ナイショの話 ◆0UUfE9LPAQ
0
いまさら気付いたって遅いんだから
いまさら言い訳したって知らないんだから
1
気まずい。
零崎人識はもう何度目になるかわからない感情を浮かべた。
その感情を向ける相手――
零崎双識には悟られないように。
人識が西東診療所に到着してからかれこれ6時間が経とうとしている。
放送前の双識の治療に充てた時間はともかく、放送後の双識が目覚めてからは人識にとって都合が悪くなるばっかりだった。
わざわざ治療してやったのに偽物呼ばわりされ、それを表面的にだけでも取り繕えたと思ったところで曲識を殺害したかもしれない少女――
水倉りすかが闖入してきたのだから。
これ以上混乱する事態を招くよりはマシ、と少女を気絶させたはいいがその少女が一向に目覚めないのだ。
普段なら全部放り出して診療所から逃げ出すところなのだが双識に偽物ではないかと疑われている現在、それもできない。
(昔の俺ならこんな状況気にせず投げ出してたんだろうけどな、普通に兄貴殺そうとしててもおかしくねーし。欠陥製品や伊織ちゃんに会って「変」わっちまったってことなんだろう)
冷静に自己分析しているように見えるがこれも現実逃避の一つである。
病院坂迷路の支給品の一つである携帯電話をいじったりもしたが、データは電話番号とメールアドレス以外一切入ってなく、すぐ飽きたので部屋の隅に転がっている。
「しかし、兄貴はよく食うなあ。この後大丈夫なのか?」
「何か言ったか、人識?」
しまった、と思うも時既に遅し。
独り言のつもりが聞こえてしまっていたようだ。
だが、そう思うのも無理はない。
双識に支給されていた食糧の幕の内弁当9個のうち、双識は3個も食べているのだから。
診療所に着いたばかりのときは治療や支給品の確認に費やしていたのもあって人識は開始から何も食べていなかった。
その前も出夢と戦闘を繰り広げたり、動けない双識を背負って診療所まで運んだりとかなり体力を消耗していたのにも関わらず、だ。
人識は自身に支給されていた味気なさそうな栄養補助食品――に手を出したくなかったので病院坂黒猫の食糧だった惣菜パンを3個だけ食べる。
満腹になるまで食べるようなことは絶対にしない。
食べ過ぎが原因で満足に動けませんでしたー、なんてことになったらプロのプレイヤーとして失格である。
いや、そもそも食べ過ぎてしまうということ事態プロのプレイヤー以前の問題だ。
だからこそ、人識は双識を心配していたのだが。
「自己管理はちゃんとできているさ、『こいつ』のおかげで代謝が活発だから多めに食べておく必要があるんでね」
箸を持ったままの手で自分の胸の中央を指す双識。
その先にあったのは体に深く突き刺さる苦無。
通常の苦無なら紛れもなく致命傷だが、四季崎記紀が作りし完成形変体刀となれば話は別。
刀が帯びる電気の力により活性化され傷の治りが早くなったり運動性が向上したりと変体刀の中でも応用性のあるもの。
双識が普段なら絶対にやらないであろう大食いをしているのもそれが原因だ。
「ならいいんだけどよー、いつまでもここにいられないだろ?これから――」
「どうするんだ?」と聞こうとしたのだが、その言葉は突然鳴り響いた音に遮られる。
「「電話……?」」
二人は顔を見合わせてしばしの間沈黙。
施設の電話番号を知っている者となれば只者ではない。
何らかの方法で入手した参加者か――はたまた主催者か。
いずれにせよ接触しない手はない。
その場合、問題はどちらが接触を図るか、なのだが――
「俺が出るわ、兄貴より俺の方が知ってるやつ多いし。兄貴にも聞こえるようにスピーカーホンにしとくからさ」
先に動いたのは人識だった。
お互い動かないままではせっかくほぼノーリスクで他者と接触できる機会をみすみす逃しかねない。
双識の前を横切り、返答を待たずにコール音が鳴り始めてもう2分が経過している電話に近づく。
いつ鳴り止むかわからない電話を、一瞬だけ躊躇して、受話器を取った。
『 』
「もしもし――ん、その声」
『 ―― 、 ?』
反応を見た双識が声をかける。
「人識、知ってるのか?」
「いやぁ、まあ……」
受話器を手で押さえ、振り向いた人識の表情はなんとも微妙なものだったという。
2
戯言遣いですが、車内の空気が最悪です。
だけど寒いわけじゃありません。
