アットウィキロゴ
新漫画バトルロワイアル
掲示板 掲示板 ページ検索 ページ検索 メニュー メニュー

Little Brothers!

最終更新:

Bot(ページ名リンク)

- view
だれでも歓迎! 編集

Little Brothers! ◆H4jd5a/JUc



例えばだ。
例えばの話をしよう。
これが特定の誰かについての発言ではないことだけは分かってほしい。
……何、誰かのことに聞こえる?それは気のせい、というものだよ。野暮、ともいうかな。
何故ならね、これは『誰にでもある』からだ。
今は特定の一人の人物のことに聞こえても、『いずれ』それは全ての人間に当てはまるかもしれないということだ。


例えば。
例えば、あるところに、兄または姉を亡くした2人の弟がいたとする。
一人は、兄を失った弟。
その死因は最後まで分からず、看取ることさえできずにただ屍だけが帰ってきたとして。
弟は兄をどこまでも慕い、同時に心配しており、また兄もしくは姉が自らの唯一の肉親であったとしよう。
一人は、姉を失った弟。
その死因は病死であり、その死を看取り、姉に自らの未来を託されたとして。
同様に彼も姉をひどく慕い、いつも気にかけており、そして唯一の血のつながった家族であったとしよう。
そして、ここで命題だ。
もしその弟が、いつの間にか『殺し合い』と名のつくゲームに放り込まれ、そこで『誰でも生き返られることができる』という説明がなされたとしたら。
そこで彼、もしくは彼女のために、殺人を成して生を取り戻そうと考える確率はどのくらいか?
そしてまた、そう判断するに至ったその理由は何か?


ちなみにこの話は、今からするべき話とはあまり関係のないことだ。
登場人物は二人の『弟』、共通点はそのくらいだと思ってくれていい。
とは言っても、ちなみにこの場には、弟が複数存在する。
一人は兄の代用品として生み出された、盤上の駒
一人は、父の跡を継ぐべく姉と共に修行に勤しむ『武士』。
一人は体を奪われ、兄に魂のみの存在として救い出された鎧。
一人は人類を滅ぼさんとする兄と決着をつけたいと願う人間台風。
私が今から語るのは、その中の。
尋常ならざる特異能力を持つ、褒められ得ぬ英雄の血縁者。
弱者を守り保護する立場にあるはずの、年若き天才剣士。
登場人物は、この二人だ。
だから、そんなに身がまえなくても構わない。話し半分で聞き流してくれても構わないんだよ。
だがね、一つだけ忘れないでほしい。
それは、冒頭でも一度言ったように―――それは、誰の身にも起こることだということだ。




暗い。
初めに思ったのはそれだった。
何も見えず、何の感覚もない。しかし、気持ち悪さや不快感はない。
まるで、底の見えない深海にでもダイブしたかのような。


―――ここは、何処だ?


頭に浮かぶのは、当然の疑問。
溺れるような感覚は、何かに似ていたが、彼はそれをうまく言葉にできなかった。


―――俺は、何でこんなところにいるんだ?
―――そう、俺は―――


今いるこの場所が現実ではないことを認識する。
ではここは、どこなのか?
思考までもがぼんやりしている。
忘れてはいけないことがあったはずだ。


―――兄貴を―――


そして、視界は覚醒し。
少年は―――瞳を開いた。




森の中を、さ迷い歩く人影が一つ。
それは、10代とおぼしき少年のものだった。
短めの金髪に爽やかなマスク、外見だけ見れば十分な好青年。その内面はおいておくとして、だ。
「……なんでい……ここは……」
彼の名前は沖田総悟
江戸の武装警察組織、真選組の一番隊隊長である。
見た目こそ若く幼いものの、その剣の実力は隊一とも謳われる天才児。
彼は今、一人奥深い森の中に放り出されていた。
「……不思議なもんだねい、妙な部屋に連れてこられて殺し合いを強要させられたと思えば、今度はこんなところですかい、……悪趣味がすぎるってもんだ」
その口調は警察の一員とは思えないほど軽く、飄々としている。
殺し合いにつれてこられたことなど全く気にも留めていないかのように思える口調。
しかし、彼の知り合いならばすぐに気づくはずである。
「……こんなのは……土方だけ巻きこんでおけって……さ……」
沖田に、常ほどの覇気が感じられないということに。
その目尻は、まるで『泣きはらした後』のように赤いということに。
いつもと同じように皮肉めいた態度を取ろうと努力しているものの、奥にある感情は完全に隠し切れていない。
「……っ」
下を少しでも向くと、涙が零れ落ちそうになるのを堪える。無理やり隊服でそれを拭いとる。
男が、一番隊隊長が、こんなところで泣いてたまるか。
「……どうしようかねえ……あのお人好しの近藤さんなら、こんな殺し合いを認めるはずがない……力を持たないもののために動くんだろうがなあ……」
わざとらしく迷っているかのような口ぶりで話す。
何を言っているんだろう、と自分でも思ってしまうが、どうやら自分は元から皮肉な性分であるらしい。


