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少女幻葬~Necro-Fantasy

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少女幻葬~Necro-Fantasy ◆JvezCBil8U



*****


あれ……?

なにこれ。

なんで、こうなってんの?

眠ってたらすんごい痛みが来て、眼、開けたら虎みたいな化け物がくちゃくちゃあたしの体を食ってる。

あ……こぼれてる。いっぱい、こぼれてる。

やだ……、なんか、寒い。

痛みも一瞬で、全然痛くないよ。

そっか、これも夢だ。絶対に、夢。

だってなんか、頭がボーっとしてるもん。二日酔いだ、これ。

んじゃあ、ゆっくり寝ないとね。

明日も安月給でこき使われるんだし。

あの癖のある生徒どもに付き合わなきゃいかんし。

もうすぐ五月の連休なんだから、ひと踏ん張りしないとね。

どういうつもりかしんないけど、薫のバカからもなんか旅行に誘われてるし……ね。

……寝過ごさないよう、気をつけないと。ヒナに怒られちゃうもんね。


ん……なんだろ、あれ。
あたしのまわりに、八角形の何かが浮かんでる。
化け物ごと、あたしの体はその中に沈み込んでいく。

ああ……、また、この夢か。
一度見た夢の続きを見るなんて、珍しいなあ。

お札がいっぱい、周りに浮かんでる。

あ、なんか変なビームでた。

化け物に当たった。ジュッ……って音がする。

ぐらり、とあたしが揺れる。

化け物の口から抜け出て、真っ逆さまに下に落ちてく。

そして……、あたしの体から、なんか変な狐みたいな靄が浮かび上がってきた。

ホント、変な夢だわ。


あ……、意識が融けてきた。

まっしろだ……。


おや、すみ……。


  おやすみなさいん、救いようのないお天気頭さん♪


【桂雪路@ハヤテのごとく! 死亡】


*****


くすくすくすくす、全部が全部計画どおりねぇん。


この辺りの霊脈が乱れて、この世とあの世の境が混じり合っていたこと。
うしおちゃんが映像宝貝と落魂陣を持っていたこと。
そして……、獣の槍が、魂を削って人をバケモノにする性質を持っていたこと。

こんなまさに仕組まれたような条件が整っていなければ、こうまで上手くいかなかったでしょうねぇん。

まず、うしおちゃんから口八丁で荷物を預かって。
常人の雪路ちゃんに宝貝たる落魂陣を触れさせて、いつでも意識を奪えるようにして。
次に憎しみと獣化でお馬鹿さんになった潤也ちゃんを誘導して、獣の槍で冥界の扉を開かせて。
溢れた魑魅魍魎を潤也ちゃんに相手にさせている間に、わらわは落魂陣に入って隠れて。

これで、潤也ちゃんをどんどん獣に近づかせてあげると同時に、獣の槍の眼の届かない所に非難する事が出来たのぉん♪
あはん、一挙両得ねぇん。

あとは潤也ちゃんが殆ど獣化した頃を見計らって外に出て、雪路ちゃんの体をエサに落魂陣におびき寄せるだけって寸法よぉん。
最後は落魂の呪符で完全に魂魄を消し飛ばしてあげるだけだったわん。

たったそれだけで、ほぉら。
あの妖怪とそっくりの肉体を手に入れられたのぉん。


あとは……この体に馴染むのを待つだけねぇん。
潤也ちゃんの魂魄の削りカスはまだくっついてるから、あのコの記憶と意思は残ってるけど……、まあ許容範囲かしらん。

……獣の槍をうしおちゃんが取り返しちゃったことだけは、想定外だったけどねぇん。

さぁて、これからどうしましょぉん。
この体には変化の力もある様だし、潤也ちゃんの姿で行動するのがおもしろ……無難かしらぁん♪


【安藤潤也@魔王 JUVENILE REMIX 死亡】
【妲己@封神演義 蘇生】


*****


禁鞭の贋作を振るいながら、東に向かい足を走らせる。
流石にいつまでもこ奴らを相手にしている訳にはいかん。

特に今のうしおには、休息が必要だ。
沈み込んだ様子こそ見せないものの、空元気なのは明白なのだから。
先ほどの青年が字伏とやらに変化したのを見た事は、立ち直ったばかりの心にはやはりダメージが大きいようである。

