東の空がまだ明るくなり始める前、一条 遥はリヒターの背中で目を醒ました。無理をしたせいか、首を回すとポキポキと音がする。だが身体の調子は良好だ。
<おはようございます、マスター>
遥が起きた事に気付いたリヒターが備え付けてあるライトで遥の辺りを照らした。
赤いカメラ・アイがこちらを覗き込む。
――――何故だろう。遥には、心なしか彼が微笑んでいるように思えた。
だから遥も、同じように微笑んで、
「おはよう、リヒター」
<おはようございます、マスター>
遥が起きた事に気付いたリヒターが備え付けてあるライトで遥の辺りを照らした。
赤いカメラ・アイがこちらを覗き込む。
――――何故だろう。遥には、心なしか彼が微笑んでいるように思えた。
だから遥も、同じように微笑んで、
「おはよう、リヒター」
■Episode 07:なんでも屋“やおよろず”へようこそ! (接触篇あなざー)
遥達一行は、ひとまずリヒトが所属するというなんでも屋“やおよろず”に向かう事になった。遥は『一端どこかで宿を取ってはどうか』と提案したが、なんでも屋は遥が襲撃された場所の近くの村にあるらしく、その案は却下となった。が、
「結局夜通し歩く事になっちゃったね……よっと」
リヒターの背中から飛び降りる。
<疲れは取れましたか、マスター>
「うん、この通り元気いっぱい!」
ぐっ、力こぶを作って見せる。一見華奢に見える腕は、しかしよく見ると思いの外肉付き――――もちろん筋肉のほうだ――――が良く、逞しかった。
<それはよかった>
「ありがと、リヒター」
<……どういたしまして>
リヒター、ぼそぼそと返礼――――あれ? もしかして照れてる?
無口で無愛想な子かと思ったけど、結構可愛いところもあるんだなぁ。
「あ、そういえばリヒトさん達は?」
<私の通行許可をいただきに、先に町のほうへ向かいました>
「なるほど」と遥、バックパックから地図を取り出す。
ここから一番近い町は――――レイチェル。ブラウニング領、レイチェル。
「結局夜通し歩く事になっちゃったね……よっと」
リヒターの背中から飛び降りる。
<疲れは取れましたか、マスター>
「うん、この通り元気いっぱい!」
ぐっ、力こぶを作って見せる。一見華奢に見える腕は、しかしよく見ると思いの外肉付き――――もちろん筋肉のほうだ――――が良く、逞しかった。
<それはよかった>
「ありがと、リヒター」
<……どういたしまして>
リヒター、ぼそぼそと返礼――――あれ? もしかして照れてる?
無口で無愛想な子かと思ったけど、結構可愛いところもあるんだなぁ。
「あ、そういえばリヒトさん達は?」
<私の通行許可をいただきに、先に町のほうへ向かいました>
「なるほど」と遥、バックパックから地図を取り出す。
ここから一番近い町は――――レイチェル。ブラウニング領、レイチェル。
♪ ♪ ♪
「帰ってきたぞマイホームタウン!」
<近所迷惑です>
村のゲートの前に立つなり、ロッドを高々と掲げて叫んだリヒトにヘーシェンが即ツッコミ。主従、ある意味息ピッタリ。
そんなリヒトの大声に、ゲートの横に建てられた小屋から――――サボタージュしていたのだろうか――――屈強な男が出てきた。見張りのトビーだ。
見張りのトビーは、いかにも眠そうにあくびをして、
「誰だよこんな朝っぱらから……お、リヒトにシロちゃんじゃないか!」
「よっ」
<よっ>
主従、やっぱり息ピッタリ。
「やっぱり無事だったんだな。“やおよろず”の連中が心配してたぜ!」
朝の肌寒さも吹っ飛んでしまいそうなくらい暑苦しいスマイル。
「ナニイテンダ、俺がそう簡単にくたばってたまるかよ」
クックック、と暗黒微笑を浮かべるリヒト。
<むしろくたばればよかったのに>
