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  • 真贋バトルロワイヤル
  • Reason for(後編)

真贋バトルロワイヤル

Reason for(後編)

最終更新:2025年02月18日 20:52

匿名ユーザー

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だれでも歓迎! 編集
◆


全く持って腹立たしい限りであると、何度そう思ったかドゴルドには分からないし分かりたくもない。
未知の力を引き出し高揚感を得て、歯応えのあった人間共を葬る。
描いた光景は欠片も実現へ近付けず、4人全員を逃がすという何とも締まりのない結末。
消化不良な終わりへの怒りを抱えたまま、次なる獲物の捜索に出た。

森林エリアの探索に見切りをつけ、より参加者の集まりやすいだろう街へ向かったものの結果は成功と言い難い。
出会う奴は揃ってNPC、それもゾーリ魔のような数だけ多い低級ばかり。
苛立ち紛れに蹴散らしても気分は晴れず、むしろ歯応えの無さに余計ストレスが溜まった。
行き先とタイミングが会えば、宇蟲王やサイヤの血を引く戦士との遭遇が叶った筈。
或いは森林エリアでの捜索を粘った場合でも、東軍総大将や怪獣医(ドクター・モンスター)といった実力者を見付けられた可能性も低くはない。
現実にそうならなかった為、ただただ苛立ちだけが増していったのだが。
呪力による会心の一撃を加えてから4時間以上が経っており、あの全能感に似た感覚も徐々に薄れつつある。
折角引き出した力で暴れ回ろうにも、肝心の相手がいないなら無意味だろう。

溜まりに溜まったぶつけ所の無い怒りは、ようやっと獲物を発見し戦いの熱へ変わる。
獣電戦隊の二人はいないがこの際構わない。
マジアアズールや覇世川左虎のような強者かもしれないなら、喧嘩を売らぬ理由は無し。
溢れ出た戦意が雷へ変わり刀身を走った。

「お前は……」
「生憎こっちはお喋りしたくて来た訳じゃねぇ。体中が疼いてやがんだ、今すぐ戦え!!」

拒否を一切認めない怒声を浴びせ、愛刀片手に接近。
巨体からは予想も付かない速さで迫るドゴルドへ、みすみすやられる気はない。
いきなり現れ名乗りもせずに襲い掛かった、つまりは赤いライダー同様の危険な存在。
理解出来たなら自分達が何をやるべきかは決まったも同然。

『GUN』

得物を遠距離形態に変え、照準を合わせトリガーを引く一連の流れには無駄がない。
倒すと決めた以上は容赦も加減もチェイサーにはなかった。

「小賢しいんだよ豆鉄砲が!」

連続発射のエネルギー弾を、豪快に振り回した刃が掻き消す。
ピンポイントで急所を狙う正確性、対ライダー・ロイミュードを想定した威力と速度。
以上を兼ね備えた銃撃もドゴルドを倒すには至らない。
間合いへ到達し稲妻の如き喧嘩上刀の一閃が奔り、身を捩って直撃を躱す。
刀身から発せられる電撃の影響で、直接触れずともじわじわと体力を削られそうだ。

銃撃で倒せるとは最初から思っていない。
少しでも自分の方へ意識を惹き付ければ、各々が必要な動きに出れる。
刀を肘で打ち己から遠ざけ、次いで放たれた蹴りには同じ攻撃で対抗。
互いの脚を叩きつけ合い、脚部アーマーへ伝わる衝撃へチェイサーが一歩後退。
すかさずドゴルドが踏み込み腹部へ切っ先を突き出すも、視界の端から迫りくる真紅へ急遽狙いを変えざるを得ない。

(速い…!)

首目掛け振るったサタンサーベルは敵の刀に阻まれ、僅かな傷も与えられない。
反射速度へ息を呑むユフィリアだが、驚きは一瞬に留めねば今度は自分が首を斬られる。
押し返された衝撃に逆らわず後方へ跳べば、胸部スレスレをドゴルドの刀が通過。
僅かに遅れていたら、胸の膨らみごと削がれたのは想像に難くない。

「おねえちゃん!」
「こっちへ来てはいけません!」

不安気に叫ぶまふゆへ釘を刺し、ドゴルドから視線は外さない。
ドーパントの時と違い、まふゆを近くで庇ったまま戦える相手では無い。
チェイサーが稼いだ時間で可能な限り遠ざけ、ミニティラに守護を頼んだ。

「チッ!キョウリュウレッドの野郎、テメェの相棒をあっさり奪われてんじゃねえよ!腹立たしい!」

癪だが実力は認めている男のパートナーが、殺し合いに利用された。
しかもドラゴン娘(シェフィ)以上に見ていてイライラする、人間の小娘の手に渡る始末。
あんなガキにガブティラを渡すくらいなら、キョウリュウレッド本人を参加させれば良いだろうに。
クルーゼの選出はイマイチ理解出来ず、苛立ちが増す原因となる。

『Qua God!』

「王鎧武装!」

『You are the KING You are the You are the KING!』

『クワガタオージャー!』

主催者への不満を吐き捨てる間に、ギラの戦闘準備が完了。
発せられるドゴルドの気迫へ、生身で戦うのは不利と見て鎧を纏う。
クワガタオージャーに変身するや距離を詰め、オージャカリバーを振り被る。
そっちから近付くのならむしろ好都合、戦騎が愛刀で以て迎え撃つ。
刃同士の衝突音が打ち鳴らされ、得物を挟んで睨み合う。

「キョウリュウジャーとは別の戦隊か?面白ぇ!簡単にくたばるなよ!」
「っ!何でキョウリュウジャーを知って…まさかデーボス軍の…!?」
「自分で考えろ!答え合わせしてやる義理はねぇ!」

ドゴルドが強制的に打ち切ったことで会話は終了。
疑問へ答える気がないなら、剣を用いて倒すのみ。
小細工抜きで真正面からの斬り合いに身を投じ、譲れぬ勝利への想い/執念を乗せた得物が喰らい合う。
一撃だろうと貰ってやらず、敵の剣を弾き返しては逆に斬り付け、それを弾かれまた攻撃の繰り返し。

「てやあああああああ!」

変わらぬ攻防へ変化を促すは、仲間というドゴルドになく王にはある存在。
一直線に突き進む桃色の槍へ鬱陶し気に舌打ちを零し、頭部を動かして回避。
避けて安心はまだ早い、クワガタオージャーに斬り掛かられ頭部へ剣が到達するまで一刻の猶予も無い。
とはいえこの程度で危機感を覚える力しか持たないなら、デーボス軍の幹部の座からは早々に転げ落ちただろう。
迫る王の剣へ愛刀を鈍器のようにぶつけ、クワガタオージャーの腕へ痺れが襲った。
怯んだ時間は1秒にも満たないが、ドゴルドはそこを決して見逃さない。
咄嗟の防御に出た王と魔法少女の得物へ、喧嘩上刀の薙ぎ払いによる衝撃が叩き付けられた。

「ぐぁ…!」
「きゃっ……!」

踏み止まらんとする意思を嘲笑い、風に吹かれた枯れ葉のように体が宙へ浮く。
吹き飛び地面へ叩き付けられた二人へ、喧嘩上刀の切っ先が向けられた。
刀身に迸る電撃を浴びせ追い打ちを掛ける気だ。
ちょっとやそっとでは死なない姿に変身中とはいえ、受けるダメージは少なくない。