暑いです。
猛暑です。
酷暑です。
「戯言さん」
うん、わかってるよ真宵ちゃん。
もう何も言わなくて大丈夫だから。
さっき砂丘を飛び越えたときに横転を回避するために結局違う方向に行ってしまったのに今気付いたから修正しようとしてるんじゃないか。
しかしガソリンを節約しようとエアコンを切ったのは間違いだった。
砂漠というものをナメていた。
まさか短時間でこんなに車内温度が上がるとは思わなかったんだよ。
ごそごそと、手探りでデイパックからボトルを取り出す。
ああ、この冷んやりとした感触が気持ちいい。
「あの、戯言さん?」
珍しいね、真宵ちゃんが噛まないなんて。
正しい方角もわかったし水分補給したら付き合ってあげるからもう少し待っててくれよ。
「戯言さん、それ、お水ではないようですが」
「え?」
口につけようとした液体を確認する。
ぼくがペットボトルだと思っていたものは瓶だった。
中身も水じゃなくて濃硫酸だった。
……あぶねー、口内が焼け爛れるだけじゃすまなくなるところだった。
教えてくれた真宵ちゃんに感謝感謝。
「普通触った感じでわかりませんかね?それともツッコミ待ちだったんですか?」
あう。
やめて真宵ちゃん、ぼくをジト目で見ないで。
暑さで参ってたんだよ、だから憐れむような目でぼくを見ないでくれ。
思わず真宵ちゃんから目を逸らす。
今も真宵ちゃんは刺すような視線でぼくを見ているのだろうか。
そう思うとちょっと快感……いかんいかん。
しばらくして、
「……もう、いつまでそうしているんですか。出すなら出すで早くしてください、暑いのは私も同じなんですから」
ああ、よかった。
真宵ちゃんからお許しが出た。
見ると真宵ちゃんも額にうっすら汗を浮かべながらペットボトルの水を飲んでいる。
……幽霊も汗、かくんだな。
真宵ちゃんが特別なだけかもしれないけど。
ぼくも今度はちゃんと確認してペットボトルの水を飲む。
あれ、水ってこんなにおいしかったっけ。
そうか、ぼく骨董アパートにいるときは常に水道水だったからなあ。
一見同じ水に見えてもミネラルウォーターと水道水でこうも違うのか。
だからといってミネラルウォーターを買おうとは考えないけど。
「真宵ちゃん、これから出発するから気をつけてね」
「わかりました」
キーを回してエンジンをかける。
そしてアクセルを踏む前にエアコンを起動。
……すばらしい。
文明の利器、万歳。
快適な温度に落ち着くまではもうちょっと時間がかかりそうだけど、そんなのどうでもよくなるくらい風が気持ちいい。
「電話の用意してもらってもいい?」
「あ、はい。……えーっと、残ってるのは一ヶ所ですね」
「もう最後なんだ、どこ?」
「西東診療所ってところです」
あそこか。
展望台に「あの男」がいた以上ほとんど大丈夫だろうってのはわかってるけどそれでもどこかくるものがあるな。
でも、展望台以外全て空振りだったことを考えるとおそらくここが最後のチャンス。
鬼が出るか蛇が出るかだ。
「わかった。よろしく」
発信音が鳴り続ける。
5分を上限にしてかけ続けたから最初の1分や2分反応がなくても緊張することはなくなってしまった。
だから、2分をちょっと過ぎた段階で出られたときは逆にびっくりすることになった。
「もしもし」
平静を保つ。
『 ―― 、 』
返事があった。
ぼくの声を知っている反応。
そして、ぼくもこの声を知っている。
「きみ――まさか、零崎か?」
比喩で言ったつもりが本当に鬼が出た。
まさか、またこんなところで≪縁≫が合おうとは。
「戯言さん、知ってる方なんですか?」
ぼくの反応を見て真宵ちゃんが小さく声をかけてきた。
一応声を拾われないように配慮してくれているらしい。
「うん、まあね……」
うわ、微妙な受け答え。
もう少しいい反応を返せないものだろうか、ぼく。
3
「よりによって電話をかけてくるのがお前かよ。かはは、こいつぁ傑作だ」
『戯言の間違いじゃないのか?しかし、ぼくも電話の相手が連続で知った相手になるとは思わなかったよ』
「元気にしてたか?」
『きみよりはね』
「それにしても久しぶりだな、傍観者。二度とその声聞きたくなかったぜ」
『ぼくも懐かしいよ、殺人鬼。最後に別れたあのときから、きみのことを忘れなかった日は一日としてなかったよ』
