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無限桃花の愉快な冒険1

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eroticman

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風力発電のためになのか、この町にはやたら風車が立っている。陽が落ち、夜が来てもなお明るい町並みは彼女にとって不慣れなものだった。
特に白い樽状の機械を見たときは、普段キカイというものに触れない彼女が中に人が入っているものと勘違いしたのも仕方ない。
そんな彼女を見かねたのかやってきた男達はこの町が外よりも数十年進歩した科学を持つ町、学園都市だと説明した。
ただそれで終ればよかった。それで終れば彼女も科学の発展に関心して終ったことだろう。
男達は彼女を道案内するといい、腕を引っ張り路地に連れ込んだのだ。町の目の届かない影の場所に。
しかし目撃者がいた。その目撃者は彼らを止めうることが出来る人間を呼んだのだ。だがそれはあまりにも――遅すぎた。
「ジャッジメン……なのですの、これ」
茶髪のツインテールの少女が空間から突如現れる。その後ろをもう三人の少女がやってくる。
路地は暗く、すぐには視界が闇に慣れない。しかし慣れれば慣れるほどおかしな光景が見えてくる。
そこそこ屈強に見える男達はうめき声すら上げず、地に伏している。決して少ない数ではない。サッカーが出来る数以上だ。
そんな男達を、ポニーテールの少女が見下ろしている。ただただつまらなそうに仕方なくといった視線で。
「これ、あんたがやったの?」
後から来た少女の一人が言う。その時、彼女はポニーテールの少女が腰に長く細いものを下げているのを見つけた。
「この町はあまり治安がよくない。例え科学がどのように発展しても人の心が追いつかなければ意味がない」
少女が暗がりから歩いてくる。まるで足元に邪魔な石があるだけのように下を全く見ない。
「その腰に下げてるの。使ってないわよね?」
「抜く必要もない。抜く理由もない。なによりも私はこれを抜かない」
ポニーテールの少女が四人の前に並ぶ。四人と比べるとポニーテールの少女のほうが大人のようだ。
少女は四人の横を通り過ぎようとしてピタリと止まり、少し戻って正面に立つ。
「少し聞きたい。髪が比較的長く、色が比較的奇抜で、性格が比較的老人くさい女子を見かけなかったか?」
「友人ですの?」
「いや、多分違う」
その言葉にツインテールの少女が首を傾げる。確かに人を探しているのに多分というのはおかしいだろう、
後ろにいた、頭の外までお花畑な少女が前に出てくる。手には四角いノートパソコン―最もポニーテールの少女にはわからないが―を持っていた。
「名前とかもっと詳しい情報があれば探せますよ?」
「名前……」
「はい、名字でも名前でも。あとは住所ですとかどこの生徒とか」
「生徒ではない。名前はハルトシュラー。もしもいるとしたら魔王と……名乗ってはいないな。呼ばれているかもしれない」
「魔王ぅ?」
一番活発そうなショートカットの少女が反応する。
「なにそれ? どんな能力持ちなの?」
「知らない。君も相当な力を持っているみたいだがアレは君を遙かに上回る力を持っている」
「なっ」
あまりいい返答ではなかったらしくショートカットの少女がムッとする。それと同時に彼女の周りにバチバチとなぜか電気が走り始めた。
いや、この町においてこれが日常なのだ。そしてこの電気少女がどんな人間かも結構有名な話だったりする。
が、当然ながら今日来たばかりの彼女。無限桃花はそんなことを知らない。



