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冬の女王・モルガンと戦闘をし、敗北したヘルエス。
弟のセルエルと団長・グランを殺された彼女は見逃された。
故に、その場にはセルエルとグランの荷物があり、彼らが使っていた武器もあり。

「…まあ、贅沢は言えませんわね」

手にした刀を手に取り、此花寿々花は呟いた。
グランに支給され、彼によって使われていたそれは、御刀であった。
しかし、それは彼女が愛用する「九字兼定」ではなく。

「『加州清光』…ですか」

かの沖田総司が使っていたという刀だ。
使い手は安桜美炎というらしいが、こちらは聞き覚えがない。
寿々花の世界にも実在する現役の刀使だが、ここにいる寿々花は面識がなかった。
名刀には違いなく、写しも迅移も問題なく使えるようだが、先端が欠けているのが気になる。
なにより、自分の得物ではない。
しかし、御刀には違いなく、ないよりはましだ。

「こちらもどうぞ、スズカ」

弟のセルエルの荷物を検分していたヘルエスが、そういって差し出したものは、セルエルが使っていた剣だった。
常夏と休息の剣。
ヘルエスが自分の武器を支給されたように、セルエルもまた自身の武器が支給されていた。

「よろしいのですか、ヘルエスさん」
「あなたの使う刀とは少々勝手が違うのでしょうが…槍使いの私よりは上手く扱えるでしょうから」
「では、ありがたく受け取らせていただきますわ」

御刀ではないため、あくまで予備ということにはなろうが、それでもやはり戦える武器には違いない。
ヘルエスから受け取った剣を、デイバックにしまう。

『初めましての方はいるだろう。
 私はレデュエ。まあ、今はベリアルの補佐みたいなものだ。
 顔見せもかねて私が、今回行う放送を担当させてもらうことになった。』

そうこうしているうちに、放送が始まった。

○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○

「タギツヒメが…!?」

呼ばれた死亡者の名前に、寿々花は驚愕の声を上げる。
その反応は、奇しくも相棒であり好敵手の友と似たようなものだった。
もっとも、あの世界の人間であればその多くが似たようなリアクションをしてしまうだろうが。
大荒魂・タギツヒメとは、それだけ彼女たちの世界にとって、大きすぎる敵だったのだ。
タギツヒメは、衛藤可奈美さんと十条日和の手で、隠世に封じられたはずだった。
ベリアルや、このレディエという者たちは、隠世から彼女を呼び戻したとでも言うのだろうか。

「セルエル…グラン殿…」

改めて告げられた名前に、ヘルエスは悲しみのつぶやきを漏らす。
目の前で散った、大切な命。
彼らに報いるためにも、今一度決意を新たにする。
やがて放送が終わり、スマホに通知が来る。
更新されたアプリ…名簿を二人は確認した。

「ノイシュやスカーサハ様はいないのですね…」

アルスター島を支える騎士や龍の不在に、ヘルエスは安堵する。
彼らがいるのならば、アルスター島は自分やセルエルがいなくともなんとかなると信じられるから。
もちろんヘルエスも死ぬつもりなどないが。
しかし、グランにセルエル、同じく名前を呼ばれたさと以外にも、見知った顔が多くある。
かつてノイシュが他国の騎士たちと共に戦ったという、ベルゼバブはともかく、他の面々とはなんとか合流したいところだ。

(ジータ…彼女はいったい)

そんな中ヘルエスは、一つの名前が気になっていた。
ジータ。
知り合い同士が基本的に近くに名前がある中で、近くにある名前。
ベアトリクスの後の城乃内秀保から先が別の世界の者だろうことは察せられるが、このジータは自分たちの世界の少女である可能性がある。
後ろに10人以上も同世界出身者の名前がある中で、彼女が単独で名前があるというのも妙であるし。
しかしヘルエスには、覚えのない名前だ。
自分の知らない団員か、あるいは同じ世界出身なだけの団員でない空の世界の住人かもしれないが。
不思議と、気になっていた。

(モルガン、というのですね…!)

そして何より気になる名前。
冬の女王・モルガン。
セルエルとグランの仇。
今の自分たちでは、到底打ち勝つことのできない絶望。
しかし、あの絶望を乗り越えなければ、自分たちに未来はない。

(名簿の位置から判断すると、同じ世界の出身の可能性が高いのは…オベロン、セタンタ、ゴズキ、シュラ、放送で呼ばれたエンシン、辺りでしょうか。モルガンとの関係は分かりませんが、警戒した方がよさそうですね)

実際はゴズキ、シュラ、エンシンは別世界であり、藤丸立香が知り合いなのだが、アカメ勢の名前の表記がモルガン達に近かったのと、立香がすぐ上の学マス勢の面々と字面が似ているため、そのような誤認が生まれていた。

○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○

「どういうことですの…?」

一方の寿々花は、困惑していた。
獅童真希、皐月夜見、燕結芽。
自分、此花寿々花を含めて、折神紫親衛隊勢ぞろいである。
名簿に書かれた知り合いの名前には、疑問が多々あった。

