広いんだか狭いんだかわからない世界のとある神社。
そこには素敵な巫女さんと、巫女さんにそっくりのおまんじゅうが住んで居ました。
「れいむはおまんじゅうじゃないよ!おまんじゅうっぽいだけだよ!」
失礼、巫女さんにそっくりな『ゆっくりれいむ』と言うおまんじゅうが住んで居ました。
Σ「あんまかわってない!?」
神社にはお客さんがあまり来ませんが、巫女さんの友達はしょっちゅう遊びに来ます。
巫女さんは「友達とかそういうのじゃない」と言いますが、
れいむは巫女さんがツンデレなのを誰よりも理解していたので、影でニヤニヤ…
「だいたいツン8:デレ2くらいだよ、攻略するときはきをつけて
ゆっくり選択肢をえらんでね!」ニヤニヤ
れいむはその友達を「ゆっくりしていってね!」とお出迎えするのが楽しみでした。
友達は巫女さんがおでかけする度に増えていき、
それにしたがい、れいむも色んな人に「ゆっくりしていってね!」をして…
いつの間にか、れいむは皆から『ゆっくり』と呼ばれるようになったのでした。
「安直きわまりない!」
そんな日が続いていき、
れいむは自分も誰かに「ゆっくりしていってね!」をしてもらいたいと思うようになりました。
「どうせならおなじゆっくりだとはずれがないね!」
しかし神社でお留守番をしていても…
巫女さんのおでかけについていっても…
れいむが他のゆっくりに出会うことはありませんでした。
協力してくれた天狗さんからの話も『見つからない』がずっと続くばかり…
「ならしかたないね!」
ですが、いつも通りのほほんとした調子でれいむは縁側へ昼寝をしに向かいます。
・
別に同じゆっくりがいなくても困らない
たまにご飯よりおうどんが食べたくなる事もあっても
夕飯がおもいっきりご飯なのもよくある事。
だから期待してた分、ちょっとガッカリするのも仕方ないね。
それでも食べるご飯はちゃんとおいしいし、毎日楽しい。おんなじ事だよ!
「なんくるないさー♪」
そう思いながら縁側につくもれいむは眠気がせず、ぼーっと庭中の落書きをみていました。
全部れいむが今まで書いた巫女さんや友達の似顔絵。
最初はそのつもりで描いていた落書き。
「ゆっくりしていってね!」
でも、れいむが自分への「ゆっくりしていってね!」を願うようになった頃から、
落書き達はれいむがいつか会えると想像していた仲間達の絵になっていました。
こんなに仲間がいたら、きっと「ゆっくりしていってね!」だけで日が暮れちゃうね!
こんなに仲間がいたら、ご飯もいっぱいなくちゃだめだからみんなで宴会だね!
こんなに仲間がいたら、きっと毎日ゆっくりゆっくりしてられないよ!
でもこの世界にはほかのゆっくりなんていないよ―「ゆっくりした結果がこれだよ」
れいむはこの時、初めて思いました『ゆっくりしたくない』と
――――
居間へ行くと巫女さんはすやすや眠っている。
起こさないように、音をたてないように
れいむは巫女さんがお菓子をのせるお盆に乗ります。
『おまんじゅうに変身する術』
なんのためにつかうかわからなかったけど、きっとこのためだったんだとれいむは思いました。
(起きたらおいしいおまんじゅうがあるから、それでゆっくりしてね!)
