変態、変態、また変態 ◆mtws1YvfHQ
まず牽制に一発撃つ。
動いたように見えただけで、気付けば避けられた。
戦闘力も中々悪くない。
そう判断を下す中、何時の間にか手にしていた刀で突きを放ってくる。
避けられない。
分かっていたような調子で蝙蝠が絶刀で防いだ。
横振りをし、互いに距離を置く。
拳銃を構えるがこっちもしっかり目を向けてきている。
まだ冷静だ。
どう乱して隙を突くか。
考えていると、宗像の手が動いたのが見えた。
見えただけだ。
気付いてみれば刀を投げていたらしい。
音を立てて傍へ飛ぶ。
やはり蝙蝠に守られている。
「へぇ」
などと思わず感嘆の声を漏らす。
ぼくが、じゃない。
宗像が、だ。
「守るとは意外だ。だから殺す」
更に手が動いた。
絶刀が煌めき、二本の刀が左右に飛ぶ。
拳銃を構えるが隙があるとは思えない。
舌打ちしていると、僅かに前に出ている蝙蝠の言葉が聞こえた。
「三回だ」
「……三回?」
「おお、三回。あと三回だけ守ってやるからそれまでに逃げな。きゃはきゃは」
「邪魔か」
「邪魔だ」
もう一度舌打ちする。
とは言え動きの一つもまともに見取れてない現状だ。
邪魔なのは事実だろう。
一本の刀を払い落とし、蝙蝠が笑う。
「おれはどちらでも構わない」とでも言うように。
しかし。
しかし蝙蝠に任せる。
それだけが果てしなく心配だ。
どうにも妙な所がある。
裏切る可能性がある。
いや、裏切る可能性がないのはりすか位でそれ以外だったら誰にでもあるが。
だが。
そう思っている間に宗像と蝙蝠がぼくの前で鍔競り合っていた。
二回目。
考えてる時間もない。
「任せる」
「きゃはきゃは!」
「逃げるのかい? 良いよ、逃げても――――だから殺す」
走る。
りすか達のいる部屋に向かって。
宗像の言葉が聞こえ、金属音がした。
蝙蝠の気味の悪い声もする。
一発。
階段が近付いた所で振り返る。
それをまるで狙い澄ましていたかのような、実際狙い澄ましていたんだろう、宗像と、目が、合った。
咄嗟に拳銃を向けようとする。
それより向こうの動きが早いと知っていても。
手を持ち上げている途中、何もなかったはずの宗像の手に刀が握られていた。
やけに。
ゆっくりと時間が過ぎるように感じる。
りすかの魔法の影響か。
末期の集中で生じる思考か。
そんな考えが頭を過ぎる。
中。
その中で、最後に聞こえたのは、
「抱腹絶刀!」
蝙蝠の声だった。
刀が乱れ飛ぶ。
ある刀は窓を突き破り。
ある刀は壁に突き刺さり。
ある刀は本棚を崩壊させる。
宗像形の取った戦法は単純だった。
数打てば当たる。
否。
数投げれば当たる。
既に投擲した刀の数は四百と二十一本。
ネットカフェの内部至る所、刀が突き刺さっている状態だった。
それと同じだけの数の刀の鞘も転がっているような状況だった。
しかしなおも投げる。
苦汁を嘗めるように。
休まずに投げ続ける。
何故か。
簡単だ。
当たらないからだ。
「きゃはきゃはきゃはきゃはきゃは!」
決して広くなく、むしろ物が雑多に置かれている分だけ狭く感じる。
そんなネットカフェを、真庭蝙蝠は飛び回る。
蝙蝠が取ったのは逃げの戦法。
本棚の上を駆け。
テーブルを蹴り。
天井を跳ね回り。
そして隙を突く。
「しゃっ!」
「っ!」
突き。
ただの突きではない。
絶刀・鉋。
頑丈さに焦点を置かれた刀。
更に蝙蝠の、変態した殺人バット振りの愚神礼賛
零崎軋識の、身体能力が合わさり受けに使われた刀を容易く砕く。
だが、駄目。
受けられた衝撃で蝙蝠の手元が止まった瞬間、既に宗像の手には別の刀。
別にして同一。