「まあ、それとして、だ。連続ってことは俺の前に話したやつがいるってことだろ?俺も知ってるやつなのか?」
『きみも知ってるだろ、あの狐面の男だよ』
「狐面の男……?俺そんなの知り合いにいたっけ……」
『え?何馬鹿なこと言ってるんだ?きみが今そこにいるはずの西東診療所で2週間も顔を突き合わせていたじゃないか』
「あー、ちょっと待ってくれ。それ、いつの話だ?」
『11月の始めのことをもう忘れるなんていつの間にぼくより記憶力悪くなったのか?』
「アホか。俺の記憶力は正常だよ。ったく、こいつは傑作にもほどがあんだろ……」
『零崎……?』
「ちょっと信じられねえかもしれねえけどな、俺の前には6月の時点で死んだはずの兄貴がいる。しかも死者蘇生じゃねえときたもんだ」
『おいおいまさか――そんなことがあるはずが』
「それがあるっぽいんだよ。兄貴は6月、俺は9月、お前は口ぶりからして12月あたりか?それぞれ別の時間から連れて来られてる」
『そう言われれば――おかしいとは思ってたんだ、死んだはずの玉藻ちゃんや出夢君、それにお前以外の零崎一賊が並んでいることに』
「今聞き捨てならないこと言ったよな?俺以外の一賊ってどういう意味だ?」
『10月時点できみときみの妹以外の一賊は全滅したって聞いたんだけど……』
「……一応辻褄は合うな。俺たちアメリカにいたし」
『それは前にきみから聞いたよ。いや、零崎からすれば未来の話になるんだろうけど』
「つーことはここはやっぱり日本なのか?」
『ぼくがわかるはずないだろう』
「そりゃそうだ。じゃあお前にもわかる質問するぜ。
西条玉藻と
匂宮出夢、この二人はいつの間に死んだんだ?」
『玉藻ちゃんは6月、出夢君は10月だったけどそれがどうかしたのか?』
「西条玉藻はとにかく、出夢の髪は短くなってるだ理澄がいなくなって疲れただ言ってたからよ」
『きみはぼくよりも出夢君との付き合いは深いんだろう?どうして会っておきながらもう死んでるのかがわからないんだけど』
「あーそれはだな……出夢は俺が殺したんだわ」
『殺した、って……哀川さんが知ったら――』
「もののはずみで、だよ。わざとじゃねーっつーの」
『状況が状況だから知られたらただじゃすまないと思うぞ……』
「んなもん今更うだうだ言ってもしょうがねーだろ。ところで欠陥製品」
『なんだ人間失格』
「お前どこから電話かけてんだ?」
『車の上からだけど。場所で言うなら因幡砂漠ってところになる』
「車ってことは固定電話じゃなくて携帯使ってるってことだよな、番号とアドレスあるなら教えてくんね?何かわかったら連絡すっからさ」
『きみも携帯持ってるのか?ぼくの携帯には北西の施設の電話番号が入ってたんだけどそういうのはなかったのか?』
「いや、俺のにはそういうのはねーわ。データ空っぽ」
『そうか、とりあえず電話番号だけ教えておくよ。アドレスまでは確認してない』
「じゃあ俺の教えとくから後でアドレスくれよ。俺は今確認できるし」
『それは助かる。ぼくの番号は――――』
「サンキュ。俺のは――――」
『メモったよ。アドレスは後で送っておくから。あ、そうだ』
「ん?どうした」
『狐面の男の名前を言うのを忘れていた。
西東天、多分きみたちは砂漠の狐(デザートフォックス)の方が馴染みがあるんだろうけど』
「りょーかい、気をつけておくわ。そーいや俺も聞きたいことがあったんだった」
『ぼくにわかる範囲でよければ答えてあげるよ』
「鑢七実と
球磨川禊、この二人に会ったか?」
『会ったよ。ぼくたちに怪我はなかったけど』
「『ぼくたちに怪我はなかった』……ね。まさか一緒にいるとは思えねーしどこ行ったか知ってるか?」
『途中で心変わりでもおこしてなければ二人揃って骨董アパートに向かってると思うよ』
「うわ、説得力ねーなー。しかも骨董アパートって反対側じゃねーか、何めんどくさい方に向かわせてんだアホ」
『知るかボケ』
「ま、色々教えてくれてサンキューな。じゃ、息災で。欠陥製品」
『ああ。精々頑張れ、人間失格』
「ばいばい、セリヌンティウス」
『走れ、メロス』
がちゃん、と受話器を置いて/通話終了ボタンを押して。
「「全く因果な人生だよな、欠陥製品/人間失格」」
人間失格/欠陥製品はそう呟いた。
独り言だった。
4
「誰だったんだ?」
受話器を置いた人識に双識が尋ねる。