とうに心は決まっているだろうに。
この殺し合いを―――止めなければならない、と。
姉の自慢の弟が、殺人に手を染めるなんてやってはならない。
姉の期待を裏切らないような、姉が大好きだと言ってくれた自分でいなければいけない。
今更綺麗で純粋な少年に戻ることはできないにせよ―――真選組としてできることは、あるはずだ。


そう、彼がここに来たのは、最愛の姉を看取った直後であった。


「……姉ちゃん、俺は―――」
死んでたまるか。
そして―――死ぬはずでない人間を死なせてもたまるか。
姉が、そんなことを望むはずがないではないか。
頭の片隅では悪人は死んでも仕方ない、と思う。沖田はどんな罪人でも許せてしまう近藤ほどのお人好しではないし、なろうにもなれない。
だから全ての人間を救ってみせる、などと正義のヒーロー気取りなことは言えない。そんなことを考えただけで吐き気がしてくる。
自分は小悪党だ。
いつだって土方の暗殺をもくろむ、腹黒でドSで怠惰でさぼり魔でちゃらんぽらんで姉不幸な駄目な弟だ。
しかし、どんなに人間の屑であったとしても。
絶対に、姉の期待と願いだけは裏切りたくなかった。


この殺し合いが、いかなる理由で行われたのか?
病院にいたはずの自分が、どうしてここに飛ばされたのか?
それらには考慮の余地がある、しかし今は情報が足りない。
それ以前に、沖田は今考察するというレベルまで頭が回り切れていない。本来の沖田ならば(ずる賢さも含めて)もっと細部までの情報整理程度はするはずなのだが。
唯一の身内が失われてすぐなのだ、それも無理もないだろう。
しかし。
「……やるよ、……見ててくれ、姉ちゃん」
その涙の跡が残る顔だけは。
何か大切な宝物を託された後のように、清々しさと決意に満ち溢れていた。


「……止まれ!」
だから。
沖田は一瞬、反応するのを忘れていた。
常であれば、気配くらい感じ取ることはたやすかっただろう。しかし、気付かなかったのはやはり沖田が常よりやや動揺していることの証拠なのだろうか。
理由などどうでもいい。事実として―――


いつの間にか自分の目の前に、少年が現われたのだった。




「……っ!?」
少年が目覚めたのは、どこかの建物の中だった。
ひんやりとした感触が頬から伝わってきて、顔を慌てて持ち上げる。
「……ここ、は……」
いまだに頭がぼんやりしている。
自分の状況が把握しきれ得ていない。


「……俺は……」
辺りを見回す。


自分が記憶喪失にでもなってしまっているのではないか、などと一瞬考えてしまい、頭を整理するために自分のことを口に出してみることにする。
危険人物がそばにいれば危険を伴う行為だったが、残念ながら今の彼は現状の把握が精いっぱいでそれどころではなかった。
「……俺は安藤潤也。彼女の名前は詩織。家族は兄―――」
そして、心臓が激しく波打つ。
『兄』。
その単語が、一気に彼を冷たく重い現実へと引き戻す。


「……そ、そうだ……兄貴、兄貴を……」
兄貴の、仇を取らないと。
その言葉は口から出ることはなく、荒い息になって消える。
「……っ、」
いまだに完全に覚醒しない頭を引きずるようにして立ちあがる。
右手を動かす。痺れなどはないようだ。
足も動く。ちゃんと息もできる。頭も、回る。
それなら、何も問題などない。
だからこそ、少年は許せない。
許せるはずもない。
人を殺すなどという非人道的な行為を―――ではなく。
「……こんなこと、やってる場合じゃねえんだよ!」
兄の仇を討つための足止めをくらってしまった事実を。


