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紫藤雪人の朝は早かった。

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 紫藤雪人の朝は早かった。
 双子の姉である由希音と二人暮らしの彼は、生活費を稼ぐために毎朝朝刊配達のバイトに勤しんでいるためだ。
 きょうも朝寒い中、変人ばかりが集う町内の各家に新聞を届けた――その大半が同じ学園の生徒である――雪人は、かじかんだ両手を温めるよう息を吹きかけながら、自宅の扉を開けた。
「ただい――ま”っ!?」
「お帰り雪人っ」
 ドアを開けたと同時に視界に入る姉の姿に、雪人は絶句した。
 笑顔で雪人を待っていた姉の由希音は、あろうことか、誠にあろう事か裸の上にエプロンだけを身につけていたのだ。
「な、に……やってんだよ姉さん!」
「裸エプロン、好きでしょ? 男の子だもんね……、雪人も」
「好きだけど――じゃなくて! そのままだと風邪引くし視覚的に危ないから!」
 なんせ由希音のクリティカルな部分を隠しているのは薄いエプロン一枚だけ。それさえ取っ払えば由希音の美しい肢体が露わになってしまう。
「……雪人がそんなに言うならやめるけど……、そんなに嫌?」
「嫌じゃない」
 即答だった。
「けど、こんな時に他の人とかがやってきたらどうするんだよ」
「例えば?」
 由希音の問いに、雪人は様々な人物を思い浮かべる。皆、ロボスレ学園に通う知人達だ。半分は変態だが。
「マナにミナ、加賀美に……オドレイ先輩とバギンズ先生とか……」
「双子の泥棒猫とアホ毛のちんちくりんと、オドレイさんと露出狂?」
「姉さんそれは酷い……」
 由希音の辛辣な物言いに、雪人は冷や汗を流す。姉さんってこんな人だっけ……?
「雪人は私のものだもん。渡さないわ、絶対に」
「……あ、そ、そう……」
 最近オドレイ先輩からやけに辛く当たられるのは由希音の言動が原因か……。
 何だかんだ言ってオドレイと距離が近い割にその愛情のベクトルは雪人に向いているのだ。オドレイが雪人の命を付け狙って通学路に地雷を設置するのも無理はない。
「……いや果てしなく無理あるだろ……」
「ねぇ雪人、まだ学校に行くまで時間あるよね?」
「え? あ、ああ、あるけど」
 ずい、と顔を突き出した由希音がクスリと笑った。その仕草に目を奪われるというか距離が近すぎてクリティカルに色々と見えゲフンゲフン
「じゃあ、それまで……、良いコト……し――」
「――ユキト! 下僕なら下僕らしく私たちの朝食を作りに来なさい!」
「お、お姉様! いきなりだなんて無茶がありますよ……」
 色々まずいことを呟き始めた由希音を遮るよう、勢いよくドアが開いた。
 そこから姿を現すのはマナ・エウリューデとミナ・エウリューデの白黒双子。雪人を下僕と言って憚らない姉と、いつも雪人を気遣ってくれる妹の凸凹姉妹だ。
「……出たわね泥棒猫」
「ユキネ……アンタ何して」
「これから雪人と良いコトするから部外者は出て行きなさい」
「良いコト――!? アンタ、まさか一線越える気じゃ……、ダメ、ダメよ! そんなのダメ!」
「……一線? 良いこと? なんですかそれ……?」
 由希音とマナがいがみ合い、ミナは二人の言葉に首を傾げる。
 うん、ミナはやっぱり清涼剤たりえる人物だ。雪人は少し安心した。
「ミナ、朝食は?」
「あ、まだです……」
「じゃあいっしょに食べようか」
「あ、はいっ」
 雪人の誘いにミナが破顔する。いがみ合う二人を置いて、雪人とマナは紫藤家を後にした。


「あ、あれ……? センパイがいない……」
「服など不要! そんな窮屈なものは糞喰らえだ! ははははははっ!」
「せ、先生……? って、何で裸――」
「人は裸で生まれてきたのだ! なぜ生まれた時本来の姿でいようとしない!? 私には理解不能だ!」
「私には先生の方が理解不能って言うか……」
「アホ毛君、君も一緒に脱がないか! なに、ちんちくりんだからといって私は君を邪険には扱わぬさ」
「脱ぎません……、後アホ毛ってゆーな! ていうか誰がちんちくりんだ! 気にしてることを!」


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