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Episode 02:例え僕とのすべてを忘れる日があっても。

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だれでも歓迎! 編集
「それなら私達に依頼していただくというのはどうでしょう!」
 ぱちんと手を叩きながら、まどかが提案した。
<依頼かぁ……。だけど僕、お金持ってないんだけど、どうしよう>
「なら、身体で払えばいいんですよ!」
 にこりと笑いながら人差し指を立てるまどか。顔はかわいいが、言ってる事はひどくえげつない。ついでに言うと、本人に自覚はない。
<え、か、身体で!?>
「に、肉体労働の事だよ! ……肉体労働の事だよね!?」
 悪い人達だと思われないように遥がわたわたとフォローするも、遥自身も新参者なのでフォローし切れない。
 実は本当にそういう事をしているんじゃなかろうか――――なんて、悪い考えが一瞬だけ脳裏をよぎって、ぶんぶんと頭を振る。根拠もないのに何を考えとるんだ、と遥、心の中で反省。
「はい、肉体労働の事ですけど……どうかしました?」
「だ、だよね!」
<びっくりした……>
  不思議そうに首を傾げるまどかと、ほっと胸を撫で下ろす遥とタウエルン。
<それなら喜んで依頼させていただきます、オーナーさん>
「ありがとうございます! よろしくお願いしますね、タウエルンさん」
 まどかに続いて、他のメンバー達も口々歓迎の言葉を述べていく。皆一様に笑顔で。人が自動人形を笑顔で迎え入れる――――自身の世界では珍しい出来事に、存在しないはずのタウの涙腺が確かに緩む。
<どうしましたか、タウエルン>
<ごめん、リヒター。なんか涙腺緩んじゃって>
 自嘲気味に冗談を言ってみたタウエルンだが、一方冗談を言われたリヒターは、
<自動人形には涙腺があるんですか>
 ――――かなり本気で驚愕していた。


