七話 「胎動(中)」
「あっ………」
古臭い上に汚い家の一角で、少女と見間違う小柄で細身の美青年がお茶の入った日本風の陶器を取り落としてしまい、床に落ちて破片となる。がちゃんと大きな音が響いた。
幸い中身も無く、青年―――……エリアーヌの指に怪我は無い。
音を聞きつけた逞しいながら歳相応の雰囲気を漂わせているオヤジが入ってくる。
エリアーヌは、弾かれたように立ち上がると、ぺこぺこと頭を下げて謝罪した。
幸い中身も無く、青年―――……エリアーヌの指に怪我は無い。
音を聞きつけた逞しいながら歳相応の雰囲気を漂わせているオヤジが入ってくる。
エリアーヌは、弾かれたように立ち上がると、ぺこぺこと頭を下げて謝罪した。
「すいませんっ。湯のみ割っちゃって………い、今片付けますっ」
「怒っちゃいない。そろそろ買い換えようかと思ってたからな」
「怒っちゃいない。そろそろ買い換えようかと思ってたからな」
ちゃぶ台にかなり近い形状の小さな机の上には古びた急須が置いてあり、煎餅だとか、クッキーだとか、ゼリー菓子だとか、様々なお菓子の乗せられたお皿がある。お茶にしようとして湯飲みを落としてしまったということであろう。
オレンジ色のだぶだぶツナギを揺らすようにエリアーヌの姿が部屋から消える。オヤジは一人で湯飲みの破片を広い集めつつも、浮かない表情を取り払おうとしない。
良く晴れた日のお昼を少し過ぎた辺り。だというのにも関わらず、二人には落ち着きが無い。苛立っているようでもある。
エリアーヌはエリアーヌで朝食のときにシリアルを溢して踏んづけて転び、オヤジはオヤジで依頼されていたエアバイクの整備に手間取って部品を一つ潰してしまう。
何が悪いのか、何が問題なのか、知る術は存在しないが、一つだけ気がかりなことがある。
オヤジは、箒と塵取りを手に駆け戻ってきたエリアーヌに手招きをして呼ぶ。エリアーヌはテキパキと急須の残骸を掃除してゴミ袋に入れて、とてとて歩いて捨てに行く。
部屋に染み付いた生活臭が静まり返った気がした。
心臓がむず痒く感じてきた。オヤジは、部屋に胡坐をかいて座って、肘を机に乗せる。足がゆらゆらと不機嫌そうなリズムを刻んでいる。
オヤジは時計を確認し、顎に手を当てて体重を預ける。頭蓋骨そのものを手に乗せているような感じを覚えた。
オレンジ色のだぶだぶツナギを揺らすようにエリアーヌの姿が部屋から消える。オヤジは一人で湯飲みの破片を広い集めつつも、浮かない表情を取り払おうとしない。
良く晴れた日のお昼を少し過ぎた辺り。だというのにも関わらず、二人には落ち着きが無い。苛立っているようでもある。
エリアーヌはエリアーヌで朝食のときにシリアルを溢して踏んづけて転び、オヤジはオヤジで依頼されていたエアバイクの整備に手間取って部品を一つ潰してしまう。
何が悪いのか、何が問題なのか、知る術は存在しないが、一つだけ気がかりなことがある。
オヤジは、箒と塵取りを手に駆け戻ってきたエリアーヌに手招きをして呼ぶ。エリアーヌはテキパキと急須の残骸を掃除してゴミ袋に入れて、とてとて歩いて捨てに行く。
部屋に染み付いた生活臭が静まり返った気がした。
心臓がむず痒く感じてきた。オヤジは、部屋に胡坐をかいて座って、肘を机に乗せる。足がゆらゆらと不機嫌そうなリズムを刻んでいる。
オヤジは時計を確認し、顎に手を当てて体重を預ける。頭蓋骨そのものを手に乗せているような感じを覚えた。
「虫の知らせってのかね………あぁクソ、二人にナンかあったんじゃないだろうな……」
今日、ユトとメリッサの二人は、オヤジにとって因縁深いφ37遺跡の撮影に向かっている。
因縁や過去に何も無いとしても、φ37は危険な遺跡として知られている。入るのではなく撮影して構造を探るだけだと言っても、ガードロボに襲撃されたり、巡回型の砲台に狙撃されたり、危険なことに変わりは無い。
ぱん。
オヤジは自分の腿を手で叩くと飛び上がるような速度で立ち上がって、机の上のタオルを片手に持って走り出す。
騒々しく何かの準備を始めたオヤジに、今しがた戻ってきたエリアーヌは不安げな表情を浮かべつつ口を開く。
因縁や過去に何も無いとしても、φ37は危険な遺跡として知られている。入るのではなく撮影して構造を探るだけだと言っても、ガードロボに襲撃されたり、巡回型の砲台に狙撃されたり、危険なことに変わりは無い。
ぱん。
オヤジは自分の腿を手で叩くと飛び上がるような速度で立ち上がって、机の上のタオルを片手に持って走り出す。
騒々しく何かの準備を始めたオヤジに、今しがた戻ってきたエリアーヌは不安げな表情を浮かべつつ口を開く。
「あのぉ……わたしも行きます。船の準備と、知り合いのダイバーの人を呼んできますっ!」
