──あぁ、私の愛しき人。氷に閉じ込められた可哀想な人。
安心して。私が必ずあなたを助けるわ。
例え私の歩いた道の後に幾万と屍が重なり、両手が血に汚れ、怨嗟で背中を刺されても──
私があなたを救う。だから。
──もう少しだけ、待っててね?
明るい色の絵の具を溶かして混ぜている最中のような、奇怪なマーブル模様色の空の下、五人の少女が鬱蒼と繁る植物を掻き分けながら道なき道を進んでいた。
「疲れたー。まだつかねぇの?」
イチゴのように全身が真っ赤な少女、アイベリーが尋ねる。
それに続くように黒い髪を巻いた、ゼンマイのような髪型に猫耳を生やし、赤いマフラーを巻いた少女、のじゃロリ猫がビンを口へと傾ける。
「そうじゃのう。長いのう。もう持ってきた飲み物ほとんど飲んでしもうた。」
「アハハ。それすっごいアルコールの匂いがする!もしかしてお酒飲んでる?」
そんな彼女にお面を頭につけ、前髪を目元が隠れるまで伸ばしている青髪の少女、ジュジィが笑いながら話しかける。
「ええんか?フロートに怒られるんとちゃう?」
水色の肌に体のあちこちに水棲生物のヒレのようなものが垣間見える、不思議な少女、フルーチェがのじゃロリ猫に言う。
「地図だともうすぐです。頑張りましょう。」
地図に目を落としながら、薄緑色のミントのような意匠があちこちに散りばめられた少女、ミンティアがナビゲートする。
五人は喫茶オウマがトキという飲食店のスタッフである。そして今、五人は食材を求めて遠征中なのである。
ミンティアのナビゲートに従って皆で歩いていたその時、ふと遠くを見ていたアイベリーが声をあげる。
「なぁ、アレ、なんだ?」
彼女が指差す方向に全員が視線を向ける。そこには半ドーム状に拡がり、かなり広大な面積を覆う虹色の光だった。
「……なんでしょうね?」
「キャハハ。見たことないなー。」
得てして不思議なことが起こるこの世界だが、この現象はこの場にいる誰もが見たことのないものであった。
だが、その未知の部分がアイベリーとフルーチェの探究心を大いにくすぐった。
「…なぁ。アレ見ちまったらよぉ……」
「行くしかあらへんよなぁ……」
「はぁっ!?寄り道する気ですか!?想定のルート通り行ってるのに!?」
二人の発言に生真面目なミンティアが思わず声をあげる。
「まぁまぁ、こうなったらあの二人はテコでも動かんぞ?それに、正直ワシも気になるんじゃよなぁ、アレ。」
「多数決ー!民主主義ー!行くしかないねぇ!」
「…もう!」
そう言って光のドームへと進む四人にミンティアは折れ、肩を竦めながらついていく。
そして本来の目的地から外れ、五人は光のドームの手前までやってくる。光のドームは渦巻いており、見るだけで見たものを圧倒する。
「お、おぉ……中々雰囲気あるなぁ……」
「どぉれ、どんなもんかの?」
そう言ってのじゃロリ猫がドームに触れる。しかし、触れても彼女には何も起きない。触れてもすり抜け、触れた手に異常はない。
「……とくに、何もないようじゃのう。」
彼女がそう言って、触れた掌をひらひらさせて無事をアピールする。
「なーんだ何もないのか。」
「取り敢えず一安心、ですね。」
それを見た全員が取り敢えず安堵し、ドームに触れてみる。
「ホントに何もないねー。」
「うん。ホンマに──」
ジュジィとフルーチェが触れて、何もない事を確認し、ミンティアとアイベリーへと振り返ったその瞬間。
二人がギュンッとドームの中へとものすごい勢いで引き摺り込まれるのが見えた。
「あ──」
声をあげる間もなく吸い込まれた二人に手を伸ばすが、それよりも先に二人はドームに引き摺り込まれ、見えなくなる。
「ちょ、ちょちょっ!二人が吸い込まれた!?」
「なんでやねん!!ウチらが触れてもなーんにもなかてんで!!」
「取り敢えず、ワシらも行くしかないかのう。」
二人を追いかけるように、三人もドームの中へと飛び込む。そして三人の目の前は真っ白に染まった。
「いてて……どーなってんの…?」
光のドームに触れた瞬間抗い難い程の強い力で引っ張られたアイベリーとミンティアの二人はそのまま引き摺り込まれ、視界が真っ白に染まったかと思うと、次の瞬間には近くを小川が流れる森のような場所で大の字で寝っ転がっていた。
「どうやらここはドームの中のようですが…。」
「取り敢えず、周りを散策してみますかぁ。」
起き上がった二人はキョロキョロと辺りを見回す。すると、少し離れたところから何かが弾けるような音が聞こえて来る。
「なんの音でしょう?」
「行ってみれば分かるさ!」
「あっ、ちょっと。無鉄砲過ぎませんか!?」
アイベリーが音のする方向に駆け出す。一瞬迷うが、ミンティアもそれに続く。
音がした方へ向け、森を駆け抜けると、そこはまるでクリームのような甘い香りが漂う沼地であった。
そしてそこには紫色のブルーベリーを模したベレー帽を被り、目が隠れる程前髪を伸ばした一人の少女がいた。
見れば彼女は左肩から出血しており、右手で押さえているものの、肩口から薄紫色の液体が流れている。
そんな負傷している彼女を追い詰めるように三体のポップコーンのような頭に縦に長い黒帽子を被り、銃を構える怪物、リビングモンスターがジリジリと距離を詰める。
そして三人の後ろで角が生えた見るからに隊長っぽいリビモンが手を振り上げながら言う。
「手間をかけさせおって……だが、鬼ごっこはもう終わりだ。全員、構え!」