ケッ、と忌ま忌ましげに吐き捨てるヘーシェン。
「だぁーっはっはっは! 相変わらずだな、お前さん達!」
「クックック、アンタも相変わらず暑苦しいな。……と、それよりも。オートマタの通行許可が欲しい」
それを聞いたトビーが目を丸くし、リヒトに耳打ちする。
<近所迷惑です>
村のゲートの前に立つなり、ロッドを高々と掲げて叫んだリヒトにヘーシェンが即ツッコミ。主従、ある意味息ピッタリ。
そんなリヒトの大声に、ゲートの横に建てられた小屋から――――サボタージュしていたのだろうか――――屈強な男が出てきた。見張りのトビーだ。
見張りのトビーは、いかにも眠そうにあくびをして、
「誰だよこんな朝っぱらから……お、リヒトにシロちゃんじゃないか!」
「よっ」
<よっ>
主従、やっぱり息ピッタリ。
「やっぱり無事だったんだな。“やおよろず”の連中が心配してたぜ!」
朝の肌寒さも吹っ飛んでしまいそうなくらい暑苦しいスマイル。
「ナニイテンダ、俺がそう簡単にくたばってたまるかよ」
クックック、と暗黒微笑を浮かべるリヒト。
<むしろくたばればよかったのに>
ケッ、と忌ま忌ましげに吐き捨てるヘーシェン。
「だぁーっはっはっは! 相変わらずだな、お前さん達!」
「クックック、アンタも相変わらず暑苦しいな。……と、それよりも。オートマタの通行許可が欲しい」
それを聞いたトビーが目を丸くし、リヒトに耳打ちする。
「まさかリヒト……鞍替えかい?」
「ああ……やはりあいつは俺の手に負えない。もう一緒にいるのが嫌になっちまったよ」
<ならコンビは解消ですね>
「ありゃ、聞こえてたのか」
ばつの悪そうな顔をして、目線で謝る男。
<そりゃ聞こえますよ。だってウサギの耳は長いんだもん>
「まったく、シロちゃんには敵わねぇなぁ」
<そう褒めないでください、惚れてしまいます、ぽっ>
口で「ぽっ」とか言ってるあたり、あからさまにわざとらしい。が、その口調はどこか艶があって、なんというか、そそられる。
「さすがウサギ、性欲の象徴」
<献身の象徴でもありますよ>
「性欲と献身……エロいな、ウサギって」
<えっちいですね、ウサギって。でも私、子ウサギですから>
「俺にとっちゃむしろそっちのほうがそそられるな」
リヒトは俗に言うロリコン――――ローリング・コンバット・ピッチ……ではなく、ロリータ・コンプレックス――――というやつだった。もちろん常識はある程度わきまえているので、犯罪行為に走ったりはしない、とヘーシェンは信じている。
「さて、話が脱線したな。……なんでまた通行許可が必要なんだ?」
<家族が増えるよ! やったねたえちゃん!>
「やめい、鬱になるわ」
ロッドの宝玉部分をぺちんと叩くと、リヒトはトビーのほうを向き直り、
「……ま、大体そんなカンジだな、ヘーシェンの言った通り。ちょっと素敵な拾い物をしたわけさ」
「ほう、素敵な拾い物ねぇ……野良でも手なずけたか」
<まあそんなところですね>
手なずけたのはリヒトではないが。
「あいわかった。町のお偉いさん方には後で俺から説明しておくよ」
「サンキューいい男!」
<サンキューいい男>
リヒトが礼を言いながら踵を返すと、トビー、返礼として無言でサムズアップ。やはり笑顔が暑苦しいが、今はその笑顔がやたら輝いて見えた。暑苦しさ30パーセント増しだ。横目で見たからよかったものの、直視していたら、リヒトはきっと目を焼かれていただろう。
「さて、三つ編みのお嬢様を迎えに参りますかね」
<参りましょー>
ヘーシェンの気の無い返事は馬耳東風。赤髪のリヒト、軽やかに走りだす。頭の中はこの後の展開でいっぱいだ。
なんとかあいつらをやりくるめて、修業と称してあんな事やこんな事を……ああ、もうドキワクが止まらん!