不安、心配、悪寒。
一気にこみ上げてきたモノに居ても経っても居られなくなったエリアーヌ。オヤジさんから聞いている話、そして自らの判断から行動を選択して、言葉を発したのだ。
まだ「間に合う」か。
二人は大急ぎでφ37に向かう手はずを整え始めた。
一気にこみ上げてきたモノに居ても経っても居られなくなったエリアーヌ。オヤジさんから聞いている話、そして自らの判断から行動を選択して、言葉を発したのだ。
まだ「間に合う」か。
二人は大急ぎでφ37に向かう手はずを整え始めた。
第二地球暦148年 7月2日 6時22分
φ37遺跡近海
φ37遺跡近海
「メインシステム起動。行くよメリッサ」
「言われなくても。妨害装置は最大にしておくけど、多分見つかっちゃうと思うから戦闘よろしく」
「言われなくても。妨害装置は最大にしておくけど、多分見つかっちゃうと思うから戦闘よろしく」
ポンピリウスの、中途半端に塗装の違う巨体が海に投じられるや、両腕を前に突き出して、脚部スラスターを稼働させて進み始めた。
海域が海域なだけに、近くにある岩場に船を向かわせて偽装。更に追加の安全策として、やや遠くから水中を進んで遺跡に接近するという作戦を取った。
海はとても穏やかで、海鳥が数匹きぃきぃと鳴きながら青い空を飛んでいる。
夏に近づいているとは行っても、水温は極めて低い。潜水機の表面が冷やされていっているようで、冷気が内部に入り込んでいるようにも思える。
潜水機が軽く腕を動かすたびに振動が銅鑼の中に居る時のように反響する。
φ37遺跡が見えてくるまでは時間がある。二人は、周囲の状況に気を配りつつも、軽食を摂り始める。
クッキー状の栄養食だとか、ゼリー状の栄養食だとかである。保存が利くものを大量に購入してあったのでそれを持ち込んだのである。味は絶品とは行かないまでも美味しい。二人はもぐもぐと効果音を出しつつ食べていく。
海域が海域なだけに、近くにある岩場に船を向かわせて偽装。更に追加の安全策として、やや遠くから水中を進んで遺跡に接近するという作戦を取った。
海はとても穏やかで、海鳥が数匹きぃきぃと鳴きながら青い空を飛んでいる。
夏に近づいているとは行っても、水温は極めて低い。潜水機の表面が冷やされていっているようで、冷気が内部に入り込んでいるようにも思える。
潜水機が軽く腕を動かすたびに振動が銅鑼の中に居る時のように反響する。
φ37遺跡が見えてくるまでは時間がある。二人は、周囲の状況に気を配りつつも、軽食を摂り始める。
クッキー状の栄養食だとか、ゼリー状の栄養食だとかである。保存が利くものを大量に購入してあったのでそれを持ち込んだのである。味は絶品とは行かないまでも美味しい。二人はもぐもぐと効果音を出しつつ食べていく。
「美味しいけど美味しくない」
「なんだそれ」
「なんだそれ」
不満を漏らしながらもパックからゼリー飲料を吸い取っているメリッサ。人工イチゴ味が好きな彼女には、グレープフルーツ風味のゼリー飲料と、チョコ風味のクッキー栄養食では不満なのだろう。
一方のユトは、好みでも嫌いでもないために感想も少なめに食べている。流石に操縦の手を緩めるわけにも行かないので、器用に口に咥えて食べている。
二人はすっかり食べ終えた。食事の時間が終わると、直ちに警戒を強める。緩みっぱなしは問題ありなのだ。
φ37の領域に近づく。
ライトを消し、深度10m付近を真横に泳ぐように進んで行く。向きや速度を調整するためにスラスターが機敏に動いて微細な泡を吐き、両腕と両足が位置を変える。
速度を出さずの潜航。
数十分が経過したとき、二人の顔色が変わった。
センサーに反応有り。
機体各部に取り付けられた電子の眼は役目を果たしている。
一方のユトは、好みでも嫌いでもないために感想も少なめに食べている。流石に操縦の手を緩めるわけにも行かないので、器用に口に咥えて食べている。
二人はすっかり食べ終えた。食事の時間が終わると、直ちに警戒を強める。緩みっぱなしは問題ありなのだ。
φ37の領域に近づく。
ライトを消し、深度10m付近を真横に泳ぐように進んで行く。向きや速度を調整するためにスラスターが機敏に動いて微細な泡を吐き、両腕と両足が位置を変える。
速度を出さずの潜航。
数十分が経過したとき、二人の顔色が変わった。
センサーに反応有り。
機体各部に取り付けられた電子の眼は役目を果たしている。
「微細なソナー音検知……位置情報不明。妨害装置により完全に偽装中……。ユト、武器の準備は?」
「出来てる。オヤジさんの魚雷ランチャーもちゃんとあるよ」
「出来てる。オヤジさんの魚雷ランチャーもちゃんとあるよ」
―――……ピコーン ピコーン。
