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  • 真贋バトルロワイヤル
  • Reason for(中編)

真贋バトルロワイヤル

Reason for(中編)

最終更新:2025年02月18日 20:15

匿名ユーザー

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だれでも歓迎! 編集
◆


バトルロワイヤルと銘打った闘争の舞台にいるのは、ラウ・ル・クルーゼによって選出された参加者だけではない。
数多の世界の情報を元に再現し、各エリアに散らばるNPC。
武器やスキルの練習台、手っ取り早い使い捨ての兵隊、ドロップアイテム狙いの標的等々。
どう扱うかは各々自由だが、極一部の例外を除きNPCに共通しているものがあった。
参加者を見付ければ問答無用で襲い掛かる。
たとえそれが大きな戦いを終え、疲弊中の相手であってもだ。

「何かが来る」

短く告げ振り返ったチェイスに倣い、三人の少女も同じ方を見やる。
後味の悪い形だが龍騎との戦闘を終え、体力回復の為に屋内へ移動しようとした矢先に出鼻を挫かれた。
太陽が燦燦と照らす下には、木っ端微塵となった校門の残骸。
校内への無断侵入を防ぐ役目は全く期待出来ない、ただの破片と化した上を歩く複数の異形。
人に近い部位を残しつつも、人間からかけ離れた集団が姿を現す。

「女の子がいっぱい…」
「それに皆可愛いー」
「持って帰って、食べちゃおっか…」
「うん、そうしよう」

抑揚の無い声で言葉を交わすのは、少女らしき二体。
纏った黒のドレスが病的なまでの肌の白さを際立たせる。
輝く瞳はカラーコンタクトの力を借りない、生まれつきの真紅。
眠たげだが整った顔立ちも相俟って、異性ならず同性をも惹き付けるだろう魅力があった。
但し、下半身の異様さを除いてだ。

スカートから覗く足は計8本、人間よりも6本多い。
臀部があるべき場所には異様に肥大化した袋状の部位、虫の腹。
飾り物ではない、少女達の体の一部。
この存在、名をアラクネといい魔物の一種である。
元は魔女のお茶会のメンバー、リスティが作り上げた結界内の森に住んでいた。
基本的には人間に友好的なのだが、殺し合いではNPCのプログラムに従い参加者を襲うエネミーと化している。

「も、もしかして、またあの人が…?」

アラクネ達の会話や、自分達へ向ける粘着くような色欲濡れの瞳。
それらが嫌でも闇檻の魔女との戦いを千佳に思い出させる。
ノワルや彼女が従える天使達に嬲られたのは、9歳の幼子にとっては相当なトラウマ。
心は拒絶しても体は開花する刺激へ熱を帯び、愛撫や口付けの度に歓喜で色付く。
深く根を張り剥がれない記憶に、震え出すのも無理はない。

「……大丈夫、魔力の気配は全然感じないよ」

はるかもまた、アラクネ達の様子からノワルや天使達と近しいモノを感じた。
イドラ共々拘束され辱めを受けた際の、いっそ嫌悪を覚える程の快楽は忘れられない。
もしやこのタイミングでまた襲って来たのかと緊張が走るも、落ち着いて魔力を探れば杞憂と判明。
付近にノワルの強大な反応はゼロ、仮に近くにいるならあれ程の存在感を感知出来ないのは不自然だ。
恐らくアラクネはノワルと関係無く、偶々襲って来たNPCに過ぎない。
尤も、危険度が下がったからといって安心するには早い。
庇った千佳と背負った篝の存在が、疲れを押し退け意識を張り詰めさせる。

何せ敵はアラクネ二体だけではない。
彼女達の背後へゾロゾロと続く集団は、二足歩行なれどやはり人とは言い難い。
檻にも閉じた口にも見える頭部と、触手を垂らしたような外套。
胸元に金属製のプレートが貼り付けられたその者達を前に、正体を知るチェイスの瞳が鋭さを増す。

「死神部隊か」
「知り合い?それともおにいさんの友達?ならどっか行ってくれるように説得して欲しいなっ☆」
「同胞の粛清目的で改造を受けたロイミュードだ、NPCでなくても俺の話は通じん」
「ロリ…少女?まあ名前はともかく、やっぱりそうなるかぁ」

正義実現委員会のような治安維持組織とは違う、何とも血生臭い連中らしい。
NPCなのでそもそも会話が通じるとは思っておらず、ミカとしても冗談で問い掛けたようなものだが。
何にせよ、風都タワーから逃げて来た時と同じ。
こっちの事情を考慮せず、空気の読めない主催者達の玩具がいらぬちょっかいを掛けに来た。
何故鬱々としているタイミングばかりを狙うのか。
聞いた所でどうせ返答はない、ならさっさと壊してしまうに限る。
苛み続ける倦怠感と傷の痛みを無視して一歩前に出れば、待ったを掛ける声が一つ。

「相手は俺がする。代わりに果穂を頼む」

気を失った少女を背負い言うチェイスに、頬を膨らませ睨み上げ抗議。
鬱憤晴らしも籠めて殲滅してやろうと思ったのだが、叶わなくなった。
それを分かっているのかいないのか、表情筋をピクリとも動かさず続ける。

「今この中で適任なのは、人間と違って疲労を感じない俺だろう」
「私だってそこまでひ弱じゃないんだけどー?え?そんなに心配?あ!もしかして、私のファンになっちゃった!?」
「違う。果穂を連れ全員で奥へ行け」

おどけてみるも相手の反応は最初に会った時と変わらず、淡々としてつまらない。
ついでに言葉から察するに、人間ではないとのこと。
ギギストのように分かり易い怪物の外見では無いけど、さっき言ったロイミュードとやらこそ正体なのか。
詳しく聞ける状況では無く、何より次の言葉で黙らざるを得なくなった。

「痛むのは体だけではないと、そう言われた。痛みを少しでも癒す時間が必要なら、その間守るのは俺の役目だ」
「……」

開きかけた口は半ば程で止まり、言おうと思っていた内容は隙間から漏れ霧散。
何か言い返そうとしても、上手く纏まらず組み立てては崩れるの繰り返し。
知ったような口を聞かないでとかを、思わなかった訳ではない。
ただどう表せば良いのか。
真剣さの中に悲痛さと優しさを宿すキラとはまた別の、真っ直ぐ貫く弾丸のような瞳。
論すのともまた異なる、無意味に飾らず本心をストレートにぶつけられ目を逸らしたくなった。

「今ですーゴー」
「男はいらないから、ちゃっちゃと壊して…」

と、両者の話が纏まるのを待たずに場は動く。
アラクネに焚き付けられ、死神部隊が我先にと襲い掛かって来た。
元より参加者の状態を無視して攻撃を仕掛ける存在だ、空気を読みはしない。

「お前達には聞いていない」
「邪魔しないでくれるかな?」

片や温度を感じさせない声色で、片やうんざりし吐き捨て右手を跳ね上げる。
ブレイクガンナーとレーザーレイズライザー、それぞれの得物で薙ぎ払うように撃ち死神部隊を牽制。
怯んだNPC達を冷めた目で見ながら銃を仕舞う。
呆れを含んだ瞳に変化し、譲らぬ姿勢のチェイスへ向き合った。

「その果穂ちゃんだっけ。おにいさんがおんぶしたままの方が、絶対安心すると思うんだけどさぁ」

言いつつも受け取り、両手で抱き上げる。
チェイスの背を離れた時、一瞬顔が曇ったような気がした。
そら見た事かと思うも、当の本人はNPCを相手取るべくドライバーを取り出す。
ミカなら信頼し合う仲間も無事に運んでくれると、そのように考えてるのだろうか。

