燃えよ剣(上) ◆yuVy4gPLQo
失った。
男の尊厳も、大人としての意地も。
全て。
全て。
白夜叉と謳われた、かつての武勇の誉れも今の侍には何の価値ももたらさない。
どうしてこうなった……
男の身体から溢れ出る熱いものが、ジワジワと白地の布を染めていく。
それは既に、男が手遅れである事を告げていた。
それは既に、男が手遅れである事を告げていた。
畜生。
虚ろな瞳で銀時は空を仰ぐ。
カラッと晴れた、青い空。
たなびく幾条もの煙が、どこまでも高く、高く昇ってかき消える。
カラッと晴れた、青い空。
たなびく幾条もの煙が、どこまでも高く、高く昇ってかき消える。
あのいけすかねえ野郎の話だと、この島は卵のように殻で包まれているってェ事だったが……
なんてこたァねぇ。
江戸と何一つ変わりゃしねェ空じゃねーか。
この空の下で……今も変わらず、あの連中は馬鹿騒ぎしてんだろうな。
なんてこたァねぇ。
江戸と何一つ変わりゃしねェ空じゃねーか。
この空の下で……今も変わらず、あの連中は馬鹿騒ぎしてんだろうな。
「帰りてェな……あの町に……」
銀時は、少しだけ自嘲気味の笑みを漏らすと――
全身に纏わりつく虚脱感に身を任せる。
こんなことになる前の出来事が、後悔と共に脳裏をよぎった。
全身に纏わりつく虚脱感に身を任せる。
こんなことになる前の出来事が、後悔と共に脳裏をよぎった。
◇ ◇ ◇
白き剣士との邂逅の後、銀時と沙英は当初の予定通り食料品の調達にデパートの地下に向かう。
ヴァッシュたちと別れてから大分時間が経ってしまった事に焦りつつ、まだ食べられそうな物を探す沙英を尻目に
銀髪の侍はデイパックにこれでもかと甘味を詰め込んでいる。
そんな姿に、いつか一緒にベリマで買い物をしたヒロの姿がダブってしまう。
ヴァッシュたちと別れてから大分時間が経ってしまった事に焦りつつ、まだ食べられそうな物を探す沙英を尻目に
銀髪の侍はデイパックにこれでもかと甘味を詰め込んでいる。
そんな姿に、いつか一緒にベリマで買い物をしたヒロの姿がダブってしまう。
「……もぉー、銀さん。そんなに甘いものばっかりじゃ、太っちゃいますよー」
いつもヒロに意地悪混じりにしていた注意を、沙英は若干の寂寥感と共に口にする。
「あー、大丈夫大丈夫。
漫画の主人公ってのは体型かわんねーから。変わったとしても、すぐ戻るから。
……糖尿病寸前って設定も、作者忘れてるしー」
「その若さで糖尿病寸前のほうが太るよりヤバイじゃないですか!!
ってか、作者って何っっ!?」
漫画の主人公ってのは体型かわんねーから。変わったとしても、すぐ戻るから。
……糖尿病寸前って設定も、作者忘れてるしー」
「その若さで糖尿病寸前のほうが太るよりヤバイじゃないですか!!
ってか、作者って何っっ!?」
ビシイッ
手刀の形に作られた沙英の掌が、しゃがみこむ銀時の頭に向かって振り下ろされる。
いわゆるひとつの、「つっこみ」の基本形だ。
それをかわしもせずに受けた銀時も嬉しそうなニヤケ顔で、沙英に向けて親指をグッと立てる。
いわゆるひとつの、「つっこみ」の基本形だ。
それをかわしもせずに受けた銀時も嬉しそうなニヤケ顔で、沙英に向けて親指をグッと立てる。
その反応で、自分がまるで条件反射のように自然と「つっこみ」を入れてしまった事に気付き、沙英の頬がカァーッと羞恥に染まった。
――いつの間にか、何か別の世界の色に染められつつある――
そう自覚出来た事は、この少女にとって幸か不幸か……
助けて、うめてんてー!!
そう自覚出来た事は、この少女にとって幸か不幸か……
助けて、うめてんてー!!
「『沙英はつっこみの才を手に入れたァ!』」
「入れてません!」
◇ ◇ ◇
などといったいきさつを経て、食料と血液を手に入れた二人はデパートを出る。
貧血で倒れた少年の事を思えば、これ以上ぐずぐずしては居られない。
二人は朝食代わりのドラ焼きを口に詰め込みながら歩く。
ほのかな餡子の甘みが、この半日の内にささくれ立った沙英の神経を優しく解していく。
貧血で倒れた少年の事を思えば、これ以上ぐずぐずしては居られない。
二人は朝食代わりのドラ焼きを口に詰め込みながら歩く。
ほのかな餡子の甘みが、この半日の内にささくれ立った沙英の神経を優しく解していく。
「しかし、このデイパックすげーわ。
これがあれば大江戸物流革命起こせちゃうよ?
パン屋の片隅で万屋印の宅急便始めて、銀さん左団扇の生活出来るんじゃね?」
「パン屋の片隅って何?
っていうか、もう万屋じゃないですよね、それ」
「あれあれ、おたく魔女宅みてねーの? あんだけ感動できる映画はそーはねーよ?」
「いや、魔女宅は知ってますけど……もう、どこからつっこめばって、わわっ」
これがあれば大江戸物流革命起こせちゃうよ?
パン屋の片隅で万屋印の宅急便始めて、銀さん左団扇の生活出来るんじゃね?」
「パン屋の片隅って何?
っていうか、もう万屋じゃないですよね、それ」
「あれあれ、おたく魔女宅みてねーの? あんだけ感動できる映画はそーはねーよ?」
「いや、魔女宅は知ってますけど……もう、どこからつっこめばって、わわっ」
建物の出口でいきなり銀時が立ち止まり、沙英はその背中にぶつかりそうになる。
急に立ち止まった銀時を見上げてみれば、顔色は蒼白でただ一点を見つめている。
急に立ち止まった銀時を見上げてみれば、顔色は蒼白でただ一点を見つめている。
「ど、どうしたんですか?」
沙英もそれを確認しようと、銀時の背中からひょいと顔を出す。
と、同時に世界から輪郭が消えた。
靄がかかったようにぼやける景色。
と、同時に世界から輪郭が消えた。
靄がかかったようにぼやける景色。
「ちょっと、銀さんっ! メガネ返してくださいよっ」
「あ、あれー!?、よく見るとこのメガネ可愛くね? ちょっと見せてくんない?
ほら、ここんとことかすげーオシャレじゃね?」
「えっ、ふ、普通のメガネだと思いますけど……」
「あ、あれー!?、よく見るとこのメガネ可愛くね? ちょっと見せてくんない?
ほら、ここんとことかすげーオシャレじゃね?」
「えっ、ふ、普通のメガネだと思いますけど……」
素早く沙英からメガネを奪った銀時の視線の先にあるのは、とても子供には見せられない凄惨な光景。
乱世のあの頃ならばともかく、平和な現代では見かけるはずもない猟奇的な殺人現場。
ひたすら死体を切り刻む事に精を出す一組の男女の姿がそこにあった。
乱世のあの頃ならばともかく、平和な現代では見かけるはずもない猟奇的な殺人現場。
ひたすら死体を切り刻む事に精を出す一組の男女の姿がそこにあった。
(おいぃィィィィー!? 子供の情操教育に悪いってレベルじゃねーよ!? 何やってんの? 何してくれちゃってんの!?
せめてモザイクくらい掛けときやがれーっ!!
PTSDで訴えるぞ、オラァァァ!!)
せめてモザイクくらい掛けときやがれーっ!!
PTSDで訴えるぞ、オラァァァ!!)
