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死と向き合う者たち

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死と向き合う者たち ◆lDtTkFh3nc



「ちくしょぉ…ちくしょぉぉぉ…」


石畳に拳を叩きつけ、泣いている少年がいる。
ここは地図で言うF-5、「神社」と呼ばれる施設だった。
少年は周囲にはばかることなく、大粒の涙を流している。


「麻子…」


少年、蒼月潮が名を呼ぶ少女は、もうこの世にはいない。
彼の目の前で、真っ黒な墨に変えられその若い命を散らした。
失われた、彼の記憶を取り戻すことなく…


彼女と少年は知り合いだった。
いや、そんな言葉でくくれる関係ではなかっただろう。
幼馴染であり、最大の理解者でもあり、そして―――――


しかし、彼女は少年の記憶を失ってしまったのだ。
世界に恐怖をもたらす九尾の狐、最大最強の妖、白面の者の策略によって。
彼女だけではない。潮少年とその相棒、とらに直接関わったことのある人間は全てその記憶を奪われたのである。
それは、潮が最強の霊槍、獣の槍の力を操ることが出来る唯一の少年であり、
その力が大妖怪、白面の者を倒す可能性のある唯一の武器であったからだ。
その力を恐れた白面が彼らから希望を奪い、絶望を与えることで己を強化しようという算段だった。
日本各地を回り、苦しい戦いを乗り越えることで手にした人や妖との絆を一方的に断たれる。
これが中学生の少年にとってどれだけ重たいことであったか。
信じた者に裏切られ、仲間を失い…それでも諦めることなく、孤独の中でも少年は相棒と共に戦う決意をした。
必ず白面を倒し、皆の記憶を取り戻そうと。
ヤツを封じる為に海底深くで戦い続ける、母を助けようと。
それが自分の暮らした世界を取り戻す唯一の術だから。


だが、それはもう適わぬ夢となってしまった。
彼の世界に欠かせなかった、中村麻子を失ってしまったのだから。


「ちっっっきしょぉぉぉぉぉ!!!!!」


ついに大声を張り上げ、蒼月潮は絶望する。
そこに掛けられた、死神の化身の声。


「ぼうず、あの時も叫んでいたな。」


振り返ると、奇妙な男が立っていた。
痩せぎすの体にこけた頬、長い白髪、眼帯に冷たい微笑、おまけに真っ黒なコートと、
その出で立ちはまるで殺し屋の出来損ないのようだった。


「あのお嬢ちゃんの知り合いか?そりゃ残念だったな。」


冷たい言葉だった。潮の神経を逆なでするに十分なほど。


「あんたに、何がわかるんだっ!」


叫び、飛び掛るとその胸倉をつかむ。
蒼月潮は頭が悪い。だが、漢字以外の国語と体育の成績だけやたらと優秀だ。
加えて数多の妖怪と命を賭けた死闘を繰り広げてきた。
獣の槍の助力があったとはいえ、その体力は相当なものである。
痩せこけた男はガクガクと揺さぶられるがまま口を開く。


「詳しくは知らんがね、あのお嬢ちゃんはまだ運がいい。あれは即死だ。痛いと感じる暇もなかったろうさ。」
「ふざけんなぁっ!!」


バシィッ!


潮の拳が男の頬にめり込む。男は地面を転がった。
息を切らせ、目に涙を浮かべたまま、潮は拳をさらに強く握る。
男は頬をさすりながら立ち上がると、薄笑いを浮かべて続けた。


