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「ふーん、おねーさんたちも呼ばれてるんだ」

 レデュエによる放送を聞いた燕結芽は、名簿を斜め読みして呟いた。
 折神家親衛隊の四名。かつての結芽からすると気の置けないメンバーだ。
 しかし、今ではその関係性は、結芽の望まない形へと変化していた。

(もう、前みたいに楽しくお喋りはできない……)

 タギツヒメと契約を交わして現世へと帰還した結芽を、獅童真希たち親衛隊は「結芽様」と呼んできた。
 此花寿々花からは「病気療養をしている折神紫の指示」だと聞かされたが、そうした丁重な扱いによって結芽に生じたのは、ただ孤独感のみである。

(それに、私の目標は優勝すること……つまり、いずれ対立することになる)

 その現実を正しく認識したからこそ、結芽は親衛隊のことを考えすぎないように努めた。
 スマホを操作して名簿を閉じようとしたとき、結芽は違和感から手を止めた。
 鈍く光る画面を凝視した結芽は、すぐに違和感の正体に気づいた。

「……ねえ、私が二人いるんだけど、なんで?」
『おおかた間違えたのだろう。あのベリアルという男、いかにも雑な仕事をしそうではないか』

 タギツヒメの答えには納得できないまま、結芽は新たに湧いた質問を口にする。

「このタギツヒメの名前は?」
『考えても詮無きことよ。我はここに居るではないか』
「じゃあ、さっきの放送でタギツヒメが呼ばれてたのは?」
『それも同じこと。考えるには足らぬ』

 タギツヒメの言葉に「ふーん」とだけ返して、結芽は今度こそ名簿を閉じた。
 もとより多少の疑問を抱いただけで、結芽にしてみれば何であれ大した問題ではない。
 他の参加者はひとしなみに斬り伏せる対象なのだから、考えても仕方がないというタギツヒメの論は正しい。
 結芽はスマホで地図を開いて、タギツヒメに行き先を問うた。

「これからどこに行こう?」
『気にかかるのは、C-2の貯蔵施設だ』
「貯蔵施設って……あ!もしかしてノロを貯めていたところ?」

 荒魂の源となるノロの貯蔵庫。長い年月、折神家が管理していたその施設を、結芽は知っている。
 もちろん地図に記載された場所は、それと同一だと決まったわけではない。

「わざわざベリアルって人が移転したのかなー?」
『確証はないが、わざわざ地図に記している意図は何かしらあるだろう』
「地図に記した意図……か」

 タギツヒメの意味深な言葉をただ反復しても、その意図には辿り着けない。
 ひとまず結芽はタギツヒメの直感に従おうと決めた。

「じゃあ、そこを目指して移動しよっか」
『ああ、そうだな……いや、待て!』

 いきなり制止の声を叫んだタギツヒメ。ほとんど同時に、結芽も自ずと足を止めていた。
 荒魂の現れる予兆を肌で感じたときのように、森の奥から流れてきた気配を察知したのだ。

「……うん、気づいたよ。とんでもない気配」
『荒魂とは異なるが、近しい雰囲気にも思える……何者だ?』
「わからないけど……とにかく強い!」
『おい、軽率な行動はよせ!』

 焦るタギツヒメを無視して、結芽は気配の主へと近づくため駆け出した。
 明眼(みょうがん)を発動して、自身の視覚を変質させて暗視機能を追加する。
 本来の御刀ではないものの、神力を引き出せたならば、闇夜の森を不都合なく移動する程度のことは容易に可能だ。

(この気配……かなりできる!)