『TUNE CHASER SPIDER』

させじと攻撃を仕掛ける戦士と、魔法の使い手。
武装展開し蜘蛛モチーフのクローで斬り掛かり、別方向からは世紀王の魔剣を振るう。
チェイサーとユフィリアの放つ斬撃へ動揺の素振りは見せず、むしろ望む所と獰猛に笑った。
野太い声と共に放った蹴りが向かう先にはユフィリア。
直撃した際の被害は骨折で済めばマシ、臓器を幾つ使い物にならなくされるのやら。
攻撃を強行するのはリスクが大きい、剣を引き回避へ移行。
一方チェイサーとは得物で斬り合うのを選択、銀と金の刃が絶えずぶつかり敵を砕かんと金属音を響かせた。

「おらおらどうした銀ピカ野郎!温い刃で俺を殺せるかよぉっ!」

威勢の良い挑発には乗らず攻撃を防ぐも、内心では敵への警戒度を引き上げる。
パワーに優れた性能であるチェイサーをして、ファングスパイディーから伝わる重さは危険と言わざるを得ない。
腕部アーマーにより威力を高めた斬撃を放っても、力任せの一振りで霧散。
生半可な攻撃を幾ら続けた所で体力ばかりを失いドゴルドは倒せない。
そう理解したのはチェイサーのみに非ず、再度距離を詰め刃を放った少女も同じだ。

「“エアニードル”!」

剣技に魔法を組み合わせ打って出る。
サタンサーベルの刺突に合わせ空気の針が打ち出された。
一本二本では済まない、一息の間に数十を超える乱れ突きを受ければ全身へ無数の穴が生まれる。
なれど敵は主催者直々に用意した冥黒の五道化の一体。
ここで倒れるようでは最強のNPCの肩書も単なるハリボテに過ぎない。
片腕に力を漲らせ刀を振り下ろす。
たったそれだけの動作で暴風の如き刃を飛ばし、空気の針の連射を打ち破った。

呼吸が途切れ針の弾幕も消え、ドゴルドが相手を殺すのに十分な隙が生まれる。
無論、そう来ることはユフィリアにも予測の範囲内。
跳躍し頭上を取れば、小賢しい虫を落とすべく剣が突き出された。
それすら読んでいたとでも言うように、宙で体勢を変えて躱す。
飛行魔法の応用で身動きのとり辛い宙だろうと、こういった真似が可能だ。

着地の瞬間に斬り掛かられるも、反射速度に優れているのはドゴルドだけの特権ではない。
魔剣を翳し防ぎ、両腕の痺れに打ち合いを続けるのは悪手と判断。
膂力で勝る相手とどう戦えば良いかも心得ており、喧嘩上刀の刀身へ己が剣を添え受け流す。
力任せにぶつけ合うよりは負担も抑えられる。

ドゴルドの剣が嵐ならユフィリアは流水。
いっそ美しさすら感じられる剣は、天性の才によるもののみに非ず。
学んだ基礎を徹底的に伸ばし洗練させる、弛まぬ鍛錬を今日に至るまで欠かさなかった証。
努力が齎した強さはデーボス軍の怒れる戦騎とも渡り合う光景を、夢幻ではなく現実のものとする。
刃から実力の高さを感じ取り、ドゴルドの戦意は益々上昇。

「テメェといいアズールの奴といい、小娘の分際で大した腕してやがるぜ!」
「…っ!他人の力を素直に認められる度量がおありなら、殺し合うのを止めて欲しいのですが…!」
「そいつは無理な相談だ!」

実力は認めるがそれとこれとは話が別。
腹立たしいがNPCとしての役目を放棄するつもりはゼロ。
戦国の世から続く因縁との再戦に向けて、己が刀へ血を吸わせねばならない。

「アズール……?」

剣戟の最中に聞こえた名前へ、暫し思考が凍り付く少女が一人。
まさか戦闘中の相手からその名が出るとは思わず、我に返り問い質す。

「まさか…アズールに会ったの!?どこで……」
「あ?何だ、アイツのお友達か?さあな!運が悪けりゃ、次の放送で名前が呼ばれるだろうよ!」
「っ!!」

望んでいたのとは違う答えにヒュッと喉が鳴る。
マジアアズールとの戦闘がどうなったかを説明してやる義理は無い。
青褪めるマジアマゼンタを無視し、一際強く剣を振り回す。

「くっ…!強化してこれ程の…!」

光属性の魔法を使い既に身体強化は施してある。
にも関わらず馬鹿げた威力を叩き出され、受け流すのにも負担が増す。
両腕の痛みにほんの一瞬対処が遅れれば、次にどうなるかは決まったも同然。
辛うじて防御を取ったは良いものの、弾き飛ばされるのまでは避けられない。
鎖で幾重にも縛られた所へ、風魔法を使われた気分だ。
受け身も取れないまま激突を待つだけの身となる。

「おっ…と!」

待ち受ける痛みはやって来ず、視界には信頼を置く赤が映った。
受け止められたとすぐに分かり、少々慌てて離れ礼を言う。
王の手を煩わせた申し訳なさと純粋な感謝は簡潔に留める。
この状況で長々と会話に興じる余裕はゼロ、王も理解しており一度だけ頷き即座に敵へ向き直った。
思った通りだ、吹き飛ばした程度で満足せずに襲い掛かって来る。

『EXECUTION SPIDER』

「チィッ…!」

接近を阻むは銀色の蜘蛛が放つ光弾。
高威力の技を撃たれればドゴルドも無視は出来ず、そちらへと剣を振るう。
たったの一振りで打ち消すのは流石のパワーなれど、飛散したエネルギーが全身を痛め付けた。
ある程度治まったとはいえ、左虎達との戦闘で受けた傷にも響く。
だが再起不能へ追いやられる程ではない、舐めた真似をしてくれたチェイサーへと電撃を放つ。
横へ大きく跳んで躱し、クラクションを鳴らし走って来たトレーラー砲をキャッチ。
発射されたビームにドゴルドは愛刀を翳すことで防御、小癪な飛び道具共々叩っ斬るべく力を籠める。

『OHGER FINISH!』

「“ファイアーアロー”!」

反撃をむざむざ許してやる程、王と公爵令嬢は優しくない。
光刃と炎の矢が、防御の真っ最中で身動きの取れないドゴルドを狙う。
ゴッドクワガタの力を乗せた刃は勿論、ユフィリアの魔法も貫通力と連射性能を高水準で兼ね備えている。
強固な鎧のドゴルドであってもノーダメージで凌ぐのは困難。

「舐めてんじゃあねえぞぉおおおおおおおおおおおっ!!!」

しかしここにいるドゴルドは、嘗てキョウリュウゴールドに敗れた時とは違う。
本来であれば手にする事の無かった数々の異能を組み込まれた、バトルロワイアルの特別NPC。
持ち主の怒声に愛刀が応え、纏めて蹴散らすように振るう。
雷と斬撃が三方向からの脅威を全て打ち消し、放った当人達をも痛め付けた。

「やはり…あの力は……っ」

背中から倒れ苦悶の声を上げながら、ユフィリアは敵の強さの理由へ戦慄を抱く。
剣の腕や電撃を放つドゴルド本来の力も強力だが、より危険なのは戦闘中常に武器や打撃へ纏わせたナニカ。
魔法に精通したユフィリアだからこそ気付き、背中を冷たい汗が伝った。
闇属性の魔法に近いようで違う、臓腑が凍り付くような薄気味悪いモノ。
それが「呪力」と呼ばれるとは現状知る由も無い。

