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Episode 02:鈍色チェイサー ~本日ハ厄日ナリ~

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Episode 02:鈍色チェイサー ~本日ハ厄日ナリ~


<カモン、サイクロプス>
 人差し指を立てて、クイっと引く。挑発だ。効果があるとは思えないが……ほら、微動だにしない。
<つまらないですね、まさに人形ですか>
 無反応。先程の一撃で警戒しているのだろう、こちらのセクシーコマンドーに全く耳を傾けない。むしろ無視して少女を追い掛けていきそうな感すらある。
 ここいらで一発ブン殴ってやりたいところだが、相手はパワータイプだ。反撃が恐い。
 無言の睨み合い。緊張が走る。
 痺れを切らした一ツ目――――サイクロプスが拳を振り上げた。
 同時にヘーシェンが大地を蹴る。
 つい先程までヘーシェンがいた地面にサイクロプスの拳が深く深くめり込んだ。丸太のように太い拳だ、どれほどの威力かと思ったが、なかなかどうして、これは――――まともにもらったらただじゃあ済まない。
<あら、意外と早漏なんですね。太くて硬くて大きいのに。……そぉいっ>
 背後に着地。振り向きざまに腰に一発、鉄拳制裁。
<ダメージ軽微>
 こうかはいまひとつのようだ。
 素早く後ろへ跳び、距離を開ける。……このままでは拉致が開かない。おそらく近くにいるであろう主に回線を繋ぐ。
『どうした、ピンチか、ピンチなのか。いいぞそのままスクラップになってしまえ。そして恐怖に泣きじゃくる姿を俺に見せるんだ』
<マスター、対象はどうやらあくタイプのようです>
 ろくでなしな主の口撃も、接近してきたサイクロプスの攻撃も、身を翻して華麗にスルー。飛び散った石や土が防壁に当たり、跳ね返る。
『わけがわからん』
<それが貴方の限界です。あーあ、こんな穀潰し、死んじゃえばいいのに>
『ついさっきひと仕事終えたばかりだけどな』
<働いたのは私ですけどね>
 口喧嘩をしながら器用に相手の攻撃を回避、回し蹴りを腰部に食らわせる。
 すんなり直撃。こいつ、バリアを張っていない。
<シット。ただの人形のくせに舐め腐っていますね、このクソ野郎>
『あぁ?』
<てめーの事じゃねーですマスタおごるふぁ>
 防壁を破壊して飛んできた拳を左腕で咄嗟に防ぐ。あまりの威力に吹き飛ばされ、木を数本薙ぎ倒して地面に叩き付けられた。
『おいおい……大丈夫かァ?』
<心配しないでください、惚れてしまいます>
『クソっ、手遅れかよ』
<貴方ほどじゃありません>
 軽口を叩いてはいるが、その実かなり辛い状況だ。体中から異音が聞こえてくる。
『仕事終えたばっかで疲れてるか』
<そうみたいですね。……というわけでマスター、何でもいいので武器の使用許可を>
 敵がゆっくりと近付いてきているのがわかる。その緩慢な動きからは、ありあまる余裕が感じられた。そうか、つまり自分は歯牙にもかけられていないという事か。
 ならばその過信と慢心、バラバラに打ち砕いてミンチよりも酷い事にしてやろう。
『いいだろう。実体化のタイミングはそっちに譲渡する。……ところでお嬢さん。この台、乱入は歓迎してますかね』
<歓迎します。いつでもコインをどうぞ>
『よっしゃ、仕事の後のひと暴れといくかァ! ほらよヘーシェン、素敵な武器だ!』
 金属と金属がぶつかり合ったような、そんな澄んだ音が響くと同時に、右の掌に光の玉が現れた。それを握って、情報を取得する。
<……なるほど、グッチョイです>
『だろう? じゃ、俺が行くまでに終わらせるんじゃないぞ』
 主の言葉に、しかしウサギは悪戯っぽくこう答えた。
<さあ……どうでしょうね?>


