民家内の安全を確認し終えると同行者へ手招きし、大丈夫だと伝える。
コクリと頷いた少女は周囲へ気を配りつつ、保護対象と共に足を踏み入れた。
音を抑えるように扉を閉め、先に中へ入った王と合流。
ようやく一息つけると分かり、はしたないと思われない程度に力を抜く。
コクリと頷いた少女は周囲へ気を配りつつ、保護対象と共に足を踏み入れた。
音を抑えるように扉を閉め、先に中へ入った王と合流。
ようやく一息つけると分かり、はしたないと思われない程度に力を抜く。
「二人共大丈夫?」
「はい、私は問題ありません。まふゆは…」
「わ、わたしも大丈夫だよ」
「はい、私は問題ありません。まふゆは…」
「わ、わたしも大丈夫だよ」
口にした言葉とは裏腹に小型の恐竜を強く抱きしめる様は、相応の恐怖を感じたのだと分かる。
ギラにもユフィリアにも、まふゆがそういった反応を見せるのは無理もないと思えた。
ギラにもユフィリアにも、まふゆがそういった反応を見せるのは無理もないと思えた。
風都で連続殺人事件を起こした男の支給品を回収後、方針を纏め旧幻夢本社へ向けて出発。
となったはいいものの、運の悪いことに出鼻を挫かれるアクシデントに見舞われた。
主催者が各エリアに配置し、参加者を襲うようにと指令をインプット済みのNPC。
その集団に出くわし戦闘へ発展。
無論、ギラもユフィリアもNPC複数体に梃子摺る程軟では無い。
問題なのは出現した数だ。
となったはいいものの、運の悪いことに出鼻を挫かれるアクシデントに見舞われた。
主催者が各エリアに配置し、参加者を襲うようにと指令をインプット済みのNPC。
その集団に出くわし戦闘へ発展。
無論、ギラもユフィリアもNPC複数体に梃子摺る程軟では無い。
問題なのは出現した数だ。
彼らを襲ったNPCとはミラーモンスターの一種、シアゴースト。
ヤゴの特性を備えたこのモンスター、一体一体の能力は然程高くなく動きも緩慢。
しかし個体数が非常に多く集団戦法を用いるのを殺し合いでも再現され、現れたのは10や20どころではない。
さながらライダーバトルが起こった世界で大量発生した時のよう。
加えて時間経過で飛行能力を宿す進化態、レイドラグーンへと脱皮。
トドメとばかりにミラーワールドを行き来可能な力も利用し、不意打ちを行う者も少なくなかった。
幼いまふゆを守りつつの戦闘で目的ルートの北部から外れ、どうにか全滅に追いやったが消耗は避けられない。
ギラとユフィリアだけならば体力的な余裕は十分あるが、まふゆに移動を強いるのは酷。
よって一度民家に立ち寄る事となった。
ヤゴの特性を備えたこのモンスター、一体一体の能力は然程高くなく動きも緩慢。
しかし個体数が非常に多く集団戦法を用いるのを殺し合いでも再現され、現れたのは10や20どころではない。
さながらライダーバトルが起こった世界で大量発生した時のよう。
加えて時間経過で飛行能力を宿す進化態、レイドラグーンへと脱皮。
トドメとばかりにミラーワールドを行き来可能な力も利用し、不意打ちを行う者も少なくなかった。
幼いまふゆを守りつつの戦闘で目的ルートの北部から外れ、どうにか全滅に追いやったが消耗は避けられない。
ギラとユフィリアだけならば体力的な余裕は十分あるが、まふゆに移動を強いるのは酷。
よって一度民家に立ち寄る事となった。
「いきなり災難だったね…」
「ええ……」
「ええ……」
とはいえ他の善良な参加者の安全確保に繋がると思えば、先の戦闘も無駄にはならない。
まして三人は知らないが、現代都市エリアには宇蟲王へ堕ちたギラもいた。
仮にもう一人のギラがシアゴーストの大群を見付けた場合、一匹残らず支配下に置かれただろう。
まして三人は知らないが、現代都市エリアには宇蟲王へ堕ちたギラもいた。
仮にもう一人のギラがシアゴーストの大群を見付けた場合、一匹残らず支配下に置かれただろう。
「おにいちゃん、おねえちゃん、ごめんなさい……」
「どうしてまふゆが謝るのですか?」
「どうしてまふゆが謝るのですか?」
落ち込んだ様子で突然の謝罪をされ、困惑気味に尋ねる。
謝るべきことなどこの少女は何もしていない。
意図が読めず聞き返すと、ビクリと震えながら口を開いた。
謝るべきことなどこの少女は何もしていない。
意図が読めず聞き返すと、ビクリと震えながら口を開いた。
「わたしが疲れちゃったから、またお休みしてるんだよね…?ふたりとも、はやく行きたいところがあるのに…」
先の戦闘でも、手強いギラ達よりまふゆを執拗に狙うレイドラグーンがいた。
ミニティラが守りはしたものの数が数だ、近付けさせないようギラ達も神経を張り詰め迎撃。
攫われはせず傷の一つも付いていないが、怪物の大群に襲われる光景はまふゆに少なくない恐怖を与えた。
そういった心身の疲弊に気を遣ってくれたと幼いながらに察し、二人の足を引っ張り申し訳なさを抱いている。
ミニティラが守りはしたものの数が数だ、近付けさせないようギラ達も神経を張り詰め迎撃。
攫われはせず傷の一つも付いていないが、怪物の大群に襲われる光景はまふゆに少なくない恐怖を与えた。
そういった心身の疲弊に気を遣ってくれたと幼いながらに察し、二人の足を引っ張り申し訳なさを抱いている。
「ごめんなさい…ふたりの邪魔をしちゃうわるい子で……」
「そんなことは……」
「そんなことは……」
悪い子、まさかそのような言葉が出るとは思わず言葉が詰まる。
潤んだ瞳から雫が零れ落ちるのも時間の問題。
そうなる前に、屈みこんで視線を合わせるのはギラ。
責めなくてもいいことで自分自身を責め、心に引っ掻き傷を作る。
まふゆがやろうとしているのを見過ごせない。
潤んだ瞳から雫が零れ落ちるのも時間の問題。
そうなる前に、屈みこんで視線を合わせるのはギラ。
責めなくてもいいことで自分自身を責め、心に引っ掻き傷を作る。
まふゆがやろうとしているのを見過ごせない。
「まふゆは悪い子なんかじゃないよ。恐い目に遭ったのに、僕達のことを考えてくれる優しい子だ」
「やさしい…?」
「うん。優しいのに悪い子なんて嘘を吐くなら、邪悪の王である俺様がこうしちまうぞ~!」
「うにゃっ!?くしゅぐったいよぉ」
「やさしい…?」
「うん。優しいのに悪い子なんて嘘を吐くなら、邪悪の王である俺様がこうしちまうぞ~!」
「うにゃっ!?くしゅぐったいよぉ」
柔らかい頬を軽く揉まれ、こそばゆさに自然と笑みが生まれる。
まるで仲の良い兄妹のようなやり取り。
まふゆが抱えたミニティラがギラの指に齧り付けば、バッと手を離しわざとらしく仰け反った。
まるで仲の良い兄妹のようなやり取り。
まふゆが抱えたミニティラがギラの指に齧り付けば、バッと手を離しわざとらしく仰け反った。
「ぬぅ!?小さくも強き竜よ、邪悪の王に楯突くとは良い度胸だ!」
さながら御伽噺の悪役を思わせる台詞へ、勇ましく咆える小さな獣電竜。
間近のやり取りはまふゆの暗い感情を徐々に薄め、年相応の無邪気な顔を取り戻す。
そんな様子を驚いたように見つめる瞳に気付き、齧られた指を擦りながらギラが問い掛けた。
間近のやり取りはまふゆの暗い感情を徐々に薄め、年相応の無邪気な顔を取り戻す。
そんな様子を驚いたように見つめる瞳に気付き、齧られた指を擦りながらギラが問い掛けた。
「ユフィリア?どうかした?」
「あ、い、いえ。何でもありません、失礼致しましたギラ様」
「あ、い、いえ。何でもありません、失礼致しましたギラ様」
取り繕うように頭を下げる。
無意識の内にか不躾な視線を向けていた自分を内心で叱咤。
異なる世界とはいえ一国の王、失礼があってはならないだろうに。
因みに名前もさん付けで呼ばれていたのだが、呼び捨てで構わないと伝えてある。
格式ばった事に拘らなくて良いとは言われたものの、国王へさん付けさせるのは幾ら何でも不敬。