気づけば変な場所に連れて来られていて、目の前で知らない人間の首が吹っ飛んで、意識がなくなって、目が覚めたら知らない建物の中にいた―――少年・安藤潤也の言葉をまとめるなら、おおよそこういうことになるだろう。
リカイデキナイ。
初めに潤也の頭に浮かんだ答えはそれだった。
どうして、自分はこんな見知らぬ土地にいる?
あの見知らぬ少年―――自分とそう変わらぬ年齢だっただろう―――の首が爆発した理由は?
そして、何故自分の首に冷ややかな金属の首輪がとりつけられているのか?
「……くそっ」
首を指でなぞり、潤也は呻く。
こんなところで、油を売っている時間などないのに。
文字通り『一刻も早く』、帰らなければいけないのに。
「……」
舌打ちしながらも、思考は休めない。
考えろ、と自らの兄の口癖を頭の中で繰り返し、そして視線の先にあった袋に気が付いた。
ディパックと呼ばれるそれを、潤也は手に取る。
「……そういや、武器が入っている、って……言ってたな……」
武器が本当にあるのなら、使わない手はない。
潤也は苛立ちと混乱を何とか抑え込み、その中に手を突っ込んでみる。
そして、取り出したのは―――


「……銃、か」
小型のサブマシンガンだった。
サイズから考えて、訓練など受けたことのない潤也でもそう困らず使いこなせるに違いない。
潤也はそれをズボンのポケットにねじ込む。他の支給品も出して見たが、ひとまずこの場で武器になりそうなものは一つもなかった。
今のところ必要そうなのは、この銃一丁だけらしい。
他に気になるものとしては白紙の紙が入っており、第一回放送後に人物の名前が浮かびあがると書かれていた。
もし、この場に詩織が連れてこられていたら?そう考えると背筋を寒いものが走る。
また、もしいなかったとしても兄に続いて自分までいなくなったと知れば、彼女は立ち直れなくなるかもしれない。
それに、最優先すべき兄のこともある。
どちらにせよ、自分が誰かを殺して復讐せねばならないことは避けられない事態なのだ。
それなら、動くのは早い方がいい。
時間は、待ってはくれないのだ。


「……」
それなら、どこに向かうか。
辺りを見渡す。
冷静に見てみると、ここが学校、もといそれによく似た施設であることはすぐに分かった。
自らの学び舎にもある机や椅子が規則正しく並んでいる。


出口は3つ。
一つは正面玄関。
一つは西口、と書かれている裏玄関。
もう一つは体育館の脇にある非常ドア。
廊下を歩き回って、潤也はそれを確認した。
どこから出るか、によっても向かう方向は変わってくるし、危険人物に遭遇する可能性も変わる。
運が悪ければ学校を出た瞬間に銃で後ろからどかん、だ。そんな情けない真似、できるはずがない。


しかし潤也は迷うことなく真っ直ぐに、裏口に向かって歩き出す。
そこに誰か、人がいる。
『賭けてもいい』。
それは、直感などではなかった。確実に『理解』していた。
「……」
だからこそ潤也は、扉を開く前に銃を構えることができた。
「……止まれ!」
だからこそ彼は、扉が開いたその瞬間、相手に銃口をつきつけることができたのだ。
相手が、反応するよりも幾分早く。


それは、一人の青年。
少年、と言っても差し支えないかもしれない。年は兄と変わらないように見えたからだ。
歴史の教科書でしか見たことのないような黒くかっちりとした服を身に纏っている。
潤也の知る限りの職業で言うなら―――警察、とでも言おうか。
顔付きは飄々とした美少年であるが、その人物の持つオーラは、並のものではないことを証明していた。
潤也の顔にわずかな不快の色が浮かぶ。
警察。彼はその職業に、一片の信頼も寄せてはいなかったからだ。
兄の死因すら突き止められない、無能の集まり。潤也の中の警察の定義は酷く残酷なものだった。
有名な社長の息子である兄の友人の方がずっと役に立つ情報を提供してくれる。
若くして警察の仕事の限界を知ったらそう思ってしまうのも無理はないことと言える。


やるのか?


脳内でそう反芻する。できるのか?
見た目こそ普通の人間だが、彼はどちらかと言えば今までの自分とは異なる世界に生きてきた人間だ。
殺し屋より―――具体的に名を出すなら、あの『蝉』よりの人間と言っていい。
しかし。
―――もう俺だって、足を突っ込んだんだ。
既に、潤也の心にためらいは、なかった。
日常を捨て、危険に足を踏み入れる覚悟は、人を殺す覚悟は、既に、した。
本当なら、蝉も自分が殺しているはずだったんだから。