 微笑を浮かべて走る結芽は、強大な相手との接敵を確信していた。
 気配の主は、全く己の存在を隠そうとしていないどころか、アピールしている節すらある。
 つまりはそれだけ己の実力を自負しているということで、これが結芽の欲求を刺激した。

『仕方のない奴だ、燕結芽』
「にひっ、今更じゃない?」

 どきどきした胸の高鳴りを感じながら、呆れた様子のタギツヒメに軽口で返す結芽。
 ほどなくして、気配の主の背中を発見すると、さらに加速して一足飛びに接近。そのまま脳天への唐竹割りを見舞おうとしたが、完全な背後からの一撃にもかかわらず、大剣に薙ぎ払われる形で止められた。

「わっ!おじさん、目が後ろについてるの?」
「……不敬千万」

 結芽の軽口とは対照的に、気配の主の言葉は重苦しい。
 あらためて気配の主の姿を見れば、それは厳めしい鎧を装着した壮年の男性である。
 結芽は着物の袖を翻してから、男性に対して名乗りを上げた。

「私は折神紫親衛隊――ううん」
「世界最強の刀使、燕結芽!おじさん、遊ぼう!」

 かくして、戦端は開かれたのである。


 織田信長の生きた時代に、天然理心流はまだ存在しない。これは当然のことだ。

 江戸時代後期(十八世紀後半)に創始されたと言われる天然理心流は、その源流を辿ると戦国時代の剣聖・塚原卜伝の興した鹿島新當流へと行きつく。
 卜伝は諸国を巡る修行をしていたとされるから、同じ時代を生きた信長と顔を合わせていた可能性はあるが、少なくとも史料において関係は見られない。
 つまり、信長と結芽の勝負では、信長は未知の剣術との対峙を迫られているということになる。

 しかし、それは織田信長が天然理心流に敗北する理由にはならない。これもまた当然のことだ。

「小童にしてはやりおる」
「こわっぱ?なにそれ?」

 信長と結芽の打ち合いは、たった数合の内に変化していた。
 鍔迫り合いに勝機はないと判断してか、結芽は攻撃した直後に退避する戦法を選んだ。
 それに応じる信長は、あくまで泰然と構えたまま、大剣で受け止めるだけに留めている。
 ここに、挑む側と挑まれる側という構図が成立していた。

「あははっ!やっぱり強い、すごく強いねおじさん!」
「……」

 信長からすると、このやり取りは会話も含めて児戯に等しい。
 結芽に急襲された直後こそ、まだ幼い剣士に興味を抱いて打ち合うことを許容したが、それ以降の結芽への興味は減衰していくばかり。
 ただの蛮勇か、さもなくば気違いの類と結論づけた信長は、結芽に向けて言い放つ。

「我は織田信長。第六天より来たりし魔王なり!」
「え、信長って……本当?」

 気圧されたというよりは発言内容に疑問を抱いた様子の結芽に、信長は続けて宣告した。

「小童よ、分を弁えい」
「生意気だって意味だよね。知ってるよ、よく言われるから」

 ニヤリと笑んで、幾度目かの攻撃を仕掛けてきた結芽。
 溜息をついて大剣を薙ぎ払おうとした信長は、しかし結芽を見失う。

「何……?」

 次の瞬間、頭上を仰ぎ見た信長は、御刀を振り下ろさんと迫る結芽の姿を見た。
 刀使の扱う術のひとつ、迅移(じんい)には段階が存在する。通常の時間から加速して行動する術であるために鍛錬は必須であり、段階によっては危険も伴うが、それに見合うだけの強力な術である。
 その術を知らない者からすると、さながら瞬間移動したように思えるであろう。

「ぬう……っ!」

 はたして、魔王も例外ではなかった。
 先程までとは桁違いの移動速度で迫りくる結芽に、これまでと同じ対応は不可能。
 その場から勢いよく飛び退いて、一撃を躱すという選択を取らざるを得なかったのである。
 これすなわち、泰然と構えていた姿勢を崩されたことに他ならない。

「おじさん、さっき少しだけ気を緩めたでしょ?」

 嘲るような結芽の言葉に、信長はカッと目を見開いた。
 さらに続けて両眉を吊り上げると、結芽を見下ろしながら睨みつけた。

「余を油断させるとはとんだ食わせ物よ」
「これで本気を出してくれる?」
「よかろう……その愚かさに身を焼かれるがいい!」

 この島に来て、信長は初めて仏頂面を崩した。
 憤怒を滾らせていた魔王に新たな火を点けたのは、年端も行かぬ少女。
 魔剣を握り直して信長は再考する。此度の戦は一筋縄では行くまい、と。


