深紅の火の粉が天に舞い、灰色の煙が立ち昇る隙間から漆黒の悪魔が顔を出した。
悲鳴と怒声のハーモニーに爆音と破砕音が絶望という音楽を奏でている。
辺りには血と硝煙の臭いが広まり、立ち上る煙のせいでむせる人々。
深夜という皮肉な時間なのもこの惨劇を手助けしていた。寝間着姿の男性、スーツ姿の女性、ぬいぐるみを
抱いた子供が瓦礫の下敷きになっていた。身体が動く様子は全くなく、手足の一部がありえない方向に曲がっ
ており身体には無数の痣が浮かんでいた。
「くっそぉぉ!」
一機のポーンがマシンガンを漆黒の悪魔、バイラムへと向けるが視線をこちらに向けただけで一向に動かなかった。
撃てるものなら撃ってみろ、そう挑発するかのように手をポーンの前に突き出した。
「畜生、舐めやがって!」
ポーンのマシンガンが火を吹くがバイラムの装甲に当たっただけであった。銃弾は全て跳ね返され、道路に、
ビルの壁に、それぞれ突き刺さっただけであった。そしてゆっくりとした歩調でポーンのほうへ向かっていく。
「くそ、くそくそくそくそくそくそ!」
何度もトリガーを引いて銃弾を浴びせるが黒の悪魔はたじろぐ様子もなく前進を続けた。地面が露出したア
スファルトの上を地響きを立たせながら近付いてくる。そして、ポーンの前まで来ると無慈悲に拳を振り上げ、
そのまま振り下ろした。
悲鳴と怒声のハーモニーに爆音と破砕音が絶望という音楽を奏でている。
辺りには血と硝煙の臭いが広まり、立ち上る煙のせいでむせる人々。
深夜という皮肉な時間なのもこの惨劇を手助けしていた。寝間着姿の男性、スーツ姿の女性、ぬいぐるみを
抱いた子供が瓦礫の下敷きになっていた。身体が動く様子は全くなく、手足の一部がありえない方向に曲がっ
ており身体には無数の痣が浮かんでいた。
「くっそぉぉ!」
一機のポーンがマシンガンを漆黒の悪魔、バイラムへと向けるが視線をこちらに向けただけで一向に動かなかった。
撃てるものなら撃ってみろ、そう挑発するかのように手をポーンの前に突き出した。
「畜生、舐めやがって!」
ポーンのマシンガンが火を吹くがバイラムの装甲に当たっただけであった。銃弾は全て跳ね返され、道路に、
ビルの壁に、それぞれ突き刺さっただけであった。そしてゆっくりとした歩調でポーンのほうへ向かっていく。
「くそ、くそくそくそくそくそくそ!」
何度もトリガーを引いて銃弾を浴びせるが黒の悪魔はたじろぐ様子もなく前進を続けた。地面が露出したア
スファルトの上を地響きを立たせながら近付いてくる。そして、ポーンの前まで来ると無慈悲に拳を振り上げ、
そのまま振り下ろした。
街にある避難用シェルターには着の身着の儘のままの人々がひしめき合っており、誰もが爆発音が聞こえて
くると恐怖に慄いた顔をした。最後と思わしき男性が壁についている取っ手を回し、シェルターの扉を閉めて
いく。メキメキと音を立てながら徐々にシャッターが下りていくと外から音は何も聞こえなかった。
「はぁはぁ……ここまで来れば安心だ」
額の汗を手で拭うと大きく息を吐き出した。そんなとき激しい地響きがシェルターを襲った。
「な、なんだ?」
「地震!?」
天井や壁ががひび割れ、さきほど立っていた地面が天井に早変わりした。
二機のバイラムの手にはシェルターがあった。彼らはシェルターを手に天高く飛び上がっていく。そして
ビルより高く飛び上がると剣を大きく振るい、シェルターごと切り捨てた。
切られたシェルターが宙を舞い、地面に叩き付けられると同時に赤い花が咲き乱れた。
くると恐怖に慄いた顔をした。最後と思わしき男性が壁についている取っ手を回し、シェルターの扉を閉めて
いく。メキメキと音を立てながら徐々にシャッターが下りていくと外から音は何も聞こえなかった。
「はぁはぁ……ここまで来れば安心だ」
額の汗を手で拭うと大きく息を吐き出した。そんなとき激しい地響きがシェルターを襲った。
「な、なんだ?」
「地震!?」
天井や壁ががひび割れ、さきほど立っていた地面が天井に早変わりした。
二機のバイラムの手にはシェルターがあった。彼らはシェルターを手に天高く飛び上がっていく。そして
ビルより高く飛び上がると剣を大きく振るい、シェルターごと切り捨てた。
切られたシェルターが宙を舞い、地面に叩き付けられると同時に赤い花が咲き乱れた。
赤い炎が巻き上がる中、ボルスはポーンを走らせる。辺りには多くの避難民が、北へ南へと逃げ出そうとし
ているがパニックが極限状態であるため、交通事故が絶えず、救急車や軍用車が立ち往生していた。
「アル、レイ! 状況を報告してくれ!」
ボルスがポーンに備え付けられている通信機で呼び出す。数秒の沈黙と共にアルの報告が飛び込んでくる。
「現在、バイラムは近隣都市部を攻撃しており、多数の死傷者が出ています。先ほど出撃した第4中隊は全滅、
他の部隊も被害が甚大なようです」
「バイラム側の被害は?」
「残念ですが撃墜の報告は今のところ……」
アルの報告に戸惑いつつ顔を上げるとそこには夜空を背に一機の悪魔がいた。
その内の一機が以前の戦いで使用した大型のキャノン砲をこちらに向けた。そして眩い光が放出されるとあ
たり一面が焼け野原と成り代わってしまった。舗装されたアスファルトも、高い摩天楼を思わせるビル群も、
フロリダの顔とも言えるやしの樹も全て、先ほどの一撃で塵と化してしまった。
「バ、バケモノめ……」
ボルスは苦い顔をしながら天にいる悪魔を睨みつける。
再びキャノン砲を背負うとフロリダの町へゆっくりと舞い降りる。そして地面に到着したと同時に剣を乱暴
に振るった。ビルの破片が大地に撒き散らされ、地面へと散らばる。
「これ以上の好き勝手は許さん!」
マシンガンをバイラムに向け、トリガーを引いた。激しい火花が散ると同時に鉛の弾がバイラムの身体に当たる。
だが、当たっただけであり、バイラムは一向に怯む様子も見せなかった。ポーンのほうをちらりと見ただけ
で別の攻撃目標を探そうとする。
眼中に無いだと!?
「ふ、ふざけるなぁぁぁ!」
ポーンのソードを取り出すとペダルを思い切り踏み、バイラムへと突進していく。そして、斬撃の間合いに
来ると思い切り振り下ろした。だが、それよりも早くバイラムの剣がソードを二つに切り裂いた。そしてその
ままポーンの身体を思い切り蹴り上げた。そのままバランスを崩し、大地を転がるもすぐに起き上がった。
これが、バイラムとポーンの差、なのか……。
折れた剣を見つめていると再び通信機から声が聞こえてきた。
「こちら、シルバーナイツ! 二機のバイラムに囲まれ、身動きが取れません。支給救援を!」
こんな時にか!?
ボルスは目の前にいるバイラムの方を見るが動く様子は全くなく、ただあたりを見渡しているだけであった。
「ちぃ!」
相手にされてない、ということか!