■Tuern×Para Bellum!□
てのひらをたいように
Episode 02:例え僕とのすべてを忘れる日があっても。


■Chapter 01:それは、まるで不気味な合唱のように。


 やおよろず一行+タウエルン+捕虜は、早速二手に別れてタウエルンのマスターであるショウイチの捜索に乗り出した。善は急げ、である。
 メンバーはAチームがタウエルン、リヒト、しろ、ライにおまけで捕虜の男(うるさくなってきたので再度気絶してもらった)。Bチームがまどか、たま、遥、リヒター、リタ……と、男女でがっつり分断された。
 ちなみにチーム分けの方法はあみだくじだ。
<えーっと……チーム分け、こんな方法でいいの? 男女で真っ二つな気がするんだけど……>
 そんなタウに、リヒトがチッチッチ、と舌を鳴らしながら人差し指を左右に振る。
「甘いぞ新入り。むしろ向こうに戦力の大半を持って行かれたと言っても過言じゃあない」
「はっはっは、ウチの女の子達は無駄に逞しいからね」
「遥ちゃん達が規格外なのはわかるけど、なんか僕、男として情けないよ」
<私とリヒターさんが入れ代わってたら完璧でしたね>
 一度誰かが口を開くと、他も一斉に喋りだす。まるでシューティングゲームのように濃密な弾幕に、新鮮な気持ちと戸惑いを感じるタウエルンであった。
「しっかしひたすら何もないね。ずっとこんなんなら、すぐに見つかりそうな気もするんだけど」
 緑地帯のド真ん中にぽつりと真っ赤な荒野が広がっているという珍妙な光景を見て、やれやれとライ。
「まあ、ゆっくり探そうぜ。幸いこっちには乙女の肌より敏感なレーダーを持ってるうさぎさんがいるからな」
<私はその乙女でもありますが何か>
 自分で乙女って言うもんじゃねーぞ、と笑いながらリヒトがシロを小突いた。
<あはは……こんな事になって混乱とか起きないんですか?>
「まあ、色々と大変な事になりはするだろうね、アウロラは農業の要地だったし。でも、ただ慌てるだけじゃ駄目って事は皆よくわかってるだろうし、僕達も今はできる事をするだけだよ」
 そう言って、ルガーがきりりとした表情を見せる。その瞳は、タウ思ったよりもずっと鋭かった。
<ショウイチがいれば、その点は何とかなるかもしれない>
「どういう事だい?」
<僕のナノマシンは、植物の活動を促進させる効果があるんだ。でも、ナノマシンを使うにはショウイチの許可が必要で……>
「なるほど」
 マナも動植物や機械人形に少なからず影響を与えるが、それと同じような物なのだろうか。一度リセットされた世界、自動人形と機械人形、アウロラ、彼の世界とこの世界には、何か密接な関係が――――
 ルガーが思考を巡らせ始めた矢先、視界の向こうに何かが蠢くのを見たライが声を上げる。
「今何か動いた!」
 全員が同時に反応。
「ヘーシェン、何がいるかわかるか」
<しばしお待ちを。……複数の生体反応がありますね、なんか虫みたいな。あと無駄に大きいです。なんかぐちゃぐちゃと不快な音も聞こえ……うわ、何ですかこれ。センサー全部カットしたい>
 普段は淡々と話すしろが嫌悪感を露にする。
<凄く、大きい、虫……!?>
 リヒトがステッキを巨大な虫取り網を変化させ、
「虫と聞いたら無視できねーな」
<ちなみに今の発言は無視して構いませんよ>
<え? あ、うん。虫といっても芋虫みたいなのだけど……>
「なんだただの王蟲か」
<つまり近くに腐海があるんですね>
<ナウシカ!?>
<森に帰すには蟲笛が必要ですね。土に還すには巨神兵が必要です>
「巨神兵ならここに二人いるじゃねーか」
<ボスも小さな巨人なので三人ですね>
 トリックスター二人に翻弄されまくっているタウを見て、苦笑いでライがルガーに囁いた。
「僕、時々二人のネタの展開に追い付けないんだ……今も一瞬何を言ってるのかわからなかった」
 はぁ、と憂鬱な溜息。
「いや、ライも何を頑張ろうとしてるんだい?」
 ――――ツッコミに精を出すのもいいのだが、そこまで頑張らなくてもいいような気が……ん?
 ルガーの瞳が、鋭利な刃物を思わせるように細くなる。
「みんな、ちょっと聞いてくれ」
 真剣なルガーの声に呼応してか、皆の顔が一様に真面目になった。タウも皆の変貌に驚きつつも、しっかりとルガーを見た。
「あの蟲達、こっちに来てる」


 ♪  ♪  ♪


 一方、女の子&リヒターチームは。
「暑い!」
 約一名、一条 遥がイライラしていた。黒杖が地面を穿つ。
「日陰がありませんからね………」
 額の汗を拭い去り、まどかがさんさんと照る夏の太陽を見上げた。
<マスター、私が日陰になります>
<まどか、私が日陰になってやろうか?>
 遥とまどか、それぞれの従者が同じタイミングで提案した。だが、二人はゆっくり首を振る。そして数十メートル先を元気にスキップしているプラチナブロンドを見る。
「リタちゃんに負けてられないからね……!」
「そうですね……!」
 負けず嫌い。二人の共通点だ。
<そうですか……気分が悪くなったらすぐにお知らせ下さい>
<まったく……無理はするなよ>
 しかし、だ。二機のオートマタは思う。
 ――――二人とも何と戦っているんだ。
 熱風が彼女らの肌を撫でる。ブラウニングの六月は、本当に暑かった。
「それにしても、ここまで何もないとすぐに見つかりそうな気がするんだけどねー」
「ぐぇ」
 近くの岩に腰掛けた遥がきょろきょろと周辺を見渡すが、人っ子一人どころか動くものは何ひとつとして見当たらない。ついでに大地には雑草すら生えてない。
 端的に表すなら、この大地は死んでいる。
 常識的な手段では、ここに緑を甦らせるなんて夢のまた夢だろう……まあ、素人考えだが。
「擬態してるんじゃないですかね!」
「あー……リタちゃん突然どうしたの?」
 リタが突拍子もない事を言うのはいつもの事だが、遥は未だそれに慣れない。というか、多分今後も慣れないだろう。
「ほら、マント被ってたらわからないじゃないですか!」
「あー……」
<なるほどな>
<確かにわかりませんでした>
「え? 私何かした?」
 皆の視線が自分に集中しているのを感じ、遥がどぎまぎする。が、すぐにその認識は間違いだったと目線で理解させられた。皆が見ているのは、遥のお尻の下の――――
「あ」
 皆が見ているのは、遥のお尻の下で荒野と同じ色のマントを被ってうずくまっている男性だった。その顔は、ついさっき写真で見たターゲットにそっくりで。
「えーと……ショウイチ、さん……?」
 すると、彼はじろりと遥を睨むと、うんざりとした口調でこう言った。
「違う、僕は……僕は、誠人だ」


