創作発表板 ロボット物SS総合スレ まとめ@wiki

GEARS 第一話

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sousakurobo

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だれでも歓迎! 編集
統合歴329年5月1日

必死になって戦い抜いた受験戦争も終わって、遂に俺も高校生だ。
なんて思っていた矢先に通勤に便利だからという母の一声で、八坂州に家を建てる事になった。
そんなアパートを借りるような気分で家を建てて良いようなものなのだろうか?
家なんてものは一生に一度の買い物じゃないのかと母に問うと

「一度に限定する必要は無い。」

軍人である父よりも、ある意味男らしい人だと思った。父はと言えば

「殆ど帰らないからな。寝心地の良いベッドがあるなら何処でも構わない。」

実に如何でも良いよいうような反応を返された。
そして、必死に勉強して入学した砕牙州立砕牙高校に僅か一ヶ月で別れを告げ
私立八坂高校に転入する事になってしまった。

態々、州立高校に受かったのに私立高校に移される事になろうとは…嘆いていると

「私立高校の方が何かと黙らせるのが楽だ。」

お袋様、相手は子供なのだから、もう少し表現を考えて欲しい。
寧ろ、多少の無理があっても嘘を吐くべきだと思う。

「州立よりも私立の方が遊び易い。」

親父殿。学校は勉学に励む場所だ。

そんないい加減な両親に連れられ新たな制服を受け取る為、新たな学び舎に訪れていた。
それにしても、周りの視線が鬱陶しい。身内が有名だと如何にも肩身の狭い気分だ。

繊細な自分に引き換え、母は随分と慣れたもので差し向けられた視線など何処吹く風だ。
父親に至っては最近の高校生は発育良いな。などと通報されても文句は言えないような危険な言葉を発している。
本当に勘弁してくれ。我が家の有名人。

教員の目の前で両親が変な事を口走りやしないか心配ではあったが、大人しくしてくれていたのは幸いだった。
恙無く、制服や教科書一式を受け取り、長期休暇後、新たな高校生活が始まる事になった。
それにしても何故、子供の俺が問題児を預かる親のような心情で自分の親を警戒しなければならないのだろうか。

転入に伴う必要な儀式を一通り終えると、母はさっさと職場に戻った。
家と職場が近くなった事だし、週に一度は家に帰って来る事になるだろう。

父親と何ヶ月かぶりに夕食を共にした。

「お前も高校生だし、両親が留守にしがちなんだ。大いに羽目を外せ。」

如何贔屓目に見ても、未成年の子供に言う台詞では無いと思った。

「ガキの癖に可愛げの無い事ばかり言っているからだ。ガキなんざ、親に迷惑かける程度で丁度良いんだ。」

尤も、何かしでかしたら殴り倒すがな。と後から思い出したように親の役目を持ち出されてもな…
頼むから、もう少し大人になってくれ親父殿。

「そういや、八坂高校にはスポーツギアがあるそうだな。」

スポーツギア

全長7mの軍用人型機動兵器アームドギアの能力を大幅に限定したスポーツ用ロボット。
一般車両以上、戦闘車両未満の微妙なラインの上に立つスポーツ用品で
格闘技とも、モータースポーツとも付かない微妙なラインの上に立つ競技である。

何かと微妙な立ち位置ではあるが、鋼の巨人がぶつかり合うスポーツに多くの人間が熱狂している。

とは言え、この兵器紛いのスポーツ用品は兎に角、金がかかる。
金を持ったロボットオタクのスポンサーを捕まえないと話が始まらない。
始まらないが思いの他、この世の中には金を持ったロボットオタクの大馬鹿野郎どもが世界各地に居る。
特に筋金入りのロボットオタクは自分が乗って戦うよりも
自分が理想とするロボットが大暴れする様を間近で見る事に全てを賭けている。
だから、他のスポーツ同様、区大会、州大会、全国大会と大規模な大会を開催し
人と金を集める事には概ね成功していると言って良い。

「それは何か?スポーツギアで暴れて予習しておけというフリか?」

この親父殿、俺が軍人になっても苦労しないようにと
幼少の頃から現在進行形で現役の軍人と同様の訓練を課してくれている。殺す気か。
それはさて置き、スポーツギアの前身であるアームドギアは軍は勿論の事
警察にも配備されているし、消防にはレスキュー用のギアが使用されている。
スポーツギアに慣れておけば、将来、ギアを使った職業に就いた時、
人並み程度の苦労をする必要が無くなるという算段である。

