背信者(廃心者) ◆xR8DbSLW.w
一見三竦みのようにも見えるが、その実
零崎人識が圧倒的有利な状況下であった。
曲絃糸。糸を繰る技。
時には撥ねて――時には裂いて――時には解して――時には時には。
この時間軸上の人識には不可能にせよ、勿論使い方次第では殺人術としても機能する。
そして、この術の本質は索敵や拘束にも用いることができる点だ。
ただ糸を操るだけ。シンプルな技。しかしそれだけにその使い勝手は凄まじい。
「俺はこれまで、心っつーのは物体的なものだと信じて疑わなかった。
てゆーか今でもそう信じてるんだけどな、しかし反して心なんていうものはどこにも見当たらない訳だ」
さながらマリオネットのように、糸に吊られた二人の人間は素面の表情のままに、しかし内心どうしたものかと、頭を働かせる。
刀を振ろうと試みるが、糸が相手なのにどうしてか切り落とすことさえ叶わない。
宗像形はそれを、雲仙冥利の《鋼糸玉(ストリングボール)》かと連想したが、どうにもその様なものとは思えずにいた。
一方で真庭蝙蝠は、人識のとった攻撃の考察などせず、まさに生死の境目とも言える場面に出くわして、これから判断に迫られている。
――突如降臨したその《鬼》はそんな様子ににやにやと眺めた。
「さっきの
戦場ヶ原ひたぎの心だってそうだった。
あいつは頭にあるとかぬかしてやがったが、どこにも見当たらなかった。
これに限らずこれまで確か十何人の人間の心を覗き見ようとしても、どこにもない」
俯瞰的に現状を確認してみよう。
舞台はネットカフェのその一階。
ロビーと連なっていたその部屋には、今現在は約五百の剣が咲き誇っている。
内一本は四季崎記紀が生み出しし、完成形変態刀が一振り、絶刀・鉋であり、
その他の剣は同じく完成形変態刀が一振り、千刀・ツルギだ。
「だから俺は、やっぱり諦めるべきなんじゃないかと思うわけ。
一度そうしたんだから、これからもそんなものを追い求めなくてもいいんじゃないかって俺もいるんだ。
何分一度、クソッタレな赤色から答えを明示させられちゃあ、敵わねえよな」
その巨大な空間の中心で、《冥土の蝙蝠》真庭蝙蝠と《枯れた樹海》宗像形は向かい合い、制止している。
ピクリとも動かない。すぐ隣で人識が佇んでいるというのに、しかしどうすることもできずにいた。
人識は手袋をはめ、しっかりと指で糸を繰りつつ滔々と語る。
「それでも、心を見てみたいという俺は確固たるものとして存在している。
どうしようもなくアホで、おそらくそれ故に死んでしまった兄貴に教えてやりてえのさ。
――普通であり続けたいと願う、アホな兄貴によ。ま、せめてもの手向けっつーやつか」
らしくもねーか、と独り言つ。
かはは、と笑う人識の正面、真庭蝙蝠と宗像形は短く紡ぐ。
「宗像」
「なんだ」
少女の声――りすかの声をした蝙蝠が声を発する。
それは確かに小声ではあったが、人識にだって聞こえているだろう。
だが、こうなってしまった以上はやむをえまい。
おおよそ気紛れで戯言を垂れ流している内に――と。
「一瞬だけ協力しろ」
「……なんだ」
眉を顰めるが、しかしこのままでは自らの命の危機であることには変わりない。
瞬間の逡巡の後に簡単に返す。
それを由とした蝙蝠は横目で人識の姿を窺いつつ、箱庭学園で邂逅した《王》を想起する。
人識は斬刀を力強く握り、誤って糸を斬らない範囲で切っ先を蝙蝠に向けた。
「どっちつかず、別段今の俺に拘りがあるわけでもない。
だからこれで最後にしようと思ってるんだ。これで出るなら好し、出ないのならまた好し。だから」
人識は何の容赦もなく、斬刀を突きつける。
チクリとした感触がした。それはつまり、蝙蝠と斬刀との距離は零であることを示す。
反して蝙蝠は落ち着いた口調で――《王》を――《「魔法使い」使い》を――《死線の蒼》を頭に浮かべ、宗像に問う。
「《異常(アブノーマル)》ってなんだ」
極めて簡素な問い。
宗像形は答える。
「《何かをすれば必ずそうなる》こと――《自分は「そういう存在」と思う》ことだよ」
かつて雲仙冥利が言ったことを。
先刻
玖渚友に対して言ったように、告げる。
宗像らの持つ――その《絶対性》を。あくまで逃れることのできない一種の呪縛を。
そんな宗像の言葉に重ねるように、人識が一人、言葉を続ける。
「おめーら二人は知ってるかい?