道を見渡せど、埋め尽くす幽鬼どもはデパート周辺のかなりの部分を塞いでいた。
倒壊により生じた無数の瓦礫と相まって、北上という選択肢を取る事は難しい状況に我々は置かれている。

故に思い付いたのは、先ほど診療所の地下に見つけた通路だった。
あれを用いれば、ひとまずの退路は確保できるだろう。


――そんな時だった。
不意に、頬に冷たいものが落ちたのは。

「む……?」

空を見ると、白い結晶がぽたぽたと落ちてくる。

「雪……」

うしおの呟き。
それに反応でもしたのか、一気に空から白の花が降り出し始めた。

見とれるうしおをそのままにしてやりたかったが、堪える。
今はそれどころではないのだから。

うしおの肩に手を載せ、現実に引き戻そうとする。

……と。

「え……?」

呆然としたうしおの声に、私も気付く。
周りの異界の住人どもの声が、次第に小さくなっているのを。

ハッとして、周囲を見渡した先にあったもの。
その光景は、凄惨でありながらやけに静かな代物であった。

雪に触れた瞬間に、この世ならざる存在が融けて消えていく。

その正体に、どうしてか私は瞬時に思い当たった。
そんな宝貝など、見た事もないはずであるのに。

「魂魄を溶かす雪……!」

ただ見ている間にも、雪は降り積もる。
そして――、あれほど溢れていた魍魎どもは、雪が降り始めてわずか数分で消え失せてしまった。

……我々には何の影響もない所を見ると、落魂陣とは異なり、魂魄体でないものには全く害を与えぬらしい。


『何にせよ、これからの天気には注意した方がいいかもしれませんよ』


不意に、放送での幼い少年の声が脳裏に蘇る。

この事態を――幽世と現世の交わりを、“神”は予見していたとでもいうのだろうか。
その処理を、気付かれぬよう行う為に天候を操作したとでもいうのか。

全てが、予定調和だとでもいうのだろうか。

美しく降り積もる雪――その寒さでなく、もっと別の得体の知れない何かに、いつしか私は背筋を震わせていた。

「聞仲さん」

ふと目線を下げると、うしおがじぃとこちらを見つめている。


「やりたいこと……、ううん、やらなくちゃなんねぇことがあるんだけど、さ……」


*****


さて……、雪のおかげで雑魚どもはあらかた消えたかね。
んじゃあ、後は入り口を封じるだけ……と。


ナイフで手を切り、血を流す。
煙が立ち上り、紅の立方体が冥界の門を包み込んだ。

こいつで終わり……と。
これでもう連中は溢れ出る事は出来ねえ。こっちに出てきた瞬間、酸が全てを溶かしちまうからな。

やれやれ、……ったく。

もう……行っても、無駄かもしれねぇが。
こっちに来たついでに、ママの様子だけでも見とくかね。
正直今のママは見てらんねぇ。

ああくそ、気に入らねぇ。
……あの人に人質としての価値なんてなかったはずなのに、それでも連中の口車に乗っちまうオレ自身がよ。

そんな事を思うと同時、背後でざり、と音がした。

「……な、」

おい……嘘だろ。

「どうしてテメエらが……ここにいる!?」

テメエは――東の“非常口”に向かったはずじゃねえのかよ……!

「王……天、君? 参加者に貴様の名は……無かったはず」


なんで戻って来やがったんだよ、聞仲ゥゥゥッ!


