たった2つの冴えないやりかた ◆H4jd5a/JUc
「……おいおい、冗談じゃねえぞ」
つんつん頭に眼鏡の青年・浅月香介が、草木生い茂る森林の中で目を覚ましたとき、開口一番に零れ出たのはそんな言葉だった。
ぼやけていた視界も、皮肉な現実のせいで一瞬にして開けてくれた。
「……どうなってんだよ、これ……」
右手を持ち上げる。……何も問題なく動かせる。
逆の手で軽く頬を抓ってみる。……痛みはある。
どうやら、都合良く夢でした、よし起きるか、とはいかないようだ。
もっとも、これが現実であることなど、はじめから分かっていたのだが。
「……頭いてえ」
つんつん頭に眼鏡の青年・浅月香介が、草木生い茂る森林の中で目を覚ましたとき、開口一番に零れ出たのはそんな言葉だった。
ぼやけていた視界も、皮肉な現実のせいで一瞬にして開けてくれた。
「……どうなってんだよ、これ……」
右手を持ち上げる。……何も問題なく動かせる。
逆の手で軽く頬を抓ってみる。……痛みはある。
どうやら、都合良く夢でした、よし起きるか、とはいかないようだ。
もっとも、これが現実であることなど、はじめから分かっていたのだが。
「……頭いてえ」
現実だと分かっていたからこそ。
浅月は、理解できなかった。
「……殺し合いだって……?」
思い返すは、目の前で起こった惨劇。
少年の首が吹き飛び、知らない少女が殺された。
それだけなら、浅月がここまで驚くことはなかった。
彼は外見こそ普通の高校生だが、その身に悪魔の血を宿すブレード・チルドレンの一人。
今まで殺した人間は数知れないし、危険な目に巻き込まれたことも一度や二度ではない。
よって目の前で死体が二つ完成しようと、誰かの悲鳴を聞こうと、本来なら動揺も迷いも混乱もしないはずなのだ。
浅月は、理解できなかった。
「……殺し合いだって……?」
思い返すは、目の前で起こった惨劇。
少年の首が吹き飛び、知らない少女が殺された。
それだけなら、浅月がここまで驚くことはなかった。
彼は外見こそ普通の高校生だが、その身に悪魔の血を宿すブレード・チルドレンの一人。
今まで殺した人間は数知れないし、危険な目に巻き込まれたことも一度や二度ではない。
よって目の前で死体が二つ完成しようと、誰かの悲鳴を聞こうと、本来なら動揺も迷いも混乱もしないはずなのだ。
「あれ……亮子……だよな……」
―――よく知る少女の声を聞かなければ。
浅月は真っ暗な闇空を仰ぎ見て、複雑な表情をする。
高町亮子。
自らと同じブレード・チルドレンの独りにして、浅月の幼馴染。
女らしさの欠片も可愛げもない、女子に真顔で愛の告白をされ、『クマ殺し』との愛称さえつくほどに腕っ節の強い少女。
そして―――浅月にとっては、それ以上の存在でもある。
10年間幼馴染としてやってきた女の声を聞き逃すほど、彼は愚か者ではなかった。
「間違いない、あれは亮子だ。……となると、俺と亮子以外の……理緒やアイズもここにいる可能性は高い、か」
そう呟く浅月、次に口から零れたのはため息だった。
「……清隆、なのか……?」
その言葉がどこか苦々しげなのは、責めようもないだろう。
高町亮子。
自らと同じブレード・チルドレンの独りにして、浅月の幼馴染。
女らしさの欠片も可愛げもない、女子に真顔で愛の告白をされ、『クマ殺し』との愛称さえつくほどに腕っ節の強い少女。
そして―――浅月にとっては、それ以上の存在でもある。
10年間幼馴染としてやってきた女の声を聞き逃すほど、彼は愚か者ではなかった。
「間違いない、あれは亮子だ。……となると、俺と亮子以外の……理緒やアイズもここにいる可能性は高い、か」
そう呟く浅月、次に口から零れたのはため息だった。
「……清隆、なのか……?」
その言葉がどこか苦々しげなのは、責めようもないだろう。
ここには、自分以外のブレード・チルドレンがいる。
その事実は、『これも清隆の手の内なのではないか』というあまり認めたくない仮説を立てざるを得ない状況を作り出していた。
清隆の好みそうな方法ではない、確かにそうは思う。しかしあの男は歩を試すためにはどんなことでもする。
結果的に、歩が死ぬようなことであっても、なんの躊躇いもなく。
もし清隆が殺し合い、というあまりに極端な方法で歩を更なる絶望に放り込むつもりだというのなら、彼に試練を与えるべき自分たちブレード・チルドレンがこの場にいるのもまた不自然はない。
そう、浅月は気付いていた。
この会場に、鳴海歩がいるということに。
浅月は亮子とともに、歩の声もわずかながらとらえていたのだった。
その事実は、『これも清隆の手の内なのではないか』というあまり認めたくない仮説を立てざるを得ない状況を作り出していた。
清隆の好みそうな方法ではない、確かにそうは思う。しかしあの男は歩を試すためにはどんなことでもする。
結果的に、歩が死ぬようなことであっても、なんの躊躇いもなく。
もし清隆が殺し合い、というあまりに極端な方法で歩を更なる絶望に放り込むつもりだというのなら、彼に試練を与えるべき自分たちブレード・チルドレンがこの場にいるのもまた不自然はない。
そう、浅月は気付いていた。
この会場に、鳴海歩がいるということに。
浅月は亮子とともに、歩の声もわずかながらとらえていたのだった。
「……ああ、ったく……殺し合いといい、首輪といい、亮子や鳴海弟のことといい……どれから考えればいいんだよ」
かつて、とある騒がしい女に「少年探偵」と呼ばれていた浅月。彼にとって考察は得意分野だし、多少の自信もある。
しかし、首輪に仕込まれているであろう爆弾に関する知識にかけては、爆裂ロリー……爆炎の魔女・竹内理緒の方が上だ。
自分には彼女と違って爆弾を生成する技術もない。『そういう』ことは理緒に任せておくに限る。