心っちゅーんがどこにあるかをさ。教えてくれよ、てめーらの冥土の土産によ」
冥土の土産。
その言葉を聞いて、蝙蝠は僅かに口角をあげて。
「分かった。じゃあこれでまた敵同士だ」
瞬間の同盟を破却した。
そして。
彼の思考は一つの人物に絞られる。
意識する意識する。
認識する認識する。
確信する確信する。革新する。
《王》、《発信(アクティブ)》、《創帝(クリエイト)》。
そんな彼の異常性――曰く《人の心を操る》ことが自分にもできると。
「――――《跪け(ヒザマズケ)》」
○
改めて説明するまでもないが、真庭蝙蝠が誇る忍法の一つ《骨肉細工》は相手を模倣する技だ。
姿かたちは勿論のこと声質・体質、時に本質そのものさえも吸収する。
相手の才能や天性までをも、自らのものとして体現してしまう、そんな技なのだ。
思い返して見てほしい――尤も今現在の真庭蝙蝠の時間軸とはそぐわない話ではあるが――彼が鑢七花に化け、絶刀・鉋で襲った場面。
つまりは真庭蝙蝠の死に際のことを振り返ってみよう。彼の敗因はなんだったであろうか。
そう、鑢七花を体現しきったが故に起きた悲劇。
《刀を扱えない》特性、つまり《刀を使用としても必ず失敗してしまう》特性故に敗北を喫した。
それは、人間の《異常性(アブノーマル)》さえも体現する証左に他ならない。
そして今現在、零崎人識が跪き、その反動で曲絃糸が解かれ、真庭蝙蝠と宗像形が自由の身となったこの場面を引き起こしたのは、
紛れもなく真庭蝙蝠の《骨肉細工》――いや、この場合は《骨肉小細工》と言うのが適切か――の再現性の賜物と言ったところだろう。
宗像形の助言に従い、《創帝(クリエイト)》都城王土が出来ることは自分にも絶対にできると認識した。
曰く――人の心を操る。箱庭学園にて能力(スキル)の持ち主から直接聞いたことである。
「――――成程ねえ。確かにこれは説明が難しい」
いつの間に声帯を変えたのか、
供犠創貴の声で一人得心する。
実際、都城王土の《異常性》の仕組みそのものは理解してはいるが、だからといって、使い方を学んだわけではない。
自分は人の心を操れるという絶対的な確信が、現在起きている現象を引き起こしたの過ぎないのだ。
「《言葉の重み》か。懐かしいな、だから殺す」
宗像形は手にしていた千刀を振り上げる。
目掛けるは零崎人識の頭。《悪》を殺すべく、確固たる意志を以て。
跪く人識の頭は、実に狙い易かった。
そんな時だった。
「う、うう、うおおおおおおおおーーーーーーーーーーーー!」
刀を振り下ろし――もう間もなくで人識の命が断たれるとなったその直前。
跪いていた当の本人、零崎人識が熱烈に叫んだ。
叫んでから、人識は跪いた姿勢から横に跳ねる。
それから一秒も待たず、数瞬前まで人識の頭があった場所に、ミリとも違わず千刀が振り下ろされた。
「へえ、動けるのか。だから殺す」
攻撃の手を緩める道理はない。むしろここからが千刀巡りの真骨頂とも言える。
宗像はそこらに刺さっている次の千刀に手を伸ばした。
さも当然のように柄は宗像の手に収まり、すかさず人識に追撃する。
跪いた拍子に斬刀を手放してしまった彼は、宗像と同様に近くに転がっている千刀を抜き取り、宗像の攻撃を弾く。
右腕で放たれた一撃目を弾いたはいいものの――宗像により地に刺さっていた千刀の一本が蹴り飛ばされる。
円を描く千刀は綺麗に人識へと向かう。弾くのは無理と咄嗟の判断を下し、軽快なステップで後方へ飛ぶ。
未だ宗像の追撃の手は緩まらないが、一息つく暇は出来た。そこで思いの丈を叫んだ。
「び、ビビったあ! なんでテメーが《ソレ》を使えんだよ!