「……!」
隊長が手を振り下ろし、彼女へ向けられた銃口が火を吹こうとしたその瞬間。
「させないっ!」
突然割って入ったミンティアが抜刀した剣でポップコーンのリビモン達が放った銃弾を全て叩き落とす。
「何ッ」
急に現れた乱入者にリビモン達が驚いている中、今度は彼らにアイベリーが急接近する。
「多人数で一人を寄ってたかってイジメる、ってのはあたいは嫌いでね!」
アイベリーが繰り出した拳の一撃がリビモンの一人を
殴り飛ばす。
殴り飛ばす。
「ぐえっ」
「なんだァッ!?」
驚きながらも、リビモン達が銃を構え、アイベリーへと照準を向ける。
「私から視線を切るのは──愚策ですよ。」
だが次の瞬間にはまるで空間を切り取ったかのようにミンティアが急接近して、リビモン達をその間合いに捉えていた。
次の瞬間振るわれた斬撃が、次々とリビモン達を打ち据える。
あっという間に制圧され、地面へと倒れて唸る隊長っぽいリビモンに、アイベリーがその顔の横に屈んで、頭を掴みながら聞く。
「アンタ達、誰?なんでこんなことしてんの。ポップコーンみたいな見た目してるけど。」
「ぐっ、……おのれ、貴様ら私達“ポップポーン”を攻撃すると言うことは我女王、クイーン・プディンセス様に逆らうと言うことだぞ。良いのか!?」
アイベリーに掴まれながら、リビモン“ポップポーン”が悔しそうにそう言う。
「クイーンだか、アイーンだか知らないけど、アンタみたいな奴を従える碌でもない大将なんて誰が従うか、っての。」
「き、貴様!我らが女王を愚弄するか!」
「事実でしょうが。って言うか、ほら早くアンタなんでこんなことしたのか答えなさいよ。」
アイベリーがさらに聞き出そうとしたその時、何かに気づいたブルーベリーの少女がミンティアの服の裾を掴み、何かを伝えようとパクパクと口を開ける。
「?どうしました?」
ミンティアが彼女の意図を図りかねていたその時、アイベリー達のそばの沼地が一瞬泡立ったかと思った次の瞬間、背中の扇状のヒレから薄紫色のクリームのような粘液を蓄え、細長い口から鋭い牙を覗かせる、肉食恐竜のような15mはあろうかという強靭な体躯を持つ巨大なリビモンが沼地から咆哮を上げながら飛び出す。
「なっ、」
「避けて!」
咆哮を上げながら恐竜はアイベリー達に襲いかかる。驚きながらも彼女は間一髪横っ飛びに跳躍することで恐竜の攻撃を避ける。
目標を失った牙はそのまま“ポップポーン”の一人を捉え、そのまま噛み砕く。悲鳴のような絶叫を上げながら砕け散る仲間を見たリビモン達は近くにあった銃を掴んで、発砲するが、恐竜の強靭な皮膚は弾丸を通さない。
しかし、目障りではあったのか、恐竜が振るう腕の一撃が“ポップポーン”の一人を吹き飛ばし、一人を踏み潰す。
「おのれぇ、ダイナキューティかぁっ!次から次へと女王に逆らう愚か者どもが!」
“ポップポーン”の隊長が銃弾を放ち続けるが、リビモンの攻撃は全く通じない。
ダイノキューティと呼ばれた恐竜はグルルと喉を鳴らすと後ろへクルリと振り返ると、丸太のような巨大な尻尾を振り回し、隊長を打ち据え、吹き飛ばす。
「女王さまぁぁぁぁぁ」
吹き飛ばされた隊長が悲鳴を上げ、まるで小石のように吹き飛ばされ、見えなくなる。
「うおぉ……スゴ……」
恐竜の暴れっぷりにアイベリー達が慄いていると、恐竜の瞳がギョロリと蠢き、アイベリー達に視線を向ける。
そして地響きを立てながら、彼女達に振り返ると恐竜はグルルと喉を鳴らし、牙を覗かせる。
「な、なんだぁ!やる気か!?」
「無益な殺生はしたくないが……」
アイベリーとミンティアが臨戦体勢に入ろうとすると、紫の少女がアイベリーの手を掴み、ふるふると首を振る。
「な、何?どうした?」
少女の行動に二人が困惑していると、恐竜が雄叫びを上げ、大口を上げながら彼女達に突進してくる。
「やっば!」
「ちょっ、ちょちょ!ヤバいって!」
ミンティアが剣を構え、迎撃の構えを取った瞬間。
上空から赤色の光弾が恐竜の周りに着弾し、砂塵を巻き上げて、その突進を妨害する。
「今度は何!?」
「掴まって!」
次の瞬間横から飛び込んできた赤い竜が三人を抱き抱え、そのまま上空へと飛び上がる。
「飛んでるー!」
上空へとあっという間に逃げ去った、赤い竜と三人を睨みながら、恐竜は悔しそうに吼えると、沼へと潜っていった。
「いきなりごめんね。怪我はない?」
しばらく飛行した後、赤い竜は渓谷の壁に沿うように作られた家々が特徴的な集落に着陸すると三人を放す。
そして三人に気遣いの言葉を言いながら赤い竜の背から肩マントを下げ、イチゴがあしらわれた騎士のような出立ちの、赤い髪の少女が降りる。
「いや、私達は無事だけど……」
「この方が……」
アイベリー達が紫の少女の腕の怪我を見やると、彼女は一瞥し、パンパンと手を叩く。すると、家々からゾロゾロと同じような紫の少女達が現れ、怪我をした少女を囲む。
「その子、怪我をしているわ。治療してあげて。」
赤い少女の言葉に少女達はコクリと頷くと、怪我をした少女を運んでいく。
少女はペコリと二人に頭を下げて、運ばれていく。
「さて。遅くなったけど、自己紹介させてもらうわ。私の名前はストルビィ。そしてこっちは私の親友のスドラゴベリィ。」
ストルビィがそう言うと、赤い竜はスドラゴベリィはギャオ、と一吠えする。
「あたいはアイベリー。」
「ミンティアです。」