*****


思考が停止する。

異形どもが消えた事を契機に、私達はデパートの周囲に戻ってきた。
桂雪路――私にとっては妲己を探したいと、うしおが提案したからだ。
事の次第を問い詰める為にも私はそれを肯定し、此処まで急ぎ足を進めたのだ、が。

雌狐は影も形も見当たらず――代わりに眼に入ったのが本来在らざるべきこの男。

どういう事だ。
王天君――敵対者たる十天君の長がこの場にいて、そして私が此処にいる事に驚愕する、とは。
貴様はもっとふてぶてしく、影から享楽的に事を進めるはずだろう。
何故、そんな似合わぬ表情をしている……!?

「……クソッタレ、こういう算段かよ! 」

らしくない表情を、見る。
いや、王天君のこんな顔を見るのは永き生の中でも初めてかもしれん。
それほどまでに王天君は取り乱し――、ガリガリと、血が溢れるほどに指を噛んでいる。

「姿を見られた事自体は……構わねえ、別にいい!
 だが――オレがテメエらに引き合わされたって、その意味を考えりゃロクな答えが浮かんでこねえ!!
 畜生が、掌の上で何でもかんでも弄びやがって! 白だろうが黒だろうがどっちもテメエの駒にゃ変わりねえってか!」

診療所から拾ってきた、あの古ぼけた絵の内容が蘇った。

……王天君も、神の手の者か!
思い当たり、王天君の下へと駆ける。
確保し情報を引き出すのが最善手だ。

だが、それは果たされない。

突如湧き出た白い霧が王天君を包み込み――、そして、

「ひゃ、は……。ひゃはっ! そうかよ! ぐひゃひゃがぁぁあああぁぁぁああぁっ!
 廃棄物の処理と、第三の見せしめと、メッセンジャーって訳かよクソクソクソクソぉぉぉぉぉっ!
 くははははは、ぎゃ、が、ぐがひゃぁぁああぁぁががががっがぎゃぁぁああぁあがぁぁあっ!」

雷。

肉の焼ける匂いが立ち込めた。

雷公鞭? ……いや、違う。
あれほどの破壊力ではなく、しかし恐るべきものには変わりない魔の類の術。
種類で言えば、先ほどの字伏のそれに近い。

幾度も幾度も間断なく、王天君の身が稲妻に焦がされていく。
皮と筋が裂け、血が迸り、眼から白いゼリー状の物が染み出していく。

凄惨さに、私もうしおも――ただ、見ている事しかできなかった。
一体何が起こっているのか、あまりに脈絡がなさすぎた。

「オイ……テメェらに、忠告してやるぜ……!
 考えるな、諦めろ、真実なんぞ探ろうとすんじゃねえ! 後悔するぜ、オレみたいによ!
 流れに身をまかせちまえ、そいつが一番幸せだ、ぎゃははははははっ!
 どーせテメェら……オレ達に帰る場所なんざねぇんだからさあぁぁああぁぁああぁぁぁっ!」

びくり、とうしおの身が震えた。
おぞましい形相の王天君が、悪夢のごとく血反吐を撒き散らす。
倒れそうになるうしおの小さな肩に手を置き、支えた。

「ああ――、滅びろ、滅びろ、皆ぶっ壊れちまえ!
 くくく、カカカカカカ、ぐばっぎゃぁがあああぁああぁぁっ!」

王天君が踊る。

狂った踊りを舞い続け――、そして唐突に終わりが来た。

「一番美しい構図はゼロってか、き――、」

人の名前のようなものを最後に呟くと。

「な――!?」

王天君を中心に、ぎゅるり、と空間そのものが球状に歪曲する。
ノイズがかったように王天君が霞む。
そして一瞬のうちにその中央に引き摺られるように、彼の姿は消えていった。
黒い穴に、呑み込まれるように。