先の戦闘で発生した黒い火花の名も、そもそも呪力とは具体的にどういった力かもドゴルドは知らない。
ただ己の中に呪力が宿っているのを認識しているかしていないか、それだけでも雲泥の差がある。
内へ力があると分かり、黒閃を経た事で呪力の引き出し方も頭では無く魂で理解出来た。
そこからやったのは呪術師にとっては珍しくも無い、呪力を用いた強化。
単純であるも決して侮るなかれ。
負の感情を母体にする呪力と、怒りこそが最大の原動力であるドゴルドの相性は言わずもがな。
でなければ偶発的とはいえ、黒い火花は微笑まなかっただろう。
一撃の重さ、速さ、発生する電撃の火力。
それら全てが会場へ解き放たれた直後を超え、此度の闘争で単騎無双を作り上げた。

「アズールに何をしたの…!?」

ドゴルドが如何に危険か、瞳に映る情報で理解せざるを得ない。
だとしてもマジアマゼンタを止める効果は発揮されなかった。
アズールに…小夜に何があったのか、今どうなっているのか。
分からない、本当の事を知りたくても相手がマトモに答えてくれない。
焦りを隠そうともせずに突撃するも、届かないのは誰の目にも明らかだ。

「教えて欲しけりゃもっと本気で来やがれ!アイツは腹まで裂いてやっても立とうとしたぜ!」
「な、ん……!?」
「今のテメェよりもよっぽどしぶとかったぜぇ!腹立たしいくらいにな!」

凍り付いたマジアマゼンタの手から槍が弾き飛ばされる。
小夜の負傷がどれ程かを今の言葉だけで知ってしまい、動揺が鎖となって絡み付く。
槍の再生成、或いは黒槍を取り出すかなど選択肢を頭に浮かべる暇すらドゴルドは与えなかった。

「腹立たしい!テメェじゃアズールの足元にも及ばねぇんだよ雑魚が!」

怒りのままに刀を振り下ろし魔法少女の生に幕を引く。
数秒先で訪れる末路を回避すべく、仲間達が全身の痛みを振り払って駆ける。
魔法やエネルギー弾を撃ちドゴルドの動きを阻害。
マジアマゼンタへの巻き添えを防ぐ為高威力のモノは撃てず、倒すには至らずとも剣を振るう手が止まった。
この隙にと急接近するも刀身から電撃が放たれ、クワガタオージャーとチェイサーを怯ませる。
唯一止まらなかったのはユフィリアだ、男達が自らを盾代わりにし彼女を行かせたのだ。

「彼女から離れなさい!」

飛行魔法の応用で自身の背を突風で押し出す。
突き出したサタンサーベルが真っ直ぐドゴルドへ吸い込まれ――



ユフィリアの手を離れ、あらぬ方へと飛び去って行った。


「な――――」

起きた現象へ理解が追い付かない。
持ち主の元を勝手に離れる効果なんて、付属していた解説書のどこにも無かった。
急にどうして、何故こうなったのだろうか。
浮かび上がる疑問を全て追い払ってでも、一気にマズい方へ転がった状況への対処に思考を引き戻す。
咄嗟だというのに見事な切り替えの速さだろう、可能な限り身を捩ったのも常人に出来る動きでは無い。

どう足掻こうと手遅れだが。

「あ……」

餌に食らい付く獣のように、柔肌へ刃が食い込み骨まで断つ。
離宮へ住むようになってからアニスフィアがくれた、青を基調にした衣服。
それを汚し色を濃くするのは、ユフィリア自身が流す体液。
崩れ落ちる少女へ、戦場は一瞬の静寂が支配し、

『――ッ!!』

弾丸の如き速さで駆け、王とロイミュードが怒りの戦騎を引き離す。

「あ、だ、駄目…!今治すから…!」

僅かに遅れてマジアマゼンタもまた、現実を認識し回復魔法を掛ける。
自分のミスがユフィリアの重傷へ繋がり、手が震えるもどうにか抑え込む。

「おねえちゃん…?おねえちゃん……おねえちゃん…!」

離れ隠れていたまふゆも、ユフィリアが倒れたのを見て駆け寄って来た。
今だけは、言い付けを破り「わるい子」になった事を考えていられない。
体中を汚す赤が一体何なのか、これからどうなるかは幼いながらに理解している。
だからこそ、その結末は受け入れられない。
最初はちょっと恐いと思ってしまったけど、でも自分を助けてくれて、赤い王様と同じくらい優しい人だと分かって。

「やだ…おねえちゃん…起きて……」

なのにこんな形で別れるなんて、絶対に嫌だ。
泣きじゃくり必死に呼び掛けるまふゆへ応えたい、その気持ちは嘘じゃない。

「……っ」

だというのに回復が一向に進まない。
龍騎にNPC、加えてドゴルドとの連戦がここに来て大きく響く。
消耗が魔法の精度を著しく下げ、ユフィリアをこちら側へ引き戻せない。

「丁度良い、こいつの実験もしてみたかったんだよ!」
「ぐあ…!」
「まだ力を隠していたのか…!?」

更にマジアマゼンタを焦らせるのは、ドゴルドと戦う仲間達の苦悶の声。
喧嘩上刀だけでなく、もう片方の腕からも高出力の電撃が放たれる。
装甲から火花を散らし怯んだクワガタオージャー達へ、今度は上空からの脅威が襲った。
地上へ神罰が下されたとでも言うのか、雷撃に爆発が起き吹き飛ぶ。
校舎の残骸の上を転がり、衝撃とダメージで変身が解除。
生身と擬態した人間の姿を晒す二人を見下ろし、ドゴルドは己の掌に電気を迸らせる。

「雷霆(ザ・サンダーボルト)」。
ドゴルドに与えられたソードスキルの内の一つ。
元々は見えざる帝国(ヴァンデライヒ)所属の滅却師、キャンディス・キャットニップが持つTの聖文字(シュリフト)。
雷を操るシンプルながら破壊力に優れた能力は本来持つ力とも相俟って、ドゴルドとの相性抜群。
黒閃を決め己に眠る力を引き出せるようになり、ようやっと日の目を見た。

「治さないと…!あたしが、急いで…でないと……!」

治さねばと分かっているのに、思い通りにはなってくれない。
傷付く仲間達、安否の分からない小夜。
焦り、恐怖、無力感。
心を蝕み弱くする毒が広まっていく。

(どうしよう…どうしよう……!)