――――ヘーシェンの信頼はマッハで打ち砕かれていた。
「みぃぃなぎってきたぁぁぁぁぁ――――っ!」
<近所迷惑です>
天に向かって勢い良くロッドを突き上げて咆哮するリヒトへ、ヘーシェンが即座にツッコミを入れる。なんだかんだ言って、やっぱり主従、息ピッタリ。
「ああ……やはりあいつは俺の手に負えない。もう一緒にいるのが嫌になっちまったよ」
<ならコンビは解消ですね>
「ありゃ、聞こえてたのか」
ばつの悪そうな顔をして、目線で謝る男。
<そりゃ聞こえますよ。だってウサギの耳は長いんだもん>
「まったく、シロちゃんには敵わねぇなぁ」
<そう褒めないでください、惚れてしまいます、ぽっ>
口で「ぽっ」とか言ってるあたり、あからさまにわざとらしい。が、その口調はどこか艶があって、なんというか、そそられる。
「さすがウサギ、性欲の象徴」
<献身の象徴でもありますよ>
「性欲と献身……エロいな、ウサギって」
<えっちいですね、ウサギって。でも私、子ウサギですから>
「俺にとっちゃむしろそっちのほうがそそられるな」
リヒトは俗に言うロリコン――――ローリング・コンバット・ピッチ……ではなく、ロリータ・コンプレックス――――というやつだった。もちろん常識はある程度わきまえているので、犯罪行為に走ったりはしない、とヘーシェンは信じている。
「さて、話が脱線したな。……なんでまた通行許可が必要なんだ?」
<家族が増えるよ! やったねたえちゃん!>
「やめい、鬱になるわ」
ロッドの宝玉部分をぺちんと叩くと、リヒトはトビーのほうを向き直り、
「……ま、大体そんなカンジだな、ヘーシェンの言った通り。ちょっと素敵な拾い物をしたわけさ」
「ほう、素敵な拾い物ねぇ……野良でも手なずけたか」
<まあそんなところですね>
手なずけたのはリヒトではないが。
「あいわかった。町のお偉いさん方には後で俺から説明しておくよ」
「サンキューいい男!」
<サンキューいい男>
リヒトが礼を言いながら踵を返すと、トビー、返礼として無言でサムズアップ。やはり笑顔が暑苦しいが、今はその笑顔がやたら輝いて見えた。暑苦しさ30パーセント増しだ。横目で見たからよかったものの、直視していたら、リヒトはきっと目を焼かれていただろう。
「さて、三つ編みのお嬢様を迎えに参りますかね」
<参りましょー>
ヘーシェンの気の無い返事は馬耳東風。赤髪のリヒト、軽やかに走りだす。頭の中はこの後の展開でいっぱいだ。
なんとかあいつらをやりくるめて、修業と称してあんな事やこんな事を……ああ、もうドキワクが止まらん!