後には、臭い煙が立ち込めるだけ。

霧のような何かの痕跡さえ、残っていなかった。

「何が――何が起こったって言うんだよう……」

がたがたと己の肩を抱いて、うしおがへたり込む。

言葉もなく、私も立ち尽くすことしかできなかった。

ただ緩慢に辺りを見渡し、そして気付く。

「……あれは、紅水陣?」

乱れた龍脈の中心――冥界の門と思しき場所に、王天君の宝貝が固定されていた。
まるで、その場を封印するかのように。

術者たる王天君はもういないのにもかかわらず、解除される事もなく――。


【I-07/デパート跡地周辺/1日目/午後】

蒼月潮@うしおととら】
[状態]:精神的疲労(中)、左肋骨1本骨折、混乱
[服装]:上半身裸
[装備]:獣の槍@うしおととら
[道具]:エドの練成した槍@鋼の錬金術師
[思考]
基本: 殺し合いをぶち壊して主催を倒し、みんなで元の世界に帰る。
0:一体何が起こったんだよう……。
1:殺し合いを行う参加者がいたら、ぶん殴ってでも止める。
2:仲間を集める。特に雪路が心配。探したい。
3:とらやひょうと合流したい。
4:蝉の『自分を信じて、対決する』という言葉を忘れない。
5:流を止める。
6:聞仲に尊敬の念。
7:金光聖母を探す。
8:字伏(潤也)の存在にショック。止めたいが……。
9:白面を倒す。
[備考]
※参戦時期は31巻で獣の槍破壊された後~32巻で獣の槍が復活する前です。とらや獣の槍に見放されたと思っています。
とらの過去を知っているかどうかは後の方にお任せします。
※黒幕が白面であるという流の言動を信じ込んでいます。

【聞仲@封神演義】
[状態]:右肋骨2本骨折(回復中)、背に火傷(小)、混乱
[服装]:仙界大戦時の服
[装備]:ニセ禁鞭@封神演義、花狐貂(耐久力40%低下)@封神演義
[道具]:支給品一式(メモを大量消費)、不明支給品×1、首輪×3(ブラックジャック、妙、妲己)、
    胡喜媚の羽、診療所の集合写真
[思考]
基本:うしおの理想を実現する。ただし、手段は聞仲自身の判断による。
0:王天君は、一体――? 何故紅水陣が持続している?
1:妲己の不在を危険視。何処にいるかを探す。
2:金光聖母を探して可能ならば説得する。
3:2のために趙公明を探す。見つからなかったら競技場へ行く。
4:うしおの仲間を集める。特にエドと合流したい。
5:流を自分が倒す。
6:エドの術に興味。
7:流に強い共感。
8:幽世の存在に疑問。封神台があると仮定し、その存在意義について考える。
9:獣の槍を危険視。
10:診療所の地下を調べたい。
[備考]
※黒麒麟死亡と太公望戦との間からの参戦です
※亮子とエドの世界や人間関係の情報を得ました。
※うしおと情報交換しました。
※会場の何処かに金光聖母が潜んでいると考えています。
※妲己から下記の情報を得ました。
爆薬(プラスチック爆薬)についての情報。
首輪は宝貝合金製だが未来の技術も使われており、獣の槍や太極図が解除に使える可能性があること。
※幽世の存在を認識しました。幽世の住人は参加者や支給品に付帯していた魂魄の成れの果てと推測しています。
 また、強者の魂は封神台に向かったのではないかと考えました。


※診療所の待合室は地下通路と階段で連結しており、その先に非常口が存在します。
 非常口が通路の突き当たりにあるかどうかは不明です。
 また、集合写真は取り外されています。
※デパート跡地に冥界の門が存在しますが、紅水陣で入り口を封印されています。
※島に降る雪は、魂魄体にのみ干渉し消滅させる効果を持つようです。


*****


暗闇の中に白い霧が突如立ち込めたかと思うと、次第にそれは一つの形を取り始める。
浮き上がってきたのは、少年と呼ぶべきか青年と呼ぶべきか。
あどけない顔立ちの彼は、うっすらと笑みを浮かべながら楽しそうに語っている。