「アイベリーさんとミンティアさんね。よろしく。」
二人の自己紹介を聞くとストルビィはにっこりと笑って握手をする。
「さっきはブルベリンを助けてくれてありがとう。それにしても、貴方達、見ない顔ね。」
「えぇ。私達はこのドームの外から来ましたので。」
「聞きたいことは山程あるんだけど、どうなってんだここ?」
二人の話を聞いたストルビィは、うん、と頷くと。
「そっか。君達外から来たんだ。……分かった。今起きてることを教えるよ。着いてきて。」
ストルビィは二人について来るように促すと、集落の中で、一際大きな建物に二人を招き入れる。
「グレーストはいるー!?話を聞きたいんだけどー!」
彼女がそう声を上げると、奥の方から三人の少女が現れる。
三人の内、真ん中の薄紫のスミレ色の髪をした落ち着いた雰囲気の少女がストルビィに応える。
三人の内、真ん中の薄紫のスミレ色の髪をした落ち着いた雰囲気の少女がストルビィに応える。
「私ならここにいる。……そちらは客人か?」
「客人!?珍しいな!いつぶりだ!?」
「ボク、お茶を用意してきます。」
グレーストの言葉に隣にいた、快活そうなオレンジ色の髪の少女と、物静かな桃色の髪の少女が反応する。
「この方、アイベリーさんとミンティアさんにウチのブルベリンを助けて貰ったの。それに、この方達、外から来たみたいで、話を聞きたいんだって。」
「ふむ、そうか。」
グレーストはジッと二人を見つめると。
「そうだな。ここにいる以上、彼女達に無関係な話ではあるまい。少し長話になる。こちらにかけてくれ。」
「あっ、ども。」
「失礼致します。」
グレーストに通された席に二人は座り、グレーストとストルビィが向かい合うように座る。
「さて、何から話そうか。」
「まず、あの光のドームについて教えてくれよ。あれ、触ったら急に引き摺り込まれたぞ。」
「そうだな。アレは光の檻だ。数ヶ月前、突如出現した。範囲は広く、我々の土地、フルーツ•バレーと三つの土地をあっという間に飲み込み、土地を完全に外界と隔離した。」
「原因はお分かりになられているのですか?」
「無論、我々も分かっている。この檻の出所はクイーン•プディンセスが治める土地、ブリリアント•アラモード•シャトーだ。」
「クイーン•プディンセス…」
「あのポップコーン頭が言ってた親玉か。」
「そうだ。動機は不明だが、彼女はこの光の檻を発生させた後、我々に宣戦布告をしてきた。今までも隙あれば自身の領土を拡げる野心家ではあったが、ここまで直接的かつ、暴力的なのは初めてだ。」
「随分と血気盛んな連中だね。」
アイベリーの言葉にグレーストは頷く。
「うむ。我々としては我らの領土に攻め込まなければ静観するつもりであったが……どうやら、我々も攻撃対象らしく、何度か小競り合いが起きている。」
「私達はある程度持ち堪えているけど、他の土地はだいぶ手酷くやられているみたい。」
「そーそー。パンプキンパイレーツは早々に降伏。ダイナキューティに至っては暴れん坊ラムプを残してほぼ全滅。他の所も散々にやられてんの。」
「オパーレン。不謹慎。」
「事実じゃん。」
後ろの壁に立っていたオパーレンと呼ばれたオレンジの少女をピンクの少女、スピーチネルが嗜める。
「ラムプ?」
「君達を襲ったあの紫のリビモンだよ。多分、他のダイナキューティがプディンセスの兵士にやられているから、普段見ないよそ者の君達を敵とみなしたのかも。」
アイベリーの疑問にストルビィが答える。
「そうか。あのトカゲが襲ってきたのはそんな理由が。」
「ふむ。そのクイーン•プディンセスとやら。話を聞く限りとんでもない暴君だな。ショコラータ様ならそのような事はせぬだろうに。」
ミンティアの言葉にグレーストは静かに頷く。
「うむ。……最早我々もこれ以上は捨て置けぬ。打って出ねばならん。」
「打って出る……ですか。」
グレーストの言葉にストルビィは複雑そうな顔をする。
だが、グレーストは彼女を一瞥すると、地図を拡げる。
だが、グレーストは彼女を一瞥すると、地図を拡げる。
「うむ。密偵からの情報によれば、ここから下った川の先にあるサワー畔にプディンセスの軍門に下ったパンプキンパイレーツの船団がいるとのことだ。これを叩く。水中からの奇襲だ。スピーチネル、君が指揮を取れ。」
「それがグレーストの命令なら、ボクは従うよ。」
グレーストに命じられたスピーチネルは頷くと、その場を後にする。
「ストルビィ、オパーレン。君達は上空から援護だ。」
「ういっす。まぁ、ちゃちゃっとやってきますわ。」
「……分かりました。」
グレーストの命令にオパーレンは手をひらひらさせながら答え、ストルビィは少し逡巡した後、彼女に続いて部屋を出る。
「………」
そんな彼女をアイベリーとミンティアが見送ると、残されたグレーストは二人に向き直る。
「さて。君達はどうする?私としてはいつ戦場になるかも分からぬここに留まるのは勧めぬが。」
「うーん……と言っても。行くとこないしなぁ。」
アイベリーがそう思案にふけこむと、グレーストは立ち上がる。
「まぁ、今すぐにとは言わない。明日、我等は明朝に出撃する。その時に答えを聞こう。寝る場所は案内させる。」
グレーストが手を叩くと、紫色のベレー帽を被った目隠れの少女型リビモンのブルベリンが現れ、気をつけの姿勢で待機する。
「彼女達を宿まで案内しろ。それでは、これで。」