ならば、自分がすることは。
「殺し合いに乗る……なんてするわけにもいかないしな」
あるいは、ここにいるのが浅月一人だったならば、彼は殺し合いに乗ることもためらわなかったかもしれない。
しかし、ここに歩や亮子と言った知り合いがいることで、優勝して帰還するという選択肢はあっけなく消える。
特に亮子は、この場でも間違いなく殺し合いなどするもんか、皆で主催者をぶっ飛ばしてやろう、と大声で宣言でもしているはずだ。手に取るように思い浮かぶのは長い付き合い故だろうか。
それはどう考えても危険だ。亮子と同じように殺しを否定する人間のみが寄ってくればいいが、そう上手くいくはずがない。人を殺すことが目的の人間もそれに吸い寄せられるはずだ。
今も亮子が危険な目に合っている可能性は……ある。
となれば。
「……まず、亮子の奴と鳴海弟を探すとするか。あいつ、無茶やらかしそうだしな……。理緒達もいるなら合流しねえと。」
何よりも亮子を見つけて守る、そう決まっていた。
これは今更決めたことでもない、もっと幼いころからずっと思い続け、考え続けたことにすぎない。
浅月はそのために、自らの手を染め続けてきたのだから。
かつて、とある騒がしい女に「少年探偵」と呼ばれていた浅月。彼にとって考察は得意分野だし、多少の自信もある。
しかし、首輪に仕込まれているであろう爆弾に関する知識にかけては、爆裂ロリー……爆炎の魔女・竹内理緒の方が上だ。
自分には彼女と違って爆弾を生成する技術もない。『そういう』ことは理緒に任せておくに限る。
ならば、自分がすることは。
「殺し合いに乗る……なんてするわけにもいかないしな」
あるいは、ここにいるのが浅月一人だったならば、彼は殺し合いに乗ることもためらわなかったかもしれない。
しかし、ここに歩や亮子と言った知り合いがいることで、優勝して帰還するという選択肢はあっけなく消える。
特に亮子は、この場でも間違いなく殺し合いなどするもんか、皆で主催者をぶっ飛ばしてやろう、と大声で宣言でもしているはずだ。手に取るように思い浮かぶのは長い付き合い故だろうか。
それはどう考えても危険だ。亮子と同じように殺しを否定する人間のみが寄ってくればいいが、そう上手くいくはずがない。人を殺すことが目的の人間もそれに吸い寄せられるはずだ。
今も亮子が危険な目に合っている可能性は……ある。
となれば。
「……まず、亮子の奴と鳴海弟を探すとするか。あいつ、無茶やらかしそうだしな……。理緒達もいるなら合流しねえと。」
何よりも亮子を見つけて守る、そう決まっていた。
これは今更決めたことでもない、もっと幼いころからずっと思い続け、考え続けたことにすぎない。
浅月はそのために、自らの手を染め続けてきたのだから。
そうときまれば、迷っている時間はない。
「亮子の奴がいるとすれば……高校辺りか?」
自分や理緒と違い、純粋に高校生として、里玖上部としての生活を送っていた亮子が、この場でも学校、またはそれに準じる施設を好む可能性は高いように思えた。
ここからは少し遠いが―――とりあえずの目的地とする。周辺にある建物は一通り捜索して回ればいいだけの話だ。
「……そういや、武器を確認してなかったな」
自分がディパックの存在を失念していたことを思い出し、肩をすくめる。
こんな物騒な場では武器の確認くらい必須だというのに。
闇の世界で何人も屠ってきた浅月なら、ある程度の武器は使いこなせる。だからこそ、朝月はこの事態を想定していなかった。
「亮子の奴がいるとすれば……高校辺りか?」
自分や理緒と違い、純粋に高校生として、里玖上部としての生活を送っていた亮子が、この場でも学校、またはそれに準じる施設を好む可能性は高いように思えた。
ここからは少し遠いが―――とりあえずの目的地とする。周辺にある建物は一通り捜索して回ればいいだけの話だ。
「……そういや、武器を確認してなかったな」
自分がディパックの存在を失念していたことを思い出し、肩をすくめる。
こんな物騒な場では武器の確認くらい必須だというのに。
闇の世界で何人も屠ってきた浅月なら、ある程度の武器は使いこなせる。だからこそ、朝月はこの事態を想定していなかった。
「……は?」
まさか、武器以外の者が支給されている可能性など。
「……な、なんだこれ……?」
それを握り締めたまま、浅月は疑問符を浮かべる。
それは、少女の姿をした―――人形だった。
正確に言えばそれはフィギュアと呼ばれる一種のマニアの収集品の一つなのだが、そのようなことは今回あまり関係がない。
おかっぱ髪に、眼帯をつけた美少女フィギュア。
それが、浅月の持ち物(その一)だった。
「……」
一瞬理緒の爆弾のような類の武器かと思い、全身をくまなく凝視する。穿いてなかった。
頭を叩いたり手足を引っ張ったりしてみたが何もない。つまり。
「……ってちょっと待て!これはどう考えても武器じゃないだろ!鈍器として使うにも無理がありすぎるだろ!」
どう考えても、外れだった。
「……ったく、武器以外の余計なものを入れるんじゃねえよ……あの理緒くらいちっこい女とおっさんは殺し合わせたいんじゃないのか?それなのに武器を支給しないなんてどういうつもりなんだ?……お、もうひとつ何かあるみたいだ……」
今度こそ、まともな武器で会ってくれ。
浅月は本気でそう祈りながら、それをディパックから引きずり出した。
「……」
『それ』は、露出度の高い女ものの衣服だった。
……思わず浅月がそれを地面に投げ捨てたとしても、この場で責められはしないだろう。
何せ、亮子を探さなければという浅月の真摯で紳士な想いをあざ笑うかのような不運が二度も続いたのだから。
「あいつら……絶対許さねえ……」
殺し合いとは違う方向に怒りを覚える浅月。
