アットウィキロゴ
新漫画バトルロワイアル
掲示板 掲示板 ページ検索 ページ検索 メニュー メニュー

白壁の緑の扉

最終更新:

Bot(ページ名リンク)

- view
だれでも歓迎! 編集

白壁の緑の扉 ◆L62I.UGyuw



微かな、それでいて体の奥にまで浸透するような機械音。
それに混じって、ガサガサと何かが擦れる音が聴こえる。

「はぁ……運が無いというか……。
 これもあの人の計画だとしたら意地が悪過ぎますよ」

可愛らしい声。
黒で統一された照明の無い通路に、少女のほっそりとした、それでいて女性らしい丸みを帯びた裸身が浮かび上がる。
幽かに揺らぐ青白い光が、彼女の双丘の膨らみを、臍の窪みを、腰の括れを強調する。
加えて全身にうっすらとかいた汗が、より一層艶やかさを醸し出していた。

狭い通路にただガサガサと無機質な音が響く。
少女――結崎ひよのは、鈍く光る首輪と靴だけを身に付けた、些か倒錯的な姿を曝していた。

彼女は、気のせいか若干焦った様子で、手に持った値札付きの包装品を弄っているのだが、

「う~ん、ん……。あぁもう……」

手元が良く見えず包装が上手く解けないことに業を煮やしたのか、えいっと強引に包装を引き裂いてしまった。
うら若き乙女の所業ではない。包装を破るときの掛け声を可愛らしくして誤魔化しても焼け石に水である。

透明な包装の中から出てきたのは、白地のTシャツだ。
胸の部分にはデフォルメされたイルカの絵がプリントされている。
Tシャツを手早く被り、頭と腕を出して髪を掻き上げ整えたところで、ひよのは問題に気付いた。

「あら……ちょっとこれは……短過ぎますね」

下腹部全体を隠し切るには若干生地が足りていないのだ。子供用のTシャツだったのかもしれない。
お尻も半分以上はみ出ていて、背後からも脚の付け根まで丸見えだろう。
今はTシャツが落とす影のために腿の半ばまで黒く塗り潰されているが、このまま明るい場所に出るのは少し躊躇われる。
やっぱり入口の売店まで戻って下も探してこようか……と思ったものの、すぐに考え直す。

(流石に命を懸けるようなものじゃありませんよねぇ)

そう、『あの男』が迫っているかもしれないのだ。
入口に戻ったところでばったり出くわしてゲームオーバーなど冗談ではない。



そもそも――当初の予定ではこうなるはずではなかった。

B-4エリアに入れなくなる前に北西部の街の西側へ抜けようと思い、首尾良く博物館の駐輪場で自転車を見つけたまでは良かった。
自転車には鍵が掛かっていたものの、錠前破りは乙女の嗜み。一分と掛からず自転車を手に入れることが出来た。
街までの一本道で危険人物に遭遇する心配はあったが、それも杞憂に終わった。

計画が狂ったのは、川に架かった大きな橋を渡り終える寸前、B-4エリアを抜けたら適当な民家から服を盗……もとい拝借しようかなどと考えていたときからだ。
何の気無しに右手に広がる海を眺めると、眼下の河原に誰かの姿が見えたのだ。

それが何者かを認識した途端、体が凍り付いた。
自転車のチェーンが空回りするカラカラという音が、妙に耳に残っている。
そこにいたのはファックスで送られてきたモンタージュの男。横顔だったが、非常に特徴的な顔立ちなので一瞬で判った。
そして彼の足元に転がっていたのは仰向けで倒れた高町亮子
ついでに言えば、男は何故か全く似合わないフリフリの服を着ていてとても気持ち悪かったのだが、そんなことは些細な問題だった。


何処からどう見ても立派な殺人現場。
犯人は人間離れした力を持つ男。
さて――この場合、目撃者である自分はどうなる――?



そこで、男が獣染みた動きでグリっと首を回してこちらを見た。
目が合った。



数瞬の後、全身の力を込めてペダルを踏んだ。
亮子には悪いと思ったが、あの場で男に戦いを挑んだところで死体が二つに増えるのがオチだ。
後はもう良く憶えていない。

身体に巻いたカーテンは途中で解けて飛んで行った。
お陰で少しの間、素っ裸で街中を疾走する羽目に陥ったのだが、命には代えられない。
幸い誰にも出くわさなかったので、乙女の純情は護られた。
護られたはずだ。そういうことにする。
盗んだ自転車に乗って全裸で爆走する乙女がいるかという誰かさんの突っ込みなど知ったことではない。

閑話休題。

結局、ひよのはその勢いのまま橋から一キロメートルくらいの距離にある水族館に駆け込んだ。
そして入口の売店の外に積んであったTシャツとパンフレットを引っ掴んで奥へと走り、今に至るという訳だ。