(まぁそうなるよね。私、なーんにも言ってないもん)

自分が殺し合いでの優勝を目指していると、知っているのは気絶中の篝のみ。
加えて様子から察するに、赤い仮面ライダーとの戦闘で情報交換どころでは無かっただろう。
ミカのスタンスを誰にも明かさず、重症を負い気を失った。
チェイスとの戦闘は「先生」に関する情報の食い違いが原因、浅倉相手に巻き添えを気にせず暴れたが犠牲者はゼロ。
明確にミカが殺し合いに乗ったと言える行動を起こしていない為、羂索達に抗う者と勘違いされても不思議はない。

(……今は殺す気もないから良いけど)

少なくともキラを止めるまでは、殺し合いに乗っていない者を手に掛けるつもりはない。
富良洲高校に集まった者は善人ばかり、事情を話せばキラの件で協力を得られる可能性は低くない。
自分に託された命を複雑そうに見下ろす。
果穂を避難させ、それからミカにも休めと伝えられた。
体は確かにヘトヘトだ、天ノ川学園高校での一戦に始まりロクに休めず戦い続き。
如何に並外れた戦闘能力を持つミカとて、無尽蔵の体力は持っていない。
気を失った篝をそこらに放置し戦闘の巻き添えを受けるのだって、望む所にはない。

それに、体以外も痛いのはその通りだ。
言われなくたって、自分のことなんだから分かる。
殺し合いの前からずっと血を流しており、休んだ程度で何か変わりはしない。
自分がやりたいのは痛みを消し去るんじゃない、痛みの原因となった女へ憎悪を叩き付けてやること。
あの女の安寧も仲間も居場所も、自分が失った全部を壊してやる
傷を塞げる段階は、とっくに過ぎたのだから。

ああ、けれど、助けられた事実までは無かったことに出来ない。
受けた恩を平然と仇で返せないから、優勝狙いの筈が思わぬ方へと転がり続けている。
羽をもがれた虫みたいに落ちる自分の手を、打算なく掴んだ男の仲間。
彼女の安全確保が借りを返すのに繋がるなら、

「じゃあ今から果穂ちゃんは私のお姫様だねっ☆薄情なおにいさんなんて知らないよーだ。ささっ、チビっ子ちゃんと全身ピンクちゃんも急いで行こう!」
「全身ピンク……え、あ、あたしのこと?」

天真爛漫に冗談めかして撤退を促す。
珍妙な呼び方をされたはるかは暫し困惑したものの、意を決して頷く。
迷う素振りを見せた千佳に「ごめんね」と断りを入れ、胴体に腕を回し担いだ。
片手ずつで篝と千佳を運べるのも、魔法少女に変身し身体強化の恩恵を受けたからこそ。

駆け出し破壊を免れた校舎へ入るのを見ずとも、気配が離れて行くのが分かれば問題無し。
敵は6体、偶然にも自分達と同じ数。
とはいえ如何に相手がNPCだとて、参加者側の消耗が激しければ殺される末路も有り得る。
ましてこちらは龍騎との戦闘直後で体力を多大に消費し、内二人は目覚めぬ状態。
故にロイミュードの体を持ち、幾らか余裕のある自分が片を付けるまで。

『SIGNAL BIKE!』

「変身」

『RIDER!CHASER!』

展開されたタイヤ状のエネルギーが、シルバーメタリックのスーツと装甲を纏わせる。
頭部を覆う左右非対称の仮面は、魔進チェイサーの面影を残しつつ新たな戦士のものへ。
追跡者の名を持つ仮面ライダーへと変身完了。

戦闘準備を終えれば敵も一斉に襲い掛かって来た。
同じ死神の名を与えられたロイミュード、なれど互いの在り方は相容れない。
もしNPCでなかったとしても、人間の守護者であることを選んだ男を死神達は許さないだろう。

先頭のロイミュードが両手の得物を振り被る。
禍々しい意匠の大鎌は一般的な農作業等で使われるのとは大違い。
失態を犯した同胞を、何より宿敵である仮面ライダー達を葬る為の装備。
部隊に付けられた名前の通り、命を刈り取る黄泉の遣いとなり死へ誘う。

「ハッ!」

纏わり付く終焉の気配を、短くも力強い声で掻き消す。
リーチは敵が圧倒的に勝る、しかしここは前進あるのみ。
刃が切り裂くよりも早く懐に潜り込み、拳を胴へ叩き込んだ。
強化グローブに蓄積した高圧縮のエネルギーを解放、打撃の威力を倍にし殴り飛ばす。

パワー面においては、シフトデッドヒートを使ったドライブやマッハを凌ぐのがチェイサーだ。
スマートな外見と裏腹の重い一撃に、堪らず背中から地面へダイブ。
反撃に遭った仲間へ視線をくれてやること無く、二体目と三体目が仕掛ける。
一方が大鎌を装備し、もう一方は鋭利なカギ爪を伸ばす。
リーチは短くとも切れ味は油断ならない、並の防御では障子紙同然の頼りなさだろう。

だが並以上の性能を発揮するのがチェイサー。
大鎌による薙ぎ払いを身を屈め躱し、体勢を戻すや即座に片腕で防御。
腕部に備わったアーマーはパワー強化機能のみならず、盾としても優秀な役割を果たす。
カギ爪を押し留めそれ以上動かしはさせない、反対の爪で裂かれる前に蹴りを放つ。
よろけた敵から視線を外し、もう一度大鎌による斬撃を試みたロイミュードをレンズが捉えた。

防御か、回避か、迎撃か。
三者一択に長々と時間を掛ける必要はない。
高機能の分析モジュールと、変身者自身の戦闘経験が最適解を弾き出す。

手刀がロイミュードの腕を走り、得物を握る力が弱まった。
チャンスを逃さず手首を蹴り上げると、衝撃とダメージに武器を手放す。
宙を舞う大鎌を敵の手に渡すつもりはない。
跳躍し奪取、真下の標的目掛け振り下ろせば火花がアスファルトへ散った。
無論一撃で終わりじゃあない、先の敵と同様の横薙ぎで追い打ちを掛ける。

チェイサーの好き勝手は許さぬとばかりに、後方からロイミュードが接近。
殴り飛ばした最初の個体だ、奪ったばかりのと同じ得物が首を刈らんと迫る。
死を跳ね除ける手段なら今手に入れた、こちらも大鎌を豪快に振るい回す。
金属の衝突音が幾度も響き、互いに刃の端を掠めさせもしない。
とはいえ無傷の応酬を長引かせるのは望む所に非ず、チェイサーが流れを変えに動く。

敵の攻撃を弾き、踏み込みの勢いを乗せた一撃を見舞う。
防御へ僅かに遅れが生じ、刃が胸部プレートを疾走。
ロイミュードの個体数を記す箇所からダメージが襲い、強制的に動きが止められた。
敵対者へ慈悲を見せる真似はしない、まして相手はNPCだ。
刃の睨む先を上方に変え斬り上げ、敵は宙を泳いだ後に地面へ激突。

三体のロイミュードの不甲斐なさを目の当たりにし、残る一体が思うものは何も無い。
怒りも嘲笑も、ただ参加者を襲えとだけプログラムされたが故に抱けない。
意思なき単なる機械として、対象への攻撃を実行。
カギ爪を打ち鳴らし跳躍、空中に黒い影が現れては消える。
これもまた死神部隊に与えられた、高速移動というシンプルながらも強力な固有能力だ。