婚約破棄された身なれど、次期王妃として徹底教育を受けたユフィリアは内心気が気でなかった。
無意識の内にか不躾な視線を向けていた自分を内心で叱咤。
異なる世界とはいえ一国の王、失礼があってはならないだろうに。
因みに名前もさん付けで呼ばれていたのだが、呼び捨てで構わないと伝えてある。
格式ばった事に拘らなくて良いとは言われたものの、国王へさん付けさせるのは幾ら何でも不敬。
婚約破棄された身なれど、次期王妃として徹底教育を受けたユフィリアは内心気が気でなかった。
(不思議な御方、ですね……)
それでもふと思ってしまうのは、目の前の王が自分の知る貴族とは大きく違うだからか。
子供と同じ目線に立ち、保護対象としてのみならず友のように接し心を開かせる。
同時に剣を握った際の立ち回りは武芸に秀でたユフィリアをして、見事と言わざるを得ない。
パレッティア王国の貴族が持たなければならない責任感を、彼も当然のものと宿していた。
子供と同じ目線に立ち、保護対象としてのみならず友のように接し心を開かせる。
同時に剣を握った際の立ち回りは武芸に秀でたユフィリアをして、見事と言わざるを得ない。
パレッティア王国の貴族が持たなければならない責任感を、彼も当然のものと宿していた。
何より印象深いのは、彼が口にした邪悪の王。
あくまで自らを鼓舞する為であり、素のギラは自分やまふゆと接する時の温厚な青年だとは分かる。
ギラが言う邪悪とは言葉通りの、他者を傷付け暴虐に振る舞う者ではない。
力による理不尽な服従を打ち破り、押し付けられた道を否定し自らの邪道で塗り変える。
型破りながら己の定めた王道を微塵も外れぬ姿勢。
あくまで自らを鼓舞する為であり、素のギラは自分やまふゆと接する時の温厚な青年だとは分かる。
ギラが言う邪悪とは言葉通りの、他者を傷付け暴虐に振る舞う者ではない。
力による理不尽な服従を打ち破り、押し付けられた道を否定し自らの邪道で塗り変える。
型破りながら己の定めた王道を微塵も外れぬ姿勢。
その姿に、どうしても元の世界に残した者達を思い浮かべる。
魔法の権威が根付く王国で、魔道具という貴族にとっての『邪道』を生んだアニスフィア。
貴族の横暴で腐りゆく国へ憤り、民が魔法という呪いに蝕まれる現状を変えようとしたアルガルド。
精霊信仰が引き裂いた、姉弟の決闘の結末を見たからこそ考えてしまった。
邪道を以て古の風習を終わらせ、民一人一人の為に尽力する王が、あの二人が手を取り合いパレッティア王国を変えたもしもの未来を。
魔法の権威が根付く王国で、魔道具という貴族にとっての『邪道』を生んだアニスフィア。
貴族の横暴で腐りゆく国へ憤り、民が魔法という呪いに蝕まれる現状を変えようとしたアルガルド。
精霊信仰が引き裂いた、姉弟の決闘の結末を見たからこそ考えてしまった。
邪道を以て古の風習を終わらせ、民一人一人の為に尽力する王が、あの二人が手を取り合いパレッティア王国を変えたもしもの未来を。
「……っ」
そう考えて、一瞬でもギラとアニスフィア達を比べようとした自分へ猛烈な嫌悪感を抱く。
アルガルドが事件を起こした原因の一つは、婚約者としての完璧ばかりを考えた自分が彼に歩み寄らなかったからだろうに。
己の至らなさへの怒りが意識せず顔に浮かんだのか、真正面のギラが驚くのが見えた。
アルガルドが事件を起こした原因の一つは、婚約者としての完璧ばかりを考えた自分が彼に歩み寄らなかったからだろうに。
己の至らなさへの怒りが意識せず顔に浮かんだのか、真正面のギラが驚くのが見えた。
「えっと、もしかしてさっきの提案に怒ってる…?ご、ごめん!当たり前だよね、あんな失礼なこと言うなんて…」
「え?……い、いえ!違います!戦力を考えれば間違っては…あ、頭をお上げください!国王陛下ともあろう御方が、私なぞにそのような……!」
「え?……い、いえ!違います!戦力を考えれば間違っては…あ、頭をお上げください!国王陛下ともあろう御方が、私なぞにそのような……!」
シアゴーストに襲われる前の移動中、ユフィリアに一つ相談を持ち掛けた。
回収した支給品、ドンブラスターの使用について。
自前のオージャカリバーがある自分はともかく、戦力強化の意味も込めて彼女に渡そうかと考えた。
生身でも剣術と魔法の二つを天才と称されるレベルで発揮するが、ドンブラスターで変身するメリットは大きい。
問題となるのは変身した場合、不可思議な制約により肉体の性別まで変わる一点。
そう伝えると難しい、というより引き攣った顔を浮かべられた。
回収した支給品、ドンブラスターの使用について。
自前のオージャカリバーがある自分はともかく、戦力強化の意味も込めて彼女に渡そうかと考えた。
生身でも剣術と魔法の二つを天才と称されるレベルで発揮するが、ドンブラスターで変身するメリットは大きい。
問題となるのは変身した場合、不可思議な制約により肉体の性別まで変わる一点。
そう伝えると難しい、というより引き攣った顔を浮かべられた。
「本当にごめん!忘れちゃって良いから…!」
「ギラ様がそうおっしゃられるなら……で、ですから頭をお上げください!」
「ギラ様がそうおっしゃられるなら……で、ですから頭をお上げください!」
冷静に考えなくても当たり前だ。
まだ15歳の少女へ一時的でも男の体になれなど、幾ら何でもデリカシーが無さ過ぎる。
王様戦隊の面々が見たら揃って呆れるに違いない、特にヒメノとリタからは何を言われるのやら。
謝られている当の本人は国王に頭を下げさせた現状へ、顔を真っ青にしそれどころではないが。
まだ15歳の少女へ一時的でも男の体になれなど、幾ら何でもデリカシーが無さ過ぎる。
王様戦隊の面々が見たら揃って呆れるに違いない、特にヒメノとリタからは何を言われるのやら。
謝られている当の本人は国王に頭を下げさせた現状へ、顔を真っ青にしそれどころではないが。
「ふたりともどうしちゃったのかなぁ?」
片方が全力で謝りもう片方は大慌て。
不思議な光景に首を傾げるまふゆの腕の中で、ミニティラは呆れたように首を振った。
不思議な光景に首を傾げるまふゆの腕の中で、ミニティラは呆れたように首を振った。
その後、どうにか落ち着きドンブラスターは一先ずギラが持ったままで話は纏まった。
休憩も十分済まし、頃合いを見計らって民家を出る。
当初は旧幻夢本社へ行くつもりだったが、現在位置から最も近いのは富良洲高校なる施設。
ならまずはそちらに向かい、物資の確保や協力者の捜索を行うと決定。
休憩も十分済まし、頃合いを見計らって民家を出る。
当初は旧幻夢本社へ行くつもりだったが、現在位置から最も近いのは富良洲高校なる施設。
ならまずはそちらに向かい、物資の確保や協力者の捜索を行うと決定。
通行人は存在しない、息が詰まる程に静まり返った街を行く。
三人と一体の足音以外は何も聞こえない空間を、どれくらい進んだ時か。
ミニティラが唸り声を上げ、ギラとユフィリアも揃って同じ方を睨む。
彼らの様子にただならぬものを感じ、震えるまふゆを背に庇う。
三人と一体の足音以外は何も聞こえない空間を、どれくらい進んだ時か。
ミニティラが唸り声を上げ、ギラとユフィリアも揃って同じ方を睨む。
彼らの様子にただならぬものを感じ、震えるまふゆを背に庇う。
自分達以外の気配が濃くなった。
またNPCか、今度こそ参加者か。
友好的な者か、主催者の甘言に惑わされ殺戮に手を染めんとする輩か。
腰に下げた剣をいつでも抜けるよう意識し、気配の正体がなにかを見極める。
またNPCか、今度こそ参加者か。
友好的な者か、主催者の甘言に惑わされ殺戮に手を染めんとする輩か。
腰に下げた剣をいつでも抜けるよう意識し、気配の正体がなにかを見極める。
(騎士の方、でしょうか?)