「仲良しさ」
そう答える人識の表情は電話に出る前とは違い少し引き締まった表情をしていた。
しかし、双識にとっても次々と知らない事実が出てきたのだから当然とも言える。
「そうか。ではそろそろ出発するぞ」
「あれ?何話してたんだとか聞かねーの?」
「それは後からでもできるだろうしな。今は移動を優先したい」
「え、ここで放送待つんじゃねーの?俺はそう思ってたんだけど」
会話の内容についてあれこれ聞かれると身構えていた人識は予想外のアプローチに呆気にとられる。
数時間前にあえて話さなかったことについて双識は少しだけ逡巡したが、言っても言わなくても同じことと判断し伝えることにした。
「次の放送の後でクラッシュクラシックに集まることになっている。アスなら私からのメッセージに気付いてくれるはずだから早く合流したい」
眼鏡をかけていなかった理由はそれか、と人識は一人納得したがそれでも疑問は残る。
「でも放送まで一時間切ってるぜ、普通に走っても間に合うかわかんねーのにでっかい荷物抱えて行く気か?」
人識が荷物と称したそれは物ではなく人――水倉りすかのことなのだが、今の彼女は曲識を殺したかもしれない容疑者。
手足を拘束し、ベッドに横たえてあるとはいえ、置いて行くわけにはいかない。
それを考慮して聞いたのだが、双識の支給品も確認していた人識にはある程度予想していた答えが返ってきた。
「車で移動すれば問題は解決するだろう。私は先に外へ出てるぞ」
後ろを振り向くことなく診療所を出て行くのは信頼の表れか殺気にはいつでも対応できるという自信なのか。
診療所には人識と未だ目を開けないりすかだけが残された。
「……ちぇっ、急に兄貴ぶりやがって。俺が偽物かもしれねーって言ってたくせによー」
毒づきながらもりすかの元へ向かう人識。
双識がいるときにはできなかった「あること」を手早く済ませ、彼女の前で立ち止まりしばし迷う。
数分かけて考えた末、デイパックを腕に通しりすかを背負う。
お姫様だっこは気が引けたようだった。
「なんで一日で2回も人をおんぶする羽目になるのかねえ……よだれ垂らさねえだけ西条玉藻よりはマシなのかなんつーか」
診療所を出ると白の軽トラが待ち構えていた。
運転席にいる双識がエンジンをふかしながら人識に乗るように促す。
それを見た人識はりすかを背負ったまま荷台に乗り込んだ。
何か言いたげな双識を制止するように人識が口を開く。
「俺が助手席乗ったらこいつがどうなるかわかんねーし、こいつ助手席に乗せても途中で目が覚めて暴れだしたりでもしたら俺まで危なくなるじゃねーか。
俺が運転するのは信用してない兄貴がする選択とは思えねーし」
「……そうか。決して遅くない速度で走るからくれぐれも落ちないようにな」
「わーってるよ」
双識にも確認できるようにキャブを背もたれにりすかを座らせ、その横に直接双識の後ろ姿を視認できるように座ってふと気付く。
「なんだありゃ……山火事か?あそこは展望台があったあたりだよな。まあ俺には関係ねーか」
ちらり、とミラー越しに双識の視線を感じた直後、トラックが走り出す。
「さてと」
走り出してしばらくした後、人識は呟く。
独り言ではなく、会話文を。
「起きてるのはわかってんだ。質問に答えなくてもいいから話は聞いてもらうぜ」
5
ふう、とため息が漏れる。
得られた情報が多くて一旦整理しないとやっていけない。
「で、戯言さん、お相手はどなただったんですか?」
またそこを聞いてくるのか。
まあ、気になるのはしょうがないか。
しかし、どう答えたものか。
鏡の向こう側、じゃわかりにくいだろう。
人間失格、も誤解を与えそうだ。
顔面刺青の殺人鬼、なんて言ったら真宵ちゃんが怯えてしまう。
口に出すのは憚られるけどしょうがない、あえて言おう。
「仲良しだよ」
一番最初にあんな会話をかわしといてこんな表現をするのもすごくなんだけど、多分説明するにはこれが一番だろう。
さて。
真宵ちゃんの反応は。
「戯言さんにも友達いたんですね」
ぐさっ。
どこからかそんな擬音が聞こえた。
「戯言さんも阿良々木さんと似たような属性をお持ちでしたし、友人が全くいなくても不思議ではありませんでしたが」
ぐさっぐさっ。
冗談でもきみの話を聞くかぎりとんでもない変態らしい暦くんとぼくが似てるって……?