電子機器を通じて、極めて小さなソナー音が増幅されて操縦席に届けられる。
間抜けにも聞こえるが、冗談でもおふざけでもない。「敵」がこの海域に居るという証明である。
遺跡が生きていて、積極的にガードロボを放っているというのは嘘ではないのだ。
メリッサがソナー音から既に発見されているガードロボの中から同一のものを探したが、結果は「不明」とだけ出てくる。未発見種か。
ひょっとすると同業者かもしれないが、調べた限りで今日潜水予定のダイバーは居なかった。
戦闘を重視されていないポンピリウス。発見されないように努力をするか、先に発見して口を塞ぐか。選択肢は二つ。二人は考えるもなくステルスを選ぶ。
スラスターの出力を絞って、妨害装置の出力を上げつつ、徐々に深いところへと沈みこんでいく。
ブレードと魚雷ランチャーは肩の担架システムに装備されている。いざとなれば装着して行動を起こせる。仮に作動しなかったら手でもぎ取ればよい。
メインカメラの光を極限まで絞る。
果てしなく続く深海が鉄の機体を舐める様に見つめてくる。
新たに画面に情報が飛び込んできた。メリッサは素早くキーボードを叩き、整理した情報と画像データをユトの前の空間投影モニターに映し出させる。ボールのような単純な構造のガードロボの画像が表示された。
ユトはそれを見て頷いた。
電子機器を通じて、極めて小さなソナー音が増幅されて操縦席に届けられる。
間抜けにも聞こえるが、冗談でもおふざけでもない。「敵」がこの海域に居るという証明である。
遺跡が生きていて、積極的にガードロボを放っているというのは嘘ではないのだ。
メリッサがソナー音から既に発見されているガードロボの中から同一のものを探したが、結果は「不明」とだけ出てくる。未発見種か。
ひょっとすると同業者かもしれないが、調べた限りで今日潜水予定のダイバーは居なかった。
戦闘を重視されていないポンピリウス。発見されないように努力をするか、先に発見して口を塞ぐか。選択肢は二つ。二人は考えるもなくステルスを選ぶ。
スラスターの出力を絞って、妨害装置の出力を上げつつ、徐々に深いところへと沈みこんでいく。
ブレードと魚雷ランチャーは肩の担架システムに装備されている。いざとなれば装着して行動を起こせる。仮に作動しなかったら手でもぎ取ればよい。
メインカメラの光を極限まで絞る。
果てしなく続く深海が鉄の機体を舐める様に見つめてくる。
新たに画面に情報が飛び込んできた。メリッサは素早くキーボードを叩き、整理した情報と画像データをユトの前の空間投影モニターに映し出させる。ボールのような単純な構造のガードロボの画像が表示された。
ユトはそれを見て頷いた。
「更にソナー音検知。遠い。遺跡の方からみたい。自爆型ガードロボみたいよ」
「―――……数はあちゃー……3か。一気に突っ込んでこられると困る」
「見つからなければいいんでしょ。頑張りましょ」
「―――……数はあちゃー……3か。一気に突っ込んでこられると困る」
「見つからなければいいんでしょ。頑張りましょ」
ポンピリウス、更に深くへ。
深度50m。光はかなりの量をそがれてしまっているために全てが黒っぽい群青に染まる。
操縦席には、波が創り出す揺れる光の膜と、光が創り出す波が投影され、二人の体躯を包み込んでいる。伝わってくる水音は、あたかも第二地球の心音にも聞こえた。
メリッサはダイブスーツと首の隙間に指を突っ込んで掻き、再び作業にかかる。ガードロボは居ないか。居場所はどこか。もしも居たら性能はどの程度か。どんな攻撃をしてくるか。どんな攻撃が有効か。
限られた情報の中から推理しつつ、それでいて確定している情報はしっかりと示していく。かたかた。かちゃかちゃ。加えて小さい電子音が操縦席に響く。
かたん。
キーを強めに叩いたメリッサが頭も上げずに、前の座席に座っているユトに言葉をかけた。
深度50m。光はかなりの量をそがれてしまっているために全てが黒っぽい群青に染まる。
操縦席には、波が創り出す揺れる光の膜と、光が創り出す波が投影され、二人の体躯を包み込んでいる。伝わってくる水音は、あたかも第二地球の心音にも聞こえた。
メリッサはダイブスーツと首の隙間に指を突っ込んで掻き、再び作業にかかる。ガードロボは居ないか。居場所はどこか。もしも居たら性能はどの程度か。どんな攻撃をしてくるか。どんな攻撃が有効か。
限られた情報の中から推理しつつ、それでいて確定している情報はしっかりと示していく。かたかた。かちゃかちゃ。加えて小さい電子音が操縦席に響く。
かたん。
キーを強めに叩いたメリッサが頭も上げずに、前の座席に座っているユトに言葉をかけた。
「曲がりすぎない程度に右に」
「了解」
「了解」
