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白き鷹

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白き鷹 ◆UjRqenNurc



人間にとって、大空とは見上げるものでしかなかった時代。
その絶対的才能から、人々の手の届かない存在という畏怖を込め「白き鷹」と呼ばれた一人の英雄がいた。

今、まさにその異名通りグリフィスは空を翔る。
もはやそれは比喩ではない。
宝貝「風火輪」。
人による飛行を可能とする宝貝。
その新たな道具に、グリフィスは夢中になっていたのだ……


       ◇       ◇       ◇


地面と水平に飛ぶ軌道から、足の向きを変え上昇へと転じる。
円弧を描くような軌跡。
だが、その頂点に達しようかというその瞬間。
風火輪が突如、力を失いグリフィスの身体は引力に引き寄せられる。
迫る地面。
激突まであと、3、2、1……再点火!
再び揚力を得て、地面スレスレを飛行――浮上!
グリフィスは再び大空へと舞い上がる。

「ハハハハハ!」

あと一瞬で命を失うところだったと言うのにグリフィスの顔に恐怖の色はない。
むしろ休日の遊園地、ジェットコースターで遊ぶ子供のような満面の笑みだ。
そう、今の失速は風火輪の性能を試す為の意図的な機動。
この短時間の内に、グリフィスはこの宝貝を使いこなしつつあった。

力を抜き、滑空。
風に乗り、旋回。
刀を抜き、燕の如く翻りながら斬撃。
好奇心の赴くまま、空中での動き方を試してみる。
まるで遊ぶ子供のような風情であったが、グリフィスの専心は手に入れたこの道具を
如何に効率的に運用するかということにある。

とはいえ、ニヤケ笑いは止まらない。
これをつけてガッツに会ったなら、奴は一体どんな顔をするだろう。
驚くだろうか。うらやましがるだろうか。それとも奴にもこんなおかしな物が支給されているのだろうか。
決めた、再会シーンは空からだ。

心に決めるとグリフィスは南へと向かう。
とりあえず確認しておかなければならぬ事を、確かめる為に。


       ◇       ◇       ◇


地図の南端。
島と外界とを分つ大海原。
水面は静かに光をはね返し、その深さをうかがい知る事は出来ない。
その上空にグリフィスは佇む。
目の前の物を検分するために。

それは乳白色の壁。
遠目にはどこまでも続く海原に見えたが、近くで見てみると逆に壁の向こうの様子がよく見えない。
またしてもグリフィスの知識にはない未知のものだった。

刀の柄で叩いてみる。

パィン!

乾いた音を立てて弾き返される。
さほど強く叩いたわけでもないのに、その反発力は凄まじかった。
おそらく切っても無駄だろう。

自分たちを逃さぬために、島という舞台を用意したのだと思っていた。
だが、それではゾッドのような空を飛ぶ参加者や、こんな支給品が渡された説明が付かない。
不審に思い、調べに来た結果がこれ。
島は完全に「神の力」により封鎖されていたのだ。

そして、いったいどこから聞こえてくるというのだろうか。
こんな箱庭の世界の果てまでも聞こえてくるピアノのメロディー。
第一回の放送が始まる……


       ◇       ◇       ◇


「鷹の団から連れてこられたのは、オレとガッツだけだったか」

名簿にあった70名のなかでグリフィスの知る名はわずか2名。
ガッツ、そして不死のゾッド。
いや、「知っている」だけの名前ならばまだある。
先ほどまでの同行者ゆのの知り合いだ。
その内一人は死者として名が呼ばれている。
これを聞いた彼女が大人しく旅館で待っていてくれればいいのだが。


そして禁止エリアの情報。
今回禁止されたエリアはI-6、F-7、B-4。
この、目の前の壁の存在と合わせて考えるなら主催たちの考えは明らかだろう。
それは逃げ場を塞ぎ、参加者たちに背水の陣で戦わせる事だ。
自分もそんな状況に兵を追い込んだことがあるからよくわかる。
人間、逃げ場がないとなれば死に物狂いで戦うものなのだ。