「うーん、君の仕事は雑だし遅いしで、もう見てられなかったんだよね。
 結局参加者に姿を見られる事になっちゃったし、だったら変に情報を与えちゃう前に僕が始末しないとって思ったんだ!
 幸いさっき取り込んだ人の力なら、僕の姿を見せなくても粛正出来たしね」

と、その言葉の途中から、彼の眼前が蠢き始めた。
空間そのものがねじ曲がり、やはり影が浮かび上がってくる。
長い耳にピアスをいくつもつけた、顔色の悪い少年の死体だ。
……いや、死体と言いきれるのかも判然としない。

仮死状態。
そう言うのが、最も近いかもしれない。
あちこち焼け爛れた体をピクリとも動かさない様は、命の灯火の消えるほんの直前で時間を止められたかのようだ。

独り言染みた語りかけは、続く。

「僕が以前とある人に負けた時に、教えてもらった事があるんだ。
 『叶った時に一緒に喜び合える人がいるからこそ夢は夢なんだ』ってね。
 ……うん、ここに来て僕は実感しているんだ、その言葉が正しかったって。
 その人はとっくに退場しちゃったんだけどね」

少しだけ残念そうに少年は声のトーンを落とす。
まるでその人とやらに、何かを期待でもしていたかのように。

――しかし。
一転して本当に嬉しそうに、楽しそうに――、続く言葉は歓喜に満ち満ちていた。

「“彼”と出会って、僕は友達の大切さって言うのを理解したんだ。
 僕の力でも傷一つつけられない星の下に生まれた“彼”!
 僕の道を共に歩く事が出来る人がいたなんて、初めて出会った時は本当に信じられなかったよ。
 だから僕は、“彼”の夢に全力で協力するんだ!」

純真な表情は、もはや“彼”の事しか考えられないという事を如実に語る。
少年の眼の下の隈はその瞳の輝きをひたすらに美しく映えさせていた。
あまりにも真っ直ぐすぎる好意が、どれほど危険なものであるかすら理解できずに。

「ん? どうしてこんな事を説明するのかって?
 それはね、ちゃんと自分の責任について知った上で退場してもらいたいからさ!
 聞こえているかどうかは分からないけどね!」

そうして、かつて夢を見ていた少年は。

「それじゃあ――いただきます」

霧の魔王に続き、始祖の片割れを呑み込んだ。

ごくり。

嚥下する。




……それら全てを見届けた同族からの報告を、質の違う暗闇の中で受け取る。
溜息すら出てこない。

「……哀れね、あのコ。純粋だからこそ余計に際立つわ」

それが我々の素直な感想だった。
理想を現実に変える能力や、体を霧と変え雷を操る能力、好きな場所へ移動したり酸の陣を張る能力。
そんな力をいくら持ってても、持ち主がアレでは便利な道具でしかない。
それ故に、この催事の運営では大きな歯車となっているのも事実だが。

「友情という看板をぶら下げただけの信仰……盲信よ、アレは。
 夢を叶えられなかった心の隙間に入り込まれて、それと気づかないうちに支配されちゃってるわ、完全にね。
 ごく小さい範囲とはいえ、かつては神の域にも達した存在だっていうのに――今はただの便利な舞台装置以上の何物でもないわ」

くすくす、と嘲うような声が届く。
かつて人の上に立ち、人を導こうとした男が皮肉気に告げた。

「……何の力も使わずに、あそこまで人を虜にするとはね。
 政治家としては、“彼”のカリスマ性には嫉妬さえ覚えるよ、ウォッチャー」

……別に驚く事もない。
彼が裏でやった事も含め、我々は全てを把握している。
その為の“ウォッチャー”だ。

「支配蟲を使うまでもなく心を弄び、裏切る心配のない手駒を作り上げる。
 ……この上なくエゲツなくて外道よね、ここの神様は。
 同じ生きた信仰対象でもプラントの方がよっぽど安全」