まず一つ。
死んだはずの夜見と結芽の名前があること。
これに関してはまあ、死ぬ前の時間から連れてこられたのではと考えられなくはない。
あるいは死ななかった別の世界か。
名簿全体に目を向ければ、織田信長などという大昔の偉人の名前まである。
本物かどうか疑わしくはあるものの、もし本物なら時空を超えて人々を呼び出すことも可能だろう。

二つ目。
自分たち親衛隊が選ばれた理由。
自分たち刀使を呼ぶならば、先のタギツヒメとの戦いにて活躍した6人の刀使達が呼ばれてもおかしくないのに、彼女たちは一人もおらず、親衛隊は死人を呼び戻してまで全員揃えている。
こんなことを認めてしまうのは癪ではあるが、自分たちはあの戦いにおいては中心からはやや遠い役回りだった。
そんな自分たちが呼ばれた理由。
考えられるとすれば…

(ノロ…でしょうか)

折神紫親衛隊。
彼女たちには、ある一つの共通点がある。
それは、全員がノロと呼ばれる、荒魂を構成する物質を体内に取り込んでいることだ。
さらに、死んだタギツヒメは、その荒魂の大親分である。
ベリアルたちは、ノロに利用価値を見出してるのだろうか。
名簿と共に追加された地図に書かれている貯蔵施設の存在も、その考えを補強するかのようだ。
まあ、地図のこれがノロの貯蔵施設かどうかは分からないが。

(ノロといえば…タギツヒメ、彼女は)

先ほど放送で呼ばれたタギツヒメだが。
それはつまり、彼女を倒した参加者はそれ以上の力を持っているわけで。
そんな存在が、もしもタギツヒメが蓄積したノロを万が一にでも取り込んだりなどしていた場合、とんでもない化け物に変貌しているのではないか。

最後に三つ目。
燕結芽の名前が二つある。
これが一番驚きではあるが、それでも色々と想像はつく。
片方か、あるいは両方かが偽物だったり、あるいは並行世界の同一人物とか、そんなところであろう。
寿々花が疑問を感じているのは、それとは別のことだ。

(どうしてわざわざ、結芽さんを二人用意したんですの…?)
「大丈夫ですか、スズカ」
「あ…ヘルエスさん」

考え込んで顔をしかめる寿々花が気になったのか、ヘルエスが声をかけてきた。
寿々花は、せっかくなので意見を仰ぐことにした。

「私の知り合いが、どういうわけか二人呼ばれているのですが…ヘルエスさんは、同一人物を二人呼ぶ理由として、何か思い当たることがありますか」

寿々花の問いに、ヘルエスは顎に手を置きしばらく考え込んでいたが、やがて顔を上げるといった。

「両者の差異…違いを見るため、というのはどうでしょうか?」
「違い、ですか?」

本物と偽物を用意して、性能差がどれだけあるのか。
別世界の同一人物を呼んで、世界の違いによってどのような違いが出るのか。
そういったある種の実験のために、同じ人物を呼びよせるということはあるのかもしれない。
それがヘルエスの意見だった。

(なるほど…そういう目的ならば、結芽さんが選ばれるのもある意味分かるような気がしますわ)

燕結芽は好戦的な気質の持ち主だ。
積極的に戦ってくれるということは、データが取りやすい存在ともいえる。
差異を見るという目的には、都合がいいことだろう。
先ほど考察したノロの利用価値云々の考察も合わせれば、ノロの動きを見たいのかもしれないという考えも浮かぶ。
死んだ仲間を実験動物のように扱われているようで、腹立たしい推測だが。

(落ち着きなさい…私は冷静でいなければ。真希さんの為にも)

親衛隊第一席、獅童真希は誰よりも仲間思いであり、その為に一人で無茶をするところがある。
死んだ夜見や燕を今度こそ救おうと突っ走るだろうことが、容易に想像できてしまう。
だからこそ、自分だけでも冷静に状況を見極めなければならない。
そう、自分を戒める寿々花だった。

○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○

ヘルエスと寿々花は、名簿にある知り合いについてと、それに伴い気になったことについての情報を共有する。
お互いに話を終えると、ヘルエスはいった。

「貯蔵施設に、向かいましょう」
「よろしいのですか?その、知り合いの多さからして、地図上にヘルエスさんの知る施設も表記されているのでは?」
「ええ、貯蔵施設とは反対方向にあるグランサイファーがそうです。ですが…スズカの話を聞くに、そのノロというものがどういう状況にあるのか、確かめる価値は大きいでしょう」

名簿に書かれた知り合いは多かったが、グランサイファーを動かせそうなものはいなかった。
強いて言えば機械に強く、月まで行ける船を飛ばしたことがあるらしい月の民の祖先であるアイザックはもしかしたら可能かもしれないが。
ともかく、動かせるものがいなければグランサイファーは知り合いが目指すかもしれない以上の価値を持たない。
寿々花から聞かされたノロの危険性を思えば、それが貯蔵されているかもしれない施設は確認しておく必要があるだろう。

「スズカ、道中で構いません。先ほど話していた隠世について詳しく教えてもらいませんか」
「?…何か気になることでも」
「私たちの世界にも幽世…カクリヨというものがあるのです。そちらの世界とは別物なのかもしれませんが…」
「なるほど、確かに気になる符号ですわね。ええ、お互いが知るカクリヨについて、情報を共有しましょう」