仲間に倣ってか、復帰を果たした二体目と三体目も同じ手を取る。
人間の視界では捉えられない速度でチェイサーを取り囲み、自らの身を使った檻を形成。
下手に逃げようとすれば大鎌の餌食に遭い、かといって防ごうにもこの速さでは簡単じゃない。
タイプフォーミュラ、或いは最終形態のドライブならば対処は安易。
いない人間を頼ったとて何の意味も無いが。

余裕を持てない状況だとて、チェイサーに焦りは皆無。
人間らしい感情の全てを得ていない機械だから、という理由だけではない。
大鎌を構えそれ以上の動きを見せないチェイサーは、死神部隊からすれば単なる的。
勝利への喜びは抱かず、対象抹殺のプログラムに従うのみ。
三方向からの斬撃が襲い掛かる。

「フンッ!」

ほぼ同じタイミングでチェイサーも対処に出た。
豪快に振り回した大鎌がロイミュード三体の胴を走り、攻撃の到達を阻む。
火花が頭上から落ちる中、地面へ叩き付けられる音を三つ拾う。

死神部隊の高速移動は確かに厄介である。
しかし生前の戦いで幾度も死神部隊を相手取ったチェイサーにすれば、見慣れた戦法に過ぎない。
まして此度は自我が無く、インプットされた動きしか出来ないNPCのロイミュード。
どのタイミングで一斉攻撃を仕掛けるか、予測を立てるのは不可能に非ず。
一気に決着を付けるべく、大鎌を放り投げ別の武器へ手を伸ばす。

「みんな役に立たなさ過ぎー」
「しょうがない…手伝う…」

が、チェイサーの勝利をむざむざ認めない存在が他にもいた。
死神部隊だけでは無理と踏み、援護に動くは二体の魔物。
茫洋とした口調の中に容赦の無さを交え、アラクネ達が援護に出る。

「っ……」

警戒を払いつつ先手を打とうとし、四肢が極端に重くなったのを気付く。
見ればいつの間にやら、白い糸に絡み取られている。
アラクネが得意とする蜘蛛の糸を使った拘束だ。
死神部隊へチェイサーの意識が割かれた間に、戦場へ蜘蛛の巣の如く罠を張っておき功を為した。

振り解くべく力を籠めるも、糸が千切れる気配は見られない。
むしろ余計に拘束が強まった気さえする。
アラクネの放つ糸は粘着性が強く、藻掻けば藻掻いた分脱出は困難を極める。
体力に優れた魔法少女であっても、一度囚われれば後はされるがままを許すのみ。
これが校舎内へ逃げたはるか達であったら、毒の口付けで感度を上げられ玩具となっただろう。
生憎アラクネ達に男、それも人ですら無い機械を嬲る趣味は無かった。

「後はそっちでボコボコにしといてー」
「今の内に女の子を捕まえに行こう…」

雑な指示を出し校舎の方へと八本脚を伸ばす。
命令内容に逆らうつもりはないらしく、よろよろと立ち上がったロイミュード達が近付くのが見えた。
動きが封じられた所を袋叩きにし、完全に機能停止するまで刃は振り下ろされ続ける。

「この程度…!」

但し対抗策が一つも無ければの話。
背部コネクターの回転数を速めエネルギーを周囲に拡散。
本来は展開中の武装に流す力を使い、張り巡らされた糸を全て焼き切る。
拘束を脱した瞬間に振り下ろされる刃、だがチェイサーには届かない。

支給品袋から飛び出したトレーラー砲を掴み、銃身を盾にする。
数あるシフトカーの中でも巨体に見合った高い耐久性を持つ、ドライブ専用装備の一つだ。
大鎌を防ぎ逆に押し返す、よろけたロイミュードを押し退け別の刃が来るも遅い。
至近距離でレーザーを発射、薙ぎ払うように撃ち四体全員大がきく怯みアラクネの前に転がった。

「あっヤバそう…」
「逃げろー」

能天気で危機感を感じさせない声だが、動きは迅速。
慌ててアラクネ達が逃げ、銃口が睨み付ける先には四体のロイミュード。
チェイサーバイラルコアとシフトデッドヒートを装填し、エネルギーを充填。
ロイミュード達を葬り嘗ては魔進チェイサーにも勝利を収めた銃が、必殺の光弾を解き放つ。

『FULL THROTTLE!』

『フルフルデッドヒートビッグ大砲!』

クリム・スタインベルトの聞き慣れた声に従い、トリガーを引く。
鮮烈な真紅の輝きが発射され、死神部隊を纏めて焼き払う。
攻撃性能を高めるシフトデッドヒートを使った為、威力も範囲も大幅に強化済みだ。
爆発が治まった時、破片の一つも残ってはいなかった。

これが元の世界での戦いなら、ロイミュードのコアも砕け散り消滅。
だが敵はあくまで主催者に再現されたNPC。
コアは出現せず、意思を持たない人形のまま消え去って行く。

(やはり俺を復活させた技術とは違うか)

コアが消滅した自分の復活と、NPCの再現は別物。
分かっていたことだ、驚きは無く意識もすぐに切り替わる。
敵は残り二体、直撃はしなかったが爆風で吹き飛ばされた魔物達。
八本脚を器用に動かし、起き上がろうとする彼女達へ銃口を向けた。

「ごがあああああああああああああああっ!!!」
「なっ……」

唐突に聴覚機能へと届いた奇声が、早急に片付く筈の展開へ否を唱える。
背後からの気配が急速に近付き、比例して声の大きさも増す。
振り返り咄嗟にトレーラー砲を翳し、直後銃身へ衝撃が走った。
叩き付けられたのは重厚な回転式機関砲、ガトリングガンとも呼ばれる重火器。
襲撃者は何と武器を手に持つのではなく、銃と腕が一体化していた。

「お前は…」

奇怪なのは腕だけではない。
グレーのボディに蝙蝠を思わせる頭部の姿を、チェイサーが知らない訳がない。
何より目を引いたのは、胸部に貼り付けられた金属プレート。
そこに刻まれた個体ナンバーには見覚えがある。

「051…!?」
「チェイスウウウウウウウウウウッ!!」

こちらの声が聞こえていないかのように名前を叫び返される。
籠められたのは疑いようのない怨嗟。
ロイミュード051、嘗て人間の金に執着を持ち強盗事件を繰り返した個体。
プロトドライブと魔進チェイサー時代にそれぞれ一度ずつ体を破壊されており、チェイスとは浅からぬ因縁を持つ。
099のロイミュードによる事件の際コアを砕き、完全消滅となったのが少し前。
とはいえ訳あってチェイスは事件の記憶の大半を失った為、思い出すのは不可能だが。

「お前も、羂索達の道具にされていたのか…!」
「ガアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!」

名簿に名前は載っておらず、NPCの一体だとは分かる。
様子を見るに自我の無かった死神部隊と違い、自分への恨みだけを残されたと言うべきか。
悪趣味だとは思うも同情はしない。
仮に連れて来られたのが本物の051だったとしても、考えは変わらなかったろう。
この地で出会った仲間や、善良な参加者へ危害を及ぼすのは認めない。