豪奢な青い外套を羽織り、白を基調とした衣服に身を包んだ青年。
学院に通っているだろう若さだが、パレッティア王国では見慣れぬ人種。
誉ある騎士団の一員、そう言い切るには余りに昏い目だ。
どれ程の絶望を味わったのか、どれ程の憎悪を抱え込んでいるのか。
血を分けた家族と殺し合った元婚約者の顔が、名も知らぬ青年に重なる。
学院に通っているだろう若さだが、パレッティア王国では見慣れぬ人種。
誉ある騎士団の一員、そう言い切るには余りに昏い目だ。
どれ程の絶望を味わったのか、どれ程の憎悪を抱え込んでいるのか。
血を分けた家族と殺し合った元婚約者の顔が、名も知らぬ青年に重なる。
「……」
ギラ一行の姿を捉え、相手も取るべき行動を決めあぐねる。
己の最終目的は勝ち残って理想の世界を創ること。
その過程で、許し難き嘗ての親友を討つ。
優勝と復讐、共に妥協は出来なくとも至るまでに取れる手は千差万別。
善良な仮面を被り、他者を欺き復讐に役立てる。
誰彼構わず剣を向ける必要も無い、時が来るまで牙を研ぎここぞの場面まで温存するのも悪手に非ず。
己の最終目的は勝ち残って理想の世界を創ること。
その過程で、許し難き嘗ての親友を討つ。
優勝と復讐、共に妥協は出来なくとも至るまでに取れる手は千差万別。
善良な仮面を被り、他者を欺き復讐に役立てる。
誰彼構わず剣を向ける必要も無い、時が来るまで牙を研ぎここぞの場面まで温存するのも悪手に非ず。
「……っ!」
『SET AVENGE』
そう理解して尚も、この道しか選べない。
トリニティの魔女から冷たく吐き捨てられ、シビトと化した刀使と斬り合い、己の方針に疑問を抱いたのは事実。
優先順位を考えようとし、なれど脳裏に焼き付く地獄の如き光景が魂を狂気から離そうとしない。
トリニティの魔女から冷たく吐き捨てられ、シビトと化した刀使と斬り合い、己の方針に疑問を抱いたのは事実。
優先順位を考えようとし、なれど脳裏に焼き付く地獄の如き光景が魂を狂気から離そうとしない。
「変身…!」
『BLACK GENERAL BUJIN SWORD』
消し飛ばされたトウキョウ租界。
敵も味方も、あろうことか戦いとは無関係の者の命まで奪った。
背負いきれない、決して消えない罪の重さが突き動かす。
数多の屍を積み重ねてでも、望む世界を実現させろと。
でなければ最早、マトモに立つことすら出来なくなるのだから。
敵も味方も、あろうことか戦いとは無関係の者の命まで奪った。
背負いきれない、決して消えない罪の重さが突き動かす。
数多の屍を積み重ねてでも、望む世界を実現させろと。
でなければ最早、マトモに立つことすら出来なくなるのだから。
「理想の世界の為に、ここで死んでくれ…俺には結局、こうする以外にないんだ…!」
『READY FIGHT』
東の少女へ、歌姫へ、魔女へ、己の心を揺さぶった者達へ叫ぶ。
ナイトオブセブン、その称号も最早フレイヤを使った大虐殺の前には塵に等しい。
過程を重視した青年の面影は大罪により砕かれた。
仮面ライダータイクーン・フジンソードに姿を変え、枢木スザクが殺意を撒き散らす。
ナイトオブセブン、その称号も最早フレイヤを使った大虐殺の前には塵に等しい。
過程を重視した青年の面影は大罪により砕かれた。
仮面ライダータイクーン・フジンソードに姿を変え、枢木スザクが殺意を撒き散らす。
漆黒の将軍の降臨に、王達も戦うしかないと理解。
剣を抜き、来る刃に備えようとし、
剣を抜き、来る刃に備えようとし、
「わぁ~!人がいたでちゅ~!」
「え、な、何?」
突然聞こえた舌足らずな声。
今正に戦闘が始まるこのタイミングで、空気を完全にぶち壊す。
敵の仲間かと疑うも、どうやら向こうも覚えはない様子。
ギラ達同様、困惑を隠さずに声が聞こえた方へ顔を動かした。
皇神楽耶と妙に似ている声だが、当然ながら彼女な筈はない。
今正に戦闘が始まるこのタイミングで、空気を完全にぶち壊す。
敵の仲間かと疑うも、どうやら向こうも覚えはない様子。
ギラ達同様、困惑を隠さずに声が聞こえた方へ顔を動かした。
皇神楽耶と妙に似ている声だが、当然ながら彼女な筈はない。
そこにいたのは人ではない、しかし先のミラーモンスターとも違う存在。
ずんぐりとした、まるで着ぐるみを思わせる体型。
青い瞳は大きくくりくりとしており、丸い頬はピンク色。
おしゃぶりを咥え、天使の羽にも似た髪の何とも奇妙な赤ん坊。
一目で人でないのが明らかであれど、庇護欲を大いに刺激する愛らしさがあった。
ずんぐりとした、まるで着ぐるみを思わせる体型。
青い瞳は大きくくりくりとしており、丸い頬はピンク色。
おしゃぶりを咥え、天使の羽にも似た髪の何とも奇妙な赤ん坊。
一目で人でないのが明らかであれど、庇護欲を大いに刺激する愛らしさがあった。
「うわぁ!かわいい~!」
現れたのは、遊園地のマスコットキャラクターと言われても違和感のない存在。
不安気な顔から一転、まふゆはキラキラと目を輝かせる。
抱きしめたミニティラが不機嫌そうに咆えた。
不安気な顔から一転、まふゆはキラキラと目を輝かせる。
抱きしめたミニティラが不機嫌そうに咆えた。
「あいつも敵…なのか?」
「…………はっ、え、ええ、油断は禁物ですね」
「…………はっ、え、ええ、油断は禁物ですね」
反応が妙に遅く訝し気に見やれば、ユフィリアの目が泳いでいる。
先程に比べて頬にも赤みが増しており、気を引き締め直さんと頭を振った。
先程に比べて頬にも赤みが増しており、気を引き締め直さんと頭を振った。
(なんでしょうこの奇妙な感覚は……)
まふゆ程分かり易くは無いが、謎のNPCを見ていると戦意が途端に薄れ出す。
傷付ける事の憚れる愛くるしさに、油断すれば剣を落としそうだ。
これでは駄目だと自身に言い聞かせようにも、NPCの姿が視界に映る度に胸が熱くなり落ち着かない。
傷付ける事の憚れる愛くるしさに、油断すれば剣を落としそうだ。
これでは駄目だと自身に言い聞かせようにも、NPCの姿が視界に映る度に胸が熱くなり落ち着かない。
その状態こそ敵の望むものだと、直ぐに思い知る羽目となる。
「今でちゅ!ガラガラビーム!」
「なっ!?」
「なっ!?」
緩い空気を一気に引き締めさせたのは、NPCが放った光線。
手に持った赤ん坊の玩具、ガラガラから熱線が襲う。
アスファルトへ命中し、火花が弾け全員の視界を覆い隠す。
生まれた僅かな隙でNPCは動き、まふゆの腕を掴んで引き寄せた。
妨害に出たミニティラをガラガラで殴り、一目散に去って行く。
手に持った赤ん坊の玩具、ガラガラから熱線が襲う。
アスファルトへ命中し、火花が弾け全員の視界を覆い隠す。