両手の震えは自分でも抑えられなくなり、気付かぬ内に涙が溜まる。
助けたいのに目の前の光景が告げるのは、余りに残酷な現実。
自分では助けられない、何も出来ない。
死ぬのを見ている以外に、何一つやれはしない。

「…………っく…ふっ……!」

しかし、悲劇へ否を叩き付ける者がいた。
血を吐き出しながら緩慢な動作で傷口へ手を翳し。
回復魔法を発動した、他ならぬユフィリア本人が。
瀕死の身にありながらも抗う彼女は、目を見開くマジアマゼンタをゆっくりと見上げる。
いつ限界が来てもおかしくないにも関わらず、瞳の輝きは微塵も失われていない。

「感謝します……私の命を…繋げてくれて……」

微弱ではあったが回復魔法は効果があり、ユフィリアへ力を与えた。
沈んで消えるだけの意識を起こし、まだ死ねないと彼女自身を奮い立たせたのだ。
瀕死の身ではユフィリアと言えども、回復魔法を使ったとて治りが遅い。
血が全て失われるのは時間の問題かもしれない。

だからなんだ、そんなものは諦める理由にならない。

帰りを待つ人達がいる、帰って支えねばならない人がいる。
元婚約者であり、あの人の弟からも言われた。
彼の姉を、アニスフィアを頼むと。

死ねない理由は、この地で出会った者達だってそう。
共に戦うと約束した王の信頼を、こんな形で失いたくない。
それに、ああ、今も傍で泣きじゃくる少女を悲しませたいとも思わない。
「わるい子」と言って自分を責める顔よりも、無邪気に笑っている方がきっと良いのだから。

「だから私は……絶対に……!」

「………」

この場で最も死に近く、それでいて生を諦めない姿が。
どんな宝石よりも輝き、心にへばり付いた毒を洗い流す。
唇を強く、強く噛み締め、

「……っ!ごめんなさい、それからありがとう!」

両手で自身の頬を強く叩き、喝を入れ直す。
無理だとか、もう助からないとか、そうじゃないだろう。
皆が諦めていないのに、自分だけ真っ先に諦めるなんておかしいだろう。

(小夜ちゃん…あたしも、薫子ちゃんも、小夜ちゃんのこと信じてる…!だから今は、あたしにやれることを……!)

小夜の事で不安が全部無くなってはいない。
けれどここで焦り自分を見失うのが、正しい選択な訳が無い。
迷って助けられる人に手を伸ばせない、そんな自分が胸を張って小夜と薫子に再会など出来るものか。
だから、今目の前で起きている戦いに集中する。
逃避なんかじゃない、もう一度大事な友達に会う為にも、だ。

力が高まっていくのが分かる。
初めて魔法少女になった時からずっと変わらない、花菱はるかを突き動かす想いが最大限に高まる。
助けてくれた皆への感謝、それ以上に、

「あたしはもっと、みんなの力になりたい!!!」

光が、溢れた。

「これは……」
「きれい……」

激痛と、悲しみを一瞬忘れる程の光が魔法少女を包み込む。

眩しく、尊い、あこがれを誰よりも集めた彼女は新たなステージへ。
真化(ラ・ヴェリタ)。
正史とは異なる場ではあるが、マジアマゼンタもとうとうそこへと至った。





或いは、至ってしまったと言うべきか。





「あっはぁぁぁ……♡」





「…………え?」

眩い輝きは一瞬で暗黒に変わり、人の形を生み出す。
ユフィリアが呆けた声を零すのも無理はない。
現れた彼女は数秒前とは余りに違う。
違い過ぎた。

魔法少女のコスチュームから一転、身に纏うのは露出過多のナース服。
白衣の天使、などとありふれた表現は到底使えまい。
胸元にはハート型の切れ目が入り、わざと谷間を見せ付ける。
下腹部も同様に晒し、臀部に至っては丸見え状態でスカートが全く機能していない。
へその真下へ浮かび上がった漆黒の星は、トレスマジアにあらざるべきもの。
褐色に染め上がった肌も相俟って、清楚や純真無垢とは程遠い有様。
マジアベーゼやマジアサルファがこの場にいたら、ショックで血を吐いたのは間違いない。

「みんなをい~っぱい、癒してア・ゲ・ル♡」

爛々と輝く瞳の色に天真爛漫の四文字は無く、肌が粟立つ程の妖艶さがあった。
マジアマゼンタ・フォールンメディック。
本来のはるかならば起こり得なかったこの姿は、マジアベーゼの魔力という劇薬が注入されたのが原因で生まれた。
尤も思考や行動理念までもがマジアベーゼ一色に染まったのではない。
本質は元のマジアマゼンタから変わっていない、だから余計に質が悪いとも言えるが。

「なっ!?」

ボリュームを増したツインテールが巨大な手に変化し、ユフィリアを押え込む。
突然の暴挙へ怒るより先に、圧倒的な羞恥が湧き上がった。
下半身を高く突き上げたポーズで、しかもスカートを捲られる始末。
薄い布一枚で隠した尻を晒され、頬に熱が集まる。

「なっ、いきなり何をするん……ですか……」

抗議の声は瞬く間に勢いが衰え、変わりに顔が青くなる。
振り返った途端、巨大な注射器の狙いを澄ますマジアマゼンタが見えたからだ。
刺突剣のようにギラリと光る針、どこへ突き刺すつもりかは聞くまでもない。
公爵家に生まれ早15年、これ程の恐怖を感じたことがあっただろうか。

「待って…早まらないでください……そ、そんなの入るわけ……」
「心配しなくても大丈夫♡お注射で元気になるだけだからぁ♡」
「い、いやっ!お願いやめ――」



ズ ブ リ

「んみゅっ!!!!!!!???!!」



「ほ~ら♡あったかいのがビュクビュク流れてくのが分かるでしょぉ?」
「ひぐっ!?うぅっ!んあっ♡も、や…♡」

注射器に収められたモノが流れ込み、その度に全身を痙攣さえ喘ぎ声を漏らす。
もしここにパレッティア王国の、ユフィリアを知る住民がいたら悪趣味な幻覚を見せられていると思うだろう。
由緒正しい公爵家の娘が人前で痴態を晒すなど、厳格な彼女の父とて卒倒し兼ねない。

「……あの女、頭おかしくなっちまったんじゃねぇのか?」
「…俺に聞くな」
「……そ、それより止めた方が…」

異様過ぎる光景にはドゴルドも怒りより困惑が勝った。
一体全体何が起こっているのか、理解に苦しむ状況だが何も特殊なプレイを始めた訳ではない。

「これは…傷が完璧に治ってる!?」
「あっは♡大成功♡」

蕩けた笑みでピースサインを作るマジアマゼンタを尻目に、自身の体へ驚愕を隠せなかった。
あれだけの重傷が完治しており、痛みはどこからも感じない。
こうも劇的な効果は、優れた魔法の腕を持つユフィリアから見ても驚異的だ。

「おねえちゃん…?お怪我はもう大丈夫なの…?」
「は、はい。彼女のおかげで……」
「良かった…おねえちゃん…!」

理解不能の光景に固まっていたまふゆも、ユフィリアの無事には安堵の涙を流して抱きつく。
幼い子供に自らのあられもない姿を見られた羞恥はあれど、強引に引っ込める。
心配させてしまったまふゆを優しく撫で、和やかな空気が流れるも戦いはまだ終わっていない。

「お、おねえちゃん…!わたしも、おねえちゃんとおにいちゃんたちのお手伝い、しちゃだめ?」
「えっ?急に何を言うのですか?」
「だ、だって!みんなが戦ってるのに、わたしだけ隠れてばっかりで……」

守ってもらうだけの自分に負い目を感じているのだろうか。
そんな事を気にしなくて良いと言う前に、褐色の腕が伸びた。

「うんうん、言いたいことは分かったよ♡だからあたしで、もっと元気になろうねぇ♡」
「ふえっ?」
「はい!?」

少女二人の手首を掴み、あろうことか自身の胸元へ持って行く。
掌から伝わる柔らかさの正体を、一々説明するまでもない。
動かす度にムニュムニュと形を変え、興奮で谷間に汗が滴り落ちる。
まふゆの小さいが温もりの宿る手、ユフィリアの細く滑らかな指。
タイプの異なる感触を同時に味わい、マジアマゼンタは堪らず嬌声を上げた。