ポーンはバイラムに背を向け、アル達がいる場所へと向かっていった。
ているがパニックが極限状態であるため、交通事故が絶えず、救急車や軍用車が立ち往生していた。
「アル、レイ! 状況を報告してくれ!」
ボルスがポーンに備え付けられている通信機で呼び出す。数秒の沈黙と共にアルの報告が飛び込んでくる。
「現在、バイラムは近隣都市部を攻撃しており、多数の死傷者が出ています。先ほど出撃した第4中隊は全滅、
他の部隊も被害が甚大なようです」
「バイラム側の被害は?」
「残念ですが撃墜の報告は今のところ……」
アルの報告に戸惑いつつ顔を上げるとそこには夜空を背に一機の悪魔がいた。
その内の一機が以前の戦いで使用した大型のキャノン砲をこちらに向けた。そして眩い光が放出されるとあ
たり一面が焼け野原と成り代わってしまった。舗装されたアスファルトも、高い摩天楼を思わせるビル群も、
フロリダの顔とも言えるやしの樹も全て、先ほどの一撃で塵と化してしまった。
「バ、バケモノめ……」
ボルスは苦い顔をしながら天にいる悪魔を睨みつける。
再びキャノン砲を背負うとフロリダの町へゆっくりと舞い降りる。そして地面に到着したと同時に剣を乱暴
に振るった。ビルの破片が大地に撒き散らされ、地面へと散らばる。
「これ以上の好き勝手は許さん!」
マシンガンをバイラムに向け、トリガーを引いた。激しい火花が散ると同時に鉛の弾がバイラムの身体に当たる。
だが、当たっただけであり、バイラムは一向に怯む様子も見せなかった。ポーンのほうをちらりと見ただけ
で別の攻撃目標を探そうとする。
眼中に無いだと!?
「ふ、ふざけるなぁぁぁ!」
ポーンのソードを取り出すとペダルを思い切り踏み、バイラムへと突進していく。そして、斬撃の間合いに
来ると思い切り振り下ろした。だが、それよりも早くバイラムの剣がソードを二つに切り裂いた。そしてその
ままポーンの身体を思い切り蹴り上げた。そのままバランスを崩し、大地を転がるもすぐに起き上がった。
これが、バイラムとポーンの差、なのか……。
折れた剣を見つめていると再び通信機から声が聞こえてきた。
「こちら、シルバーナイツ! 二機のバイラムに囲まれ、身動きが取れません。支給救援を!」
こんな時にか!?
ボルスは目の前にいるバイラムの方を見るが動く様子は全くなく、ただあたりを見渡しているだけであった。
「ちぃ!」
相手にされてない、ということか!
ポーンはバイラムに背を向け、アル達がいる場所へと向かっていった。
「くっそ、なんなんだよ! こいつら!」
二機のバイラムが二人を見つめている。逃さないかのように剣を突きつけ、すり足で徐々に近づいてきた。
辺りにはポーンのパーツがいたる所に散らばっている。その数は軽く見渡しただけでも十本以上あった。
「あのとき倒したのは彼らの親、だったのでしょうか?」
「さぁな、今わかるのは絶体絶命ってわけだ!」
一機のバイラムが剣を構えると一気に踏み込んできた。アルは舌打ちをしつつ剣を縦に構え、受け止めようとする。
だが、ナイツの懐まで来ると突然、右にステップを踏んで方向転換をすると鋭い突きをナイツの喉元を目掛
け飛んでくる。
「しまった!」
だが、バイラムの剣はナイツの喉元を貫くことはなかった。なぜなら横から一機のポーンがバイラムの腹部
を思い切り蹴り付け、転倒させたのだ。蹴られたバイラムは重い音を立たせながら地面に尻餅を付く。
「隊長!」
「アル! レイ! 無事だったか!?」
ボルスはポーンをバイラムとの間に割りこむかのように立たせ、バイラムのほうへと視線を向けた。
蹴られたバイラムはすぐさま立ち上がる。どこも凹んだ様子は無い、むしろ蹴ったポーンのほうがダメージを受けていた。
これは”彼女”なのか? セルの顔が頭の中によぎる。
そう考えた矢先、アルの通信機に通信が入った。スイッチを入れて内容を聞くと力ない声で二人に伝える。
「隊長、司令部は基地は放棄するようです。生き残ったものたちはすぐにココから離脱を……と」
事実上の撤退命令だった。この事にボルスは憤慨する。苛立ちを押さえ切れずついディスプレイを思い切り叩いてしまう。
「馬鹿な!? 市民の誘導は? 取り残された者も多いんだぞ!!」
救急車や軍の関係者のみならず一般市民の避難者はあまりにも少なすぎた。回収しようにも道路は事故車で
道はふさがれており、空からの救助をしようにもバイラムによってそれが阻害されているようだった。
「し、しかし……」
口ごもるアルの後ろにバイラムが現れた。大きく腕を振り上げ、背面から切り捨てようとする。
「アル!」
素早くポーンをバイラムの前に飛び出たせると、自らのソードで攻撃を受ける。だが、防ぎ切ることが出来
ず、そのまま手が頭にめり込んだ。それと同時にポーンは煙を上げ、爆発する。
「隊長!」
「だ、大丈夫だ。やはり……ポーンではこれが限界らしいな……」
咄嗟とはいえ脱出装置が上手く働いてくれたが……。
レイはボルスを見つけると素早く手を伸ばし、彼を手の平に乗せる。
「隊長、撤退しますがよろしいですね」
「……頼む」
ボルスの苦い顔を汲み取りながら二機のナイツは炎に巻かれた街を背に飛び立っていった。
バイラムはそれを追撃するわけでもなく、そのまま別の方向へと身体を向け、街へと向かっていく。
そして、ボルスたちがフロリダの壊滅を聞くのはそれから一時間後のことであった。
死者はフロリダ市民の半数以上に上り、フロリダに居た軍の殆どを失う結果になった。
二機のバイラムが二人を見つめている。逃さないかのように剣を突きつけ、すり足で徐々に近づいてきた。
辺りにはポーンのパーツがいたる所に散らばっている。その数は軽く見渡しただけでも十本以上あった。
「あのとき倒したのは彼らの親、だったのでしょうか?」
「さぁな、今わかるのは絶体絶命ってわけだ!」
一機のバイラムが剣を構えると一気に踏み込んできた。アルは舌打ちをしつつ剣を縦に構え、受け止めようとする。
だが、ナイツの懐まで来ると突然、右にステップを踏んで方向転換をすると鋭い突きをナイツの喉元を目掛
け飛んでくる。
「しまった!」
だが、バイラムの剣はナイツの喉元を貫くことはなかった。なぜなら横から一機のポーンがバイラムの腹部
を思い切り蹴り付け、転倒させたのだ。蹴られたバイラムは重い音を立たせながら地面に尻餅を付く。
「隊長!」
「アル! レイ! 無事だったか!?」
ボルスはポーンをバイラムとの間に割りこむかのように立たせ、バイラムのほうへと視線を向けた。
蹴られたバイラムはすぐさま立ち上がる。どこも凹んだ様子は無い、むしろ蹴ったポーンのほうがダメージを受けていた。
これは”彼女”なのか? セルの顔が頭の中によぎる。
そう考えた矢先、アルの通信機に通信が入った。スイッチを入れて内容を聞くと力ない声で二人に伝える。
「隊長、司令部は基地は放棄するようです。生き残ったものたちはすぐにココから離脱を……と」
事実上の撤退命令だった。この事にボルスは憤慨する。苛立ちを押さえ切れずついディスプレイを思い切り叩いてしまう。
「馬鹿な!? 市民の誘導は? 取り残された者も多いんだぞ!!」
救急車や軍の関係者のみならず一般市民の避難者はあまりにも少なすぎた。回収しようにも道路は事故車で
道はふさがれており、空からの救助をしようにもバイラムによってそれが阻害されているようだった。
「し、しかし……」
口ごもるアルの後ろにバイラムが現れた。大きく腕を振り上げ、背面から切り捨てようとする。
「アル!」
素早くポーンをバイラムの前に飛び出たせると、自らのソードで攻撃を受ける。だが、防ぎ切ることが出来