千刀・ツルギ。
全く同一の使い捨ての刀。
首へと振るわれそして宙を斬った。
既に蝙蝠の姿はテーブルの上にある。
再び、刀が投げられるに到った。
「きゃはきゃはきゃは」
完成形変態刀二本。
絶刀。
千刀。
一本で国一つと言われるだけ有りその戦いは地味であり、凄まじい。
もしこの現場に
供犠創貴がいれば。
既に串刺しになってそこらの壁にでも磔られていただろう。
幸か不幸か。
逃げた最後の瞬間。
刀を投げ付けようとした刹那。
注意が逸れたその時。
蝙蝠がその隙を逃すまいと突きを放っていなければ。
宗像が蝙蝠の突きを防がなければ。
創貴は、磔になっていただろうが。
とにもかくにも戦いは続く。
延々と刀が投げ続けられ。
延々と鞘を投じては出し。
延々と様々な場所を駆け。
隙を見ては、突きを放ち。
見付けられては刀で防ぐ。
延々と。
延々と。
続くかに見えた。
「!」
異変は、宗像から起きた。
刀を取り出しはした。
しかし、別の刀。
薄刀・針。
薄過ぎる芸術品と言って差し支えのない刀。
その刀身を光が透ける。
笑ったのは蝙蝠だった。
簡単な話。
待っていたのだ。
「きゃはきゃは! やっとかよ!」
本棚は最早壊れた物しかないからか、蝙蝠が床を蹴る。
振るわれる絶刀を宗像は下がって避ける。
受けれないから、避けるしかない。
待っていたのだ。
蝙蝠は。
なるほど宗像の所有する暗器の技は驚くべき物だ。
何処からともなく刀が現れる。
しかし。
それは。
何もない所から現れる訳ではない。
あくまでもある物を出せる。
それだけなのだ。
故に。
千刀を使い切る瞬間を。
投げ終えるその時を。
蝙蝠は待っていた。
粘り強く。
辛抱強く。
「きゃはきゃはきゃはきゃはきゃは!」
「くそっ!」
宗像が薄刀を引っ込め、刺さった千刀に手を伸ばした。
殺しの技術。
殺さない技術。
宗像の有するそれは卓越した物である。
しかし果たしてそれは。
生粋の殺人鬼の体と生粋の殺人忍の経験。
その二つを併せ持つ相手に勝る物なのか。
刀身が折れ吹き飛ぶ。
柄を投げ付け次に手を伸ばす。
それは、宗像が圧されていると言う状況が全てを物語っていた。
「おいおいどーしたっちゃ? だから殺すんじゃなかったっちゃぁあ?!」
「言われなくとも分かってる。だから、殺す!」
刺さっていた千刀を持って押し返す。
しかし一瞬。
数回打ち合えば強度の差が出る。
それだけではない。
と言うよりむしろこっちが大本命だ。
片手と両手。
生じる威力も自ずから出る。
その差はどう足掻いても埋め難い。
つまり簡単に言えば、宗像は全てに置いて蝙蝠に負けている。
それでもまだ負けていないのは、執念からだろう。
悪を裁く。
一念によって。
だが所詮、思いによって覆せる差などそう有りはしない。
千刀が折れる。
柄から手を離して次を取ろうと空を掻く中、
「抱腹、絶刀っ!」
宗像の肩に、刀が、突き刺さった。
貫かれたのは、左肩だった。
幸運にも。
いや、咄嗟に避けようとした結果、左肩に刺さった。
刺さった向き。
刃は体の外側に向けてだ。
良かった。
そう息を吐く。
蝙蝠の顔、今は軋識の顔だけど、が歪むのが間近に見える。
末期の息とでも勘違いしたんだろうか。
勘違いしてくれて良かった。
だから殺す。
刀一本もなく、身軽な体を横へとずらす。
ゴリッ。
とでも形容するような音が体を伝ってくる。
この先、最早左肩はまともに動かす事は出来ないだろう。
なんて考えながら、さっき取り損ねた刀を取った。
幸い蝙蝠は近い。
「んな、ぁ――」
僕の行動が予想外だったようだ。