生まれた僅かな隙でNPCは動き、まふゆの腕を掴んで引き寄せた。
妨害に出たミニティラをガラガラで殴り、一目散に去って行く。
「こいつはもらってくでちゅ!お前達から引き離して悲しませた後で、ジ・エンドにしてやるでちゅよ~!」
「っ!?や、やだ!離して!」
「っ!?や、やだ!離して!」
可愛らしい見た目の裏の本性にようやく気付き、藻掻くも無駄な抵抗だ。
ガッチリと捕らえられ見る見る内にギラ達から遠ざかる。
この体系で何故こうも早く逃げられるのか疑問に思うも、下を見れば即座に解消。
自分の体が宙に浮いている、より正確に言うならNPCが飛行していた。
ガッチリと捕らえられ見る見る内にギラ達から遠ざかる。
この体系で何故こうも早く逃げられるのか疑問に思うも、下を見れば即座に解消。
自分の体が宙に浮いている、より正確に言うならNPCが飛行していた。
見た目こそ愛くるしい赤ん坊だが、NPCの正体は間違っても天使などではない。
獣電戦隊の宿敵、デーボス軍が生み出したデーボモンスターのデーボ・キャワイーンである。
元の世界では幼い子供から親を引き離し、悲しみの感情を集める目的で動いていたが此度の舞台は殺し合い。
デーボス復活の為の感情エネルギーは必要無く、ましてこのデーボ・キャワイーンはオリジナルに近い形で再現されたNPC。
幼い子供の参加者を仲間の元から連れ去り、悲しませてから殺すというオリジナルとは別ベクトルで質の悪い目的で動くよう設定を受けた。
獣電戦隊の宿敵、デーボス軍が生み出したデーボモンスターのデーボ・キャワイーンである。
元の世界では幼い子供から親を引き離し、悲しみの感情を集める目的で動いていたが此度の舞台は殺し合い。
デーボス復活の為の感情エネルギーは必要無く、ましてこのデーボ・キャワイーンはオリジナルに近い形で再現されたNPC。
幼い子供の参加者を仲間の元から連れ去り、悲しませてから殺すというオリジナルとは別ベクトルで質の悪い目的で動くよう設定を受けた。
「まふゆ!」
「くっ、さっきのは魅了魔法の…!」
「くっ、さっきのは魅了魔法の…!」
姿を見ただけで急激に庇護欲を刺激されたのは、嘗ての婚約破棄騒動の原因の一つと同様。
他者を魅了し正常な思考を奪い去る、ヴァンパイアの魔石。
レイニ・シアンと似た術にまんまと嵌ってしまった。
厄介なのはレイニと違い、あのNPCは己の力を自覚し利用している所か。
他者への判断に徹底して感情を抜いた学院時代と違い、離宮での生活で自分の感情を出すようになった事が、却って能力の影響を受けやすくなったのは皮肉だろう。
己の失態を責めたいが、急いで追いかけまふゆを無事に取り戻す方が先決。
他者を魅了し正常な思考を奪い去る、ヴァンパイアの魔石。
レイニ・シアンと似た術にまんまと嵌ってしまった。
厄介なのはレイニと違い、あのNPCは己の力を自覚し利用している所か。
他者への判断に徹底して感情を抜いた学院時代と違い、離宮での生活で自分の感情を出すようになった事が、却って能力の影響を受けやすくなったのは皮肉だろう。
己の失態を責めたいが、急いで追いかけまふゆを無事に取り戻す方が先決。
「どこを見ている!」
「っ!」
「っ!」
だというのに漆黒の将軍が道を開けようとしない。
レイピアとも違う細身の剣、武刃の一撃をギラが防ぐ。
得物は自身の方が厚く重量もある筈なのに、異様な重さを感じる。
今はそれどころじゃ無いと、言うだけ無駄な気迫を間近でぶつけられればどう動くかを即断。
武刃を防いだまま仲間に叫ぶ。
レイピアとも違う細身の剣、武刃の一撃をギラが防ぐ。
得物は自身の方が厚く重量もある筈なのに、異様な重さを感じる。
今はそれどころじゃ無いと、言うだけ無駄な気迫を間近でぶつけられればどう動くかを即断。
武刃を防いだまま仲間に叫ぶ。
「こいつは僕が引き受ける!ユフィリア達はあっちを追ってくれ!」
「…っ。承知いたしました!どうかご武運を!行きますよミニティラ!」
「…っ。承知いたしました!どうかご武運を!行きますよミニティラ!」
ギラ一人を残す躊躇を抱くも、迷えばその分危険に陥るのはまふゆだ。
会って数時間かそこらの少女で、ギラのような国家の運営に大きく関わる人間ではない。
争いとは一切無縁で平和に暮らしていた、自身の世界で言う所の平民。
なれど犠牲の容認を認める程、人でなしになったつもりはない。
親元から無理やり引き離された挙句、望まぬ殺し合いの地で息絶える。
力無き善良な少女がそのような理不尽極まる末路を強いられるなら、手遅れになる前に阻止してみせるまで。
会って数時間かそこらの少女で、ギラのような国家の運営に大きく関わる人間ではない。
争いとは一切無縁で平和に暮らしていた、自身の世界で言う所の平民。
なれど犠牲の容認を認める程、人でなしになったつもりはない。
親元から無理やり引き離された挙句、望まぬ殺し合いの地で息絶える。
力無き善良な少女がそのような理不尽極まる末路を強いられるなら、手遅れになる前に阻止してみせるまで。
ミニティラを肩に乗せ駆け出す。
敵は空を自在に飛び回り、遠く遠くへと向かう。
飛行魔法は自分でさえ制御に苦労するものだというのに、まさかあんなNPCが簡単に実現するとは。
ある意味この光景をアニスフィアに見せずに済み、良かったと言えるのかもしれない。
敵は空を自在に飛び回り、遠く遠くへと向かう。
飛行魔法は自分でさえ制御に苦労するものだというのに、まさかあんなNPCが簡単に実現するとは。
ある意味この光景をアニスフィアに見せずに済み、良かったと言えるのかもしれない。
ユフィリア達の離脱を確認し、タイクーンの腹部を蹴り付ける。
ダメージは一切期待出来ないがそれでいい、反動を利用し後退。
一刀を防げば生身のまま相手取るのは悪手と理解。
剣のトリガーに指を掛け、こちらも王の戦装束を身に纏う。
ダメージは一切期待出来ないがそれでいい、反動を利用し後退。
一刀を防げば生身のまま相手取るのは悪手と理解。
剣のトリガーに指を掛け、こちらも王の戦装束を身に纏う。
『Qua God!』
「王鎧武装!」
『You are the KING You are the You are the KING!』
『クワガタオージャー!』
纏う装甲は灼熱の赤。
熱風により肩から垂らしたマントが靡き、黒のバイザーが敵を捉える。
守るべき民へ剣が向けられるならば、同じく剣を以てして守護するのみ。
シュゴッダム王国が誇る王ギラ・ハスティーのもう一つの姿、クワガタオージャーがここに降臨。
熱風により肩から垂らしたマントが靡き、黒のバイザーが敵を捉える。
守るべき民へ剣が向けられるならば、同じく剣を以てして守護するのみ。