「……なあ、聞きたいことがあるんだ」
少年の頭に向けて、銃口を突きつけながら。
「……まったく最近のガキはしつけがなってなくて困るぜい、人に質問するときはまず名乗ってからってお袋さんに教わらなかったのかい?」
少年は、全く動揺する気配を見せない。
むしろどこか哀れむように、潤也の顔を見て苦笑う。
むっときたが、ここで感情的になるべきではないと考える。
こいつが兄の情報を持っているかもしれない、まだ、まだ殺すべきではない。
「……安藤潤也だ」
「ふうん……立派な名前をお持ちのこって。せっかくだし、俺も名乗っておきますかねい」
少年はやはりペースを崩さず、にやりと笑って口を開く。
それは、潤也にとってわずかに聞き覚えのある名前だった。
「俺は土方十四郎」
土方、歴史にそんな名字の人物が存在していた気がする。
しかし、さほど成績がいい訳ではない潤也には、『聞いたことがある』程度に過ぎない。
更に言うなら、あまつさえ潤也がその歴史的に聞いたことのある人物の名字を聞いて、彼を江戸時代の人間だ、などと判断できるはずもない。
よって、珍しい名字だな、程度の思考でそれは終わった。
「……土方さん、でいいか?……名乗ったしいいだろ。一つ質問させてくれ」
もう面倒なことは早く終わらせたい、と言わんばかりにグリップを握り直す潤也。
少年もそれを見ていたが、やはり、微動だにしない。
やはり彼も、蝉と同類、殺しに慣れた人間に違いないと潤也は確信した。
「……言ってみろい」
拒まれるかとも思ったが、意外にも男はあっさりと質問を承諾してくれた。
もし拒まれたら恒例のじゃんけん勝負にでも持ち込もうと思っていたのでやや拍子抜けしたが、許可が出たならありがたい。
おとなしくその権利を使わせて貰おう。
「……お前は、俺の兄貴について知ってるか?どんなことでもいい、何か知っていたら教えて欲しい」
緊張が高まる。
自然と、心音が高まるのを感じた。
もし、彼が兄のことを知っていたら。
いやそれどころか―――この少年が兄を殺した人物だったら?
そううまくは行かないだろうと分かってはいるが、それでも期待せずにはいられない性。
そして、少年の口から言葉が紡がれる。
「……何か知っていたら、どうするんでい?」
立て板に水を流したが如き、さらりとした回答だった。
「―――っ、し、知っているのか!?それなら教えてくれ!どうして兄貴は死んだ!?お前は兄貴と知り合いなのか!?それとも―――」
思わず声が高くなる。落ち着けと何度も言われていたが、冷静でいられるはずもない。
それが簡単な挑発だということにも潤也に気づかせない。
「おっと、質問に答えろよ。俺は『どうするんだ』、そう聞いたんだ」
土方は潤也を横目で見て嘲笑い(にしか潤也には見えなかった)、再び問いかける。
「どうする……?」
首をかしげる潤也に、土方は意地悪く笑う。


「日本語が分からないとは言わせねえ。つまり、―――俺を殺す気なのかどうか、ってことだ」
土方の性格の悪そうな口角をつり上げての笑みに、潤也は黙る。
「……」
土方は潤也の顔を探るように見、そしてため息をついた。
「……言えねえってことは、殺すつもりがあるってことかい?悪いが、そんなに見え見えな態度じゃ人殺しなんてでき―――」


刹那。
沖田の頬を、銃弾がかすめた。
「……」
もちろんそれは、潤也の撃ったもの。
「……あんたは……」
「ああ、そうだ」
自分の『覚悟』を見せつける。
それが、潤也の選んだ方法だった。
今ので相手が死ぬなんて思っていなかった。外すつもり、威嚇のつもりだった。
自分が舐められている、というのは薄々感じ取っていたからこその行動。
本気で自分が彼を殺すこともある、そう示すためにやったことだ。
『まだ』死んでもらっては困る。少なくとも、兄のことを聞き出すまでは。
しかしまだ銃など数回しか使っていないため、手元がぶれて沖田の頬をかすめてしまったのだ。
しかし、潤也はそれにも動じず、口を開く。
どこか穏やかな気持ちになって、自然と口元が緩んだ。
「……答えによっては、死んで貰うさ」
目の前の土方の表情が、変わる。
その顔は、発砲した潤也に対する怯え―――などは全くなく、獰猛な獣を思わせるものだった。
舌舐めずりでもしそうな調子で、土方は潤也の言葉に一言、返す。
「……へえ、やってみろよ。ただし、やるからには、覚悟が、理由があるんだろうなあ?」


「ああ―――俺は兄貴を殺した仇を取りたい。だから、何か情報を持っていたら教えてくれ。……お願いだ、頼む!」
今度は、先ほどより冷静に頭を下げることができた。
土方の腹だたしい態度が原因に違いない。なんとも皮肉な話だが、潤也に気に留めている余裕などない。
―――本当に、こいつが兄貴のことを知っているなら―――
一縷の望みをかけて、土方の顔をちらりと見る。
土方は、つまらなさそうな顔をしていた。
そして、潤也の視線と土方の視線が交差し、そして―――
「兄?馬鹿じゃねえの?たかが兄貴のために人を殺すなんざ―――馬鹿のすることだぜい」
土方は、言葉を吐きだした。
何の躊躇いもなく、さも当たり前のように。
今の潤也に対する、最高且つ最悪な侮辱の言葉を。