グレーストの命令にブルベリンがコクリと頷くと、彼女はその場を去ってしまう。
視線で合図をするブルベリンにミンティアがついて行こうとすると、アイベリーは先程ストルビィが出ていった方へと向かう。
「アイベリー姉様?」
「ごめん!ちょっと野暮用!」
そう言うとアイベリーは駆けていく。突然の事にミンティアは驚いて、どうしようか少し考えた後、困惑しているとブルベリンに頭を下げると。
「すみません!追いかけます!」
そう言ってアイベリーが向かった方向へとついていくのだった。
「うーん……」
「ここは……」
ドームに飛び込み、白い光に視界が包み込まれ、視界がブラックアウトしたかと思うと、のじゃロリ猫とジュジィが再び開けた視界に写るのは見知らぬ天井だった。
視線を落とせば、菓子類で作られているのか、甘い香りがする煌びやかな調度品が並べられているのが見える。
「むにゃむにゃ。もう食えへんで……」
「なにベタな寝言を言うとるじゃお主は。」
ベチっとのじゃロリ猫がシーツを掴んで眠るフルーチェにチョップを入れて叩き起こす。
「うおぅ……あれ、ここは?」
三人が起き上がって辺りをキョロキョロと見回していると、ガチャリ、とドアノブが回る音がして、一人の少女が入って来る。
「あら。お目覚めになられましたか。」
そこにいたのは白い魔法使いのようなとんがり帽子にミニドレスを着込み、水飴のような質感と甘い香りを漂わせる半透明な身体の少女だった。
「君は?」
「申し遅れました。私の名前はガムビショップ。偉大なるクイーン•プディンセスに仕える者でございます。」
「クイーン?プディンセス?」
「我々を統率せし、偉大なる御方でございます。」
ガムビショップは澱みなくつらつらと答える。
「ワシらの看病してくれたのはお主かの?」
「我らが領地に倒れていた貴女方を我々が保護致しました。今度は、こちらが貴女方についてお聞きさせていただいても?」
今度はガムビショップの方から投げられた問いに三人は答える。
「ボクはジュジィ。」
「ワシの名前はのじゃロリ猫。」
「ウチはフルーチェや。喫茶オウマがトキの食糧調達班、と言ったとこやな。」
「貴女方が何者かは分かりました。では、何故ここに?」
「たまたま光のドームみたいなのを見つけてね。それに触ったら、知り合いが二人吸い込まれちゃったから、探しに来た、ってとこかな。」
「成る程。貴女方は外から来られた方々なのですね。」
三人の話を聞いて、事情を察したガムビショップは頷いて、彼女達に言う。
「現在、我等は他の勢力と戦争中です。ここは比較的安全でございますが、やはり、危険でございますので、即刻、光のドームから出ていく事をお勧め致します。別種族の貴方方なら、ドームも抜ける事は容易いでしょう。」
彼女が事情を説明した上で忠告するが、三人は。
「って、言うてもウチらも一緒に飛ばされた二人を回収せなアカンからな。」
「忠告はありがたく受け取るよ。助けてもらったことにもお礼は言わせて貰うよ。」
「取り敢えず、世話になったの。」
そう言うと三人はベットから起き上がり、思い思いに身体を動かす。それを見た彼女は少し残念そうな顔をして。
「……承知致しました。出口まで案内致します。」
ガムビショップはそう言うと三人を出口まで案内する。部屋から廊下に出ると、繊細な透かし細工を施された大きなステンドグラスが並び、壁はアラベスク模様のタイルで装飾され、高い天井からは、キラキラ輝く巨大なシャンデリアが下がり、足元に敷かれた厚い絨毯は彼女達の足音を吸い取っていく。まさに豪華絢爛と言った内装が彼女らを出迎える。
「おお〜……」
「こりゃすごいねー。」
「こちらです。」
内装を見て感心する三人をガムビショップが出口へと案内する。そして四人が廊下を歩いていたその時。
彼女達の対面の方向から、複数人の歩く音がする。
その方向に目をやると、そこにいたのはポップコーンのような頭に高帽子を被った複数の兵隊とそれを従えるように先頭に立つ黄色の網目模様の巨漢とアイスのようなコーンのような細長い脚に肩マントを纏う長身のリビモンだった。
長身のリビモンは彼女達に気づくとコツコツと音を立て、彼女達に近づいて来る。
「やぁやぁ、ガムビショップ卿ではないか!今日も美しいな!まぁ、私程ではないが!」
「ありがとうございますナイトクリーム卿。ですが、今は客人の案内があるので、また後にしてくださると助かるのですが。」
「そうか!それは残念だ!ではまた後程!」
ナイトクリームはそう言って、ガムビショップの後ろにいる彼女達を一瞥して、笑いながら去って行く。そして、去り際に網目模様の巨漢がガムビショップに話す。
「ガムビショップ卿。クイーン•プディンセスがお呼びだ。客人を送り届けたら貴卿も来るように、とのことだ。」
「承知しました。ワッフルーク卿。」
彼女がそう答えると、ワッフルークはそのまま奥へと進んでいく。
そして彼女は皆を正面玄関前まで連れて来ると、一枚の地図を渡すと、ぺこりと頭を下げる。
「私も皆様のご友人を探してあげたいのですが、私にも立場がある故、このようなものしか用意出来ず……申し訳ございません。」
「いや、ここまでしてくれただけ、ありがたいよ。」
「うんうん!暇な時にうちの店に来てや!サービスするで!」
そう言って去る三人を見送りながら、ガムビショップは心の中で呟く。
(貴女方のご友人が“リビングスイーツ”でないことを…祈ります。)