「あっ♡やんっ♡二人とも上手♡もっといっぱい触ってぇ♡」
「な、な、あ、あなたは…!?何をして…!?魔力が回復している……?」
「お、おねえちゃん…わたし何だかドキドキして…体も熱くなって…へ、変だよぉ……」
「いけませんまふゆ!こういった行為はまだ……って、いつまで揉ませているのですかあなたは!?」

少女三人のしっちゃかめっちゃかなやり取りへ、戦場の緩い空気は更に加速。
男性陣は唖然とし、ドゴルドですら頭を抱えたくなる始末。

「覗き見はNGだよっ!」
「痛っ!?」
「む……」

視線が集まるのに気付いてか、マジアマゼンタが複数本の注射器を投擲。
ユフィリアに使ったのとは違う、一般の医療施設で使用されているサイズだ。
鋭利な針がギラとチェイスに突き刺さり、一見すれば乱心したと思われても違和感はない。
違うと即座に分かったのは、ギラ達のダメージも急激に回復されたから。
真化状態とはいえ根は元のはるかのままな為、男女関係無く仲間を助けたい気持ちは失っていなかった。
どこか雑なやり方なのは、マジアベーゼの魔力に影響を受けたからかもしれない。
アルカイザーへの素っ気ない対応を思えば納得である。

「あの女!イカレてるだけかと思ったが、小賢しい真似しやがって!」

ドン引きしていたドゴルドも、敵の負傷が次々癒される光景に怒りを取り戻す。
再び電撃を放つべく力を籠めるが、させじとチェイスがブレイクガンナーを撃ち妨害。
そこへ三台のチェイサーバイラルコアも突撃、手のひらサイズながらドライブにもダメージを与えられる威力だ。
怯んだ隙に仲間達の元へ合流、そのタイミングでようやっとマジアマゼンタも手を離した。
胸を揉まされ顔の赤いまふゆに、屈み込んで口を開く。

「恐いって思うんだったら、無理に戦うことなんてないよぉ?悪いことじゃないんだもん♡」
「あう……」
「でもぉ…大好きな人を、困ってるみんなを助けたいって気持ちは絶対に間違いじゃないからね♡まふゆちゃんが何をするにしても、あたし達が守ってあげる♡」

快楽へ誘う猫撫で声は変わらずとも、まふゆの想いは否定しない。
困っている人を助けて笑顔を取り戻す、それがマジアマゼンタの魔法少女としての在り方。
そうしてもう一人、この地で出会った新しい友達もそう。
絶体絶命の状況にあっても、逃げずに立ち向かうことを選んだ小さな魔法少女(アイドル)。
誰かの為に頑張れる者を知っているからこそ、ユフィリアやギラの力になりたいという願いは、間違ってないと断言出来る。

「わたしは……」

僅かに迷う素振りを見せるも、顔を上げ瞳が仲間達を映し出す。
恐くないと言ったら嘘になる、痛い思いなんてしたくない。
だけど、ギラとユフィリアを失うのはもっと恐い。

(おにいちゃんとおねえちゃんの手、あったかかった……)

遊園地で迷子になり、母を悲しませるわるい子になってしまった。
その時自分を二度と離すまいとして握った手が、恐いくらいに冷たかったのをハッキリ覚えている。
心配して無事を喜んでくれるのは同じなのに、どうして母とギラ達で違うのか。
正確な理由までを幼いまふゆは分からない。
ただ自分は、短い時間でいつの間にか大好きになってしまった二人を助けたい。
二人から温もりを貰い守られたなら、自分も力になりたい。

「わたしは…!おにいちゃんとおねえちゃんのこと、大好きだから!一緒に、た、た、戦う…!」

たどたどしくも己の決意は曲げずに言い放つ。
声は確かに聞き届けた、であるなら応えない理由は無い。
小さな獣電竜が勇ましく咆え、まふゆの手の中に飛び乗る。
人の言葉は発せずとも、何を伝えたいかは分かった。

「ミニティラちゃん…うん!わたし、やってみる!」

『グルリンチョ!』

まふゆの手でミニティラは新たな姿へと変わる。
頭部が回転し銃身へ、腹部からはグリップが飛び出す。
恐竜と銃が組み合わさった見た目だが、単なる玩具ではない。
自身の力をまふゆに貸すことをミニティラも決めたのだ。
守りたい人達の為に戦う、幼い少女が精一杯の勇気(ブレイブ)を見せたのなら。
誰よりも熱いブレイブを秘めた男の相棒である自分が、応えない訳にはいかないだろう。

『ガブリンチョ!オーバーチャージ!』

「わわっ!?体が勝手に踊っちゃうよ~!?」

銃口のスロット部分に獣電池を装填。
すると軽快なサンバ調の音楽が流れ出し、まふゆの体も自然と踊り出す。
奇妙な現象をよく知っているのはギラとドゴルドの二人だけ。
共闘と敵対、異なるスタンスではあるも彼らは見て来た。
地球の音楽が奏でる、獣電戦隊の変身を。

「えっと、キョウリュウチェンジ!」

『OH!マツリンチョ!カーニバル!イィィィヤッハァァァ!マツリンチョカーニバル!』

「ふぁ、ファイアー!」

ハイテンションな電子音声に気圧されつつ、トリガーを引く。
獣電池に籠められた力を解放し纏うは、燃え盛る赤いスーツ。
牙を模したマスクには恐竜の鶏冠を生やす。
上半身を覆う装甲はミニティラ改めガブティラの頭部。
キョウリュウレッド・カーニバル。
ガブティラが相棒と一つになり戦いたいという願いを叶えた、牙の勇者の新たな形態。

「嘘だろおい…あんなガキがキョウリュウレッドだと!?」

桐生ダイゴに遥かに劣る小娘が、よりにもよってキョウリュウレッドになった。
主催者側の細工があるのを含めても、嘗てキョウリュウジャーと激戦を繰り広げたドゴルドからすれば理解し難い。

「わ、わたしなんだか凄いことになっちゃった…!」
「まふゆ……」

キョウリュウレッドとなったまふゆを前に、ユフィリアは複雑な感情だ。
彼女からの信頼が嬉しくないとは言わない、決意を強く否定するつもりもない。
ただ本来ならば争いと一切無縁の少女を、こうして戦場に駆り出させてしまった。
これで本当に良かったのかと悩むも、王が落ち着いた口調で言う。

「戦わせたくなかったって気持ちは僕も同じだ。…自分が不甲斐ないなって思う」
「ギラ様……」
「だけど、一緒に戦いたいって想いまで否定したくないのも分かる」

ダグデドとの決戦を前に、六王国の民を騙す形で別の惑星に逃がそうとした時を思い出す。
チキューを捨て新天地で一からやり直して欲しい。
王様戦隊の最後の命令を、あろうことか全ての民が拒否し共に戦う道を選んだ。
守るべき者が守られるだけじゃなく、肩を並べて戦おうとする。
その選択を選ばせた事に何の後悔も無いかと言うと、首を縦には振れない。
しかし、彼らの勇気が力を与えてくれたのもまた事実。

だから、そう、

「なーっはっはっはっはっ!俺様の命令に背き、強き竜の衣を纏うか!その気概、実に気に入ったぞ!それでこそ邪悪の王の仲間に相応しい!」
「え、ギ、ギラ様?」
「貴様の命は既に邪悪の王の支配下にある!俺様のモノを勝手に奪わせはせん!歓喜に咽び泣いて力を振るうが良いわ!」

