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GEARS 第七話

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匿名ユーザー

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窓の外の景色を眺め、溜息一つ。自分の置かれている立場を再確認し溜息二つ。

「なんで霧坂と居るとこうなるんだ?」

「いや、それ言いがかりだから。」

現在、自分達の置かれている状況について、声を潜めながら言い合いを始めるが
この状況、霧坂のせいと言うのは、流石に言いがかりだろう。多分、恐らく。

何故、この様な事になったのかを知るには時間を少々、時間を遡らなくてはならない。

統合歴329年7月9日の放課後、部活を追え帰路に着く八坂高校スポーツギア部の面々。
そして、宋銭高校スポーツギア部の二年生、矢神玲。

「それにしても、今年の州大会、警戒する相手は岸田学園の月城だけだと思っていたんだが
まさか、こんな近所に強敵が出現するなんてな…今年の大会も一筋縄じゃいきそうにないな!」

矢神は守屋の背中をバシバシと叩き、豪快に笑うが実力差は天と地程の差がある。
何せ本来の得物は持ち出さず、互角の戦いが出来るようにと盛大に手加減されているのだから笑えない。

「部活に精を出すのも良いけど、もうすぐ期末試験だよ?二人とも大丈夫?赤点とか留年とか笑えないよ?」

平和な日常の一時が内田燐の一言で脆くも崩れ去り、守屋は押し黙り、矢神の顔は蒼白になった。

八坂高校に転入してから過ごす日々は矢継ぎ早に過ぎ去り、陰影矢の如しとはよく言ったものである。
ギア部の活動は忙しく、父親から与えられた課題を一日も欠かす事無くこなして来た。

要するに期末試験目前だと言うのにも関わらず、勉強に時間を費やす事が出来なかったという事だ。
授業に着いて行けないって事は無いが、赤点や留年といった不名誉の物だけは如何にか避けたい。

校内での守屋の評価は人の形をした凶暴な何か。
守屋の転入当時に起こった『教室棟血の海事件』は未だに尾を引いている。
これで成績まで最底辺で、それが知れ渡ったら…想像しただけで眩暈がする。
そう言えば、何かと頭を悩ませて来た霧坂茜華が妙に大人しい気がする。

きっと眩暈がしたから、そう感じたのだろう。そして、ふと霧坂の事を考えると…駄目だ。嫌な予感しかしない。
何処で道を踏み外してしまったのだろうか…八坂に引っ越して来たから?霧坂と知り合ってしまったから?
霧坂がクラスメイトだからか?霧坂の誘いに乗ってギア部に入ったからか?

(…って、全部、霧坂じゃないか。)

しかし、今は霧坂の凶行に恐れている場合じゃない。留年の方が霧坂よりも恐ろしいのだから。
何はともあれ、明日から試験休みだ。今まで遅れていた分を取り戻さなくては。

「守屋君って勉強得意?何だかんだ言って真面目だし得意だよね?お願いだから得意と言って!そして、私を助けて!!」

いつもの勘の良さは何処へ行ったのやら、この暗い表情を見れば分かるだろうよ、ブルータス。

「授業に着いていけないって事は無い程度のレベルだぞ?
取り合えず、試験休み中の間は図書館で勉強するつもりだけど、一緒に来るか?」

珍しく弱気で不安げな霧坂の顔を見たせいで気が大きくなってしまったのだろう。
それ故の気の迷いだ。きっとそうだ。でなければ、罷り間違ってもこんな事を口走る筈が無い。
何事が起きても冷静に対応しなければならない。

「有難う!大好き!愛してる!」

さもなくば、この様に頭がお花畑な女に抱き付かれてしまうのだ。
それも天下の往来で。これは何か?罰ゲームか?

「ちょ!テメェ!抱きつくな!離れろ!」

背中に良い感じのモノが引っ付いて、非常に良い具合だなーとか思ってしまった。
健全な男子高校生相応の反応をするが場所が場所だし、非常に宜しく無い状況だ。

「そんなに照れなくても良いじゃん?」

だと言うのにも関わらず、霧坂にとっては何処吹く風だ。
何も気付いてないのか?ギアが好き過ぎて脳まで鋼鉄になったのか?