シュゴッダム王国が誇る王ギラ・ハスティーのもう一つの姿、クワガタオージャーがここに降臨。
「あああああああああああっ!」
レイズバックルや起動鍵とは異なる変身方法に、然したる驚きは抱かない。
相手が誰であろうと屍に変え、理想の世界の礎とする。
タイクーンが自分以外の参加者に求めるのは死以外になく、対話の余地を入り込ませはしない。
悲鳴染みた絶叫を上げ突撃、纏った鎧ごと叩っ斬る勢いで刀を振り下ろす。
相手が誰であろうと屍に変え、理想の世界の礎とする。
タイクーンが自分以外の参加者に求めるのは死以外になく、対話の余地を入り込ませはしない。
悲鳴染みた絶叫を上げ突撃、纏った鎧ごと叩っ斬る勢いで刀を振り下ろす。
「はあっ!」
自らへの鼓舞を籠め、短くも力強い一声と共に迎え撃つ。
王の身を走る下賤な刃は届かせない。
ブジンソードの専用拡張装備、武刃は並の防御を容易く突破し切り刻む。
なれどクワガタオージャーの得物も並に非ず。
選ばれし王の証、オージャカリバーの切断は如何に最終形態のタイクーンとて困難を極める。
刃同士が衝突し互いに砕けず拮抗。
王の身を走る下賤な刃は届かせない。
ブジンソードの専用拡張装備、武刃は並の防御を容易く突破し切り刻む。
なれどクワガタオージャーの得物も並に非ず。
選ばれし王の証、オージャカリバーの切断は如何に最終形態のタイクーンとて困難を極める。
刃同士が衝突し互いに砕けず拮抗。
どちらも相手の優勢を許すつもりは無い。
余計な小細工を用いず、真正面から斬り勝利を収める。
共通したファイトスタイルの両者が腕に力を籠め、競り勝ったのは真紅の王。
押し返し僅かによろけたタイクーンへ一撃を見舞う。
余計な小細工を用いず、真正面から斬り勝利を収める。
共通したファイトスタイルの両者が腕に力を籠め、競り勝ったのは真紅の王。
押し返し僅かによろけたタイクーンへ一撃を見舞う。
「舐めるなぁっ!」
隙をこじ開けられたなら、再度埋め直せば良い。
袈裟斬りに対し武刃を切り上げ、弾き返し逆にがら空きの胴を作る。
王の鎧だろうと関係無い、願いへの重さが宿った斬撃が襲う。
袈裟斬りに対し武刃を切り上げ、弾き返し逆にがら空きの胴を作る。
王の鎧だろうと関係無い、願いへの重さが宿った斬撃が襲う。
上半身を軽く捩って躱し斬り付けるも、手元へ戻した武刃で防御。
重厚な装甲に反し動きの一つ一つが速い。
しかし速さと言うならクワガタオージャーとて引けは取らず、四方八方より怒涛の攻めを繰り出す。
耐久性と動きやすさの両立を実現させた、王の装束だから叶う動きだ。
重厚な装甲に反し動きの一つ一つが速い。
しかし速さと言うならクワガタオージャーとて引けは取らず、四方八方より怒涛の攻めを繰り出す。
耐久性と動きやすさの両立を実現させた、王の装束だから叶う動きだ。
対するタイクーンの動きも激しく、それでいて的確。
剣を防ぎ、隙を見極め斬り付け、時折刃が当たるも微動だにしない。
分厚い装甲は決して見掛け倒しに非ず、歴戦のライダーの攻撃すら弾く強度だ。
変身者が桜井景和でなくとも、性能の高さは変わらない。
攻めに転じた筈が肝心の剣の効きが悪く、敵の勢いを削げずに却って反撃の手を許すばかり。
徐々にクワガタオージャーの不利へ傾き、仮面の下で一筋の汗が滴り落ちる。
剣を防ぎ、隙を見極め斬り付け、時折刃が当たるも微動だにしない。
分厚い装甲は決して見掛け倒しに非ず、歴戦のライダーの攻撃すら弾く強度だ。
変身者が桜井景和でなくとも、性能の高さは変わらない。
攻めに転じた筈が肝心の剣の効きが悪く、敵の勢いを削げずに却って反撃の手を許すばかり。
徐々にクワガタオージャーの不利へ傾き、仮面の下で一筋の汗が滴り落ちる。
(何だこの動き……)
言動や態度から精神的な余裕はゼロに近く、何かに追いつめられるように自分達を襲った。
心の迷いはダイレクトに剣へ出る。
シュゴッダムの王城でラクレスから王の証を奪い、今日に至るまで戦ったが故に味わって来たことだ。
だというのにタイクーンの剣筋は精神の脆さとは正反対に鋭い。
何がここまでの強さを引き出しているのか。
変身者自身の戦闘センスも勿論理由の一つだろうが、何よりも纏った装甲による所が大きい。
心の迷いはダイレクトに剣へ出る。
シュゴッダムの王城でラクレスから王の証を奪い、今日に至るまで戦ったが故に味わって来たことだ。
だというのにタイクーンの剣筋は精神の脆さとは正反対に鋭い。
何がここまでの強さを引き出しているのか。
変身者自身の戦闘センスも勿論理由の一つだろうが、何よりも纏った装甲による所が大きい。
デザグラに登録されたライダーの中でも上位の基本スペック。
胸部の拡張装備が己が刀一本での制圧を可能とする戦闘力を付与。
各部装甲箇所は防御面のみならず、剣技を用いる上での理想的な体捌きを実現。
更には頭部に搭載した機能が間合いの敵を斬る最適なアシストを行う。
標的を斬り倒す、その一点に特化し調整を施されたのがブジンソード。
安定から程遠い精神のスザクを最大限に補強し、油断ならない強さを発揮可能としている。
胸部の拡張装備が己が刀一本での制圧を可能とする戦闘力を付与。
各部装甲箇所は防御面のみならず、剣技を用いる上での理想的な体捌きを実現。
更には頭部に搭載した機能が間合いの敵を斬る最適なアシストを行う。
標的を斬り倒す、その一点に特化し調整を施されたのがブジンソード。
安定から程遠い精神のスザクを最大限に補強し、油断ならない強さを発揮可能としている。
未完成ながら創世の女神の力で生み出されたバックルだ、クワガタオージャーでも易々と勝てる相手ではない。
とはいえ未だに命を奪われず、伸ばされる死への誘いを跳ね除けるのもギラの強さの証明。
タイクーンがレイズバックルの機能で剣術を発揮するなら、ギラの剣はこれまでの実戦に裏打ちされたもの。
バグナラクや宇蟲五道化相手に繰り広げた死闘、時には実兄ラクレス・ハスティーとの決闘。
数々の戦いにおいて剣は常に王様戦隊と共にあった。
クワガタオージャーに変身しての強化のみに頼らない、ギラ自身が磨き上げた技でタイクーンに食らい付く。
とはいえ未だに命を奪われず、伸ばされる死への誘いを跳ね除けるのもギラの強さの証明。
タイクーンがレイズバックルの機能で剣術を発揮するなら、ギラの剣はこれまでの実戦に裏打ちされたもの。
バグナラクや宇蟲五道化相手に繰り広げた死闘、時には実兄ラクレス・ハスティーとの決闘。
数々の戦いにおいて剣は常に王様戦隊と共にあった。
クワガタオージャーに変身しての強化のみに頼らない、ギラ自身が磨き上げた技でタイクーンに食らい付く。
『BUJIN SWORD STRIKE』