こんな人を馬鹿にしたような支給品をすぐさまディパックに戻し、再び歩き出して―――
気づいた。
いつの間にか少女が、こちらに走って近づいてきたことに。
「……っ!?」
咄嗟のことだったが、浅月はそれに対処できない一般人ではない。
いつ攻撃されても反撃し返せるように構えをとり、そして。
まさか、武器以外の者が支給されている可能性など。
「……な、なんだこれ……?」
それを握り締めたまま、浅月は疑問符を浮かべる。
それは、少女の姿をした―――人形だった。
正確に言えばそれはフィギュアと呼ばれる一種のマニアの収集品の一つなのだが、そのようなことは今回あまり関係がない。
おかっぱ髪に、眼帯をつけた美少女フィギュア。
それが、浅月の持ち物(その一)だった。
「……」
一瞬理緒の爆弾のような類の武器かと思い、全身をくまなく凝視する。穿いてなかった。
頭を叩いたり手足を引っ張ったりしてみたが何もない。つまり。
「……ってちょっと待て!これはどう考えても武器じゃないだろ!鈍器として使うにも無理がありすぎるだろ!」
どう考えても、外れだった。
「……ったく、武器以外の余計なものを入れるんじゃねえよ……あの理緒くらいちっこい女とおっさんは殺し合わせたいんじゃないのか?それなのに武器を支給しないなんてどういうつもりなんだ?……お、もうひとつ何かあるみたいだ……」
今度こそ、まともな武器で会ってくれ。
浅月は本気でそう祈りながら、それをディパックから引きずり出した。
「……」
『それ』は、露出度の高い女ものの衣服だった。
……思わず浅月がそれを地面に投げ捨てたとしても、この場で責められはしないだろう。
何せ、亮子を探さなければという浅月の真摯で紳士な想いをあざ笑うかのような不運が二度も続いたのだから。
「あいつら……絶対許さねえ……」
殺し合いとは違う方向に怒りを覚える浅月。
こんな人を馬鹿にしたような支給品をすぐさまディパックに戻し、再び歩き出して―――
気づいた。
いつの間にか少女が、こちらに走って近づいてきたことに。
「……っ!?」
咄嗟のことだったが、浅月はそれに対処できない一般人ではない。
いつ攻撃されても反撃し返せるように構えをとり、そして。
びったーん。
「……」
思わず浅月は眼鏡の奥の瞳を点にする。
自分に向かって全力で駆け寄ってきた少女が、浅月の数メートル手前で派手に転倒したからだ。
しかも、頭から思いっきり、漫画のような擬音語付きで。
理緒がキャラを作ってわざと転倒する時と似たようなものか。
「……派手にやったな、おい……」
放っておいてもいいのだが、明らかにすっ転んだと思われる人間を放置しておくのはいろいろとまずい。
……どうやら、演技というわけでもなさそうだ。
そう判断した浅月は顔を上げない少女の肩をゆすった。
わずかに手に触れる髪は、鮮やかな金髪。
見た目は品がよさそうに見えるのだが、地面としたたかに熱い口づけをする様を見ればとてもではないが『上品そう』なんて言えるはずがない。
さすがに人は転んだ程度では死なないだろう……死んでないよな?
「……おい、お前、大丈夫か……?」
「……んっ……」
少女は、小さなうめき声を漏らしながら顔を上げる。
ばっちりと、浅月と目が合った。
やはり、全体的に女の子らしい雰囲気で、ぱっちりと見開かれた瞳、愛らしい顔立ち。浅月の周りにはいないタイプの女性である。
思わず浅月は眼鏡の奥の瞳を点にする。
自分に向かって全力で駆け寄ってきた少女が、浅月の数メートル手前で派手に転倒したからだ。
しかも、頭から思いっきり、漫画のような擬音語付きで。
理緒がキャラを作ってわざと転倒する時と似たようなものか。
「……派手にやったな、おい……」
放っておいてもいいのだが、明らかにすっ転んだと思われる人間を放置しておくのはいろいろとまずい。
……どうやら、演技というわけでもなさそうだ。
そう判断した浅月は顔を上げない少女の肩をゆすった。
わずかに手に触れる髪は、鮮やかな金髪。
見た目は品がよさそうに見えるのだが、地面としたたかに熱い口づけをする様を見ればとてもではないが『上品そう』なんて言えるはずがない。
さすがに人は転んだ程度では死なないだろう……死んでないよな?
「……おい、お前、大丈夫か……?」
「……んっ……」
少女は、小さなうめき声を漏らしながら顔を上げる。
ばっちりと、浅月と目が合った。
やはり、全体的に女の子らしい雰囲気で、ぱっちりと見開かれた瞳、愛らしい顔立ち。浅月の周りにはいないタイプの女性である。
「……あ、」
だから少女が何か言いかけた時、浅月はやばい、と思った。
怖がらせたのだろうか、と。
この場は殺し合いの場なのだ、少女が見ず知らずの人間に対して怯えたとしても何も不思議はない。
まして浅月は、自分の外見が信用に値されるような人当たりのよいものではないことは理解しているのだから。
カノンくらい外面がよければまた別だったのかもしれないが、そんなことを嘆いたところでどうにもなるまい。
「ま、待て、俺は―――」
だから、浅月は否定の言葉を紡ごうとして。
「…………っう、うわああああああああ!変な人だあああああああああああ!」
少女の思いっきり不審な人物を糾弾するかのような声に、口を閉ざした。
「……ちょ、おま、声がでかい……!」
「だってどう考えても変じゃん!頭の色変だしなんか見た目も……もがが」
「ええい静かにしろ!」
浅月は、とてもよく通る声で自分を指差して変だと連呼する少女の口を塞ぐ。
いきなり人を指差して変な人とは何事だ。
前言を全て撤回。こいつはちっともお嬢様系なんかじゃない、どちらかと言えばあの関口伊万里よりの女だ。以上 BY浅月
だから少女が何か言いかけた時、浅月はやばい、と思った。
怖がらせたのだろうか、と。