「……たかが、だって!?」
だから、潤也が、その言葉に反射的に反応してしまっても無理はないのかもしれない。
いくら多少『平凡』とは外れているとはいえ、彼のスペックは平均的な高校生男子以外の何者でもないのだから。
挑発されれば頭に血が上っても、彼を責めることはできないのだ。
「ああ、そうだ。くだらねえ、何でたかが血繋がってるだけでムキになってんでい。
死んだんだかなんだか知らないが、死んだらそこまでだ。それ以上何もねえよ。運がなかっただけだ、諦めな」
土方の言葉に、潤也はふつふつと怒りがわき上がるのを感じた。
土方は、確実に潤也の中の何かの熱を上げていく。
たかが、だって?運がなかった、だって?
自分はずっと、ずっと兄と共に暮らしてきた。他に家族なんておらず、家のことは兄に頼りっきりだった。
兄が大変なことに首を突っ込んでいる気はうすうすとしていた。なのに。
自分は最後まで、兄貴が死ぬまで、それに気づいてやれなかった。
結果として兄は理由も分からないまま、無惨な姿で死体として帰ってきた。
もちろん、大切な人は他にもいる。学校に行けば沢山の友人がいるし、可愛くて少し抜けているけど心優しい彼女もいる。
しかし、家族は兄一人しかいないのだ。
潤也にとって安藤は―――唯一の大切な家族だった、のに。
それを否定するこの少年に、冷静に反論できるほど、潤也は大人ではなかった。
「……れ」
「あんた何でい?ブラコンかい?兄貴がいないと生きられないのかい?……気持ちわりい」
瞬間。
「……黙れっ!」
潤也はついに、激昂した。
他人に、自分と兄のことが分かるはずがない。
優しくて、優しすぎて、自分を危険に巻き込むまいとし続けて死んでしまった兄のことなど。
だから自分は、兄の敵を討ちたい。そして、兄の無念を晴らしたい。
「お前に何が分かる!俺が……兄貴は、兄貴はっ!」


だから潤也は、気づかない。
潤也が怒りで視界から土方しか見えなくなったその瞬間、彼の姿が視界から消失した事実に。
「……っ!?」
「遅えんだよ」
しゅん、と風を切る音。
同時にみしり、という嫌な不協和音がはっきりと潤也の耳に届いた。
「……ぐうっ!?」
続いて襲う痛み。しかし潤也は未だ自分の状況が把握できていない。
どういうことだ。何が起こった?
しびれるような痛みが右手首から走る。
「子どもが武器持ち歩くんじゃねえよ。仕方ない、責任もって俺が預かっておくとしやしょう」
そして、ようやく認識した光景は。
土方が、木刀を握ったまま自らの武器である銃をその手に握り、くるくると楽しそうに回し弄んでいる様子だった。
「ふ、ふざけ、っ!?」
潤也は理解した。
先ほどの鈍い痛みは、木刀が潤也の銃を握る右手首に直撃したからのものなのだと。
がむしゃらに打ってきたわけではなく、それが銃を弾き飛ばしたのだと。
危険を感じるより早く、怒りと本能が潤也を突き動かす。
気づいた潤也はすぐさま土方から銃を取り返そうと動く、が全てが遅すぎた。
「やっぱり、遅え」
そして―――
「っ!?」
普通の高校生と、常日頃から修羅場を潜る荒くれもの集団の隊長。
どちらの動きがより早いかは、一目瞭然で。
土方が、潤也の目の前にいつの間にか現れ―――
「ガキは、大人しくおねんねしてな」
潤也の腹に、木刀の柄が高速で突っ込んできた。


そして、潤也の意識は―――闇に消えた。




「……っ、う……」
視界が、ぼやける。
どうやら意識を失ってしまっていたらしい。
……情けない。こんなことでいいのか。
俺は、兄貴の仇を討たなきゃいけないのに。
こんなんじゃ、駄目じゃないか―――
「気が付いたかい。……ちっ、とどめさしてやろうと思ったのに」
土方の聞き捨てならない言葉に、潤也はむっとして顔をわずかに持ち上げる。
そこには、腹立たしいくらい爽やかな土方の笑顔があった。
「……てめえっ……!」
気に入らない。
自分の兄との関係を、今までの絆を、死を否定したこの土方という少年を許したくない。潤也はその顔を一発殴ってやろうと、体を起こすため右手に力を込め―――