――――ヘーシェンの信頼はマッハで打ち砕かれていた。
「みぃぃなぎってきたぁぁぁぁぁ――――っ!」
<近所迷惑です>
天に向かって勢い良くロッドを突き上げて咆哮するリヒトへ、ヘーシェンが即座にツッコミを入れる。なんだかんだ言って、やっぱり主従、息ピッタリ。
♪ ♪ ♪
「ぐふふ、ぐふふふふふふ」
下卑た笑いを浮かべながら歩を進めていくリヒト。正直気色悪いが、ヘーシェンは黙っておく事にした。今のマスターにはぶっちゃけ何を言っても無駄だ。
「あ、リヒトさーん」
「遥ちゃん、許可を貰ってきたよ、ハハッ」
遥を発見と同時によそ行きフェイスにトランスフォーム。
何が「ハハッ」ですか、気色悪い。
なんて思っても、やはり口には出さないヘーシェン……どうせ近い内に化けの皮は剥がれるだろうが。
「ありとうございます、リヒトさん!」
<感謝します、リヒト・エンフィールド>
「はっはっは、当然の事をしたまでさ!」
<ケッ、なーにが『当然の事をしたまで』ですか>
「はっはっは、当然の事をしたまでさ!」
どうやらトビーの暑苦しさが伝染したようだ。感染拡大。拳があったら殴りたいと思うヘーシェンであった。
「じゃ、行こうか……我が家へ!」
「はい!」
昇り始めた太陽に向かって走り出すリヒトについて走り出す遥。それにしてもこの師弟、ノリノリである。
<ま、あっちは逆方向なんですけどね>
取り残されたヘーシェンは、動けなかった。
<確認しました。……数時間前に通って来た道です>
取り残されたリヒターは、ヘーシェンを抱えて立ち上がった。
<どこまで行くんでしょうね>
二人の視線の先には石に躓く遥。
<……あ、前回り受け身>
一条 遥――――ドジだが、存外身のこなしは軽いようだ。
<……そろそろ止めに行きましょうか>
<はい、ヴァイス・ヘーシェン>
白と黒、短く苦笑して、歩き始める。
下卑た笑いを浮かべながら歩を進めていくリヒト。正直気色悪いが、ヘーシェンは黙っておく事にした。今のマスターにはぶっちゃけ何を言っても無駄だ。
「あ、リヒトさーん」
「遥ちゃん、許可を貰ってきたよ、ハハッ」
遥を発見と同時によそ行きフェイスにトランスフォーム。
何が「ハハッ」ですか、気色悪い。
なんて思っても、やはり口には出さないヘーシェン……どうせ近い内に化けの皮は剥がれるだろうが。
「ありとうございます、リヒトさん!」
<感謝します、リヒト・エンフィールド>
「はっはっは、当然の事をしたまでさ!」
<ケッ、なーにが『当然の事をしたまで』ですか>
「はっはっは、当然の事をしたまでさ!」
どうやらトビーの暑苦しさが伝染したようだ。感染拡大。拳があったら殴りたいと思うヘーシェンであった。
「じゃ、行こうか……我が家へ!」
「はい!」
昇り始めた太陽に向かって走り出すリヒトについて走り出す遥。それにしてもこの師弟、ノリノリである。
<ま、あっちは逆方向なんですけどね>
取り残されたヘーシェンは、動けなかった。
<確認しました。……数時間前に通って来た道です>
取り残されたリヒターは、ヘーシェンを抱えて立ち上がった。
<どこまで行くんでしょうね>
二人の視線の先には石に躓く遥。
<……あ、前回り受け身>
一条 遥――――ドジだが、存外身のこなしは軽いようだ。
<……そろそろ止めに行きましょうか>
<はい、ヴァイス・ヘーシェン>
白と黒、短く苦笑して、歩き始める。
接触まで、あと――――
♪ ♪ ♪
「わあ、結構都会なんだ」
石畳が綺麗に整備されたメインストリートを見回し、遥が感嘆の声を漏らした。
ここ、レイチェルは城塞都市ブラウニングから程近い場所にある町だ。元々は名前も無い小さな集落だったが、町の中心に学園ができた事によって人が集まり現在の姿にまで発展したという。