あー、気合とはよく言ったもんだぜ。見たこともねえ善吉くんとやらには感謝しなきゃな」
戦場ヶ原ひたぎと共に都城王土と遭遇した直後のこと。
《一度味わったことのある》、という戦場ヶ原の言葉に疑問を覚えた人識が尋ねたときの話である。
その時に様々なことを聞いたのだが――中でも特筆すべき内容は、
人吉善吉という少年が、《言葉の重み》に耐えたというものだ。
仕組みは単純明快。気合と根性。少年ジャンプさながらの理論である。
それで、現在。
零崎人識は再び立ち上がる。
気合と根性の力を遺憾なく発揮して、《言葉の重み》を打破した。
結界術などに耐性を持つことができた人識の器用さを加味しても不可能な事柄ではないだろう――。
というのも理由として挙げられるが、それではあんまりにあんまりなので、ここで説得力を補強しよう。
真庭蝙蝠が《言葉の重み》を使用した時の状況を思い返す。
基部は
零崎軋識、右腕と両足は都城王土、喉は
水倉りすか、とつまりは忍法《骨肉小細工》を使用していた真っ最中であった。
《骨肉小細工》には瞬時に身体の一部を変態させられる点と複数人の身体を同時に変態させられるという点。
主に二つの利点がある反面、最大にして致命的な欠点がある。
それは、変態した人間の力を良くても80%程しか使用できない点だ。
すなわち、今回真庭蝙蝠が使った《言葉の重み》は不完全なものに過ぎないのである。
都城王土本人の、換言すると100%の力を出し切った《言葉の重み》を味わった人識には確かに温いものだったのかもしれないだろう。
「はあ……、おれの奥の手があっさり打ち破りやがって、ふざけた野郎だ」
人識の質問には答えず、ある種の呆れの混じった口調で応える。
そう答える真庭蝙蝠はネットカフェの窓枠にしゃがみこんでいた。
未だ宗像形と零崎人識はせめぎ合う中、一人戦線を離脱しようとしている。
「きゃはきゃは――やってられっかよ。おれはここで退散するとするぜ」
勝てない勝負を真っ向からするわけがない。
彼はしのびなのだ。――先ほどまでが、おかしかっただけ。
刀の毒に犯されてしまっただけであり、彼の本分は卑怯卑劣、不意を打つことにある。
だから逃げた。
非難を浴びようがなんだろうが、繰り返そう――彼はしのび。
勝てない勝負を、ましてや真っ向勝負などするはずがない。
彼は姿を消し、その場には宗像形と零崎人識だけが残る。
蝙蝠の行為を許すまいと引きとめようとした人識であったが、一人の人間が間に入る。
立ち塞がったのは、宗像形だった。
《正義》の、男である。
「おいおい、逃がしていいのかよ」
もう完全に蝙蝠の気配を逃してしまった人識は諦めたように肩をすくめ、宗像に問うた。
宗像はピクリとも表情を変えず、坦々と答える。
「彼は確かに敵だ。殺さなくちゃいけない。
でも、それでも優先すべきはきみだ。また変な技を使えないうちにね」
「ちっ、やっぱ気付いてやがったか」
人識は露骨に嫌そうな顔をして答える。
確かに現在、人識は曲絃糸が使えなくなった。
理由としては明瞭で、跪いた際に糸が絡まったこと、及び宗像形が糸を斬ってしまったに起因する。
元々はただの糸だ。そこに特別性など皆無である。それなら宗像が糸を斬り落とすことだって、何らおかしくない。
千刀で一撃を振るいながら、人識の問いに対する答えを続ける。
「それにさっきの口ぶりだと、既に戦場ヶ原ひたぎって人を殺しているらしい。
それは見過ごせない。僕は火憐さんに代わり、悪を裁くんだ」
阿良々木火憐の志を引き継ぎ――だけども彼女にはなれなかった彼は、人識を殺す覚悟を固めていた。
《
正義の味方》でなく、《正義そのもの》であろうとする彼は、人識に刃を向ける。
対する人識は抜き取った千刀で宗像の攻撃をいなしながら、へらついた表情を浮かべた。
「あーそう。そりゃ重畳。殺人鬼が世間的には悪ってのは否定すべくもないな」
元々武器の扱いそのものには難のある宗像――加え片腕が欠損した隻腕の彼を相手は容易い。
おまけに出血多量で意識も正常ではないのであろう。剣筋が時折ぶれている。満身創痍であった。
それでも、人識は宗像を殺すに至っていない。
理由の一つに、どうせ殺すなら斬刀・鈍がいいということ。
二つに、意識が朦朧としているとは言え、殺されない技術にも精通する宗像の隙そのものは零に等しいこと。
面倒くさいと内心毒を吐きつつ、坦々と宗像の攻撃をいなし続ける。
「ちなみに火憐ってのはお前が看取ったりでもしたんか?」
「僕が引導を渡したんだ」
「ふーん、まあ変に気負うなよ。俺だって似たようなことをやったんだしな」
匂宮出夢のことを想起しながら適当に相打つ。
そこで、ふと思い出す。
「火憐って阿良々木火憐だよな? もしかすっと
八九寺真宵って名前に聞き覚えはねーか?」
「……知らないよ。知ってても教えるつもりもないが」
《負完全》
球磨川禊が起こした七面倒臭い事態の解法でも見つけられたらとも思ったが、そんなに上手く事は運ばないようだ。
思い返せば思い返すだけ、薄幸な女児だと感じるばかりである。
「まあ、いいや」
考えていても仕方のないことだ。
少なくとも、この場を何とかしない限りは。