ず、そのまま手が頭にめり込んだ。それと同時にポーンは煙を上げ、爆発する。
「隊長!」
「だ、大丈夫だ。やはり……ポーンではこれが限界らしいな……」
咄嗟とはいえ脱出装置が上手く働いてくれたが……。
レイはボルスを見つけると素早く手を伸ばし、彼を手の平に乗せる。
「隊長、撤退しますがよろしいですね」
「……頼む」
ボルスの苦い顔を汲み取りながら二機のナイツは炎に巻かれた街を背に飛び立っていった。
バイラムはそれを追撃するわけでもなく、そのまま別の方向へと身体を向け、街へと向かっていく。
そして、ボルスたちがフロリダの壊滅を聞くのはそれから一時間後のことであった。
死者はフロリダ市民の半数以上に上り、フロリダに居た軍の殆どを失う結果になった。
シュペールのブリッジでは険しい顔をしたマールが目標であるアトランティスを見つめていた。
青一色だった海が徐々に眩い光が見え始めた。銀色のパイプと灰色のアスファルトが巨大な空母を
思わせる。カメラ越しとはいえ煙が幾つも立ち上っている。これが海上自営都市、アトランティスである。
「アトランティス、距離、H二千!」
「パイロットはビスマルクに搭乗! 距離が千以下になったら出撃命令を!」
「了解!」
通信士が艦内放送を告げると当りは騒然となり始めた。マールはシートについているボタンを押すとディス
プレイに作戦内容を表示する。都市攻撃をするのはクルー全員にとって始めての事なのだ。今まで相手にして
きた物とは違うことが理解できている。だが、この感覚はなんともいえなかった。
マールは空爆が嫌いであった。一つ間違えれば街が一つ消えるのだ。建物がなくなる恐怖というのは父から、
そしてファルから散々聞かされた。勿論、爆撃された都市へも足を運んだことがある。
そのウィルスの言葉を真に受ける訳ではないがやはりいい気分はしない。
「アトランティスまで距離千を切りました!」
「ビスマルク搭乗員はすぐに発進してください」
オペレーター達が慌ただしく命令を口にする。戦いの始まりをマールはひしひしと感じていた。
青一色だった海が徐々に眩い光が見え始めた。銀色のパイプと灰色のアスファルトが巨大な空母を
思わせる。カメラ越しとはいえ煙が幾つも立ち上っている。これが海上自営都市、アトランティスである。
「アトランティス、距離、H二千!」
「パイロットはビスマルクに搭乗! 距離が千以下になったら出撃命令を!」
「了解!」
通信士が艦内放送を告げると当りは騒然となり始めた。マールはシートについているボタンを押すとディス
プレイに作戦内容を表示する。都市攻撃をするのはクルー全員にとって始めての事なのだ。今まで相手にして
きた物とは違うことが理解できている。だが、この感覚はなんともいえなかった。
マールは空爆が嫌いであった。一つ間違えれば街が一つ消えるのだ。建物がなくなる恐怖というのは父から、
そしてファルから散々聞かされた。勿論、爆撃された都市へも足を運んだことがある。
そのウィルスの言葉を真に受ける訳ではないがやはりいい気分はしない。
「アトランティスまで距離千を切りました!」
「ビスマルク搭乗員はすぐに発進してください」
オペレーター達が慌ただしく命令を口にする。戦いの始まりをマールはひしひしと感じていた。
「ビスマルク、発進!」
「了解! ビスマルク発進!」
薄暗いシュペールのハンガーから少し前進し、カタパルトへと向かっていく。白い色の踏み板に足を乗せる
と赤いシグナルが点灯する。テンポのいい電子音が数回なると青へと変わった。それと同時に思い切りペダル
を踏み込むと黄色のPMが外へと飛び出していく。その日は運が悪いのか黒い雲が多かった。
「各機、攻撃目標に進んで。くれぐれも都市部にミサイルなんて放り込むんじゃないわよ」
「了解!」
通信機から威勢のいい声が聞こえてくるがみんな疲れているのを肌で感じ取れた。
ここまで来るのにかなりのビスマルクを失ったわね……。それに、ウチはかなり連戦してるからなぁ……。
そんな思いで進んでいくと海上に巨大な黒い影が見えた。カメラのズームで確認をしてみる。
「な、何よあれ」
それは、紫色のバイラムだった。威風堂々とした仁王立ち、向かってくる敵はすべてなぎ倒そうとする気迫を発している。
コックピットの中でセルが小さくつぶやいた。袖に付いているボタンをいじりながらスーツの調整をしている。
「これに乗っての戦闘って本当に久々なのよね。悪いけど……軽く肩慣らしをさせてもらうわ」
操縦桿を握ると思い切りペダルを踏み込むとファルの目の前から紫の鬼がその姿が消える。
「!? きえ――」
次の瞬間、バイラムが後ろにいた。そのまま貫手を繰り出し、ビスマルクのウィングを切り裂いた。
殆ど咄嗟だった。もし一瞬遅れていれば腕を取られていただろう。
が、切り裂いた本人は少し落胆した顔をしながら計器をいじっていた。
「加速度はこんなものね、次は武装だけど……流石に使うのは気が引けるわね」
しかし、突然の襲撃にビスマルクはバランスを崩し、そのまま海へと落下しそうになる。
だが、彼女もこのままでは終わらなかった。操縦桿を奥に思い切り傾ける。共にペダルを思い切り踏み込む
と落下していたビスマルクが海面の上を滑っていく。
「あら、この程度ではくたばらないみたいね」
水しぶきを上げながら飛んでいくビスマルクを見て、彼女はため息を吐くと若干驚いたような声で呟いた。
「上等じゃない……こっちとら散々煮え湯を飲まされたのよね、あんたを倒して、黒幕を引きづり出してやる!」
ビスマルクは大剣を構えると目の前にいる鬼をにらみつけた。そして、二人はお互い、それぞれ構えを取る
と疾風のように天を駆け出した。
「了解! ビスマルク発進!」
薄暗いシュペールのハンガーから少し前進し、カタパルトへと向かっていく。白い色の踏み板に足を乗せる
と赤いシグナルが点灯する。テンポのいい電子音が数回なると青へと変わった。それと同時に思い切りペダル
を踏み込むと黄色のPMが外へと飛び出していく。その日は運が悪いのか黒い雲が多かった。
「各機、攻撃目標に進んで。くれぐれも都市部にミサイルなんて放り込むんじゃないわよ」
「了解!」
通信機から威勢のいい声が聞こえてくるがみんな疲れているのを肌で感じ取れた。
ここまで来るのにかなりのビスマルクを失ったわね……。それに、ウチはかなり連戦してるからなぁ……。
そんな思いで進んでいくと海上に巨大な黒い影が見えた。カメラのズームで確認をしてみる。
「な、何よあれ」
それは、紫色のバイラムだった。威風堂々とした仁王立ち、向かってくる敵はすべてなぎ倒そうとする気迫を発している。
コックピットの中でセルが小さくつぶやいた。袖に付いているボタンをいじりながらスーツの調整をしている。
「これに乗っての戦闘って本当に久々なのよね。悪いけど……軽く肩慣らしをさせてもらうわ」
操縦桿を握ると思い切りペダルを踏み込むとファルの目の前から紫の鬼がその姿が消える。
「!? きえ――」
次の瞬間、バイラムが後ろにいた。そのまま貫手を繰り出し、ビスマルクのウィングを切り裂いた。
殆ど咄嗟だった。もし一瞬遅れていれば腕を取られていただろう。
が、切り裂いた本人は少し落胆した顔をしながら計器をいじっていた。
「加速度はこんなものね、次は武装だけど……流石に使うのは気が引けるわね」
しかし、突然の襲撃にビスマルクはバランスを崩し、そのまま海へと落下しそうになる。
だが、彼女もこのままでは終わらなかった。操縦桿を奥に思い切り傾ける。共にペダルを思い切り踏み込む