「ぼうず、おれはな、軍医だったんだよ。戦場で体を半分吹っ飛ばされて、しかも死ねないような人間をウンザリするほど見てきた。」


男の言葉に、うつむいていた潮が少し顔を上げてそちらを見る。


「そういう人間を穏やかに死なせてやると、みんなすごく喜ぶんだ。誰も彼もおれに心から感謝して死んでいく。」


重たい口調だった。男の言葉は本当だろう。
いわゆる安楽死、というヤツだろうか。


「それほど、人間は苦しみってものが恐ろしいんだ。
 死は誰にも平等に訪れる。最後が安らかだっただけ、マシじゃあないか。」


ギリ、と歯を食いしばる潮。まだ涙は止まらない。


「だからって…麻子があそこで死んでいい理由になんかなるもんか!こんな、こんな…」
「なに、もう誰か死んだの?まぁ、そういう事もあるだろうな。」


素っ頓狂な声が乱入してくる。
茂みの中から、奇妙な格好の人間が姿をあらわした。


「で、お前らは何?殺し合いしてるわけ?つーか、これマジで殺し合いなの?メンドクセーな。」


奇抜な髪型とファッション。両手をポケットに突っ込んで、半開きの目が周囲を見渡す。
ペラペラとよく喋るヤツだった。


「…なんだよ、アンタ。」


潮が睨み付けながら問いかける。


「俺は「蝉」。殺し屋。ところで俺、なんでここに呼ばれたと思う?」
「!?」


殺し屋、とこの男は言った。否応無しに警戒態勢に入る潮。


「へぇ、あの連中におれたちを殺すように依頼された訳じゃあないのかい。」
「よくわかんねーんだけどさ、今別件の仕事中だったんだよ。岩西…あ、俺の上司なんだけどさ、
 こいつがいっつも俺にメンドクセー仕事を勝手に回してくっから、これもそうなのかとも思ったんだけど…」


訳のわからない会話だった。
潮だって妖怪たちと命のやり取りはしてきた。殺されかけたことも一度や二度じゃないし、滅ぼした妖怪も多い。
しかし、それはある意味種の存亡をかけた「戦い」だった。
彼らが話しているのはそんな「戦い」とはかけ離れた仕事としての「殺し」である。
こんなものに巻き込まれて、麻子は死んだのか…?


「なんで殺しあわないといけないわけ?岩西ってゼッテー依頼の理由を教えねーんだよ。
 俺はアイツの操り人形じゃないからな。理由ぐらい知らないと殺したくねぇんだ。ホントは。」
「さてね。心当たりはあるといえばあるし、かといって明確に思い浮かぶわけでもない。」
「ふーん。そっちのお前は?」


蝉が、潮に話題を振る。
潮は、右手で涙を拭うと二人を睨みつけた。


「ふざけんなっ!さっきから人の命をモノみてーに扱いやがって!オレは!誰も殺さないし、殺させないぞっ!」


ポカン、とあっけにとられた顔で蝉がこちらを見ている。
眼帯の男の方も、少し驚いたような表情だった。


「なんだよ、俺が悪いみたいに言いやがって。こんなふざけたゲーム始めたのは、あのじじくさいガキとみょうちきりんなピエロだろ。
 だいたい、さっきまでメソメソしてたくせになんだよ、急に。」


確かに、先ほどまでの潮とは雰囲気が違っていた。
しかし、本来彼はこういう人間なのである。
大切なものの為ならば、多少自分が傷ついたって構わない。
曲がったことや嘘が嫌いで、正義感に満ち溢れた少年。それこそが蒼月潮だった。
目の前で行われる、命を軽視したかのような発言の数々に対する怒りが、折れかけた潮の心を支えていた。


「じゃあアンタは、あいつらが殺し合えって言ったからハイそーですか、って人を殺すのかよ!」


ムッ、と見るからに蝉の表情が不機嫌になった。
先ほどより少しトーンの落ちた声が放たれる。


「ちげーよ。それが俺の仕事だからだ。俺は自由だ。」
「ソイツはちょいと違うな。」


またしても横槍が入り、チッと舌打ちをして声の主を見る。
眼帯の男はニヤリと笑って続ける。


「理由も依頼主もわからない。そもそも、依頼かどうかもわからない。進んで殺しがしたいわけでもない。
 そんな状況で仕事なんかするかよ。お前さん、怖いんだろう?」
「…なんだと?」


さらに声のトーンが落ちる。修羅場慣れしない人間なら、それだけで動けなくなるような声。
しかし、その場の誰も身をすくませることはなかった。


「あの小娘とピエロに、ぼうずの知り合いの嬢ちゃんや緑の髪のガキが殺されるのを見てビビッちまった。
 自分の生き死にを握られて言いなりになっちまった。違うかい?」
「…どうやら死にてーらしいな。」