この場は殺し合いの場なのだ、少女が見ず知らずの人間に対して怯えたとしても何も不思議はない。
まして浅月は、自分の外見が信用に値されるような人当たりのよいものではないことは理解しているのだから。
カノンくらい外面がよければまた別だったのかもしれないが、そんなことを嘆いたところでどうにもなるまい。
「ま、待て、俺は―――」
だから、浅月は否定の言葉を紡ごうとして。
「…………っう、うわああああああああ!変な人だあああああああああああ!」
少女の思いっきり不審な人物を糾弾するかのような声に、口を閉ざした。
「……ちょ、おま、声がでかい……!」
「だってどう考えても変じゃん!頭の色変だしなんか見た目も……もがが」
「ええい静かにしろ!」
浅月は、とてもよく通る声で自分を指差して変だと連呼する少女の口を塞ぐ。
いきなり人を指差して変な人とは何事だ。
前言を全て撤回。こいつはちっともお嬢様系なんかじゃない、どちらかと言えばあの関口伊万里よりの女だ。以上 BY浅月
しかし、ここで騒がれてはたまったものではない。
何せこの場は殺し合い。大声を出せば、それだけ危険人物に見つかる可能性が高まる。
武器さえあればある程度戦える自信があるが、自分の支給品はゲーム機と人形のみ。あれではどうにもならない。
自分だけならともかく、この少女まで死ぬのはさすがに忍びない。
だからこそ、浅月は少女の命を助けるためにその行動に出たのだが―――
何せこの場は殺し合い。大声を出せば、それだけ危険人物に見つかる可能性が高まる。
武器さえあればある程度戦える自信があるが、自分の支給品はゲーム機と人形のみ。あれではどうにもならない。
自分だけならともかく、この少女まで死ぬのはさすがに忍びない。
だからこそ、浅月は少女の命を助けるためにその行動に出たのだが―――
「……んー!んー!へんはい!へんはい!ははひいほほふふひはほ!」
「ちげえよ!少し黙ってろ!」
浅月の腕から逃れようと両手両足を振り回し暴れる少女。いろいろな意味で台無しである。
何故か少女の言葉が聞こえた浅月は、焦りも相まってつい強い口調で少女に返してしまう。
「……いいかよく聞け!俺はお前を殺すつもりはない!だから頼むから暴れるな!」
「ははへははへー!!ふほっひ、はへはん、ひほはんはふへへー!」
「いいか、ここでお前が騒ぐと殺されるかもしれないんだぞ!死にたいのか!」
ぴたり、と声がやむ。
「……」
「……よし、分かったか?俺はお前をどうこうするつもりはない」
「……ほんほ?ほんほふひ?」
「本当だ。だから―――」
「ちげえよ!少し黙ってろ!」
浅月の腕から逃れようと両手両足を振り回し暴れる少女。いろいろな意味で台無しである。
何故か少女の言葉が聞こえた浅月は、焦りも相まってつい強い口調で少女に返してしまう。
「……いいかよく聞け!俺はお前を殺すつもりはない!だから頼むから暴れるな!」
「ははへははへー!!ふほっひ、はへはん、ひほはんはふへへー!」
「いいか、ここでお前が騒ぐと殺されるかもしれないんだぞ!死にたいのか!」
ぴたり、と声がやむ。
「……」
「……よし、分かったか?俺はお前をどうこうするつもりはない」
「……ほんほ?ほんほふひ?」
「本当だ。だから―――」
それが、原因だったのかもしれない。
「だから……何だ?」
一瞬、体内温度が二度ほど下がった気がした。
少年らしき声は淡々と、しかしどこか怒りを滲ませて、浅月に一言告げた。
「手を挙げろ」
一瞬、体内温度が二度ほど下がった気がした。
少年らしき声は淡々と、しかしどこか怒りを滲ませて、浅月に一言告げた。
「手を挙げろ」
―――冗談、だろ……?
浅月は、自分の今日の運勢が最悪だと知った。
浅月は、自分の今日の運勢が最悪だと知った。
※
柳生は、決して江戸中から好かれている一族ではない。
柳生流に敗北した他の流派はこちらを恨み、いつ寝首をかこうか狙っているやもしれぬし、また金のためだけに柳生にすり寄ろうとする連中も存在する。
だから自分だけが憎まれ、殺し合って死ねとここに連れてこられたのならば、九兵衛は頭首として仕方なくも納得することができただろう。
しかし。
「……あれは親八君の声だった。間違いない……僕は確かに聞いた」
志村新八がこの場にいるならば、話は変わってくる。
柳生流に敗北した他の流派はこちらを恨み、いつ寝首をかこうか狙っているやもしれぬし、また金のためだけに柳生にすり寄ろうとする連中も存在する。
だから自分だけが憎まれ、殺し合って死ねとここに連れてこられたのならば、九兵衛は頭首として仕方なくも納得することができただろう。
しかし。
「……あれは親八君の声だった。間違いない……僕は確かに聞いた」
志村新八がこの場にいるならば、話は変わってくる。
もし、この殺し合いが自分への憎しみを晴らすために開かれたものだとしたら?
そして、新八などの知り合いも巻き込むことで、自分を追い込もうとしているのだとしたら?
新八だけではない。新八がいるならば、その上司である坂田銀時や仲間の神楽、―――そして、九兵衛にとって特別な存在の少女・志村妙すらいるかもしれないのだ。
他にも柳生四天王や父、祖父……柳生の関係者は数多くいる。彼らもこの殺し合いに巻き込まれているならば。
「……そんなことを、許してたまるか……!」
九兵衛はだからひたすら、森を駆ける。
自分の知り合いと一刻も早く合流し、殺し合いに乗る者を裁くため。
自分の武器は、木刀のような人と『戦う』ための道具ではなく、人を『殺す』ためのものだった。
こんなもので殴られたら、普通の人間は簡単に死んでしまうだろう。
だから、これは脅し以上には使わない。
そう、九兵衛は決めていた。
そして、新八などの知り合いも巻き込むことで、自分を追い込もうとしているのだとしたら?