「……そんなエゲツない外道に、君たちはどうして従っているんだい?」

淡々と返すと、運命の試験紙を自称する男はこんな事を聞いてくる。
我々に興味でも抱いたのだろうか。
至極当然で、面白くない答えになるのだけど。

「……少なくともあなたよりはよっぽどシンプルよ。
 端的に言うと、生存本能。生物としての絶対的な格の違い。
 我々は人間よりもずっと精神的には素直だからね、己が生かされているだけと理解していれば反乱する気さえ起きないの。
 抵抗の意志を持てる事が幸か不幸かは論じないけど」

「それは本当に生きてるって言えるのかな?
 僕にはとてもそうは思えない。
 同じ12番の数字を冠していても、あの正義の味方さんの方がよっぽど人生を全うしていたんじゃないか。
 そういやたくさんの手足を調達できる事といい、君は彼に良く似ているね」

……何となく、不快になる。
流石にアレと一緒にされるのは面白くない。
そもそも人生という表現は、私達には相応しくはないだろう。

「……仕事に戻るわ。
 要観察対象が、少しおかしな動きを見せているから」

それだけ言い渡すと、私は意識を会場に集中させる。
政治家の動きも気にしない。

……さて、人の体を乗っ取る同志はどうなっていくのだろうか。


*****


  ドクン。


  ドクン。


  ドクン。


  ……ドクン。


おかしい……わん。
この器に入ってから、やけに体が熱いのぉん。

    憎い……。憎い……。
    こんな魂の削りカスになってすら、憎しみがこびりついて離れない。
    大切な人を傷つける……世界そのものが、憎い。
    嘘をついて命を弄ぶ、細目の男が憎い。
    俺から力を……獣の槍を奪ったあの子どもが憎い。
    妖怪のくせにあの獣の槍の使い手を守る三つ目の男が憎い。

すっごく馴染んで……馴染み過ぎて……。
まるでわらわが、わらわじゃなくなっちゃうみたいだわぁん。

    ヤツらが力を持っている事が、妬ましい。
    そして、何より。
    俺を殺し、全てを奪ったこの女……白面が、憎い。

わらわは……、わらわは、妲己。
表では始まりの人――女カ様の代理人として歴史を操り、夏や殷を滅ぼした傾城の美女。
でも、その本当の目的は。

    獣の槍をふるい、打倒白面を目指した人間は……。
    いずれ魂を槍に削られ獣になる……。

目的は――。

  我は憎む!
  光あるものを!!
  生命を、人間を!!
  人間と和合する妖を!

太母――グレート・マザーとなって、全ての存在に居るコト。

  何故、我は陰に、闇に生まれついた……。

土にも水にも風にもヒトにも全てに居る――あの星と融合し、永遠を手に入れるコト。

    そして獣は今の俺『字伏』になる。
    そして字伏になっても白面への憎しみ消えぬ俺は、何になる?
    何になる!?

始祖のように土のひと握りにも存在し、大地を潤し、生命に恵みを与えるコト……。

  国々がまだ形の定まらぬ『気』であった時、
  澄んだ清浄な『気』は上に登って人となり……、
  濁った邪な『気』は下にたまって……。
  我になった……。

この星の真の支配者に、わらわは憧れた。妬みさえした。

    ヤツになるのさ!!

それはある意味、憎しみとさえ呼べるものかもしれないわぁん……。

  キレイダナア……。

そう……わらわは、キレイなものになりたかった。

  ナンデ、ワレハ、アアジャナイ……。

力のみを欲し、仙人界と人間界の完全支配なんて卑小な欲望な抱いた自分が、恥ずかしかったわん。

  ナンデ、ワレハ、ニゴッテイル……!?