「お待たせして申し訳ございません。クイーン•プディンセス。」
部屋に入ると、ガムビショップは恭しく頭を垂れる。
「良い。面をあげよ。」
それは幼い声だった。部屋の最奥に佇む玉座にちょこんと腰掛けるのは金髪の愛らしい少女だった。
しかし、その見た目にそぐわない堂々とした態度は女王の立場がなせる技か。
しかし、その見た目にそぐわない堂々とした態度は女王の立場がなせる技か。
既にガムビショップ以外の幹部は席に座っていた。ナイトクリーム、ワッフルーク。そして…もう一人、ガムビショップの座る席の対面に一体のローブを纏い、甲羅を背負ったような外見の者がいた。
彼は彼女達幹部の中で新入りかつ外様…自らをリビコッコを名乗る者だ。
「全員揃ったようね。なら、会議を始めるわよ。」
「それでは、この私、ナイトクリームから報告致しましょう。まず、先日行いました遠征の成果ですが、ナップルーダ、アーバンプル、ファラフルール…他にも多数いましたが、125体のリビングスイーツの討伐を致しました。」
「ふむ。……上々の成果ね。こっちの犠牲は?」
「45体のポップポーンが犠牲となりました。彼らには哀悼の意を表します。」
「……分かったわ。それで、残りは。」
プディンセスがそう言うと、ワッフルークが挙手をする。
「残るもので大きいのはやはり、フルーツ•パーラディオンかと。」
「しかし、彼女達の領土は山中にあり、攻めにくく、また戦闘能力も侮れません。」
「なら、戦力を分断させましょう。パンプキンパイレーツに河川から攻めさせない。また、その情報を“フルーツ•パーラディオン”にも流すの。この情報は彼女達も無視出来ないハズよ。絶対迎撃に出るわ。その間に私達は本陣に攻め込むの。」
プディンセスの指示にガムビショップは思わず息を呑む。
「それはつまり……パンプキンパイレーツに囮になれ、と。」
「いずれ潰す予定だったのが早まっただけよ。」
彼女の冷たい声音にガムビショップだけでなく、他の幹部達も薄寒いものを感じる。
「素晴らしい!その極めて的確かつ、迅速な判断!このリビコッコ、お見それ致しました…!リビモン達のエネルギーの順当に溜まりつつあります!この遠征の成功の暁には必ずや、貴女の愛しきキング•パルフェは復活することでありましょう!」
そんな中、リビコッコが感動したように大ぶりな手振りで彼女を褒め称える。それを見た幹部達は顔を顰めるが、プディンセスは吐き捨てるように言う。
「当然よ。全てはそのために、キング•パルフェ復活のためだけに捧げて来たのだから。」
その言葉にガムビショップは俯く。
(あぁ……やはり、クイーンは変わってしまわれた。)
以前はこのような指示は下さなかった。領土拡大こそ狙ってはいたが、ここまで過激な方法では無かった。
王の復活のためなら虐殺すら辞さないのか。だが、幹部達にそれを糾弾することは出来ない。王あっての自分達。王無くして自分達に未来はない。自分達はそういう生き物なのだから。
王の復活のためなら虐殺すら辞さないのか。だが、幹部達にそれを糾弾することは出来ない。王あっての自分達。王無くして自分達に未来はない。自分達はそういう生き物なのだから。
「ナイトクリーム、ワッフルーク。フルーツ•パーラディオン討伐の準備をなさい。今回は私も出るわ。ガムビショップ、貴女はパンプキンパイレーツに指示と監視を。」
「「「はっ。御身の仰せのままに。」」」
やるしかない。今まで流して来た血は、引き返すにはもうあまりに多過ぎた。
厩舎の中、自らの相棒であるスドラゴベリィの手入れをしながら、ストルビィは沈んだ表情をする。
「……もう、やるしか、ないんだよね。」
彼女はまだ迷っていた。自分が生まれ育ったこの土地を守りたい。生き物を殺す事に抵抗は無い。だが、狩猟でもない、ただ殺す事のみを目的とした戦いに臨むのに彼女は躊躇いがあった。
だが、もうそんなことは言ってられない。やらなければやられる。
「やらなきゃ…!」
ストルビィがパンパンと頬を叩く。すると。
「おーい!」
どこからか声がかかる。声がした方を振り向くと、そこにはアイベリーとミンティアがいた。
「貴女達は……アイベリーさんとミンティアさん?何故、ここに?」
「いや、ちょっとな。さっきのアンタが迷ってたように見えたから。」
「迷っている…ように見えましたか。」
アイベリーの言葉にストルビィは少し自虐気味に笑う。
「アイベリーさんの言う通り、私、迷っているんです。今から戦うことに。ちゃんと戦えるのか、不安で…」
俯く彼女にアイベリーは言葉に詰まる。彼女がいまから向かうのは戦場だ。気楽に頑張れと言えるようなものではない。
どう声をかければ良いか彼女が悩んでいると。
どう声をかければ良いか彼女が悩んでいると。
「……まぁ、私もあまり偉そうな事は言えませんが。先達もして一つ、アドバイスをするなら。自分の中に一つ、信じるものを決める事です。」
ミンティアの言葉にストルビィが顔を上げる。
「信じる……もの。」
「戦いとは様々な思想が入り乱れる。それぞれの思いが、立場がある。だからこそ、惑わされぬよう、誰かのためでもなく、正義のためでもなく、自分が信じる、譲れぬものを一つ、心に決めるのです。」
「……。」
「お、おぉ〜。いい事言うね。」
「…茶化さないでください。今、マジメな話をしてるので。」