新八だけではない。新八がいるならば、その上司である坂田銀時や仲間の神楽、―――そして、九兵衛にとって特別な存在の少女・志村妙すらいるかもしれないのだ。
他にも柳生四天王や父、祖父……柳生の関係者は数多くいる。彼らもこの殺し合いに巻き込まれているならば。
「……そんなことを、許してたまるか……!」
九兵衛はだからひたすら、森を駆ける。
自分の知り合いと一刻も早く合流し、殺し合いに乗る者を裁くため。
自分の武器は、木刀のような人と『戦う』ための道具ではなく、人を『殺す』ためのものだった。
こんなもので殴られたら、普通の人間は簡単に死んでしまうだろう。
だから、これは脅し以上には使わない。
そう、九兵衛は決めていた。
そんな、使命感に燃える彼―――否、彼女がやがて見たのは。
自分と同じくらいの年齢の男が、制服姿の少女に対して野蛮な行為に及んでいる(ように九兵衛には見えた)姿。
しかも男の周りには、露出度の高い衣服と、怪しげな女の子の姿をした人形が落ちているではないか。
不審者以外の何物でもない。
「……っ!」
何があったか知らないが、女性に暴力を振るうなど許せない。
九兵衛はやや空回りした正義感で―――気配を隠しながら男に近づき、その背に自分の得物をつきつけた。
自分と同じくらいの年齢の男が、制服姿の少女に対して野蛮な行為に及んでいる(ように九兵衛には見えた)姿。
しかも男の周りには、露出度の高い衣服と、怪しげな女の子の姿をした人形が落ちているではないか。
不審者以外の何物でもない。
「……っ!」
何があったか知らないが、女性に暴力を振るうなど許せない。
九兵衛はやや空回りした正義感で―――気配を隠しながら男に近づき、その背に自分の得物をつきつけた。
※
やばい。
誤解されている。
浅月はすぐにそう理解した。
そして、その誤解の方向性も何となくながら把握していた。
とんだ勘違いにもほどがある。
自分はむしろ、この少女を助けてやったというのに。
誤解されている。
浅月はすぐにそう理解した。
そして、その誤解の方向性も何となくながら把握していた。
とんだ勘違いにもほどがある。
自分はむしろ、この少女を助けてやったというのに。
「違う、俺はそんなつもりじゃ―――あいつに聞いてくれ!絶対……」
そして、少女をびしりと指差して。
少女に、自分が無罪であるという証明をしてもらおうとして。
「……は?」
言葉を失った。
そして、少女をびしりと指差して。
少女に、自分が無罪であるという証明をしてもらおうとして。
「……は?」
言葉を失った。
少女は眠っていた。
それはもう気持ちよさそうに、すぴーと寝息を立てながら。
寝たふりでは間違いなくなかった。判開きの口から涎が零れ落ちる。
殺し合いの場にいるという緊張感は、皆無。
これでもう、自分の無実を説明する者はいないわけで。
それはもう気持ちよさそうに、すぴーと寝息を立てながら。
寝たふりでは間違いなくなかった。判開きの口から涎が零れ落ちる。
殺し合いの場にいるという緊張感は、皆無。
これでもう、自分の無実を説明する者はいないわけで。
「……」
少年の冷たい視線が背後から突き刺さる。
「……いや、その……」
ああ、これは不味い。
相手が殺し合いに乗っているのならば隙をついて殺害してもいい。しかし彼はこの殺し合いを良しとしない善人。可能ならば協力しない手はない。
……もっとも、まともな武器がなければ殺すこともできないのだが。
少年の冷たい視線が背後から突き刺さる。
「……いや、その……」
ああ、これは不味い。
相手が殺し合いに乗っているのならば隙をついて殺害してもいい。しかし彼はこの殺し合いを良しとしない善人。可能ならば協力しない手はない。
……もっとも、まともな武器がなければ殺すこともできないのだが。
「……すまない」
だから、浅月には予想外だった。
こうなったら何としても説明してみせる、そう考え口を開きかけたその時、目の前の少年がそれを降ろしたことが。
浅月は少年の方に向きなおった。年のころは自分とそう変わらないくらいに見えるが、浅月よりずっと小柄だ。
少年とはいえ、少女にも見える中世的な雰囲気を持っている。その表情はりりしく、実力者であることは明白だった。
「……い、いいのか?あれだけ疑っていたのに」
もちろん信じて貰えたことは嬉しいし助かったが、こんなに簡単に行くとは思わなかった。
「……彼女は、幸せそうに眠っている。貴方が危険人物なら、こんなに安らかな顔できないだろう?」
ああ、そうか。
少女を見る。
確かにその寝顔は安らかだった。
浅月の肩にわずかに体を任せている。
最後の言葉を信じてくれたようだ。……一安心というやつか。
これだけで自分を信用してくれるとは、彼もお人好しなのだろうか。
だから、浅月には予想外だった。
こうなったら何としても説明してみせる、そう考え口を開きかけたその時、目の前の少年がそれを降ろしたことが。
浅月は少年の方に向きなおった。年のころは自分とそう変わらないくらいに見えるが、浅月よりずっと小柄だ。
少年とはいえ、少女にも見える中世的な雰囲気を持っている。その表情はりりしく、実力者であることは明白だった。
「……い、いいのか?あれだけ疑っていたのに」
もちろん信じて貰えたことは嬉しいし助かったが、こんなに簡単に行くとは思わなかった。
「……彼女は、幸せそうに眠っている。貴方が危険人物なら、こんなに安らかな顔できないだろう?」
ああ、そうか。
少女を見る。
確かにその寝顔は安らかだった。
浅月の肩にわずかに体を任せている。
最後の言葉を信じてくれたようだ。……一安心というやつか。
これだけで自分を信用してくれるとは、彼もお人好しなのだろうか。
「……まあ、分かってくれたのなら構わねえよ。俺は浅月だ。浅月香介」
とりあえず、名乗る。名簿とやらがまだ表示されていないため偽名を使うという選択肢もあったが、わざわざ再び疑われる真似をする理由もないだろう。
「僕は柳生九兵衛、柳生家の当主だ」
やはり男と女の中間のような声で、少年は名乗り返した。
「九兵衛、か。お前は殺し合うつもりはないんだよな?」
本来なら警戒を緩めてはいけない場面なのだが、先ほどの言動からして彼が危険人物を許し難いと思っていることは分かった。
「当然だ。僕は人を守るために戦っているのだから、殺し合いなどするはずがない」
やはり、見た目通り性格も気まじめな正義感らしい。
少し亮子に似ているかもしれない、と思った。相手は『男っぽい女の子』などではなく本当の男だろうに。