単に、刀を取るために体をずらして、その所為で左肩が抉られただけなのに。
だから、
「殺す」
横に薙ぐ。
後ろに飛び退く事で避けられた。
でも幸いな事に、絶刀を落としていった。
それを、蝙蝠に向けて蹴り放つ。
宙を回転しながら飛んでいく刀。
蝙蝠なら平然と取れるのだろう。
「だけど」
殺す。
取ろうと手を伸ばし掛けた瞬間。
逃さず近付いて、今度はこっちが突きを放つ。
身を捩って避けられる。
でも絶刀がその胸元を裂いていった。
「ぐお」
怯んだ。
だったら殺す。
斬り殺す。
刀を振る。
跳んで避ける。
返す刀を投げて追撃。
それは蝙蝠が両手に挟んで止めた。
流石だ。
でも問題なく殺す。
次の刀は既に取ってある。
胴を斬り裂くつもりで振る。
でもそれは服を斬るに留まった。
「ちぃっ」
舌打ちした蝙蝠が、持っていた刀を振ってくる。
だけど数合。
打ち合っただけで折れた。
絶刀を一回二回受けていたのかもしれない。
だから殺す。
透かさず振り上げる。
とは言え流石に速い。
逃げに入っているその姿を認め、振り下ろしてた刀を離す。
生憎、頭の近くを掠めていっただけだった。
ついでに言えばとっくに割れていた窓から外に出て行った。
でも問題ない。
駆け寄り際に次の刀を取る。
偶然にも蝙蝠の近くに刀はない。
ただ逃げる。
その後を追う。
けども、壊れた本棚の一部を蹴り飛ばされやむなく足を止めた。
追おうにも、少し離れた所で既に立ち止まっている。
手には絶刀を握って。
ああ、やたら後ろに下がっていくと思ったらそう言う事か。
「……きゃはきゃは、なるほどなるほどちゃ。むやみやたらと投げてたのは、この準備を整えるためだった訳かっちゃ?」
「さぁ? でも名付けるならこの状況――」
見回しながらおどけてみせる。
あえて余裕を装う。
正直、左肩の痛さでまともに考える事もままならない。
ただの偶然だ。
到る場所に刺さった刀が、あたかも僕に味方するようにある。
ただの偶然。
投げようと。
折れようと。
砕けようと。
関係ない。
地形が。
千刀が。
味方している。
「――千刀巡り、とでも言うのかな。だから殺す」
消耗品としての刀。
そうは知ってても折るのにどうしても手心加えちまう。
何せ四季崎の作った完成形変態刀十二本が一つ。
千刀・ツルギ。
千本で国一つ買える刀な訳だ。
困った。
特に困るのは宗像だ。
まさか肩にぶっ刺しても平然と戦い続けるとは。
だが。
と、そのぶっ刺した肩を睨む。
血止めもせずに戦えばそりゃ血が出る。
出続ける。
何れは出血で死ぬだろう。
だからそれを待てば良い。
「きゃはっ!」
なんて甘い事考えるかよ。
ぶっ刺したい。
斬り殺したい。
絶刀・鉋で殺したい。
何度も何度も切って斬り付けて斬り裂いて斬り開いて斬り解いて殺して殺して殺して殺して殺して。
殺してやりたい。
だってのに。
「抱腹絶刀!」
「――だから? 殺す」
まるで。
まるで千刀が味方してるようじゃねえか。
いや実際問題偶然だ。
偶然折れてもすぐ近くに千刀の一本がある。
投げてもその傍に千刀が刺さったままある。
偶然だ。
偶然に過ぎないはずだ。
だってのにまるで。
そう、まるで千刀の持ち主みたいに。
「余裕で振る舞ってんじゃねえぜ! きゃは!」
「っく、う」
全力の横振りを叩き込む。
当然片手で受けれる訳がない。
刀は折れ、吹っ飛んでいった。
一気に距離を詰め絶刀を振り下ろす。
だが外れた。
逸らされた。
千刀で、だ。
偶然近くに刺さってた。
本格的に嫌な感じがしてきた。
条件で言えば全部が全部、俺の方が勝ってるはずだろ。
動き回って攻めてるのは俺の方だ。
だってのに何で、