つかつかと、蝉が男に近づいていく。手にはナイフが握られていた。
男も警戒し、なにやら身構えようとしたが、その間に割って入る影が1つ。


「…どけよ。」
「嫌だ。誰も殺させないって言っただろ。」


潮だった。
どこから取り出したのか、妙なデザインの槍を構えている。


「戦えると思ってんのかよ。第一、お前にはかんけーないだろ。」


蝉がナイフを眼前に突き出し、威嚇する。
しかし潮とて日本刀と対峙したこともある身だ。そうやすやすとはひるまない。


「関係なくない。オレの目の前で誰かが死のうとしてる。オレが戦えば助けられるかも知れない。
 だったら、何度だって対決してやる。」


迷いのない、まっすぐな目でそう言い放つ潮に、蝉は1人の少年の目を思い出す。


「そうかい。じゃあ覚悟しな。」
「おいおい、おれは無視かい?」


男が未だ余裕崩さぬ声で語りかける。
しかし、今の蝉には潮以外目に入らなかった。


「こういう目をしたやつには負けたくないんでね。」


神社の境内の中心部で、ナイフと槍を構えた影が対峙する。
手馴れた得物。リーチの差は明確。しかし、潮は冷や汗が止まらなかった。


(コイツ…すごく強いぞ。)


構えや簡単な身のこなしから、強者のオーラのようなものが伝わってきた。
槍を構え身を低くし、先手をきろうと駆け出した瞬間、相手もダッシュで飛び出してきた。


「シュッ!」


槍を突き出す。蝉は半身でそれをかわすと、ナイフを潮の右肩に向ける。
しかし潮はそれを読んでいたかの如く、槍の柄で蝉の腕をはじき懐に潜り込んだ。


「ちっ!」


体当たりを仕掛けてきた潮の顎を膝蹴りでかち挙げる。潮はまたしても槍の柄でガードしたが、
お互いにバランスを崩し、後ろに飛んで距離を稼ぐに留まった。
今度は蝉が先手を打つ。フェイントを交えて左右にステップを踏み、かく乱させてから一気に直線で距離を詰めた。
頭上から大げさに振り下ろしたナイフを、槍で受け止める潮。
しかしそれは蝉の想定内。左拳をボディに叩き込んだ。潮が苦悶の表情を浮かべる。
しかし、怯まない。弓なりになった体を起こすようにして頭突きを蝉の顎に目掛けて放つ。
蝉はバックステップでかろうじてそれをかわすと、再び距離をとった。


(何だ、コイツ?)


蝉にしてみれば予想外だった。
ただのガキかと思ったらやたらと戦い慣れている。
槍の扱いも初めてとは到底思えない。かといって槍術を習っているという感じでもない。
むしろ実践で磨いたような動きだった。
だが解せない。この少年、動きの割に攻撃に殺気がない。
殺さないように気を使って戦っている。


(舐めてくれんじゃん。)


自分自身も無意識に手加減をしているのだが、それはそれとして置いておく。


そう、蝉の苦戦の理由はいくつかある。
先ほど言ったように、無意識に手加減をしてしまっていること。
得物のナイフが使い慣れた自分の物ではないこと。数も一本しかない。
加えて予想外の潮の実力である。
俗に日本刀で1人、人を切ると初段の腕前という。
刀でこそないが、潮は数多の妖怪を獣の槍で打ち破っている。よって、彼の腕前も相応のものなのだ。
ある者は言った。「剣はな、人を斬って覚えるんだよ」と。



「…アンタ、そんなに強いのに、人を殺すのか?」


距離を置いたまま、潮が尋ねる。
驚いたのは蝉だった。


「はぁ?何言ってんだよ。強くなきゃ、殺せねーだろ。」


至極真っ当な蝉の発言。しかし、潮は揺らぐことない瞳で言葉を紡ぐ。


「違う。弱くたって、人を傷つけるヤツはいる。でも、守ろうと思えるのは何かが強いヤツだけだ!」


その言葉で、蝉は自分がここに来る前に引き受けていた仕事を思い出す。
彼は、猫田市という市の市長を守る仕事を請けていた。


(そいやアイツ、俺が消えて死んでねーだろうな。)