 ♪  ♪  ♪


 もぞもぞと蠢くそれらは、近づくにつれて次第に大きくなっていった。
 体中に毒々しい模様の斑点をつけた巨大な芋虫。その醜悪な外見に、皆一様に顔を引きつらせた。
 そして信じられない事に、芋虫達は口々に幼子の声でこう言ったのだ。
「人族」
「人族だ」
「人族の兵隊カーストだ」
 それは、あたかも不気味な合唱のように荒野に響く。
 じりじりと距離を詰めていく蟲が放つのは、明確な敵意だった。明確な殺意だった。
「人族の変態バースト? しっかし、こんな大きな芋虫まで飛んできたのか……これ、アンタんとこの?」
 虫取り棒をくるりと回して、お馴染みのバスターソードに変化させる。
<ううん、僕の世界にもこんな化け物はいなかった>
 タウも腰を落として拳を構えた。
「……とにかく、ウチの女の子達には見せられないね、これは」
<もう見ちゃってる女の子がひとりいるんですけどね>
 さらにシロが逆関節に変形。ルガーら非戦闘員達が後方へ退避する。
 戦闘準備、完了。
「よし、俺は前から、ヘーシェンは上から……お客さん、あんたはどうしたい?」
<僕も前から……って、リヒトさん、戦えるの!?>
 するとリヒトはバスターソードを肩に担いで不敵な笑みを浮かべ、
「雑魚散らしくらいならな」
 リヒトはマナの防壁を自在に使ったトリッキーな戦法を得意としている。そこらへんの野良程度ならいとも簡単に蹴散らす事が可能だ――――ただし防御力が高い相手とは相性が悪いのでこの限りではないのだが。
<そんな事より、私アレに触れたくないんですが>
「よろしい、ならば強制コード発動だ」
<それは勘弁です>
 もぞりもぞりと接近しつつある芋虫達をひと睨みすると、皆が大地を蹴って跳ぶ。降り懸かる火の粉を払うために。
 誰よりも早くリヒトが敵陣に飛び込んだ。すれ違いざまに横一閃、粘性の体液を撒き散らして、蟲の上半分がくるくると舞う――――と防御力もそこまでではないし、どうやら大した驚異ではなさそうだ。
 所詮は幼虫、と言ったところか。……何の幼虫かはわからないが。
 続いて圧殺せんと身体を上げた個体をド真ん中から突き刺して輪切りに。並み居る蟲らを蹴散らしながら、ノンストップで走り続ける。
 傍らでタウエルンが一匹を掴んで引きちぎり、前方でシロが二匹を同時に踏み潰す。
 彼らは呪詛の悲鳴を上げ、次々と息絶えていく。が、芋虫達も黙ってやられているわけではない。
 残存する十匹が一斉に糸を吐いた。降り注ぐ白色のそれを払おうと剣を振るが、そうすればする程粘着質のそれは絡み付き、動きを制限していく。
「おうふ」
<あら>
<動きが……!>
 制限される。動けない事もないが、その動作は緩慢。
 虫達が二手に別れた。片やリヒト達を囲んでその動きをさらに阻害し、片や非戦闘員へのライとルガーに向かってグロテスクに身体をくねらせて殺到する。
「や、やば、こっち来た!?」
 顎がガシャガシャと奇妙な音を立てる。
「何か武器があれば抵抗するんだけどね」
 ルガーが顔色ひとつ変えずに、未だ気絶中の男を抱えて立ち上がる。
「さ、逃げよう」
 ダッシュ!
「いやいやいやいや、余裕ぶっこいてる場合じゃないっすよ!?」
「こういう時こそ余裕を持たなきゃね……笛でも鳴らしてみようか?」
「もうナウい鹿の話はいいよ!」
「じゃあそうだな……生贄を捧げて時間を稼ぐ」
 生贄……ああ、肩に担いだその――――
「冗談でもそういう事言うな!」
 そんなコントをしている間に、芋虫五匹が迫る迫る。そして、さらに事態は悪い方向へと進んでいく。
「ん……な、何だ……」
 抱えた男が目を覚ました。何故、よりによって、このタイミングで。ライがついにブチ切れる。
「ばぁぁぁぁぁ! そこのアンタ、何も言うなよ! 何も見るなよ! 目を閉じろ、耳を塞げ! あと喋るな! でないと殺すぞ、てか死ぬぞ!」
「うるせぇ、お前らに殺されるくらいならこっちから死んでや――――」
「ありがとう、君のおかげで僕達の寿命が少し延びるよ」
 ルガーが笑顔を浮かべると、男を地面に下ろす。同時に男の視界に入る複数多数の虫、蟲、ムシ。
 男、ノーリアクションでターンして無我夢中でダッシュ。
「すみませんさっきの発言撤回」
「それ見た事か!」
「はっはっは、言わんこっちゃない」
 芋虫達が散開して三人を追い立て、囲む。芋虫というのは意外と機敏なもので、脇を摺り抜けようとすれば確実に尾に打たれるだろう。
 こんなノリだが正直かなりピンチだ。というか、絶体絶命。
「死にたくねえよー!」
 男が頭を抱えてしゃがみ込む。
 ――――なんだよ、なんだかんだ言って結局死にたくないんじゃないか。
「誰だって死にたくねぇよ……!」
 ライにだって、まだ父を見返してもいないのに死にたくない。
 考えろ、ライディース。ここから脱出する手はないか考えるんだ……!
 そこで問題だ! この状況からどうやって脱出するか?
 三択―ひとつだけ選びなさい。