「……浅月さん、貴方を信頼に値する人物と判断して頼みがある。
……僕の探し人を見つけたら、手を貸してやって欲しい。志村新八、という少年だ。もしかしたら同じ名字の女性や、坂田銀時、神楽の二人もいるかもしれない。彼らにも協力してあげて欲しい。……二人は強い」
「……一人で行動するつもりか?」
九兵衛の言葉は、今からすぐにでも浅月から離れようとするものだった。
思わず、浅月は問うてしまう。
聞いてからまずかったか、と思ったが、すでに遅い。
しかし少年は、浅月の言葉に深く頷いた。
強い決意の秘められた瞳だった。
何かを知り、人間として成長したであろうことがよく分かる、真剣な顔だった。
「人を探すならまとまって行動するより散った方が手っ取り早いからな。……大丈夫だ、これでも腕に自信はある」
少年の身を心配したという訳ではなかったのだが、そう解釈されたらしい。
問題ない、そう言っているのだから問題ないのだろう。
できれば協力してみる価値がある、その程度にすぎない。向こうにその気がないのに、無理に引き止める必要もない。
それに、人を探すには二手に分かれた方がいいという考えにも大賛成であったことだし、ちょうどいいだろう。
だから浅月は、九兵衛の言葉に小さく頷いた。
「ああ、了解。だがせっかくだ、俺の方も頼まれてくれ」
代わりとばかりに、こちらも九兵衛に知り合いを探させることにする。
ギブアンドテイク、という奴だ。
「高町亮子、って女と鳴海歩っつうもみあげの男がここにいるはずなんだ。あいつらは間違いなく人殺しはしないだろうから、二人に会ったら浅月に会った、と伝えてくれ。あと俺は高校方面を探してみようと思っている。お前は別の方を当たってほしい」
理緒や他のブレードチルドレンがいる可能性については口にしなかった。
ブレードチルドレンは本来危険な存在だ。自分や亮子とてどうなるか分からない現実、他は更に保障などできない。
少年はやや先走りやすいタイプのようだし、余計な情報を与えるといろいろまずいことになるかもしれない。
「承知した。それなら僕は東に向かうことにする。……しかしそうなるとどこかで合流する必要があるが……どこがいいだろうか?」
九兵衛の言葉に、浅月はマップのちょうど中央に位置する神社を指差した。市街地に比べて人は少なく、それでいて分かりやすいとなれば限られている。その中でも自分の目的地に近いところを選んでみたのだが。
「この辺でどうだ?時間は―――この名簿が表示されてからだ。お互い名簿を見れば目的が変わるかもしれないしな」
浅月は暗に『名簿に乗った名前によっては自らの立場を変えるかもしれない』とほのめかしたのだが、九兵衛はそれには気づいていないようだった。
「ああ、それで構わない……しかし、その子はどうする?このまま寝かせておくわけにもいかないだろう」
九兵衛は浅月の言葉に同意し、そして、すぐに視線を浅月にもたれて眠っている少女へと移した。
「……そうだな……」
なんだか現実を突き付けられた気分だ。
九兵衛の言葉はもっともだ。
しかし、見たところ何の力もなさそうに見えても、実は危険人物の可能性はある。
理緒などその主たる例だろう。
害はなさそうだからといって、簡単に気を許してもいいのか。
「……」
自分には亮子と鳴海弟を探すという目的がある。
この少女と一緒にいたところで、お荷物になるのは明白だ。
前の少年も同じ考えなのかもしれないが、うまく連れて行ってはもらえないだろうか。
「……あのさ、お前」
立ち上がろうとする。
ずる、と少女の体が浅月の動きに合わせて動く。
肩に寄りかかって眠っていれば、当然のことだ。
このまま浅月が立ち上がれば、少女は地面へのセカンド・キスをすることになるのは明白だった。
「……」
嫌な予感がした。
とりあえず、名乗る。名簿とやらがまだ表示されていないため偽名を使うという選択肢もあったが、わざわざ再び疑われる真似をする理由もないだろう。
「僕は柳生九兵衛、柳生家の当主だ」
やはり男と女の中間のような声で、少年は名乗り返した。
「九兵衛、か。お前は殺し合うつもりはないんだよな?」
本来なら警戒を緩めてはいけない場面なのだが、先ほどの言動からして彼が危険人物を許し難いと思っていることは分かった。
「当然だ。僕は人を守るために戦っているのだから、殺し合いなどするはずがない」
やはり、見た目通り性格も気まじめな正義感らしい。
少し亮子に似ているかもしれない、と思った。相手は『男っぽい女の子』などではなく本当の男だろうに。
「……浅月さん、貴方を信頼に値する人物と判断して頼みがある。
……僕の探し人を見つけたら、手を貸してやって欲しい。志村新八、という少年だ。もしかしたら同じ名字の女性や、坂田銀時、神楽の二人もいるかもしれない。彼らにも協力してあげて欲しい。……二人は強い」
「……一人で行動するつもりか?」
九兵衛の言葉は、今からすぐにでも浅月から離れようとするものだった。
思わず、浅月は問うてしまう。
聞いてからまずかったか、と思ったが、すでに遅い。
しかし少年は、浅月の言葉に深く頷いた。
強い決意の秘められた瞳だった。
何かを知り、人間として成長したであろうことがよく分かる、真剣な顔だった。
「人を探すならまとまって行動するより散った方が手っ取り早いからな。……大丈夫だ、これでも腕に自信はある」
少年の身を心配したという訳ではなかったのだが、そう解釈されたらしい。
問題ない、そう言っているのだから問題ないのだろう。
できれば協力してみる価値がある、その程度にすぎない。向こうにその気がないのに、無理に引き止める必要もない。
それに、人を探すには二手に分かれた方がいいという考えにも大賛成であったことだし、ちょうどいいだろう。
だから浅月は、九兵衛の言葉に小さく頷いた。
「ああ、了解。だがせっかくだ、俺の方も頼まれてくれ」
代わりとばかりに、こちらも九兵衛に知り合いを探させることにする。
ギブアンドテイク、という奴だ。
「高町亮子、って女と鳴海歩っつうもみあげの男がここにいるはずなんだ。あいつらは間違いなく人殺しはしないだろうから、二人に会ったら浅月に会った、と伝えてくれ。あと俺は高校方面を探してみようと思っている。お前は別の方を当たってほしい」
理緒や他のブレードチルドレンがいる可能性については口にしなかった。
ブレードチルドレンは本来危険な存在だ。自分や亮子とてどうなるか分からない現実、他は更に保障などできない。