銃身をまるで剣のように叩きつけ合い、先に一撃貰ったのは051の方。
たたらを踏んだ所へ照準を合わせ、近距離でビームを放つ。
機械の体を焼く光は051が地面を転がり避け、背後にあった瓦礫の山を焦がすに終わった。
武器を持つのはチェイサーだけではない。
起き上がり様にガトリングは火を吹き、轟音と共に光弾が雨霰と発射。

両腕・両肩の強化アーマーを盾にし防御。
距離を取りながら反撃の隙を窺えば、チャンスとばかりに校舎への侵入を目論む魔物が視界に映る。
させじとトリガーに指を掛けるも、狂ったような絶叫で051が殴り掛かった。
ガトリングはその巨大さ故、直接叩き付ける鈍器にもなる。
身を捩って躱すが敵の勢いはまるで衰えない、滅茶苦茶に振り回しながら光弾を乱射し始めた。

「今度こそレッツゴー」

チェイサーが051の妨害を受け、アラクネ達には運が回って来た。
ガトリングに肘を打ち込み狙いを逸らし、蹴りを放って距離を離す。
作った機会を活かしアラクネを撃とうとするも、気配の接近を再び感知。
横に跳び躱すと、遅れて地面を棍棒が叩く。
051ではない、そもそもロイミュードとは別の異形がそこにいた。

頭部に巨大な笠を被り、両肩から生やすのは複数のキノコ。
グレー一色の全身は中世の騎士の鎧にも見えるが、れっきとした肉体。
名をトードスツールオルフェノク。
仮面ライダーファイズに撃破された個体も他のNPC同様、殺し合いを動かす小さな歯車。

「次から次へと……!」

龍騎との戦闘を終えたタイミングで続々とNPCが現れ、狙っているのかと毒づく。
今度こそ邪魔が入らないと分かり、アラクネ達は悠々と自身の獲物を追い掛けた。
頭の中では捕えて好き放題に「食べる」ことで満たされ、



「そうはさせないよ!」



桃色の光が欲に塗れた進行を阻んだ。


◆◆◆


「チェイスくんの所に行くんだよね?」

奥へ奥へと進み運良く無事だった保健室に到着し、果穂と篝を寝かせた直後。
確信を持ったように問われ、はるかは驚き視線を下げた。
見上げる彼女と目を合わせていると、下手な誤魔化しや曖昧な嘘は口に出せない。
信頼を寄せ合う千佳にそういったものを言う気は、最初から無いのだが。
ただ行動を起こす前に考えを言い当てられ、驚いたのは本当。
浮かび上がった疑問を察したのか、得意気に笑い告げる。

「魔女っ娘ラブリーチカにはなーんでもお見通しだよっ!マジアマゼンタの顔を見たら、すぐにピンと来ちゃった!」
「そんなに分かり易かったかな…?」

そこまで顔に出ていたかと思わず頬を擦るのが、何だか面白くて小さく声が漏れる。
実際、言っていることは正解だ。
気を失った果穂と篝を避難させ、消耗の大きい千佳とミカに代わりチェイスの援護に向かう。
ミカに撤退を促された時から、そうしようと決めていた。
優先すべきは負傷の大きい者を少しでも危険から遠ざけること。
だから自分も残ると言い出し口論で時間を潰すのは避け、迅速な動きに出た。
以前、薫子がトレスマジアを裏切った振りをしてマジアベーゼに一人で挑んだ時のような、手を出すべきじゃないというのならともかく。
助けが必要、共に戦った方が良いと少しでも思えるのなら、迷うことなくその選択を取る。

「それに、マジアマゼンタならそうするだろうなって分かってたから…」

ノワルとの戦いに始まり、はるかが千佳を傍で見続けたように。
千佳もまた、マジアマゼンタという魔法少女をずっと見続けて来た。
仲間をたった一人で戦わせはしない、友達に危機が迫っていれば自分の負傷も二の次で駆け出す。
飾らないどこまでも真っ直ぐな、千佳があこがれ、マジアベーゼが何よりも尊いと思える魔法少女。
それこそが花菱はるか…マジアマゼンタなのだから。

「……うん。やっぱりじっと待ってるのは出来ないから…行って来る。それで…」
「任せておいて!果穂ちゃん達はちゃーんと見ててあげる!」

皆まで言うなとばかりに応えれば、一瞬驚きの表情を作るもすぐに力強く頷く。
なるべく早くチェイスと共に戻ると伝え、頭を撫で立ち上がる。
もう一人、自分達のやり取りに口を挟まず見ていた少女は肩を竦め口を開いた。

「ここで嫌って言ったら流石に空気読めて無さ過ぎだからねー。うんうん、おにいさんがカッコ付けておいてボコボコにされてたら可哀想だし、行ってあげた方が良いじゃんね☆」
「さ、流石にそうはなってないと思うけどなぁ」

どこまで本気かわからない内容につい苦笑い。
小夜や薫子とも、この地で会った仲間とも違うタイプの少女だ。

「…良いの?私ってさ、さっき巻き添えとか全然考えないで暴れ回った奴だよ?それにどうせおにいさんからも聞いてるんでしょ、……先生のこと、とか」

能天気を絵に描いた態度を不意に引っ込め、どこか自嘲するような顔を作る。
篝を回復中で身動きが取れない彼女達を、怒りに身を任せ危険に追いやった。
全員無事だからといって、チャラになるとは思えない。
何よりも、チェイス経由で先生に関する情報を得ているだろう。
殺し合いに乗っており、生徒達も同じだと言い放った。
ミカとしてはふざけているのかと憤りを覚えるデタラメでも、知らない者は真に受けてもおかしくない。
そんな奴に仲間を任せても平気なのかと疑問をぶつける。

「篝ちゃんを傷付けられて怒ったから、でしょ?」
「……っ」
「だったらあたしは、ミカちゃんのことも信じられるよ!チェイスさんだってミカちゃんが悪い子じゃないって分かったから、助けんだと思う!」

屈託の無い笑みに息を呑み、返すべき言葉が出て来ない。
戦場へと戻る背はあっという間に見えなくなり、残ったのは四人。
暫しの間、室内は静寂に支配される。
数秒か数分か、時間の流れに意識を割けずぼうっと立ち尽くす。
どれくらい経った頃かややあって乾いた唇が動く。

「あなたは、行かせて良かったのかな?本当はピンクちゃんが傍にいた方が、安心できたんじゃない?」

突然の質問へ咄嗟の答えは返せない。
困惑した様子を見せながらも、自分の中で言いたいことを一つずつ組み立てる。
一時的にでもはるかと離れ、不安が全くないと言うなら否だ。
自分もチェイスの所へ戻って、魔法で一緒に戦う選択肢が無かった訳ではない。
消耗の激しい自分に気を遣ってくれたのは分かるけど、それを言うならはるかだって疲弊している。
心身的に万全とは程遠いミカよりはまだ戦えるからと言って、本当なら体力回復に努めるべきだ。
だからチェイスも有無を言わせず自分達を退避させたのだろう。

「…前にね、あたしが困ってる時に言ってくれたことがあるの」

そっと自分の胸に手を当て思い出す。
テレビ番組に出る魔女っ娘の真似じゃない、自分自身にとっての魔女っ娘はどういうものなのか。
答えを出せずに焦りが募り、プロデューサーとも喧嘩してしまった。
けれど仲直り出来ないままで迎えた、遊園地でのショーの本番当日。
泣いていた女の子の笑顔を取り戻したかった時、全力でサポートしてくれたのは他でもないプロデューサーだった。

