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パラベラム!~開拓者達~ 6Page

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匿名ユーザー

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バギーを走らせること四刻半、自分達の暮らす区画を抜けて整備の為されていない道を突き進むと、左右の廃墟に切り取られて見える範囲の狭い前方の空に、幾本もの細い煙が上がっているのが目に入る。あれが見えてくれば目的地はもう近い。
 道中見かけた人間は数えるほどのみ。どれも同業者に近い雰囲気を持っていた。
 人気のない、コンクリートの塊を窓の部分をくり抜いただけのような様相を呈した廃墟の陰に車を回り込ませると、リシュウは丁寧にブレーキを踏み込んだ。ゆっくりと停止するバギー。
「さて、ここから先は歩いていきましょうか」
 車のキーを引き抜いて、リシュウとユーリの二人はドアを開けると灰色の大地に降り立つ。ちなみにバネッサは同伴ではない。
 近隣のギルドでの情報収集を彼女はやってくるそうだ、他にもやらなければいけない事としては、マウルヴルフの解体作業が全く進んでいないので、その辺も何とかせねばならない。
 ちなみにギルドというのは、圏外に住む神子達のために設けられた、『主に機械人形の力を必要とする仕事』がまとめられている場所で、そこで依頼を請け負ったり報酬を受け取ったりする事が出来る場所だ。
 神子達の職業安定所と言えば早いだろうか、そこは普段から様々な神子のたまり場になっていて、有用な情報も多く入って来るのである。
 しばらく歩くと人々の賑わいが耳に届いてくる、同時に――――異臭。
 それは先ほど車から見ることの出来た、煙の発生地点に近づくにつれて強さを増しているようだった、にも関わらず彼らは無言で、歩みを止めたりもしない。
 やがて、賑わいの中心であり煙の発生地点でもあるその場所まで二人はやって来ると、ユーリは『それ』を見上げて呟いた。
「よくやるよなぁ、こんな所で」
 視界に大きく広がるのは、全体に黒く見える様々な色を内包したゴミの山。
 煙はその、ゴミ山の各所から発生していた。その正体は、ゴミに含まれる成分が他の成分と化学反応を起こして発熱しているものが殆どであり、一部毒ガスに近い成分の煙も発生していたりする。
 その様子から、そのゴミ山の事は世界共通の言語で『スモーキーマウンテン』と呼ばれていた。
 圏内、圏外を問わず両方から出されたゴミを無差別にここに投棄している内に、いつしか此処はそんな場所へと姿を変えていたのである。
 とはいえ圏内から出されたものが殆どだ、経済の発展だけに躍起になっているようなこの国は、発展のさなかで出された廃棄物の処理に力を注ぐだけの余裕はない。
 ちょうどここは圏内と圏外の境目にあたり、神子、普通の人間が関係なく訪れる場所でもある。それ故にここでは、様々な商品が路上販売される市場になっていた。
 しかしいくらなんでも、ここで食品が取り扱われることは少ない。何故なら不衛生だからだ。
 生活に役立つ用品が売られているのである、電球や燃料炭など、大概の消費財がここで揃ってしまうくらいにはこの市は大きい。
 出発する直前に、マナの補給ついでで何か買ってくるものはないかとバネッサに聞いたが、タイミング悪く特に切らしそうな物は無いそうだ。その代わり……
「自分の好きな物を買ってきてもいいって……ってもこれだけじゃな」
 ユーリはポケットに突っ込んだ手を取り出して広げると、そこには数枚の汚れた貨幣があり、互いに擦れあってチャリチャリと音を立てていた。