二人がヒソヒソ話していると、ストルビィは二人の方に向き直る。
「…ありがとうございます。胸につかえていたものが、少し取れた気がします。」
「いえいえ、気休め程度にでもなれば、私としても幸いで…。」
ミンティアがそう言うと、ストルビィはぺこりと頭を下げる。
「それでは、私はもう、明日に備えて休みます。貴女方も休まれて下さい。」
そう言うと、ストルビィは厩舎が出て行く。そんな後ろ姿を見送りながら、ミンティアは言う。
「…大丈夫でしょうか、彼女。変に気負わなければ良いのですが。」
「やっぱ心配?」
「…まぁ、一度は国を失った身。同じような立場に立たされている彼女達を見て心配にならないかと言われれば嘘になりますが……。」
「ならさ……」
アイベリーが彼女に言う。ミンティアはその言葉に少し驚くものの、コクリと頷く。
「なら、決まりだな!じゃあ、あたい達も寝るかー!」
──翌朝。日が昇り始め、辺りが朝焼けに包まれる中、広場にストルビィ、オパーレン、スピーチネルが集まっていた。
「うーしっ、じゃあ打ち合わせ通り、私達が空から陽動を仕掛けた後、スピチネル達が水中から奇襲──ていうプランで良いな。」
「ん。それで構わない。それと、必ずパンプキンパイレーツの頭は必ず取る。」
「…分かったわ。行きましょう。」
コクリと頷くストルビィを見て、二人も頷く。そして後ろに控えるブルベリン達に指示を飛ばす。
「よーし、出撃だ!準備しな!」
オパーレンがそう言うと彼女の側に巨大なオレンジ色の鎧を纏った梟、“オウルレンジ”が降り立つ。
スピーチネルの横に巨大なウーパールーパーのようなリビモン“ピーチルーパー”が寄り添う。
ブルベリン達もそれぞれの飛行リビモン、水棲リビモン達に騎乗する。
そして、ストルビィの前にスドラゴベリィが隣に立つ。
彼女達が出撃しようとした、その時。
スピーチネルの横に巨大なウーパールーパーのようなリビモン“ピーチルーパー”が寄り添う。
ブルベリン達もそれぞれの飛行リビモン、水棲リビモン達に騎乗する。
そして、ストルビィの前にスドラゴベリィが隣に立つ。
彼女達が出撃しようとした、その時。
「ちょっーと待ったー!」
声がかかる。ストルビィが振り返ると、そこにいたのはアイベリーとミンティアだった。
「アイベリーさんとミンティアさん!?なんでここに…」
「いや、なーに。アタイらもこの戦いに加勢させて貰おうと思うてな!」
「一宿一飯の恩というものです。」
二人の言葉にストルビィは驚く。
「なっ、なっ。そんな…加勢だなんて。」
困惑するストルビィはオパーレンとスピーチネルの方を向く。
「ま、いんじゃね。戦力は多いに越した事はないし。」
「邪魔さえしなければ別に良い。」
二人はそれだけ言うと、進軍を開始する。ストルビィはちょっと逡巡した後に指示を出す。
「分かりました。えーと、あっ、そこのブルベリン、彼女達を牽引して。」
そう言うと、腕に白い包帯を巻いたブルベリンがペコリと頭を下げながら二人を自身のリビモンに乗せる。
「あっ、もしかして昨日私達が助けた子?」
その包帯を見たアイベリーが尋ねると、彼女は恥ずかしそうにまたペコリと頭を下げる。
「いやいや、数奇な運もあったものです。よろしく。」
そう言うと、二人を乗せて、リビモンが飛び立つ。こうして、彼女達は進軍を開始したのだった。
河川へと繋ぐサワー岬にて、5つの船団が上川しようと曳航していた。
その中で一番剛健な見た目をした船に一人の女がデッキに腰掛けていた。
大きな羽根をあしらえた海賊帽を被り、片目を眼帯で覆ったオレンジ髪の女“パンプキンパイレーツ”は他の船団や部下であるパンプキントルーパー達の様子を酒を傾けながら眺めていた。
大きな羽根をあしらえた海賊帽を被り、片目を眼帯で覆ったオレンジ髪の女“パンプキンパイレーツ”は他の船団や部下であるパンプキントルーパー達の様子を酒を傾けながら眺めていた。
「お頭!進軍の準備、整いやした。」
「よし、そのまま微速前進。川を登るぞ。」
パンプキントルーパーの報告に、パンプキンパイレーツは指示を飛ばす。
そして、彼女は立ち上がると、振り返る。
そして、彼女は立ち上がると、振り返る。
「それにしても、女王陛下は疑り深いですなぁ、早々に下ったと言うのに、貴女を監視に寄越すとは。」
「……貴女の経歴を考えれば、妥当とは思いますが。」
パイレーツが振り返った先にいたのはガムビショップだった。そんな彼女を揶揄うようにパイレーツは軽口を叩く。
「それに、疑われたくないのであれば、この任務をこなし、女王に忠誠を見せなさい。」
「へいへい。真面目ですなぁ。お堅いことだ。」
パイレーツは彼女に近づくと、その顎に指を添え、クイと上げる。
「少しは柔らかくしないと。人付き合いのコツですよ。」
パイレーツの挑発的な態度にガムビショップの目線が鋭くなる。
「戯れも程々になされては?そもそも私は賊と仲良くする気など毛頭ございません。」
その視線を射かけられて尚、パイレーツはニヤニヤ笑いながら手を離す。
「おうおう。これは…デンジャラスですなぁ。」
そう言いながら、船団が上川を開始した、その時だった。
「お頭!」
「なんだ。」
「上空からリビモンに乗った騎兵隊が来てます!数は…20騎!」
「ほう。早速お出迎えか。手厚いな。」
部下からの報告を受けたパイレーツはニヤリと笑うと、部下達に指示を出す。