「この気持ちが真ん中に必要になるなら、諦めさせたくないって」

ファンの人達だけじゃない、困っている人達を助けて笑顔にしたい。
千佳にとってこうありたいと胸の真ん中に置いた、曲げられない魔女っ娘(アイドル)の在り方。
闇檻の魔女に嬲られ、宇蟲王に剣を突き付けられ、狂える赤龍の暴虐に襲われても。
決して砕けず横山千佳と共にあった、彼女を支える柱。
そんな気持ちを持っているのは、自分一人だけじゃない。
はるか、イドラ、レッド、果穂、チェイス。
仲間達を形作り突き動かすソレを、曲げて欲しくはないし否定したくもない。

「マジアマゼンタにとって譲れない、胸の真ん中にある魔法少女としてこうありたいって気持ちだったら、それは大切にしなきゃダメだって思ったから…かな」

プロデューサーみたいにもっと自信満々に言えれば良かったろうけれど、少しだけ言葉尻が下がってしまった。
だけど紛れもない、偽らない本心だ。

「……そっか。うん、そっかそっか。あー…なんか私だけ物凄い子供っぽくてへこみそう……」
「そ、そんなことないと思うよ!あ!じゃあラブリーチカが元気になれる魔法を…」
「あー待って待って!私今服こんなだし、そういうのはもっと千佳ちゃんの為に頑張った娘にやってあげないと」
「きゃっ!?」

ハグして元気を注入する魔法はキャンセルされ、ひょいと両手で持ち上げられる。
眠り続ける果穂の傍にそっと降ろし、ミカ自身は篝の顔を覗き込んだ。

「果穂ちゃん……」

自分を守る為に何度も傷付き、痛いのを堪え立ち上がろうとした少女。
思わず手を握れば温もりを感じ、ちゃんと目の前にいると伝えて来る。

(重いなぁ……)

千佳の様子を尻目に、ミカは小さくため息を零す。
胸の真ん中にある譲れない気持ちに、覚えが無い訳ではない。
アリウスよりも補習授業部を選んだアズサであったり、トリニティ生徒による暴行を止めようとしたコハルであったり、我が身を犠牲にミカを助けたキラであったりと。
絶対に曲げたくない想いに突き動かされた者達。
かくいう自分にも、ある。
これだけは何があっても諦められないモノが。
はるか達のようなキラキラしたのとは正反対、自分も大勢を傷付けた癖に被害者振るなと言われれば否定できない。
だとしてもやり遂げねばならない復讐を、今更捨てる気はない。

ただトリニティで檻を壊した時に比べ、今は胸の中がやけに重い。
引き返せない、引き返す道を選べない、そうして進んで行けば行く程に自分自身を一番追い詰める。
心に絡み付く重しの外し方を知らないまま、冷え切った手で篝の頬を撫でた。


◆◆◆


「うぼあー」
「あっあっあっ…」

桃色に輝く槍が突き刺さり、煙のように魔物は消えた。
辛うじて避けたもう一体のアラクネは、危機感を感じているのか分かりにくい表情で距離を取る。
ハート型の可愛らしさに反し、一撃で同胞を屠った得物を引き抜くのは逃げた筈の一人。
向こうからノコノコ餌がやって来た、そう嘲るのが憚れる程に堂々とした佇まい。

「お待たせチェイスさん!あたしも今から手伝うよ!」

一人で持ち堪えた仲間へ掛ける声色は、先の戦闘の疲れを微塵も感じさせない頼もしさがあった。
死神部隊は見当たらず、全滅したと察しが付く。
単独で撃破へ追い込んだが新手のNPCが現れたといった所か。
ならここからは自分も加わり、手早く倒せば良いだけ。
仲間や殺し合いに乗っていない参加者へ手を出される前に、自分達で片を付ける。

「…助かった。奴の糸には用心しろ、抜け出すのには梃子摺る」
「うん!チェイスさんも気を付けて!」

戻って来たマジアマゼンタに驚きつつも、戻れと共闘を拒みはしない。
果穂のように強い人間の仲間がいる事実を噛み締め、敵の能力へ警戒を促す。
会話を遮り叩き付けられた棍棒を回避、顔面狙いで拳を叩き込んだ。

殴り飛ばされたトードスツールオルフェノクの背後へ急ぎ回り、アラクネはマジアマゼンタを迎え撃つ。
参加者を襲う一択のみの思考が、より近い方を標的に選ぶ。
チェイサーからマジアマゼンタへと狙いを変え、灰色の怪人が得物を振り被った。

槍と棍棒、手にする武器はどちらも長得物。
迂闊に踏み込めば自ら猛獣の口へ入り込むのと同じ。
保つべき距離を今更分からないマジアマゼンタではなく、しかし同じ場所で槍を振るうだけでは倒せない。
ましてNPC相手とはいえ、体力的な余裕も考えれば無駄に長引かせる必要も無し。
穂先で突く速度を初手から引き上げ、敵に反撃の隙を与えず撃破へ持ち込まんとする。
目論見は成功、棍棒が大きく弾かれ生まれた隙へ接近を試みた。

「っ!」

が、肌を撫でる不快な予感に急遽攻撃を中断。
目だけを動かせばいつの間にやら位置を変えたアラクネ。
このまま追撃に動けば敵の思惑に嵌ると勘が告げ、一旦距離を取る。
自分の判断が間違いでは無いと、視界が捕えた蜘蛛の糸でハッキリ分かった。
トードスツールオルフェノクを相手取る間に罠を張り、勝ちを確信したタイミングで絡め取る気だったのだろう。
事前に警戒を促されていた為、気を尖らせておいて正解だ。
失敗を悟ったアラクネは直接糸を発射、横に跳んで躱せばすかさず棍棒が迫る。

「当たらないよ!」

身を低くすると頭上で風を切る音が聞こえた。
余計な情報へ意識は割かず、敵の対処へ集中。
横薙ぎの槍が灰色の腹部を切り裂き、火花を散らしトードスツールオルフェノクは後退。
数時間前に戦ったスカラベオルフェノクよりも、幾分か耐久力は下。
連撃を繰り出せば倒すのも不可能じゃない。

「よっと…!」

一方でアラクネの糸への警戒も忘れない。
トードスツールオルフェノクへ掛かり切りなのを狙うのには注意がいるが、これくらいなら対処可能。
マジアベーゼやノワルの脅威を嫌と言う程味わって来ただけに、彼女達程の厄介ではないと見る。
捕まってしまったらマズい、であるなら捕まらないようにするだけ。
油断はせず、かといって尻込みせずに果敢と立ち向かう。

しかし敵も同じ戦法ばかりには頼らない。
トードスツールオルフェノクが頭部を激しく揺らし始めた。
追い詰められたことへ苛立ちを抱いた、のではなく毒の胞子を撒き散らす攻撃。
スマートブレイン製のベルトで変身した者ならともかく、生身のマジアマゼンタには危険だ。

「それなら…!」

だが敵からされるがままを許しあえなく食われる、哀れな子羊に非ず。
エノルミータとの戦いに加え、殺し合いでの経験がマジアマゼンタの助けとなる。
圧倒的な力を我が物にする強敵、自分や仲間の命が本当に奪われるだろう死闘。
元の世界では無かった戦闘が、咄嗟の判断力や動作一つ一つの速さのキレを増す。
リュックサックから黒槍…ウォーパイクを取り出し装備。

黒槍を握った瞬間に頭の中へ流れ込む、少なくない術技の数々。
立ち眩みを覚え掛けるも歯を食い縛り、そんな余裕は無いと技を選択。
実際に放てる力が今のマジアマゼンタにはある。