あまりにもヤバすぎる参加者たちの凶行に、侍は動揺していた。
近づいて来る男たちにも気付かないほどに。
近づいて来る男たちにも気付かないほどに。
「よぉ、万屋の旦那ァ。まだくたばっていませんでしたかィ」
だから、運が良かったのだろう。
その男が、殺し合いに乗っていない知り合いだった事は。
この時はまだ、銀時はそう思っていた。
その男が、殺し合いに乗っていない知り合いだった事は。
この時はまだ、銀時はそう思っていた。
◇ ◇ ◇
「……そして天空の星々に導かれたかのように出会った二人の勇者は、互いの目的の為に手を取り合う。
人を探しているというオッサ……いや、年上の戦士は人探しの能を持つ少年の話に食いつく。
そこで俺たちは新たに市街地で入手した車を使い、少年と別れた現場に到着。
そして開いていた扉を潜り抜けると、ここに出たってわけでさァ」
「誰に説明してんだよ、オイ。こっち向いて話せバカ」
「いや、ちゃんと説明しとかねぇと色々面倒な事になるんで……で、ここは地図にあるデパートで間違いないんですかィ?」
「ええ、そうですよ? ……屋上からだと、南に海が見えましたし。
あ、私、沙英って言います」
人を探しているというオッサ……いや、年上の戦士は人探しの能を持つ少年の話に食いつく。
そこで俺たちは新たに市街地で入手した車を使い、少年と別れた現場に到着。
そして開いていた扉を潜り抜けると、ここに出たってわけでさァ」
「誰に説明してんだよ、オイ。こっち向いて話せバカ」
「いや、ちゃんと説明しとかねぇと色々面倒な事になるんで……で、ここは地図にあるデパートで間違いないんですかィ?」
「ええ、そうですよ? ……屋上からだと、南に海が見えましたし。
あ、私、沙英って言います」
どうにも釈然としないといった様子の沖田であったが、沙英の自己紹介を受けて他の者もそれぞれ名乗りを上げた。
全員が名乗った所で、沖田の視線が銀時の手元に注がれる。
全員が名乗った所で、沖田の視線が銀時の手元に注がれる。
「ん? 旦那ぁ。その手に持ってるのは新八君じゃねーですかィ?」
「いや、違うからね。これ違うメガネだから。ほらぁ、フレームが華奢で女の子ーって感じでしょ」
「すいやせん、俺ァ別にメガネフェチってわけじゃねーんで……」
「いや、あんたらメガネに凄い拘ってますよね、
フェチってレベルじゃないですよねっっ!?
もうっ、返して下さいっ!」
「いや、違うからね。これ違うメガネだから。ほらぁ、フレームが華奢で女の子ーって感じでしょ」
「すいやせん、俺ァ別にメガネフェチってわけじゃねーんで……」
「いや、あんたらメガネに凄い拘ってますよね、
フェチってレベルじゃないですよねっっ!?
もうっ、返して下さいっ!」
沙英はメガネを奪い返すと、装着。
まったくーと呟きながら顔にしっかりフィットさせるために、フレームをくいくいと指で押しあげる。
その間に銀時はさりげなく動いて、沙英が出口から出ないように進路を塞いだ。
まったくーと呟きながら顔にしっかりフィットさせるために、フレームをくいくいと指で押しあげる。
その間に銀時はさりげなく動いて、沙英が出口から出ないように進路を塞いだ。
「そういえば、ガッツさんってグ……」
「おい、いい加減にしろ。潤也ってのはどこにいるんだ」
「おい、いい加減にしろ。潤也ってのはどこにいるんだ」
沙英の問いかけを遮るように、延々と続く漫才に苛立った黒一色の剣士――ガッツと名乗った男が口を開く。
「おおっと、そうだった。
万屋の旦那、この辺でバカでけぇ男と、生意気そうなガキを見かけませんでしたかィ?
あとバカでけぇ剣持ってる奴」
「生意気なガキと、バカでけぇ剣持ってる馬鹿でけぇ男なら目の前にいるけどー、……もしかして、アレ?」
万屋の旦那、この辺でバカでけぇ男と、生意気そうなガキを見かけませんでしたかィ?
あとバカでけぇ剣持ってる奴」
「生意気なガキと、バカでけぇ剣持ってる馬鹿でけぇ男なら目の前にいるけどー、……もしかして、アレ?」
銀時が視線を向ける方向――出口を出て数十メートルばかし進んだ先に広がる解体ショー。
その主菜は、先ほどまで沖田の同行者であった金剛番長。
そして、その肉体を切り裂く者は……
その主菜は、先ほどまで沖田の同行者であった金剛番長。
そして、その肉体を切り裂く者は……
「あのガキ……」
それを見た沖田は、デパートを飛び出す。
それは江戸の街を守る、警察としての意識から出た行動ではなかった。
たかが数時間共にいただけの人間に、仲間意識を持ったわけでもない。
自分でもわからない何かが、沖田の足を動かしていた。
沖田を追いかけて、ガッツも飛び出す。
それは江戸の街を守る、警察としての意識から出た行動ではなかった。
たかが数時間共にいただけの人間に、仲間意識を持ったわけでもない。
自分でもわからない何かが、沖田の足を動かしていた。
沖田を追いかけて、ガッツも飛び出す。
「オイイィィィィッ!? 人を巻き込もうとするんじゃねぇーーー!!」
銀時もそれに続く。
ただし、それは自分の意思ではなく、その腕をしっかりと握りしめた沖田に引きずられてのものであったが。
ただし、それは自分の意思ではなく、その腕をしっかりと握りしめた沖田に引きずられてのものであったが。
「相手は三人、こっちが二人じゃ数が合わねーじゃねーですかィ。付き合って貰いますぜィ」
「銀さんっ!?」
「沙英ーー! お前はそこで隠れてろっ! 絶対出てくるなっ!」
「銀さんっ!?」
「沙英ーー! お前はそこで隠れてろっ! 絶対出てくるなっ!」
銀時の声で、追いかけようとした沙英の足がピタリと止まる。
初めて名前を呼んだその声に、常の彼らしからぬ真剣なものが含まれていた気がして。
初めて名前を呼んだその声に、常の彼らしからぬ真剣なものが含まれていた気がして。
◇ ◇ ◇
そして金剛番長の最後の雄姿を、三人は目撃する。
死してなお立ちあがるその姿。
されど死せる者に、何かを為す事は出来ない。
だからせめてその意思を受け継ごう。
ゆっくりと倒れる金剛の目が、後は頼むと告げていた。
死してなお立ちあがるその姿。
されど死せる者に、何かを為す事は出来ない。
だからせめてその意思を受け継ごう。
ゆっくりと倒れる金剛の目が、後は頼むと告げていた。
「あらん? 不味い所を見られちゃったわねぇん」
言葉とは裏腹に、まるで罪悪感など感じさせない口調で女が呟く。
美しい女だった。
プリンのように柔らかそうな双丘を、大胆に魅せる露出過剰な衣装。
男なら、誰もがふるいつきたくなる腰の曲線。
瞳は子猫のように移り気な輝きを放ち、玲瓏たる声は喧騒の中でも美しく響きわたるであろう。
燦燦と降り注ぐ日光の下、女は極上の笑顔で不意の闖入者たちを出迎える。
プリンのように柔らかそうな双丘を、大胆に魅せる露出過剰な衣装。
男なら、誰もがふるいつきたくなる腰の曲線。
瞳は子猫のように移り気な輝きを放ち、玲瓏たる声は喧騒の中でも美しく響きわたるであろう。
燦燦と降り注ぐ日光の下、女は極上の笑顔で不意の闖入者たちを出迎える。
だと言うのに、三人が感じたのは凍りつくような悪寒。
底知れぬ深淵に引きずり込まれるような、人外の者が放つ特有の気に、身体が勝手に反応して臨戦態勢を取る。
この女こそがこの惨劇の主役。
誰が説明せずとも、それを直感したが故に。
底知れぬ深淵に引きずり込まれるような、人外の者が放つ特有の気に、身体が勝手に反応して臨戦態勢を取る。
この女こそがこの惨劇の主役。
誰が説明せずとも、それを直感したが故に。
女を守るかのように進み出るのは、ドラゴンころしを持つ体育着の少女。剛力番長。
本来の自分の得物を軽々と持つ少女に、ガッツは軽く瞠目する。
本来の自分の得物を軽々と持つ少女に、ガッツは軽く瞠目する。
放心状態だった潤也も、沖田を見て立ちあがる。
「土方……いや……」
土方は偽名。それに気付いている少年は口ごもる。
別れた時は強い意志を湛えていた視線はキョドり、憔悴しきった脳みそは上手い言い訳も思いつかない。
口元を拭い、立ちあがったのはせめてものプライドか。
だがそんな潤也に対し、沖田は絶対零度の視線を持って答える。
別れた時は強い意志を湛えていた視線はキョドり、憔悴しきった脳みそは上手い言い訳も思いつかない。
口元を拭い、立ちあがったのはせめてものプライドか。
だがそんな潤也に対し、沖田は絶対零度の視線を持って答える。
その場に強く漂う対決の雰囲気。
それを察して、妲己は考える。
妲己の目的は仲間を集め、その力を持ってして神を倒し力を奪う事。
見れば三人とも中々の力を持っていそうだが……
「実験」を見られたのはともかく、「倒されるべき悪」と設定した剛力番長と共に居る所を見られたのは不味かった。
あれだけノリノリで実験していたところを見られては、剛力番長に脅されてやったなどという言い訳も通じないだろうし、
彼女の信頼を損ねてしまう。
それを察して、妲己は考える。
妲己の目的は仲間を集め、その力を持ってして神を倒し力を奪う事。
見れば三人とも中々の力を持っていそうだが……