「野郎ども!対空用意!目障りな“コバエ”共を一匹残らず撃ち落としな!」
「「おう!!」」
パイレーツの指示に従い、部下達が動き始める。その様子を見ながら、ガムビショップは呟く。
「さて……お手並み拝見させていただきますよ。」
「いいかー!俺達は今回陽動だけど、イケそうなら沈めちまってもかまわねぇからな!」
オパーレンの号令にブルベリン達が腕を上げる。
「火弓よーい!」
彼女が腕を上げるとブルベリン達が火のついた矢を弓に番える。
「てっー!」
オパーレンが腕を振り下ろした瞬間次々と火弓が船目掛けて放たれる。
放たれた矢が船に降り注ぐ。無論、全てが当たる訳ではなく、また、すぐさま船を沈ませる即効性がある訳でもない。
だが、それでも延焼による沈没を防ぐ為に消火に人員を裂かねばならず、迎撃の手を緩めさせる事が可能だ。
オパーレン達の役目は陽動と攪乱。つまりはスピーチネル達が可能の限り接近するよう支援するのが最大の任務だ。
だが、相手は海で生きてきたならず者達。彼女達の好き勝手を許さない。
すぐさま火砲による迎撃が始まり、彼女達を接近させぬよう弾幕が張られる。
放たれた銃弾を回避しつつ、オパーレンとストルビィが弾幕を掻い潜って先陣を切る。
「喰らいなぁ侵略者共!」
「ふっ!」
オパーレンが放った矢が次々と兵隊達に突き刺さり、その隙にストルビィの振るった斬撃が船のマストを叩き斬る。
そしてそのままマストが轟音上げながらへし折れ、一隻が航行不能へと追いやられる。
「三番艦マスト大破!航行不能!」
「おいおい、やってくれたなぁ。」
部下の報告にパイレーツが苦い顔をする。
「出端を挫かれたようですね?」
ガムビショップがパイレーツに言う。その言葉にパイレーツひ舌打ちをすると。
「チッ、めんどくせぇな。こりゃ、アタシが出なきゃダメ、か。」
そう言うと、彼女は腰の剣、カットラスを抜くと、マストを駆け上がる。そして、頂上まで登ると、辺りを見回して、ニッと笑う。
「──そこだっ!」
彼女はマストを蹴って宙を舞う。そしてそこにいたのは、大空を飛翔するブルベリンの一人だった。
「!」
敵の接近に気付いたブルベリンが慌てて捕まらぬよう、進路を変更しようとするが、既に遅かった。
パイレーツはブルベリンが乗るリビモンに取り付くと、彼女が迎撃をするよりも早くカットラスを突き出して、彼女の身体を貫く。
「──!!」
「借りるぜ。」
そして骸と化したブルベリンを蹴り落とすと、主人が変わった事に驚いて暴れるリビモンの上で悠々と長身のラッパ銃を取り出す。
「おいおい、そんな暴れんなって。デンジャラスだぜ。」
軽口を叩きながら、彼女は他のブルベリンに向けて発砲する。
放たれた弾丸は彼女達を捉え、海へと叩き落としていく。だが、リビモンを乗っ取られた事に気付いた彼女達はパイレーツに向けて矢を放つ。
「おっと。」
パイレーツはカットラスで暴れるリビモンの首を切り裂くと、その身体を蹴って、離脱し、自分が元いた船へと着地する。
「よっと。」
彼女はすぐに薬莢を入れ替えて、次の獲物はどこだ、と言わんばかりに辺りを見回す。
「お前ッ!よくも!」
音もなく忍び寄っていたオパーレンがパイレーツに矢を浴びせかける。だが、すんでで気付いた彼女は近くにあった樽の陰へと飛び込んでその攻撃をかわす。
「おぉっと危ないねぇ。デンジャラスデンジャラス。」
状況とは裏腹に彼女はニヤリと笑うとロープをグルグルと回すとまるでカウボーイのように彼女に向けて投げ飛ばす。
果たして、その縄は正確にオパーレンの腕に巻きつき、オウルレンジから彼女を甲板に引き摺り落とす。
「しまっ──」
オパーレンは戦艦のうちの一隻に墜落する。しかし、彼女はすぐさま体勢を立て直し、襲いかかってくるトルーパー達に矢を放ち、掻い潜ってきた者には蹴りを叩き込んで迎撃する。
「おーおー。叩き落としたのにまぁ……人の船で暴れてくれんじゃないの。」
「人様の領土に無断で入り込むよりマシでしょ。」
一通り兵隊を蹴散らしたオパーレンの前にパイレーツが立ちはだかる。
だが、それでもオパーレンの戦意は一向に削がれない。
だが、それでもオパーレンの戦意は一向に削がれない。
「早々に帝国に下った臆病者が。仮にも人に立つ者が早々に走狗に成り果てるなんて恥知らずにも程があるわ。」
「クレバーに立ち回ったと言ってほしいね。上に立つ者には上に立つ者なりの考えがあるんだよ。覚えときなクソガキ。──いや、覚える必要はないか。」
次の瞬間、パイレーツの殺意が一段と膨れ上がる。
「どうせここで死ぬから覚えても無駄だったわ。」
パイレーツが目にも止まらぬ速さで銃を構え、オパーレンに向けて撃つ。
だがオパーレンも負けじと超反応でそれをかわし、矢を放つ。パイレーツはカットラスを振るって、放たれた矢をへし折ると、一気に走り出す。
「ヒャハハ!デンジャラスだねぇっ!」
嗤いながらパイレーツはオパーレンへと距離を詰める。オパーレンは彼女へと矢を次々と放つが、パイレーツはそれらを迎撃する。そして、とうとうオパーレンを射程内に捉える。
「つ•か•ま•え•た♡」
「キショいなぁっ!」
パイレーツは容赦なくカットラスを振り下ろす。鋭く、重い斬撃。だが、その斬撃をオパーレンはギリギリでかわし続ける。しかし、オパーレンの方もかわすのに精一杯で反撃に打って出る事が出来ない。
(ぐっ…!早い!避ける事で精一杯…!なんとかして一旦距離を…!)