「円月・鳶!」

魔法少女の衣装がパージし、より露出の多い服に変わるも羞恥は捨て置く。
全身の回転と共に黒槍で切り裂き、斬撃と突風を巻き起こす。
威力と範囲の両方に優れた技で、胞子を纏めて吹き飛ばす。
刃はトードスツールオルフェノクをも容赦なく斬り、アラクネを巻き込んで地面を転がった。

降参を要求しても呑む相手では無く、NPCにそれをやっても無意味だとはマジアマゼンタとて分からない筈もない。
黒槍を構え直し決着を付ける技を選び、



「あぎゃんっ!?」



突っ込んで来たナニカがアラクネ達にぶつかり、素っ頓狂な悲鳴を上げた。


○


撒いただろう頃合いを見て地上へ降り立ち、後は適当な場所でまふゆを悲しませ殺す。
そのつもりでデーボ・キャワイーンはエリア内を駆けていた。
腕の中でまふゆがジタバタと藻掻くも、無駄な抵抗に過ぎない。
如何に可愛らしい外見だとてデーボモンスター、幼子一人を押さえ付けるのは実に簡単だ。

と、そこまでは順調だったかもしれないが偶然富良洲高校前を通ったのが運の尽き。
吹き飛び地面へ倒れた他のNPCに躓き転倒、ドラム缶のように転がる羽目となった。

「きゃっ…」

衝撃で手放されたまふゆもアスファルトの上に倒れる。
幸いと言って良いのか不明だが、アラクネがマット代わりになり怪我はせずに済んだ。
どこか棒読みで「うぎゃっ」と声を出し、彼女なりに痛みを訴える。

「え!?女の子と…なに?」

またもや乱入者が現れマジアマゼンタは困惑。
051の顔面へ打撃を叩き込み、大きく怯ませたチェイサーも同様の反応を見せる。
だが立ち尽くすのは僅かな間に留め、まずは少女の救出を優先すべきと切り替えた。
外見は元より、手首のレジスターから参加者なのは間違いない。

「待ってくだちゃい!こんないたいけな赤ん坊に、酷いことしないでちゅよね?」
「っ!?」

黒槍片手に勇ましく飛び出したものの、デーボ・キャワイーンが立ち塞がる。
そのまま切り裂き少女を助ける、正しい選択肢はそれしかない。
なのに得物を振るう動きが止まり、目の前のNPCから目が離せなくなった。

「うっ…ど、どうしよう…可愛い……!」

無垢な赤ん坊を思わせる、キラキラ輝く瞳にたちまち戦意が薄れる。
三つ子の妹達や公園で遊ぶ子供達とも仲が良く、ネロアリスが遊び(赤ちゃんプレイ)を望んでいると察したら敵であっても無下には出来ない。
デーボ・キャワイーンの魅了能力はこの上なく効果を発揮した。

「……」

『GUN』

といったマジアマゼンタとは反対に、無言でブレイクガンナーを取り出すチェイサー。
流れる動作で遠距離形態に変え引き金を引く。
銃口が睨む先には勿論デーボ・キャワイーン、エネルギー弾が頭部へ命中し火花が顔面を覆い隠す。

「うぎゃあああっ!?」
「えぇっ!?チェイスさん!?」
「落ち着け、いたいけな赤ん坊なら人間の子どもを攫いはしない」
「そ、そうだよね!しっかりしなきゃ!」

人間ほど感情に振り回されずドライな面もある故か、チェイサーには効き目が悪かった。
極めて冷静に返され、しっかりせねばと自身の頬を叩く。
喝を入れ直し今度こそ駆け寄ろうとするが、デーボ・キャワイーンが許さない。
ドゴルドすらも怒りを引っ込める愛らしさだけが全てに非ず。
逆立ちすると重力に従い幼児服が捲れる。
人間ならば下着が丸見えだろうがデーボ・キャワイーンは違う、もう一つの顔を露わにする時だ。

「舐めてんじゃねえぞ銀ピカ野郎!」

愛らしい容姿からは想像も付かない罵りを吐き捨てる。
尤も、今の姿を見れば誰もが見た目に違わぬ言葉遣いと納得を抱くだろう。
ピンクの幼児服から一変、黒のドレスを纏い鞭を装備。
ギラ付く赤い瞳に蝙蝠状の頭部は、童話に登場する魔女を想起させる恐ろしさ。

バッド・キャワイーンとも呼ばれるこの姿こそ、デーボ・キャワイーンの正体。
凶暴性を全面に押し出し、オリジナルは苛烈な鞭捌きでキョウリュウゴールドを痛め付けた程。
立場的には上司であるラッキューロにすら牙を剥く、危険な本性だ。

「その緩いピンク頭みてぇに引っ掛かっれば良いものを!能天気じゃねえ奴はこれだから困るぜ!」
「酷い!?」

まさかNPCにそこまで罵られるとは思わず、素でショックを受ける。
傷付いたマジアマゼンタを無視し振るわれた鞭が、空気を切り裂き襲来。
獣電戦隊の特殊スーツ越しにもダメージを与える威力だ、当然直撃は避けるべき。
それぞれ躱すと狙いすましたようなタイミングで、残るNPCが襲い掛かった。

「くっ…!」
「またなの…!」

奇声を上げる051と、言葉無く棍棒を振るうトードスツールオルフェノク。
執拗な二体が邪魔をする間、ここぞとばかりにアラクネが目当ての餌を確保。
粘着く糸でまふゆの四肢を拘束、年相応の力しか持たない少女が抜け出すのは不可能。
魔力はないがそれでも少女、インプットされた行動に従い顔を近付ける。

「ひっ!?」
「小っちゃいおへそ…」

スカートを捲り腹部にキスを落とす。
シミ一つないスベスベとした肌触りと、子供特有の体温の高さ。
両方を唇で味わい、すぐにまふゆへ異変が起きた。

「あっ、やっ、なにこれぇ……」

体中が異様な熱を帯び、下腹部が疼き出す。
尿意とはまた違った未知の感覚へ、両手で股を押さえたくとも拘束中な為叶わない。
毒を受け発情し始めたまふゆを容赦なく嬲る。

「お子様パンツだ…」
「やぁっ…やだ、やだぁ…!」

スカートの中に顔を突っ込み、べっとりと脚へ舌を這わす。
まるでナメクジが引っ付いているような気持ち悪さも、快楽へと変換。
直接触れられていないにも関わらず、下着で隠れた箇所が熱い。
察したのか脚を舐めるのはストップ、代わりに今度は最も敏感な箇所へ狙いを変更。
薄い布越しに舌先が秘部を突き、まふゆの全身が大きく跳ねた。
自慰行為など到底理解していない幼女の体には、余りにも刺激が大きい。

「お尻も小っちゃくて可愛い…」
「あっ、はぅ…や……」

両手が下着の上から小振りな尻を揉みしだく。
肉付きは薄いが柔らかく、体温も相俟って人工物では到底味わえない感触。
スンスンと鼻を鳴らし匂いを嗅ぎ取る。
ミルクのような香りと、性的興奮による汗のにおい。
元の生活を送っていれば10にも満たない少女から発せられることのなかった、甘ったるい雌の体臭。