「実験」を見られたのはともかく、「倒されるべき悪」と設定した剛力番長と共に居る所を見られたのは不味かった。
あれだけノリノリで実験していたところを見られては、剛力番長に脅されてやったなどという言い訳も通じないだろうし、
彼女の信頼を損ねてしまう。
それに人の口に戸は立てられないと言う。
もし上手くこの三人を懐柔し、仲間とする事が出来たとしても、いずれこの事実は誰かに伝わり計画に思わぬ破綻をもたらすかもしれない。
共犯者であるこの子たちなら絶対口を割る事はないだろうが、無関係の人間に見られたのは、いかにも妲己らしからぬ失策だったのである。
もし上手くこの三人を懐柔し、仲間とする事が出来たとしても、いずれこの事実は誰かに伝わり計画に思わぬ破綻をもたらすかもしれない。
共犯者であるこの子たちなら絶対口を割る事はないだろうが、無関係の人間に見られたのは、いかにも妲己らしからぬ失策だったのである。
そもそも、多くの人間が集まるだろうと予測していたデパートの前で「実験」などするべきではなかったのだ。
やるなら九時に禁止区域に設定される山中でするべきだった。
それが判っていて、妲己がここで「実験」を行ったのは……
やるなら九時に禁止区域に設定される山中でするべきだった。
それが判っていて、妲己がここで「実験」を行ったのは……
だって、早く金剛ちゃんの苦痛と絶望に満ちた顔が見たかったんですものんっ☆
あはんっ、と妲己はウィンクをしてみせる。
まぁ、済んでしまった事を考えてもしょうがない。
この場は、いかにしてこの三人を黙らせるかだが……
恐怖? 利益? 詐欺詐称?
いずれにせよ、最終的には死人に口無しということになるのだけれど。
まぁ、済んでしまった事を考えてもしょうがない。
この場は、いかにしてこの三人を黙らせるかだが……
恐怖? 利益? 詐欺詐称?
いずれにせよ、最終的には死人に口無しということになるのだけれど。
……ひとまずここは、利を持って釣ってみようかしらん。
わらわの握っている情報は、恐らくかなり貴重な物のはずよん。
その貴重性の判らないおバカさんなら……今すぐ死んでしまっても一向に構わないわん。
利用出来そうなお利口さんなら、もう少しだけわらわの掌の中で生かしておいてあげようかしらん。
わらわの握っている情報は、恐らくかなり貴重な物のはずよん。
その貴重性の判らないおバカさんなら……今すぐ死んでしまっても一向に構わないわん。
利用出来そうなお利口さんなら、もう少しだけわらわの掌の中で生かしておいてあげようかしらん。
「あはぁん、そんな怖い顔しちゃいや、いやーん」
妲己は悲しげな表情を作ると身を捩じらせる。
テンプテーションの術が使えないとはいえ、妲己がその身に備えた美貌と声は磁力のように一同の注目を集める。
それを知り抜く妲己は、視線を心地よく浴びながらご自慢のセクシーポースを取り、高らかに宣言する。
テンプテーションの術が使えないとはいえ、妲己がその身に備えた美貌と声は磁力のように一同の注目を集める。
それを知り抜く妲己は、視線を心地よく浴びながらご自慢のセクシーポースを取り、高らかに宣言する。
「わらわこそ、ジャンプ史上究極にして至高。不滅のヒロイン、妲己ちゃんよぉーん」
「……」
「……」
その場に満ちた不穏な空気を、自分色に染め直した事を確信し、妲己は喋りはじめた。
どこまでも自分本位に。
どこまでも自分本位に。
「みんな落ちついてぇん、不幸な行き違いがあったけど、これは違うのよぉん……」
「妲己って事は、あの胡喜媚ってのの姉貴か?」
「妲己って事は、あの胡喜媚ってのの姉貴か?」
だが、それをガッツが遮る。
ここに来る前に出会った化け物の少女からその名を聞いた、宝貝合金とやらの情報を知る女性。
ここに来る前に出会った化け物の少女からその名を聞いた、宝貝合金とやらの情報を知る女性。
「あらぁん? 貴方、喜媚を知ってるのん?」
肯定の意を含む返答。
それを聞いた途端、ガッツは突如として、妲己にその牙を剥く。
抜き打ちで放たれる鋼の牙。
別に妲己の非道が許せなかったわけではない。
ガッツにとり、化け物の犠牲者などどうでもいい事だ。
それが見知らぬ人間であれば、尚更に。
そんなものは見飽きている。
それを聞いた途端、ガッツは突如として、妲己にその牙を剥く。
抜き打ちで放たれる鋼の牙。
別に妲己の非道が許せなかったわけではない。
ガッツにとり、化け物の犠牲者などどうでもいい事だ。
それが見知らぬ人間であれば、尚更に。
そんなものは見飽きている。
ただ、憎いだけだ。
積り、積もった憎しみは、理屈抜きでガッツの身体を動かすのだ。
決して共存出来ぬ化け物であることを知るが故に、ガッツは鋼の塊を持って言葉の代わりとする。
積り、積もった憎しみは、理屈抜きでガッツの身体を動かすのだ。
決して共存出来ぬ化け物であることを知るが故に、ガッツは鋼の塊を持って言葉の代わりとする。
それに困るのだ。
首輪の解除などをされては。
絶大な力を誇るゴッドハンド。それを討つには首輪による制限を利用する必要があるのだから。
首輪の解除などをされては。
絶大な力を誇るゴッドハンド。それを討つには首輪による制限を利用する必要があるのだから。
神速で振り下ろされるガッツの牙。
その全てを打ち砕くはずの一撃を、同等の早さで振り回された大剣が阻む。
それは鍛冶屋ゴドーが鍛えし、ドラゴンという幻想を殺すための剣。
まさに鉄塊と呼べるそれは、ガッツの一撃を受けて小揺るぎもしない。
その全てを打ち砕くはずの一撃を、同等の早さで振り回された大剣が阻む。
それは鍛冶屋ゴドーが鍛えし、ドラゴンという幻想を殺すための剣。
まさに鉄塊と呼べるそれは、ガッツの一撃を受けて小揺るぎもしない。
「あの女性を傷付ける者は、私が許しませんわっ! やあああああ!」
「へっ、おもしれェじゃねーかっ!」
「へっ、おもしれェじゃねーかっ!」
一合、二合と剣を撃ち合う。
少女と黒い剣士の間に、たちまち吹き荒れる刃のトルネード。
周囲の介入など許さぬとばかりに、吹きすさぶ剣風が渦を巻く。
少女と黒い剣士の間に、たちまち吹き荒れる刃のトルネード。
周囲の介入など許さぬとばかりに、吹きすさぶ剣風が渦を巻く。
「こっちですわっ!」
その場でやりあっては妲己に危害が及ぶと思ったのか、剛力番長が剣を撃ちあわせながらも移動する。
「オキタッ! そのガキにグリフィスの居場所を聞いとけよっ!」
仕方なくそれに応じたガッツが沖田に一言残すと、二人は次第に遠ざかる。
鋼鉄同士が撃ち合う轟音が小さくなっていき、摩擦で焼けた金属の臭いがその場に残った。
鋼鉄同士が撃ち合う轟音が小さくなっていき、摩擦で焼けた金属の臭いがその場に残った。
「怪獣みてェな連中だぜィ……」
「んー? グリフィス? あー、ガッツってあいつの知り合いか、そういやンな事を言ってたな」
「あれ、万屋の旦那ぁグリフィスってヤローの事知ってたんですかィ? そんならそうと早く言ってくだせェ」
「いや、だって聞いてたのと大分違うよあれ、黒ずくめとか、白髪混じりとか、義手とかそういう判りやすい特徴があるなら
ちゃんと言っておけってんだ」
「んー? グリフィス? あー、ガッツってあいつの知り合いか、そういやンな事を言ってたな」
「あれ、万屋の旦那ぁグリフィスってヤローの事知ってたんですかィ? そんならそうと早く言ってくだせェ」
「いや、だって聞いてたのと大分違うよあれ、黒ずくめとか、白髪混じりとか、義手とかそういう判りやすい特徴があるなら
ちゃんと言っておけってんだ」
銀時と沖田はこそこそと小声で話をする。
グリフィスと名乗る男との合流の手筈。それを聞き沖田は
グリフィスと名乗る男との合流の手筈。それを聞き沖田は
「んじゃ、あのガキは別に焼いて食おうが、煮て食おうが構わねぇわけだ……」
と、ひとりごちる。
その話は妲己の耳にも届いていた。
その話は妲己の耳にも届いていた。
(あはん、わらわは耳もいいのよん……グリフィス、ねぇん。会ってみたいわん)
会話が聞こえた事などおくびにも出さず、妲己は再び口を開く。
「いきなり斬りかかってくるだなんて、酷いわぁん。わらわは話し合いがしたいだけなのに……」
「黙れよ雌豚ァ」
「黙れよ雌豚ァ」
沖田の暴言に妲己はパチクリと目を瞬かせ、可愛らしく小首を傾げる。
何を言っているのかわからないという風に。
何を言っているのかわからないという風に。
「雌……何?」
「雌豚って言ったんでェ。
何がジャンプ史上究極にして至高。不滅のヒロインだィ。
作品中の人気投票だけでも11位なんて取っておいて、よくそんな事が言えたもんだぜィ。
乳首券も発行しねェで記憶に残るほど、ジャンプ読者は甘くねーんだ。
出なおしてきなァ。
「雌豚って言ったんでェ。
何がジャンプ史上究極にして至高。不滅のヒロインだィ。
作品中の人気投票だけでも11位なんて取っておいて、よくそんな事が言えたもんだぜィ。
乳首券も発行しねェで記憶に残るほど、ジャンプ読者は甘くねーんだ。
出なおしてきなァ。
って、この一位の旦那が言ってましたァー」
「二位ーーーーーーーっ!?