「きゃはきゃはきゃはきゃはきゃはきゃはきゃはきゃはきゃはきゃはきゃはきゃはきゃはきゃはきゃはきゃはきゃはきゃはきゃはきゃはきゃはきゃはきゃはきゃはきゃはきゃはきゃはきゃはきゃはきゃはきゃはきゃは」
こんなに、追い詰められてる気分になってんだ。
殺したい。
殺したい。
殺したい。
だからよ。
刀風情が。
邪魔するんじゃねえ。
「いい加減に」
「っぐ」
「死ねぇ!」
砕ける。
持ち変える。
堂々巡りが続く。
なんだってんだ。
なんだってんだ。
なんだってんだ。
「っ?!」
袈裟切り。
避けるために下がった。
その脚が、何かを踏んだ。
少しだけ滑る。
そう。
致命的な少し。
振り上げられる千刀。
防ごうにも、絶刀の重量じゃ間に合わない。
分かった。
確信できた。
離せば逃げれる。
そう確かに思った。
だってのに、手を離せられない。
「あ」
なるほど。
こりゃ毒だ。
思い当たってみればどっかから可笑しかった。
絶刀で斬り殺したいと思う辺り可笑しかった。
卑怯。
卑劣。
それが売りなのに真っ向から斬りあってんだ。
全く笑えない。
「だから……裁く!」
「が、ぁああ!?!」
斜めに切り裂かれる。
着いた片足で後ろに跳んでなければ死んでいた。
幸いにして致命傷とまではいかないだろう。
だが、今、受けたのは拙過ぎる。
絶刀が手から落ちた。
いやそれはむしろ良い事かも知れない。
だが状況が一気に最悪にまで落ち込んだ。
体勢を立て直そうとするよりも、痛みでか足が滑って転ぶ方が早い。
それでも。
這うようにしてでも距離を置く。
置きながら確認する。
踏んだのは、千刀の折れた刀身。
つくづく敵らしい。
危機と相まって、手心を加える理由もいよいよなくなってきた。
この状況を脱せられれば、だが。
「………………」
冷めた目が俺を見る。
正義、ねえ。
正義のために殺す、ねえ。
「きゃは、きゃは」
下らねえ。
喰鮫にでも聞かせてやりたい。
きっとあいつはこう言うだろう。
「そんな理由を作って殺すぐらいなら、そもそも殺さなければいい」と。
「殺すのならば一々、理由付けするのは下らないし、馬鹿馬鹿しい」と。
「楽しいですね楽しいですね楽しいですね……人殺し、楽しいですね」と。
笑って殺すだろう。
理由もなくたって殺す。
なんであいつが死んだんだか。
なんて。
軽い現実逃避をしてる間にも宗像の奴が近付いてくる。
余裕を持って。
警戒からか。
油断からか。
どちらにしろ、時間が足りない。
現状一番良いのは都城王土の体だ。
全てが最上位にくる体。
だが、そうなるために骨肉細工をする時間はない。
しかしまあ刀を振り下ろされれば、腕だろうが足だろうが今の筋力じゃ止めるには足りないだろう。
今の、軋識の体じゃ。
今しか機会がない。
試して、みるか。
そうして。
目を閉じた。
こいつが起きる前。
供犠創貴との会話を思い返す。
「なあ蝙蝠」
「なんだ?」
「お前の魔法だが」
「忍法だ」
「どっちでも良い。とにかくそれは、全身しか変える事が出来ないのか?」
「どう言う意味だよ?」
「簡単な話だ。部分部分を別の人間のパーツに組み替える事が出来ないのかって言ってるんだ」
「パーツ?」
「……腕だけ別の人間の物にするとか、そんな感じだよ。あるいは、完全に別の形にするとか。このマンガみたいにさ」
「封神演義? きゃはきゃは、別の人間の体をねえ?」
「どうだ?」
「そりゃ出来ないな」
「……」
「きゃはきゃはきゃは。
人間ってのは何だかんだ言って全部が全部合わさって統制が取れてんだよ。
足、腰、腹、腕、首、頭、その全部で。
声聞きゃあ分かるだろ?