ここに立ち寄ったのは失敗だったかなあ、とぼんやりと思う人識である。
「で、なによ。火憐の遺志を引き継いで正義の味方にでもなるんかい?」
「違うよ。僕は正義そのものになるんだ。火憐さんの遺志を引き継ぐなんてたいそれたことはできないけどね」
あの時。
殺人衝動が消えた時。
阿良々木火憐に誓ったこと。
火憐に寄り添い生きていくことを、彼は今でも鮮明に覚えている。
「宗像くん、俺は他人の考えを理解しようだなんて殊勝な奴じゃねえが、
それでも一つだけ、道を説いてやるよ。――なんて、殺人鬼に説かれちゃ終(し)めーだよな」
宗像の一太刀を払いながら、かはは、と笑みを零す。
「人一人殺した程度で何かがどうにか変わるかよ。
感傷に浸るのは勝手だろうが、履き違えちゃいけねえよ」
――だとしたら、俺は五月に十二回は転生している。
人識は冗談めかして嘯く。
「よくいうじゃん。スプラッター映画やゲームが人間に悪影響を与えるっての。
俺は順序が逆だと思うんだよな。――暴力や流血沙汰が好きだからそういう映画とかを観るんだろ? ってな。
人間は人間を変えられないように、人間は人間では変わらないんだよ」
変われない男。
自分と鏡映しの欠陥製品を思い浮かべながら言う。
つまりは、自分に言い聞かせる風でもあった。
「だから、背負わなくたっていいんだぜ? 変に縛られないでよ、好きなように生きればいいんじゃないのか?」
変に気負っても兄貴みてーに死ぬだけだぞ。
宗像にも聞き取れないような声で呟く。
宗像は多少の間をあけ、それから彼の言葉を否定する。
「それも違うよ。零崎人識くん。人間は人間を変えることが出来る。
それが――あんまり寓話的なことは言いたくないんだけど――きみの言うところの心の力だ」
阿良々木火憐の姿が脳裏をよぎる。
哀川潤の言葉が脳裏をかすめる。
様々な出会いがあった。別れがあった。
――その中で、ようやく宗像形と言う存在は変わることができたんだと、彼は覚える。
「人を裁く以上、多少の無茶はあるかもしれない。ともすれば火憐さんの望まないことだってやる羽目になるかもしれない。
それでも僕は、火憐さんの心に応えたいんだ。それが、僕のしたいことだから」
彼女の信じた、自分自身を信じる。
――《正義そのもの》としての使命を、全うしたい。
人識にしてみればついていけない思考だった。辟易とした表情を浮かべる。
「わっかんねえなあ。じゃあ教えてくれよ。心はどこにあんだ?」
先ほどの問いを繰り返す。
宗像は迷うことなく答えた。
「だったら殺してみなよ。僕の中には火憐さんのような、燃える心があるはずだから」
だから、殺すと。
凄まじい速さで突きを繰りだす。
人識は愉快そうに頬を歪ませる。
「へえ」
ここでようやく、人識の意識が宗像へ向く。
藍色の瞳の奥で燃える情動を感じた。
そういえば、《正義そのもの》の属性(カード)は解してねえな、と独り言つ。
「そりゃあいいや」
人識の瞳の色が変わる。
飄々とした、掴みどころない態度が一変した。
少しでも近づけば、良いも悪いもなくすべて等しくバラバラにされそうな佇まい。
《殺し名》序列第三位の座に違わぬ気迫――鬼迫。これはまさしく、《鬼》の証。
宗像の突きを人差し指と中指で挟む。
それだけで、刀の動きが完全に静止する。
宗像は刀を手放し、一度距離を置く。
だが、攻撃の手はあくまで緩めない。
偶然の産物でしかないが――今この場は、千刀巡りの舞台の上。
宗像の土俵の上なのだ。次なる刀を携え、地と並行に構える。
人識は挟んだ刀を刀身から折って捨てる。
そして新たに千刀を握った。斬刀ではないのが口惜しいが――それは蝙蝠の時のためにとっておこう。
意を改め、標的を両の瞳が捉える。両手に刀、つまりは臨戦態勢だ。
今ここで言うべき言葉は決まっている。
「そんじゃいっちょ、殺して解して並べて揃えて、晒してやんよ」
「だから裁」
――――ボン、と鳴り響く軽い音。
「く」
その次の言葉を繋ぐはずの口が、頭もろとも宙を舞う。
頭部をなくした身体が、徒然と立ち尽くしている。
爆発による火花が原因だろう、宗像の首元だったであろう場所は、微かに燃えていた。
○
供犠創貴と真庭蝙蝠とが宗像形とはどういう人間かの説明を受けた後。
つまりは玖渚友とネットカフェで対談した後のこと――真庭蝙蝠は一人退室するように促される。
理由としては宗像形の見張りという尤もなものであったが、しかし真庭蝙蝠が真面目に仕事をしたかと言うとそんなことはなかった。
真庭蝙蝠は考える。
裏切るのならそろそろ頃合いなのではないかと。
しかし、供犠創貴、及び玖渚友が単なる無能ではない、同時に非力な人間であることは承知していた。
結果としてまだその時機ではないと判断する。殺す機会はいずれあるだろう――ともすれば、自分が手を下す必要もないかもしれない。
それでも、何か弱みを握ることはできないだろうかと、残された供犠と玖渚の会話に耳を傾ける。
真庭忍軍は暗殺に特化したしのびではあるが、忍者である以上諜報活動などの基礎などは会得していた。
幸いなことに、ネットカフェに防音装置は備え付けられてなかったので辛うじて会話を聞きとることができる。