突如始めた邪悪の王の振る舞いへ目を白黒させるも、内容に思わずフッと笑みを零す。
成程、支配した命ならば奪わせる訳にはいかないだろう。
言葉の意味を理解したらしく、まふゆも嬉しそうに頷いている。
彼らしい信頼の向け方につい呆れ笑いが浮かぶも、それを不快には思わない。
自分も影響を受けているのだろうかと思い、スと剣を差し出された。

「今の貴様なら使いこなせる筈だ!存分に暴れてみせろ!」
「…宜しいの、ですか?」

サタンサーベルが戻って来ない以上、武具には頼れず魔法のみで戦うしかない。
そう覚悟していたがまさか王の剣を貸してもらえるとは。
異なる世界同士であっても、恐れ多いことこの上ない。
素直に受け取って良いものか悩むが、ギラにはまるで気にした様子がなかった。
謙遜と遠慮はあらゆる場で必要とされる、しかし度が過ぎれば却って不敬。
何より最優先は脅威への対処だ、緊張しつつ受け取り構える。

剣に秘めた力をどう使うかは、ギラを見ていた為知っている。
本当に自分に出来るのだろうか、不安の大きさに肩が微かに震えた。
しかし他でもない、所持者であるギラが信頼の証として剣を振るう事を許してくれたのだ。
一呼吸置きトリガー部分に指を掛ける。
どうしてそこへ決めたのか詳細な理由は自分でも分からない、ただこれで間違いないのだと不思議と確信が持てた。

「名も知らぬ王よ…どうか私に力を御貸しください…!」

『Come and kick it!』

「王鎧武装!」

『You are the KING You are the You are the KING!」

『カマキリオージャー!』

オージャカリバーを振るい迷いを断ち切る。
王剣が正しき心に応え、ユフィリアを花のような眩い装甲とマントが覆う。
頭部へ装着されたバイザーはクワガタオージャーとも異なる形状。
名はカマキリオージャー。
我がままに我儘を貫くイシャバーナの気高き女王、ヒメノ・ランのもう一つの姿。
殺し合いでは王の資質さえあれば王様戦隊以外の者も使用可能。
近い未来、全てを失ってでも貫きたい我儘(願い)で王になると決めたユフィリアだからこそ、この姿になったのかもしれない。

「俺様達も続くぞ!我が新たな下僕よ、女どもに恥じぬ戦いを見せてみろ!」
「そんなものになった覚えは無い。だが、言いたいことは分かった」

尊大な口調へ淡々と返しつつも己の戦意を高め、敵を見据えた。
人間の持つ強さを、勇気を、愛の力をチェイスは知っている。
そんな彼らを守ることこそ己の使命であり本能。
自分を支えると言ってくれた少女のように、誰かの為の決意が生まれたのなら。
人間の守護者として奪わせない。
ギラとチェイスが取り出すのは、元々自分達が力を引き出すのではないアイテム。
時に幾度もぶつかり、時には肩を並べて戦った仲間の。
死者の国での奇妙な騒動を経て、断ち切れぬ縁を結んだ男の。
信頼出来る彼らの力を借り強敵に打ち勝つ。

『SIGNAL BIKE!SHIFT CAR!』

「変身…!」

『RIDER!DEAD HEAT!』


「アバターチェンジ!」

『いよぉー!どん!どん!どん!どんぶらこ!アバタロウ!』

『ドンモモタロウ!よっ!日本一!』

戦隊と仮面ライダー、共に纏うは赤き鎧。
ドンモモタロウとデッドヒートチェイサーが並び、唯一生身の少女が黒槍を振り回す。
ポールダンスのようにしな垂れながら、ドゴルドへ指を突き付けた。

「さ~て…これからたっくさんお仕置きしちゃうんだからぁ!♡」
「ほざけ変態女がァッ!!」

怒れる戦騎の咆哮を皮切りに、第二ラウンドが幕を開ける。

「うおらァッ!」

怒号一閃、持ち前のパワーと怒りで増幅した呪力を乗せ刀を振り下ろす。
その威力たるや斬るではなく最早粉砕する程。
武器を翳し防御の構えを取ろうと、地面を汚す鉄と血肉の雨に変わるだけ。
一方で速度もまた侮れない、鍛えた達人であっても真っ向勝負は困難を極める。

「ぜえりゃぁっ!」

だが立ち向かうは、シュゴッダムの国王がチェンジしたドンモモタロウ。
チキューを守る戦いで技を磨き経験を積んだ、一騎当千の王にして戦士。
敵がデーボス軍の幹部であろうと容易く破れる弱者に非ず。
負けじと腹の底からの気合を乗せ、サングラソードで迎え撃つ。

「祭りだ祭りだ!貴様も派手に踊れ!」
「指図してんじゃねえよ腹立たしい!」

挑発には怒りを返し、喧嘩上刀の勢いへ加算。
大柄な体躯からは想像も付かない、疾風怒濤の四文字を現実にさせた斬撃が襲来。
一撃当たれば瞬く間に体勢を崩し、後はただされるがままで死へ一直線。
死神の鎌を首へ添えられたような緊張感に、ドンモモタロウは尚も笑う。

スーツを切り裂き肉を断つ感触は一向にやって来ない。
刀身から腕へ伝わり震わせる、剣をぶつけ合い起きる振動。
避けるのではない、サングラソードでの斬り合いに身を投じる。
休む間もなく迫る凶刃を弾き返し、時には打撃を当て隙を作りに出た。

ドゴルドとてタダで攻撃を受け続ける甘ちゃんではない。
拳には拳を返し、蹴りには蹴りをぶつける。
斬撃と打撃の応酬で、互いに負ったダメージは未だゼロ。
呪力で強化しているというのに、押し負けず互角に渡り合っていた。

「はああああっ!」

ドゴルドへ立ち向かうのはドンモモタロウ一人じゃあない。
跳躍し宙で魔法を発動、回転数を増した剣でカマキリオージャーが斬り掛かる。
顔面部分を叩き割られる一撃へ、ドゴルドも即座に対処へ移った。
ドンモモタロウへ蹴りを放つも得物の刀身で防がれる。
これでいい、距離を一旦離してやれれば問題無い。
刀に稲妻を迸らせ、わざわざ突っ込んで来た羽虫を焼き斬る。

ドゴルドのパワーなら回転を力任せに止めるのも難しくない。
オージャカリバー目掛け刀を振るい、見事に外れた。
そう来ることはカマキリオージャーも読んでおり、再度魔法を使い宙での急な体勢変更を可能に。
空振った際に生まれる隙を突き、懐へと潜り込む。
右手にはオージャカリバー、そして左手には王様戦隊専用装備のキングズウエポン。
シールドを基本形態に各武器へ変形する機能で、刃を90°展開。

剣と鎌、二つの刃が振るわれる様はまるで華麗な舞のよう。
苛烈な斬撃の中に目を惹く美しさを宿し、ドゴルドを細切れにせんと得物を振るう。
手数を活かした猛攻へ、刀一本で凌ぎ切る。
武器の数で上回れられようと関係無い、真正面から打ち破る力を今のドゴルドは持つのだから。
横薙ぎの喧嘩上刀を後方へ跳んで回避、このまま逃がす気は当然無し。
聖文字の力で片腕に電気を充填、だが放つ直前でエネルギー弾が全身を狙い撃ち霧散。

「おねえちゃん達にひどいことしないで!」
「このガキ…!」

銃形態のミニティラ、ガブティラ・デ・カーニバルを構えたキョウリュウレッドだ。
通常形態を超えるキョウリュウスーツの機能により、射撃能力にも大きな補正が掛かった。
戦闘行為など初めてのまふゆであっても、狙い撃てる腕前を発揮。
尤も、イアン・ヨークランドといった根っからの射撃の名手には及ばないが。