少年はやや先走りやすいタイプのようだし、余計な情報を与えるといろいろまずいことになるかもしれない。
「承知した。それなら僕は東に向かうことにする。……しかしそうなるとどこかで合流する必要があるが……どこがいいだろうか?」
九兵衛の言葉に、浅月はマップのちょうど中央に位置する神社を指差した。市街地に比べて人は少なく、それでいて分かりやすいとなれば限られている。その中でも自分の目的地に近いところを選んでみたのだが。
「この辺でどうだ?時間は―――この名簿が表示されてからだ。お互い名簿を見れば目的が変わるかもしれないしな」
浅月は暗に『名簿に乗った名前によっては自らの立場を変えるかもしれない』とほのめかしたのだが、九兵衛はそれには気づいていないようだった。
「ああ、それで構わない……しかし、その子はどうする?このまま寝かせておくわけにもいかないだろう」
九兵衛は浅月の言葉に同意し、そして、すぐに視線を浅月にもたれて眠っている少女へと移した。
「……そうだな……」
なんだか現実を突き付けられた気分だ。
九兵衛の言葉はもっともだ。
しかし、見たところ何の力もなさそうに見えても、実は危険人物の可能性はある。
理緒などその主たる例だろう。
害はなさそうだからといって、簡単に気を許してもいいのか。
「……」
自分には亮子と鳴海弟を探すという目的がある。
この少女と一緒にいたところで、お荷物になるのは明白だ。
前の少年も同じ考えなのかもしれないが、うまく連れて行ってはもらえないだろうか。
「……あのさ、お前」
立ち上がろうとする。
ずる、と少女の体が浅月の動きに合わせて動く。
肩に寄りかかって眠っていれば、当然のことだ。
このまま浅月が立ち上がれば、少女は地面へのセカンド・キスをすることになるのは明白だった。
「……」
嫌な予感がした。
「……突然顔も知らぬ僕に保護されるよりは、安全だと認識されている君が同行した方が、彼女にも良いと思うのだが」
やっぱりそうなるのか。
浅月は内心嘆いた。
名前も知らない少女を、世話してやる義理などない。
「……それはそうだがなあ……」
「頼む」
少年は、頭を下げる。
「……僕の力では、彼女を運ぶことは難しい。……貴方に頼みたい。……どうか引き受けてくれないか」
確かに少年は小柄だ。きっと今眠っているこの少女の方が背も高いだろう。
実力者であっても、これでは移動すらままならないだろうことは、浅月にもすぐ分かった。
断ることは、できる。
やっぱりそうなるのか。
浅月は内心嘆いた。
名前も知らない少女を、世話してやる義理などない。
「……それはそうだがなあ……」
「頼む」
少年は、頭を下げる。
「……僕の力では、彼女を運ぶことは難しい。……貴方に頼みたい。……どうか引き受けてくれないか」
確かに少年は小柄だ。きっと今眠っているこの少女の方が背も高いだろう。
実力者であっても、これでは移動すらままならないだろうことは、浅月にもすぐ分かった。
断ることは、できる。
―――ったく。
浅月は、身を守るすべもない少女を無償で守ってやるほどお人好しではない。
しかし。
「……勘弁してくれよ……」
今や、それを放置しておけるほどの悪人にもなれなかった。
正確に言えば、もし女の子を放っておいたことが亮子にばれたら、烈火のごとく怒られるに違いないと考えたからなのだが。
「……会えたのが貴方でよかった。……では、約束通り会おう。……死なないでくれ」
「んなの今更すぎるだろ。当たり前だ」
浅月の言葉に、九兵衛はそうだな、と小さく笑った。
誤解から始まった出会いだったが、とりあえず味方は確保できた。
もしもの時は彼の力も借りよう。……そしてできれば武器が欲しい。
しかし。
「……勘弁してくれよ……」
今や、それを放置しておけるほどの悪人にもなれなかった。
正確に言えば、もし女の子を放っておいたことが亮子にばれたら、烈火のごとく怒られるに違いないと考えたからなのだが。
「……会えたのが貴方でよかった。……では、約束通り会おう。……死なないでくれ」
「んなの今更すぎるだろ。当たり前だ」
浅月の言葉に、九兵衛はそうだな、と小さく笑った。
誤解から始まった出会いだったが、とりあえず味方は確保できた。
もしもの時は彼の力も借りよう。……そしてできれば武器が欲しい。
「じゃあ、また会えたらな」
だから、きっとそれは迂闊だったのかもしれない。
既に頭の中は、九兵衛と別れた後のことを考えていたためだろうか。
常に女性と(普通の意味で)行動することが多かった浅月にとって、それはしごく普通の動作だった。
ただの別れのあいさつの延長線、それだけのこと。
まだ声代わりもしていないだろう少年。年齢は自分より下だろう。
そう判断したからこその行為。
「九兵―――」
だから、きっとそれは迂闊だったのかもしれない。
既に頭の中は、九兵衛と別れた後のことを考えていたためだろうか。
常に女性と(普通の意味で)行動することが多かった浅月にとって、それはしごく普通の動作だった。
ただの別れのあいさつの延長線、それだけのこと。
まだ声代わりもしていないだろう少年。年齢は自分より下だろう。
そう判断したからこその行為。
「九兵―――」
ぽん、と。
浅月は何ということない気軽さで、九兵衛の肩を叩いた。
浅月は何ということない気軽さで、九兵衛の肩を叩いた。
「―――――っうがあああああああっ!」
そして気づいた時には、自分の体は宙を舞っていた。
浅月は、ただ考える。
殺し合いに巻き込まれて。
まともな支給品が何一つなく。
面倒くさそうな女の子を掴まされ。
それが原因で誤解され。
挙句の果てに『女の子』に投げ飛ばされるなんて。
浅月は、ただ考える。
殺し合いに巻き込まれて。
まともな支給品が何一つなく。
面倒くさそうな女の子を掴まされ。
それが原因で誤解され。
挙句の果てに『女の子』に投げ飛ばされるなんて。
ああ、俺はやっぱり今日の俺は貧乏籤なんだろう、と。
【F-7/森/一日目深夜】
【浅月香介@スパイラル〜推理の絆〜】
【状態】健康、精神的疲労(小)、頭痛
【装備】なし
【所持品】支給品一式 ハヤテの女装服@ハヤテのごとく! メイドリーナのフィギュア@魔王 JUVENILE REMIX
【思考】
基本:亮子を守る。歩と亮子以外に知り合いがいるなら合流したい。
1:しょうがないので少女(宮子)の面倒を見る。学校に向かう。
2:ひとまず殺し合いには乗らないが、殺人に容赦はない
3:亮子が死んだら―――
4:殺し合いには清隆が関与している……?