 答え① ハンサムなライディースは突如脱出のアイデアがひらめく。
 答え② 仲間がきて助けてくれる。
 答え③ 助からない。現実は非情である。

 次第次第に芋虫の包囲網が狭まり、三人を圧迫していく。
 答え――――③、答え③、答え③。
「畜生、親父……!」
 刹那、一匹の芋虫が高々と宙に打ち上げられた。
 光る紅のバイザー、ぴんと天を指した二本のアンテナ。
「まったく。えらく遅かったじゃないか、リヒト」
 ――――意外! 答えは②ッ!
 変身を完了し、仮面の戦士へ変貌したリヒト・エンフィールドがそこに立っていた。
<制限時間は残り10秒か……ズバズバッサリいくぞ、ヘーシェン>
<イエス・マイマスター。アクセル全開でいきまっしょい>
 大地を蹴って跳躍。空中で軽く身を捻り、
<イィヤッホォォォォゥ!!>
 着地ついでに一匹圧殺。衝撃波が発生し、周囲の地面を亀裂が疾走する。
 それに負けじと二匹が飛び掛かってきた。
パラベラム!
 山刀のグリップが空中から迫り出した。それを力強く握りしめ、引き抜くと同時に一閃。さらにもう一匹に後ろ回し蹴りを放つ。
 切り裂かれ、叩き潰され、二つが四つになった。
 続けて二本のナイフを召喚。それらに起爆用のマナを送り込み、投擲。それぞれの眉間に当たる部分に吸い込まれるように突き刺さり――――
 指パッチン、爆発、変身解除。これらが同時に起こり、あまりにも呆気なく戦闘は終わった。
 負担のせいか、息を切らしながらリヒトが言う。
「おう、大丈夫か? おまえら」
「はい。サンキューっす、リヒトさん」
「持続はともかく、腕は落ちてないみたいだね」
 よけいなお世話だ、とリヒトがルガーの胸を小突いた。
「な、何だよ……アンタ、何者だ!?」
 腰を抜かした男が叫ぶ。
「俺かい? 俺はただの」
<ただのロリコンです>
「ははは、否定できないぞこのやろう。……ところでアンタ、ちょっと一緒に来てくれねーか?」
 男はリヒトをギロリと睨んで、
「嫌だ、と言ったら?」
<三度目の気絶コース、あるいは放置プレイ……どれがいいですか?>
 気絶は痛い、放置プレイは芋虫に出くわしてしまうかもしれない。だとすれば、答えは決まっているじゃないか。
 苦虫を噛み潰したような顔で、男が返す。
「わかったよ……くそっ、卑怯者め」
「卑怯もラッキョウもあるものか!」
<メフィラスさん地球はあげませんよ。……あ、通信>
 しばし、沈黙が降りる。そして、しばらくして。
<みんな、無事?>
 虫の体液を拭いながら、タウが戻ってきた。
「ああ、無事だよ……それとね」
 何故だか少し浮かない表情のルガーに、タウが首を傾げる。
<それと?>
「ショウイチ君が見つかったよ……記憶喪失で、ね」