「……っがあああああ!?」
叫んだ。
理由は、実に単純明快。
起き上がろうと力を入れた右の手から、激痛が走ったからである。
「…………な、っ……な……」
嫌な予感がした。瞳に涙さえ滲む。高校生にもなってかっこ悪い、と自嘲している余裕もない。
この痛みは何なのだ。潤也は、そっと右手を持ち上げ首を傾ける。
『じゃらり』、と金属音がその後を付いてきた。
なんだこれは、と口にするまでもなく、潤也はすぐにそれを『触って』理解した。
「な……なんじゃこりゃああ!?」
それは、平和な日本でごく普通の学校生活を送ってきた潤也にとって、にわかに信じられない事態だった。
自分の首には、確か銀色の首輪が初めからはまっていたはずだ。
しかし、今は―――その上に、何か別の金属が重ねられている!
もしかしたら、一つ目よりずっと頑丈そうな代物が。
首輪、だ。二つ目の。
しかも―――
「……俺はこう見えても警察のはしくれでねい、悪人はしょっぴく権利があるんでい、悪く思うなよガキ」
今度の首輪は、一つ目とは一味違う。
首輪につながれた、長い鎖。
その先を握っているのは、目の前の憎たらしい笑顔を向ける土方だった。
鏡で見てこそいないが、すぐに分かった。
さながら今の自分の姿は―――飼い主に拘束された狂犬、と言ったところか。
何だ、この悪趣味な展開は。
友人が貸してくれたビデオにあったそういうプレイみたいじゃないか。相手が可愛い女の子でなく男で、しかも腹立たしい相手だなんて、罰ゲーム以外の何者でもないが。


「が、ガキガキ言うな!これはどういうことだ、説明し、」
「俺より年下ならガキに決まってんだろ。それにどういうことも何もねえよ。ただ、お前さんを捕獲させてもらった。それだけだ」
捕獲、だって?
まるで潤也のことを家畜のように言う土方に腹が立って仕方無い。そのへらへらした笑顔をぶん殴ってやりたい衝動に襲われる。
しかし、右手がいかれている以上、それもかなわない。銃まで取られてしまった。
持ちあげるだけで激しく悲鳴をあげる右手を下ろさざるを得ない。
間違いなく、骨が折れている。きっと気絶している間に腕を捻ったのだろう。
悪夢にうなされていたのはこういうことだったのか。
「……冗談じゃねえ!お前に何の権利があって―――」
ごきり、と地面に置いた右手を踏みつけられた。
「……っ、が……あ……」
「言っただろ?俺は警察なんだ。人殺ししようとしている奴を黙って見過ごすわけにはいかねえなあ。大人しくしときゃ命は勘弁してやらあ」
邪悪な笑顔を浮かべながらそういう姿は、どう考えても警察というよりチンピラにしか見えなかった。
嘘吐け、と内心毒吐きながらも、潤也は口をつぐむ。
首輪で身体を拘束され、利き腕をへし折られた今、自分に勝ち目はない。
「ほら、行くぜい、家畜」
ぐ、と首輪を引っ張られ、潤也は土方に見られないように舌打ちすることしかできなかった。




(ったく、何で俺がこんなことしてるんでしょうねい、近藤さん……)
沖田は後ろでわめいている潤也を無視して、虚空に視線を向ける。
思い浮かべたのは、底抜けにお人好しでどうしようもなく愛すべき馬鹿である自らの長のこと。
どうやら、自分も近藤のすっかり汚い褌色に染まってしまったようだ。
殺せばいい。それは言われずとも分かっている。


これはきっとすぐに諦めるタマではない。武器は取り上げたとはいえ、油断していると殺されるかもしれない。
潤也は間違いなく、『やばい』。
どこがどうやばいのか、はうまく言葉にできないが、強いて言うなら野生の獣のような危険さだ。
土方や自分のような人種というより、こちらに笑顔で引き金を引いてきた際のあれは―――どちらかといえばテロリスト・高杉晋助のような香りさえ感じさせた。
決して頭が回るタイプではない。容易に挑発に乗り、感情を爆発させると周りが見えなくなる、典型的な子ども。
しかし、少年の態度は決してそれだけではない、何か闇のようなものを感じさせる。
いくら自分が多少油断していたとはいえ、自分の居場所を初めから特定していたかのような出会いといい。
躊躇うどころか笑顔さえ浮かべて、自分に銃を向け、撃ってきたことといい。
殺し合いに積極的なことも含めて、活かしておいても沖田に利は全くない。