<ま、中心街から少し離れたら何もないですけどね>
ヘーシェンの言う通り、メインストリート外れ、門をくぐった先は土に草木に獣道、見渡す限りの麦畑、緑の海。
「わあ、ほんとだ!」
突如として眼前に広がった緑に目を輝かせる遥。
<遥さんは人生を楽しめるタイプですね>
「だって楽しまなきゃ、損じゃない?」
振り返る遥の顔にいっぱいの笑み。
<なるほど、つまり奴隷になったり死にかけたりしてもポジティブ・シンキング>
「ごめん、それは無理」
苦笑い。
<目的地まで、あとどれくらいでしょうか。リヒト・エンフィールド>
「あと十分ぐらいだな。リヒター・ペネトレイター」
あぜ道をゆっくり歩く、巨人と一緒に。
流れていく景色は緑。ぽつりぽつりと点在する家がどこか寂しい。
ノスタルジックな光景だ、と遥は思った。それと同時に、少しだけホームシック。故郷の父や母、妹達は元気にやっているだろうか。
――――今度、手紙でも出そうかな。
昇り始めた太陽を見る。あの向こうに、故郷がある。
石畳が綺麗に整備されたメインストリートを見回し、遥が感嘆の声を漏らした。
ここ、レイチェルは城塞都市ブラウニングから程近い場所にある町だ。元々は名前も無い小さな集落だったが、町の中心に学園ができた事によって人が集まり現在の姿にまで発展したという。
<ま、中心街から少し離れたら何もないですけどね>
ヘーシェンの言う通り、メインストリート外れ、門をくぐった先は土に草木に獣道、見渡す限りの麦畑、緑の海。
「わあ、ほんとだ!」
突如として眼前に広がった緑に目を輝かせる遥。
<遥さんは人生を楽しめるタイプですね>
「だって楽しまなきゃ、損じゃない?」
振り返る遥の顔にいっぱいの笑み。
<なるほど、つまり奴隷になったり死にかけたりしてもポジティブ・シンキング>
「ごめん、それは無理」
苦笑い。
<目的地まで、あとどれくらいでしょうか。リヒト・エンフィールド>
「あと十分ぐらいだな。リヒター・ペネトレイター」
あぜ道をゆっくり歩く、巨人と一緒に。
流れていく景色は緑。ぽつりぽつりと点在する家がどこか寂しい。
ノスタルジックな光景だ、と遥は思った。それと同時に、少しだけホームシック。故郷の父や母、妹達は元気にやっているだろうか。
――――今度、手紙でも出そうかな。
昇り始めた太陽を見る。あの向こうに、故郷がある。
<マスター、どうかいたしましたか>
遥を見下ろすリヒター。表情に変化はないが、心配してくれている。それが遥にはなんとなく理解できた。
「なんでもないよ、ちょっとおセンチになっちゃっただけ」
照れ隠しに微笑む。
<そうですか。……マスター>
「何?」
<マスターをお守りするのが私の使命です。それは肉体的な面だけでなく、精神的な面でも適応されます。つまり>
「よし、もう着くぞ!」
リヒターの言葉を遮るリヒト。ああ、間が悪い。
「うん、つまり?」
<……それだけです>
――――三つ編みのお姫様を守る黒い騎士は、どうやら想像以上に口下手で、不器用のようだ。
遥を見下ろすリヒター。表情に変化はないが、心配してくれている。それが遥にはなんとなく理解できた。
「なんでもないよ、ちょっとおセンチになっちゃっただけ」
照れ隠しに微笑む。
<そうですか。……マスター>
「何?」
<マスターをお守りするのが私の使命です。それは肉体的な面だけでなく、精神的な面でも適応されます。つまり>
「よし、もう着くぞ!」
リヒターの言葉を遮るリヒト。ああ、間が悪い。
「うん、つまり?」
<……それだけです>
――――三つ編みのお姫様を守る黒い騎士は、どうやら想像以上に口下手で、不器用のようだ。
♪ ♪ ♪
「さて、ここが我らの城。なんでも屋“やおよろず”だ」
リヒトの視線の先に広がる場所、なんでも屋“やおよろず”。広大なそこは、イメージとしては牧場が一番近い。