「すばしっこいねぇ。なら、こいつはどうだい?」
そう言うとパイレーツはラッパ銃を捨てると斬撃に拳による打撃を織り交ぜる。
「なっ」
即致命傷に繋がる斬撃に注意を取られたオパーレンに拳の打撃がめり込む。
オパーレンもなんとか距離を離そうとするが、接近戦ではパイレーツの方に分がある。怒濤のラッシュがオパーレンの顔面に直撃し、彼女は激しく出血する。
オパーレンもなんとか距離を離そうとするが、接近戦ではパイレーツの方に分がある。怒濤のラッシュがオパーレンの顔面に直撃し、彼女は激しく出血する。
「がっ……!」
「いいねぇっ、随分と女前になったじゃねぇか!」
だが、顔面を激しく殴打されても尚、オパーレンの戦意も揺るがない。パイレーツの拳が再びオパーレンにめり込む。だが、それと同時に彼女が振り上げたアッパーカットがパイレーツの顎を打ち据える。
「おおっと。」
思わぬ反撃にパイレーツは少し距離を取る。だが、一方のオパーレンはよろめいて尻餅をつく。
それを見たパイレーツが嘲笑う。
それを見たパイレーツが嘲笑う。
「おいおいどうした。もうグロッキーか?お前のさっきのパンチもまるで小鳥の羽ように軽かったしな。」
「…やかま、しい。まだまだこれからよ……誇り高きフルーツ•パーラディオンを…舐めないことね。」
血を流しながら彼女は手すりを掴んで立ち上がる。激しい殴打を受けて、脳を揺らされた彼女は最早立っていられるのがやっと、と言ったら具合だ。
「ま、まずは一人…と。」
最早避ける力もないと判断したパイレーツは銃を拾い上げ、銃口を彼女に向ける。
「それじゃあ地獄へ、ボンボヤージュ。」
パイレーツが引き金を引こうとした次の瞬間。
「──させん!」
上空から声がしたかと思うと、二人の間に二つの人影が飛び込む。そしてその人影は放たれた弾丸を剣を振るって弾く。
「んんっ?」
「助太刀…させていただきます。」
「よーしゃ!コイツをボコればいいんだなぁっ!」
そこにいたのは剣を構えるミンティアと腕捲りをしてやる気満々と言った具合のアイベリーだった。
「おいおい。次から次へと……デンジャラスだねぇ。」
増援の登場にパイレーツはやれやれと肩を竦める。すると彼女の後ろから、ガムビショップが現れ、肩を並べる。
「2対1…を見過ごす、と言うのも一応は我が軍門に下った者に対する態度としては些か大人気ないもの。ここは加勢致しましょう。」
「へぇ。手伝ってくれんの。やっさしい。涙ちょちょぎれそうだ。」
「黙りなさい。貴女から硬めますよ?」
「おー怖。」
構える二人を見て、アイベリー、ミンティアも構える。
「敵が二人に増えたようね。」
「アンタは後ろで休んでな。後は、アタイ達に任せな!」
「ぐぅ……恩に切るよ…」
二人の言葉に、オパーレンは後ろへと下がる。ミンティアとアイベリーは改めて、走り出す。
「よしっ!行くぞ!」
アイベリーとミンティアが駆け出す。ガムビショップは持っていた杖を床へと叩きつける。するとそこから水飴のような物が溢れ出し、それは無数の触手となって二人へと襲い掛かる。
「ふんっ!」
ミンティアは剣を振るい、水飴の触手を切り裂き、アイベリーはかわす。
だが、ミンティアの前にパイレーツが飛び出す。
だが、ミンティアの前にパイレーツが飛び出す。
「なーんか、お前の方が厄介そうだなぁ!」
パイレーツが振るう斬撃とミンティアの振るう剣撃がぶつかる。まさに船上に一つの斬撃の嵐が巻き起こったかのような激しい斬り合い。だが、数合打ち合うと、パイレーツの方から血飛沫が上がる。
「いてててて!!なんだコイツ!」
「剣の真っ向勝負に私に勝てるとお思いで?」
ミンティアの剣撃がさらに鋭さを増す。それと同時にパイレーツの傷も増えていく。だが、パイレーツは笑みを浮かべる。
「チィッ、成る程。真っ向勝負じゃ分が悪いか!」
そう言った瞬間、パイレーツは踵で床を叩く。そしてミンティアの振るう剣をカットラスで受け止めると同時に彼女の足が跳ね上がる。
「!」
咄嗟にミンティアは首を捻って放たれた蹴りを回避する。だが次の瞬間、ミンティアの頬に一筋の切り傷が入る。
「…!仕込み靴か!」
「カカカッ。気付いたか。」
見れば彼女の靴の先端から刃物が飛び出していた。彼女の頬に傷をつけたのはそれが原因だろう。
「アタシの引き出しは無限大。正面から無理なら搦手で殺してやるよ。」
「……いいでしょう。邪道を叩き潰すは正道。私の剣が貴女を屠る!」
再び二人が間合いを測り、仕掛けるタイミングを見計らう。
そしてこの戦いは誰もが想像し得ない、壮絶な結末を迎える───!
To be continued……