□Chapter 02


<ショウイチ!>
 ボサボサの髪、色褪せたジーンズ。そんな青年の姿を見、タウが駆け寄り跪ずく。
<ショウイチ、本当に僕を覚えてないの!?>
「いや、ちゃんと覚えてる。……そうか、アルタイル、ちゃんと動いてるんだな。タラベリアはどうした?」
<……!>
 アルタイル――――既に捨て去ったはずのその名前を呼ばれて、タウは愕然とする。
<違うよ、僕はアルタイルじゃない、タウエルンだよ!
「タウエルン……? 何を言ってるんだ?」
<もう破壊するだけの兵器じゃないって、僕にだって明日を咲かす事ができるってショウイチは教えてくれたじゃないか! どうしちゃったんだよ……どうしちゃったんだよ、ショウイチ!>
<落ち着け、タウエルン>
 子狐――――たまがタウの肩まで登ってなだめすかす。かつて悪名を馳せた大妖狐・玉藻前だとは思えない程、その声は優しく、穏やかで。
<たまさん……>
<おまえの気持ちはよくわかる。私だってまどかが記憶喪失になったら……ううっ>
「あのー、たまちゃんも落ち着いた方が……」
 苦笑を浮かべて、まどか。
<ああ、すまない。とにかく、まずは落ち着け。混乱させてどうする>
「な……なんだ? あなた達、一体……?」
<ほら言わんこっちゃない>
「とりあえず、自己紹介タイム再びだな。俺はリヒト、それと――――」


 ♪  ♪  ♪


 暗い暗い、闇の中。何も見えない、光のない空間にて。
<諸君、私だ。フラガラッハだ>
 キザな男の声響く。だが、誰からの返事もない。
<……誰もいないのか>
 キザっぽく言ってみるも、その言葉からは確かに寂しさが滲んでいた。
<す、すまない、少しマナの通りが悪くて反応が遅れてしまった……それで、どうしたんだ?>
 遅れて、中性的な声。
<フェーレスか>
 彼(彼女?)の声を聞いた途端、フラガラッハの声にハリが戻った。誰にも気付かれない程度だが。
<儂もおるぞ>
 樹齢数千年の巨木のような存在感と安定感を感じさせ、かつ世俗を知りつくしたかのような老獪な声。
<虎徹か……他の連中はどうした?>
<レオンは武者修業、トゥグリルはいつもの音信不通、ムジナは大妖狐の追っかけでブラウニングに行って憲兵に捕まっていたはずだ。そしてシュヴァルツは>
<『疲れたからしばらく休む』だろう? まあ、“機械人形殺し”とやり合ってほぼ無傷で帰ってきたんだ、彼女についてはまあよしとしよう>
 ここでしばらくのタメ。そして、
<それよりも、だ!>
 声を張り上げる。
<農業の街、アウロラに異常が発生したようだ。時空の歪みが起きた事から“奴ら”が関与している可能性がある。そこで君達にアウロラへ調査に向かってもらいたい。いけるな? フェーレス、虎徹>
<ああ!>
<呼び出しに応じた以上、元よりそのつもりだ>
 強気で答える猫と虎。
 それに応じるように少しの間を置いて、フラガラッハは毅然とした態度でこう締め括った。

