゴキリと骨の折れる音が響いた―――。




何故、私はこのような場にいるのだろうか?
私は全てを失った。
唯一の友を失い、長年付き添ってくれていた霊獣も失った。
自分を支えていた目標も失った。
私が取り欲しかった殷は―――親友と共に尽くした殷は一生手に入らない。
どれだけの敵を滅ぼしても、どれだけの戦乱に勝利しようと手に入らない。
どう足掻いた所で時間は巻き戻らない。
あれだけ強固だった意志にはポッカリと穴が開いていた。
本来ならばこの場の全てを滅ぼし、すぐさま陛下の元へ帰還すべき。
だが心を支配する虚無感に身体が動かない。
どうすべきか。
どうすれば良いか。
分からない、分からない。
なぁ教えてくれないか、飛虎。
俺は、勘違いをしたままここまで来てしまった俺はどうすれば良いんだ―――。



数分か数十分か、気付けば相当な距離を歩いていた。
殺し合いはどうなっているのか。
もう誰か殺されているのか。
あの場には太公望もいた。
奴もまたどう動くのか。
いや、その問いに対する答えは容易に思い浮かぶ。
奴は誰もが死なずにすむよう尽力する筈だ。
仲間を集め、首輪を外し、主催者達を討ち滅ぼす―――即ち最も困難であろう道。
ゴールがあるのかすら分からない道を奴は進むのだろう。
太公望は殺し合いを止める為に戦う、ならば私は―――?

結局の所、思考はそこへ回帰していく。

人は誰しもが目標を持って行動をする。
生き残りたい、死にたくない、殺したくない、富や名声が欲しい、楽に生きたい、死にたい……思考せずとも脳裏の奥深くには必ず欲求がある。
私は何をしたいのか。
生きていたいのか、死にたいのか……私の深層は何を求めているのか。
分からない、いくら考えれど分からない。
遂には足が止まる。
そしてまた考える。
自問に答える術を持たず時間ばかりを消費していく。

そして、また数分の時間が無意味に流れていき―――広がる闇の中から足音が聞こえてきた。

何も映していなかった視界が、この場に来て初めて働き出した。
足音は徐々に大きくなっており、段々と近付いてきているのが分かる。
数秒ほど待った後に現れたのは全身を包む長々とした派手な服を纏った男。
何か嬉しい事があったのだろうか、こんな殺し合いの場だというのに男は満面の笑顔を浮かべていた。
男も私に気付いたのか、笑顔を引っ込め観察するような眼でコチラを見詰め始めた。


「いきなりで悪りぃんだけどよ……おっさんは殺し合いに乗ってんのか?」


そして、口を開いた。
鮮血のような赤色のコートを纏った金髪の男―――まだ年端もいかない少年が、ぶっきらぼうな口調でそう問い掛けてくる。
先程まで自問していたその問いを、男は投げかけてきた。




その邂逅とほぼ同時刻、エドと激闘を繰り広げていたレガートは、その闘技場と化した場所に一人立ち尽くしていた。
彼は無表情に自分の左手を―――数分前、エドに止めを指すべく振るった左手を見つめている。
その左手は見るも無惨な姿となっていた。
手の甲からは鮮血と共に白い骨が飛び出しており、親指を除く四本の指もそれぞれが別々に曲がってはいけない方向に曲がっている。
常人だったら痛みに泣き喚くか失神している怪我であろうが、レガートはただ無表情だった。
痛みを感じていない訳ではない。
彼にも一応痛覚は残っている。
ただ彼の精神の何処かが、その痛覚を押さえ込むほどに歪んでいるだけだ。

「……ハ……ハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ!!」

唐突に、何の前触れも見せずにレガートは笑い始めた。
彼の脳裏に思い浮かべていたのは、ほんの数分前、自分の目の前で行われたある光景であった。



―――渾身の力で振った左拳。
少年の首筋に真っ直ぐと吸い込まれていく左拳。
だが、少年は自分の見込みした通りの好敵手だった。
少年は鋼の義手を盾のように掲げ、不完全な形であるが防御姿勢を取った。
しかし、所詮はその程度。あの人間台風や異能殺人集団には遠く及ばない。
その義手ごと首をへし折ってやろうと拳を加速させた。
そして左拳と義手が激突する。
最初に感じたのはある違和感だった。
鋼だとしても余りに堅すぎる感触、それと激痛。
思わず左拳に目を移した。
そこには物の見事に砕けた左拳、そしてその左拳と重なり合う少年の義手。
銀色であった筈の義手は何故か漆黒に変色しており、凹み一つ傷一つとしていなかった。
思いもよらない事態に思わず動きを止めていた。
少年はそのほんの一瞬の隙を見逃さなかった。
地面から輪を形成し、先ず最初に両脚を拘束、次いで鎖付きの輪を作り両手、胴体を拘束し、止めとばかりに四方を4メートル程の壁で囲んだ。
同時に聞こえた歓喜の叫びと走り去る足音。
―――あの窮地から少年はまんまと逃げ仰せたのだ。



「ハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ!!」

レガートは確信していた。
この殺し合いを通して自分の忠誠を示せると。
この殺し合いを突破した時、ナイブズ様は自分の忠誠の強さに気付いてくれると。
同時にレガートは主催者達に感謝をしていた。
ただ死を待つだけだった自分へこのようなチャンスを与えてくれた主催者達に。
拘束の全てを振りほどいたレガートは、砕けた左拳を携えたまま笑い続ける。
狂ったように、何時までも―――。

【C-2/1日目 深夜】
【レガート・ブルーサマーズ@トライガン・マキシマム】
[状態]:全身にダメージ(中)、左拳骨折、エドワードへの興味
[服装]:
[装備]:金属糸×1
[道具]:支給品一式、不明支給品1〜2
[思考]
基本:ナイブズの敵を皆殺しにし、ナイブズに自分の忠誠の強さを知ってもらう。
1:手始めに放送に誘われた連中を殺す。
2:自分の忠誠に見合うような強者を探し、殺す。
3:1、2をこなしつつナイブズを探し、合流する
3:あるのなら自分の金属糸を探す
[備考]
※11巻2話頃からの参戦です
※ナイブズが参加させられていることに気付いています
※金属糸は没収対象外のもので、レガートの身体を動かすために使用されています。これが外れると、身動き一つできなくなります
※最初から装備していた金属糸の、相手へ使用する際の最大射程は、後続の書き手さんにお任せします



聞仲との邂逅から遡るほど五分前。
それは、ちょうどレガートから逃亡を果たし、ようやく安堵を覚え始めていた時。
エドの頬は自分も意識しない間にニンマリと緩んでいた。
心の中は安堵と達成感と自画自賛の気持ちが占めており、警戒の「け」の字も無い。
だが、それも仕方のない事だろう。
何せ彼は、あの化け物のような強さを誇るレガートからの逃亡に成功したのだから。
文字通り九死に一生を得たのだ。浮かれるなと言う方が酷だ。

策はとっさに思い付いた物であった。
炭素繊維がたっぷりと使われている北国用機械鎧だからこそ出来る芸当―――『炭素硬化』。
それで相手の攻撃を防ぎ、隙を見せたところで逃げ出す。
あれだけの威力の攻撃を炭素硬化で防げば、どんな鍛えた拳であろうと砕ける筈。
あるホムンクルスの技を丸々パクり利用した苦肉の策であった。
実戦では初御披露目の錬金が成功するかも問題であったが、一番の不安材料は相手の一撃を防御できるかどうか。
敵の初撃を防御する―――普通ならば容易な事であったが、相手の身体能力はぶっ飛んでいる。
反応できるかどうかすら怪しい所であった。
全神経を集中させ、敵の一挙一動を見た。
完全な形でなくても良い。掠めるだけでも、奴の剛力なら自滅してくれる筈。
そして生と死を分ける刹那は近付き―――苦肉の策はものの見事に成功した。

あの男から逃げられた、その事実にエドは心の底から安堵を覚えていた。
そして、その気が緩みまくっていた所にエドはその男と遭遇した。
エドが出会った参加者はこれで二人目。
一人はある砂の惑星の中で最強の実力を持つ人間――レガート・ブルーサマーズ。
二人目はある仙人界の中で最強の実力を持つ仙人――聞仲。
彼が出会った二人目の最強はいまだ進むべき道を決めてはいない。
彼を待つ未来は今はまだ分からない。


【D-2/1日目 深夜】
【エドワード・エルリック@鋼の錬金術師】
[状態]:疲労(中)、全身にダメージ
[服装]:
[装備]:なし
[道具]:支給品一式、不明支給品1〜2
[思考]
基本:この殺し合いを止める。誰も殺させはしない
1:目の前の男(=聞仲)と話した後、放送の女(=亮子)の元へと向かう
2:放送に誘われたマーダーから、殺し合いに乗っていない連中を守る
3:首輪を外すためにも工具が欲しい
4:白コートの男(=レガート)を警戒。メッチャ警戒。
[備考]
※遅くとも第67話以降からの参戦です
※首輪に錬金術を使うことができないことに気付きました

【聞仲@封神演義】
[状態]:健康、喪失感
[服装]:
[装備]:なし
[道具]:支給品一式、不明支給品1〜2
[思考]
基本:???????
1:???????
[備考]
※黒麒麟死亡と太公望戦との間からの参戦です

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021:その口はあまたの灯 エドワード・エルリック 051:殷の太師
GAME START 聞仲 051:殷の太師
021:その口はあまたの灯 レガート・ブルーサマーズ 051:殷の太師

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