「天下の往来で変な事をするな…って言うか、場所を考えろ。」

「つまり、抱き付くなら人気の無い所で…」

「人気があっても無くても俺に抱き付くな。気持ちが悪い。」

霧坂が馬鹿な事をほざく前に切り捨てる。

「うわ、ひっど!!」

「知るか。」

半ば暴言気味の苦言を吐くまで、人の嫌がる事を止めないお前が一番酷いという事に気付いてくれ。
普段通りの守屋と霧坂の日常会話である。

そして、現在…統合歴329年7月11日

守屋は霧坂を連れ立ってセントラルシティの図書館へ勉強をする為に訪れていた。
土曜日という事もあってお互い私服だが、何せ家が目の前だ。今更、珍しがる事も無い。

それよりも現在、守屋達が置かれている現在の状況である。

「大体、違法ギアと私に何の因果関係があるって言うのさ?」

図書館…厳密には図書館の下のフロアに店舗を構える銀行を目的とした違法ギアと強盗にビルごと占拠されてしまったのだ。
完全にとばっちりを受ける形になってしまい、僕達は何も関係ありませ~んと言える状況でも無い。

何せ、図書館の利用者達と一箇所に集められ銃火器を突きつけられているのだから関係無いも何も
完全に当事者で被害者に成り下がっているのだから、どうしようもない。

「そんな事よりも、守屋君…」

「今はまだ無理だ。」

前回同様、今すぐ片付けろッ!的な事を言いたいのだろうが銃火器で武装した強盗連中が4人。
せめて一箇所に固まっていてくれるのなら、秒殺してやるのにと思うが、此方に火器を突きつける奴が2人。
残りの2人は其々離れた位置に立っている。丸腰で一体、何をしろと言うのやら。
正面の2人を撲殺すると同時に火器を奪って残りの二人を射殺するか?無理だ。生憎、火器の類は使い方を知らない。

「いや、そうじゃなくて暇だから勉強したいんだけど。」

生きるか死ぬかの瀬戸際にある状態で何故、お前はそんなに余裕なんだと
問い詰めるまでも無く、聞いてもいないのに余裕の根拠を語り出した。

「今回も守屋君が如何にするでしょ?だったら先を見越して勉強しておかないと。ね?」

成る程、そういう事か。俺が如何にかするのか。ふざけんな。
こいつ等を無力化しても外には4機の違法ギアが居る。
他のフロアにもこの類の連中が銃火器を持ってウロウロしているだろう。如何にか出来てたまるか。
一介の高校生である守屋に出来る事は、それ程多く無い。寧ろ、こんな状況なのだから何もしない事が正解だ。

「俺の出る幕じゃない。専門家に任せるべきだ。」

「ま、いっか。」

そして、霧坂も守屋の活躍が見たいのでは無く、アイリス・ジョーカーを初めとするMCIギアの活躍を見たいのだ。
変に煽って怪我をされたり、死なれたりしても後味が悪いし、アイリス・ジョーカーの専属パイロットを失うのは避けたい。
今回は自重するかと思い至るが…

守屋にとって見慣れた円柱の物体が図書館の中に投げ込まれた。

「何、アレ?」

「馬鹿が先走りやがって…スタンフラッシュだ。これで口と鼻を押さえていろ。」

投げ込まれたスタンフラッシュは爆音と強烈な閃光を放ち、図書館の中に催涙ガスを撒き散らす。
守屋は霧坂が閃光に晒されないよう影になり耳を押さえてやる。

鼻腔と目を刺激するが普段の訓練のお陰で大したダメージにはならない。
爆音ばかりはどうにもならないが、平衡感覚を失っても動けるように鍛えられている。

「目を閉じて大人しくしていろ。」

閃光と爆音が鳴り止むと同時に短く言を発し此方に銃口を向けている二人組に向かって駆け出す。

つい先程、専門家に任せると言ったばかりなのに何故、守屋が戦おうとしているのか。
正義感や使命感のようなモノが生まれたというわけでは無い。どんなに強かろうと、守屋は一介の高校生に過ぎない。
ギアがあるなら未だしも生身で、それも銃火器を装備した奴等に戦うなんて何が何でも避けたい。当然、命だって惜しい。