蝙蝠からしてみれば残念ながら、二人の(ついでに場に居合わせている水倉りすかの)弱みなどを握ることはなかった。
それでも無駄であったかと言ったら、そういうわけではなかった。
耳にしたその瞬間こそ、大して意味のない行為であったと流したが、思い返して見ると中々愉快な会話である。
「――つまり、都城王土の《異常性(アブノーマル)》は《人心掌握》というよりかは、《電気操作》っていうことか」
「そう。環境次第では雷の放出も可能なようだけど、行橋未造がいない今は不可能だとは思うよ」
供犠が言葉にして整理するのを、玖渚が補足を加えながら確かな情報として固める。
これそのものも蝙蝠にとっては有益な情報ではあったが、《異常性》の使用法を認知していない。
そこまで重要性を感じずにいた。
「確かに人間には電気信号が流れている――その電気を操れば擬似的な《人心掌握》は可能だな」
「厳密に言うと機械と人間とに流れている電気は別物なんだけど――まあ結果として操れるんだからその辺は良いかな」
そこで一度会話が途切れた。
仕切り直す様な溜息が蝙蝠の耳にも届く。
「しかし驚いちゃった。きみたち、都城王土に遭遇していたんだね。それはなんともな奇縁だよ」
「ぼくとしてはあんたが都城王土を知っていることの方が驚きだけどな」
「その辺は追々としてさ、何か掴めた?」
しばらくの間が合って、供犠の声が聞こえる。
「さっき首輪の構造とか解説してたけどさ。――言って首輪も所詮はコンピュータで動くような代物だろ?」
「まあ、そうだね。現状どうしようもないっていうのが判明したけど、設備と道具さえしっかりしてれば何とか出来なくもない……ってのは話したよね」
「ああ、その点に関しては信用するほかないからな。信用はしている。けど」
そこで、供犠は言葉を区切る。
推察するに、頭の中で情報を整理して、何か言葉を選んでいるようだ。
「あいつの《電気操作》は主催者の一員の能力だ。都城王土が実地班だったことを踏まえても、あまり対策が練られてないんじゃないかと思ってな」
「確かにそうかもしれないけど、それがどうしたの? 話を聞く限り――行橋未造を探さないことには、彼をこちら側の駒として考えるのは早計じゃない?」
「その通り。だけど、そいつの力なら首輪の解除ぐらいなら可能である確率は高そうなのには違いない」
「むー、もしかして首輪の解析なんて無意味だって言いたいの?
僕様ちゃんの苦労を全否定だなんておーぼーだー! 英語風に言うとOH Border!」
「そういうつもりもないんだがな、これまで通り首輪の解析にも努めてほしいんだが……」
そこで、供犠は会話を打ち切った。
まだ確証を持てることではない。話すような時機ではない、と。
しばらくの間をおいて、今度は玖渚から言葉を切り出す。
「……さっきは、ああ言ったけど、都城王土が必ずしも首輪を解除できるかって言うと、そういうわけじゃないことは覚悟しておいてよ。
人質が囚われている件といい、元々の不知火袴との関係性を顧みても、彼は主催の中でも単なる末端である可能性は重々ある」
「末端ならば切り捨てても構わない――首輪の構造なんて知る必要もないってことか」
「敢えて常識に囚われるんならさ、解析解除なんて、構造を知ってこその話じゃない?
それこそ、彼に僕の《異常性》でもあれば話は別だけどね。残念ながらそうじゃない」
「蓋を開けてみないことには分からない、か。どちらであれ、もう一度会う必要があるようだ」
どちらのものかも分からない溜息を聞いて、蝙蝠は静かに鼻を鳴らす。
首輪の解析なんて関係ない。結局のとこ、ルール無視をしない限り、自分が優勝すればいい話なのだ。
随分と昔にも感じるが、スーパーマーケットで某
戯言遣いが真庭忍軍の長・真庭鳳凰に告げたように、
優勝した後、不知火袴と言う老人が当初の約束事を反故する可能性もある。
最後となった者の首輪を爆発して幕を締めくくる――なんて落ちも考えられる以上、そりゃ首輪を解除するに越したことはない。
しかし、それでも最優先に考えるべきことにはどうしても思えない。
これ以上はいいだろう――と真庭蝙蝠は踵を返し宗像形の眠るロビーへと向かう。
足音一つ立てずに歩く様は、まさにしのびの鑑と言えた。
○
その姿は――不思議と整ったものである。
傲然とした風貌に、逆立つ青髪に、青い瞳。
真庭蝙蝠が変態した姿は、紛れもなく都城王土と、玖渚友。
《改竄(ハッキング)》と《発信(アクティブ)》の結合体だ。
忍法《骨肉小細工》応用編。
複数人の姿に擬態して――他人の《異常性(アブノーマル)》を複合するという技術。
今回の場合は玖渚友の《超人的電脳理解》及び《改竄技術》と、都城王土の《電気操作》の複合により、超越的な改竄能力を手に入れた。
それは、このバトルロワイアルにおいて肝ともなる首輪の誤作動を招くほどの力を持っている。
真庭蝙蝠は逃げちゃいなかった。
むしろ、ずっと機を窺っていたのだ。
宗像形の溢れんばかりの殺意に紛れてひっそりと、ネットカフェの外で。
殺意に敏感な零崎人識でも捉えきることは出来なかった。
