殺人鬼の邂逅 ◆xzYb/YHTdI
「どこ行ったんだろうな。さっきの子」
「さあ。確かこっち方面には来てたけど」
「ならそろそろ見つかってもいい頃だろうがっ!!」
「僕に言わないでくれよ」
理不尽な物言いにたじたじ…というよりは殺したい気持ちを必死に抑えている僕
宗像形とその理不尽な申し立てをしている女の子は阿良々木火憐さん。
自称
正義の味方らしい。ちなみにファイアーシスターズの実戦担当をやってるらしい。
それで僕たちは今地図上でいえばE‐7のあたりにいると思う。
そこでさっきの白髪の女の子を探している。だけど中々見つけられずにいた。
「う~ん。この辺にはいねえのかな?」
「そうみたいだね。じゃあ次に…」
僕たちは次の場所に向かおうとすると。
「ちょっと待つっちゃ」
「あ?なんだお前」
ある男の声によって、引きとめられた。
僕たちを引きとめたのは、麦わら帽子にスリーブレスの白シャツによれよれのズボン、
比較的線が細く華奢な男、そしてすこし赤く染まった釘バットのようなもの。
なんていうんだろう。何だろうこの感じ。
この男は危険で、危難で、物騒な感じで、そして、とても僕と似ている。
それは、どう考えても、良い事ではない。悪い事づくしだ。
男はそう名乗った。
「それであんたらに聞きたいことがあるっちゃ」
「ほう。何だ」
代表して僕が答えた。ちなみに火憐さんはというと既に臨戦態勢をとっていた。
…この男が危険なのを察したのだろうけど、人をみかけで判断するな。といい
僕に手をあげたばかりだろう。横暴だ。
まあ、この場合は正しい行動といえなくもないからいいけど。
僕はというとまだ大丈夫だ。さすがに犬死は勘弁だ。
「この辺でレン、なんか背が高くて背広着て、メガネ掛けた男か、
もしくはトキ、かなり黒の長髪にタキシードの奴だっちゃ
そんな感じの奴見なかったっちゃ」
「生憎ですが、知りませんね。他をあたってくれますか?」
「そうか。ならそうするっっちゃ」
そういうがいなや零崎さんは釘バットを振りかざした。
が。あらかじめある程度は予想できていたので、僕は間一髪避けれた。そして
「ここは退くよ」
「へ?」
すぐに火憐の手を取り逃げた。
零崎さんは僕たちを追ってこなかった。
◇
しばらく走って追ってこなかったのである程度で止まった。
「おい、なんで逃げたんだ!」
どっからどう見ても怒っていた。
「無理だよ。あの人にはどうやったって勝てない。退くべきだよ」
「え?でも悪者だぞ!」
「悪いけど、あの人は普通じゃないよ。雰囲気がやばい。
とてもあんな刀の寄せ集めで勝てるような相手じゃない」
「だけどさ!悪い奴を裁くのが正義だ!ここでやらなきゃいつやるんだよ」
「死ぬよ。冗談抜きで。それにあの人は既に人を殺している。
あの釘バット、血が付いてた。それに血のにおいもほのかに匂った。」
「だからどうした!!」
「は?」
「別にあたしも遊びで正義を語っているんじゃないんだ!
正しく、強く、悪者なんかに負けちゃあいけないんだ!」
「もう一回ゆうけど死ぬかもしれないんだよ。」
「ふん。だから愚門だぜ、宗像さん。正義は、勝つんだぜ」
「………わかった。逃げるのはやめよう。だけど火憐さんは駄目だ。危険だ」
話し合っても無駄だと感じた僕はそう言った。
けれどやはり、彼女は守りたかった。
「はあ?なんだ。あたしの力を疑ってるのか?さっきあんなにしてやったのに」
「いや。君の力は疑っていない」
「じゃあ」
「だけど、あの人は真正面から正々堂々いったところで犬死にするだけだ」
「じゃあどうすんだよ」
「だから本当はここで逃げるのが一番だから。でも
君がそう言うのであれば無理を承知でもやってやる」
「で、何であたしは行っちゃいけないんだ」
「はっきり言って僕の戦い方は一人の方がやりやすい。それに」
「それに?」
「あの女の子も放っておけないでろう。君が探すんだ」
「う~ん。大丈夫か。でも宗像さんがそういうのであればそうなんだな。
なにせあたしが認めた男の人なんだからな。ただし死体で帰ってくるなよ。」
僕は認められるようなことはしてないし、
励ましの言葉としてはいささか間違ってる気がするが。
「君は本当に無茶を言うね。まあ頑張るよ」
「じゃあ後は任せたぜ」
「ちょっと待って」
僕は彼女を引きとめる。
「なんだ?」
「よかったら、僕と友達になってくれないかな?」
「何言ってんだ?いまさらだろ」
本当に不思議そうな顔をしていた。
「…そうだったね」
「じゃあいってくるぜ」