敵に見つからぬよう、ポンピリウスが進路を右へと微調整する。壊れた気泡が海面へと向かって消えて行った。
メリッサは操縦席の光量を調整。ユトが操縦しやすいようにする。ユトは言葉には出さずに感謝した。言葉を出す必要は無いのだ。理解していれば、必要は無いのだ。
メリッサは操縦席の光量を調整。ユトが操縦しやすいようにする。ユトは言葉には出さずに感謝した。言葉を出す必要は無いのだ。理解していれば、必要は無いのだ。
「他の遺跡じゃガードロボを見つけることのほうが稀な場所もあるっていうのに、やっぱここは違う」
「伊達に偉そうな名前をつけられてないってことでしょう?」
「偉そうな……って。良くわかんないんだけど」
「ファイとか偉そうじゃない。それにプラスして37とか王様レベルかな。分かる?」
「うん、分からない」
「私も」
「俺も」
「なにこの会話」
「深海のテンション」
「深夜のテンションみたいに言わないでよ、深海じゃないのに」
「潜ろうか?」
「必要ならね」
「伊達に偉そうな名前をつけられてないってことでしょう?」
「偉そうな……って。良くわかんないんだけど」
「ファイとか偉そうじゃない。それにプラスして37とか王様レベルかな。分かる?」
「うん、分からない」
「私も」
「俺も」
「なにこの会話」
「深海のテンション」
「深夜のテンションみたいに言わないでよ、深海じゃないのに」
「潜ろうか?」
「必要ならね」
今のところ潜る必要は無い。
余り深く潜ってしまうと、照明やソナー等に頼ることとなって、発見される可能性が上がる。浅いところであれば光の増幅などでなんとかなる。
電力の消耗を防ぐために、ポンピリウスのスラスターで浅いところに上がっては深いところに行くを繰り返しつつ、遺跡に近寄っていく。
妨害装置を使い、必要なときにはスラスターを止め、ガードロボの眼を誤魔化す。
単純のように見えるが、これは実は大変な作業である。体力精神力共に消耗する。ガードロボに背後から襲撃されるかもという恐怖と戦い、水圧に押しつぶされて水死体になる恐怖とも戦っているのだから。
遺跡との距離はどんどんと近づいていく。
場所が場所故、正確な位置は分かっても、安全に侵入できる場所や、どこがなんなのかまではわかっていないので、慎重かつ丁寧な機動をとっていく。
相対距離を示す数値の減りが遅く感じられた。
余り深く潜ってしまうと、照明やソナー等に頼ることとなって、発見される可能性が上がる。浅いところであれば光の増幅などでなんとかなる。
電力の消耗を防ぐために、ポンピリウスのスラスターで浅いところに上がっては深いところに行くを繰り返しつつ、遺跡に近寄っていく。
妨害装置を使い、必要なときにはスラスターを止め、ガードロボの眼を誤魔化す。
単純のように見えるが、これは実は大変な作業である。体力精神力共に消耗する。ガードロボに背後から襲撃されるかもという恐怖と戦い、水圧に押しつぶされて水死体になる恐怖とも戦っているのだから。
遺跡との距離はどんどんと近づいていく。
場所が場所故、正確な位置は分かっても、安全に侵入できる場所や、どこがなんなのかまではわかっていないので、慎重かつ丁寧な機動をとっていく。
相対距離を示す数値の減りが遅く感じられた。
「……ちっ」
突然にメリッサの表情が変わった。センサーが新たに敵のソナー音を感知したのだが、数が余りに多いのだ。現在感知できただけでも追加で5つ。
「ダメ、もう見つかる」
「………合計で7、8……か? メリッサ、補助!」
「もうやってる。私に構わずなんとかしなさいッ!」
「………合計で7、8……か? メリッサ、補助!」
「もうやってる。私に構わずなんとかしなさいッ!」
妨害装置は稼働したまま。
両肩の担架システムが一瞬で武器を手元まで伸ばし、潜水機の金属製の手が掴み取って構える。大型の魚雷ランチャー、灰色のブレード。左腕の魚雷ランチャーの銃口が左へと向けられた。
銃口から矢のような速度で、泡を纏った魚雷が発射された。反動でランチャー本体が軽くぶれる。
続いて第2射、3射、4射。魚雷は白い痕跡を残しつつ敵へと向かっていく。
無論敵に気が付かれてしまう。ソナー音が大きくなり、明らかにこちらへと注がれている。もう隠れている必要性は無い。メリッサはソナーを起動した。
両肩の担架システムが一瞬で武器を手元まで伸ばし、潜水機の金属製の手が掴み取って構える。大型の魚雷ランチャー、灰色のブレード。左腕の魚雷ランチャーの銃口が左へと向けられた。
銃口から矢のような速度で、泡を纏った魚雷が発射された。反動でランチャー本体が軽くぶれる。
続いて第2射、3射、4射。魚雷は白い痕跡を残しつつ敵へと向かっていく。