ふと、そんなことを思い、ぶんぶんと頭を振る。
何を考えているんだ、俺は。今は目の前のヤツに集中だ。
大体、仕事を失敗したからってなんだというのだ。別に俺は、岩西が怖い訳じゃない。
しかし、そんな彼の思考をあざ笑うかのように、とある笑い声が聞こえてくる。


「ハァーッハッハッハッハッハ!」


眼帯の男だ。何がおかしいのか、バカみたいに笑っている。


「面白いことを言うな、ぼうず。おい、そっちのお前。いったん休戦といこうや。提案がある。」


あっけにとられ、蝉は思わずナイフをおろしてしまった。



「結局、提案って何だよ。」
「まぁ待て。おい、ぼうず。お前はここでこれからどうするつもりだ。」


神社の建物の中で、座り込んで会話する3人。
眼帯の男はドクター・キリコと名乗った。
信じられないが、この見た目で医者らしい。「安楽死」専門らしいが。
それじゃまるで殺し屋じゃねーか、と思うと、彼の外見にも納得がいった。


「オレは…麻子を殺した奴らを許さない。こんな殺し合いも認めない。
 なんとかしてあいつらをやっつけて、はやくみんなのところに戻るんだ。」


相変わらずまっすぐな瞳だった。悲しみを乗り越えたとは言い難いが、今は立ち向かう決意を固めたらしい。
それが怒りで固められたもののようで、少し危うさも感じられる。
またしてもニヤリと笑みを浮かべ、キリコは地図を広げた。


「なら、病院に向かいな。」
「なんでだよ?あ、怪我人が集まるからか?」


割って入った蝉を一瞥し、キリコは説明を続ける。


「これは勘だがね、多分ここにはある闇医者がいる。ぼうずとよく似た生き方をする人間だ。違うところも多いがね。
 そしてそいつはおそらく、病院を目指すだろう。」
「その人に会え、ってこと?」


潮の問いにうなずくキリコ。


「それはいいけどさ、おじさんはどうするの?」
「おれはこっちの診療所に向かう。ここにも医療道具はあるだろうから、こっちにヤツがいる可能性もある。
 その時はぼうずのことを伝えて、間にあるこの神社に来るように言っておく。病院で会えなかったら戻って来い。」


そう言うとキリコは地図をしまった。すぐに行動しようという雰囲気だった。


「なんで、おじさんはこんなことをするんだ?」


潮のもっともな疑問に、蝉も心の中で頷く。


「おっさんこそ、こういう場所で人を殺すのが本分じゃねーの?」


悪態混じりに問いかけると、キリコはジロリと睨むような目で答えた。


「もちろん殺すさ。もう助からない人間がいて、そいつや周りの人間がそれを望むなら、な。
 だが、健康な人間や、自殺志願者を殺すのはおれの仕事じゃない。
 おれはこれでも自分の仕事に誇りを持ってるんでね。こんな殺し合いに呼ばれたのは、神聖な仕事を汚された気分なんだ。」


その言葉に、蝉が少し反応する。


「おれはここでも自分の仕事を全うする。連中が何を求めようとね。
 だが連中は気に入らない。アイツらに一泡吹かせたいと思うのは、自然だろう?」
「その為に、オレとその人を会わせるの?」
「あぁ、そうさ。そういうこともおれの仕事じゃない。ぼうずやアイツ…ブラックジャック先生のお仕事なわけさ。」


そっか…とだけ呟き、潮は黙った。まだ何か考えているようだった。
そこでキリコはすっかりおいていかれた蝉に向き直る。


「さて、そこでおまえさんの出番な訳だ。」
「あぁ!?」


どこをどうすれば自分の出番なのかわからず、蝉は声をあげる。


「おまえさんはこれが仕事の依頼かわからない。だから、今フリーな状態なんだろう?
 だからおれが依頼する。このぼうずと一緒に行動して、あの連中に一泡吹かせろ。」
「はぁ!?なんだそりゃ!」