※参戦時期はカノン死亡後
【浅月香介@スパイラル〜推理の絆〜】
【状態】健康、精神的疲労(小)、頭痛
【装備】なし
【所持品】支給品一式 ハヤテの女装服@ハヤテのごとく! メイドリーナのフィギュア@魔王 JUVENILE REMIX
【思考】
基本:亮子を守る。歩と亮子以外に知り合いがいるなら合流したい。
1:しょうがないので少女(宮子)の面倒を見る。学校に向かう。
2:ひとまず殺し合いには乗らないが、殺人に容赦はない
3:亮子が死んだら―――
4:殺し合いには清隆が関与している……?
※参戦時期はカノン死亡後
【ハヤテの女装服@ハヤテのごとく!】
ハーマイオニーのあれ。
可愛いだけで特殊効果はありません。
ハーマイオニーのあれ。
可愛いだけで特殊効果はありません。
【メイドリーナのフィギュア@魔王 JUVENILE REMIX】
安藤兄のクラスメイト・要が好きなキャラクターのフィギュア。金髪おかっぱ眼帯メイド服。
ただのフィギュアだが、どうにも不気味な印象を与える。
余談だが、このフィギュア、コミック表紙にまでなっている。
安藤兄のクラスメイト・要が好きなキャラクターのフィギュア。金髪おかっぱ眼帯メイド服。
ただのフィギュアだが、どうにも不気味な印象を与える。
余談だが、このフィギュア、コミック表紙にまでなっている。
【柳生九兵衛@銀魂】
【状態】健康
【装備】
【所持品】支給品一式 不明支給品0〜1 改造トゲバット@金剛番長
【思考】
基本:殺し合いには乗らない。
0:マップの東側に向かい、知り合いを探す
1:とりあえず新八と合流したい。
2:卑怯な手を使う者は許さない
3:妙ちゃんもこの会場に……?
※参戦時期は柳生編以降。
【状態】健康
【装備】
【所持品】支給品一式 不明支給品0〜1 改造トゲバット@金剛番長
【思考】
基本:殺し合いには乗らない。
0:マップの東側に向かい、知り合いを探す
1:とりあえず新八と合流したい。
2:卑怯な手を使う者は許さない
3:妙ちゃんもこの会場に……?
※参戦時期は柳生編以降。
【改造トゲバット@金剛番長】
唐鰤 三信が使う釘バット。
改造済みなので普通の釘バットより威力はあると思われる。
唐鰤 三信が使う釘バット。
改造済みなので普通の釘バットより威力はあると思われる。
※
ああ、夢か。
少女・宮子が出した結論はそれだった。
きっと夢なんだ。
また屋根の上で寝すぎちゃったのかなー。
うん、きっといつかゆのっちが起こしてくれるさ。
だから、きっと夢。
そうじゃなくっちゃおかしいってば。
だって、人が死ぬなんてありえない。
あんなサツマイモみたいな髪をした人が現実にいるわけないって。
優しい人みたいなのは分かったけど。
少女・宮子が出した結論はそれだった。
きっと夢なんだ。
また屋根の上で寝すぎちゃったのかなー。
うん、きっといつかゆのっちが起こしてくれるさ。
だから、きっと夢。
そうじゃなくっちゃおかしいってば。
だって、人が死ぬなんてありえない。
あんなサツマイモみたいな髪をした人が現実にいるわけないって。
優しい人みたいなのは分かったけど。
彼女は、どこまでもマイペースに思考する。
真に彼女はそう思っているのか、それともただの現実逃避なのか。
それは、おそらく彼女にしか分かるよしもない。
真に彼女はそう思っているのか、それともただの現実逃避なのか。
それは、おそらく彼女にしか分かるよしもない。
ああ、でも次に見るなら、もっといい夢が見たいよ。
ヒロさんと沙英さんとゆのっちと三人で、落書きする夢がいい。
そう願いながら。
宮子は再びの眠りについた。
ヒロさんと沙英さんとゆのっちと三人で、落書きする夢がいい。
そう願いながら。
宮子は再びの眠りについた。
その『夢』から、彼女はいつ目覚めるのだろうか?
【宮子@ひだまりスケッチ】
【状態】健康、ZZZ
【装備】なし
【所持品】支給品一式 不明支給品1〜2
【思考】
基本: ???
1:ZZZ……お腹空いたあ……
2:これって夢の中だよね?
【状態】健康、ZZZ
【装備】なし
【所持品】支給品一式 不明支給品1〜2
【思考】
基本: ???
1:ZZZ……お腹空いたあ……
2:これって夢の中だよね?
※現実をいまいち理解していません。目覚めた後に考え方が変わるかもしれません。
時系列順で読む
Back:死と向き合う者たち Next:神の座を探す君の名を、誰もが心に刻むまで
投下順で読む
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| GAME START | 浅月香介 | 048:ぶっちゃけありえない |
| GAME START | 宮子 | 048:ぶっちゃけありえない |
| GAME START | 柳生九兵衛 | 054:何にでも「お」をつけりゃ綺麗になると思ってんだろ?ナニはどうする、ナニは |