(専門家なら敵の武装くらい確認しろよ…)

投げ込まれたカウンターテロ兵器は顔隠しの為に使われていたガスマスク付きのヘルメットによって全く効果が無かったのだ。
これでは今から突入しますよ。と声高に宣言しただけに過ぎない。
そして、人質を数は20名余。2~3人くらい見せしめに殺される危険性が非常に大きい。
自分が死んだり、他人が自分の目の前で殺されるなんて事態は何がなんでも避けたい。

(幸い、連中の意識は突入予定口に向かっている…これなら、俺でも…)

背後に忍び寄り延髄に手刀を一撃、返す刀でも二人目の強盗に同じく延髄目掛けて回し蹴りを放つ。
二人沈めたところで警官隊が10名程突入。遅すぎる上に一方方向から大人数で押し寄せるとは一体どういう了見だ。

守屋は辟易しながら3人目の敵に向かって駆け出す。
ガスが充満した図書館は視野が悪い上に遮蔽物の多いお陰で、派手に走り回っても気付かれないのがせめての救いか。

「う、動くな!人質を殺すぞ!」

慌てふためき狼狽するが警官隊は、そんなテロリストもどきの言葉に耳を貸すわけも無くジリジリと距離を詰めていく。

「や、野郎ども!見せしめだ!4~5人殺っちまえ!!」

だが、いつまで経っても銃声は鳴らない。

「は、早く殺れよ!!」

銃声の代わりに何かが空を裂く音と、肉が肉を打つ音、そして、自身の骨が軋む音が聞こえた所で意識を失った。

「お前で最後だ。」

崩れ落ちた男を睥睨し肩を竦める。

組織化された違法ギアとは言え、テロリストとは違う。
何らかの手段で手に入れたギアと火器の力ではっちゃけているだけだ。

第一、テロリストならスポーツギアを使用する事など絶対に有り得ない。
守屋一刀の父親、守屋剣の言葉を借りるのならば、スポーツギアは出来の良い玩具で兵器では無い。
こんな玩具を商売道具に使うくらいなら、売り飛ばしてブラックマーケットからビームダガーの一本でも買った方がマシだ。

窓の外では違法ギアの連中が使っていたアクト・メイレーンが見るも無残な残骸になり打ち棄てられていた。
三笠慶のクランや、加賀谷望のスカーレットと同時期に開発された最新鋭のスポーツギアで
違法ギアにしてしまうには勿体無い機体だが、いとも容易く撃破されている。

やったのは警官隊のパトロールギアのエイテンである。
パトロールギアなどと名を打ってあるが白黒のカラーリングをしているだけで、中身はれっきとしたアームドギアだ。
傷一つ付いていないエイテンはビームトンファーを片手に周囲を警戒している。

最新鋭のスポーツギアであっても、警察が使う数世代前のアームドギアにすら傷一つ負わせる事無く容易く撃破される。
それを分かっていながらスポーツギアでテロ行為を行うなど自殺行為以外の何でも無い。

だから、世間はスポーツギアによる犯罪者を違法ギアと呼び、アームドギアによる犯罪者をテロリストと呼ぶ。
そして、世間は何処と無く違法ギアを舐め腐っている。

ニュースでは警察のギアに一方的に破壊されるシーンしか映されない上に
守屋のように一般人に鎮圧される事もそれ程珍しい事では無く、何も守屋が特別というわけでは無い。

勿論、一つ間違えたら大惨事になりかねない事の方が多く警察や軍としては
喜び勇んで違法ギアと戦うのでは無く、さっさと通報してくれと民間人に要望を出すのだが
大抵の場合は事が終わってからの通報になる為、地域によっては残骸回収業者扱いされている事もある。

「それにしてもビーム兵器は好きになれんな…」

機体を穴だらけにされて地に伏しているアクト・メイレーンを見て呟いた。

奴はどんな気分でビームトンファーに貫かれたのだろうか?
普段ならば違法ギアの搭乗者の事など歯牙にもかけないのだが
同じビーム兵器を受けた者として妙なシンパシーを持ってしまったのだ。