キョウリュウレッドの真似事をしただけの小娘に邪魔をされた。
屈辱的な事実へ怒りが増し、呼応するように刀身を覆う呪力も増加。
抑える気の無い衝動のままに駆け、真紅の戦士が立ち塞がる。
人を守る揺るがぬ使命に背中を押され、チェイサーが拳を叩き込む。

「テメェも赤か銀ピカ野郎!どいつもこいつも目が痛くなるんだよ!」
「知るか!」

互いに怒りを叫ぶも長ったらしい会話には発展しない。
赤と黄、稲妻を迸らせ拳と刀が激突。
二本の腕と一本の武器から繰り出されるとは思えない、数秒の間に何十もの打撃と斬撃が放たれる。
怯み後ろへ下がればそこで負け、一歩も譲らず前へ乗り出し猛攻がぶつかり合う。
刀身を拳が叩き、手刀を切っ先が押し返し、一撃たりとも受けてはやらない。

強化グローブ越しとはいえ、無手で喧嘩上刀と打ち合い痛がる様子はまるでない。
先程とは別の姿に変わったのもあるだろうが、それにしてはどこかおかしい。
いやそもそも、他の連中にしたって自分と渡り合えているのは――

「あたしのことも忘れちゃダメだよっ♡」

拭い切れない違和感は、薄気味悪い猫撫で声で思考の隅へ追いやられた。
跳躍し頭上を取ったマジアマゼンタが、真下目掛け黒槍を突き刺す。
狙うは肩だ、武器を振るう際の影響も少なくない。
大きく舌打ちし、チェイサーの拳を防ぎながら真横へ跳ぶ。

「月影刃♡」

地へ降り立ち、すかさず槍を突き出す。
踏み込みの勢いも乗せ、速度に優れた一撃を刀で防御。
如何に速くとも小娘の槍程度逆に押し返せれる筈が、両者拮抗を見せる。

「チッ!邪魔くせぇガキが…!」

タイミングを狙い澄ましてキョウリュウレッドが銃を撃つ。
それも棒立ちになってではない、踊るようにダイナミックな動きを行いながらだ。
チマチマ電撃を撃っても紙一重で躱される、なら範囲を広げ焼き潰すまで。

「どこを見ている!」

だが仲間の危機を事前に潰すべく、ドンモモタロウが参戦。
脳天を叩き割らんと、サングラソードが頭上より振り下ろされる。
キョウリュウレッドへの電撃は中断し防御、互いに弾かれ即座に再度斬り付けた。
オージャカリバーを使った時とはまた別の、縦横無尽な斬撃の嵐を見舞う。

「ギラ様!」

背後から己を呼ぶ声に意図を察し、頭を下げる。
急に斬り合うのを止めてまで体勢を変えた意味が何か、ドゴルドにもすぐに分かった。

「“エアカッター”!」

風属性の魔法を唱え真空刃を放つ。
元のカマキリオージャーには無かった、魔法を使った攻撃。
風を刃に変え標的を真っ二つにするシンプルな効果も、使い手が天才と称される令嬢故に威力は跳ね上がる。
小賢しいとばかりに薙ぎ払い風の刃を打ち破った。
ただのそよ風と変わらない筈が腕と腹部へ小さく痛みが走り、幾分かを打ち漏らしたと理解。
またもや違和感が膨れ上がるも、考えさせないのはやはり憎たらしいあの声。

「雷神月詠華ぁ♡」

逆立ちし黒槍を回転、浮上しながら連続で蹴りを放つ。
ほとんど機能していなかったスカートの中が丸見えだ、防ぎつつも羞恥は無いのかと内心呆れる。
相手が何を思っているかへ興味を抱かず、マジアマゼンタは一気に上昇。
振り下ろした黒槍に合わせ電撃が落ち、ドゴルドが避けた箇所を黒く焦がす。

「今の俺相手に電撃だと!?舐めてんじゃねぇぞ!コラァッ!!」

空蝉丸の技に比べれば脆弱、当然自分にも遠く及ばない。
そんな弱っちい電撃で攻撃され、嘲笑ではなくコケにされた怒りが湧く。
憤怒のまま斬り掛かるもくねくねと海藻のような動きで避けられ、「いやーん♡こわーい♡」とほざかれた。
ドゴルドが鎧ではなく生身の生物だったら、血管の数本は切れていたに違いない。

『BURST!』

『キュウニデッドヒート!』

どれ程の怒りを抱こうがチェイサー達には関係無い。
ドライバー上部のスイッチを連続で押し、全身を走るエネルギーもより激しさを増す。
シフトデッドヒートの稼働状態は最高へ移った、暴走のリスクを孕んではいるも既に乗りこなした為無問題。
地面が焼ける程の熱を発し疾走、自らを魔弾に変え拳を突き出す。
突っ込んで来るなら容赦はしない、愛刀を振り抜き押し切らんと踏ん張る。

「この…野郎がぁ……!倒れやがれ…!」
「断る…!」

腕諸共斬るつもりで刀を振るった、なのに敵は未だ健在。
やがて互いに後方へと押し返されるも、再度距離を詰め同じタイミングで攻撃。
赤い光を帯びた拳の連打を、電気の迸る刀身が一撃たりとも近付けさせない。
それは同時に、ドゴルドの剣も未だチェイサーには届いていないことを指す。
加えて拳一発一発が、蜘蛛型のクローを振るっていた時よりも重い。
呪力で強化した今のドゴルドへ食らい付ける程に。

「だからどうしたっ!」

ドゴルドの全身を走る電気に、このまま接近戦を挑むのは危険と判断。
両腕を交差しつつ後方へ跳び、直後電撃の放射が来た。
瓦礫の山が消し飛ぶのを横目に躱し続けるも、怒れる戦騎の攻撃は止む気配が無い。

『OHGER FINISH!』

「ッ!ああ腹立たしいったらねぇぜ!」

だったら方法は一つ、強制的に止めてやれば良い。
カマキリオージャーが振るった剣から、高威力の光刃が飛ぶ。
電撃をチェイサーから急遽変更し相殺、互いの視界を煙が僅かな間覆い隠す。
刀の一振りで煙を掻き消すも、敵もまた大人しく待ってはいない。
牙の勇者と赤き王、銀色の追跡者がそれぞれ銃を構える。
彼らに倣い二人の少女も各々術を発動。

「“ファイアーボール”!」

「嵐月・燕ぇ♡」

エネルギー弾の一斉掃射に加え、炎と風の力を収束した魔弾を発射。
得物を振るい、電撃を放ち打ち消すも弾けたエネルギーがドゴルドの身を焼く。
案の定と言うべきか、斬撃や打撃のみならず遠距離攻撃も威力が明らかに増していた。
5人全員がそれぞれ最初と違う姿とはいえ、こうも大きく変わるのか。

ギラ達が今のドゴルドに渡り合える理由、それはまふゆにあった。
彼女自身も気付いていないが、切っ掛けとなったのはデーボ・キャワイーンが倒れた際に現れたドロップアイテム。
それも目に見えるアイテムの類ではなく、スキルの一種。
偶然にも近くにいたまふゆが使用可能になった力の名はマハタルカオート。
参加者の一人でもある花村陽介ら自称特別捜査隊が、マヨナカテレビ内での戦闘で活用したペルソナのスキル。
戦闘開始時に味方全員の攻撃力を強化する効果は、ドゴルド相手にも大きな助けとなった。
但しスキル所持者が戦闘に参加しなければ肝心の効果は表れず、キョウリュウレッドになり共に戦うことでようやく発動されたのだ。
尤も説明書を一々読む暇もなく、本人にマハタルカオートを発動した自覚は無いが。