「さあ、おたべなさい!」パカッ
れいむがそう唱えると、その場所には二つのおまんじゅうだけが
ちょこん、と残っているのでした…
■■■■■■■■
「…ゆ?」
…しかし、れいむはまだれいむでした。
おまんじゅうになったはずなのに…。れいむが不思議に思っていると、
隣のおまんじゅうが突然もぞもぞと動きはじめました。
「ゆゆ??」
やがておまんじゅうはぷくぷく膨らみ、れいむと同じ大きさにまでなって、
最後にてっぺんが『ぽんっ!』と弾け、おまんじゅうがまっ黒帽子をかぶりました。
「ゆっ!」
「ゆゆゆ?!」
振り替えったまっ黒帽子の姿は、れいむが書いた『だぜ』の絵そっくり。
『れいむはおまんじゅうになったのに、れいむはれいむで、
なのにれいむのはんぶんがだぜで、でもこのだぜはれいむの絵だったけど、いまのだぜは…』
れいむにはとにかくわけがわかりません。
でも一つわかる事があります『待ちに待った仲間ができた!』する事は一つ。
「ゆっくりして…」
「さあおたべなさい!」パカッ
「ええええ!!」
せっかく出会えた仲間は光の速さでおまんじゅうになってしまい、
れいむは予測外のショックをうけました。
しかし、しばらくすると…
「たべないと…」「「
ふえちゃうぞ!!」」
今度は『だぜ』のほかに『お人形のおねーさん』も増えました。
今度こそ…
「ゆっくりしていっ「「さあおたべなさい!!」」パカッ
「またぁ!?」
そしてまた今度も
「「たべないと…」」「「「「ふえちゃうぞ!!」」」」
天狗さん、お花のおねーさん、おぜうさま、メイドさん…
増えても増えても「おたべなさい!」は続き、そのたびに新しいゆっくりが生まれて…
ゆっくり達の声は妙に楽しげなリズムにのって、れいむもそれに自然と続きました…
さあおたべなさい!たべないと…ふえちゃうぞ!
さあおたべなさい!たべないと…ふえちゃうぞ!
さあおたべなさい!たべないと…ふえちゃうぞ!
さあおたべなさい!たべないと…ふえちゃうぞ!・・・・
―――――――
狭いんだか広いんだかわからない世界、
そこには様々な住人と、住人達にそっくりなおまんじゅう達が居りました。
「おまんじゅうじゃないよ!れいむたちはおまんじゅうっぽいだけだよ」
失礼、ゆっくりというおまんじゅうっぽい住人達がたくさん居りました。
「うー、いぇす!」
相変わらず巫女さんの神社にはお客さんがこないので、今日もれいむは遊びにでかけます。
れいむにもたくさんの友達ができました。
本人は「ひとづきあいってめどいよ!」とか言ってますが、
巫女さんは自分の事もあってか苦笑しながら「はいはい…」と流すのが定番でした。
れいむはその友達をお出迎えしたり、こうして遊びにいってお出迎えされたりするのが楽しみでした。
「ゆっくりしね♪」「ゆっくりなのかー」「
はるですよー!」
たまに思ってたのとだいぶ違うのもいるけど…
「ゆっ、ゆっ」
思ったより大した感動もなかったけど…
「ゆっくりしていってね!」
「ゆ!ゆっくりしていってね!」
れいむは毎日にちょびっとの達成感をてにいれたのでした。
ゆっくり、ゆっくり…
おまけ
・
・
・
「こあ、ぱちゅりーさま?これ、ほんとのおはなしなんですか?」「こぁ?」
「むきゅ、どうかしら?ただのお伽噺なのか…ほんとうの事なのか…」
「ぱちゅりーさまでもわからないんですか?」「ですかー?」
「わたしがいた頃はもうたくさんゆっくりがいたもの…わたしの中の事実はそれだけよ」
「ほんとはじぶんのなかにこそある、ですか」「かー?」
「そういうものね。さ、これを棚にもどしてきて」
「こあ!」「ぁぃぁぃこぁー!」
おしまい。
by.とりあえずパフェ
あとがき
じつは自分のなかでここ最近秋のおたべなさいSP、みたいなくくりで書いたりしてました。
不思議な籠はゆっくり達が自分を「おたべなさい」
らんの焼き芋はゆっくり達が食べる「おたべなさい」
そして今回が「おたべなさい」→「ふえちゃうぞ!」のコンボでお送りしました
では、今度こそ失礼します…
- この短編、地味に名作だと思う。 -- 名無しさん (2009-12-10 14:06:10)
- かわいいストーリーですね^^ -- kanndou (2011-07-28 12:11:39)
最終更新:2011年07月28日 12:11