ちなみに自転車はデイパックに仕舞い込んである。
太公望が言っていた通り、デイパックにはその体積以上のモノも入れることが出来た。
混元金斗と似たようなもの、なのだそうだ。良く解らないが。



パンフレットによると、この水族館は四階建てで、四階部分がカフェテラス、一階から三階までが展示室となっている。
構造としては、円筒形の大水槽が水族館の中央部を貫いており、その周りに二重螺旋を描くような形で順路が造られているらしい。
ちなみに二階からは外部にあるイルカショー用の水槽に繋がる通路も延びている。
一見単純に見えるが、それは順路をなぞることを考えた場合だけだ。
実際には所々にある階段やエレベーター、特別展示室等に加えて、従業員用の通路もあり、それなりに入り組んだ構造をしている。

一先ず隠れて作戦を練るにはちょうどいい場所だろう。
そう考えながらひよのは順路を歩く。

今ひよののいる場所は主に深海魚を展示しているエリアらしい。
順路の脇に設置されたいくつもの水槽がぼうっと青白く光っている。
水槽中のグロテスクな魚の動きに合わせて揺らめく光が、彼女の全身に青と黒の斑模様を描く。
こんなときでなければ楽しめるんですけどねぇ、と小声でぼやきながら、ひよのは幻想的な深海魚のトンネルを抜けて行く。
そして、程なくして異常に気付いた。

「この音……何か変ですね」

順路の奥から微かに振動音が伝わってくるのだ。
いや、それ自体は水族館に入った直後から聴こえていたのだが、音は奥に進むにつれて徐々に大きくなっていく。
水族館にも取水設備や水質管理装置はあるが――それらとはまた質の違う重低音だ。


ひょっとすると、先客がいるのだろうか。それはあまり好ましくない。
さりとて、今更戻る訳にも行かない。
少し緊張しつつ、覚悟を決めて暗闇を前進する。

しばらく進むと周囲が明るくなり、広々とした場所に出た。
手前までのエリアと対照的に、壁は白で統一されている。
右側に一際大きな水槽がある。これが中心部の大水槽だろう。

何となく、前屈みになりつつデイパックを股間の前に持って来る。
別に誰も見てはいないだろうし、むしろ屈んだせいで後ろから見ると、細部の造形の陰影が脚を動かす度に歪む様子まで鮮明に確認出来てしまう。
だからこれは羞恥心を抑えておくためだけの、単なる気分の問題だ。

軽く五十メートル以上の直径を持つ円筒形の大水槽には、何故か全く魚が泳いでいなかった。
ただ透明な水だけが湛えられていた。
大水槽の前には『海王類』、『あやかし』、『海原番長』といった、聞いたことの無い妙な表示のプレートだけが空しく光っている。

ここまで来ると空気を震わす機械音がはっきりと聞き取れる。
ひよのは音の聞こえてくる方に目を向けた。音源はさらに順路の先。
そこには非常口を示す緑地のピクトグラムが輝いていた。
そしてピクトグラムの下には非常口のドアが、いや、ドアだったものが転がっている。
非常口は明らかに故意に破られていた。
誰の仕業かは判断が付かないが、まともな状況とは言い難い。
警戒しながら非常口に近付き、

「え――~~…………っと……?」

そして目を見開いて絶句する。
非常口の向こうには、壊れたドアなどは些細なことに感じられるほど、異様な光景が広がっていた。
ひよのは思わず警戒も忘れてふらふらと非常口を潜る。
広大な白い空間。
そのいたるところで銀に輝く機械の群れが休むことなく動き続けている。
これはどう考えても水族館の設備ではない。
そもそも水族館の内部にこれほど巨大な空間があるはずがない。
振り返る。
やはり上には非常口の表示が輝いている。
そしてドアの向こうには魚の泳ぐ水槽。
こちら側から見るとむしろそちらの方が異様だ。

しばらく呆然としていたひよのだったが、自身が置かれた状況を思い出して慌てて先へと進む。
ひよのの足音と機械音が規則正しく辺りに響く。

そういえば――。
太公望が言っていたではないか。
様々な特性を持つ宝貝。
その中には空間を操るものもあるのだと。
デイパックに視線を落とす。
これと同じく、非常口の奥には巨大な空間が広がっていたのか。

考えてみれば、ひよのの持つ宝貝『太極符印』――これはひよのには使い方が判らないのだが――も、物理現象を操るという何とも信じ難い効果を持っているのだ。
今更空間が捻じ曲がろうと驚くようなことではないのかもしれない。
――ないのかもしれないが、

「いや~、驚きますって、やっぱり。
 そもそも何処なんでしょうかね、ここは」

呟きは響き渡る機械音に紛れて消え、応えるものはいない。


*****


――ガリ……ガリ……、

つーかよぉ。

オレをこんなつまんねぇ雑用に使うんじゃねぇよ。

――ガリ……、

予定が狂った?