だがこの禁止エリアを、ただ脅威とだけ捉えるのは戦の機微のわからん人間の考えと言えるだろう。
これはゾッドのような人外の存在に対する武器ともなるはずだ。
片腕を切り落とされようが、たやすく再生するあの不死のゾッドと言えども首輪が爆発すればただでは済むまい。

そうでなければ……このような戦いの大前提が成り立たないこととなる。

故に、先ほど為すすべもなかった人外の存在に対する策がここに成る。
それは禁止エリアへと誘い込む事。
そして、そのためのカード。
機動力という手札がこちらにはある。
だが、敵とてバカではない。
露骨に誘い込んでも禁止エリアに気付かれては策は成らない。
それを如何に相手に気付かせずに成し遂げるか、だが……
いくつもの策略を成り立たせてきたグリフィスにはその自信があった。

「しかし、念入りな事だな……」

人知を超えた神、もしくは悪魔……か。
どちらにせよこれほどの力を持つ存在ならば、こんな大掛かりな真似をせずとも参加者たちを逃さぬことなど
たやすいはずだ。
神とやらは、よほどオレたちの「殺し合い」をご所望と見える。
この分では、他にもいくつか悪辣な仕掛けがあってもおかしくない。
オレたち参加者がどう動こうが、所詮は神の書いた脚本通り。
神の掌の上で踊る道化に過ぎんと言う事か。。


面白い……

かつて、奴にだけ話した事がある。

この世には、人の定めた身分や階級とは関係なく世界を動かす鍵として生まれついた人間がいる。
それこそが宇宙の黄金律が定めた、真実の特権階級。
神の権力を持ち得た者だ。

もしオレがこんな戦いも乗り越えられず、ここで死ぬと言うのであれば、それはオレが選ばれし
人間ではなかったという事。
他の凡百の人間と同じように、運命に押し流されて生きるしかない人間だったということだ。
失った「夢」に焦がれ、「夢」を忘れて生きていくしかない敗残兵たち……
そんな存在と伍するようになるくらいならここで神に殺されるのも悪くはない。

グリフィスは、神のくれた試金石に感謝する。
「国取り」も秒読み段階に入った今、政治屋どもとの戦いに正直退屈を感じつつあったところだ。
ガッツも力を持て余していたに違いない。
なぁ、ガッツ。どうやらオレたちの戦いは、まだまだ続くらしい。

さて、これからの方針だが……
どうやらずいぶんと出遅れたようだ。
兵は拙速を尊ぶ。
考えすぎて動きを止めるより、まずは動くべきだった。
これだけの死者が出て、また名簿が公開された今となっては見知らぬ参加者たちを集め、指揮を取るのは難しいだろう。

ここはまず、ガッツとの合流を優先するか。
奴もまた、主催どもの喉笛を食い千切ろうと動いているに違いない。

グリフィスは足に装備した宝貝に力を注ぎ、再び空を駆る。

オレとお前の二人しかいなくとも、オレたちは鷹の団だ。
まだまだお前の力を貸してもらうぞ、ガッツ。
オレたちは生きてミッドランドに戻る。
皆で夢を掴むためにな。





【J-8北部/上空/1日目 朝】

【グリフィス@ベルセルク】
[状態]:健康
[装備]:居合番長の刀@金剛番長、風火輪@封神演義
[道具]:支給品一式
[思考] ガッツと合流
1:ガッツと合流
2:殺し合いに乗っていない者を見つけ、情報の交換、首輪を外す手段を見つける
3:役に立ちそうな他の参加者と繋ぎをつけておく。ゆのとの再合流は状況次第
4:未知の存在やテクノロジーに興味
5:ゾッドは何を考えている?
[備考]
※登場時期は8巻の旅立ちの日。
 ガッツが鷹の団離脱を宣言する直前です。
※ゆのと情報交換をしました。
 ゆのの仲間の情報やその世界の情報について一部把握しました。
※自分の世界とは異なる存在が実在すると認識しました。
※会場を囲む壁を認識しました。



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