お前どんだけ俺に厄介事押し付ける気なのっ!?
俺なんかしたァーー?
お前になんか悪い事したァーーー!?」
「そう……あなた、一位なのねぇん? ジャンプ読者ったらどうしてこういうニートっぽい子に憧れちゃうのかしらん。
わらわ、それじゃ駄目だと思うのん。
わらわみたいな働き者の女性が高い人気を得られる社会……
そんな理想的な社会の為にも……」
お前どんだけ俺に厄介事押し付ける気なのっ!?
俺なんかしたァーー?
お前になんか悪い事したァーーー!?」
「そう……あなた、一位なのねぇん? ジャンプ読者ったらどうしてこういうニートっぽい子に憧れちゃうのかしらん。
わらわ、それじゃ駄目だと思うのん。
わらわみたいな働き者の女性が高い人気を得られる社会……
そんな理想的な社会の為にも……」
妲己は手に持つ槍を潤也に預けると、デイパックの中にその華奢な腕を突っ込む。
細腕に導かれ、現れるのは巨大な砲身。
またネオアームストロングサイクロンジェットアームストロング砲かよっ!!
と、思わずつっこみを入れてしまいそうになる銀時の前で、その支給品は全容を現す。
青褪める銀時。
さすがにこれはなしなんじゃね? と、彼は思った。
細腕に導かれ、現れるのは巨大な砲身。
またネオアームストロングサイクロンジェットアームストロング砲かよっ!!
と、思わずつっこみを入れてしまいそうになる銀時の前で、その支給品は全容を現す。
青褪める銀時。
さすがにこれはなしなんじゃね? と、彼は思った。
巨大な火砲。全体を覆う強固な装甲。いかなる地形をも走破する巨大なキャタピラ。
どう見ても戦車です。本当にありがとうございました。
「って、ちょっと待てェェェーーーー!?」
この戦車こそ、軍事国家アメストリスの北方軍ブリッグズにて開発された新兵器。
軽やかな足取りで、妲己は戦車に乗りこむ。
軽やかな足取りで、妲己は戦車に乗りこむ。
「あなたには、ここで死んで貰うわぁん!」
「いやいやいやいやっ! 俺、ちゃんと働いてますからっ! 子供たちのいいお手本ですからああああああっ!!」
「いやいやいやいやっ! 俺、ちゃんと働いてますからっ! 子供たちのいいお手本ですからああああああっ!!」
無限軌道が回転する。
轟音を上げ、アスファルトを砕きながら、妲己の乗りこんだ戦車は前進する。
恥も外聞もなく背中を見せ、逃げだす侍を追って。
轟音を上げ、アスファルトを砕きながら、妲己の乗りこんだ戦車は前進する。
恥も外聞もなく背中を見せ、逃げだす侍を追って。
「さぁーて、やっと邪魔な連中がいなくなったなァ? 潤也くぅーん?
何か、言い残してェ事はあるか?」
「沖田……」
何か、言い残してェ事はあるか?」
「沖田……」
さっきの黒衣の男が呼んだ名前。
正か誤か。
十分の一=一。
今度こそ偽名などではない、目前の男の真の名前だ。
正か誤か。
十分の一=一。
今度こそ偽名などではない、目前の男の真の名前だ。
喧騒が遠ざかる。
その場に残されたのは、もはや共に歩くことなど出来ないほどに道を違えた少年たちだけだった。
その場に残されたのは、もはや共に歩くことなど出来ないほどに道を違えた少年たちだけだった。
◇ ◇ ◇
「あんなん反則だろうがァーーーー!!」
喚きながら走る。
一定のリズムでキュラキュラと鳴る音は、離れる事も近付く事もない。
もてあそばれているのか。
ビルとビルの隙間にでも入れば、あの巨体だ。
追いかけて来れないだろうが、逆にこちらも狭い道では砲火を避けられない。
結果として銀時は、大通りを延々とマラソンする破目になっていた。
一定のリズムでキュラキュラと鳴る音は、離れる事も近付く事もない。
もてあそばれているのか。
ビルとビルの隙間にでも入れば、あの巨体だ。
追いかけて来れないだろうが、逆にこちらも狭い道では砲火を避けられない。
結果として銀時は、大通りを延々とマラソンする破目になっていた。
銀時は焦りを感じた。
長期戦は出来ない。
いつまでも、こんなマラソンを続けるわけにはいかないのだ。
伸るか反るか。
意を決すると銀時はデイパックの中に手を突っ込み、とある物を掴んで小道へと飛び込んだ。
長期戦は出来ない。
いつまでも、こんなマラソンを続けるわけにはいかないのだ。
伸るか反るか。
意を決すると銀時はデイパックの中に手を突っ込み、とある物を掴んで小道へと飛び込んだ。
「あはん、おバカさんっ☆」
マニュアルを流し読みしながら、銀時を追跡していた妲己は呟く。
砲身を旋回させながら銀時の入った小道の前で止まる。
素早く運転席を立ち、砲撃手用の席に駆け上り、スコープを覗く。
砲身を旋回させながら銀時の入った小道の前で止まる。
素早く運転席を立ち、砲撃手用の席に駆け上り、スコープを覗く。
「あらん?」
いなかった。
あの目立つ銀髪が見当たらない。
妲己はハッチを開けると、ちょうどそこにやってきた黒髪のロン毛に話し掛ける。
あの目立つ銀髪が見当たらない。
妲己はハッチを開けると、ちょうどそこにやってきた黒髪のロン毛に話し掛ける。
「ねぇん? ここを銀髪の天然パーマの人が通らなかったぁん?」
「さぁー? 天パの美形なんて見なかったなァ。
それよりちょっと邪魔だから、そこ戦車動かしてっ! 通れないでしょー?」
「あはん、ごめんなさぁい」
「さぁー? 天パの美形なんて見なかったなァ。
それよりちょっと邪魔だから、そこ戦車動かしてっ! 通れないでしょー?」
「あはん、ごめんなさぁい」
黒髪のロン毛が通り過ぎていく。
果たしてあの銀髪はどこにいったのか……
果たしてあの銀髪はどこにいったのか……
「って、そんなベタベタなネタに、わらわがひっかかるわけないでしょぉん?」
ガガガガガガガガガガガガガッ!!