今、人並み以上に苦労しているけどな。

兎も角、軍人になった時に苦労しないようにと訓練を課してくれる親父殿ではあるが
流石に金が無いせいか、アームドギアを使った訓練は課されていない。

「興味があるならやってみれば良い。アレは存外、良い玩具だ。
予習にならない事も無いが…アレは兵器じゃなくて玩具でしかない。」

よくよく考えてみれば、ギアだけに限らず銃器を含む他者を殺傷する目的に作られた武器や兵器の類は
一切、触れさせてもらっていない。触れさせられても問題だが。

「俺がお前にやらせている課題は、あくまでも健康的な身体作り為のものでしかない。」

何を仰るのやら、この鬼教官は。

何はともあれ、鬼教官である親父殿にとってスポーツギアは出来の良い玩具に過ぎず
折角、珍しいクラブがあるのだから興味があればやってみれば良い。
よく考えれば、極普通の親子の会話だ。
あまりにもまとも過ぎて俺の脳が追いついていなかっただけらしい。

統合歴329年5月11日

その日、八坂高校では季節外れの転入生の話題で持ち切りだった。
特に一年生は新たに始まった高校生活が思いの他、普通で中学と何ら大差が無くて辟易していた矢先に
有名人の息子が転入してくるという、ちょっとした一大イベントの発生である。
TVや雑誌などで顔を見た事のある目ざとい女子生徒などは特に有頂天になっている。

その中でも、他とは違う意味で転入生に一抹の期待と不安を寄せている女子生徒がいた。
霧坂茜華。スポーツギア部に所属する一年生である。

ついでに、転入生に対し大いに期待する、やたらと屈強そうな男子生徒も居る。
様々な思惑が本人の与り知らぬ所で渦巻いている事も知らずに転入生はHRで無難な挨拶をした。

「砕牙州から来ました。守屋一刀です。」

統合歴以前…たった一つの小さな惑星の中で無駄に多くの国家に分かれて人間同士で
殺し合っていた時代、古くから倭国を守る一派、守屋一族の末裔である。
尤も、今となっては様々な血を受入れるようになった事もあり、純粋な倭国民族では無いし
其れ程、大それたものでは無い。ただ軍の広報が守屋の一族を放っておかない。
そうこうしている内に世界で一番、有名な軍人とその息子になっていただけだ。
全く、普通の家庭…と断言出来る程の厚かましさは持ち合わせては居ないが
周囲が思っている程、大した物でも無いと思っていた。

だが、他人から受ける評価に本人の意思は関係無い。
例え、それが大きく的外れな評価であってもだ。

この場合、大きく的外れな評価だったら、このような事件も起きなかったのだろう。
多くの生徒の想像通り、守屋一刀は高校生としては破格の身体能力、戦闘能力を持っている。
だからだ。だからこそ、運動部。特に格闘技系のクラブの生徒達は何がなんでも
守屋一刀を引き入れようと必死になった。
その勢いは、ミーハーな女子生徒でさえ近付くのを諦める程で守屋が激怒する程度には充分過ぎた。

「同じクラスなら勧誘なんて楽勝だと思っていたんですけどねぇ…」

霧坂は苦い顔でギア部専用スタジアムで事の切欠をレギュラー陣に話していた。

休憩時間の執拗な勧誘のせいで、守屋はトイレにも行けない、食事も落ち着いて摂れない。
最初の方は丁寧に断りを入れていたのだが、厚かましい上級生達の行いに耐えかねて
ぞんざいな対応をしてしまい、口論となり…一年の教室棟の廊下は血に染まった。

喧嘩両成敗という事で守屋一刀以下53名は2週間から1ヶ月の停学処分。
尤も、殆どの生徒が一ヶ月で退院出来るか如何か怪しいところだ。
全クラブには入学式後のクラブ案内以外の部活勧誘を一切禁止を言い渡された。
暫くは格闘技系のクラブはゴミクズのような目で見られる事になるだろう。

「だけど、そんなに乱暴そうな子じゃなかったんだよね?」

ギア部レギュラー、内田燐は正直、憂鬱だった。
例え、どんなに強かろうと不良等の手合いだったら関わりたく無いし、入部もして欲しいとは思わない。
だが、内田のそんな不安も霧坂にとっては何処吹く風だ。
いや、霧坂に限った話では無い。彼女を除くレギュラー陣は守屋をギア部に引き入れる気でいる。