と落下していたビスマルクが海面の上を滑っていく。
「あら、この程度ではくたばらないみたいね」
水しぶきを上げながら飛んでいくビスマルクを見て、彼女はため息を吐くと若干驚いたような声で呟いた。
「上等じゃない……こっちとら散々煮え湯を飲まされたのよね、あんたを倒して、黒幕を引きづり出してやる!」
ビスマルクは大剣を構えると目の前にいる鬼をにらみつけた。そして、二人はお互い、それぞれ構えを取る
と疾風のように天を駆け出した。
「押さないで! ゆっくりお願いします!」
看護士の誘導に従い病人たちは進む。その歩みは遅く、亀が列を組んで歩いているようだった。
バイラムの手はここ、福岡にも来ていた。巻き起こる炎と煙が行く手を阻み、金属が軋んだ音と雷のような
破砕音が止まることなく聞こえてくる。
「ひぃ!」
遠くの方で爆発音が聞こえた。一人の老人の足が止まりその場にうずくまってしまう。一人の男性が老人に
近寄るとそっと手を方に置いた。
「大丈夫ですか?」
「もう……駄目だ」
蒼ざめた顔、額から湧き出す冷や汗、手足は恐怖で完全に震えていた。
「そんなこと――」
「もう駄目だ! 俺達は死ぬ! 死ぬんだァァ!」
叫び声と共に大きな爆発音が響いた。場所が近かったらしくあたりも大きく揺れる。松葉杖を付いた者はそ
のまま転び、他の者も振動のせいか顔をしかめた。
「うわぁ!」
「ひ、ひぃぃぃぃぃ! 助けてくれぇぇぇ!」
絶叫と共に老人は人並みをかき分けて外へと走っていく。
その様子を見て、祐一は天井を見上げた。バイラムの攻撃によって既に病院という建物は既に骨だけになり
つつある。動くはずのエレバーターは既に止まり、外に出る非常階段が少し傾いていた。
「メアリー……」
去ってしまった女の子の名前を呟いてみる。だが、当然のように彼女の姿はどこにも見えなかった。
そして、やっとの思いで外に出て見るとそこには……。赤い壁、火の海が街を焼いていた。
遠くにはバイラムが見えた。ビルを殴りつけると壁にひびが入り、真っ二つに折れるとそのままアスファル
トへと叩きつけられる。止めてある車を踏みつけ、商店街のアーチを突き破り、巨大な高層ビルを砕いていく。
燃え盛る炎と共に悪魔は福岡の街を更地にしていく。
「そ、そんな……」
誰かが力なく呟く。赤い炎が燃え盛る様子を、ある者はその場で膝を付き、ある者は涙でむせび泣き、ある
者は目の前の惨劇に恐怖した。
「助けはいつ来るの!?」
一人の女性が看護士の肩を掴む。かなり強く掴んだらしく看護士は顔をしかめた。
「あ、後三十分後には来る……と」
「三十分!?」
この言葉は病人全体に不安をさらに盛り立てていた。
この状況下で救援が来れるのだろうか? あのバイラムたちに殺される方が先なのでは?
そんな不安をバイラムたちがさらにかき立てる。
遠くで朱雀がまるでスクラップ工場で圧縮される。足が折られ、顔が、胴体が素早い動きで小さくされていく。
救援に来たはずの玄武が鉄骨が軋む低い音を響かせると腕がもぎ取られた。
遠くで攻撃をしていた青龍がその姿かたちを残さず消し去っていった。
「こ、こんな所いられるか!?」
一人の男性が叫ぶと一目散に病院から離れていく。
それに続くかのように俺も、私も、と一人、また一人と四方八方へ散らばっていく。
「ま、待ってください!」
看護士は止めようとするが既に遅く、彼らは足早に逃げ出そうとしていく。もはや集団行動をするつもりは
ないらしい。
周りが騒がしい中、祐一は空を見上げる。
動くにも体が動かない、それに行くったってどこに……?
そんな時、一瞬だが空の彼方が光った。
何かが来る……。なんだ?
”それ”はジェット機のよう音を立ててこちらに向かってくる。そして祐一の目の前に広がるとそれはその
まま病院へとぶつかった。
「うわぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
飛んでくる瓦礫を前にその場にうずくまる。小さな小石が風を切って体の脇を通り過ぎていった。瓦礫を撒
き散らしながらその場に倒れた。
「これ……は?」
目の前に現れた巨大な白。自動ドアが開いた音が聞こえてきた。危険を何一つ考えずに近付いてみた。
扉の置くにはコックピットが見える。まるで漫画とかで見た光景が広がっていた。
「乗れって言うのか?」
辺りを見渡してみるが自分以外動く物は誰もいない、あるのは炎と煙のみ。先ほど居た病人達の姿はどこに
も見えなかった。
「くっ……」
どうせ死ぬなら多少は抵抗してやる!
そう決意するとコックピットに飛び込んだ。中に入ると同時に自動ドアが閉じた。
コックピットの中は思ったよりも静かであった。操縦桿とディスプレイのみ付いているシンプルな構図であった。
足元にはペダルが二つ付いている。恐らくアクセルとブレーキなのだろう。
まるで棺桶のみたいだ……。
先ほどのような爆発音も聞こえない、焦げたようなにおいも感じない。あるの静寂だけだった。
しばらくするとウィンドウが開き、自分の知らない文字が数秒表示された後、アルファベットが表示された。
I AM EXATLIA Could YOU HELP ME OUT
英語? これなら僕にも読める。でも助けてくれって……。
そう思った矢先、すかさず別の画面が表示された。操縦桿を倒せ、と。
表示に従い操縦桿を後ろに倒すと倒れてきたPMはゆっくりと立ち上がった。
床に散らばっていた瓦礫が軋みを上げ、巻き起こる炎を背にする。
三機のバイラムは一斉にPMのほうを見る。その全体像をじっくり観察するかのように。
樫の樹のような太い腕と足、腰には少し大きめなライフル、その周りには四本の棒が付いている。
バイラムと同じ姿だったが細部が違った。前面に突き出された大きな角、精悍な顔つき、そして全身が粉雪
のように白かった。
「くっ!」
思い切りペダルを踏み込むとそのまま真っ直ぐバイラムへと向かっていく。
凄まじい衝撃が祐一の体を襲う。歯を食いしばり、その衝撃に耐える。
バイラムもそれに反応するかのように剣を構える。だが、白いPMの装甲を貫くことなくそのまま潰される
かのようにバイラムの顔が変形した。すかさず操縦桿を傾け、PMを起こそうとするがそれよりも早くバイラ
ムの手が白いPMの体を押した。そのまま、体重が後ろに傾き、仰向けに転がった。
ジェットコースターとは比べもにならない衝撃がコックピットに走る。
「ぐ……ぁ……」
痛みで声が出ない……。じわりと包帯が赤くなる。撃たれた場所が未だに塞がっていない証拠だった。
だが、このまま黙ってやられるわけには行かない。
「くっそぉ……」
身体に力を入れて立たせるとすぐさまバイラムを正面に見据える。ぼやけた視界で操縦桿を右へ左へと乱暴に動かす。
するとそれに反応したPMはまるで無造作に拳を繰り出した。激しい音ともにバイラムの胸が大きく凹むとそのまま
動かなくなった。
「はぁはぁはぁはぁ……」
息苦しい……。息が出来ない……。胸が締め付けられそうだ……。
胸を押さえ、その場に俯き、倒れ掛かるがバイラムは待ってはくれない。大空から砲撃を加えようとキャノ
ンをエグザトリアへと向ける。
「しまった!?」
声に反応するかのようにディスプレイに何かが表示される。腰についているライフルだった。
「使えっていうの!?」
表示に従い今度は操縦桿についているダイヤルを回す。すると腰についていたライフルを引き抜き、バイラムに向けた。
だがディスプレイの照準は右へ、左へと移動し、全くといっていいほど安定しなかった。
このままやるしかない!