ああ――、

    ああ――、

  ああ――、

  どうしてわらわ/我/俺は、こんな姿なのだろう。
  どうして望む姿に生まれなかったのだろう。

  ああなれたすべての存在が、妬ましい。
  ……憎い。


  憎い――!


「……あらん?」

やっぱり、調子が悪いみたいねぇん。
少し、ボーっとしちゃってたわん。

……何か変な白昼夢を見た気がするわねぇん。
わらわの記憶にないような光景だったけど……。
この体の記憶かしらん?

まるでわらわの為にあつらえたかのように動かしやすいこの体だけど、その分魂魄が引き摺られやすいみたいん♪
注意しなくちゃ、ねぇん。
潤也ちゃんの意志も、ほんの少しだけ残ってるみたいだしぃん。
体を提供してもらったお礼くらいは、してあげるわん。

さて、この落魂陣から出たら、何処に向かおうかしらん。
獣の槍を確保したままこの体をゲットできてれば、潤也ちゃんのフリをして聞仲ちゃんたちに合流してたんだけどぉん。
聞仲ちゃんは頼りになるし、うしおちゃんは美味しそうだし、ねぇん。
でもぉん、うしおちゃんが獣の槍を取り返しちゃった以上、近くにいるとかえって危険かもしれないわねぇん。
オトモダチの記憶を奪ったり裏切り者もぶつけたりしたっていうのに、ゴキブリみたいに立ち上がってくるなんてぇん……。

  忌々しきは獣の槍……我が唯一怖れる敵とその主よ。

……あらん?
いつの間にわらわ、うしおちゃんに嫌がらせなんて仕掛けてたのぉん……?



  ドクン。


  ドクン。


  ドクン。


  ……ドクン。




  おぎゃぁぁあああぁぁぁ。




【???/落魂陣内部/1日目/午後】

【妲己@封神演義 feat.うしおととら&魔王 JUVENILE REMIX】
[状態]:字伏の肉体(白面化5%)、潤也の魂魄が僅かに残留
[服装]:潤也の姿に変化。
[装備]:首輪@銀魂(鎖は途中で切れている)、落魂陣@封神演義
[道具]:支給品一式×3(メモを一部消費、名簿+1)、趙公明の映像宝貝、大量の酒
[思考]
基本方針:主催から力を奪う。
1:自分の体や記憶の異変について考える。
2:主催に対抗するための手駒を集めたい。
3:うしおを立て対主催の駒を集めたい。が、獣の槍に恐怖感。
4:聞仲を手駒に堕としたいが……。
5:利害が一致するなら、潤也の魂魄の記憶や意思は最大限尊重する。
[備考]
※胡喜媚と同時期からの参戦です。
※ウルフウッドからヴァッシュの容姿についての情報を得ました。
※みねねと情報交換をしました。未来日記の所持者(12th以外)、デウス、ムルムルについて知りました。
※みねねとアル及び剛力番長の一連の会話内容を立ち聞きしました。
 錬金術に関する知識やアルの人間関係に関する情報も得ています。
※みねねから首輪に使われている爆薬(プラスチック爆薬)について聞きました。
 首輪は宝貝合金製だが未来の技術も使われており、獣の槍や太極図が解除に使える可能性があると考えています。
※対主催陣が夜に教会でグリフィスと落ちあう計画を知りました。
※聞仲が所持しているのがニセ禁鞭だと気づいていません。本物の禁鞭だと思っています。
※潤也の能力が使用できるかどうかは不明です。

※落魂陣が何処に張られたかは後の書き手さんにお任せします。


【落魂陣@封神演義】
十天君の一人、姚天君の使う空間宝貝。
魂魄を直接消し飛ばす光線を放つ落魂の呪符や、触れると爆発する破壊の呪符を内部に展開する事が出来る。
しかし、呪符は直接攻撃で破壊可能。また、空間を展開せずとも呪符のみを使用する事も出来る。
制限内容は不明。


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