無論敵に気が付かれてしまう。ソナー音が大きくなり、明らかにこちらへと注がれている。もう隠れている必要性は無い。メリッサはソナーを起動した。
「10時方向、11時方向――……ッ!」
「出力!」
「もう上げてる!」
「出力!」
「もう上げてる!」
脚部メインスラスターが火炎を噴くような加速を見せる。鉄の巨体が、水中とは思えぬ速度を出し、全身をくねらせて方向を変えながら優位な位置につかんとする。
警告。
ガードロボの発射した魚雷がポンピリウスに迫る。
数、3。
ソナーで捉えられた情報が映像データとして操縦席に投影される。それらはかなりの大型の魚雷で、形状から威力を重視しているというのが分かった。
警告。
ガードロボの発射した魚雷がポンピリウスに迫る。
数、3。
ソナーで捉えられた情報が映像データとして操縦席に投影される。それらはかなりの大型の魚雷で、形状から威力を重視しているというのが分かった。
「こっちの魚雷の命中まで15秒! むこうからのは22秒っ」
「迎撃するから頼む!」
「迎撃するから頼む!」
焦りを浮かべた顔のユトは、額に浮かんでいる汗を拭う余裕もなく、魚雷ランチャーの向きを変える。2発を発射。向かってくる3発の魚雷の迎撃をしようとする。
更に、深いところへと一気に潜らんとして脚部スラスターが真上に来るような急激な下降を試みた。
敵を追尾する魚雷が命中するまで5秒。相手の魚雷がこちらを粉々にするまで後12秒。
自由落下かくや、という速度で深みへと沈んでいくポンピリウスの両腕が、武器を握りなおし。
更に、深いところへと一気に潜らんとして脚部スラスターが真上に来るような急激な下降を試みた。
敵を追尾する魚雷が命中するまで5秒。相手の魚雷がこちらを粉々にするまで後12秒。
自由落下かくや、という速度で深みへと沈んでいくポンピリウスの両腕が、武器を握りなおし。
「2発迎撃成功。一発接近中!」
「背面スラスターを一瞬全開で―――……今だッ」
「背面スラスターを一瞬全開で―――……今だッ」
爆発音が遠くから機体を叩く。
焦燥今だ解けず。ガードロボ4機を撃破したことはいいことであるが、一発の魚雷が接近中。
残り3秒。
機体を宙返りの要領で反転、帰還用のスラスターと脚部スラスターから生み出される莫大な推進力が、大型魚雷が追尾しきれない速度を生み出す。発生するGが二人の身体を圧迫したが回避に成功。
魚雷が進路を曲げて再び襲いかかろうとしたときには、ポンピリウスは遠くに行ってしまっている。
メリッサはキーを叩くと、ユトの座席を蹴っ飛ばさんばかりに大声を張り上げた。
焦燥今だ解けず。ガードロボ4機を撃破したことはいいことであるが、一発の魚雷が接近中。
残り3秒。
機体を宙返りの要領で反転、帰還用のスラスターと脚部スラスターから生み出される莫大な推進力が、大型魚雷が追尾しきれない速度を生み出す。発生するGが二人の身体を圧迫したが回避に成功。
魚雷が進路を曲げて再び襲いかかろうとしたときには、ポンピリウスは遠くに行ってしまっている。
メリッサはキーを叩くと、ユトの座席を蹴っ飛ばさんばかりに大声を張り上げた。
「敵影感知。接近戦Ⅲ型2機!」
「Ⅲ式ぃ……!? マジかよ……!」
「Ⅲ式ぃ……!? マジかよ……!」
位置情報がリアルタイムで姿を変える。
かなり遠く。そこに、2機の人型のガードロボが出現して二人の様子を窺うが如く、水中に佇んでいる。
折れそうな細い骨格を持っていながら騎士鎧にも似た外見の至近戦型。
ユトは咄嗟に2発の魚雷を発射した。オヤジさんが造ってくれた魚雷ランチャーは8連装。弾が無くなったため、ランチャー本体備え付けのマガジンから自動で装填が始まった。
だが―――……当たらない。
Ⅲ型は非常識な速度で魚雷を無視してポンピリウスへと突っ込んでくる。両腕に装備されたブレードが怪しげな燐光を帯びている。まともに喰らえば唯では済まない。
Ⅲ型の命無きモノアイの赤い閃光が殺意を帯びる。
かなり遠く。そこに、2機の人型のガードロボが出現して二人の様子を窺うが如く、水中に佇んでいる。
折れそうな細い骨格を持っていながら騎士鎧にも似た外見の至近戦型。
ユトは咄嗟に2発の魚雷を発射した。オヤジさんが造ってくれた魚雷ランチャーは8連装。弾が無くなったため、ランチャー本体備え付けのマガジンから自動で装填が始まった。
だが―――……当たらない。
Ⅲ型は非常識な速度で魚雷を無視してポンピリウスへと突っ込んでくる。両腕に装備されたブレードが怪しげな燐光を帯びている。まともに喰らえば唯では済まない。
Ⅲ型の命無きモノアイの赤い閃光が殺意を帯びる。
「速ッ」
流石はφ37遺跡というべきか。
Ⅲ型は水の存在を無視していると言っても過言ではない機動を見せ付けて距離をつけてくれば、1機が先行して素早く肉薄してくる。