【A-8 森/深夜/一日目】
【織田信長@戦国BASARAシリーズ】
[状態]:健康、憤怒(極大)
[装備]:獄炎の大剣@ドラゴンクエストウォーク
[道具]:基本支給品一式、不明支給品×0~2
[思考]:皆殺し
1:参加者を見付けて殺し、最後にはベリアルも殺す
2:結芽を殺す。
[備考]
※参戦時期とどのナンバリング出典かは後続の書き手に任せます。
 人間だった頃なので少なくとも3出典ではありません。


【燕結芽(Another)@刀使ノ巫女 刻みし一閃の燈火】
[状態]:健康
[装備]:水神切兼光@刀使ノ巫女
[道具]:基本支給品、ランダム支給品×0~2(確認済み)
[思考・状況]基本方針:優勝して総浸食計画の邪魔になるベリアル(と言うよりその能力)を奪う。
1:にっかり青江を探す。
2:セタンタのおにーさんとはまた戦いたい。
3:信長のおじさんと戦う。
[備考]
※参戦時期はAnotherバージョン、可奈美と姫和と交戦中。
※写シなどは使えますが、能力は本来の御刀より劣化します。
 ただしタギツヒメと融合してるので差はそこまでないのかも。
※名簿上では燕結芽です。


 火花の散る森の中、ぬるりと木陰に潜むのは、上弦の陸・妓夫太郎である。
 強者(つわもの)二人の打ち合いを窺い続けていた妓夫太郎は、ぼそりと呟いた。

「ああ、あいつら強ぇなあ。これまでに殺してきた柱よりも強い」

 剣戟の鳴り響く最中、妓夫太郎は木陰に隠れて二人を観察していた。
 かたや紫の着物を纏った無邪気な幼女は、林のように静謐の構えで、風のように俊敏な攻撃。
 かたや銀の鎧を装着した猛々しい男性は、山のように不動の構えで、火のように苛烈な攻撃。
 いずれ劣らぬ実力者であることは、数合の打ち合いだけでも察せられた。

「あの騒々しい忍者と同格かそれ以上だ。殺すのは骨が折れるなあ」

 自ら口にした忍者という単語に苛立ちを覚えながら、妓夫太郎は何度かこめかみの辺りを搔きむしる。

「厄介な敵ばかりだなあ……だが、あの二人はまだ人間に近そうだ」

 数十分前に相手をした氷と炎の異形に比べれば、強者たちの姿は人間に近しい。
 人間に近しいということは、血鬼術の通用する可能性があるということだ。
 ひとしきり掻きむしり終えたとき、妓夫太郎は歪んだ笑みを浮かべていた。

「だから俺は、漁夫の利ってやつを獲らせてもらうぜ」

 これもまた大局を見据えての行動だと、妓夫太郎は熟考する。
 無駄な消耗は避けたいが、ここでの不意討ちで強者を減らせるのであれば御の字だ。

「――今だあ!」

 妓夫太郎は強者たちの空気がほんの僅かに弛緩した瞬間を狙い、遠距離から飛び血鎌を放つ。
 当たれば猛毒を食らうことになる凶悪な刃は、はたして誰を蝕むことになるのか。


【妓夫太郎@鬼滅の刃】
[状態]:健康
[装備]:血鬼術で作った鎌
[道具]:基本支給品一式、不明支給品×1~3
[思考・状況]
基本方針:優勝して妹を幸せにする。
1:あいつ(フレイザード)とは当分会わないでおく。
2:梅がいたら優先する。
3:鬼狩りも優先。
4:強者たち(織田信長、燕結芽)を飛び血鎌で襲撃する。
[備考]
※参戦時期は死亡後。
 ですが肉体は鬼です。
 再生力は落ちています。
※血液の毒の効果はかなり落ちています。
※まだスマホを確認していません。

011:だってこれはライアーゲーム 投下順 013:あの日見た世界をもう一度
時系列順
202:果てなき戦いの進路を辿れ 燕結芽(Another)
03:破滅ノ焦土 織田信長
11:放浪フリークス 妓夫太郎

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最終更新:2026年04月14日 02:24