 手渡された小遣いの量に文句を言うつもりはない、ちょうど今がパーツを売る前で金欠なだけだ。
「買うとしたら本でしょうか、掘り出し物市なら安いでしょうし」
 圏外では娯楽を得るのにも一苦労だ、圏内で捨てられた本などをまだ綺麗な物では拾い集めて売り物にしている店も有るので、ユーリ達はそこをよく利用している。
 が、まあそれは後回しだ。
 ユーリとリシュウは市場を行き交う人々を器用に避けながら進んでいくと、ようやく圏内に入ったらしい。リシュウが眉をピクリと上げる。
「ここからが圏内、ですね。目立たないように注意していかないと」
 足の裏の感触で地面の下を地脈が流れているか分かるらしいリシュウは、バネッサの言葉によると彼は神子の中でもかなりマナ操作技術に優れる方なのだという。
 実際自分もそう思う、今までに彼がオートマタの身体をマナである粒子状態から『顕現』させる場面は何度か見てきたが、失敗したところは見たことがない。
 ――――そういえば自分、リシュウの過去ってどんなだったのか知らないな。
 リシュウ自身、バネッサに拾われた身だと語っていたのは朧げに覚えている。だが、詳細は知らなかった。
 今度また、暇な時に聞いてみるのも良いかもしれない。
 そんな事を考えていると、前方から四人組の恐らくは『普通の人』と思われる男達が歩いてきた。
 ここまで来ると、神子は殆ど歩いていない。リシュウ達が『異質の存在』として扱われるのが当たり前の場所となる。
 リシュウが今さっき、目立たないようにと言ったのはそれが理由だ。
「…………」
 さりげなくリシュウは、腕を組んで着物の袖口に両手を隠し、宝玉の嵌められた腕輪が露見しないようにして歩く。
 すれ違う瞬間、リシュウの少し風変わりな服装に目線を向けられたような気がしたが、それだけだったようだ。
 少しヒヤリとしてしまう。
 ユーリの服装には何ら特徴はないのだが、彼が腰に巻き付けているポーチの中には数個の煙幕弾が常備されていた。これが身を護るためとはいえ、持っていると思わず使ってしまいたい衝動に駆られてしまうのは頂けない。
 加えて服の下には六発式リボルバーマグナムが予備弾無しで隠されていた、野良を怯ませるにはこれだけでも十分な威力を持つ。
 リシュウは再び腕を袖口から取り出すと、少し離れた場所にある風化しかけた建物を指差して、
「あまり車から離れても面倒ですね……あの廃墟の中に入りましょうか」
 そう言った。指差された方を自分も見ると、確かにあの辺りは人気も無く、建物の中ということが野良にも見つかりにくそうで悪くはないかもしれない。
 二人は人目につかないようにしながら路地裏に駆け込んだ。その途端、日の光が左右の建物に阻まれて届かなくなり、暗くなる。
 先刻リシュウが指差した建物に近道しようと、その路地を抜けようとして、ユーリはピタリと立ち止まった。
「止まって。……野良がいる」
 人間より二回りも大きい二足歩行する機械人形がゆっくりと目の前を通り過ぎた。細身でしなやかな脚部を持ち、頭部には小さな三角形のセンサーを二つ持つその姿……フェーレス(猫)型らしいな。