曲がりなりにも、身を隠すのはしのびの得意分野なのだ。
そして現在。
宗像形の首輪が爆発し、宗像形の首が宙を舞っている。
明らかに――火を見るよりも明らかに、死んだ。
「――っ!」
人識は僅かに垣間見た殺意の出所へ駆けつけるべく、ネットカフェを窓から飛び出した。
しかしそこには人の姿はとっくになく、もぬけの殻である。
「蝙蝠、か?」
言葉にしてみるが、返事が返ってくるわけもない。
しばらく沈黙し、考察してみるも、これといった妙案が浮かぶ訳もなく、確固たる証拠を発見することもなかった。
手詰まりである。
深い溜息を吐き、げんなりと肩を落とす。
結局のところ、人識は何の成果を得ることもなかったのだから。
殺そうと思えば、曲絃糸で縛りあげた時に殺せただろう。
しかし零崎人識はそれをしなかった。
率直に告げるなら、恐れたのだ。
零崎一族の切り込み隊長にして長兄・
零崎双識から伝え聞いている奇襲。
曰く、手裏剣砲。口から凶器を解き放つ技だという。
そんなものがあると聞いちゃあ、のこのこと近づく訳にはいかなかったのだ。
故に確かめるように一歩一歩着実に歩を進めたのだ――その結果が今現在だと言うと、てんで笑えないが。
それでも人識は笑う。
かはは、といつもと変わらぬ調子で。
「逃げられちまっちゃあ仕方ねえか」
気持ちを切り替えた人識はネットカフェに戻り、突き刺さった千刀の幾つかを見繕い、落ちていた斬刀と絶刀を拾い上げる。
ついでにと、宗像のものであったろうディパックの中身を移し替えた。斬る
少し整理の必要があるとも感じたが、斬る、最終的にはドラえもんよろしく四次元ポケット空間の利便性に、斬る、甘んじる。
どれだけ入れても、斬る、満たされないというのはありがたいものだ。
出発の準備を済ませて軽く身体を伸ばす。
軽く欠伸をしながら斬る。
宗像形の身体を切り刻む。
液体と固体との区別がつかなくなった頃、彼は手を休めた。
「…………ねえじゃんかよ、正義の心」
やれやれといった調子で呟いて、されど昔ほど気に留めることもない。
むしろ良く斬れる斬刀・鈍の切れ味に興味が惹かれる。
――何でも切れるとはよく言ったものだ。
骨も肉も関係ない。この刀を前にしたら、そんなものはもはや同一である。
実はこの時、誤って薄刀・針をも斬ってしまったのだが、認識もしてない人識には関係のない話だった。
満足いったのか、にやりと口角をあげると。
「さてと、そろそろ欠陥製品が死にかけててもおかしくない頃かな」
戯言遣い――《なるようにならない最悪》――《無為式》。
死んだ魚のような目をした彼をちょっくらおちょくりに行くかと歩み出す。
玄関に差し掛かったところで、はたと電話の主を思い出す。
欠陥製品を思い浮かべていたら、あの溌剌とした声を連想したらしい。
「そういや無事に、禁止エリアから逃れられたのかね」
心配する間柄でもない。
それでも聞いてしまった以上は意識してしまう。
もしかすると先の宗像形のように首が飛んでいるかもしれない。
「――なんて、そんな柄でもなさそうだな」
あの一瞬だけで理解した。
理解させられた――というべきか。
なるほど、欠陥製品の知り合いなだけある。
人識は一人納得し、場所も場所だし案外近くに居るかもなと――適当なようで殊の外事実をかすったことを口走るが、
彼としても深く考えて喋った訳ではない。あっさりと流す。
「あー、そういや」
何も考えなくてもいい時に限って、無駄に頭は働くものだ。
鮮烈な印象を残した彼女との会話を思い返していると、会話中に出てきたあのスパッツ女を思い出す。
あーあ、と漏らしてから、面倒臭そうに。
「伊織ちゃんはどうしてっかねえ。いまいち気乗りしねえが、どーすっかなあ」
呟くのであった。
【1日目/夜中/D-6】
【零崎人識@人間シリーズ】
[状態]健康
[装備]斬刀・鈍@刀語 、携帯電話その1@現実
[道具]支給品一式×11(内一つの食糧である乾パンを少し消費、一つの食糧はカップラーメン一箱12個入り、名簿のみ5枚)
千刀・ツルギ×6@刀語、 手榴弾×1@人間シリーズ、青酸カリ@現実、小柄な日本刀、S&W M29(6/6)@めだかボックス、
大型ハンマー@めだかボックス、グリフォン・ハードカスタム@戯言シリーズ、デスサイズ@戯言シリーズ、彫刻刀@物語シリーズ
携帯電話その2@現実、文房具、炸裂弾「灰かぶり(シンデレラ)」×5@めだかボックス、賊刀・鎧@刀語、お菓子多数、絶刀・鉋@刀語
[思考]
基本:戯言遣いと合流する。
1:水倉りすか、供犠創貴を捕まえるか殺す。この辺りにはいるんだろうし。
2:伊織ちゃんと連絡を取る。合流するかどうかは後から決める。
3:零崎を始める。とりあえず戯言遣いと合流するまでは。
4:哀川潤が生きてたら全力で謝る。そんで逃げる。
5:
黒神めだか? 会ったら過剰防衛したとでも言っときゃいいだろ。
[備考]
※曲絃糸の射程距離は2mです
※曲絃糸に殺傷能力はありません。拘束できる程度です
※りすかが曲識を殺したと考えています
※Bー6で発生した山火事を目撃しました
※携帯電話その1の電話帳には携帯電話その2、戯言遣い、ツナギ、