Ⅲ型が腕を振りかぶった。
衝撃。ブレードとブレードが衝突。
なんらかのエネルギーを纏ったⅢ型のブレードと、ポンピリウスの右腕のブレードが、水中だというのに火花を散らす。
脚部スラスターで間合いを取った刹那、Ⅲ型が鋭くブレードを一突き。突きの余波だけで機体が揺れるも間一髪で回避に成功。串刺しのイメージが脳裏をよぎる。
Ⅲ型は水の存在を無視していると言っても過言ではない機動を見せ付けて距離をつけてくれば、1機が先行して素早く肉薄してくる。
Ⅲ型が腕を振りかぶった。
衝撃。ブレードとブレードが衝突。
なんらかのエネルギーを纏ったⅢ型のブレードと、ポンピリウスの右腕のブレードが、水中だというのに火花を散らす。
脚部スラスターで間合いを取った刹那、Ⅲ型が鋭くブレードを一突き。突きの余波だけで機体が揺れるも間一髪で回避に成功。串刺しのイメージが脳裏をよぎる。
「くらえッ!」
右腕のブレードでⅢ型の頭部を刺し貫かんと突き出すが、失敗に終わる。Ⅲ型は人間臭い動きで両腕のブレードを交差させることで防御したのだ。ブレードとブレードの触れ合う場所から苦しげな気泡が出て消えた。
―――貰った。
ユトは至近距離であるというのに、魚雷ランチャーを向けて引き金を引いた。
次の瞬間、魚雷ランチャーの銃口の下に設けられたもう一つの銃口から、拡散しながら何かが飛び出してⅢ型の機体に絡まった。Ⅲ型はもがくが、ソレは更に絡まっていく。
脚部スラスターを作動。「ネット」に絡められた先行の1機の敵を取るかのように突撃してきたⅢ型のブレードの突きを回避。だが掠ってしまう。センサーの一部がもぎ取られてばらばらになって吹き飛んだ。
ランチャーを構え、撃つ。もう1機も「ネット」に絡められて身動きを封じられてしまう。もがけばもがくほどネットは絡まるのだ。
ユトは、ブレードで2機のⅢ型を切り捨てた。激しく電流が流れて海中に光を残し、消えた。
戦闘の痕跡が海中から消えていき、血の様に赤いオイルだけが残留した。
魚雷ランチャーの弾の装填を確実にして、また遺跡に向かって進み始める。ブレードの損傷具合を調べるべくポンピリウスの大型のメインカメラが動いた。その映像は操縦席に送られて二人が見ることになる。
ようやく汗を拭えたユト。
メリッサは心臓の高鳴りを沈めるように呼吸をしている。
―――貰った。
ユトは至近距離であるというのに、魚雷ランチャーを向けて引き金を引いた。
次の瞬間、魚雷ランチャーの銃口の下に設けられたもう一つの銃口から、拡散しながら何かが飛び出してⅢ型の機体に絡まった。Ⅲ型はもがくが、ソレは更に絡まっていく。
脚部スラスターを作動。「ネット」に絡められた先行の1機の敵を取るかのように突撃してきたⅢ型のブレードの突きを回避。だが掠ってしまう。センサーの一部がもぎ取られてばらばらになって吹き飛んだ。
ランチャーを構え、撃つ。もう1機も「ネット」に絡められて身動きを封じられてしまう。もがけばもがくほどネットは絡まるのだ。
ユトは、ブレードで2機のⅢ型を切り捨てた。激しく電流が流れて海中に光を残し、消えた。
戦闘の痕跡が海中から消えていき、血の様に赤いオイルだけが残留した。
魚雷ランチャーの弾の装填を確実にして、また遺跡に向かって進み始める。ブレードの損傷具合を調べるべくポンピリウスの大型のメインカメラが動いた。その映像は操縦席に送られて二人が見ることになる。
ようやく汗を拭えたユト。
メリッサは心臓の高鳴りを沈めるように呼吸をしている。
「死ぬかと思った………。それにしてもオヤジさん、ネットにどんな素材を使ったんだろうね。ガードロボが引きちぎれないとなると結構凄いの使ってると思うんだけど」
ユトは、片腕に握らせた黒塗りの魚雷ランチャーを見遣った。自分が以前使っていたのとは比べ物にならないほど使い勝手が良かったのだ。頼もしさを認識する。
ソナーを切ってステルス性を高めたメリッサは、少し考え込む。
怒鳴り声としか思えない声で満ちていた操縦席内部に静寂が戻ってきている。
ソナーを切ってステルス性を高めたメリッサは、少し考え込む。
怒鳴り声としか思えない声で満ちていた操縦席内部に静寂が戻ってきている。
「素材なんてなんでもいいでしょ。それよりセンサーがいくつかオジャンなんだけど~?」
「ご、ゴメン。速すぎて対応仕切れなくてさ」
「……後でお酒奢ってくれたらいいかな」
「一杯で酔うのに?」
「それがいいのよ………二日酔いは勘弁だけどね」
「ご、ゴメン。速すぎて対応仕切れなくてさ」
「……後でお酒奢ってくれたらいいかな」
「一杯で酔うのに?」
「それがいいのよ………二日酔いは勘弁だけどね」