それを分かっていながら、沖田は今のところこの少年を殺す気になれなかった。
もし、時期が違えば。
もし、これが姉を看取った直後でなければ、迷わなかったかもしれない。
とはいっても、既に鬼の真選組に所属して人斬りは何度もしている。タイミングさえあれば、殺人など造作もない。
しかし、今の沖田には、爪の先ほどに小さいものながら、普段とは違う感情が芽生えているのもまた事実だった。
もしかしたらそれは、感情を爆発させた少年の身の上に、何か感じるところがあったからかもしれない。
少年への挑発は、うまくいった。
それはほぼ当然で、何故ならそれは自分が言われても怒るであろうことを並べたからだった。
本当に兄弟思いの人間ならば―――その兄と、姉と自分の生きざまを否定されて、黙っていられるはずがない。
しかし、何故自分はあんなことを言ったのか?
考えても良い答えは出てこない。
たった間違いないのは、自分はすっかり近藤の思い通りらしいということだけだ。
ひりひりと、近藤に殴られた頬がまだ疼いた。


(土方さんの名前を使わせてもらいやしたが、別に問題ないでしょう。あいつがそんな簡単に死ぬとは思えねえ)
沖田が自らの名前を偽り、土方の名を騙ったのには理由がある。
一つは、仮に自分が誰か(潤也のように)に恨まれた場合、土方も被害を被るように。
沖田が少しでも動き回りやすくするためだ。仲間なんだから苦労を分かち合うのは当然ですよねえ、が沖田の持論もとい主張である。かなり無理矢理な。
どうせ自分があれだけ殺しても死なない男だ、どれだけ悪評がついても死ぬまい。むしろ死なれては困る。殺すのは自分なのだから。
姉が愛した男が、自分以外の人間に殺されていいわけがない。
そして、もう一つの理由。
これは沖田が聞けば、間違いなく認めない理由だろうが。
沖田は、姉の願いを叶えると、姉の期待を裏切らないと約束した。
だからこそ彼は―――姉の愛した男の名前を使ったのだ。
屈辱的でも認識しなければいけない一つの事実――-姉を幸せにできるのはあの男だと。
だから、自分もあの男になりたいと思った。
姉を幸せにできる、立派な男に。
それは、沖田自身も全く気づくはずもないことなのだが。


何にせよ、一つ確かなことは。
(まあ、何はともかく、ここで一発で死ぬより、足掻いて抵抗する姿を見ている方が楽しいですからねい。まさか俺に私物が支給されるとは思いやせんでしたが……まあいいぜ、せいぜい足掻いてくれよ、潤也くうん?)
……沖田総悟は、自他共に認めるドSだということだけであった。


ここで、沖田が気づいていない事実が存在する。
後ろですっかりおとなしくなった少年が、不思議な能力を持ち合わせているということに。
それは刃を振るう力でも、炎を操る力でも、精霊を召還する力でもない故に、弱くて一見役立たずに思えるが―――
「10分の1を1にする」という、使い方次第ではあらゆる刃ともなる、狂気に満ちたものだということを。
それに気付かないことが、沖田にとって吉と出るか凶と出るか、それはまだ分からない。




(くそ、くそ、くそ……こんなとこで足止めなんてふざけるなよ!俺は……)
一方。
沖田に引きずり回される潤也は、心の中で恨み言を繰り返す。
骨をへし折られた右手首は激しく痛む。放っておいても強烈な痛みなのに、たまに沖田にわざと足をひっかけられると更に軋む。
抵抗すると首輪――-余談だが、鎖付き首輪を付けられた後だと、はじめに付けられた爆弾入り首輪が可愛いものに思えてくるから不思議だ―――を引っ張られる。どうしろというのだ。
どうしてこんなことになってしまったのだろう。
―――油断した。
間違いなく、自分の失敗だ。
一番の間違いは、土方に対する態度を、蝉のときのそれと同じようにしてしまったこと。
蝉に銃を渡されたときは、蝉は逃げなかったし抵抗もしなかった。反撃もしてこなかった。それは潤也の行動を試すためだったのだから当然だろう。
それ故にどこか失念していた。……実力者ならば、銃弾を避け抵抗するに違いないと。
(まともに渡り合っちゃだめだ、蝉さんみたいな人と俺じゃ実力が違いすぎる……俺はこんなところで死ぬわけにはいかないんだから)
二重にはめられた首輪の位置を忌々しげに見つめながら、潤也は兄を思う。
(でも……分かった。分かったよ、兄貴……慎重にやらなきゃだめだって。少し遅くなるけど、このままじゃだめだ)
このままでは、兄の二の舞だ。それだけは避けたい。
仇を取るためには、自分が死んでは何の意味もないからだ。
自分はまだ生きている。自由こそ拘束されているが、土方は自分を殺さなかった。
それならば、まだうまくやれるはずだ。