死人を悪く言いたくはないけどちょっとこれは……
「ああでも、阿良々木さんは彼女である戦場ヶ原さんをはじめ、羽川さんや神原さんとフラグを立てたりもしましたから、
案外戯言さんも本命以外の方とフラグを立てたりしているのではないですか?」
ぐさっぐさっぐさっ。
抱きまく……崩子ちゃんのことは真宵ちゃんは知らないはずだから大丈夫、きっと。
ここで動揺したら真宵ちゃんの思うつぼだ。
「ですがさっき電話口から聞こえてきた声は男性のものでしたね。ということは戯言さんは」
「ストップ、真宵ちゃん。そしてぼくにそんな趣味は一切ない」
意外な方向から攻撃がきた。
友達がいないのは別にかまわないけどそんな疑惑をもたれるのはごめんだ。
ぼくが愛するのは女性だけです。
「それは残念です。BL本が出たら鉄板の組み合わせでしたでしょうに……」
「滅多なことを言うもんじゃない。そして既に出ている可能性もあるから不用意な発言はやめよう」
実際そういう人の守備範囲ってかなり広いらしいから出てる可能性の方が高いよな……って何考えてるんだ。
このままじゃぼくに悪い方向の話しかきそうにない、何かないか。
そうだ、あのことを聞いてみよう。
「真宵ちゃんはさ、ここに来る前が何月だったか覚えてる?」
「8月でしたがそれがどうかしましたか?」
さっき狐さんと話したときの違和感の正体がやっとわかった。
あの男――まさかぼくのことを知らないんじゃないのか。
だとすると、零崎に伝えておいたのは正解だった。
ぼくに会う前のあの男は零崎を探していたはずだったし。
「――戯言さん、あれが豪華客船ではないですか?」
ふと気付くと真宵ちゃんが指をさしている。
視界はいつしか砂の色から上半分が空と海の青に変わり、余計に目立つ船体の赤の色。
他にそれらしいものも見えないしあれでまず間違いない。
「みたいだね。潮の満ち引きがわからないからちょっと離れたところに止めて少し歩くことになるけど大丈夫?」
「それくらいかまいませんよ。ですが、またさっきのように間違えて水以外のものを飲まないようにしてくださいね」
「まさか。さすがに同じネタは二度も通用しないことくらいぼくもわかってるよ」
「余計な気遣いでしたか」
船がかなり大きくなってきたところで車を止める。
目算でざっと200mってとこか。
砂で足を取られて歩きにくいかもしれないけどこれくらいなら真宵ちゃんでも大丈夫だろう。
キーを抜き、ドアを開ける。
途端、熱気が襲ってきた。
さすがは昼の砂漠、早く船に向かった方がよさそうだ。
「真宵ちゃん、携帯貸してくれる?」
「何をするんですか?」
聞きながらも差し出してくれた携帯電話を受け取り、操作する。
「電話の途中、一度車を止めてメモをしてただろう?あのときに向こうが持ってた携帯の電話番号とアドレスをメモしておいたんだ」
「ああ、こちらの電話に登録されていたのは建物のものでしたからね」
「それで、電話をしながらじゃこちらのアドレスは確認できないから後でこっちのアドレスを送ると言ったんだ」
「今そのメールを送るということですか」
「そういうこと。ついでにさっきツナギちゃんや禁止エリアのこと言うの忘れちゃったから一緒にそのことも伝えておこうと思って」
「なるほど、あいわかりました」
日差しの下だと画面が見にくくて入力に時間がかかったけどなんとか送信することができた。
それと同時に、船の影に入る。
こんな時間だと、影ってほぼないんだけどね。
ちょっとだけ更に歩くことになるけどこれは気分の問題だ。
「放送は船の中で待とうか。冷房もきいているだろうし」
「そうですね、さざれ言さん」
「ぼくは別に国歌の歌詞にあるような小石じゃないからね」
「失礼、噛みました」
「違う、わざとだ」
「噛みマスター」
「ぼくはまだ噛まれマスターになった覚えはないよ」
そもそもなんだよ、噛まれマスターって。
【一日目/昼/G-2 豪華客船】
【戯言遣い@戯言シリーズ】
[状態]健康
[装備]箱庭学園制服(日之影空洞用)@めだかボックス(現地調達)、巻菱指弾×3@刀語、ジェリコ941@戯言シリーズ
[道具]支給品一式×2(うち一つの地図にはメモがされている、水少し消費)、ウォーターボトル@めだかボックス、お菓子多数、缶詰数個、
赤墨で何か書かれた札@物語シリーズ、ミスドの箱(中にドーナツ2個入り)
[思考]
基本:「主人公」として行動したい。
0:放送を待つ