ユトは、不機嫌を隠そうともしないメリッサをなだめる。
代償はお酒だという。無論普通のではなく、合成のイチゴ酒であろう。値段が安い。しかし当の本人が酒に弱いのだが。
他愛も無い会話をしながら、遺跡へと向かう。
一度発見されてしまえば警戒されることは分かっているので、深海へと一気に潜って、岩などの地形にまぎれて接近することにした。
うろつくガードロボの隙をついて徐々に深海へと降りていく。
深度400m地点を突破。
人間には暗黒の世界にしか見えない海の中を降りていく。細かなマリンスノーが見えてくる。どんな危険な場所でも自然は機能しているのだ。
深度更に1000mを突破。
先ほど損傷したセンサーの一部が悲鳴を上げ始めたので、切り離して海底へと投げてしまう。
代償はお酒だという。無論普通のではなく、合成のイチゴ酒であろう。値段が安い。しかし当の本人が酒に弱いのだが。
他愛も無い会話をしながら、遺跡へと向かう。
一度発見されてしまえば警戒されることは分かっているので、深海へと一気に潜って、岩などの地形にまぎれて接近することにした。
うろつくガードロボの隙をついて徐々に深海へと降りていく。
深度400m地点を突破。
人間には暗黒の世界にしか見えない海の中を降りていく。細かなマリンスノーが見えてくる。どんな危険な場所でも自然は機能しているのだ。
深度更に1000mを突破。
先ほど損傷したセンサーの一部が悲鳴を上げ始めたので、切り離して海底へと投げてしまう。
「……ソナー音検知。遠いから大丈夫だと思うケド」
「………バレませんように」
「………バレませんように」
またもや響くは索敵の音。
ステルス性のために照明をつけていないポンピリウスの機体を音が叩いている。
妨害装置が故障したらと考えたくは無いが、今は問題なく働いているようだ。
深度2000mを突破。
海水温の急激な低下。ひょっとしたら敵かと二人は考えてしまう。
不気味なまでの静寂が精神を揺さぶっているようでもあり。
ステルス性のために照明をつけていないポンピリウスの機体を音が叩いている。
妨害装置が故障したらと考えたくは無いが、今は問題なく働いているようだ。
深度2000mを突破。
海水温の急激な低下。ひょっとしたら敵かと二人は考えてしまう。
不気味なまでの静寂が精神を揺さぶっているようでもあり。
「メリッサ~、音楽でもかけようか~?」
「アンタバカでしょ?」
「新作のロックがあるんだ」
「脳内でオーケストラでもやってなさい」
「アンタバカでしょ?」
「新作のロックがあるんだ」
「脳内でオーケストラでもやってなさい」
のん気な提案を一刀両断。
防音性があるといっても、敵に見つからないように潜航している最中に音楽は冗談というレベルではない。冗談を言って気を紛らわそうとしたのだ。勿論メリッサは分かっている。
深度3000mを突破。
機体のどこかが軋む音がしてきたため、一時的に下降速度を緩めて、機体各部の確認をする。
問題無しということが分かったので再度下降し始めた。
皮膚をチリチリと刺すような感覚に鳥肌が立つ。ユトはダイブスーツの温度を少しだけ上げた。
腕と脚を使って、遺跡のほうに進むように降下を続ける。マリンスノーの量は変わらないが、塩分濃度が薄くなってくる。メリッサはそのデータをじっくりと閲覧しながらも索敵を怠らない。
深度4000m。また機体が軋む音がした。直ちに降下速度を緩めての確認。問題は無いため、続行。
二人は活動限界時間と必要な時間を吟味する。
何も無い時間。潜航中の沈黙を埋めるのは、二人の会話と呼吸音程度のもの。
深度5000m。
海底が近づいてきた。低光量のライトを点灯すると、機体の降下角度を緩めていき、水平にする。
海底ぎりぎりを舐めるような潜航。ふとライトを海底に向けてみると、蟹のような深海生物がわたわたと歩いているのが見えた。
ライトを進行方向上の海底に向けると、ガードロボか、潜水機の残骸があった。かなりの年月が経過しているためか、赤い錆や貝などに覆われている。見たことが無い種類の海草も息づいていた。
防音性があるといっても、敵に見つからないように潜航している最中に音楽は冗談というレベルではない。冗談を言って気を紛らわそうとしたのだ。勿論メリッサは分かっている。
深度3000mを突破。
機体のどこかが軋む音がしてきたため、一時的に下降速度を緩めて、機体各部の確認をする。
問題無しということが分かったので再度下降し始めた。
皮膚をチリチリと刺すような感覚に鳥肌が立つ。ユトはダイブスーツの温度を少しだけ上げた。
腕と脚を使って、遺跡のほうに進むように降下を続ける。マリンスノーの量は変わらないが、塩分濃度が薄くなってくる。メリッサはそのデータをじっくりと閲覧しながらも索敵を怠らない。