数歩の所で届かない現状に苛立ったのか、一際強く相手を弾き飛ばしタイクーンが勝負に出る。
バックルを操作し必殺のエネルギーを得物に付与。
円を描くように武刃を振るい、真正面から斬り込む。
シンプルながら仮面ライダーバッファを打ち破った、強力無比な斬撃だ。
バックルを操作し必殺のエネルギーを得物に付与。
円を描くように武刃を振るい、真正面から斬り込む。
シンプルながら仮面ライダーバッファを打ち破った、強力無比な斬撃だ。
『OHGER FINISH!』
高威力の技の発動を察知し、クワガタオージャーもトリガーに指を掛ける。
友にして相棒、ゴッドクワガタのエネルギーを刀身に纏わせ振り下ろす。
バグナラクとの戦いで強敵達を屠った刃が、武刃と真っ向から激突。
ほんの少しでも気を逸らせば即座に牙が突き立てられる、故に双方敵から目を逸らさない。
一歩たりとも押し負けまいと腕に力を漲らせる。
友にして相棒、ゴッドクワガタのエネルギーを刀身に纏わせ振り下ろす。
バグナラクとの戦いで強敵達を屠った刃が、武刃と真っ向から激突。
ほんの少しでも気を逸らせば即座に牙が突き立てられる、故に双方敵から目を逸らさない。
一歩たりとも押し負けまいと腕に力を漲らせる。
「どうして君は……この強さを殺し合いの為に使うんだ…!?」
鍔迫り合いの最中、苦し気ながらも王が問う。
自分自身を追い詰めているとしか思えない叫びを聞き、問わずにはいられなかった。
自分自身を追い詰めているとしか思えない叫びを聞き、問わずにはいられなかった。
「守るべき子供や…優しい人達を犠牲にして…!羂索達の言い成りになって理想を叶えたって、そこは虚構に満ちた今以上の地獄じゃないのか!?」
「っ!そんなことはお前に言われるまでもない!!」
「っ!そんなことはお前に言われるまでもない!!」
糾弾とも取れる王の言葉に、騎士も堪らず叫び返す。
自分の選択が正しさとは程遠いなど、本当は分かっている。
親友を殺すだけではない、他の無関係な人達まで手に掛け、願いを叶えてくれる保障のない連中に首を垂れるのだから。
自分の選択が正しさとは程遠いなど、本当は分かっている。
親友を殺すだけではない、他の無関係な人達まで手に掛け、願いを叶えてくれる保障のない連中に首を垂れるのだから。
「だとしても、俺にはもうこれしか残っていないんだ!ここで止まったら、躊躇したら俺は何の為に……!」
「そうやって突き進んでも、君自身は救われないだろう!」
「そうやって突き進んでも、君自身は救われないだろう!」
激情に支配された頭が、瞬く間に困惑で染まる。
何を言われたのか理解出来ないとでも言う風に、仮面越しに相手を見やった。
何を言われたのか理解出来ないとでも言う風に、仮面越しに相手を見やった。
「僕は君が何をやったのか、何がそこまで君を追い立てるのかは知らない。だけど…!」
罪を犯した者には相応の罰を下さねばならないのを、否定するつもりはない。
形はどうあれ悪事に手を染めたのなら、償いが求められるのだって当たり前だ。
だがしかし、罪の重さに圧し潰され苦しんでいる者が救われてはならないと言うのは、違うと断言出来る。
形はどうあれ悪事に手を染めたのなら、償いが求められるのだって当たり前だ。
だがしかし、罪の重さに圧し潰され苦しんでいる者が救われてはならないと言うのは、違うと断言出来る。
「自分のやった事で君が道を見失っているなら、僕はそれを見過ごせない…!」
守る為とはいえ人間を手に掛け、罪悪感に苦しむギラだからこそ。
ともすれば自分以上の苦痛に苛まれ、血を吐きながら更に罪を重ねようとする相手を放っては置けない。
彼に何らかの罰が下されるとしても、過去の行いが消えないとしても。
ここで止めなければきっと、進んだ先で彼は今以上の後悔と絶望を味わう。
ともすれば自分以上の苦痛に苛まれ、血を吐きながら更に罪を重ねようとする相手を放っては置けない。
彼に何らかの罰が下されるとしても、過去の行いが消えないとしても。
ここで止めなければきっと、進んだ先で彼は今以上の後悔と絶望を味わう。
「な、ん……」
王の言葉は罪の追及以上に深くスザクへ突き刺さる。
幼少時に父を殺して以来、罪の意識は絶えず付き纏って来た。
結果の為には何よりも過程を重視する価値観を生み、それすらフレイヤ発射で崩れ去った。
許される筈が無い、手を差し伸べられていい訳がないと誰よりもスザク自身がそう考えている。
幼少時に父を殺して以来、罪の意識は絶えず付き纏って来た。
結果の為には何よりも過程を重視する価値観を生み、それすらフレイヤ発射で崩れ去った。
許される筈が無い、手を差し伸べられていい訳がないと誰よりもスザク自身がそう考えている。
なのに目の前の青年は、よりにもよってそんな自分にも救いがあるべきと言ってのけた。
ふざけるなと言い返そうにも、肝心の言葉が喉の奥でつっかえ出て来ない。
仮面でお互いの顔が見えずとも、間近で感じられる気迫で理解できる。
この男はふざけているのでも半端な同情から告げたのでもない、ありのままの本心をぶつけたのだと。
ふざけるなと言い返そうにも、肝心の言葉が喉の奥でつっかえ出て来ない。
仮面でお互いの顔が見えずとも、間近で感じられる気迫で理解できる。
この男はふざけているのでも半端な同情から告げたのでもない、ありのままの本心をぶつけたのだと。
「僕は……」
声が震える、真っ直ぐな王の前へ立ち続けるのにどうしようもない後ろめたさが宿る。
伸ばされた手を、己の過ちを正す刃を――
伸ばされた手を、己の過ちを正す刃を――
「……無理だ!全部無理なんだよ!」
脳裏に焼き付き離れない、地獄の如き光景が跳ね除ける。
死体一つ残らず焼き払われたトウキョウ租界が、手を取る選択をスザクに取らせない。
ルルーシュに掛けられたギアスが原因だとしても、フレイヤを撃った事実には変わらない。
あの光景を生み出したのは他でもない己だと、覆せない罪がスザクを勝利へ突き動かす。
死体一つ残らず焼き払われたトウキョウ租界が、手を取る選択をスザクに取らせない。
ルルーシュに掛けられたギアスが原因だとしても、フレイヤを撃った事実には変わらない。
あの光景を生み出したのは他でもない己だと、覆せない罪がスザクを勝利へ突き動かす。
「お前も僕の願いの為に、ここで死ね!!!」
「ぐう…!?」
「ぐう…!?」
王者の顎を砕き、武刃が王の装束を食い千切る。
血飛沫のように火花を散らし吹き飛び、地へ背中を付けた。
クワガタオージャーから生身へと戻り、節々の痛みに低く呻く。
血飛沫のように火花を散らし吹き飛び、地へ背中を付けた。
クワガタオージャーから生身へと戻り、節々の痛みに低く呻く。
(勢いを殺してこれか……!)