まず一番手前側にある建物。――――おそらくオートマタの格納庫だろうか――――これが一番大きい。鉄骨剥き出しの無骨な外見が、なんだか威圧的だ。
次に左手側に広がるだだっ広い運動場。――――所々に障害物が設置されているところから、恐らくは演習場というほうが正しいか――――これが一番スペースを取っている。
最後に、正面奥にある、ツタが這っている二階建ての建物。レンガ造りのそれに、リヒト達は住んでいるのだろう。
「どうだい、我が家は?」
「すごく……大きいです」
ゴクリと生唾を飲む。
――――ひょっとしてとんでもないお金持ちだったりするのだろうか。こんな貧乏人の小娘を受け入れてくれるのだろうか。遥の脳裏に、今更ながら一抹の不安が浮かび上がる。
一方のリヒトとヘーシェンは、
<皆、心配してますかね>
「だとしたら、劇的に参上せざるを得ないな」
<『降臨、満を持して!』ですね>
「おう、派手にいこうぜ」
ククク、ケケケと内緒話の真っ最中。それを見た遥が怪訝顔で二人に尋ねる。
「何かあったんですか?」
「いんや、何も」
ポーカーフェイスが逆に怪しい。
「それより早速突入しようか」
そう言いながら、何故かクラウチングスタートの姿勢を取る赤い髪のリヒト。
「え!?」
突然言われても、まだ心の準備が。
「いいか、遥隊員。静かに、しかし速やかに移動する事を心掛けろ。決して中の連中に悟られるな、気取られるな」
何だろう、プロの気迫とでも言うのだろうか。走る緊張、漂うシリアスな雰囲気。
「は、はい!」
それに気圧されて、まだ覚悟完了していないというのに、つい返事をしてしまう。そして何故かクラウチングスタートの体勢。
リヒトの視線の先に広がる場所、なんでも屋“やおよろず”。広大なそこは、イメージとしては牧場が一番近い。
まず一番手前側にある建物。――――おそらくオートマタの格納庫だろうか――――これが一番大きい。鉄骨剥き出しの無骨な外見が、なんだか威圧的だ。
次に左手側に広がるだだっ広い運動場。――――所々に障害物が設置されているところから、恐らくは演習場というほうが正しいか――――これが一番スペースを取っている。
最後に、正面奥にある、ツタが這っている二階建ての建物。レンガ造りのそれに、リヒト達は住んでいるのだろう。
「どうだい、我が家は?」
「すごく……大きいです」
ゴクリと生唾を飲む。
――――ひょっとしてとんでもないお金持ちだったりするのだろうか。こんな貧乏人の小娘を受け入れてくれるのだろうか。遥の脳裏に、今更ながら一抹の不安が浮かび上がる。
一方のリヒトとヘーシェンは、
<皆、心配してますかね>
「だとしたら、劇的に参上せざるを得ないな」
<『降臨、満を持して!』ですね>
「おう、派手にいこうぜ」
ククク、ケケケと内緒話の真っ最中。それを見た遥が怪訝顔で二人に尋ねる。
「何かあったんですか?」
「いんや、何も」
ポーカーフェイスが逆に怪しい。
「それより早速突入しようか」
そう言いながら、何故かクラウチングスタートの姿勢を取る赤い髪のリヒト。
「え!?」
突然言われても、まだ心の準備が。
「いいか、遥隊員。静かに、しかし速やかに移動する事を心掛けろ。決して中の連中に悟られるな、気取られるな」
何だろう、プロの気迫とでも言うのだろうか。走る緊張、漂うシリアスな雰囲気。
「は、はい!」
それに気圧されて、まだ覚悟完了していないというのに、つい返事をしてしまう。そして何故かクラウチングスタートの体勢。
<大丈夫ですか、マスター>
「大丈夫、大丈夫。全っ然、大丈夫」
抑え気味の語気で、自分に言い聞かせる。
大丈夫、きっと上手くいく。今までだってそうだったのだ、これからだって、きっと――――