無桐伊織が登録されています
※携帯電話その2の電話帳には携帯電話その1、戯言遣い、ツナギ、玖渚友が登録されています。
※参加者が異なる時期から連れてこられたことに気付きました
※球磨川禊が気絶している間、鑢七実と何を話していたのかは後続の書き手にお任せします
○
さて、行方を眩ました真庭蝙蝠。
彼の行った作戦は成功でもあり――同時に失敗でもあった。
確かに見事、首輪を爆発させるという結果には辿りつく。
だが、実のところ真庭蝙蝠が狙ったのは宗像形ではない。《殺人鬼》零崎人識である。
さもありなん、これまでの《零崎》との奇縁を断ちきる必要もあり、かつ、人識の力が想像よりもはるかに強大だったからだ。
《言葉の重み》に一定の耐性を得てしまった今、正体不明の奇術・曲絃糸を何度も何度も使われては敵わない。
加え、陰から覗いてみるに、何も彼の本分は曲絃糸にあるわけではないらしい。
観察すればするほどに、出鱈目な奴である。
だから排除しようとした。
しかし、ここで計算違いが起こる。
というよりも、単純に蝙蝠が見誤っていた。
正鵠を射るならば、過信をしてしまったというべきか。
真庭蝙蝠が当初推測したように、忍法《骨肉小細工》の再現度は良くて精々が80%。
仮に玖渚友と都城王土との異常性の再現度が並立して100%を誇ることに成功したならば、今回の失敗は起こらなかったかもしれない。
だが現実には、忍法《骨肉小細工》で80%を越すことはない――完璧とはよほど言い難いのだ。
ならば。
多少の過ちが起こることは道理とも言える。
完璧ではないのなら、それが偶然であれなんであれ、どうしても綻びは生じてしまう。
間違って宗像形の首輪を爆発させてしまったという過ちも、起きる可能性は十分にあった。
彼の名誉のために補足するならば、ただでさえ蝙蝠が忍法《骨肉小細工》を使用したのは、先ほどが初めてなのだ。
使い勝手など掴めていなくても仕方のないこと――《異常性》の結合させるという応用技術を実行できただけでも本来なら称賛に値する。
失敗したのには、確かに彼自身に非はあるだろう。それでも責められるべき話ではないのだ。
さらに付け足すならば、変態する相手の片割れが玖渚友であったというのは始末が悪かった。
玖渚友自身、自ら内包する《異常性》を御しきれているかというとそうではない。
あの青髪を――天才ゆえの劣性の証を見れば、一目瞭然である。
身体を崩壊させてしまうほどの過剰すぎる《異常》――極めて特異な代物を他人の《異常性》と併用できるはずがない。
ましてや失敗したからと言って、首輪の爆発を連続して起こせるはずもない――そんなことをしたら蝙蝠の身体が自壊する。
「――――っっっ」
目眩がする。
かつてないほどの嘔吐感が苛む。
組み合わせとしてはこれ以上ないほど上出来なものだったが、噛み合わせはこれ以上なくなく悪かった。
《暴君》と《王》の手綱を一度に引きうけるのは、流石に無茶が過ぎる。
失敗を悟った蝙蝠は、直ぐ様――今度こそ真の意味で戦線を離脱する。
人識とは紙一重。
身体が都城王土であったことが幸いした。
全身から発せられる、肉体が引きちぎられるような強烈な違和感の中、それでも辛うじて逃げることができる。
走りながら《骨肉小細工》を使用して、変態する片割れを玖渚友から零崎軋識へと代えた。
そうすることで、徐々に身体を蔓延っていた苦痛が収まっていく。
忍法《骨肉小細工》は、皮肉なことに名前の通り、所詮は小細工にすぎず、小手先でしかない。
万事がうまく進むだなんて、あり得ない――それこそ《「魔法使い」使い》のように、作戦を入念に練り闘うことを滅多にしない蝙蝠のことだ。
今回の首輪の爆発だって、転がっていた断片(フラグ)を拾い上げただけに過ぎないのだから。
失敗はどうであったって、ついて回る。
人識を撒けたと判断し、足を止めて呼吸を整える。
一息ついたところで、お家芸である《骨肉細工》で姿を都城王土で統一した。
なんだかんだで、やはり一つの身体で統制を執るのが落ち着くことに違いない。
「忍法《骨肉小細工》」
さて、どうしたものか。
身体に生じる違和感――正直なところ、もう二度と味わいたくない。
それでも、可能性を感じる技であることには確信を持っている。
事実、ルールを無視したわけでもないのに首輪を爆発させる離れ技をやってのけた。
これは是非とも活用したい。もっともっと、自分の可能性を確かめてみたい。
――とはいえ、乱用できないのは正直なところだ。
他の身体で組み合わせたらどうなるのか、まるで見当が付かない。
もしかすると、今回蝙蝠が味わった不快感を上回る衝撃が襲うかもしれない。
そうなるといよいよ逃げることさえ叶わなくなるだろう。
首輪を爆発させることだって同様だ。
今回こそ、運悪く――いや、運よく宗像形の首輪が誤作動したけれど、あの場面、真庭蝙蝠の首輪が誤作動する恐れだって、十二分にあった。
陰からこっそり奇襲を仕掛けようとして、勝手に自滅していては、それこそ目もあてられない事態に陥る。
まだ研究が必要だ。
まだまだ追究が必要だ。
それまでは封印するべきか……?