ともかく、情報の共有とこれからの行き先については決まった。
さっそく出発、と行きたいところだが。

「…申し訳ありませんスズカ。出発の前に手伝ってほしいことがあります」

そういってヘルエスは、そばにある二つの死体に目を向けた。

「ああ、遺体の埋葬ですか?それならもちろんお手伝いを…」
「…いえ、もちろんそちらも必要ですが、その前に…彼らの首を刎ねてほしいのです」

ヘルエスの言葉に寿々花は驚きで目を見開いたが、彼らの首を見てすぐに意味を悟る。

「首輪、ですか」
「はい。ベリアルやレディエを打倒するにあたって、この戒めからの解放は急務です。そしてその為には…サンプルが必要でしょう」

できることならヘルエス自身の手で行いたいところだったが、自分の得物は槍であり、斬首にはあまり向かない。
慣れているものならできるのかもしれないが、あいにく自分に斬首の心得はない。
寿々花にも経験がないかもしれないが、それでも刀を扱う彼女の方が上手くやれるだろう。
二人の遺体を徒に傷つけないためにも、寿々花に任せたかった。

「すみませんスズカ、本来なら私が自分の手で行うべきなのに、あなたに嫌な役割を押し付けて」
「いえ、それは構いませんが…よろしいんですの?大切な方…なのでしょう?」
「構いません…必要なことですから。彼らも、咎めはしないでしょう」
「…分かりましたわ。すぐに済ませますので、ヘルエスさんは向こうを向いていてくださいませ」
「いえ、見ています。あなたに嫌な役割を押し付けておいて、目を逸らすことなど、できません。私たちは…仲間なのですから」

ヘルエスの言葉に、寿々花はやはり誰かさんに似ているな、と思った。
真面目で責任感が強く、強情で。
自分はこういう人種に縁があるのだろうか。
正直なことを言えば、見られているとこちらもやりにくいのだが、彼女の心意気に水も差したくない。
下手なことはできませんわね、と思いながら、寿々花は真剣な面持ちで御刀を構えた。

○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○

「終わりましたわ…首輪も、回収しました」
「ありがとう、ございます。首輪は念のために、私とあなたで一つずつ持っていましょう」

寿々花の報告に、少々顔を青くしつつもヘルエスは気丈に答えた。
そして二人は、首と胴が分かれた二つの遺体を埋葬し、黙祷をささげる。
道半ばにて倒れた魂に、意志を継ぐことを誓う。

「行きましょう、スズカ」
「ええ」

短いやりとりと共に、彼女たちは動く。
後ろは振り返らない。
死者に思いを馳せる時間は終わりだ。
ここからは、未来を切り開くために、前へと進む。

【ヘルエス@グランブルーファンタジー】
[状態]:負傷(中)、悲しみ(中)、新たなる決意
[装備]:クリスタルルーン@グランブルーファンタジー
[道具]:基本支給品一式×2、不明支給品×1〜2、セルエルの首輪、セルエルの不明支給品0~2
[思考]:元凶を倒し、殺し合いを止める。
1:スズカと行動を共にする、道中お互いの世界のでカクリヨについて情報共有する
2:貯蔵施設を目指す
[備考]
※参戦時期は風SSRフェイトエピソード2後
※ジータが同世界出身の者ではないかと感じています
※立香以外のFGO勢、アカメ勢がモルガンの知り合いではないかと考えています(立香は学マス勢と同じ世界出身ではと考えています)

【此花寿々花@刀使ノ巫女】
[状態]:健康
[装備]:加州清光@刀使ノ巫女 刻みし一閃の燈火
[道具]:基本支給品一式×2、常夏と休息の剣@グランブルーファンタジー、グランの首輪、不明支給品×1〜3、グランの不明支給品0~2
[思考]:刀使として、殺し合いに抗う
1:ヘルエスと共に行動する、道中でお互いの世界のカクリヨについて情報共有する
2:貯蔵施設を目指す
[備考]
※参戦時期は最終回後
※夜見や結芽は死亡前か、別の世界から連れてこられていると考えています
※主催陣営がノロに何かしらの利用価値を見出しているのではないかと考えています

『支給品紹介』

【常夏と休息の剣@グランブルーファンタジー】
セルエルに支給。水着時のセルエル自身が使っていた剣。
経過ターンに応じた光属性キャラの光属性攻撃力が上昇、光属性キャラのHPが少ないほど防御力を上昇させるスキルを持つ。

【加州清光@刀使ノ巫女 刻みし一閃の燈火】
グランに支給。
歴史上においては沖田総司が使っていた刀として有名であり、刻みし一閃の燈火の主人公、安桜美炎の使う御刀。
基本的に折れたりすることがないはずの御刀だが、この御刀は先端が欠けているのが特徴。


014:誇りの道を住くものに■■の導きを 投下順 016:エスケープフロムデス
時系列順
39:絶望顕現:■■女王/Re:英雄再起 ヘルエス
此花寿々花

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最終更新:2026年04月24日 23:00