オージャカリバーとの打ち合いで幾分か削がれたにも関わらず、変身解除へ持っていかれる威力。
不死身の肉体を持つとはいえ、痛みを感じない訳ではない。
まして制限を受けた殺し合いでは、いつ死者へ名を連ねてもおかしくはない。
苛む痛みを噛み殺し、剣を支えに立ち上がる。
敵が健在な以上は呑気に転がっていられない、再度クワガタオージャーの鎧を纏う。
不死身の肉体を持つとはいえ、痛みを感じない訳ではない。
まして制限を受けた殺し合いでは、いつ死者へ名を連ねてもおかしくはない。
苛む痛みを噛み殺し、剣を支えに立ち上がる。
敵が健在な以上は呑気に転がっていられない、再度クワガタオージャーの鎧を纏う。
意識を逸らしたのは、懐から転がり落ちた一丁の銃だった。
「……」
それを使うことを全く考えなかったとは言わない。
力を借りたとしても、別に責められるものでもない。
ただ自分は既に、シュゴッダムの王として殺し合いの打破を決意した身。
故に王様戦隊としての姿以外になる気はないと、そう考えた。
力を借りたとしても、別に責められるものでもない。
ただ自分は既に、シュゴッダムの王として殺し合いの打破を決意した身。
故に王様戦隊としての姿以外になる気はないと、そう考えた。
(いや、でもそうか……)
しかし、しかしだ。
定められたルールだけに従い、型に嵌ったやり方へ馬鹿正直に従う。
そんなものが自分らしいかと言うなら、否と答えざるを得ない。
押し付けられた正道とは相反する邪道こそ、己にとっての武器ではないか。
定められたルールだけに従い、型に嵌ったやり方へ馬鹿正直に従う。
そんなものが自分らしいかと言うなら、否と答えざるを得ない。
押し付けられた正道とは相反する邪道こそ、己にとっての武器ではないか。
いつの間にやら凝り固まっていた頭につい苦笑いを浮かべ、銃を拾う。
僅かな躊躇が生まれるも、脳裏へ浮かぶは破天荒な男の顔。
都合の良い妄想と言われたら否定できない。
燻る後ろ向きな想いを掻き消すように、不敵な笑みで男が言った。
僅かな躊躇が生まれるも、脳裏へ浮かぶは破天荒な男の顔。
都合の良い妄想と言われたら否定できない。
燻る後ろ向きな想いを掻き消すように、不敵な笑みで男が言った。
――『面白い、お前が俺の力に恥じない戦いが出来るか見ていてやろう!』
「……ああ!しかと見ていろ桃井タロウ!貴様の度肝を抜いてくれるわ!」
負けじと笑みを浮かべ、ドンブラスターにギアを装填。
慣れた変身方法と全く違う工程を挟む、
王様戦隊とは異なる世界で戦い抜いた、赤き戦士へ姿を変える時だ。
慣れた変身方法と全く違う工程を挟む、
王様戦隊とは異なる世界で戦い抜いた、赤き戦士へ姿を変える時だ。
「アバターチェンジ!」
『いよぉー!どん!どん!どん!どんぶらこ!アバタロウ!』
『ドンモモタロウ!よっ!日本一!』
クワガタオージャー同様の赤いスーツ、なれど姿は完全に別物。
侍を思わせる丁髷が頭部から突き出し、額にはメタリックな桃の装飾。
瞳を隠す巨大なサングラスは、これまた桃の葉と桃尽くし。
破天荒なドン王家の末裔、ドンモモタロウが異界の地に立つ。
侍を思わせる丁髷が頭部から突き出し、額にはメタリックな桃の装飾。
瞳を隠す巨大なサングラスは、これまた桃の葉と桃尽くし。
破天荒なドン王家の末裔、ドンモモタロウが異界の地に立つ。
右手には専用装備のサングラソード、左手にはギラ本来の得物であるオージャカリバー。
元の変身者とは違う双剣スタイルで構えを取る。
勝負はここから、新たな祭りの始まりだ。
元の変身者とは違う双剣スタイルで構えを取る。
勝負はここから、新たな祭りの始まりだ。
「姿を変えたからなんだ…!」
「邪悪の王が繋いだ縁の力を甘く見るなよ!」
「邪悪の王が繋いだ縁の力を甘く見るなよ!」
啖呵を切り合い疾走、間合いに入るや否や刃が激突。
タイクーンの戦法はこれまで同じ。
武刃一本での制圧を可能とする、極限まで引き上げられた剣技。
対するは二つの戦隊のリーダーの得物を組み合わせた二刀流。
先程までのクワガタオージャーと違うのは、手数が増えたことのみではない。
動作一つ一つがより荒々しく、全身を派手に動かしタイクーンを攻め立てる。
タイクーンの戦法はこれまで同じ。
武刃一本での制圧を可能とする、極限まで引き上げられた剣技。
対するは二つの戦隊のリーダーの得物を組み合わせた二刀流。
先程までのクワガタオージャーと違うのは、手数が増えたことのみではない。
動作一つ一つがより荒々しく、全身を派手に動かしタイクーンを攻め立てる。
「祭りだ祭りだ!貴様も派手に踊るがいい!」
高笑いを上げながら両腕を振るい、二方向より刃が襲来。
横薙ぎの武刃で弾き返し、踏み込み胸部へ切っ先を伸ばす。
突いたのは赤いスーツではなく熱気が漂う宙、空振りを悟ると同時に敵の位置を把握。
上体を倒し回避、そこから地面へ転がり込んで真横へ移動しての斬り付けが迫る。
横薙ぎの武刃で弾き返し、踏み込み胸部へ切っ先を伸ばす。
突いたのは赤いスーツではなく熱気が漂う宙、空振りを悟ると同時に敵の位置を把握。
上体を倒し回避、そこから地面へ転がり込んで真横へ移動しての斬り付けが迫る。
「それがどうした…!」
マントを翳しながらタイクーンも回避。
己の手元を隠し次の剣を読ませないまま蹴り付け、防いだ瞬間に再度突きを繰り出す。
真っ直ぐに向かう刃は真下からの切り上げで、タイクーンの意思と無関係に跳ね上げられた。
引き戻すまでの数秒あるかどうかの猶予を使い、ドンモモタロウが腹部へ蹴りを放つ。
己の手元を隠し次の剣を読ませないまま蹴り付け、防いだ瞬間に再度突きを繰り出す。
真っ直ぐに向かう刃は真下からの切り上げで、タイクーンの意思と無関係に跳ね上げられた。
引き戻すまでの数秒あるかどうかの猶予を使い、ドンモモタロウが腹部へ蹴りを放つ。
僅かに後退したタイクーンを追うように跳躍、宙で回転しつつ双剣を振るう。
勢いを乗せた刃は自身の得物を防御に回し防ぐ。
ドンモモタロウの着地を見据えたタイミングで武刃を振るうも、敵とてそう来るのは予測済み。
双剣を叩き付け己から力ませに遠ざけた。
防がれたなら当たるまで斬るだけ、そんなタイクーンの殺意へ応えるかのように双剣を振るう手を止めない。
勢いを乗せた刃は自身の得物を防御に回し防ぐ。
ドンモモタロウの着地を見据えたタイミングで武刃を振るうも、敵とてそう来るのは予測済み。
双剣を叩き付け己から力ませに遠ざけた。
防がれたなら当たるまで斬るだけ、そんなタイクーンの殺意へ応えるかのように双剣を振るう手を止めない。
「貴様を駆り立てるものも、貴様が過去に何をやったかも俺様は知らん!」
デザグラのライダーに拡張装備は数多くあれど、一点特化の極致はブジンソードのみ。
復讐心に突き動かされた願いが形となり、己のみで理想の世界を実現出来る力。
それこそがタイクーンの今の姿なのだから。
復讐心に突き動かされた願いが形となり、己のみで理想の世界を実現出来る力。
それこそがタイクーンの今の姿なのだから。
「だが!過去の行いを新たな罪で上塗りし、貴様個人の為に他者へ犠牲を強いるそのやり方は!」
武器の数で劣っていようと関係無い。
たとえ相手が複数人だろうと制圧し、ただ一人の勝者となる。
そうするだけの力を秘めたタイクーンに、姿を変え武器を増やした程度では敵わない。
その筈だった。
たとえ相手が複数人だろうと制圧し、ただ一人の勝者となる。
そうするだけの力を秘めたタイクーンに、姿を変え武器を増やした程度では敵わない。
その筈だった。
「つまらん!下らん!!気に食わん!!!」
だというのに現実はどうだ。
未だ敵を倒せない、刃が届いても膝を付かせず止められない。
双剣の勢いは加速し防御をすり抜け、装甲越しに騎士を切り裂く。
強固な耐久力を持つとはいえ幾度も刃が当たり続ければ、徐々に痛みは増し体力も削られる。
殺せる筈の相手に自身の剣が届かない現状は、タイクーンの焦りにも繋がった。
未だ敵を倒せない、刃が届いても膝を付かせず止められない。