どうも八坂高校襲撃事件以来、ビーム兵器を見ていると嫌な気分になる。
簡易型とは言えビーム兵器の恐ろしさを一度は我が身を持って体験している。

(やっぱり、アレからだよな…まずいな。完全にトラウマになっている。)

冷静になって自己分析をするが矢張り、怖い物は怖い。
背筋に嫌な汗が流れ、心臓がけたたましく鼓動する。

「霧坂、終わったぞ。帰ろう。」

ビーム兵器を持ってうろうろしているギアの近くに居たくないと心の中で付け足した。

「うん…守屋君、顔色悪いけど大丈夫?」

大丈夫じゃないから大丈夫な場所に帰りたいんだ。
なんて、口が裂けても言える筈も無く、霧坂からに背を向け大丈夫だと後手に手を振る。

お互い、色んな事を深く追求しあえる仲でも無い。

守屋が背中で大丈夫だって事にしておいてくれと語っているような気がして
何も言わずに霧坂の定位置である守屋の左隣に並び帰路に立つ。
教科書、ノート、参考書を開き守屋の自室で二人並んで試験勉強を始める。
違法ギアどものせいで今日はまともに勉強が出来ていない。

命は大切だが、この時期の高校生にとって試験の点数も同じくらい大切だ。

「そもそも…図書館なんかに行かず、最初からウチでやれば良かったんだよな?」

最初から家で大人しくしていれば変な事に巻き込まれ時間を浪費せず
嫌なモノを見て、嫌な気分にならずに済んだのだ。

「だけど、守屋君が居たから無事に終わったんだよね。
だから、今日はあの時間に図書館に居たのはきっと良い事だったんだよ。」

外の違法ギアはエイテンが周囲に被害を出す事無く無力化し
銀行や他のフロアに居たテロリストもどきも突入部隊により制圧され人質を無事に救出されていた。

しかし、間抜けな事に図書館のフロアだけは突入部隊が大失態を犯してしまったのだ。
運良く守屋がそれに逸早く気付き、行動を起こしたお陰で他のフロア同様、何事も無く片付いたのである。

守屋が居なければ図書館フロアでは大惨事になっていた可能性もある。

「ま、結果オーライではある…か。」

元々は他人を守る為にと持たされた力で人を救う事が出来た。
嫌な思いはしたが、自分の力で自分のやった事で救われた人が居るのなら、確かにそれもアリだ。

「今日は此処までにしておくか。色々ありすぎて勉強どころじゃないだろ?」

守屋は霧坂のペンが全く進んでいない事に気付いて勉強を中断する事にした。

流石の霧坂でも今日の出来事は余程、堪えたと見える。
それに守屋もビーム兵器を目にしてからと言うものの何処か落ち着きが無く
二人共、とてもでは無いが勉強をしようという気にはなれなかった。

「そうだね…うん。そーする。止めた!止めた!何か面白い番組やってないかなー?」

(勉強しないなら帰れよ。)

「あ、守屋君だ。」

自室の壁には図書館の中でテロもどき相手に大立ち回りをする守屋一刀本人の姿が映し出されていた。
そして、八坂高校襲撃事件当時の映像に切り替わり、今度はアイリス・ジョーカーが暴れる姿が。

「これは来年の入学者と、ギア部の入部希望者が増えそうだねぇ?」

「こんな受難体質の高校に入学なんて自殺行為以外の何でも無いだろうが。」

愛機がビームコートダガーで切られるシーンに切り替わる前にモニターの電源を落とす。
一日にニ度もビーム兵器を見る気にはなれない。

「ヒーローの前には必ず困難が立ちはだかるように出来るているんだよ。
でね。それを痛快に打ち砕いてハッピーエンドで終わらせるからヒーローなんだよ。」

どうやら、霧坂の目には敵を痛快に打ち砕いているように見えるらしい。
これまでに打ち砕いて来た困難とも言うべき戦いをフラッシュバックさせるが…
今ではすっかりビーム兵器恐怖症だ。何がハッピーエンドなものか。

だが、それすらも霧坂にとってはヒーローに立ちはだかる困難の内の一つになるのだろう。
今更、言い合いをしても仕方が無いので、あーそうかい。と肩を竦めて降参するしか無いのである。

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