「美味し…」
「はぁぁぁ……」

腿を滴る汗を舌が掬い取り、ややあって顔を離す。
これで終わりにしてやる為、ではない。
両手が動かせないのを良い事に上着を更に捲り、腋へと顔を埋める。
汗を掻き易い箇所だからか、アラクネの鼻孔を突く甘さが濃さを増す。
樹液を味わう虫のようにたっぷりと舌で堪能。
チラリと見上げれば目尻に涙を浮かべ、頬を上気させたまふゆと目が合う。
体中を駆け巡る快楽もまふゆには理解の及ばない、恐怖の対象以外の何でもない。

「唇もーらい…♪」
「ひっ……」

頬に手を添え唇に狙いを定めた。
口内を蹂躙し、唾液と共に毒を流し込めば馬鹿になって気持ちよさ以外考えられなくなる。

「いい加減に…!」
「そこを退け…!」

幼い少女が嬲られる光景をいつまでも許すつもりはない。
執拗に邪魔をするNPCと、不甲斐ない己への怒りを燃料に変える。
棍棒を弾き跳躍、トードスツールオルフェノクを見下ろしながら回転。

「月破紫電脚!」

脚部に電撃を纏わせた蹴りが灰色の怪人を貫くもまだ終わりじゃない。
胴を踏み付け再度跳び上がり、黒槍を渾身の力で投擲。
魔物達を屠った得物に魔法少女の腕力が加わり、笠諸共頭部を貫通してみせた。

「お前のせいで俺はああああああああアアアアアアアアッ!!」
「知ったことか!」

中途半端に再現された憎悪を切って捨て、ブレイクガンナーを撃つ。
狙った先には重火器の銃口。
発射寸前のタイミングに合わせエネルギー弾が命中し、暴発を起こす。
ガトリングのみならず二の腕まで吹き飛び、皮肉にもオリジナルが右腕を斬られた時より被害は大きい。
尤もその時の記憶データがチェイサーにあるかは怪しく、覚えていたとしても感じ入るものは皆無。
片腕を失い悶え苦しむ嘗ての同胞を今度こそ終わらせる。

『ヒッサツ!』

『FULL THROTTLE!CHASER!』

シグナルチェイサーの特殊エネルギーを最大まで増幅。
炎を吹くメーターが技の発動準備完了を知らせ、051へ跳び蹴りを叩き込む。
強化ブーツがマシンボディを叩き、悲鳴を上げ今度こそ爆散。

「チィッ!役に立たねえポンコツどもが!」

灰と鉄屑の山をなじり、デーボ・キャワイーンが口から光弾を放つ。
自分の獲物だったまふゆをアラクネに取られた苛立ちもあるが、やはりNPCだけあってか参加者への攻撃を優先するらしい。
黒槍を回収する手間すら惜しいと、マジアマゼンタは魔力で生成した己の得物を翳し防御。
チェイサーもまたブレイクガンナーで光弾を叩き落とす。

すぐ傍の喧騒には見向きもせず、アラクネはまふゆの唇と自身のを重ね――

「あだっ…!?」

頭部に衝撃が襲い、もんどり打って倒れる。
痛む頭を押さえながら視線をやれば、少女を守るようにして小さな獣が咆えていた。
まふゆの危機へ駆け付けたのは一匹だけではない、これ以上辱めるのは許さぬと真紅の閃光が奔る。

「――――」

命乞いや断末魔の叫びすら出せず、一刀両断の末路を辿った。
更には少女を捕えた糸を光が焼く。
拘束を解かれ支えを失ったまふゆが地面とキスする前に、サッと伸ばされた腕の中へ抱き止められた。
快楽の残滓で熱い吐息を吐きながら、自分を助けた者を見上げる。

「おねえちゃん…?」
「ええ!遅くなってごめんなさい…!」

最初に会った時から変わらぬユフィリアの美貌に、今は焦りと安堵が混ぜ合わさっている。
最悪の事態を防ぐ為に急いだが、追跡中は間に合わなかった場合の光景が嫌でもチラついた。
嫌な妄想を掻き消すように光属性の魔法を使用、身体強化し富良洲高校へ到着。
見付けたのは鎧らしき物を纏った参加者と槍使いの少女、そして初見の魔物に弄ばれるまふゆの姿。
完璧であれと教育を受けたが故の義憤だけではない、短い時間でも縁を結んだ者を傷付けられた怒りを宿し剣を振るった。

「追い付きやがったか!こうなりゃ…」

鞭をチェイサー目掛け放ち、片腕に巻き付ける。
動きを封じるだけが目的ではない、奥の手である強制キャワイーンを使うつもりだ。
バッド・キャワイーン状態で口付けされれば、たとえ仮面越しであっても洗脳下に置かれる。
獣電戦隊との戦いでもキョウリュウブラックが洗脳され、味方へ容赦なく引き金を引いた。

『TUNE CHASER COBRA』

「んげぇっ!?」

かといってチェイサーがむざむざ洗脳を受け入れるかは別。
引き寄せられる前に素早く武装展開し、テイルウィッパーを装着。
鞭には鞭だ、鋼鉄の蛇が逆にデーボ・キャワイーンに絡み付く。

「は、離しやが――!?」

急接近する二つの刃が最後まで言わせない。
桃色の槍と鮮血色の剣、それぞれを操る少女達が示しわせたように斬撃を繰り出す。
互いに名乗ってはいないが、敵意を向けられていない事から一先ずNPCの撃破を優先。
魔法少女の得物が真一文字に切り裂き、ダメージの大きさに敵の手から鞭が落ちる。
デーボモンスターな為表情は変わらないまま苦悶の声を上げ、次の瞬間には絶叫へと変化。

マジアマゼンタが付けた傷の上をより深く抉り、致命傷を与えた。
終わりを齎した剣の銘はサタンサーベル、ゴルゴムの世紀王にのみ許された魔剣。
ブラックサンもシャドームーンも不在の地にて本領発揮は叶わない、だが此度の使い手は並の範疇に収まる凡人に非ず。
騎士団から手ほどきを受け学んだ基礎を修練にて伸ばし、齢15にして天才の領域へ君臨する少女。
魔法のみならず武芸もまた他者の追随を許さないユフィリアが振るったなら、デーボモンスターを下す必殺の刃と化す。

「ギャワイ~~~~~~~ン!!!」

可愛さの欠片もない声を最後に爆発。
復元水を掛けられ巨大化といった展開も、ラッキューロがおらずそもそもNPCなので起きない。
まふゆを連れ去り一悶着を起こした元凶は肉片一つ残らず消滅。
他のNPCも全滅しており、次にやるべきは王の合流を待ちながら名も知らぬ参加者達への対応。
と、その前に改めてまふゆの状態を確かめる。

外傷は見当たらないが額に汗が浮かび、息が上がっている。
アラクネが消滅しまふゆを蝕んだ毒も消えたが、強制的に発情させられたのだ。
体はまだ火照ったまま、やはり屋内で休ませるべき。
そう考えるユフィリアとは打って変わり、まふゆはグスグスとべそをかく。

「ごめんなさいおねえちゃん…わたしまた、心配ばっかりかけるわるい子になっちゃった……」

わるい子。
攫われる前にも口にした言葉へ、ユフィリアはどこか引っ掛かりを覚えた。
具体的にどこがどうおかしいとは言えない。
ただどうにも、この年頃の少女にしては悲しみ方に違和感が見え隠れする気がしてならない。
原因は分からずとも、黙ってまふゆを泣かせ続ける気は無し。
魔剣を鞘に納め手を伸ばし、壊れ物を扱うように頭へ手を置く。