そう言うと走ってどっか行ってしまった。
「……さて、面倒だ。さっさと殺して終わらせよう」
それは、殺人を一回もしたことが無い、殺人鬼のセリフだった。
そう言うと、僕は今走って来た道を引き返した。
◇
全く面倒なことを頼まれたもんだな。いや僕が自分から言ったんだっけ。
はぁ。だいたいあいつにどうやって勝てと言うんだよ。
殺人衝動こそあれど、自殺願望はないぞ。
でも、何だろう。あれだよね。人とこんなに関わりあえたのって、
生徒会以外だったら初めてだよな。そう思うと感慨深いね。
何はともあれさっさあいつを片づけて、火憐さんの元に急がなきゃな。
そう思えば、もう怖くはないな。あんな奴余裕だね。嘘だけど。
さてそろそろ…あぁいた。零崎さん。立ったまま手を顎にあて何か考えているご様子だ。
さっき言ってたレンさんとトキという人の事かな。まあどうでもいいが
じゃあ、挨拶代わりといたしまして、よっと。
僕は刀2本をあの人に向かい投げた。
だが普通に弾かれた。というより砕けた。…当たり前か。
「そこにいるのはさっきの奴っちゃね」
「ああ、その通りだ。僕の名前は宗像形。以後よろしく」
「なんだっちゃ。せっかく見逃してやったちゃのに」
「なに。勝てると思ったから帰ってきただけさ」
「本気で思ってるっちゃ?」
「ああ。今から僕は」
「勝てると思うから君を殺す」「負けないと思うから君を殺す」
「君が危険だから君を殺す」「僕が危険だから君を殺す」
「君が異常だから君を殺す」「僕が異常だから君を殺す」
「君が生きているから君を殺す」「僕が生きているから君を殺す」
「君が死んでないから君を殺す」「僕が死んでないから君を殺す」
「君が僕と会ったから君を殺す」「僕が君と遭ったから君を殺す」
「君が僕と合ったから君を殺す」「僕が君と逢ったから君を殺す」
「君が僕と遇ったから君を殺す」「僕が君と在ったから君を殺す」
「僕のために君を殺す」「世界のみんなのために君を殺す」
「自己満足するために君を殺す」「自己嫌悪するために君を殺す」
「博愛主義だから君を殺す」「偏愛主義だから君を殺す」
「君がいるから君を殺す」「僕がいるから君を殺す」
「気分が舞い上がっているから君を殺す」「気分が悪いから君を殺す」
「愛しているから君を殺す」「憎いから君を殺す」
「何も無いから君を殺す」「何か有ったから君を殺す」
「君が人だから君を殺す」「僕が人だから君を殺す」
「君が鬼だから君を殺す」「僕が鬼だから君を殺す」
「君が悪だから君を殺す」「僕が正義だから君を殺す」
「君が正義だから君を殺す」「僕が悪だから君を殺す」
「君が中立だから君を殺す」「僕が中立だから君を殺す」
「君が敵だから君を殺す」「僕の敵だから君を殺す」
「君が味方だから君を殺す」「僕の味方だから君を殺す」
「君が裕福だから君を殺す」「僕が貧乏だから君を殺す」
「君が貧乏だから君を殺す」「僕が裕福だから君を殺す」
「君が平凡だから君を殺す」「僕が平凡だから君を殺す」
「君が天才だから君を殺す」「僕が馬鹿だから君を殺す」
「君が馬鹿だから君を殺す」「僕が天才だから君を殺す」
「君が強いから君を殺す」「僕が弱いから君を殺す」
「君が弱いから君を殺す」「僕が強いから君を殺す」
「君が怖いから君を殺す」「僕が怖いから君を殺す」
「君が穏やかだから君を殺す」「僕が穏やかだから君を殺す」
「運命だから君を殺す」「因果だから君を殺す」
「必然だから君を殺す」「偶然だけど君を殺す」
「月がきれいだ だから殺す」
「お腹がすいたな だから殺す」
「夢見が悪そうだ だから殺す」
「君とは友達になれそうだ だから殺す」
「殺したい だから殺す」
「そして、何より大切な友人からの頼みだから、君を止める
まあ、厳密には違うけれど、僕は一度解放したら制御できないとおもうからね」
「…あんた、零崎に似てるっちゃ」
「よく分からないが礼を言っておくよ だから殺す」
そういって僕は刀を二本持ち、零崎さんに突っ込んでいった。
無論、そんなのが通じるわけでもなく
「遅いっちゃ」
なんとか、刀で防いだが、また二本なくなった。
だけど腐るほど刀はあるんだ。しばらくは突っ込むか。
◇
どうだろう。刀は百本ぐらいはなくなったかな。
やっぱ駄目かな。なかなか勝てないね。だって向こうは無傷だし。
わかったことといったら零崎さんは僕とは違い、本物の殺人鬼だ。ってことぐらいだ。
本物と偽物。やっぱり違うなあ。
「いい加減にするっちゃ。大人しく殺されろだっちゃ」
「それは嫌だね。約束があるんだから だから殺す」