主砲の脇に備え付けられた機関銃が火を放つ。
刀を抜き放ち、自分に向かってくる銃弾を次々と斬り払い、あるいは避けるロン毛だったが、遂に一発の銃弾が
髪に当たりその勢いで、黒髪全てが吹っ飛ぶ。
刀を抜き放ち、自分に向かってくる銃弾を次々と斬り払い、あるいは避けるロン毛だったが、遂に一発の銃弾が
髪に当たりその勢いで、黒髪全てが吹っ飛ぶ。
「あー! 俺のサラサラヘアーがー!?」
吹っ飛んだかつらの下から現れる銀髪。
銀時がデパートのマネキンから奪った黒髪ストレートのかつらは、追撃の銃弾を受け哀れにも四散した。
銀時がデパートのマネキンから奪った黒髪ストレートのかつらは、追撃の銃弾を受け哀れにも四散した。
「ヅラァーーーーーッ!!」
銃声が止む。代わりに響くのは、妲己の高笑い。
「愉快な人ねぇん。わらわ、ちょっとだけ興味が湧いちゃったわぁん」
「ハッ、そういうあんたも中々ノリがいいじゃねーの。
さっきの、あんな見え見えの挑発にひっかかるようなタマじゃないでしょお宅。
何? 何が狙いなの?」
「ギャグはあなたたちの専売特許じゃないのよぉーん。
そ・れ・に・あの二人のお互い見つめ合う熱い視線……いやぁーん、わらわドキドキしちゃうんっ!
ちょっとだけ二人きりにさせてあげたら、どんな事になるのかしらぁん。
ねぇん、貴方もそう思わないん?」
「ぜーんぜん思いません。俺、BLとかに興味ないんで……
つーか、あいつドSだよ、相方ボロクソにされちゃうよ? 早く戻ってあげた方がいいんじゃね?
俺なんかに構ってる暇、ないんじゃね?」
「いいのよん、わらわ、ちょっとやりすぎちゃったみたいでぇん……
あの子、使い物にならなくなっちゃってるかもしれないのん。
そんな時は、更に叩いてあげるのよぉん。
ほら、鉄は熱いうちに打てって言うでしょん?
楽しみだわぁん。窮地に追い詰められたあの子が、どんな風に切り抜けるのか」
「ハッ、そういうあんたも中々ノリがいいじゃねーの。
さっきの、あんな見え見えの挑発にひっかかるようなタマじゃないでしょお宅。
何? 何が狙いなの?」
「ギャグはあなたたちの専売特許じゃないのよぉーん。
そ・れ・に・あの二人のお互い見つめ合う熱い視線……いやぁーん、わらわドキドキしちゃうんっ!
ちょっとだけ二人きりにさせてあげたら、どんな事になるのかしらぁん。
ねぇん、貴方もそう思わないん?」
「ぜーんぜん思いません。俺、BLとかに興味ないんで……
つーか、あいつドSだよ、相方ボロクソにされちゃうよ? 早く戻ってあげた方がいいんじゃね?
俺なんかに構ってる暇、ないんじゃね?」
「いいのよん、わらわ、ちょっとやりすぎちゃったみたいでぇん……
あの子、使い物にならなくなっちゃってるかもしれないのん。
そんな時は、更に叩いてあげるのよぉん。
ほら、鉄は熱いうちに打てって言うでしょん?
楽しみだわぁん。窮地に追い詰められたあの子が、どんな風に切り抜けるのか」
妲己は頬を薔薇色に染めて、うっとりと答える。
「でも貴方、意外と察しがいいのねぇん。わらわ、見直したわぁん。
どう? わらわと組む気はないかしらん?
たぶん、わらわ以上にこのゲームの真実に近づいている人間は、この島にはいないと思うわよぉん?
この首輪、外したくないかしらん?」
どう? わらわと組む気はないかしらん?
たぶん、わらわ以上にこのゲームの真実に近づいている人間は、この島にはいないと思うわよぉん?
この首輪、外したくないかしらん?」
妲己から差し出された、和解の言葉。
この騒動に巻き込まれただけの銀時に、戦う理由などない。
思わずそれに乗っかろうとして、銀時は思い出す。
金剛の最後を。
この女がやった、死体損壊……いや、生体実験を。
この騒動に巻き込まれただけの銀時に、戦う理由などない。
思わずそれに乗っかろうとして、銀時は思い出す。
金剛の最後を。
この女がやった、死体損壊……いや、生体実験を。
泥水啜ろうが構わねぇ。
生き延びる事が出来るなら、泥水だろうが、残飯だろうが気にしねェよ。
だがよ、人の生き血を啜るのだけは御免だぜ。
そんな風に生き延びて、あいつらになんて言うんだ?
お天道様に顔向け出来ねえ。
楽しく笑って生きていけねえんだよ。
だからっ!
生き延びる事が出来るなら、泥水だろうが、残飯だろうが気にしねェよ。
だがよ、人の生き血を啜るのだけは御免だぜ。
そんな風に生き延びて、あいつらになんて言うんだ?
お天道様に顔向け出来ねえ。
楽しく笑って生きていけねえんだよ。
だからっ!
「どっちかっつーと、俺もSなんでぇー。
あんたみたいな超ドSとは、相性が悪いかなーなんてぇー」
「そう……残念ねぇん。まぁ毎回こんな展開にされたんじゃ、わらわも困っちゃうしぃ……
確かに相性が悪いかもねぇん」
あんたみたいな超ドSとは、相性が悪いかなーなんてぇー」
「そう……残念ねぇん。まぁ毎回こんな展開にされたんじゃ、わらわも困っちゃうしぃ……
確かに相性が悪いかもねぇん」
あくまでも下手に断る銀時の返事に、さして残念という色も見せずに妲己は頬に手を当てる。
「じゃあ、そろそろ死んで貰えるかしらぁん?」
いつの間にか、銀時に向かい照準が合わせられていた主砲。
妲己の宣告と、砲弾が飛び出すのは同時だった。
妲己の宣告と、砲弾が飛び出すのは同時だった。
◇ ◇ ◇
それは主催側に渡された一枚の紙っきれに浮きだした、たった数文字の情報でしかなかった。
真偽のほども、わからない。
それが兄の事なのかどうかすら未確定な、情報とも呼べないものに踊らされて。
妲己という、稀代の悪女に唆されて。
俺は金剛を裏切った。
真偽のほども、わからない。
それが兄の事なのかどうかすら未確定な、情報とも呼べないものに踊らされて。
妲己という、稀代の悪女に唆されて。
俺は金剛を裏切った。
いや、……違うな。そうじゃない。
わかってた。
俺にだけは、わかってた。
ただ、認められなかっただけだ。
死んだ人間が生き返る。そんな非現実的な現実を。
十分の一=一。
今、この島には俺の兄貴がいる。
だから、俺は――
死んだ人間が生き返る。そんな非現実的な現実を。
十分の一=一。
今、この島には俺の兄貴がいる。
だから、俺は――
「ふゥん、それでそれで?」
酷薄な声で沖田は続きを促すと、少年を踏みつける。
自分が折った、右手首。
その明確すぎるウィークポイントを、足のつま先でグリグリと。
自分が折った、右手首。
その明確すぎるウィークポイントを、足のつま先でグリグリと。
痛覚が電撃となって神経を伝わり、潤也は絶叫する。
砕けた骨が肉の中で攪拌し、潤也は腕を斬り落としたくなるほどの激痛に喘ぐ。
砕けた骨が肉の中で攪拌し、潤也は腕を斬り落としたくなるほどの激痛に喘ぐ。
戦いになど、なるはずがなかった。
今行われているのは、事情聴取という名の拷問行為。
再び首輪の片方は沖田の手に。
潤也の身体は青あざだらけの血まみれで、情けなく地面に倒れ伏す。
荒い息をつきながら、途絶え途絶えにデパートでの出来事を全て喋らされた。
今行われているのは、事情聴取という名の拷問行為。
再び首輪の片方は沖田の手に。
潤也の身体は青あざだらけの血まみれで、情けなく地面に倒れ伏す。
荒い息をつきながら、途絶え途絶えにデパートでの出来事を全て喋らされた。
息を吸うだけで金剛の脳みその味がリフレイン。
全身の神経からむちゃくちゃに入力される痛みのせいで、偏頭痛がした。
全身の神経からむちゃくちゃに入力される痛みのせいで、偏頭痛がした。
……なぜ、こいつと対決しようなどと思ったのか。
何か理由があったはずなのに、痛くて頭が働かない。
糞、人の話も聞かないで好き勝手に殴りやがってっ!