人それぞれってのが。
重心の取り方だけでもそれぞれ違うんだ。
それなのに一部だけ別の人間の物にするってのはつまり、その統制が崩れるってこった。
例えばお前の足だけ別の人間の足だったらどうする?
長さが違う。
重さが違う。
筋量が違う。
それで十分な動きが出来る訳がねえ。
あくまでその封神演義ってのに出てる奴が絵に過ぎないからってだけで、どうやったって」
「蝙蝠」
「ちっ……なんだ」
「つまり、「可能」って事だよな」
「………………」
「まあ聞けよ。
今の話を聞く限りじゃあどうやってもその結論に行き着く。
お前が言ってるのはあくまで出来ない事にするためのお理由付けだ。
長さが違う?
重さが違う?
筋量が違う?
それがどうした?
それが出来ない理由になるのか?
ならないよな。
単にお前が、お前自身に限界を付けてるだけなんだから。
骨肉細工。
聞けば聞くほどよく出来てる。
やろうと思えばお前自身の想像で、最強の肉体を作り上げる事だって出来るじゃないか」
「それは」
「出来ないのか? 本当に、出来ないのか?」
「精進が足りないんだよ」
「お前は今まで化けた人間の数を覚えてるのか?」
「…………」
「なあ蝙蝠」
「一歩、踏み出せ」
真剣白刃取り。
情け容赦なく振り下ろされた刀を、蝙蝠は足で止めた。
足。
そこだけが、今までと異なった物に変わっていた。
宗像の表情が変わる。
余裕が、驚きに。
足で圧し折られた刀を見て、愕然に。
動きが止まったのはどれだけか。
十秒か。
三十秒か。
一分か。
とにかく、蝙蝠の腕が、抜き手が放たれるまで硬直が続いた。
飛び退いた宗像の、心臓があったであろう場所で蝙蝠の右手が握り締められ、解かれる。
当然のようにすぐ脇にあった刀を抜く宗像。
その視線の先で、両足で立つ蝙蝠の姿は、酷くチグハグだった。
「……きゃは」
両足が可笑しい。
右腕が左腕と違う。
別に人間の体を付けたように、奇妙な外見。
その蝙蝠が、自分の喉を左手で触れ、動かした。
「きゃはきゃ」「はきゃは」「きゃは」「きゃ」「は」「きゃは」「きゃはきゃは」「きゃ」「はきゃは」「きゃはき」「ゃはきゃ」「は」「きゃは」「きゃは!」
笑う声。
次々と声が変わっていく。
不気味さからか、宗像が一歩後ろに下がった。
そこで、笑い声は止まった。
声だけ止めて、蝙蝠が笑う。
口が裂けんばかりに。
「名付けるのが、忍法・骨肉小細工なの…………なんてな!」
子供の、小さな少女のような声で、言った。
「部分だけ別の人間に変える。なるほど、やってみりゃ案外なんて事ねえし想ってたほど難しくねえが……出せる力は八割が良い所か?」
「…………」
「笑えよ、宗像。お前のお陰だぜ、こうなれたのは?」
「……その腕に、見覚えがある」
「そうかい。もう少ししたら教えてやるよ」
「必要ない。だから」
「冥土の土産によ!」
「裁いて、殺す!」
同時に、二人が間合いを詰める。
上段に振り上げられた刀が。
構えて繰り出される右腕が。
同時に、
「これは兄貴の言葉なんだが」
止まった。
その動きが止まった。
今まさに振り下ろされようとする刀が。
今まさに貫こうと構えられていた腕が。
おおよそ一メートルほどの距離を置いて、不自然に止まった。
その、二人の間に一人、居た。
唐突に、居た。
最初からその場に居たかのように極自然に。
にやにやと笑って。
「人間の死には『悪』って概念が付き纏うんだとよ」
「な、なななな」
「が、がががが」
「お? 何が言いたいかって? そうだな。派手に暴れ回ってた所為で、外にまで刀吹っ飛ばしてた所為で、出所探して歩き回ってた俺の耳にド派手な騒音が入った所為で、いやそもそも偶然俺がこっちの方に用があった所為で、俺が来ちまったって訳だ。えーっと宗像とか言ったっけ? あと、蝙蝠。まあ要するにだ」
どちらを向くでもなく、ゆっくりと刀を抜き、言い放つ。
奇しくも。
完成形変態刀十二本の内の二本。
千刀。
絶刀。
更に。
一本。
斬刀。
十二本の内の一本を持つその青年は、一言。
「二人ともこれ以上なく、運が『悪』かった――――ってこった」
と。
笑って言った。
【1日目/夜中/D-6 ネットカフェ】
【供犠創貴@新本格魔法少女りすか】
[状態]健康、りすか達と合流済み
[装備]グロック@現実
[道具]支給品一式×3(名簿のみ2枚)、銃弾の予備多少、耳栓、書き掛けの紙×1枚、「診療所で見つけた物(0~X)」、心渡@物語シリーズ、シャベル@現実、
アンモニア一瓶@現実、携帯電話@現実、スーパーボール@めだかボックス、カスタネット@人間シリーズ、リコーダー@戯言シリーズ
[思考]
基本:みんなを幸せに。それを邪魔するなら容赦はしない
0:宗像形を倒す。一先ず蝙蝠に任せておく
1:ランドセルランドで
黒神めだか、
羽川翼と合流する、べきか……?