むちゃくちゃな提案に蝉が大声をあげる。


「あんまり騒ぐなよ。なに、強制しようって訳じゃない。ただすることがないのなら仕事を頼みたい、ってだけさ。」
「俺をアゴで使う気かよ。言っとくけどな、俺はだれの操り人形でもない。自由なんだ。何にでも従うと思うなよ。」


きっちりと言い放ち、蝉は立ち上がる。
こんなことの為にコイツはさっきの戦いを中断したのか。バカバカしい。
しかし、今から続きを、などというのも少し違う気がした。


「言ったろ。強制するわけじゃない。ただ仕事を提示して、選ぶのはおまえさんの自由さ。
 嫌なら他の依頼人を探すなりなんなりすればいい。あぁ、金なら心配いらないぞ。」


とても金を持っているように見える外見ではなかったが、本人の言うとおりコイツが法外な値段で安楽死をさせる医者なら相当な金を持っているかも知れない。
…ちょっとだけ揺れ動く蝉。そこに、黙っていた潮が口を挟んだ。


「オレからも頼むよ、蝉兄ちゃん!」


予想外の発言に、言葉を失う。


「オレは、あいつらを…この殺し合いをぶっ壊したい。おじさんが言うとおり、それはオレの仕事だと思うんだ。
 でも、オレ1人じゃたぶんどうにもならない。助けてくれる仲間が欲しいんだ!」
「…わかってんのかよ。俺は殺し屋だぞ。」
「あぁ、わかってる。でも、必要なんだ。
 殺しはさせないよ。でも、力をかしてくれ!」


矛盾だらけの発言を、まっすぐな瞳でしてくる。
横のキリコが笑っているように見えて、腹立たしかった。


(岩西抜きじゃ仕事も出来ないと思われるのも癪だな…クソ、どうせやることもねーなら、自分の意思で決めてやる。)


「…とりあえず6時間だ。」


フードを目深に被り、表情を見せないようにしながら蝉が答える。


「えっ!?」
「…6時間後!名簿が読めるようになって、岩西とか、本来の依頼人がここにいたらそっちを優先するからな!
 それまでは、引き受けてやる、よ…」


そっぽを向きつつも、明らかな肯定の言葉。
ぱぁ、と顔を明るくした潮が、感謝の声をあげる。


「ありがとう!蝉兄ちゃん!一緒に頑張ろうぜ!!」
「あーあー、うるせぇうるせぇ。言っとくけどな、これは金の為…仕事で手伝うんだからな!
 べ、別に俺はお前がどうなろうと構わないんだからなっ!」


心なしか、顔が赤いように思えた。


「クックック…」
「あ、あとおじさん!」


1人楽しげに笑っていたキリコに、潮が真剣なまなざしで言葉を放つ。


「人、殺さないでくれよ。」
「…そいつがおれの仕事だからな。安楽死を依頼する人間がいるのなら、殺すだろうさ。」
「じゃあ、絶対諦めないでくれ。」


絶対ゆずらないという意思のこもった言葉。


「ホントに似てるぜ。…わかってるよ、卑しくもおれは医者だ。出来る限りは治してやるさ。」
「よし!約束だぜ!」


かくして、死神の化身は抵抗の種をまいた。
彼自身、うまくいくとは思っていない。
だが、何度もその目に見せ付けられた奇跡がある。
自身の命を救った、あるいは自分が諦めなければ、父親の命を救ったかもしれない奇跡。
だから彼は、諦めない人間を支えるくらいならしてもいいだろうとでも思ったのだろうか。


「じゃあ、おじさんも気をつけてな!あ、さっきは殴ってゴメン!でも、あんな言い方、もうやめた方がいいぜ。」
「あぁ、せいぜい気をつけるよ。おまえさんたちも気をつけてな。
 あんまりカリカリしなさんなよ。クックック。」
「うるっさい、死ね!大っ嫌い!」