 ♪  ♪  ♪


 遺跡の入口は森の真っ只中に、まるで人の目を避けるようにひっそりと存在していた。
 ツタに覆われた小さな入口に小さな身体を滑り込ませる。
 周囲の様子を伺い、フードを被って歩き出す。どこか身を隠せるところは無いかと、暗がりの中、早足で。
 荒れ放題の外観とは裏腹に、遺跡の中は広く、こざっぱりとしていた。元々はどんな施設だったのだろうか、皆目見当がつかない。そして、その無機的な内装はどうしようもない冷たさを感じさせて、
「……少し、寒いかな?」
 いや、寒いというよりも寒気か、これは。
 何かに見られているような、それでいて纏わり付くような、不快な感覚。
「なんなの、この感じ……」
 べたべたして、気持ち悪い。今にも胃の中にあるものを吐き出してしまいそうだ。
 自然と身体が震える。怖い、こわい、コワイ。
 こういう時に下手に大きい声が出せないのは辛い。恐怖を発散できないからだ。
 ――――頼れる相棒が欲しい。
 隣に誰かいたら、きっとこの恐怖も和らぐだろう。
 ――――ああ、頼れる相棒が欲しい。
 ふと、先程自分を助けてくれた白いウサギのオートマタを思い出す。彼女にマスターはいるのだろうか。
 もしも……もしも、だ。もしも彼女が“野良”だったなら、彼女と契約を結ぶのも良いかもしれない。
「――――なんてね」
 そんな事自分にはどだい無理な話、夢物語だ。
 それは何故か?
 オートマタと契約をしたとしても、自分には彼等にエネルギー……マナを供給してやる事ができない。それができるのは“神子”と呼ばれる者だけ――――才能がある者だけだ。自分にそんな才能は無い。
 そしてマナが供給されない場合、彼等に待っているのは緩やかな“死”。つまり野良の時と状況はほとんど変わらない。契約を結んでくれる筈が無いのだ。
 奥に進むにつれて、残骸が目立つようになってきた。
 崩れた壁や天井、あちこちに散乱するオートマタの死体。
 それらが崩れるか崩れないかの紙一重のバランスで積み重なっていたりする。
「……崩れてこないよね、これら」
 恐る恐るその傍らを通る。勿論、早足で。
 その時だ。
「今ちょっと揺れた!?」
 振動、確かに感じた。入口のほうからだ。
 もしかして、追い付かれたんだろうか。
 だとしたら、白いウサギのオートマタは……!
 首を横に振って、走り出す。
「あー、もうっ! 今日は全然いい日なんかじゃなかった!」
 そう。今日は、今日は、
「……今日は、厄日だ!」


 ♪  ♪  ♪


 精神――――機械の自分にそんな概念があるのかどうかはさておき――――を統一し、レーダー全開で敵の位置を探る。
 十時の方向に目標を確認。
 足にめいっぱい力を込めて、前方に全力で跳ぶ。
 大きく振りかぶるその手には光。
<サブスタンティエイション>
 光が弾ける。そして彼女の手に、巨大なハンマーが現れた。
 強襲は、一撃が全て。勢い任せで――――!
<打つべし!>
 ガツンと一発。強烈な一撃がサイクロプスの右腕を吹き飛ばす。
<右腕部損失。アア貴様、マダ動ケタノカ>
 あたかも今気付いたかのようにサイクロプスが言う。知ってたくせに。というか一撃で葬れなかった。無念、極端に無念。
<――――窮鼠猫を噛む。まあ、追い詰められちゃあいませんでしたけどね>
<フン……強ガリヲ言ウ>
 振り下ろされた重い拳を躱し、左側へ回り込む。そのまま胴体にハンマーを一発。障壁を破壊してサイクロプスのボディに衝撃が走る。
<グッ>
<そちらこそ強がりですよね、左側に死角ができてますよ。それともピッコロさんの細胞でも受け継いでますか。戦闘力を犠牲にして再生でもするんですか>
 よろけたサイクロプスを蹴り倒し、踏みつける。
<これで詰みですね>
 その一ツ目を破壊せんと、巨大な鎚を振り下ろす。
<――――残念、私ハキングジャナイ>

 ぐしゃっ。



 次回に続くゥ!

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