「もういいっちゃ。殺しにいくっちゃ」
零崎さんは、一気に僕に詰め寄ってきて、
あの釘バットのようなものを僕に向かって振りかざした。
「…あ」
そんな情けない声をあげてしまった。思わず目もつぶってしまった。
そうか、僕は死ぬのか。殺されるってこんな思いなのか。
なんか殺さないためとはいえ今まで悪いことしたなあ。
あーあ。せっかく友達が増えたのになあ。
火憐さん大丈夫かなあ。全くもって僕も弱いね。
やっぱり正義の味方には役不足だったな。
そうだよ。僕はいつだって悪者だったんだ。
人が近づいてきたら問答無用で武器を見せて、怖がらせて、
自分自身で結界を作って、僕はいつも一人だった。
一人で独り。孤独、それはとても、寂しいものだった。
それでも、このあいだ、人吉くんが手を差し伸べてくれて、
友達ができた。とても嬉しかった。
でも、もう終わりだ。終わってしまう。もう少し、楽しい学校生活を送りたかった。
……おかしいな。いくらなんでも遅すぎる。
だいたい一秒にも満たない間に振りかざせるはずだ。
僕は目を開けた。そこには
正義の味方がいた。
…いや、まあね。ありがたいよ。ありがたい。
けどさ、今のはさ、綺麗に死ぬべきシーンじゃないかな。そういう雰囲気だったじゃん。
別に死にたい訳ではない。むしろ生きたいが。
今のこれが小説だったら、拍子抜けした人多いんじゃないかな。
僕は拍子抜けしたよ。
「なんでいるのさ。火憐さん」
「心配だったから見に来てやったぜ。ったくもう少しで死んでるところだったんだぞ」
零崎さんはというと吹っ飛ばされていた。どういう風にすればあんなに飛ぶんだ。
たとえどんな技だろうが不意打ちで出せるような技では無いと思う。
「やっぱどんなつえー奴でも脳震盪ぐれーはやっぱなるか。
う~ん。どうしようかな。叩きおこして説教でもするか」
「やめてほしいな」
僕は即答した。なんて危険なことを言い出すんだ。そんなことしたら僕は今度こそ死ぬ。
そして、この子どんだけ強いんだ。僕が守るなんておこがましいぐらいだ。
「じゃあいいよ。それよりあの子はこの辺にいなかったぞ」
「そう。ならここに用はないな。次に進もう」
「おう」
「それと火憐さん」
「ん?」
「悪いけど、体術の基本、ちょっと教えてほしいな」
「えーっとねー。まずは―――――」
彼女は使える情報から、とても真似できないような情報まで教えてくれた。
今回は失敗してしまったけど彼女を守りたい。
殺したい。だけども、守りたい。矛盾していると思う。
だけどその気持ちが一層強くなった。
偽物だけど殺人鬼が言うセリフでは相変わらずないけれど。
彼女が本物だろうが、偽物だろうが、それは多分関係無いだろう。
助けてもらった恩ではないだろう。
彼女に恋をしたわけでもないだろう。
別に理由はなんだっていいんだ。彼女は守りたい。
それだけでいいんだ。
だって友達なんだから。
【1日目/深夜/F-7】
【宗像形@めだかボックス】
[状態]疲労(中)
[装備]千刀・?(ツルギ)×872
[道具]支給品一式、ランダム支給品(0~2)
[思考]
基本:殺したいけど、死なせたくない
1:火憐さんと行動、彼女を守る
2:誰も殺さない。そのために手段は選ばない
3:殺人衝動は隠しておく
4:機会があれば教わったことを試したい
【阿良々木火憐@物語シリーズ】
[状態]健康
[装備]
[道具]支給品一式、ランダム支給品(1~3)
[思考]
基本:この実験をぶっ壊す。悪人はぶっ飛ばす。
1:宗像さんと行動
2:白髪の女の子と合流したい
◇
E‐7にて
宗像形と阿良々木火憐が去ってから数分後。
「愚神礼賛」こと零崎軋識が目を覚ました。
「…にゃ?俺は何をしていたんだっちゃ?」
前後の記憶があやふやのようである。
「…痛っ。頭が痛むっちゃ。何だっちゃ。思い出せない。
あの闇口衆を殺してから、適当に歩いて、………どうしていたんだっちゃ?」
その姿はあまりに生きた伝説とは程遠いものであった。
「まあいいっちゃ。レンとトキを探すっちゃ」
そう言って彼は歩き始めた。
運が良いのか悪いのか。宗像らとは違う方向に。
【1日目/深夜/E-7】
【零崎軋識@人間シリーズ】
[状態]頭に痛み、擦り傷、仲間が見つからないことへの焦燥感
[装備]愚神礼賛@人間シリーズ
[道具]支給品一式、ランダム支給品(0~2)
[思考]
基本:他の零崎と合流(特にレンとトキ)
1:零崎一賊に牙を向いた不知火袴の抹殺。及びその準備
最終更新:2012年10月02日 08:13