最後まで騒々しく、バラバラに、3人の男達は別れた。


1人きりになり、ドクター・キリコは夜空を見上げて思う。
人はだれもいつか死ぬものだ。それが自然の摂理であり、抵抗するのは人間だけ。
だからキリコは殺す。自然に逆らい、苦しんでまで生きるくらいなら、いっそのこと穏やかな死を与えることが幸せだと信じている。


だが、だからこそ、こんな殺し合いは認めない。


(こんな事が自然な「死」なもんかね…これでも医者の端くれだ、命が消えるより、助かる方がずっと良いさ。)



この殺し合いの場でも、彼らの生き方は変わらない。


誰かを守れるなら、立って戦う、立ち向かう。それがどんなに苦しく、悲しい道でも…
迷い、悩み、素直になれないけれど…死んだように生きないために、満を持す。
望むのなら、辛いのなら、死を与える。その根底に、命を尊ぶことを忘れることなく。



彼らは出会えるだろうか。
自分の生き方を変えた、定めた、共に歩んだ…半身とも言うべき存在に…



【F-5/神社/1日目 深夜】
【蒼月潮@うしおととら】
[状態]: 健康
[服装]:
[装備]:エドの練成した槍@鋼の錬金術師
[道具]:支給品一式 不明支給品1つ
[思考]
基本: 誰も殺さず、殺させずに殺し合いをぶち壊し、主催を倒して麻子の仇を討つ。
1: 蝉と一緒に病院に向かい、ブラックジャックと会う。
2: 病院にブラックジャックがいなかったら一旦神社に戻る。
3: 殺し合いを行う参加者がいたら、ぶん殴ってでも止める。
[備考]
※ 参戦時期は27巻以降、白面によって関係者の記憶が奪われた後です。流が裏切った事やとらの過去を知っているかは後の方にお任せします。
※ ブラックジャックの簡単な情報を得ました。
※ 悲しみを怒りで抑え込んでいる傾向があります。


【蝉@魔王 JUVENILE REMIX】
[状態]: 健康
[服装]:
[装備]: バロンのナイフ@うえきの法則
[道具]:支給品一式 不明支給品1つ
[思考]
基本: 自分の意思に従う。操り人形にはならない。
1: これが仕事なのか判断がつくまで、とりあえずキリコの依頼を受ける。
2: うしおと一緒に病院を目指す。
3: 襲ってくる相手は撃退する。殺すかどうかは保留。
4: 市長を見つけたらとりあえずそっちを優先で守る…つもり。岩西がいたら…?
[備考]
※ 参戦時期は市長護衛中。鯨の攻撃を受ける前です。
※ ブラックジャックの簡単な情報を得ました。



【ドクター・キリコ@ブラック・ジャック】
[状態]: 健康 ほほに殴られた跡
[服装]:
[装備]:
[道具]:支給品一式 不明支給品2つ
[思考]
基本: いつも通り、依頼してくる人間は安楽死させる。かつ、主催者に一泡吹かせる。
1: ブラックジャック探しと医療道具探しの為、診療所に向かう。
2: ブラックジャックと会えたらうしおの事を伝え、神社で合流させる。
3: 助かる見込みもなく、苦しんでいる人間がいたら安楽死させる。
4: ただし、自殺志願者や健康な人間は殺さない。重傷者も、ある程度までは治療の努力をする。
[備考]
※ 参戦時期は少なくとも「99.9パーセントの水」と「弁があった!」の後。
※ 「治療の努力」の程度はわかりません。彼の感覚です。




【エドの練成した槍@鋼の錬金術師】
国家錬金術師の試験等でエドワード・エルリックが練成した槍。
割と頻繁に練成している。しかし、特に秀でた力はなく、登場のたびに壊されているような気も…
彼が練成したものにしては比較的センスがいいと思うのだが…


【バロンのナイフ@うえきの法則】
ごく普通の軍用ナイフ。バロンは能力の基点として使ったが、これ自体に特殊な力は無い。


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