深度4000m。また機体が軋む音がした。直ちに降下速度を緩めての確認。問題は無いため、続行。
二人は活動限界時間と必要な時間を吟味する。
何も無い時間。潜航中の沈黙を埋めるのは、二人の会話と呼吸音程度のもの。
深度5000m。
海底が近づいてきた。低光量のライトを点灯すると、機体の降下角度を緩めていき、水平にする。
海底ぎりぎりを舐めるような潜航。ふとライトを海底に向けてみると、蟹のような深海生物がわたわたと歩いているのが見えた。
ライトを進行方向上の海底に向けると、ガードロボか、潜水機の残骸があった。かなりの年月が経過しているためか、赤い錆や貝などに覆われている。見たことが無い種類の海草も息づいていた。
「メリッサ。そろそろかな?」
「うん、そろそろ見えてくるはず……」
「うん、そろそろ見えてくるはず……」
大部分が謎で埋め尽くされた海図と、海底を見比べながら、脚部のスラスターで進んでいく。傍から見たら小刻みにバタ足をしているようにも見えるが、大真面目だ。
家よりも大きな岩が目の前に見えてくる。
スラスターから生じる水流を海底に叩きつけるように機体を持ち上げ、岩によじ登った。武器を持ったままなので動きはぎこちない。
メインカメラで岩の向こう側を見てみると、見たことがない光景が広がっていた。
感嘆に息を飲む音が響く。
ピラミッドを叩いて平たく伸ばしたような形状の遺跡―――……「φ37」。
暗くて詳細を窺うことは出来ないが、カメラのモードを切り替えることで徐々に様子がはっきりと見えてくる。
塔と見間違うほどの大きさのクレーンのような物体。煙突に似た形状のそれが無造作に乗せられており、全体的にごてごてとしているのが分かる。全長は一つの島よりも巨大であるという数値が表示された。
ガードロボに見つからぬように岩の影に身を潜めてライトを消す。
ユトは、どう撮影しようかと考え始めた。
家よりも大きな岩が目の前に見えてくる。
スラスターから生じる水流を海底に叩きつけるように機体を持ち上げ、岩によじ登った。武器を持ったままなので動きはぎこちない。
メインカメラで岩の向こう側を見てみると、見たことがない光景が広がっていた。
感嘆に息を飲む音が響く。
ピラミッドを叩いて平たく伸ばしたような形状の遺跡―――……「φ37」。
暗くて詳細を窺うことは出来ないが、カメラのモードを切り替えることで徐々に様子がはっきりと見えてくる。
塔と見間違うほどの大きさのクレーンのような物体。煙突に似た形状のそれが無造作に乗せられており、全体的にごてごてとしているのが分かる。全長は一つの島よりも巨大であるという数値が表示された。
ガードロボに見つからぬように岩の影に身を潜めてライトを消す。
ユトは、どう撮影しようかと考え始めた。
「………うーん。のんびりしてるわけにも行かないし………でもこれ以上近寄るとまたガードロボ出そうだし……遠距離からじゃ良く分からない………メリッサ?」
「……………………」
「……………………」
メリッサの様子がおかしい。
遺跡の解析映像を眼にするなり、口を小さく開いて、眼も開いて、両拳を握りしめたままで硬直している。焦点の合わない瞳は映像の中の遺跡を見つめるばかり。
空虚。感情を見つけられない瞳。
一言も喋らないメリッサを不審に思ったユトは、後ろに頭を向けて見てみる。時間が止まってしまっているかのような姿が映り込んできた。
遺跡の解析映像を眼にするなり、口を小さく開いて、眼も開いて、両拳を握りしめたままで硬直している。焦点の合わない瞳は映像の中の遺跡を見つめるばかり。
空虚。感情を見つけられない瞳。
一言も喋らないメリッサを不審に思ったユトは、後ろに頭を向けて見てみる。時間が止まってしまっているかのような姿が映り込んできた。
「メリッサ……?」
「―――――………ぇ?」
「―――――………ぇ?」
停止していた時間が動き出しても、メリッサの表情は固まったまま。
喉から搾り出した声は直ぐ側にいるユトですらやっと聞こえる程度の声量だった。
機体や周辺の状況を伝えてくる鈴のように美しい電子音が大きく聞こえる。
ユトがもう一度口を開こうとした―――……次の瞬間。
喉から搾り出した声は直ぐ側にいるユトですらやっと聞こえる程度の声量だった。
機体や周辺の状況を伝えてくる鈴のように美しい電子音が大きく聞こえる。
ユトがもう一度口を開こうとした―――……次の瞬間。
「~~~~~~~~~~ッッッ!!!!!」
声帯の限界を超えるほどの絶叫が後部座席で大爆発を起こした。
【終】
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