「ここから、いなくなれぇぇぇ!」
叫びと共にトリガーを引くと重い手ごたえを通じてライフルから青い光が漏れ出す。そして閃光は一筋の雷
となりバイラムの胸部を貫いた。心臓を抉られたバイラムはそのまま硬いアスファルトの上に叩き付けられ、
そのまま動きを止めた。
「はぁ……はぁ……」
呼吸するのも苦しい……痛い……助けて……。
肩で息する横から一機のバイラムが剣を構え、向かってくる。
最後とばかりに身体に力を入れ、ライフルをバイラムに向ける。
「これで……最後……!」
トリガーを引くと先ほどと同じように閃光が走り、バイラムの顔が大きく抉れ、そのまま仰向けに倒れた。
それと同時に祐一の体から力が抜ける。時間としてはかなり短かったが、既に呼吸しか彼の頭にはなかった。
突然通信機から拍手が聞こえてきた。辺りを見渡すと赤い鬼、ネオ・バイラムがそこにいた。
ランプが光ったと同時に通信ウィンドウが開かれた。
「ハローユウイチ!」
「メア……リー?」
大きく息を吸いながら混乱する頭で彼女の方を見るとネオ・バイラムは自分の方に向かって手を振った。
「流石だね、その機体をもう乗りこなしちゃった!」
うんうんと大きく頷きながら祐一を見つめる。その瞳は一転の曇りはなく、賞賛と尊敬が感じられた。
「この機体?」
「うん、エグザトリアっていうの」
「エグザ……トリア?」
このPMの名前……なのかな?
混乱する祐一を無視してメアリーは言葉を続ける。
「流石に今更返して! なんて言ったら怒られちゃうからユウイチにあげるね!」
「あげるって……」
一体どういうことなの? それにこれはメアリーたちの……?
「理由ならあるよ、それはユウイチがそれに乗っちゃったから!」
「このPMに乗ったから? だからくれるって訳?」
いくらなんでも無茶苦茶だ、もしもこれを反して欲しいなら僕をそのまま殺せばいいのに……。出来ない理
由でもあるの? 乗った時の事を思い出してみても別にパイロット登録が必要だったわけでもない。
「うん、そうだよ。ところでさ、ユウイチはこれからどうすんの?」
「どうするって……」
「軍に出頭した方がいいよ、銃殺刑かもしれないけど量刑はあると思うから」
まるで自分を心配するかのような優しい声だった。昔、うっかりナイフで手を切ってしまった時にかけて
くれた声のように。それよりもメアリーには聞きたいことがあった。
「そんな事よりも……」
「え?」
「どうして、僕を殺そうとしたの?」
祐一の問いに少し唸った後、少し顔を赤くしてモジモジしながら答え始めた。
「最初は任務だったけど、今は……」
「今は?」
「今は、ユウイチの事が好きだからだよ」
この言葉に祐一は声を荒げた。
「ふ、ふざけてるの!?」
「ふざけてないよ! 私はユウイチが好き! これは本当だもの」
「そ、そんなのおかしいじゃないか!? 何で好きなのに殺すんだよ!」
「んんっ? それっておかしいことなの?」
「そうだよ!!」
すっ呆けているような声でメアリーは首をかしげた。祐一の言ったことが分からないらしく軽く唸っていた。
「うーん、でもさ、好きだからキスするんだよね?」
「そうだよ」
「好きだから私とデートしてくれたんだよね?」
「そ、そうだけど……」
「じゃあ、好きだから殺すは何でいけないの?」
「そ、そんなの決まってるじゃないか! 好きな人を殺すなんておかしいからに……」
言い切る前にメアリーは祐一の前に手の平を突き出す。
「STOP! それはもう十分分かったよ。でもどうしておかしいの?」
「え?」
突然のメアリーの言葉に口の動きが止まる。
「私はユウイチが好きだから、たぶん世界で一番好きだから殺したいんだよ、ユウイチの世界の言葉で言うな
ら愛情表現って奴。それなのにいけないの?」
「好きな人を殺したいなんて普通じゃない。殺すって事は死ぬってことなんだよ、メアリー。いなくなって消
えちゃうってことだよ。それでもいいの?」
「消えないよ、そこにユウイチはいるし、ずっとユウイチの隣にいられるもの」
「僕が動いたり喋ったりしなくなっても?」
「だから一緒にいられるんでしょ?」
メアリーの言葉に眩暈が起きてきた。理解が出来ない。
何故殺すのか? 愛情表現だから。 僕が死んでもいいの? 死んでもいい、ずっと一緒にいられるから。
彼女にとって大事なのは生きている僕ではなく、僕の外見なの?
その考えにたどり着こうとした時、彼女のバイラムはエグザトリアに背を向けた。
「ユウイチ、私、待ってるからね」
「待ってる?」
「うん、でも火星や金星じゃないから」
火星でも金星でもない?
「え? それじゃあどこに……」
「アステロイドって知ってる?」
「ああ、火星と木星の間にある所だよね?」
正式名称、アステロイドベルト。火星と木星の間にある小惑星群である。
「そう、そこで待ってるから。じゃあね」
そういうとネオ・バイラムはエグザトリアに背を向けて黒い空へと帰っていった。
祐一は追いかけることも引き止めることもせず、ただメアリーの姿を見送る。
「アステロイド……か」
気を抜いた瞬間、嫌な嫌悪感が噴出してきた。激しい吐き気に手を口にやるとの生暖かい感触と鉄の味が口
いっぱいに広がった。気持ち悪さに口を開けると真っ赤な液体が止まる様子もなく出てきた。そしてそれは自
分の手を、胸元を赤く染め上げた。
「血? どういうこと……な、んだ?」
そのまま崩れるかのようにコックピットに伏した。
看護士の誘導に従い病人たちは進む。その歩みは遅く、亀が列を組んで歩いているようだった。
バイラムの手はここ、福岡にも来ていた。巻き起こる炎と煙が行く手を阻み、金属が軋んだ音と雷のような
破砕音が止まることなく聞こえてくる。
「ひぃ!」
遠くの方で爆発音が聞こえた。一人の老人の足が止まりその場にうずくまってしまう。一人の男性が老人に
近寄るとそっと手を方に置いた。
「大丈夫ですか?」
「もう……駄目だ」
蒼ざめた顔、額から湧き出す冷や汗、手足は恐怖で完全に震えていた。
「そんなこと――」
「もう駄目だ! 俺達は死ぬ! 死ぬんだァァ!」
叫び声と共に大きな爆発音が響いた。場所が近かったらしくあたりも大きく揺れる。松葉杖を付いた者はそ
のまま転び、他の者も振動のせいか顔をしかめた。
「うわぁ!」
「ひ、ひぃぃぃぃぃ! 助けてくれぇぇぇ!」
絶叫と共に老人は人並みをかき分けて外へと走っていく。
その様子を見て、祐一は天井を見上げた。バイラムの攻撃によって既に病院という建物は既に骨だけになり
つつある。動くはずのエレバーターは既に止まり、外に出る非常階段が少し傾いていた。
「メアリー……」
去ってしまった女の子の名前を呟いてみる。だが、当然のように彼女の姿はどこにも見えなかった。
そして、やっとの思いで外に出て見るとそこには……。赤い壁、火の海が街を焼いていた。
遠くにはバイラムが見えた。ビルを殴りつけると壁にひびが入り、真っ二つに折れるとそのままアスファル
トへと叩きつけられる。止めてある車を踏みつけ、商店街のアーチを突き破り、巨大な高層ビルを砕いていく。
燃え盛る炎と共に悪魔は福岡の街を更地にしていく。
「そ、そんな……」
誰かが力なく呟く。赤い炎が燃え盛る様子を、ある者はその場で膝を付き、ある者は涙でむせび泣き、ある
者は目の前の惨劇に恐怖した。
「助けはいつ来るの!?」
一人の女性が看護士の肩を掴む。かなり強く掴んだらしく看護士は顔をしかめた。
「あ、後三十分後には来る……と」
「三十分!?」
この言葉は病人全体に不安をさらに盛り立てていた。
この状況下で救援が来れるのだろうか? あのバイラムたちに殺される方が先なのでは?
