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パラベラム!~開拓者達~ 2Page

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ParaBellum

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 地の底から響いてくるような低い声、アーベルはその短い足を器用に動かしてリシュウの方を向き、右手を胸に宛てた。
「シールドを、私達を守ってください」
<御意>
 次の瞬間、ユーリを乗せたバギーとその傍に立っているリシュウを四角く囲うようにして、青い光の壁が出現する。これは……マナによる設置型の防壁!
 ユーリが驚く暇もなく、自分達の前方で地面が割れて、もう一匹のマウルヴルフが地上に姿を現した。
「お、おい……!」
 目眩く展開にユーリは不安を隠しきれず、思わず声を上げてしまったが、
「大丈夫ですよ、大丈夫」
 リシュウは余裕の笑みを口の端に浮かべてこう言うのだ。

「アーベルの『防御』は凄いんですから」

<……! 昼間ト同ジ……ダガ、アノ時ハ破壊シタハズ>
 先刻のオルトロスに破壊されたマウルヴルフよりか、少しはマナの残量に余裕があるらしい野良は、アーベルが現れることを予期していなかったのか驚きの声を上げる。
 リシュウはその反応にふっと笑って、
「うちの優秀な整備士のお陰です、それに破壊されてなどいませんよ、苦し紛れの一撃がやたら派手に爆発したように見えただけでしょう」
 アーベルは野良に向き直り、両手をだらりと下げた。
<主よ、こやつを破壊すればよいので?>
 キューブ状の頭だけをグリンと後ろに向けて問う。
「破壊……というより機能停止させてください、可能な限り原形は残してね」
<仰せのままに、我が主>
 モノアイが再び野良に向けられる、マウルヴルフはビクリとしたがそれでも、戦闘体勢を取ったようだ。
 野良の背中が開き、中から小型のガトリング砲が二挺出現する。
「逸らし、及び兵装のみを狙ってアンカー発射」
 リシュウが指示を出すと、アーベルの正面に光の壁が、斜めに出現する。
<貴様トテ機械人形ダロウ!ナゼ、人間ノ味方ヲスル!>
 野良は叫びながら砲身を回転させ、弾を発射。狙いをつける必要もなかった、何故ってあまりにも的が大きい。
 だが、その弾がアーベルに届くことは、決してない。
 弾の飛んでくる方向に対して斜めに設置された光の壁に、威力が足りずに射線を逸らされて明後日の方向に消えていく。
<…………クッ!>
 埒が明かないと判断した野良は弾を発射するのを止めた、次の瞬間、

 ガトリング砲が丸ごと二挺、根本から吹き飛ばされていた。

<何……!?>
 もしも機械人形に表情があったなら、信じられないという顔をしているだろう、野良は何が起こったか理解しようとし……そして理解する。
 アーベルの左腕が根本から伸びて、先端の猛禽類を思わせる巨大な爪が、精密にガトリング砲だけを吹き飛ばしたのだ。
 ガシャン!と大きな音を立ててアーベルの左手が身体に引き寄せられる。
「グラップ、アンドプル」
 間髪入れず、今度はアーベルの右腕が伸びて――――
<!! シマッタ……!>
 マウルヴルフは横っ腹を三本の爪で鷲掴みにされる、あまりの馬力に装甲がへこんで穴が開き、爪が食い込んだ。
<ガ……ギッ!?>
 それだけに留まらず、容赦のない力でアーベルの元へ引き寄せられる。
 その状態から再びアーベルの左手が、マウルヴルフの頭部を掴んだ。大地から足が離れてしまい、モグラは手足をバタバタとさせる。
 リシュウはそれを見届けると、自分自身が左手を開いて前に突き出し――――

「ハング」

 握りしめるジェスチャー、ほぼ同時にアーベルも、
<その質問は、愚問である>
 メキャリ、と野良の頭部をいともたやすく握り込んだ。
 沈黙する対象、頭部の各所から噴き出すマナ。アーベルはゆっくりとマウルヴルフを地面に下ろしていく。
 パン、とリシュウは手を叩き、足元のランプを持ち上げる。そして、
「お疲れ様です、アーベル。シールドを解除してください」
 アーベルに労いの言葉を掛けた、と同時にユーリ達を囲んでいた光の壁が消失する。
<勿体ないお言葉です、主>
「いえいえ、頼もしかったですよ……それじゃ」
 リシュウはアーベルの脇腹辺り(?)に緑色の宝玉が付けられた方の腕輪をしている左手を宛てる。
「戻ってください、アーベル」
<御意>
 次の瞬間、アーベルの機体が眩ゆい光に包まれたかと思うと、リシュウの左手に吸い込まれていった。
 光を吸い込みきった後に、彼は手の平を見つめて閉じたり開いたりする。
「圏外だと地脈がないから直接取り込むしかありませんか……ちゃんと宿りましたか?」
<心配には及びませぬ、主よ。私はきちんとここにいますゆえ>
 聞こえてきたのは、リシュウの左手の宝玉から。
 このようにオートマタは、機械の身体が顕現していない状態でも会話をすることが可能だ。
「…………」
 ユーリは自分でも無意識に身体を強張らせていたことに気付き、脱力する。
 ――――なんだか、慌てていた自分が馬鹿みたいだ。出発前に「オルトロスと自分だけで十分だ」みたいな事を喋ったことが悔やまれる。
 車の運転席に搭載されたデジタル時計を確認すると、午前の2時を回った所だった。ここから帰るまでが一時間かかるとして……なんとか時間内には帰れそうだ。
 だが、時間も時間、人間の昼行性動物としての本能が今は寝る時間だと主張しているのか、予期せぬ欠伸が出てしまった。
 それをリシュウに見られてしまったのは、本日最大の失態と言える。
「ふふ……子供は寝る時間、といった所ですか」
「あー、もう、うるさいな」
 バギーを降りて、リシュウの近くまで歩くと辺りを見回す、と言っても真っ暗でほとんど何も見えなかったが。
「あ、来た」
 ガシャン、ガシャンと荒野の大地を一歩一歩踏み締めながら歩く奇妙な形のシルエットが、こちらに向かってくるのを見付けた。
<おーい!持ってきたぜー!>
 それは確認するまでもなく、背中を荷台に変形させたオルトロスが、マウルヴルフの機体を背負っている姿であって。
 それは恐らく、オルトロスが四足歩行するオートマタだからこそ出来る芸当だろう。
 楽々と運んでいるあたり、世界ではオートマタが戦闘だけでなく、工業や産業における作業用要員として用いられるのも頷ける気がする。
 これから更にオルトロスには、もう一体のマウルヴルフも上乗せして運んでもらう。荷物の方が圧倒的に大きいその様はちょっと見た目に危なっかしいが、本人曰く「マナさえ足りてればこの程度、問題ない」のだそうだ。
 ちなみにアーベルは……確かにイメージとして荷物運びなら得意そうに見えるのだが、いかんせん歩く速度が遅い。運んでいる間にマナを大量消費してしまうため、専ら荷物運びはオルトロスである。
「それではユーリ、オルトロスに荷物を縄で固定するので手伝ってください」
「……はいはい」

 ――――こんな生活を始めたのはいつからだっただろう、リシュウが運転するバギーの後部座席で自分はうとうとしながら、そんな事を考えるのだった…………



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