双剣の勢いは加速し防御をすり抜け、装甲越しに騎士を切り裂く。
強固な耐久力を持つとはいえ幾度も刃が当たり続ければ、徐々に痛みは増し体力も削られる。
殺せる筈の相手に自身の剣が届かない現状は、タイクーンの焦りにも繋がった。
「軽い軽い!貴様の剣は軽い!確固たる意志なき剣など、幼子の振るう棒切れにも劣るわっ!」
「黙れ…!!」
「黙れ…!!」
互いに一際強く得物を叩きつけ合い、揃って後退。
逸る感情に背を押され、レイズバックルを操作。
一度は変身解除へ追いやった剣をもう一度食らわせるべく、武刃へエネルギーを纏わせる。
逸る感情に背を押され、レイズバックルを操作。
一度は変身解除へ追いやった剣をもう一度食らわせるべく、武刃へエネルギーを纏わせる。
『BUJIN SWORD STRIKE』
電子音声が充填完了を伝え、鞘に納める。
降伏の意思では無い、鞘内部の機能により切れ味を研ぎ澄ませた上で抜き放つのだ。
なればドンモモタロウも逃げはしない、サングラソードのギア部分へ手を伸ばす。
降伏の意思では無い、鞘内部の機能により切れ味を研ぎ澄ませた上で抜き放つのだ。
なればドンモモタロウも逃げはしない、サングラソードのギア部分へ手を伸ばす。
『HEY!HEY!HEY!COME ON!』
『アーバタロ斬!アバタロ斬!アーバタロ斬!アバタロ斬!』
ギアの回転により威力を最大まで強化。
合の手を入れる音声が響く中、タイクーンの元へと駆け出す。
馬鹿正直に突っ込んで来るならむしろ好都合、自ら猛獣の餌になるのと変わらない。
合の手を入れる音声が響く中、タイクーンの元へと駆け出す。
馬鹿正直に突っ込んで来るならむしろ好都合、自ら猛獣の餌になるのと変わらない。
「終わりだ…!」
間合いに一歩踏み込んだ瞬間が最後、必殺の居合を解き放つ。
剣を振り下ろしたとて意味はない、弾かれ頭上をクルクルと回る。
使い手から離れた得物には一瞥もくれてやらず、本人を斬り殺さんとし、
剣を振り下ろしたとて意味はない、弾かれ頭上をクルクルと回る。
使い手から離れた得物には一瞥もくれてやらず、本人を斬り殺さんとし、
「な――」
赤い敵が視界から消え失せた。
(違う!あいつは――)
真下へ映り込んだ影が敵の狙いを気付かせる。
サングラソードが弾かれると同時に身を大きく屈め疾走。
頭部と背中の真上を走る剣には目もくれず、もう一本の得物で脇腹を斬る。
オージャカリバーがタイクーンを食い千切り、痛みに体勢が崩れた。
が、隙を大きく晒せば敗北へ一気に突き落とされてしまう。
歯が砕けんばかりに噛み締め耐え、武刃を振り落とす。
頭部と背中の真上を走る剣には目もくれず、もう一本の得物で脇腹を斬る。
オージャカリバーがタイクーンを食い千切り、痛みに体勢が崩れた。
が、隙を大きく晒せば敗北へ一気に突き落とされてしまう。
歯が砕けんばかりに噛み締め耐え、武刃を振り落とす。
「っ!?」
しかしそれすら狙い通りだ。
オージャカリバーを武刃に添え受け流し、落ちて来た剣を空いた手が掴む。
必殺の刃で斬るタイミングはここだ、だからわざとサングラソードを弾かせた。
オージャカリバーを武刃に添え受け流し、落ちて来た剣を空いた手が掴む。
必殺の刃で斬るタイミングはここだ、だからわざとサングラソードを弾かせた。
スザクを生かす呪い(ギアス)は発動の兆しを見せない。
ブリタニアの皇子が下した命令は「生きろ」の三文字。
命に危機に瀕した際に強制発動し、死を逃れる為のあらゆる術をスザクに取らせる。
逆に言うなら、敗北が迫ろうと死に直結する類でなければギアスの強制力も効果は無い。
王の目的は殺すことに非ず、打ち倒し迷える騎士を引き戻すこと。
ブリタニアの皇子が下した命令は「生きろ」の三文字。
命に危機に瀕した際に強制発動し、死を逃れる為のあらゆる術をスザクに取らせる。
逆に言うなら、敗北が迫ろうと死に直結する類でなければギアスの強制力も効果は無い。
王の目的は殺すことに非ず、打ち倒し迷える騎士を引き戻すこと。
故に勝敗はこの瞬間に決まった。
「サングラソード・快刀乱麻!」
『必殺奥義!アバ・タロ・斬!』
七色の光がレンズ越しにタイクーンの瞳を焼く。
ド派手な剣が切り裂く様は、さながら物語の英雄の鬼退治の如く。
黒き装甲を塗り潰す輝きを受け、堪らず悲鳴を上げ斬り飛ばされた。
ド派手な剣が切り裂く様は、さながら物語の英雄の鬼退治の如く。
黒き装甲を塗り潰す輝きを受け、堪らず悲鳴を上げ斬り飛ばされた。
「があああああああああああっ!?」
蹴り飛ばされた空き缶のように転がり、建造物の一つへ激突。
壁を壊し屋内へと身を横たわらせる。
これまでの戦闘で多少の傷や体力の消耗はあったが、今回が一番だ。
まだ生きている、まだ戦える、今度こそ殺さなくては。
そう考えても動揺を完全には抑えられず、思考が渦を巻き酷く気持ち悪い。
痛みで多少は頭が冷えるかと期待したものの、却って混乱が強まった気さえする。
壁を壊し屋内へと身を横たわらせる。
これまでの戦闘で多少の傷や体力の消耗はあったが、今回が一番だ。
まだ生きている、まだ戦える、今度こそ殺さなくては。
そう考えても動揺を完全には抑えられず、思考が渦を巻き酷く気持ち悪い。
痛みで多少は頭が冷えるかと期待したものの、却って混乱が強まった気さえする。
武刃を杖代わりに立ち上がり、ふと屋内に浮かぶ物体に気付く。
敵が追って来るまで一刻の猶予も無い、弾かれたようにソレへ触れた。
敵が追って来るまで一刻の猶予も無い、弾かれたようにソレへ触れた。
≪高速化!≫
「なっ、待て!」
制止の声も、あっという間に消えた背には届かない。
エリア内に配置されたエナジーアイテム、それも逃走に打って付けの効果。
敵ながら運が良い、追いかけようにも騎士一人にかまけてはいられない。
最優先はユフィリアと合流しまふゆを助けることなのだから。
エリア内に配置されたエナジーアイテム、それも逃走に打って付けの効果。
敵ながら運が良い、追いかけようにも騎士一人にかまけてはいられない。
最優先はユフィリアと合流しまふゆを助けることなのだから。
「タロウさん、ありがとうございます」
変身を解き生身に戻る。
一度戦った為ドンモモタロウの力がどれ程かは知っており、今回は大きな助けになった。
ドンブラスターを使用中は根性次第で傷も治る効果のお陰で、タイクーンに斬られた痛みも幾らか薄れている。
とはいえ慣れない姿で戦った為かやけに疲れた。
今後も場合によっては使うかもしれないが、基本は王鎧武装で戦うのがベストだろう。
一度戦った為ドンモモタロウの力がどれ程かは知っており、今回は大きな助けになった。
ドンブラスターを使用中は根性次第で傷も治る効果のお陰で、タイクーンに斬られた痛みも幾らか薄れている。
とはいえ慣れない姿で戦った為かやけに疲れた。
今後も場合によっては使うかもしれないが、基本は王鎧武装で戦うのがベストだろう。
逃げた騎士も気になるが今はまふゆ達だ。
再びクワガタオージャーに姿を変え、走力を引き上げた。
再びクワガタオージャーに姿を変え、走力を引き上げた。
王と騎士の戦いは一旦幕を閉じ、舞台はもう一つの戦場へと移る。
054:あんなに一緒だったのに/傷は消えず、仄暗く深き悲しみと共に | 投下順 | 055:Reason for(中編) |
053:イザーク・ジュール:オリジン | 時系列順 | |
047:Brave Souls ─戦わなければ生き残れない─ | 柊篝 | |
聖園ミカ | ||
花菱はるか | ||
横山千佳 | ||
小宮果穂 | ||
チェイス | ||
023:Stellar Stream/PHOENIX | ギラ・ハスティー | |
ユフィリア・マゼンタ | ||
朝比奈まふゆ | ||
044:命の冒涜者 | 枢木スザク | |
010:この願い、たとえ魔法がなくたって(後編) | 激怒戦騎のドゴルド | |
032:ザ!!因果応報だぜ | パラド | |
仮面ライダーゼイン |