そんな不安をバイラムたちがさらにかき立てる。
遠くで朱雀がまるでスクラップ工場で圧縮される。足が折られ、顔が、胴体が素早い動きで小さくされていく。
救援に来たはずの玄武が鉄骨が軋む低い音を響かせると腕がもぎ取られた。
遠くで攻撃をしていた青龍がその姿かたちを残さず消し去っていった。
「こ、こんな所いられるか!?」
一人の男性が叫ぶと一目散に病院から離れていく。
それに続くかのように俺も、私も、と一人、また一人と四方八方へ散らばっていく。
「ま、待ってください!」
看護士は止めようとするが既に遅く、彼らは足早に逃げ出そうとしていく。もはや集団行動をするつもりは
ないらしい。
周りが騒がしい中、祐一は空を見上げる。
動くにも体が動かない、それに行くったってどこに……?
そんな時、一瞬だが空の彼方が光った。
何かが来る……。なんだ?
”それ”はジェット機のよう音を立ててこちらに向かってくる。そして祐一の目の前に広がるとそれはその
まま病院へとぶつかった。
「うわぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
飛んでくる瓦礫を前にその場にうずくまる。小さな小石が風を切って体の脇を通り過ぎていった。瓦礫を撒
き散らしながらその場に倒れた。
「これ……は?」
目の前に現れた巨大な白。自動ドアが開いた音が聞こえてきた。危険を何一つ考えずに近付いてみた。
扉の置くにはコックピットが見える。まるで漫画とかで見た光景が広がっていた。
「乗れって言うのか?」
辺りを見渡してみるが自分以外動く物は誰もいない、あるのは炎と煙のみ。先ほど居た病人達の姿はどこに
も見えなかった。
「くっ……」
どうせ死ぬなら多少は抵抗してやる!
そう決意するとコックピットに飛び込んだ。中に入ると同時に自動ドアが閉じた。
コックピットの中は思ったよりも静かであった。操縦桿とディスプレイのみ付いているシンプルな構図であった。
足元にはペダルが二つ付いている。恐らくアクセルとブレーキなのだろう。
まるで棺桶のみたいだ……。
先ほどのような爆発音も聞こえない、焦げたようなにおいも感じない。あるの静寂だけだった。
しばらくするとウィンドウが開き、自分の知らない文字が数秒表示された後、アルファベットが表示された。
I AM EXATLIA Could YOU HELP ME OUT
英語? これなら僕にも読める。でも助けてくれって……。
そう思った矢先、すかさず別の画面が表示された。操縦桿を倒せ、と。
表示に従い操縦桿を後ろに倒すと倒れてきたPMはゆっくりと立ち上がった。
床に散らばっていた瓦礫が軋みを上げ、巻き起こる炎を背にする。
三機のバイラムは一斉にPMのほうを見る。その全体像をじっくり観察するかのように。
樫の樹のような太い腕と足、腰には少し大きめなライフル、その周りには四本の棒が付いている。
バイラムと同じ姿だったが細部が違った。前面に突き出された大きな角、精悍な顔つき、そして全身が粉雪
のように白かった。
「くっ!」
思い切りペダルを踏み込むとそのまま真っ直ぐバイラムへと向かっていく。
凄まじい衝撃が祐一の体を襲う。歯を食いしばり、その衝撃に耐える。
バイラムもそれに反応するかのように剣を構える。だが、白いPMの装甲を貫くことなくそのまま潰される
かのようにバイラムの顔が変形した。すかさず操縦桿を傾け、PMを起こそうとするがそれよりも早くバイラ
ムの手が白いPMの体を押した。そのまま、体重が後ろに傾き、仰向けに転がった。
ジェットコースターとは比べもにならない衝撃がコックピットに走る。
「ぐ……ぁ……」
痛みで声が出ない……。じわりと包帯が赤くなる。撃たれた場所が未だに塞がっていない証拠だった。
だが、このまま黙ってやられるわけには行かない。
「くっそぉ……」
身体に力を入れて立たせるとすぐさまバイラムを正面に見据える。ぼやけた視界で操縦桿を右へ左へと乱暴に動かす。
するとそれに反応したPMはまるで無造作に拳を繰り出した。激しい音ともにバイラムの胸が大きく凹むとそのまま
動かなくなった。
「はぁはぁはぁはぁ……」
息苦しい……。息が出来ない……。胸が締め付けられそうだ……。
胸を押さえ、その場に俯き、倒れ掛かるがバイラムは待ってはくれない。大空から砲撃を加えようとキャノ
ンをエグザトリアへと向ける。
「しまった!?」
声に反応するかのようにディスプレイに何かが表示される。腰についているライフルだった。
「使えっていうの!?」
表示に従い今度は操縦桿についているダイヤルを回す。すると腰についていたライフルを引き抜き、バイラムに向けた。
だがディスプレイの照準は右へ、左へと移動し、全くといっていいほど安定しなかった。
このままやるしかない!
「ここから、いなくなれぇぇぇ!」
叫びと共にトリガーを引くと重い手ごたえを通じてライフルから青い光が漏れ出す。そして閃光は一筋の雷
となりバイラムの胸部を貫いた。心臓を抉られたバイラムはそのまま硬いアスファルトの上に叩き付けられ、
そのまま動きを止めた。
「はぁ……はぁ……」
呼吸するのも苦しい……痛い……助けて……。
肩で息する横から一機のバイラムが剣を構え、向かってくる。
最後とばかりに身体に力を入れ、ライフルをバイラムに向ける。
「これで……最後……!」
トリガーを引くと先ほどと同じように閃光が走り、バイラムの顔が大きく抉れ、そのまま仰向けに倒れた。
それと同時に祐一の体から力が抜ける。時間としてはかなり短かったが、既に呼吸しか彼の頭にはなかった。
突然通信機から拍手が聞こえてきた。辺りを見渡すと赤い鬼、ネオ・バイラムがそこにいた。
ランプが光ったと同時に通信ウィンドウが開かれた。
「ハローユウイチ!」
「メア……リー?」
大きく息を吸いながら混乱する頭で彼女の方を見るとネオ・バイラムは自分の方に向かって手を振った。
「流石だね、その機体をもう乗りこなしちゃった!」
うんうんと大きく頷きながら祐一を見つめる。その瞳は一転の曇りはなく、賞賛と尊敬が感じられた。
「この機体?」
「うん、エグザトリアっていうの」
「エグザ……トリア?」
このPMの名前……なのかな?
混乱する祐一を無視してメアリーは言葉を続ける。
「流石に今更返して! なんて言ったら怒られちゃうからユウイチにあげるね!」
「あげるって……」
一体どういうことなの? それにこれはメアリーたちの……?
「理由ならあるよ、それはユウイチがそれに乗っちゃったから!」
「このPMに乗ったから? だからくれるって訳?」
いくらなんでも無茶苦茶だ、もしもこれを反して欲しいなら僕をそのまま殺せばいいのに……。出来ない理
由でもあるの? 乗った時の事を思い出してみても別にパイロット登録が必要だったわけでもない。
「うん、そうだよ。ところでさ、ユウイチはこれからどうすんの?」
「どうするって……」
「軍に出頭した方がいいよ、銃殺刑かもしれないけど量刑はあると思うから」
まるで自分を心配するかのような優しい声だった。昔、うっかりナイフで手を切ってしまった時にかけて
くれた声のように。それよりもメアリーには聞きたいことがあった。
「そんな事よりも……」
「え?」
「どうして、僕を殺そうとしたの?」
祐一の問いに少し唸った後、少し顔を赤くしてモジモジしながら答え始めた。
「最初は任務だったけど、今は……」
「今は?」
「今は、ユウイチの事が好きだからだよ」
この言葉に祐一は声を荒げた。
「ふ、ふざけてるの!?」
「ふざけてないよ! 私はユウイチが好き! これは本当だもの」
「そ、そんなのおかしいじゃないか!? 何で好きなのに殺すんだよ!」
「んんっ? それっておかしいことなの?」
「そうだよ!!」
すっ呆けているような声でメアリーは首をかしげた。祐一の言ったことが分からないらしく軽く唸っていた。
「うーん、でもさ、好きだからキスするんだよね?」
「そうだよ」
「好きだから私とデートしてくれたんだよね?」
「そ、そうだけど……」
「じゃあ、好きだから殺すは何でいけないの?」
「そ、そんなの決まってるじゃないか! 好きな人を殺すなんておかしいからに……」
言い切る前にメアリーは祐一の前に手の平を突き出す。
「STOP! それはもう十分分かったよ。でもどうしておかしいの?」
「え?」
突然のメアリーの言葉に口の動きが止まる。
「私はユウイチが好きだから、たぶん世界で一番好きだから殺したいんだよ、ユウイチの世界の言葉で言うな
ら愛情表現って奴。それなのにいけないの?」
「好きな人を殺したいなんて普通じゃない。殺すって事は死ぬってことなんだよ、メアリー。いなくなって消
えちゃうってことだよ。それでもいいの?」
「消えないよ、そこにユウイチはいるし、ずっとユウイチの隣にいられるもの」
「僕が動いたり喋ったりしなくなっても?」
「だから一緒にいられるんでしょ?」
メアリーの言葉に眩暈が起きてきた。理解が出来ない。
何故殺すのか? 愛情表現だから。 僕が死んでもいいの? 死んでもいい、ずっと一緒にいられるから。
彼女にとって大事なのは生きている僕ではなく、僕の外見なの?