2:行橋未造を探す
3:このゲームを壊せるような情報を探す
4:蝙蝠の目的をどう利用して駒として使おうか
5:
掲示板の情報にどう対処すべきか
[備考]
※九州ツアー中、地球木霙撃破後、水倉鍵と会う前からの参戦です
※蝙蝠と同盟を組んでいます
※診療所でなにか拾ったのかは後続の書き手様方にお任せします(少なくとも包帯や傷薬の類は全て持ち出しました)
※主催者の中に水倉神檎、もしくはそれに準ずる力の持ち主がいるかもしれないという可能性を考えています
※王刀の効果について半信半疑です
※黒神めだかと詳しく情報交換しましたが蝙蝠や魔法については全て話していません
※掲示板のレスは一通り読みましたが映像についてはりすかのものしか確認していません
※心渡がりすかに対し効果があるかどうかは後続の書き手にお任せします
※携帯電話に
戦場ヶ原ひたぎの番号が入っていますが、相手を羽川翼だと思っています
※黒神めだかが掲示板を未だに見ていない可能性に気づいていません
【1日目/夜中/D-6 ネットカフェ】
【宗像形@めだかボックス】
[状態]身体的疲労(大) 、精神的疲労(中)、殺人衝動喪失?、左腕(肘から先)欠損、腹部に切り傷、各部に打撲と擦過傷(怪我はすべて処置済み)、左肩欠損(処置せず)、出血(大)、曲絃糸による拘束
[装備]千刀・ツルギ×1@刀語、スマートフォン@現実、ゴム紐@人間シリーズ
[道具]支給品一式×3(水一本消費)、薄刀・針@刀語、トランシーバー@現実、「包帯@現実、消毒用アルコール@現実(どちらも半分ほど消費済み)」(「」内は現地調達品です)
[思考]
基本:阿良々木火憐と共にあるため『正義そのもの』になる。
0:『悪』を殺す。
1:供犠創貴と真庭蝙蝠を殺す。
2:伊織さんと様刻くんを殺す。
3:『いーちゃん』を見つけて、判断する。
4:黒神さんを殺す?
5:殺し合いに関する裏の情報が欲しい。
6:殺人鬼だから
零崎人識も殺す。いやそれより何が起きた?