何か理由があったはずなのに、痛くて頭が働かない。
糞、人の話も聞かないで好き勝手に殴りやがってっ!
どかんどかんと、さっきから砲撃音が耳障りで敵わない。
今も好き勝手暴れているらしいあの女とは裏腹の、この身の情けなさが恨めしい。
そんな潤也の内心など窺う事もなく、沖田は尋問を続ける。
今も好き勝手暴れているらしいあの女とは裏腹の、この身の情けなさが恨めしい。
そんな潤也の内心など窺う事もなく、沖田は尋問を続ける。
「俺は……兄貴をこの殺し合いから救い出す。妲己についたのは、そのためだ。
あの女は、この首輪をどうにか出来るかもしれない。
俺はただ……脱出の可能性が高い方を選んだだけだ……」
「可能性ねェ。それがてめーが考えた結果って奴かィ。
その結果、こうなった訳だがよ……どうやってこの状況から抜け出すってんでェ?」
あの女は、この首輪をどうにか出来るかもしれない。
俺はただ……脱出の可能性が高い方を選んだだけだ……」
「可能性ねェ。それがてめーが考えた結果って奴かィ。
その結果、こうなった訳だがよ……どうやってこの状況から抜け出すってんでェ?」
どうするか、だって?
ああ、そうだ、そうだった。
暴力でこいつに敵いっこないのは先刻承知。
それでもこいつとはもう一回話さなきゃいけない気がした。
それは……
ああ、そうだ、そうだった。
暴力でこいつに敵いっこないのは先刻承知。
それでもこいつとはもう一回話さなきゃいけない気がした。
それは……
「手を……組まないか?」
「あァ?」
「あァ?」
こいつに、手を借りようと思ったからだ。
「あんたに兄貴の護衛を頼みたいんだ。
正直、あの女に兄貴を抑えられるとヤバい。
兄貴を盾に取られたら、俺はあの女の命令を聞くしかなくなっちまう」
正直、あの女に兄貴を抑えられるとヤバい。
兄貴を盾に取られたら、俺はあの女の命令を聞くしかなくなっちまう」
そう。妲己は確かに脱出に一番近そうな奴だが、同時に最悪に危険な女だ。
気まぐれ一つで俺を生かし、気まぐれ一つで金剛を殺す。
そんな女の近くに兄貴を置いておけるわけがない。
守ってくれるなんて口約束、信用出来るはずがない。
現に今だって、俺をほっぽりだして遊んでやがる。
気まぐれ一つで俺を生かし、気まぐれ一つで金剛を殺す。
そんな女の近くに兄貴を置いておけるわけがない。
守ってくれるなんて口約束、信用出来るはずがない。
現に今だって、俺をほっぽりだして遊んでやがる。
……だけど今の状況は、予想外の好機とも言えるのかもしれない。
こうして妲己の眼の届かない所で、誰かにこんな事を依頼出来るチャンスはもうないだろう。
兄貴の居場所は、既に妲己に聞かせてしまった。
妲己が遊びに興じている今の内しかないんだ。
こうして妲己の眼の届かない所で、誰かにこんな事を依頼出来るチャンスはもうないだろう。
兄貴の居場所は、既に妲己に聞かせてしまった。
妲己が遊びに興じている今の内しかないんだ。
「おいおい、いつまで寝ぼけてやがるんだ。今更俺と手ェ組みてェだと?
さすが金剛の旦那ァ手玉に取った性悪だぜ。
ケツの軽さもとんでもねーや」
さすが金剛の旦那ァ手玉に取った性悪だぜ。
ケツの軽さもとんでもねーや」
……まぁ、そう来るだろう。
当然の反応だ。
だけど、俺は知ってる。こいつの急所を。
俺と同じ痛みを抱えている男の、決して無視出来ない泣き所を。
当然の反応だ。
だけど、俺は知ってる。こいつの急所を。
俺と同じ痛みを抱えている男の、決して無視出来ない泣き所を。
「タダとは言わねェよ。
報酬は……情報、だ」
報酬は……情報、だ」
そしてこいつも知っている。
嘘発見器みたいな、俺の能力。
その能力を駆使して得る情報こそがこいつとの取引材料。
嘘発見器みたいな、俺の能力。
その能力を駆使して得る情報こそがこいつとの取引材料。
「人を生き返らせる方法。
……そのマジな情報を、俺は妲己から聞き出して、アンタに提供する」
……そのマジな情報を、俺は妲己から聞き出して、アンタに提供する」
こいつはリアリストだ。
人が生き返るなんて、簡単には信じられないだろう。俺だって信じなかった。
人が生き返るなんて、簡単には信じられないだろう。俺だって信じなかった。
だけど人が生き返った事例を前にして、考えないはずがない。
もし、そんな奇跡が実在するのなら。
肉親や恋人……死に別れた大切な人と、また逢えるかもしれないと。
もし、そんな奇跡が実在するのなら。
肉親や恋人……死に別れた大切な人と、また逢えるかもしれないと。
だけど、そんな肉親なら持って当然の願望を、
「ンなモン、興味ねェなァ」
この男は一言の元に切り捨てた。
なん……だと? こいつ……今なんてった?
信じられない答えを聞き、空白になった俺の意識に稲妻が走る。
沖田の靴が、再び踏み下ろされたのだ。
沖田の靴が、再び踏み下ろされたのだ。
「ぐああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああっ!!
……い、生き返りを……し、信じてねー……のかよっ!?
それとも……俺が金剛を裏切ったのが、許せねェのか?
こんなっ、こんな最後の一人まで殺し合わせるような島でよォッ!」
それとも……俺が金剛を裏切ったのが、許せねェのか?
こんなっ、こんな最後の一人まで殺し合わせるような島でよォッ!」
興味がないなんて、あり得ない。
断られた原因が、他にあると考えて俺はそれを尋ねる。
断られた原因が、他にあると考えて俺はそれを尋ねる。
「金剛の旦那には忠告したんだがな?
てめーを信じるなってよ。
それでああなっちまったなら、まァ言っちゃ悪ィが自業自得って奴だ。
……それに生き返りの件についちゃあ、信じるも信じねぇもねぇよ
俺ァ姉上を生き返らせる気なんて、端からねーんだからよ?」
「な……んでだ……」
「そうさな……まァ、金剛の旦那風に言えば、スジが通らねェーからだって所かねェ
俺はてめーみてェに情けなくあっちこっちに流されねェ。
兄貴が死んだから生き方変えて、生き返ったからまた変えて、それで次はどうすんだィ?
……フラフラフラフラ逃げてんじゃねェや。反吐が出るぜィ」
てめーを信じるなってよ。
それでああなっちまったなら、まァ言っちゃ悪ィが自業自得って奴だ。
……それに生き返りの件についちゃあ、信じるも信じねぇもねぇよ
俺ァ姉上を生き返らせる気なんて、端からねーんだからよ?」
「な……んでだ……」
「そうさな……まァ、金剛の旦那風に言えば、スジが通らねェーからだって所かねェ
俺はてめーみてェに情けなくあっちこっちに流されねェ。
兄貴が死んだから生き方変えて、生き返ったからまた変えて、それで次はどうすんだィ?
……フラフラフラフラ逃げてんじゃねェや。反吐が出るぜィ」
……スジが通らないからって、肉親を諦めるってのかよ……
冗談じゃねぇ。冗談じゃねぇぞ。
そうじゃねぇだろ。
スジなんてもん、どうだっていいだろうっ!
自分が畜生道に落ちてでも、肉親には生きて貰いたい。
仇がいるならそいつを殺したいと思うのが肉親の情って奴だ。
それをこいつは……自分の生き方って奴を優先して、肉親を見捨てると。
そう言っているんだ。
冗談じゃねぇ。冗談じゃねぇぞ。
そうじゃねぇだろ。
スジなんてもん、どうだっていいだろうっ!