情報を得るためには、他の連中と合流する必要がある。
しかし、彼らと出会い、話を聞いて、兄の仇がその場にいて、自らが銃を向けたらどうなるか。
それで相手を殺せたら構わない。大成功だ。
しかし、敵が土方のようにとんでもなく強かったら?
相手を殺すどころか、自分が返り討ちにあって終わりだ。兄が倒せなかった相手に、自分が真っ向で勝てるだろうか?
まず、無理だ。
自分の特殊な力は、戦闘には全く役に立ちはしない。
(それなら、機会を伺うんだ。殺せそうな時に、そいつを殺す)
そもそも、この場に兄の仇がいるかどうかも分からないのだ。
いないならば、自分はさっさと本来の家に帰り、兄の仇を捜し出す必要がある。
そのためには、人を殺して回ることが手っ取り早い。悠長なことを言っているうちに、情報は逃げていってしまう。
だからうまく殺していくしかない。
いきなり銃を向けてはだめだ。初めは殺しなどするつもりのない人間として振る舞えばいい。
そして情報を可能な限り絞り取り、兄貴のことやマスター、犬養の情報を握っていないと分かったらタイミングを見計らって殺す。
本当は他の人間が罪を被るようにしたいか、そううまく思いつくかどうか。
やっかいなのは目の前の土方だが―――武器を取り上げられている以上迂闊に動けない。殺すなんてもっての他だ。
今のところは大人しく従うべきだろう。いずれ、始末してやる。この屈辱を晴らさないと気がすまない。
兄の仇を討つため、自分の知らない世界に首を突っ込む準備は―――人を殺すための覚悟は―――とうにできていた。
あとは、実行に移すだけ。
いざという時には、この能力もあるのだから。


ここに、潤也が気づいていない事実が存在する。
この殺し合いに、『死んだはずの』兄が参加しているということを。
主催者は、何でも願いを叶える、という形で死者の蘇生も可能である、
という可能性もたしかにほのめかしてはいた。
しかし、潤也は信じてなどいない。だから考えようともしない。死人が生き返るなど。
ましてや、兄がこの場にいるなどと、気付くはずもない。
そんなことは、この現実ではありえないことだったから。
そんなことが可能なら、自分は兄と二人暮らしなどしていなかっただろうから。
気づかないが故に、潤也は沖田に従いつつ、虎視眈眈と模索する。
兄ほどの頭脳は持ち合わせていない故に、兄よりも本能的で、且つ兄よりも残酷な手段を。


(兄貴、待っててくれ。俺が必ず、兄貴のできなかったことをやり遂げてやる!)



【G-2/中・高等学校裏/1日目 深夜】
【沖田総悟@銀魂】
【状態】健康、わずかな悲しみ
【装備】なし(首輪の片方を握っている)
【所持品】支給品一式  木刀正宗@ハヤテのごとく! 首輪@銀魂 
【思考】
基本:さっさと江戸に帰る。無駄な殺しはしないが、殺し合いに乗る者は―――
1:この場にいるなら近藤や銀時達知り合いと合流したい。土方?知らねえよ
2:しばらくは潤也を虐めて楽しむ
3:……姉さん、俺は―――


※沖田ミツバ死亡直後から参戦


【首輪@銀魂】
沖田と土方が地愚蔵に閉じ込められた際 (実際は沖田の策略だったが)、二人をつないでいた首輪。鎖部分がやや長め。人間をペットにしたい、ドSな貴方にお勧めです。


【木刀正宗@ハヤテのごとく!】
伊澄の家に伝わる名刀。
デザインが少し凝っている以外、見た目は普通の木刀。
持ち手の身体能力を極限まであげる力を持つが、同時に感情が高ぶりやすくなる。


【安藤潤也@魔王 JUVENILE REMIX】
【状態】右手首骨折、首輪で繋がれている
【装備】なし
【所持品】支給品一式  イングラムM10@現実 未確認支給品0〜1(本人確認済み、武器はない)
【思考】
基本:兄の仇を討つ。そのためには手段も選ばない。
1:兄の仇がこの場にいれば、あらゆる方法を使って殺す。いなければ、できるだけ早急にここから脱出する。
2:初めは殺すつもりがないようにふるまう……?
3:土方に対する激しい怒り
4:兄貴……


※参戦時期は少なくとも7巻以降(蝉と対面以降)。自分の能力をどこまで把握しているかは次にお任せします。
※沖田の名前を土方と理解しました。


時系列順で読む



投下順で読む


GAME START 安藤潤也 062:腹黒い奴程 笑顔がキレイ
GAME START 沖田総悟 062:腹黒い奴程 笑顔がキレイ




タグ:

+ タグ編集
  • タグ:
最近更新されたスレッド
ウィキ募集バナー