「力を見せびらかすものは大抵力を持たないものだ。もしもアレがいるとしたらまるで普通の住人かのように振舞っているだろう」
電気少女がどれだけプライドが高く、爆発しやすく、強大な力を持っているかなんて露知るはずもない。
「まぁいい。多分捕まらないだろう。失礼されてもらう」
桃花は四人の横を通り過ぎようとして、ピタリとその場で止まった。
「ちなみに言っておくが君がどんなに頑張ろうとアレと会うこともないだろうし、ついでに私に敵うこともない」
「へえぇ……」
桃花からしたら忠告なのかもしれない。この電気少女は好戦的みたいだ。戦闘は避けたい。だから忠告しよう。
そんな老婆心溢れることをしているのかもしれないが、それは神経の逆撫ででしかない。
だから桃花にはわからなかった。
「じゃあちょっと試してみない……?」
突如走る閃光がなぜ自分に向かってきているのかなど理解出来るはずもなかった。
しかしそれに当たることはない。まるで最初から予測していたかのようにスッと避ける。
閃光は不規則な直線を描きながら、さきほどから寝ていた男の一人に直撃した。
「お姉さまストップ!」
ツインテールを始め、他の二人も加わって電気少女を止める。
「こんなところで暴れたらすごい被害が出ますよ! 主に私達に!」
「大丈夫大丈夫、ちゃんと当たらないようにするから」
「そういう問題でなくてですね」
「なぜ攻撃するかわからないが先を少し急いでいるのでな。行かせてもらう」
「待ちなさい! 勝負しろー!」
「だめです、お姉さま! あ、でも参考人として待って欲しいですの!」
声を背中に浴びながら桃花は歩き始めた。最早ここに用事はない。
ここにいればさらに厄介ごとに巻き込まれるかもしれない。そんな彼女の予感が自然に足を速めていた。


しばらく歩いていると橋に出た。なぜか計ったかのように人通りがない。気付けばもう夕飯時。
夕食をどうするか思案しているとツインテールの少女が突然眼の前に踊り出た。
確かに誰もいなかったはずの空間。桃花は仕方なく足を止める。
「ちょっと探したですの。さきほどの事件についてあなたを連行する必要がありますの」
「なぜ」
「どんな能力を使ったか知りませんがさすがに全員が全員揃って意識不明の重体というのは問題ですの」
「ナイス、黒子ー!」
背後から電気少女の声がした。肩で息しているもののやる気はあるらしく今にも襲い掛かってきそうな雰囲気をしている。
「さぁ大人しくれんk……勝負しなさい」
「連行で合ってますのお姉さま」
「仕方ない」
桃花が腰を低くして、手を刀に添える。チャリと鞘から刀が抜ける音がした。
その瞬間、桃花は黒子と呼ばれた少女の横を過ぎていた。刀は既に鞘に納まっている。
だが黒子に傷はない。それを瞬時に理解した電気少女はポケットからコインを取り出していた。
「黒子! どいて! そいつ撃てない!」
コインをトスするときのように指に置く。ただ方向は逃走する桃花に向いていた。
黒子は数瞬遅れて、桃花が自分の意識を刀に向けるために音だけを鳴らせたことを理解した。
桃花は数秒後に自分の背後から光速エネルギー体が飛んで来ることを予測していた。
電気を利用した高速射出。差し詰め電気銃と言ったところだろう。もちろん彼女は原理など知らない。
その時、眼の前になぜか少年がいた。偶然通りかかったのかもしれない。
「少年、後は頼んだぞ」
自然に口から出ていた。なぜか彼ならどうにかできると桃花は確信していたのだ。
戸惑いの声を上げる少年の横を通り過ぎた時、なぜ自分が彼を一瞬で信じる気になったのかわかった。
やがて、光の直線が橋の上を走り、少年がそれを右手で止めたのを桃花が知る由もなかった。


桃花は人を探している。とは言ってもただむやみに探しているわけではない。
なんとなくわかるのだ。そちらに何かがいることが。ただそれが何かはわからない。
今回、桃花が学園都市で会ったあの少年からは自分の匂いがした。桃の花の匂いだ。
あまりにも薄かったその香りは彼が間接的に私と会った事を意味している。
同時にあの町には桃花がいることも証明している。それならば自分がいる必要はない。
魔王を探す桃花は自分だけでいい。そう彼女は思っているからだ。



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