「では、ミッション開始だ。行くぞ、野郎共!」
リヒト、声を殺して叫ぶと同時に走り出す。ちなみに、実にどうでもいい事だが、メンバーの半分は女性である。
一呼吸遅れてそれに追従する遥とリヒター。
リヒトが扉を音も無く開け、忍び足で侵入。続いて遥が突入。
中に入ると、正面の扉からトーストの焼ける匂いに気付く。時折声も聞こえるし、もしかして食事中だろうか。
リヒトがその扉の前に立ち、ドアノブに手を掛けた。急がねば。
二階建てで吹き抜けになっている玄関は広すぎず狭すぎず、こざっぱりとしていた。しかし、そこに一つだけ、異質な存在。
「あ、靴、脱ぐんだ」
この辺りでは珍しい、半畳程の土間。無理矢理改築したのだろう、なんだか不自然だ。それ故に目を引く。
「お邪魔しまーす……」
急いで靴を脱いで並べ、家へ上がる。
ふと、リヒターが動きを止めている事に気付いた。
「どうしたの、リヒター」
振り返ると、四つん這いになってこちらを覗き込むリヒター。
<……マスター、私では家に入れません>
「おうふ」
――――しまった、何故こんな事に気付かなかったのだろう。
リヒターの大きさに対して扉の大きさが明らかに不足している。
「え、あ、えーと……首突っ込んで!」
はるか は さくらんしている!
<イエス・マイマスター>
律儀に首を突っ込むリヒター。実に怪しい。
そうこうしている間にリヒトが扉を開け放ち――――
「やあやあ! なんでも屋“やおよろず”がエース、リヒト・エンフィールド、ただ今帰還!」
中で食事をしていた人々の視線が一斉に見慣れない人物である遥とリヒターに集中した。
「えーっと、い、一条 遥です」
<M-12、リヒター・ペネトレイターです>
「大丈夫、大丈夫。全っ然、大丈夫」
抑え気味の語気で、自分に言い聞かせる。
大丈夫、きっと上手くいく。今までだってそうだったのだ、これからだって、きっと――――
「では、ミッション開始だ。行くぞ、野郎共!」
リヒト、声を殺して叫ぶと同時に走り出す。ちなみに、実にどうでもいい事だが、メンバーの半分は女性である。
一呼吸遅れてそれに追従する遥とリヒター。
リヒトが扉を音も無く開け、忍び足で侵入。続いて遥が突入。
中に入ると、正面の扉からトーストの焼ける匂いに気付く。時折声も聞こえるし、もしかして食事中だろうか。
リヒトがその扉の前に立ち、ドアノブに手を掛けた。急がねば。
二階建てで吹き抜けになっている玄関は広すぎず狭すぎず、こざっぱりとしていた。しかし、そこに一つだけ、異質な存在。
「あ、靴、脱ぐんだ」
この辺りでは珍しい、半畳程の土間。無理矢理改築したのだろう、なんだか不自然だ。それ故に目を引く。
「お邪魔しまーす……」
急いで靴を脱いで並べ、家へ上がる。
ふと、リヒターが動きを止めている事に気付いた。
「どうしたの、リヒター」
振り返ると、四つん這いになってこちらを覗き込むリヒター。
<……マスター、私では家に入れません>
「おうふ」
――――しまった、何故こんな事に気付かなかったのだろう。
リヒターの大きさに対して扉の大きさが明らかに不足している。
「え、あ、えーと……首突っ込んで!」
はるか は さくらんしている!
<イエス・マイマスター>
律儀に首を突っ込むリヒター。実に怪しい。
そうこうしている間にリヒトが扉を開け放ち――――
「やあやあ! なんでも屋“やおよろず”がエース、リヒト・エンフィールド、ただ今帰還!」
中で食事をしていた人々の視線が一斉に見慣れない人物である遥とリヒターに集中した。
「えーっと、い、一条 遥です」
<M-12、リヒター・ペネトレイターです>
――――そして、今に至る。
次回へ続クンッ
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