1:真宵ちゃんと行動
2:玖渚、できたらツナギちゃんとも合流
3:豪華客船を探索して、診療所を経由し、ネットカフェ、斜道卿一郎研究施設 いずれかに向かう
4:不知火理事長と接触する為に情報を集める。
5:展望台付近には出来るだけ近付かない。
[備考]
※ネコソギラジカルで西東天と決着をつけた後からの参戦です。
※
第一回放送を聞いていません。ですが内容は聞きました。
※夢は徐々に忘れてゆきます(ほぼ忘れかかっている)
※地図のメモの内容は、安心院なじみに関しての情報です。
※携帯電話から
掲示板にアクセスできることには、まだ気が付いていません。
※携帯電話のアドレス帳には零崎人識のものが登録されています。
※参加者が異なる時期から連れてこられたことに気付きました。
【
八九寺真宵@物語シリーズ】
[状態]健康、精神疲労(小)
[装備]携帯電話@現実、人吉瞳の剪定バサミ@めだかボックス
[道具]支給品一式(水少し消費)、 柔球×2@刀語
[思考]
基本:生きて帰る
0:放送を待つ
1:戯言さんと行動
[備考]
※傾物語終了後からの参戦です。
※真庭鳳凰の存在とツナギの全身に口が出来るには夢だったと言う事にしています。
※日之影空洞を覚えていられるか、次いで何時まで覚えていられるかは後続の書き手様方にお任せします
6
結論から言えば、りすかは意識を取り戻していた。
電話の着信音で目を覚ましていたが、二人は電話に気を取られ、気づかれることはなかったらしい。
手足を拘束されていて、しかもカッターナイフも手元になかったため、起きているのを悟られないように情報収集に努めるしかなかった。
話を聞く限り、今すぐ殺すつもりはないらしく、しかもこれから移動させられるようなので創貴と会えるチャンスが広がると思いあえて寝たふりを続けていたのだが、感づかれてしまったようだ――
「あんたが十中八九曲識のにーちゃんを殺したのは見当ついてるんだ」
人識は目を閉ざしたままのりすかに告げる。
起きていようが寝ていようが同じことだと言わんばかりに。
「まず最初におかしいと思ったのが兄貴のデイパックが2つあったことだ。
もちろんそれだけならなんもおかしくねえ、どっかの誰か殺してぶんどったのかもしれねえしな。
ただし、中に地図やら食糧やらの『全員に共通で支給されたものが入っている袋』がなければ話は別だ。
地図や名簿はともかく、食糧やら水はあった方がいいに越したことはないからな。
つまり、兄貴は2つ目のデイパックをどっかから拾ってきたんだ。
それがどこかなんて確かめるまでもねえ、曲識のにーちゃんのとこに決まってる。
そしてあんたはどうなんだろうな。
兄貴の前じゃやりにくいからさっき確認させてもらったが、一つの袋の中に二人分のが入ってる。
なんでわざわざそんなことをしたのかと思ったが中身見て納得したよ。
片っぽの食糧がカップ麺だったんだもんな。
お湯がない状態でそんなもんもらっても食えるわけがねえ、だからあんたは食糧をいただいたんだ。
食糧が入っている袋ごと水やら地図やらもな。
しかしだとすると疑問が残る。
どうして武器まで持っていかなかったのかってな。
中に入っていたのが自分には使えないものだったから?
それにしたって糸はともかくハンマーは立派な凶器だ、他の人に渡る可能性を残すより自分で持って行った方がいいだろ。
そんでもってあんたが持ってた武器らしい武器はあの時に持ってたカッターナイフだけだ。
つまりあんたは隠し玉らしい隠し玉がなければあのカッターだけで曲識のにーちゃんを殺したということになる」
いつしか容疑者から犯人と断定されていることにりすかは気づかない。
人識の話に呑まれていってしまっている。
もちろん、りすかに反論の余地は残されているのだが、創貴がいない今りすかが人識を相手に会話を成立させらるかというと、難しい話。
「だがそんなもん俺には関係ねえ」
しかし相変わらずりすかの反応を気にせず続ける人識。
「あんたが曲識のにーちゃんを簡単に殺せる力を持っていようが持っていまいがそんなの知ったこっちゃねえんだ。
そもそも零崎なら『かもしれない』ってだけで十分殺す理由になる。
俺があんたを殺さないのは人類最強がこの会場にいるから、ただそれだけだ。
出夢のときは手加減なんてできるわけねーから結果的に殺しちまったけどな。
基本的にナイフしか俺は使わねーけど殺すだけなら簡単にできるんだぜ?