□Chapter 02:――――それでは諸君、冷静にいこう。

 闇が晴れ、光が広がる。
 待ち受けるのは、様々な次元の住人が跋扈する無法地帯、混迷の赤い荒野。
 蒔かれた種から芽吹くのは――――


■Chapter 03:それが……駄目なんだ。


「説明ありがとう、状況は大体わかったよ……正直まだ半信半疑だけど」
 帰り道、トラクターに変形したタウエルンに牽引されたコンテナの中で事情を説明され、ショウイチ――――誠人が頷いた。
「お、俺には何が何だか……」
 男が狼狽する。突然「ここは別世界だ」なんて言われれば無理もない。
「つまるところが、アウロラの問題はアンタ達だけの問題じゃなくなったってわけだ。ああ、他はあんまり意識しなくていい」
 この事態への被害額は計り知れない。すぐに対処しなければ、これからもそれは増え続けるだろう。
<国、領、街、それぞれがしっかりと連携する必要があるな。元に戻す方法が見つかればまた別なんだが>
「下手を打つと国が傾きますね……その“マナ”ってので何とかならないんですか? 生命のエネルギーなんでしょう?」
 誠人が水筒の蓋を開け、傾ける。流れる水に喉仏が上下した。
「マナを集中させればある程度の成長促進は期待できますが、すぐに効果が出る、というわけには……」
 そもそも、この地域のマナの流れの管理者、なご なごみが許可してくれるかどうかの保証もないし、アウロラにマナを集める事で他の地域に悪影響が及ぶ可能性だってある。
「早く解決の方法が見つかるといいんですけどね」
 表情には出さないが、ここ、ブラウニング領のお姫様であるまどか・ブラウニングはあまり心穏やかではいられない。
「解決の方法、あるんだよね、タウエルン」
<……はい>
 まどかの浮かない顔が一八○度切り替わった。コンテナから勢いよく身を乗り出し、タウに問う。
「本当ですか、タウエルンさん!?」
 鉄壁の守りを誇っていた、まどかの長いスカートが翻る。
「まどかさん、ぱんつ見えますよ!」
<ほう、黒か……珍しいじゃないか>
「きゃあっ!?」
 それを見て、リタが大声で忠告し(※本人に悪気はありません)、たまが感嘆の吐息を漏らし(※これでも生きた伝説です)、まどかが耳まで真っ赤になる(※ちなみにこの下着はお母さんが選んだものです)。
 そして、他のメンバーも、
「わぁ。まどかちゃん、色っぽい……」
「ぼ、ぼぼぼ僕は何も見てないっすよオーナー!」
「大丈夫だ、俺は小さき存在にしか興味はないからな!」
<はあ、おいろけでファンをげっちゅですか。汚いなさすがお姫様汚い>
<まどか・ブラウニング、何かありましたか?>
 各々が別々の反応をする(※一部を除いて悪気はありません)。
「も、もう! からかわないでください!」
<大丈夫だ、まどか。とても似合っているぞ!>
「そういう意味じゃありません!」
 何故だか興奮しているたまの頭を人差し指で叩いて、まどかは尋ねた。
「……そんな事よりタウエルンさん、解決の方法があるって、どういう事ですか?」
<ルガーさんにはさっき言ったんだけど……。僕とショウイチなら……僕が搭載したナノマシンなら、それができるかもしれない>
 タウエルンをタウエルンたらしめている、ナノマシンによる成長促進機能なら。
「おい……俺達に機械を頼れっていうのかよ!」
 声を張り上げた男にたまが体当たりを食らわせた。
<いい加減にしろ。お前達だけの問題じゃないと言っただろうが、馬鹿野郎が>
「ま、まあまあ、たまちゃん。……すみません。でも、そうしないとみんなが困っちゃいますから……」
「そうそう、お詫びにウチの新人が脱ぐから。な、頼む!」
「え、私!?」
 リヒトにずいっと前に押し出され、遥がうろたえる。
「こんなチビの裸なんか見て誰が得――――」
「そんな事言っていいのか? 今度は骨折られるかもしれないぞ」
「ああっ、すみません、すっごい見たいです!」
「や、それはそれで困るんだけど……というか、話題逸らしちゃだめでしょ、師匠!」
 賑やかなのはいいのだが、こういう所は玉に傷だ。
「それならショウイチさんは見つかったから、今すぐにでも――――」
<それが……駄目なんだ>
 力無いぼやき。
<彼をショウイチなんだって、システムが認識できないんだ……>
 壊れてしまったのかとも思ったが、システムに異常は見られなかった。
「じゃあ、この話は彼の記憶が戻るまで保留かな。僕達の側も準備にそれなりの時間を要するし、その間ゆっくり療養すればいいと思うよ」
「そうですね……ではとりあえず、家に着いたら一旦休憩の後、ガレージに集合してください」
 まどかが一同に、凛とした声音で指示を飛ばす。
「――――明日の朝、私達は城塞都市ブラウニングへと出発します!」


 ――――次回に続くぞい!


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