知るかよ。

テメーのケツはテメーで拭えっつぅの。

――ガリ……ガリ……ガリ……、

あぁ?

『ヤツらはヤツら同士で殺し合って全滅した』

それでいいんだろ?

――ガリ……、

あぁ、あの死体なら片付けたぜ。

他は知らねぇな。

――ガリ……ガリ……ガリ……、

煩ぇな。

なるべく介入するなとかホザいたのはオメーらだろ。

どっちにしろ、もぉ遅ぇよ。

じゃあな。



――ガリ……ガリ……ガリ……ガリ……ガリ……ガリ……。



…………フン、下らねぇ。

『定められた運命は水面に映る月影のようなもの』じゃねぇよ、クソ下らねぇ。

御大層な理屈捏ねたところで、やってるこたぁ大して変わんねぇだろぉが。

――――『歴史の道標』とよ。


*****


結崎ひよのは困惑していた。

どうやら水族館の非常口の先は山中の工場だったようだ。
確証は無いが、設備の内容と窓から見える森林を考慮するとまず間違い無いだろう。
つまり――水族館と工場の非常口同士が繋がっているということだ。
これはテレビゲーム等に良く登場する、所謂ワープポイント、なのだろう。
原理はさっぱり不明だが、概念としては解り易い。
非常口の裏に回ったらどうなっているのだろう、という疑問が頭を過ぎったが、取り敢えず保留しておく。

何にせよ、これは僥倖と言える。
この工場の入り組み具合なら、後ろからモンタージュの男が追い掛けて来ていたとしても、容易には発見されまい。

問題は、工場の内部の各所が滅茶苦茶に荒らされていたことだ。
金属壁に穿たれた銃痕や大穴、傷だらけのアクリル床が、以前に行われた激しい戦闘を物語っている。
中には丸ごと機能停止している区画もあった。
火災の跡も多数あったが、これはどうやら工場の自動消火システムによって消し止められたらしい。

だが、それらはどれも彼女の困惑の原因ではない。

現在、ひよののいる場所は、工員用の給湯室だ。
給湯室の入口は鋼材がいくつか積み上げられて塞がっていた。
これ見よがしに何かがありそうな様子の部屋に興味を覚えたひよのが、多少梃子摺りながらも鋼材を取り除いて室内に入ってみると、中は異常な状態だった。

入ってすぐの床には、ズタズタに切り裂かれ血に塗れた服が散らかっていた。
トゲの付いた、間違っても本来の用途では使用出来ないであろうバットもベトベトの状態で転がっている。
これだけでも異常だが、その先はもっと異常だった。
部屋の奥は、あるラインから向こうの部分が、壁も床も天井も椅子やポット等の小物も含めて全て溶けていたのだ。
まるで部屋の奥を下にして垂直に傾け、そのまま部屋を丸ごと強酸の風呂に浸けたかのような状態だった。
入口に『給湯室』と書かれていなかったら、何の部屋かも判らない程の惨状だ。

深宇宙の混沌から異形の旧支配者たちでも這い出して来たのだろうか、などと埒も無い妄想が過ぎる。

溶けた領域に近付くと、酸特有の刺激臭が鼻を突いた。

顔を顰めつつ目を凝らす。床には人間大の赤黒い染みが付いていた。
その近くには鈍色のリングが落ちている。
子供の頃に見た悪夢を突然思い出したときのような不吉な感覚を覚え、ひよのは床の染みを回り込んでリングの近くにしゃがみ込んだ。

「これ……首輪!?」

血と肉片と、それに良く判らない粘液で汚れて生臭いが、確かに自分の首に嵌められているものと同一の首輪だった。
手が汚れないように気を付けて指で摘み上げる。

「これ、やっぱり継ぎ目も何もありませんよねぇ……ん~……あれ?」

首輪を矯めつ眇めつしていたひよのだったが、あることに気付き声を上げた。
首輪の内側。
色が付いている訳でもないため気付き難いが、『柳生九兵衛』という文字が小さく彫られている。

――柳生九兵衛。確かその名前は名簿にあったはずだ。
その人物の名が刻まれた首輪がここに転がっているのは、一体何を意味しているのだろうか。
彼が――実際には彼女が、だが――首輪の取り外しに成功してここに首輪を捨てて行った、という可能性も無くはないが……。

「流石にそんなに甘くはないでしょうし、そうすると床のコレは……」

やはり柳生九兵衛という人物のなれの果て――だろうか。
そう思い至って無意識に一歩退いたそのとき、




ドガガン。



「ひゃうっ!?」

部屋の外から重い音。首輪が手から滑り落ちて乾いた音を立てる。
思わず悲鳴を上げてしまったものの、即座に振り返って身構えるひよの。
まさか、工場を破壊した人物がまだ――!?