例えば、俺が今持ってるこのナイフで刺し殺せる。
日本刀を使えば斬り殺せる。
この手を使えば縊り殺せる
曲絃糸を使えば絞め殺せる。
拳銃を使えば撃ち殺せる。
ハンマーを使えば殴り殺せる。
青酸カリの毒を盛って殺せる。
シュッレッダー鋏を使えば刻み殺せる。
兄貴からくすねた手榴弾を使えば爆ぜ殺せる。
兄貴に協力してもらえばトラックで轢き殺せる。
同じようにトラックで圧し殺せる。
ガソリンぶっかけて火をつければ焼き殺せる。
ざっと手持ちの道具だけでこれだけ方法があるんだ、殺しても死なないやつはいても殺し続けて死なないとは限らねえ――っと」
話を中断した人識は突如鳴りだした携帯電話を触る。
自分の方を見ていないと判断したりすかは薄目を開けて気づかれないように周囲の状況を確認しようとした。
しようとしたことを激しく後悔することになる。
見て、しまったから。
携帯電話の画面を見る瞳に存在していたから。
まるで、この世の混沌を全てない交ぜにしてぶち込み煮詰めたような、奇妙に底のない闇を。
闇を刻み込んだような、深い眼を。
神を使い込んだような、罪深い瞳を。
瞬間に理解してしまう。
さっき言っていたことは本当なのだと。
血が流れない手段で殺されてしまえばあっけなく自分が終わりを迎えてしまうことを。
恐怖で、目を瞑る。
が、更に追い打ちをかける言葉を聞いてしまう。
「『もしツナギという小学校高学年くらいの女の子を見かけたらぼくたちは豪華客船にいると伝えてくれ』、ね……」
仲間の名前を聞かされて思わず体が反応してしまう。
手がぴくり、と動いたのを人識は見逃さなかった。
「ふーん、こいつはそのツナギってのと知り合いなのかね。まあどっちでもいいんだけどよ」
どっちでもいい、というのはまさしく額面通りである。
これ以上真偽を追及するつもりはないらしく、慣れた手つきで戯言遣いからのメールに返信していく。
関係するかもしれないとわかった時点で殲滅の対象に入るのだから。
そして、携帯電話をしまうと同時に液体の入った小瓶を取り出し、りすかに告げる。
逃げ場はないと言い聞かせるように。
「何かできるとは思えねーけど、一応警告しておく。
少しでも怪しい素振りを見せたらこいつを飲ますか嗅がすかする。
2年くらい前に俺自身が身を以て体験したからわかるが拷問にはうってつけのもんだよ。
何せ、自分の意思で体は一切動かせないのに感覚ははっきり伝わってくるんだ。
反射行動を取ることすら許されない、相手にされるがまま、なんてのはどういう気分なんだろうな。
ま、俺が説明してやることもできなくはねーけど、それは実際になってからのお楽しみってことで」
目をとじたままのりすかの眼前で小瓶を軽く振り、音で中身があることを示すと再びデイパックにしまう。
りすかは動かない、否、動けない。
かつて片瀬記念病院跡でツナギと初めて相対したときと同じかそれ以上に恐怖してしまっている。
本来なら遅れをとることなどまずない魔法を使えない一般人に対して。
(キズタカ……早く会いたいの……)
声にならない思いは届かない。
一方で人識もりすかに聞かれているだろうことをわかって呟く。
「ま、今の状況なら簡単に逃げ出せるんだけどそれが原因で兄貴に死なれるなんてことになったら寝覚め悪いし最後まで付き合ってやるか」
今度こそ独り言を。
「兄貴の足手まといになるのだけは――ごめんなんだ」
気まぐれな彼にしては珍しく、ぶれることのない本音を。
トラックは走り続ける。
【一日目/昼/C-4】
【零崎人識@人間シリーズ】
[状態]健康、腹八分目
[装備]小柄な日本刀 、グリフォン・ハードカスタム@戯言シリーズ
[道具]支給品一式×5(内一つの食糧である乾パンを少し消費、一つの食糧はカップラーメン一箱12個入り)、医療用の糸@現実、千刀・ツルギ×2@刀語、七七七@人間シリーズ、