その考えにたどり着こうとした時、彼女のバイラムはエグザトリアに背を向けた。
「ユウイチ、私、待ってるからね」
「待ってる?」
「うん、でも火星や金星じゃないから」
火星でも金星でもない?
「え? それじゃあどこに……」
「アステロイドって知ってる?」
「ああ、火星と木星の間にある所だよね?」
正式名称、アステロイドベルト。火星と木星の間にある小惑星群である。
「そう、そこで待ってるから。じゃあね」
そういうとネオ・バイラムはエグザトリアに背を向けて黒い空へと帰っていった。
祐一は追いかけることも引き止めることもせず、ただメアリーの姿を見送る。
「アステロイド……か」
気を抜いた瞬間、嫌な嫌悪感が噴出してきた。激しい吐き気に手を口にやるとの生暖かい感触と鉄の味が口
いっぱいに広がった。気持ち悪さに口を開けると真っ赤な液体が止まる様子もなく出てきた。そしてそれは自
分の手を、胸元を赤く染め上げた。
「血? どういうこと……な、んだ?」
そのまま崩れるかのようにコックピットに伏した。
月面都市。旧AUA軍事基地、格納庫。
かつて、この基地には無数のAUA製のPMがあったが今はどこにもそれがなかった。
居るのはデライト数機のみであり、PMなら百機ほどは入りそうな格納庫をさらに広くなっていた。
そして、そこに白衣を着た三つ編みの女性がコンソールパネルを一通りいじるとそっと付いている蓋を閉じた。
「ふぅ……」
大きくため息を付くと懐の通信機から電子音が鳴る。通信機を手に取ると手早くボタンを押す。
外に居るもの、赤のバイラムは誘導に従いゆっくりと基地の格納庫へと向かった。ゆっくりとした歩調で格
納庫の扉へ来ると重苦しい音を立てながら扉が開いた。そして所定の番号がふられた床の前に立つと後ろ向き
で奥へと入り込んだ。すると、固定具がPMに取り付けられる。それと同時にコックピットの扉が開かれると
そのまま外へと飛び出した。
「アルフェア、ただいまー」
そのまま外へ飛び出すと開口一番、三つ編みの女性、アルフェアを見つけ大きく手を振った。
「お帰りなさーい、エグザトリアはどうなりました?」
「あっちに行っちゃった!」
あっけらかんと言うメアリーにアルフェアは思わず固まった。
「あっち……地球軍に渡ったってことですか?」
「うん」
屈託の無い笑顔で大きく頷くメアリーに対し、アルフェアは少し顔を曇らせた。
「そうですか……」
「何故、逃した?」
アルフェアの後ろから長い髪の女性が現れた。その顔にメアリーは嫌そうな顔をする。
「だって、つまんない!」
「つまんないでアレを逃がしたと?」
「そうだよ」
軽く一息をおいて捲くし立てるかのように早口で報告をし始めた。
「本日未明、私ことエージェント名・メアリー・ワールスはエグザトリアの鹵獲を開始しました。しかし、現
地にいた機動兵器と戦闘になりエグザトリアはロスト。なお、偶然にもエグザトリアにはパイロットが搭乗し
ており、私の機体では鹵獲することは不可能と判断。地球人がその性能に目を付ける事を知りつつも自機を破
壊され、情報を漏洩する事を懸念し、懲罰を覚悟の上で撤退を決行しました。」
「そうか、ではお前は目の前に目標を確認しておきながらおめおめと帰った。ということか?」
「そう判断されても仕方ありません。しかし、彼らにエグザトリアの性能を完全に引き出すことは不可能と判
断します。我々と肉体組織が違い、脆弱なのでのでそのまま活動をさせれば肉体を行使し過ぎ、搭乗者の命を
奪うことは確定しています。もし、エグザトリアに地球人が搭乗したとしても所詮は一機、目的を果たす為な
らば捨て置いても問題は無いはずです」
もっともらしい言葉を並べると彼女は眉間に皺を寄せたがすぐさまメアリーに背を向け、そのまま去った。
「ふぅ、危なかった……」
「全く、あんな詭弁良くスラスラ言えたわね」
呆れ顔のアルフェアに対し、メアリーは得意げな顔をしながら胸を張る。
「ふふーん、あっちで色々経験してきたからねー」
「生意気ー」
くすくす笑っている彼女にメアリーはある提案をしてきた。
「ねえねえ、アレはまだあるの?」
「アレ?」
「うん、ユウイチのお父さんのを使ったブラックボックス」
「あるけど……一体どうするつもり?」
「私の機体に積むの! エグザトリアが敵になった以上、こっちもパワーアップしないといけないよ!」
セルが回収したとされる最初のバイラムのブラックボックス。森宮一明の脳が入ったブラックボックス。
それを自分の機体に積め、と彼女は言っているのだがアルフェアは少し躊躇した。
地球で実戦を積んだのは”彼”のみであり他のバイラムはこのブラックボックスをフィールドバックしただ
けの紛い物であった。元々ネオ・バイラムとバイラムでは性能面でもかなり差があるが実戦データを積んだ機
体の方が戦力的に見ても勝っている。
「……そうね、メアリーのいう通りだわ」
でも、使ったら後で怒られそうね……。ただでさえ、司令はイライラしてるみたいだし……。
「おねがぁい」
猫なで声気味にアルフェアにいうと彼女は苦笑をしながら彼女の方を見る。
「わかったわ、取り付けてあげる」
「やった! じゃあ、お願いね!」
「はいはい、それにしてもあのブラックボックスのエラー……直ってたっけ?」
かつて、この基地には無数のAUA製のPMがあったが今はどこにもそれがなかった。
居るのはデライト数機のみであり、PMなら百機ほどは入りそうな格納庫をさらに広くなっていた。
そして、そこに白衣を着た三つ編みの女性がコンソールパネルを一通りいじるとそっと付いている蓋を閉じた。
「ふぅ……」
大きくため息を付くと懐の通信機から電子音が鳴る。通信機を手に取ると手早くボタンを押す。
外に居るもの、赤のバイラムは誘導に従いゆっくりと基地の格納庫へと向かった。ゆっくりとした歩調で格
納庫の扉へ来ると重苦しい音を立てながら扉が開いた。そして所定の番号がふられた床の前に立つと後ろ向き
で奥へと入り込んだ。すると、固定具がPMに取り付けられる。それと同時にコックピットの扉が開かれると
そのまま外へと飛び出した。
「アルフェア、ただいまー」
そのまま外へ飛び出すと開口一番、三つ編みの女性、アルフェアを見つけ大きく手を振った。
「お帰りなさーい、エグザトリアはどうなりました?」
「あっちに行っちゃった!」
あっけらかんと言うメアリーにアルフェアは思わず固まった。
「あっち……地球軍に渡ったってことですか?」
「うん」
屈託の無い笑顔で大きく頷くメアリーに対し、アルフェアは少し顔を曇らせた。
「そうですか……」
「何故、逃した?」
アルフェアの後ろから長い髪の女性が現れた。その顔にメアリーは嫌そうな顔をする。
「だって、つまんない!」
「つまんないでアレを逃がしたと?」
「そうだよ」
軽く一息をおいて捲くし立てるかのように早口で報告をし始めた。
「本日未明、私ことエージェント名・メアリー・ワールスはエグザトリアの鹵獲を開始しました。しかし、現