自分が畜生道に落ちてでも、肉親には生きて貰いたい。
仇がいるならそいつを殺したいと思うのが肉親の情って奴だ。
それをこいつは……自分の生き方って奴を優先して、肉親を見捨てると。
そう言っているんだ。
「言いてェ事はそれだけかィ? んじゃ、そろそろ仕舞いにするかァ」
――ふざけるな
左手を探るように動かす。
地面に転がる槍を、握りしめた。
左手を探るように動かす。
地面に転がる槍を、握りしめた。
流されて、何が悪い。
逃げ出して、何が悪い。
スジだとか、生き方だとかに拘るのは立派だよ。
俺の兄貴もそういう人だった。
でも一番大切なのはそんなものじゃないだろう。
逃げ出して、何が悪い。
スジだとか、生き方だとかに拘るのは立派だよ。
俺の兄貴もそういう人だった。
でも一番大切なのはそんなものじゃないだろう。
喫茶店にいたヨボヨボの爺さん。
それを見て兄貴は言ってた。
あんな風に、ただ生きてるだけの人生に意味はあるのかって。
それを見て兄貴は言ってた。
あんな風に、ただ生きてるだけの人生に意味はあるのかって。
群衆の雰囲気に飲まれた大勢の人たちを前にして、兄貴は言った。
流されないお前は強い。俺はいつも流されてたって。
だけど、その後兄貴は対決したんだよな。
突然叫び始めた男……あれが多分、兄貴の力……腹話術って奴だったんだ。
流されないお前は強い。俺はいつも流されてたって。
だけど、その後兄貴は対決したんだよな。
突然叫び始めた男……あれが多分、兄貴の力……腹話術って奴だったんだ。
……でも違うぜ兄貴。
兄貴が命を懸けてまで、何かと対決する必要なんてなかったんだ。
流されて、安全に、ただ生きていけばいいじゃないか。
死んじまうより、ずっといいじゃないか……
兄貴が命を懸けてまで、何かと対決する必要なんてなかったんだ。
流されて、安全に、ただ生きていけばいいじゃないか。
死んじまうより、ずっといいじゃないか……
兄貴は……俺を一人残してまで、変えなきゃならない大切な何かがあったのか?
でも兄貴が対決して、変えようとした世界。
そんなものより俺は。
俺はずっと兄貴と一緒にいられる未来が欲しかった。
だから俺は、どんなにみっともなくたって、何を犠牲にしたって、兄貴と一緒にここを脱出するんだっ!
ザワザワと、髪の毛が伸びる。
痛みはもう感じない。
槍を握る腕が熱い。
何かを囁く声が聞こえる。
俺はそれに応と答えた。
意識が真っ白に染まる直前に。
山の上を飛ぶ鷹を見た。
痛みはもう感じない。
槍を握る腕が熱い。
何かを囁く声が聞こえる。
俺はそれに応と答えた。
意識が真っ白に染まる直前に。
山の上を飛ぶ鷹を見た。
そして彼は曲がった。
困惑、疑心、恐怖、さまざまなベクトルから叩かれ、ネジ曲げられ、流された。
だからこれは、魔王にならなかった男の物語。
獣の槍に選ばれた、ただの一人の哀れな男の話。
困惑、疑心、恐怖、さまざまなベクトルから叩かれ、ネジ曲げられ、流された。
だからこれは、魔王にならなかった男の物語。
獣の槍に選ばれた、ただの一人の哀れな男の話。
◇ ◇ ◇
先ほどの場所から、やや離れた路上。
斬り結ぶ刃が弾け合い、二人の距離がひとまず離れる。
キリバチを正眼に構え、ガッツは対峙する少女を観察する。
動きやすそうではあるが、下着のように必要最低限の部分しか覆っていない衣服。
その珍妙な服から突き出た細い手足は、どこにでもいる少女のそれだった。
だと言うのに、ほとんど重みを感じないようにあの剣を振るう、その膂力こそが異常。
斬り結ぶ刃が弾け合い、二人の距離がひとまず離れる。
キリバチを正眼に構え、ガッツは対峙する少女を観察する。
動きやすそうではあるが、下着のように必要最低限の部分しか覆っていない衣服。
その珍妙な服から突き出た細い手足は、どこにでもいる少女のそれだった。
だと言うのに、ほとんど重みを感じないようにあの剣を振るう、その膂力こそが異常。
その異常に、ガッツは心当たりがある。
使徒。
人を外れた、魔の存在。
常は人に擬態しているその化け物は、人の姿を取っていても常軌を逸した力を持つ。
だが――
使徒。
人を外れた、魔の存在。
常は人に擬態しているその化け物は、人の姿を取っていても常軌を逸した力を持つ。
だが――
(烙印が反応しねえ……使徒じゃねェのか?)
訝しむガッツであったが、闘いから意識を逸らしたりはしない。
使徒ではないにしても、剣を合わせて感じ取った相手の剛力は本物だ。
使徒ではないにしても、剣を合わせて感じ取った相手の剛力は本物だ。
そして……相手の構える大剣――ドラゴンころし。
グリフィスと同じゴッドハンドの一人、胎海の娼姫スランを退け、大帝ガニシュカの霧の身体を霧散せしめた剣。
グリフィスと同じゴッドハンドの一人、胎海の娼姫スランを退け、大帝ガニシュカの霧の身体を霧散せしめた剣。
あれは取り返す必要がある。
ゴッドハンドに転生したグリフィスには、並大抵の武器は通じない。
奴を倒すには、あの剣が必要だ……
ゴッドハンドに転生したグリフィスには、並大抵の武器は通じない。
奴を倒すには、あの剣が必要だ……
ガッツの表情が険しさを増す。
少女が奇妙な行動を取ったのだ。
見慣れぬ道具を口に当て、何事かを呟いている。
何かの攻撃の前触れか。
ガッツは腰を低く落とすと、突進の構えを取る。
少女が奇妙な行動を取ったのだ。
見慣れぬ道具を口に当て、何事かを呟いている。
何かの攻撃の前触れか。
ガッツは腰を低く落とすと、突進の構えを取る。
相手が何をやらかそうが関係ねえ。
いつも通りにやるだけだ。
敵がいるならねじ伏せる。
奪われた物は奪い返す。
ガキのころから何一つ変わる事のないルール。
そのルールに従い、獣は吼える。
目の前の邪魔者を蹴散らし、グリフィスへと続く道を勝ち取る為に。
いつも通りにやるだけだ。
敵がいるならねじ伏せる。
奪われた物は奪い返す。
ガキのころから何一つ変わる事のないルール。
そのルールに従い、獣は吼える。
目の前の邪魔者を蹴散らし、グリフィスへと続く道を勝ち取る為に。
剛力番長は鞄からボイスレコーダー――彼女の名付けた所の正義日記を取りだすと自分の行動指針を吹きこみ始める。
いきなり妲己を攻撃した目の前の男の非道さを。
自分の正義を信じてくれる女性の事を。
そして、死者を蘇らせる事は、確かに可能なのだと言う事を。
いきなり妲己を攻撃した目の前の男の非道さを。
自分の正義を信じてくれる女性の事を。
そして、死者を蘇らせる事は、確かに可能なのだと言う事を。
「……だから私はもう理解を求めようとはいたしません。悪と思われたって、……構いません!