「心配はしていました。でも悪いのはあなたを連れ去った魔物であって、まふゆではありません。…私の方こそごめんなさい。恐い思いをさせてしまいましたね……」

少しでも安心出来るようにと頭を撫でる。
眉尻を下げこつんと額を軽く当てれれば、瞳に互いの顔が映り込む。

「おねえちゃん、悲しそうな顔してる…わたしのせい?」
「まふゆが気に病むことは何もありません。でも、あたなが笑ってくれれば私も笑顔に戻れる、かもしれないですね」

表情を柔らかくして告げれば、つられてまふゆも徐々に笑みを取り戻す。
足元では二人の様子に安堵したのか、ミニティラが小さく咆えた。

口を挟まず様子を見守っていたチェイサー達も、この様子では殺し合いの乗った者でないと判断。
再会の邪魔に出るのは少々忍びないが、このままずっと見物に徹する訳にもいかない。
頃合いを見て口を開き、

「おーい二人とも!」

聞こえた声に身を強張らせた。

赤い王の鎧を纏った戦士、クワガタオージャーが駆け寄って来る。
ユフィリアとまふゆには信頼の置ける仲間の姿だ。
黒い将軍と独りで戦い、ここにやって来たなら勝利し退けたのか。
王の力を信じてはいるも心配はしており、こうして無事に合流出来て安堵の表情を作る。

「無事で良かった…まふゆも大丈夫?」
「うん!おねえちゃんとミニティラちゃんが助けてくれたから…」
「ギラ様もご無事で何よりです。あの殿方とは……」
「ごめん、彼には逃げられた。ところで、…そっちの二人は?」

視線を向けた先には桃色の衣装の少女と、銀色の戦士。
後者は自分の知るどの戦隊の者とも異なる姿。
もしかするとルルーシュの放送であった、仮面ライダーなる存在か。
こちらの様子を窺っており、警戒の色がハッキリ見える。
少なくともいきなり襲いはせず、ユフィリア達に攻撃を加えていなかった事からも対話は可能だ。
王鎧武装を解除し、生身のギラ・ハスティーへ戻った。

「――ッ!」
「あの人、は……」

現れた素顔に両者の反応は友好的とは程遠い。
息を呑み構えるチェイサーの隣で、マジアマゼンタは血の気の引いた顔になった。
忘れない、忘れる筈もない数時間前の死闘。
複数人掛かりでも歯が立たず、悪夢の如き力でエリア一つを壊滅へ追いやった真紅の王。
よく似ているどころの話じゃない、全く同じ顔の男が目の前にいる。

「え……?」

ただならぬ相手の様子に、ギラも流石に異変を感じる。
殺し合いという状況で初対面の参加者を警戒するのは当然だが、幾ら何でもおかしい。
初めて顔を合わせる者へ見せる反応ではない。
どちらかと言うと、明確な脅威と認識した上で見せる敵意ではないか。
理由が分からず困惑を抱くも、時間を掛けず答えに辿り着く。

(まさか……)

心当たりは一つしかない。
自分と同じ顔の男が、否、狂った歴史に君臨したもう一人の自分が島のどこかにいる。
宇蟲王となったギラに襲われ、どうにか逃げ延びたのか。
予想出来なかった内容ではないがしかし、既に宇蟲王の被害が出てしまったのか。

警戒と困惑が両者の間に漂い始め、どちらも次の動きへすぐに出れない。
誤解されているのをハッキリ理解しギラが一歩踏み出すも、けたたましい音に止めざるを得ない。
チェイサーバイラルコアが持ち主の警戒を感じ取ってか、エンジン音を響かせ近寄るなと威圧。
これに黙っていられないのは仲間へ攻撃的な態度を取られたミニティラだ。
咆哮を上げ怒りを叩き付けると、負けじとチェイサーバイラルコア達もクラクションで対抗。
ミニカーとミニ恐竜、傍目には男児の玩具が牽制し合う奇妙な光景が生まれるも緊張感は嘘じゃない。

「だ、だめ!」

重苦しさを増す空気を切り裂いたのは、幼い少女の声。
ユフィリアの腕を離れ、驚きと制止を求める声が掛かるも今だけは聞けない。
ギラの前へ庇うように飛び出したまふゆが、幼い瞳で精一杯に睨み付ける。

「おにいちゃんにいじわるしないで!おにいちゃんは、わ、わるい人じゃないよ…!」

彼らとギラの間で何が起きているかを正確に分かってはいない。
だけど自分を助けてくれた優しい王様が困っているなら、じっとしてなんかいられない。
恐怖を隠さないまま言い放つまふゆの隣へ、同じく王の仲間が並ぶ。

「お二人とギラ様の間に何が起きたかを存じてはおりません。ですが、悪意で剣を向け命を奪う御方で無い事は確かです。誤解があるようでしたら私が説明を請け負いましょう」

一歩も退かずに毅然とした態度で向き合う。
この数時間でギラが信頼を置ける者か否か、答えはとっくに出ている。
殺し合いに抗う者同士が余計ないざこざで内部崩壊を起こすのは、彼女とて望まないのだから。

「…二人ともありがとう。僕を警戒する理由には心当たりがあるし、それについてもちゃんと説明する。だからいきなり難しいのは当然だけど、今は僕の言葉を信じて欲しい」

仲間達からの信頼を噛み締めつつ、自身の言葉で敵意が無いとハッキリ伝える。
血を流す闘争ではなく、手を取り合うことを望む王へややあって機械の戦士が答えを返す。

「…すまない。誤解をお前に向けていた」
「あ、あたしもごめんなさい!落ち着いて考えれば、あの人とは違うって分かるのに……」

同じなのは顔だけで、纏う空気は全く異なる。
露骨なまでに他者を見下し殺意を振り撒く王と、目の前の青年はまるで違う。
何より信頼し合える仲間がいる時点で、記憶に焼き付く王でないのは明白だ。
強過ぎる警戒で不要な争いが起きたかもしれず、謝罪すれば向こうも雰囲気が幾分柔らかさを取り戻した。

とにかく、校舎前に集まった面々は殺し合いに否定的な参加者。
警戒を引っ込め安全と判断出来た以上、立ち話を続けるつもりもない。

「話は中に入ってからにしたいが、構わないか?」
「うん。それじゃあ――――!?」

行こうと言い掛け抜刀したギラへ、その場の誰も疑問に思わない。
誰もが武器を構え弾かれたように一点へ向き直る。
複数人の視線を集めても意に介さず、むしろ己が存在を見せ付けるかの堂々とした様。
新たな参加者が現れただけなら、こうも臨戦態勢を取ってなどいない。
隠すつもりの無い殺意と憤怒を垂れ流し、ソイツは一同を睨み付けた。

「ケッ、こんな所で群れてやがったか。もっと早くに出て来いってんだ!腹立たしいぜ!」

七支刀を肩に乗せ、八つ当たりを吐き捨てる。
天から降りた雷の化身や、厄災を祓う神の使いを思わせる外見だが本性は紛れもない悪。
暗黒種に生み出された、怒りを司る戦騎。

狂気の赤龍が死して尚も闘争の気配は残り続ける。
若き錬金術師達の学び舎は、今再び戦場と化す。

055:Reason for(前編) 投下順 055:Reason for(後編)
時系列順
柊篝
聖園ミカ
花菱はるか
横山千佳
小宮果穂
チェイス
ギラ・ハスティー
ユフィリア・マゼンタ
朝比奈まふゆ
枢木スザク
激怒戦騎のドゴルド
パラド
仮面ライダーゼイン

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