地にいた機動兵器と戦闘になりエグザトリアはロスト。なお、偶然にもエグザトリアにはパイロットが搭乗し
ており、私の機体では鹵獲することは不可能と判断。地球人がその性能に目を付ける事を知りつつも自機を破
壊され、情報を漏洩する事を懸念し、懲罰を覚悟の上で撤退を決行しました。」
「そうか、ではお前は目の前に目標を確認しておきながらおめおめと帰った。ということか?」
「そう判断されても仕方ありません。しかし、彼らにエグザトリアの性能を完全に引き出すことは不可能と判
断します。我々と肉体組織が違い、脆弱なのでのでそのまま活動をさせれば肉体を行使し過ぎ、搭乗者の命を
奪うことは確定しています。もし、エグザトリアに地球人が搭乗したとしても所詮は一機、目的を果たす為な
らば捨て置いても問題は無いはずです」
もっともらしい言葉を並べると彼女は眉間に皺を寄せたがすぐさまメアリーに背を向け、そのまま去った。
「ふぅ、危なかった……」
「全く、あんな詭弁良くスラスラ言えたわね」
呆れ顔のアルフェアに対し、メアリーは得意げな顔をしながら胸を張る。
「ふふーん、あっちで色々経験してきたからねー」
「生意気ー」
くすくす笑っている彼女にメアリーはある提案をしてきた。
「ねえねえ、アレはまだあるの?」
「アレ?」
「うん、ユウイチのお父さんのを使ったブラックボックス」
「あるけど……一体どうするつもり?」
「私の機体に積むの! エグザトリアが敵になった以上、こっちもパワーアップしないといけないよ!」
セルが回収したとされる最初のバイラムのブラックボックス。森宮一明の脳が入ったブラックボックス。
それを自分の機体に積め、と彼女は言っているのだがアルフェアは少し躊躇した。
地球で実戦を積んだのは”彼”のみであり他のバイラムはこのブラックボックスをフィールドバックしただ
けの紛い物であった。元々ネオ・バイラムとバイラムでは性能面でもかなり差があるが実戦データを積んだ機
体の方が戦力的に見ても勝っている。
「……そうね、メアリーのいう通りだわ」
でも、使ったら後で怒られそうね……。ただでさえ、司令はイライラしてるみたいだし……。
「おねがぁい」
猫なで声気味にアルフェアにいうと彼女は苦笑をしながら彼女の方を見る。
「わかったわ、取り付けてあげる」
「やった! じゃあ、お願いね!」
「はいはい、それにしてもあのブラックボックスのエラー……直ってたっけ?」
ボルスたちが離脱してから一時間後、地獄のようなフロリダから北へ遠く離れた、ケンタッキー基地。
半ば打ち捨てられたように基地に張り巡らされた柵は錆付いており、辺りにはハゲタカが辺りを滑空していた。
基地の滑走路には二機のナイツが止まっているだけであり、戦車や戦闘機と言った姿はどこにも見えない。
軋んだ音を立てながら格納庫の扉が開かれた。
「これは?」
アルの目の前には銀色のポーンがそこに立っていた。姿形がどことなくナイツに似ているがパーツのいたる
所にポーンの影が見える。下手に言えばナイツの模造品に見えた。
「試作型ナイツだ」
「試作型!? という事は……」
性能も期待できる、と言いたげな視線をボルスに送るがそれに対し、鼻で笑った。
「残念だが、こいつは思っているようなものではない」
「え?」
「普通は試作型といえばかなり性能がいいと思われがちだがこいつは違う。ナイツより性能は劣るものだ」
ボルスは試作型ナイツに近付くと手馴れた様子でコックピットのハッチを開け、内部の様子を見始めた。
スイッチを入れるとディスプレイに機体の状況が表示される。ランプは全てオールグリーン。動かそうと思
えば動かせるようだ。
「ええ!?」
「元々ナイツはポーンを無理矢理変形させたものだったんだが、月日を重ねこの形となったのだ」
動く事を確認するとコックピットから降り立ち、再び試作型ナイツの前に立ち、大きく見上げた。
「これを引き合いに出さなければならない、と言うことですね」
「そういうことだ……」
自虐気味に笑うとすぐさまレイが言葉を続けてくる。
「それで隊長は?」
「アトランティスへ向かう。この状況を作っているものが彼女なら恐らく……お前達は各都市に向かいバイラムを倒せ」
「し、しかし……」
「分かっている、だがこのまま突っ立ってるわけには行くまい」
「そうではありません、我々は隊長と共に――」
「それならば尚更だ、今バイラムを倒せるのはお前達の持つ槍のみ……。この先は分かっているな?」
「……隊長」
「これは隊長命令だ、二人とも市民を守ってくれ」
ボルスが敬礼をすると二人もまた敬礼をする。
「りょ、了解です」
「了解です!」
「安心しろ、必ず戻ってくるさ。必ず……な」
ボルスはその言葉と共に優しく微笑んだ。
後半に続く。
半ば打ち捨てられたように基地に張り巡らされた柵は錆付いており、辺りにはハゲタカが辺りを滑空していた。
基地の滑走路には二機のナイツが止まっているだけであり、戦車や戦闘機と言った姿はどこにも見えない。
軋んだ音を立てながら格納庫の扉が開かれた。
「これは?」
アルの目の前には銀色のポーンがそこに立っていた。姿形がどことなくナイツに似ているがパーツのいたる
所にポーンの影が見える。下手に言えばナイツの模造品に見えた。
「試作型ナイツだ」
「試作型!? という事は……」
性能も期待できる、と言いたげな視線をボルスに送るがそれに対し、鼻で笑った。
「残念だが、こいつは思っているようなものではない」
「え?」
「普通は試作型といえばかなり性能がいいと思われがちだがこいつは違う。ナイツより性能は劣るものだ」
ボルスは試作型ナイツに近付くと手馴れた様子でコックピットのハッチを開け、内部の様子を見始めた。
スイッチを入れるとディスプレイに機体の状況が表示される。ランプは全てオールグリーン。動かそうと思
えば動かせるようだ。
「ええ!?」
「元々ナイツはポーンを無理矢理変形させたものだったんだが、月日を重ねこの形となったのだ」
動く事を確認するとコックピットから降り立ち、再び試作型ナイツの前に立ち、大きく見上げた。
「これを引き合いに出さなければならない、と言うことですね」
「そういうことだ……」
自虐気味に笑うとすぐさまレイが言葉を続けてくる。
「それで隊長は?」
「アトランティスへ向かう。この状況を作っているものが彼女なら恐らく……お前達は各都市に向かいバイラムを倒せ」
「し、しかし……」
「分かっている、だがこのまま突っ立ってるわけには行くまい」
「そうではありません、我々は隊長と共に――」
「それならば尚更だ、今バイラムを倒せるのはお前達の持つ槍のみ……。この先は分かっているな?」
「……隊長」
「これは隊長命令だ、二人とも市民を守ってくれ」
ボルスが敬礼をすると二人もまた敬礼をする。
「りょ、了解です」
「了解です!」
「安心しろ、必ず戻ってくるさ。必ず……な」
ボルスはその言葉と共に優しく微笑んだ。
後半に続く。