息を止めて入口のドアを睨む。
だが、それきり外からは何も聴こえて来ない。
不審に思ったそのとき、ガシャンと再び小さな金属音が響いた。
びくりと肩が強張る。
だが――やはりそれ以上は何も起こらない。

そこでひよのはようやく気付いた。今のは給湯室に入るときにどかした鋼材が崩れただけだ、と。
ほっと胸を撫で下ろして警戒を解く。
首筋や腋にじんわりと滲んだ汗が気持ち悪い。

とにかく、これ以上ここで考えていても埒が開かない。
まだ工場内部で探索していない場所もあるのだし、そちらを見回れば判ることもあるかもしれない。
本来ならこんな危なっかしい場所は早々に見切って別の場所へ向かうべきなのかもしれないが、

「やっぱり、この格好で外に出るのはちょっと……」

眉間に皺を寄せて、ちらりと下を見る。
下半身裸というのはやはり心許無い。
出来れば工場内で衣服を調達したいところだ。
とはいえ、本当に危険そうならそんなことには拘らずにさっさと逃げ出すつもりだが。

まぁ、もう少し探索して収穫が無かったら、一先ず神社へ向かえばいいのだ。
神社なら服の一つや二つは当然置いてあるだろうし、何より長居する人がいるとは考え難いため誰かに遭遇する危険性は低い。

当面の方針を決めて、ひよのは足元の首輪を拾い給湯室から出ようとする。
そのとき、床に散乱している切り刻まれた服に混じって、デイパックの破片、そして半開きのメモ帳が覗いていることに気付いた。
そして、そのメモ帳に何がしかの文が書かれていることにも。

汚れてはいるが、何とか読めそうに見える。
ひよのは少し考えた後、それを拾い上げ、頁を捲り始めた。



これによって、彼女は更に困惑の度合を深めることになる――。



【柳生九兵衛@銀魂 死亡確定】

【E-6/工場/1日目 午前】

【結崎ひよの@スパイラル ~推理の絆~】
[状態]:疲労(小)
[服装]:イルカプリントのTシャツ、ストレートのロングヘア
[装備]:
[道具]:支給品一式×3、手作りの人物表、若の成長記録@銀魂、水族館のパンフレット、
    綾崎ハヤテの携帯電話(動作不良)@ハヤテのごとく!、太極符印@封神演義、自転車、
    ヴァッシュ・ザ・スタンピードの手配書×2@トライガン・マキシマム、
    秋葉流のモンタージュ入りファックス、柳生九兵衛の首輪、柳生九兵衛の手記
[思考]
基本:『結崎ひよの』として、鳴海歩を信頼しサポートする。蘇生に関する情報を得る。
0:まともな服を調達する。
1:鳴海歩と合流したい。
2:あらゆる情報を得る為に多くの人と会う。出来れば危険人物とは関わらない。
3:安全な保障があるならば妲己ほか封神計画関係者に接触。
4:三千院ナギに注意。ヴァッシュ・ザ・スタンピードと柳生九兵衛に留意。
5:機が熟したらもう一度博物館に戻ってくる。
6:探偵日記を利用する。
7:復活の玉ほか、クローン体の治療の可能性について調査。
8:もう少し工場内部を探索、収穫が無ければ神社へ向かう。
[備考]
※清隆にピアスを渡してから、歩に真実を語るまでのどこかから参戦。
※手作りの人物表には、今のところミッドバレイ・ザ・ホーンフリーク、太公望の外見、会話から読み取れた簡単な性格が記されています。
※太公望の考察と、殷王朝滅亡時点で太公望の知る封神計画や、それに関わる人々の情報を大まかに知っています。
 ハヤテが太公望に話した情報も又聞きしています。
※超常現象の存在を認めました。封神計画が今ロワに関係しているのではないかと推測しています。
※白スーツの男(ミッドバレイ)を危険人物と認識しました。
※モンタージュの男(秋葉流)が高町亮子を殺したと思っています。
※太極符印にはミッドバレイの攻撃パターン(エンフィールドとイガラッパ)が記録されており、これらを自動迎撃します。
 また、太公望が何らかの条件により発動するプログラムを組み込みました。詳細は不明です。
 結崎ひよのは太極符印の使用法を知りません。
※探偵日記と螺旋楽譜に書かれた情報を得ました。
※フィールド内のインターネットは、外界から隔絶されたローカルネットワークであると思っています。


時系列順で読む


投下順で読む


タグ:

+ タグ編集
  • タグ:
最近更新されたスレッド
ウィキ募集バナー