正義とは結果です。最後にみんなが生き返る事が出来れば……それで全部、丸く収まるんですっ!!」
正義とは結果です。最後にみんなが生き返る事が出来れば……それで全部、丸く収まるんですっ!!」
呟きは段々大きくなり、最後には絶叫となる。
妲己の行ったおぞましい実験を容認した事も、マシン番長と金剛番長を自らの意思で殺害した事も、全ては全員の生還
につながると思えばこそ。
もはや剛力番長に後退の二文字はあり得ないのだ。
妲己の行ったおぞましい実験を容認した事も、マシン番長と金剛番長を自らの意思で殺害した事も、全ては全員の生還
につながると思えばこそ。
もはや剛力番長に後退の二文字はあり得ないのだ。
「オオオオオオオッ!!」
「たああああああっ!!」
「たああああああっ!!」
ソプラノとバリトンの雄叫びが混ざり合い、唱和を成す。
再び響きわたる剣戟の音。
その残響をも打ち消す、裂帛の気合がその場に満ちる。
再び響きわたる剣戟の音。
その残響をも打ち消す、裂帛の気合がその場に満ちる。
不味いな。
とガッツは思った。
目がいいのだろう。
刃筋もろくに立っていない素人臭い剣筋のくせに、ガッツの巧妙なフェイントにも惑うことなく確実に剣を合わせて来る。
これでは剣が持たない。
自身の得物が相手より劣るという、ガッツにとって初めての経験。
しかも、その相手が自分の愛剣とは……皮肉にもほどがあるだろう。
だが、その程度で揺らぐほど、ガッツの積み重ねてきたものは甘くない。
とガッツは思った。
目がいいのだろう。
刃筋もろくに立っていない素人臭い剣筋のくせに、ガッツの巧妙なフェイントにも惑うことなく確実に剣を合わせて来る。
これでは剣が持たない。
自身の得物が相手より劣るという、ガッツにとって初めての経験。
しかも、その相手が自分の愛剣とは……皮肉にもほどがあるだろう。
だが、その程度で揺らぐほど、ガッツの積み重ねてきたものは甘くない。
「とぉっ!!」
剛力番長が飛翔する。
そして上空から、落下エネルギーをも利用して放たれる技は……
そして上空から、落下エネルギーをも利用して放たれる技は……
「フォール・インパクト(落下する衝撃)!!」
ブォンという風切り音を発して、巨大な剣が振り下ろされる。
その破壊力は通常の攻撃の数倍にも達しているだろう。
まさに剛力番長必殺の一撃。
スピードも、タイミングも、自信を持って放たれた一撃であった。
その破壊力は通常の攻撃の数倍にも達しているだろう。
まさに剛力番長必殺の一撃。
スピードも、タイミングも、自信を持って放たれた一撃であった。
しかし、剛力番長が必殺を確信した一撃はガッツの身体をすり抜ける。
敵の攻撃を紙一重で避けるという、ガッツの驚異的な動体視力と経験がそれを可能とする。
敵の攻撃を紙一重で避けるという、ガッツの驚異的な動体視力と経験がそれを可能とする。
「ッ!?」
愕然とする剛力番長。
自分の必殺技をかわした黒衣の剣士が、剣を脇に構えるのが見える。
だが、避けられない。
まさに今、渾身の一撃を撃ち込み終わり、身体が宙にある彼女には避ける事が出来ない。
あと、一秒で足が地面に着く。
着いたら後先考えないで全力で飛び退く。
それとも体勢をなんとか立て直して、剣で受けるか?
どちらにせよ、地に足がつかなければどうにもならない。
自分の必殺技をかわした黒衣の剣士が、剣を脇に構えるのが見える。
だが、避けられない。
まさに今、渾身の一撃を撃ち込み終わり、身体が宙にある彼女には避ける事が出来ない。
あと、一秒で足が地面に着く。
着いたら後先考えないで全力で飛び退く。
それとも体勢をなんとか立て直して、剣で受けるか?
どちらにせよ、地に足がつかなければどうにもならない。
(ああっ、早く……早くっ!!)
最強の眼に写される敵の刃は、間近にまで迫っている。
募る焦燥。
足が……着いたっ!!
募る焦燥。
足が……着いたっ!!
グシャッ
選択の余地などなかった。
着地した瞬間、吹き飛ばされる剛力番長。
ガッツの振るった一撃をまともに受け、その小さな体は地面を転がり、這いつくばる。
着地した瞬間、吹き飛ばされる剛力番長。
ガッツの振るった一撃をまともに受け、その小さな体は地面を転がり、這いつくばる。
だが、難敵を下したはずのガッツの表情に、勝利を喜ぶ色など微塵もない。
その理由は、剛力番長を斬った時の感触にあった。
ノコギリ状の大剣キリバチ。そのノコギリの刃のいくつかが潰れていたのだ。
その理由は、剛力番長を斬った時の感触にあった。
ノコギリ状の大剣キリバチ。そのノコギリの刃のいくつかが潰れていたのだ。
立ち上がる剛力番長。
鮫にでも噛まれたかのように、引き裂かれた体操着が痛々しい。
しかし、その白い素肌には傷一つ付いていなかった。
鮫にでも噛まれたかのように、引き裂かれた体操着が痛々しい。
しかし、その白い素肌には傷一つ付いていなかった。
ヒュペリオン体質。
剛力番長の強靭な筋繊維の鎧は、並大抵の刃など通さない。
とはいえ、それはどんな攻撃を受けても平気というわけでは決してない。
彼女とて、ダメージは受けるのだ。
西洋鎧を纏った騎士が、打撃武器によって骨や内臓を損なうように。
剛力番長の強靭な筋繊維の鎧は、並大抵の刃など通さない。
とはいえ、それはどんな攻撃を受けても平気というわけでは決してない。
彼女とて、ダメージは受けるのだ。
西洋鎧を纏った騎士が、打撃武器によって骨や内臓を損なうように。
そう。
金剛番長との闘い、そして今の一撃を受け、剛力番長の身体は限界を迎えつつあった。
金剛番長との闘い、そして今の一撃を受け、剛力番長の身体は限界を迎えつつあった。
◇ ◇ ◇
マラソンはまだ続いていた。
侍は小刻みに角を曲がり、なんとか隙を見て民家のドアを蹴破り、中に踏み込む。
息が荒い。
痛みはもはや、無視しきれぬものになっている。
一分……否、三十秒でいい。
事態を打開するための時間が必要だった。
侍は小刻みに角を曲がり、なんとか隙を見て民家のドアを蹴破り、中に踏み込む。
息が荒い。
痛みはもはや、無視しきれぬものになっている。
一分……否、三十秒でいい。
事態を打開するための時間が必要だった。
だが。
ドォッ――ゴオオオオーーーーンッ!!
そんな余裕は与えぬとばかりに炸裂する主砲。
その大部分が可燃物で出来た住宅は、砲弾にたっぷりと詰め込まれた火薬によってあっという間に炎上する。
先ほどからあちらこちらで起こる火災は止まる所を知らず、市街のあちこちは火に包まれていた。
それは全て、銀時と妲己の鬼ごっこの副産物であった。
その大部分が可燃物で出来た住宅は、砲弾にたっぷりと詰め込まれた火薬によってあっという間に炎上する。
先ほどからあちらこちらで起こる火災は止まる所を知らず、市街のあちこちは火に包まれていた。
それは全て、銀時と妲己の鬼ごっこの副産物であった。
爆風と煙に巻かれて、たまらず民家から飛び出した銀時を機関銃が狙う。
銀色の残光を描く剣閃はそれを全て斬り払うが、もはや限界も近いだろう。
煙は視界を奪い、さらには銀時の呼吸をも妨げる。
銃弾に砕かれたコンクリの破片がこつりと額に当たった。
流れ出る一筋の血が、汗と混じって銀時の顔を戦鬼のように赤く染めた。
銀色の残光を描く剣閃はそれを全て斬り払うが、もはや限界も近いだろう。
煙は視界を奪い、さらには銀時の呼吸をも妨げる。
銃弾に砕かれたコンクリの破片がこつりと額に当たった。
流れ出る一筋の血が、汗と混じって銀時の顔を戦鬼のように赤く染めた。
時系列順で読む
投下順で読む
| 089:TOUGH BOY | 秋山優(卑怯番長) | 115:燃えよ剣(下) |
| 098:僕らはみんな生きている | 安藤潤也 | 115:燃えよ剣(下) |
| 098:僕らはみんな生きている | 白雪宮拳(剛力番長) | 115:燃えよ剣(下) |
| 098:僕らはみんな生きている | 妲己 | 115:燃えよ剣(下) |
| 104:こんなにも青い空の下で | 植木耕助 | 115:燃えよ剣(下) |
| 100:天は人の上に人をつくらず俺をつくりました | 沖田総悟 | 115:燃えよ剣(下) |
| 100:天は人の上に人をつくらず俺をつくりました | ガッツ | 115:燃えよ剣(下) |
| 105:ワールドエンブリオ | 沙英 | 115:燃えよ剣(下) |
| 105:ワールドエンブリオ | 坂田銀時 | 115:燃えよ剣(下) |