しかし使用してみないことには探求もなにもない。
堂々巡りする思考の果て、一つの案に収斂する。
「ここまで来たんだ、あのがきを利用するだけ利用し尽くしてやるか……?」
自称するだけあり、彼の頭脳は利用する価値がある。
実際、蝙蝠が《骨肉小細工》という発見に行きついたのも――首輪を爆発させるという発想に辿りついたのも、供犠創貴の言葉があったが故だ。
懸念要素として、彼自身は非力ではあるが拳銃と言う凶器が挙げられる。それでも心臓さえ守れさえすれば十分に対応できる。
「そりゃいいや」
きゃはきゃは、といつものように笑う。
すっかりいつもの調子を取り戻したようだ。
「つっても、ちょいと疲れちまったな……」
宗像形の戦闘の際の傷は、先ほどの《変態》で癒されている。
さもありなん。彼の《骨肉細工》は本来《擬態》に意味があるのだ。
余計な傷のついた擬態に何の意味がある? そんな邪魔でしかない傷など残すわけがない。
どうやって? ――小さな子どもから巨漢の男まで変態する彼に、今更その程度の理屈を求める方がどうかしている。
しかし、それでも疲れは溜まるものだ。
慣れないゆえか、余計な神経を使う《骨肉小細工》の使用も相まって、想像以上の疲労が蓄積されている。
嘆息しながら腰を下ろす。
「どうすっかねえ」
真庭蝙蝠は零崎人識の声でけらけら笑う。
それはそれは、愉快そうに。
【1日目/夜中/E-5】
【真庭蝙蝠@刀語】
[状態]身体的疲労(中)、都城王土に変態中
[装備]軋識の服全て(切り目多数)
[道具]支給品一式×2(片方名簿なし)、愚神礼賛@人間シリーズ、書き掛けの紙×1枚、ナース服@現実、諫早先輩のジャージ@めだかボックス、
少女趣味@人間シリーズ、永劫鞭@刀語
[思考]
基本:生き残る
1:創貴たちと合流するか? あるいは休むか?
2:強者がいれば観察しておく
3:行橋未造も探す
4:黒神めだかに興味
5:鳳凰さまが記録辿りを……? まさか川獺が……?
[備考]
※創貴と同盟を組んでいます
※現在、変形できるのはとがめ、零崎双識、供犠創貴、阿久根高貴、
都城王土、零崎軋識、零崎人識、水倉りすか、宗像形(144話以降)、元の姿です
※放送で流れた死亡者の中に嘘がいるかも知れないと思っています
※鑢七実の危険性について知りましたが、嘘の可能性も考えています
※供犠創貴に変態してもりすかの『省略』で移動することはできません。また、水倉りすかに変態しても魔法が使えない可能性が高いです
※宇練銀閣の死体を確認しましたが銀閣であることは知りません
※体の一部だけ別の人間の物に作り替える『忍法・骨肉小細工』を習得しました。
○
切り刻まれた死体がある。
約五百の墓標に沈む、解された死体があった。
元の名を、宗像形と言う。
その姿は凄惨かつ悲惨なものだった。
あくまで正義を標榜し、邁進した男の末路にしてはあまりに憐れな幕切れである。
恐らくは死ぬその直前まで、何が何だか分からなかっただろうに――。
――それでも彼は救われたのだろう。
最後の最後まで、正義を信じ、阿良々木火憐と共に寄り添うことができたのだから。
誰が何と言おうとも、報われ、悪を排する正義に殉ずることが出来たのだ、と。
なんて、心にもないことを言うつもりはない。
宗像形。
《正義》に囚われた男。
人は決して他人になれるわけないのに、《正義そのもの》に妄執しまった男。
人を愛した殺人鬼、ここに死す。
――人間の死には《悪》って概念が付き纏うんだとよ
じゃあ、彼にとっての《悪》とはなんだったのだろう。
真庭蝙蝠が引き起こした偶然で死んでしまった彼の、なにが《悪》かったのだろう。
【宗像形@めだかボックス 死亡】
最終更新:2015年12月04日 12:01