「何の面白味も無さそうな、極普通の男子って感じなんですけどね。
寧ろ、よくぞ昼休みまで耐えたって思いますよ?私なら2限でブチきれてます。」

だからこそ、停学二週間という最も軽い処分で済んだわけだが。

「それにしても、如何します?何か脳筋達のせいでやり難くなりましたけど」

霧坂が視線を投げかけた先には如何にも優等生といった風貌の生徒が今回の事件に関する書類を眺めていた。
霧坂に話を振られたと同時に書類を丸めてゴミ箱に投げ捨てた。

「罰するべき相手を誤るような大人の言う事など一々、聞いていられないだろう?
勧誘については礼節を損なわないようにな?」

「そりゃあ、私だって血の海に沈みたくは無いですからね。」

最初から学校側の指示を従うつもりなど更々無く、クラスメイトという立場をフル活用して
守屋をギア部に引き込むとういう当初の目的を達成するつもりだった。

統合暦329年5月22日

「終わった……しっかし…どう考えても俺が被害者なのに、何で俺が停学二週間とかになるんだろうな。」

職員室で渡された課題は、夏休みの課題かと見間違える程の量で、守屋を辟易させるには充分過ぎる量だった。
根が真面目なお陰で、復学までには余裕を持って片付ける事が出来た。

尚、転校初日に早速、傷害沙汰を起こし停学処分を受けた事に対して両親は

「ガキのじゃれ合い如きで大騒ぎするな。」

「子供の喧嘩如き、子供同士で解決しろ。」

知った事かと一片の躊躇も無く斬り捨てた。
今更、親が何か言って来るなんて思ってもいなかったし
退学にならなかっただけマシと思う事にした。

それにしても新たな高校生活を初日から滅茶苦茶にしてくれた武術系のクラブには
絶対に入部しないと心に決めて辟易する量の課題を鞄の中に仕舞い込んだ

「それにしても…絶対に俺の第一印象最悪だ…友達出来るのか、俺?」

ロクでも無い高校生活になるのではと、頭を抱えているとインターフォンが鳴った。

(此処を訪ねるような人なんて…担任か?)

ドアを開けるとブロンドアッシュの長い髪にダークブルーの瞳をした少女…霧坂が人懐っこい笑顔で手を振っていた。
白を基調とした制服から察するに八坂の生徒なのだろうが、全く知らない生徒だった。
寧ろ、乱闘事件を起こす切欠となった男子生徒の顔すら覚えていないのだから
そもそも、八坂の生徒の顔なんて一人も覚えていない。

「どーも、こんばんは。」

考えても考えても顔も名前も出て来ない。

「こんばんは…えーと、クラスの子?」

クラスメイトが停学中に溜まっているプリントを持って来てくれたとかだったら
何と無く、有り勝ちな話だと思い言ってみた。

「やっぱり覚えてないか…同じ1年3組のクラスメイトだから宜しくね。」

顔も名前も覚えていないが、クラスメイトというのは正解らしい。
霧坂は顔を覚えられていない事を別に気にするわけでも無く喋り出したので
守屋も気にせず話を促した。

「ああ。宜しく。それで…今日は?」

「うん。守屋君ってさ、ロボット。スポーツギアに興味無い?私、ギア部の部員なんだけどさ。」

正直、停学処分を受けた時の怒りが再燃しそうな思いだった。
八坂の生徒が滅茶苦茶な勧誘の仕方をしなければ停学処分を受ける事も無かった。
恐らく自分の印象は最悪だ。これ以上、印象を悪くするような真似だけは避けたい。
兎に角、理性を総動員させて感情的にならないよう、無愛想にならないように努めた。
愛想笑いをしながら断りを入れよう。頭の中で丁寧な断り文句も用意した。

(よし、大丈夫だ。いける。)

「いや~、あの後で全校集会になっちゃって、守屋君に対して部活勧誘行為が一切禁止になっちゃったんだよね。」

そんな霧坂のあっけらかんとした態度が守屋の癇に障った。
必死に総動員した理性も何処かへ飛んでいった。

「で?教師の目が届かない自宅なら大丈夫だと思ったのか?
住所を調べ上げて断りも無く来て…八坂には非常識な生徒しか居ないのか?」

あからさまに不機嫌な態度を取る守屋に霧坂は酷く焦った。
流石に暴力を振るわれる事は無いだろうが…無いよな?
兎に角、コレは非常に良くない。如何にか機嫌を直して貰わなければ。