 野良は進んで普通の人間の前に姿を現すことはしない、大概の人間は野良を恐がって逃げ出すし、メリットが見当たらないからだ。
 よって、圏内でありながら人の寄り付かない所に野良が集まる傾向が有る。
 普通の人間にとって神子のマナ供給行為は、野良を呼び寄せるだけの危険な行為でしかない。故に神子は人前で堂々とそれを行うわけにはいかないのだ。
 必然的にここで出会った人間が神子である可能性は高いという事になる。それを野良は知っているので、見つかってしまったら最後、即座に攻撃される事はないにせよ、神子かどうかを確認されるのは目に見えていた。
 見つかるわけにはいかない。
 幸いにも今日は日差しが強く、地面が熱せられて気温が高い。熱源探知式のレーダーを起動されても精度は低いはずだ。
 フェーレス型のオートマタが遠くまで行ったことを確認すると、二人は通りを素早く駆け抜けて、目的の建物に転がり込むようにして入り込む。
 素早く起き上がって周囲を確認――――よし、野良や人の気配はないな。
 背の低い建物が立ち並ぶこの一帯はかつて、住宅街だった所だ。しかし、時代の流れに沿ってライフラインをより得やすい所に人々は住まいを移したのだろう。
「では、始めようかと思いますが……」
 そう言ってリシュウは部屋の中心近くに移動すると、片膝をついて両手を床に付ける。
「どれくらい掛かる?」
 壁に張り付いて、窓ガラスの無くなった窓から外を警戒するユーリが短めにリシュウに聞いた。
 リシュウは元から細いその目を閉じて精神統一を始める、深呼吸を繰り返しながら、
「三分……と言いたい所ですが、一分で終わらせます。感づかれそうになったら呼んで下さい、すぐに中止しますので。では」
 口を引き結ぶと、リシュウは両手に意識を集中した。次の瞬間、
「……アクセス開始!」
 床から吹き出す真っ白なマナの奔流、それはあっという間にリシュウの身体を覆い隠し、天井近くまで吹き上がったマナが再び落下するその先は、両手の腕輪。
 部屋の中が暗いため、余計に眩しく見える。
「…………!」
 辺りが騒がしくなったような気がした、早速感づかれたか……!
 窓の外を見ると、向こうの建物の屋根にフェーレス型のオートマタが立って辺りを見回していた。危なげない動きで隣の建物の屋根に跳び移っていく。カラーリングの違いからさっき見たものとは別個体のようだ。
「頼む……来るなよ……」
 しかし、そうは問屋が下ろさないというのがお約束。
 今度は反対側の、自分達がこの廃墟に転がり込んだ扉の方にオートマタの気配を感じた、即座にそちらへと向かう。
 リシュウがハッと顔を上げたようだったが、
「続けてていい!」
 マナ供給の継続を促して建物の外に出る。ただし、相手からは見えないようにして。
 建物のすぐ近くをうろうろしていたのはカーネ(犬)型の野良オートマタ、犬は鼻が良いからな……バレるのは時間の問題だろう。
 野良は壁沿いに機械の鼻をクンクンと動かしながら歩いている。こちらには背を向けていた。
 ――――ユーリは物音を立てないように注意しながら腰のポーチを開けると、中から煙幕弾を取り出す。それの詮を引き抜くと……
「……そらっ、あっちへ行けっ」
 振りかぶってカーネ型の視界に入るように投擲した。ある程度飛んだ所で灰色の煙が吹き出し、綺麗な放物線を描いて遠くの建物の間に消えていく。
 それを一瞬目で追った野良は、間を置かずに走り出した。赤色のツインアイがギラギラと輝いていた。
 冷静に考えてみれば、投擲物が飛んできた方向を先に確認しても良さそうなものだが、マナ不足による思考力の低下か、はたまた犬が持つ本能によるものか、カーネ型の野良はそこまで思考が及ばなかったようだ。
 ここまでの経過時間は約三十秒、あと半分といった所か。
 辺りから野良の気配は消え失せる、一応警戒は怠らずに一旦建物の中に戻ると、リシュウが先刻よりもさらに凄い勢いでマナを地脈から汲み上げていた。なんだかもう、リシュウが光の塊になってしまったかのようである。
「……ううっ……く……」
 当のリシュウはというと、険しい表情は変えずにこめかみをヒクヒクさせて、今にも血管が浮き上がりそうだった。神子ではないユーリにはその苦労は分かりかねるが、それでも思わずその様に見入ってしまい……
「…………!!」
 ダァン!と大きな音を立てて天井に何か重い物が着地した感覚があった。リシュウの集中力がそれで途切れることはなかったが、ユーリは嫌な予感がして建物の外に走り出る。
「そう簡単にはいかせてくれないか……!」
 やはりというか上を確認すると、この建物の屋根の上にはさっきやり過ごしたフェーレス型の野良オートマタが着地していたのだった。

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