「チマチマ遊んでんじゃねぇぞテメェらぁっ!!!」

怒髪天を衝くとはこのこと。
さながら地上人の勝手に憤った雷神の如く、天からの罰が降り注ぐ。
爆撃と見紛う落雷により、地面のあっちこっちで爆発が発生。
吹き飛ばされる戦士達への怒りは、より強大な力をぶつけねば晴れそうもない。

「こいつはテメェらが初だ!泣いて喜んで焼かれちまいな!」

喧嘩上刀を両手持ちに変え上空へ突き上げる。
操る力はブレイブのみじゃない、呪力と聖文字も活用。
正と負、本来は相容れぬブレイブと呪力が混ぜ合い更にはTの聖文字で電撃の威力を底上げ。
神の武器と言われても不思議の無い輝きが発せられる。

今の自分ならば、本来の技の使い手である空蝉丸をも超える威力を出せるんじゃないか。
忘れられない宿敵との死闘を思い浮かべつつ、得物を握る手に力を籠める。
大きな力を我が物とし振るう高揚感に急かされ、解放の瞬間は来た。
対峙する者へ絶望しか抱かせない輝きが、戦士達を飲み込む。

「――――ッ!?」

正にその直前でドゴルドの動きが急に鈍くなる。
スローモーションの世界へ閉じ込められたように、刀を振り下ろすのが異様に遅い。
数センチ動かすのにも数分を要するだろう程の鈍重さ。
奇怪な現象の正体が重加速だと知る者は、この場にただ一人。

「急げ!この状態もすぐ元に戻る!」

仲間達に決着を促しつつ、チェイサーもドライバーへ手を伸ばす。
コアドライビアを持つ者以外は、ディケイドのような例外でない限り重加速の影響下から抜け出せない。
だが現実にチェイサーの声を聞き、困惑を捨て置きドンモモタロウ達も各々動き出す。
彼らの肩にはそれぞれ三台のチェイサーバイラルコア、キョウリュウレッドの元にはトレーラー砲が待機。
シフトカーや同じ機能のバイラルコアが、重加速内での行動を可能にしたのだ。

「小細工をっ!?」
「動いちゃダ~メ♡」

元の動きを取り戻したのも束の間、再びドゴルドは身動きを取れなくなった。
印を結び標的を桃型の結界に閉じ込める、ドンモモタロウの能力。
光鎖で生み出した結界に閉じ込めダメージを与える、マジアマゼンタの術技(バーストアーツ)。
長くは持たないだろう、されど残る三人が動くには十分過ぎる。

『ヒッサツ!』

『FULL THROTTLE!DEAD HEAT!』

『OHGER FINISH!』

『OHGER SLASH!』

「いっけえええええええ!」

シフトデッドヒートの特殊エネルギーを全て叩き付ける蹴り。
王の武器二つから連続して放つ光刃。
更にはミニティラとトレーラー砲が、現在出せる出力の最大でビームを発射。
だから何だと言わんばかりにドゴルドも剣を振るうも、一手遅い。
結界を叩き割った時には既に、己が身へ着弾した後。

「これがどうしたああああああああああっ!!」

勢いが落ち痛みに苛まれようと、誰が負けを認めるものか。
雷電残光とは到底呼べぬ斬撃であれど、苦し紛れと呼ぶには侮れない力だ。
王と竜の者の輝きを捻じ伏せ、ロイミュードをも弾き返す。
よろけながらも絶対に膝は付かない、こんなものかと睨み付け、

「アバターチェンジ!」

『キョウリュウジャー!』

『でぇーせんぱい!でぇーせんぱい!いよっ!獣電戦隊!』

これで本当にケリを付けるべく、ドンモモタロウから更にチェンジ。
牙の勇者にして、最も熱いブレイブの持ち主。
宇蟲王ギラとの戦いでも共に戦った獣電戦隊のキング。
キョウリュウレッドがまふゆとは別に、もう一人現れる。

「あぁ゛!?キョウリュウレッドの野郎……どんだけパクられてやがんだ!?」

むしろここまでパチモンが現れておきながら、何故本人だけ不参加なのか。
クルーゼの謎選出には改めて理解が追い付かない。
仮面の裏で何を考えているのやら、訳の分からない主催者への苛立ちすらも闘争の熱へ変える。

(ダイゴさん…あなたの力も借ります…!)

狂った歴史に囚われた自分の解放に一役買った男へ、胸中で頭を下げる。
人の身には収まらない程の、否、人間だからこその大きなブレイブを少しの間貸して欲しい。
装着されたガブティラの頭部を模した武器、ガブティラファングを構える。
湧き上がる闘志がギラを敵の元へ送り届けた。

「これで終わりだ!俺様達が勝つ!」
「ほざきやがれ!キョウリュウレッドの猿真似如きで、俺が倒せるかよぉっ!」

骨のある連中だとは認めてやろう。
だがしかし、キョウリュウジャーの力を借りた程度で自分を倒せるなどと。
腹立たしい程のブレイブに溢れた宿敵達に近付けると、本気で思っているのなら。
ふざけた思い上がりを完膚なきまでに叩き潰す。
怒りが火炎の渦の如く巻き起こり、呪いの力の純度を高める。
決して枯れることのない負の泉こそ、ドゴルドをどこまでも高みへ昇らせるのだ。

(引き出してやるよ…あの力をもう一度…!いや何度だってなぁ……!)

忍者を一刀の元に下した光景がリピートされる。
あの時繰り出した力は鍛えて放てる技では無い、呪力の扱いへ今以上に慣れたとて毎回出せるとは限らない。
アレは技ではなく現象、様々な要因が揃いようやく発生する力。
だから出そうと試みても、思い通りになる保障は全くない。

なれどドゴルドは今、己の怒りがよりドス黒く染まるのを感じる。
因縁深いからこそ、自分を幾度も追い詰めたからこそ。
キョウリュウジャーの真似事に出た相手が、無性に腹立たしくて仕方ない。

己に宿る呪力がより洗練されていく。
ここに来ての尋常ならざる強化を前に、だが今更ギラも止まれない。
獣電竜の力を宿す拳が打つか、呪力を流した刀が斬るか。
黒い火花は再び激怒戦騎へ微笑むのか。

王が突き進む、戦騎が迎え撃つ。
突き立てるべき牙が――





放たれる寸前、両者の間に何かが落ちて来た。





「えっ!?」
「……はぁ?」

急ブレーキを掛けたように足を止め、勢い余ってつんのめる。
倒れて地面へ転がるソレへぶつからないよう、ギラは必死に踏み止まった。
対するドゴルドもまた技の出し所をすっかり見失い、不機嫌を露わに睨む。


望まぬ形で激突を止められた両者の疑問を余所に、聖園ミカは激痛で声も出せなかった。

055:Reason for(中編) 投下順 055:絡みつく全てをJust Reset
時系列順
柊篝
聖園ミカ
花菱はるか
横山千佳
小宮果穂
チェイス
ギラ・ハスティー
ユフィリア・マゼンタ
朝比奈まふゆ
枢木スザク
激怒戦騎のドゴルド
パラド
仮面ライダーゼイン

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