「あ、いや…それはその…」

焦る霧坂を前にしても一度開いた口は簡単には止まらない。

「態々、勧誘なんかに来なくてもギア部には興味があった。
だけど、あんな事があったせいで俺は停学になったからな。
勧誘して来たクラブには入らないって決めているから。」

「うあ…もしかして、私やらかした?」

簡単に止まった。見ているのが気の毒になるくらい霧坂は落胆したからだ。
守屋は霧坂のそんな様子に溜飲が下がり、此の侭、追い返すのも忍びない。
そんな短絡的な発想を持ってしまった。

「態々、訪ねて来てくれたのに悪かったな。」

「そう思うんだったら!」

すぐに顔色を変えて飛びついて来る。
前言撤回。成る程、この女はそういう手合いの奴なわけか。
せめて謝罪くらいはするべきだと思った自分が馬鹿だったと思い知った。

「厚かましい。帰れ。」

そして、理解した。
コイツに限って言えば、無碍な扱いくらいが丁度良い。

統合暦329年5月25日

停学の開けた月曜日の朝の事だった。
気を使ってくれているのか、行動力があるのか。はたまた厚かましいだけなのか。

(厚かましいだけなんだろうな。)

何故か、霧坂が守屋の自宅まで迎えに来ていた。

「いや、別に勧誘とかじゃないから警戒しないでよね?」

「呆れているだけだ。」

「そんなに邪険にしなくったって良いじゃん。
クラスメイトだし、家も目の前だし、純粋に一緒に学校行こうかなとか思っただけだよ。」

眩暈がした。今、何て言った?
家も目の前だし?

「家が目の前って如何言う事だ?」

「如何って?そのままだけど?」

ホレと、霧坂が指差した表札にはしっかり霧坂と書かれていた。

「すまん。お前の名前知らない。」

「自己紹介して無かったっけ?」

守屋自身、人の名前を覚えるのは余り得意な方では無いので、ただ忘れている可能性もあるが…
此処までアクの強い奴なら一度聞いたら忘れたくても、忘れそうにも無い。

「取り合えず、霧坂で良いんだな?」

「うん。霧坂茜華。忘れないでね?」

出来る事なら忘れたいと思った。
しかし、狭い道路を隔てて、文字通り目の前とは…

「…眩暈がする。」

「そう言えば、ギア部の活動場所って何処にあるんだ?見学に行こうと思っているんだけど。」
「え?何?どういう心境の変化?寧ろ、私に気がある!?」
質問に対して普通に返せば良いのに、何でコイツはこう…変なリアクションを取るのだろうか
なんだか疲れる奴…絶望的に相性が悪い。そんな思いで胸がいっぱい…胸焼けしそうな思いになった。
「元々、ギア部には興味があるって言っただろう?
勧誘されて良い気はしないけど、見学するくらいなら行っても良いかと思っただけだ。
それから…知り合って間もない相手に対して、そんな気は起きない。」
「50点。」
「意味が分からない。」
「私に対して、その気が無いってのは、どういう了見よ?」
(鬱陶しい。)
守屋は返事をする気力も根こそぎ抜き取られ、霧坂を無視して学校へ向かった。
霧坂が何か言っているが、これ以上疲れるのはゴメンだと、歩みを止める事をしなかった。
(とは言え、霧坂にギア部の活動場所を教えてもらうまでは機嫌を損ねるのは良くないか?)
何と無く、霧坂の方を振り返って見ると
「どしたの?」
(うん。コイツはそういう奴なんだろうな。)
気にかけた事が馬鹿らしくなり、再び歩みを進めた。
それから、放課後まで大人しく過ごし、校内モノレールに乗る事5分程。
案内された先は、山の中腹を削って建設されたスポーツギア専用スタジアムの中だった。
広々としたスタジアムの中には鋼の鎧を纏った鋼鉄の巨人。
いや、鋼鉄のスポーツマン。5体のスポーツギアが稼動していた。
「アレが…スポーツギア…」
父親の職業柄、その手の知識はあったが軍用機アームドギアですら触れた事も実物を見た事だって無かった。
7mなんて中途半端な大きさだと思っていたが、初めて見るギアの勇姿に守屋は完全に心を奪われていた。

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