[備考]
※生徒会視察以降から
※めだかボックス、「十三組の十三人」編と「生徒会戦挙」編のことを玖渚から聞いた限りで理解しました
※
阿良々木暦の情報はあまり見ていないので「吸血鬼」の名を冠する『異常』持ちだと思っています
※
無桐伊織を除いた零崎四人の詳細な情報を把握しています
※参加者全員の顔と名前などの簡単な情報は把握しています
※携帯電話のアドレス帳には櫃内様刻、
玖渚友が登録されています
※
第一回放送までの死亡者DVDを見ました。誰が誰にどうやって殺されたのかは把握しています
※千刀に持ち主と認められた可能性があります
※左肩の出血を止めなければ出血多量で死ぬ可能性があります
【真庭蝙蝠@刀語】
[状態]身体的疲労(小)、零崎軋識(両足と右腕は都城王土、喉は
水倉りすか)に変身中、胸部に切り傷、左肩から右腰にかけ切り傷、全身に裂傷、曲絃糸による拘束
[装備]軋識の服全て(切り目多数)
[道具]支給品一式×2(片方名簿なし)、愚神礼賛@人間シリーズ、書き掛けの紙×1枚、ナース服@現実、諫早先輩のジャージ@めだかボックス、
少女趣味@人間シリーズ、永劫鞭@刀語
[思考]
基本:生き残る
0:宗像形を殺す
1:創貴とりすかと行動、ランドセルランドへ向かう
3:強者がいれば観察しておく
4:完成形変体刀の他十一作を探す
5:行橋未造も探す
6:危なくならない限りは供犠の目的を手伝っておくがそろそろ裏切ってもいい頃かもしれない
7:黒神めだかに興味
8:鳳凰さまが記録辿りを……? まさか川獺が……?
9:げえ零崎人識!
[備考]
※創貴と同盟を組んでいます
※現在、変形できるのはとがめ、
零崎双識、供犠創貴、阿久根高貴、都城王土、零崎軋識、零崎人識、水倉りすか、元の姿です
※都城王土の『異常』を使えるかは後の書き手の方にお任せします
※放送で流れた死亡者の中に嘘がいるかも知れないと思っています
※鑢七実の危険性について知りましたが、嘘の可能性も考えています
※供犠創貴に変態してもりすかの『省略』で移動することはできません。また、水倉りすかに変態しても魔法が使えない可能性が高いです
※宇練銀閣の死体を確認しましたが銀閣であることは知りません
※体の一部だけ別の人間の物に作り替える『忍法・骨肉小細工』を習得しました
【零崎人識@人間シリーズ】
[状態]健康
[装備]斬刀・鈍@刀語 、医療用の糸@現実、携帯電話その1@現実
[道具]支給品一式×8(内一つの食糧である乾パンを少し消費、一つの食糧はカップラーメン一箱12個入り、名簿のみ5枚)
千刀・ツルギ×2@刀語、 手榴弾×1@人間シリーズ、青酸カリ@現実、小柄な日本刀、S&W M29(6/6)@めだかボックス、
大型ハンマー@めだかボックス、グリフォン・ハードカスタム@戯言シリーズ、デスサイズ@戯言シリーズ、彫刻刀@物語シリーズ
携帯電話その2@現実、文房具、炸裂弾「灰かぶり(シンデレラ)」×5@めだかボックス、賊刀・鎧@刀語、お菓子多数
[思考]
基本:
戯言遣いと合流する。
0:蝙蝠と宗像捕まえたし、こいつらで斬刀調べてみるか?
1:水倉りすか、供犠創貴を捕まえるか殺す。この辺りにはいるんだろうし。
2:伊織ちゃんと連絡を取る。合流するかどうかは後から決める。
3:零崎を始める。とりあえず戯言遣いと合流するまでは。
4:
哀川潤が生きてたら全力で謝る。そんで逃げる。
5:黒神めだか? 会ったら過剰防衛したとでも言っときゃいいだろ。
[備考]
※曲絃糸の射程距離は2mです
※曲絃糸に殺傷能力はありません。拘束できる程度です
※りすかが曲識を殺したと考えています
※Bー6で発生した山火事を目撃しました
※携帯電話その1の電話帳には携帯電話その2、戯言遣い、ツナギ、無桐伊織が登録されています
※携帯電話その2の電話帳には携帯電話その1、戯言遣い、ツナギ、玖渚友が登録されています。
※参加者が異なる時期から連れてこられたことに気付きました
※
球磨川禊が気絶している間、鑢七実と何を話していたのかは後続の書き手にお任せします
※蝙蝠達と創貴達のいる場所はネットカフェ内の別の場所です
※千刀・ツルギは折れた物含め500本近くと絶刀・鉋がネットカフェ中に突き刺さっています。また、一部の千刀は外にあります
最終更新:2015年01月17日 15:45