奇野既知の病毒@人間シリーズ、携帯電話@現実、手榴弾×1@人間シリーズ、青酸カリ@現実、S&W M29(6/6)@めだかボックス、大型ハンマー@めだかボックス
[思考]
基本:兄貴の違和感の原因をつきとめる
1:兄貴の信用を得るまで一緒に行動する
2:
時宮時刻と西東天に注意
3:ツナギに遭遇した際はりすかの関係者か確認する
4:事が済めば骨董アパートに向かい七実と合流して球磨川をぼこる
5:
哀川潤が放送で呼ばれれば殺人をしないつもりはない
[備考]
※曲絃糸の射程距離は2mです。
※曲絃糸の殺傷能力(切断・絞殺など)は後の書き手さんにおまかせします。
※りすかが曲識を殺したと考えています。
※Bー6で発生した山火事を目撃しました。
※携帯電話の電話帳には戯言遣いが登録されています。
※参加者が異なる時期から連れてこられたことに気付きました。
【零崎双識@人間シリーズ】
[状態]健康、腹八分目、悪刀・鐚の効果により活性化
[装備]箱庭学園指定のジャージ@めだかボックス、カッターナイフ@りすかシリーズ、軽トラック@現実
[道具]支給品一式(食糧の弁当9個の内3個消費)、体操着他衣類多数、血の着いた着物、カッターの刃の一部、手榴弾×2@人間シリーズ
[思考]
基本:家族を守る
0:クラッシュクラシックに向かう。
1:目の前の零崎人識を完全には信用しない
2:りすかが目覚めたら曲識を殺したかどうか確認する
3:他の零崎一賊を見つけて守る
4:
零崎曲識を殺した相手を見付け、殺す
5:真庭蝙蝠、並びにその仲間を殺す
[備考]
※他の零崎一賊の気配を感じ取っていますが、正確な位置や誰なのかまでははっきりとわかっていません。
※現在は曲識殺しの犯人が分からずカッターナイフを持った相手を探しています。
※真庭蝙蝠が零崎人識に変身できると思っています。
※鐚の制限は後の書き手さんにお任せします。
※Bー6で発生した山火事を目撃したかどうかは不明です。
【水倉りすか@りすかシリーズ】
[状態]手足を拘束されている、零崎人識に対する恐怖
[装備]無し
[道具]無し
[思考]
基本:まずは、相棒の
供犠創貴を探す。
1:この戦いの基本方針は供犠創貴が見つかってから決める。
2:――――――?
[備考]
※新本格魔法少女りすか2からの参戦です。
※治癒時間、移動時間の『省略』の魔法は1時間のインターバルが必要なようです。(使用可能)
なお、移動時間魔法を使用する場合は、その場所の光景を思い浮かべなければいけません。
※大人りすかについての制限はこれ以降の書き手にお任せします。
支給品紹介
【携帯電話@現実】
病院坂迷路に支給。
普通の携帯電話。
櫃内様刻のものと同じく登録情報(電話番号・アドレス)以外のデータは入っていない。
【奇野既知の病毒@人間シリーズ】
病院坂迷路に支給。
小瓶に液体状で入っており、気体にして拡散させれば原作と同じ症状を引き起こす(制限により持続時間は20分)。
そのまま全量を被験者に投薬すれば永遠の眠りに導くこともおそらく可能。
【S&W M29@めだかボックス】
零崎人識に支給。
通称マグナム44、装弾数6発の回転式拳銃。
発砲したときの反動が凄いため片手で撃つのは多分不可能。
宗像君はどうやって撃つつもりだったんだろうか。
【手榴弾@人間シリーズ】
零崎双識に支給。
ベリルポイントお手製の手榴弾、3個入り。
自爆用だったことから考えるとおそらく爆風で狭い範囲を殺傷するコンカッションタイプ。
【青酸カリ@現実】
零崎双識に支給。
小瓶に粉末状で入っている。
致死量を超えて投与した場合、適切な処理をしなければ15分以内に死亡させる。
【軽トラック@現実】
零崎双識に支給。
一般的な白の軽トラ。
【大型ハンマー@めだかボックス】
零崎曲識に支給。
宗像君は片手で一本ずつ持っていたけど実際同じことをやろうとしたらかなり筋力がいるはず。
宗像君凄い。
最終更新:2013年03月07日 17:47