創作発表板 ロボット物SS総合スレ まとめ@wiki

<2,奇妙な旅人?>

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sousakurobo

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だれでも歓迎! 編集
「遅いな、トニー……」
頬杖をつきながら、メルティは夫……になる予定のトニーを待っている。
シュワルツに農作物の納期延長を頼みに行って、もう2時間は経つ。どう考えても何かあったとしか思えない。
既に日は落ちている。あのシュワルツが素直にトニーの要望を聞き入れるとは思えない。小言程度で済めばいいのだが……

「ごはん作っとこうかな」
席を立ち、メルティは夕食を作る為台所に向かう。本当は動いていないと不安で押しつぶされそうになるからだ。
最近日照りが続く為、思うように農作物が育たない。その為農作物が売れず、シュワルツの定めた納期日に間に合わない。
けれどどれだけトニーが投書で状況を説明しようとしても、、シュワルツが実務が忙しいとして聞き入れる事をしない。
挙句納期を守れという警告文を毎日の様に郵便に入れてくる。

そして今日、シュワルツが酒場に飲みに行くと聞いて、トニーは直談判しに行ったのだが……帰ってこない。
まさかと悪い考えが浮かんで煙のように消えていく。その時だ。

ドアをノックする音がした。メルティは皿洗いを中断して手を拭くと、駆け足でドアに向かい、声を掛けた。
「トニー? トニーなの?」
「お姉ちゃん開けて! あたしよ!」
「あら、クレフ。こんな時間にどうしたの……?」

聞き覚えのある聡明な声がして、メルティは頷くとドアを開けた。そこにはメルティと瓜二つの赤い髪の女性が立っていた。
彼女はクレフと言って、メルティの双子の妹だ。おっとりとしたメルティとは対照的に、活発な女性である。細身の外見に反してかなりの力持ちだ。
メルティはクレフよりも、クレフが肩を担いでいる見知らぬ人物に目が向いた。眉を顰めて質問する。

「クレフ、その人……」
「仕事から帰って来る途中でね。何て言うんだろう、でっかい乗り物の隣で倒れてたのよ。
 私が呼びかけるとよく聞き取れない言葉を呟いて気絶しちゃったわけ」
「……それで何で私の家に?」
「ただこの人が倒れてた所と近かっただけ。ね、入れてもらえるかな?」

メルティは微妙に納得できない気がするものの、妹の頼みを無碍にする訳にもいかないので家に入れてあげる。
その件の人物の人相を覗いてみる。髪は短髪なのかショートなのか分からない中途半端な仕様。髭は結構不精気味。
目を瞑っているのでどんな目なのかは分からないが、結構顔立ちは整っている。が、上記のだらしなさがプラマイ0にしている。
服装は茶色いジャンパーを羽織っており、中に赤いシャツを着ている。それにジーンズと別段変った所は無い。腰に水筒をぶら下げてるくらいだ。

……見れば見るほど、何処から来た人なのかが分からなくなる。男性である事と、この村の人間ではない事は確かだが。
クレフが近くのソファーにその男をゆっくりと座らせる。怪我などは特にしていない様で、メルティはほっとする。
「そういやトニーさ……あぁ、あいつの所に行ったんだっけ」

クレフの言葉にメルティはこくんと頷く。クレフはソファーに腰を落とすと、怒気を含んだ口調で言った。
「シュワルツの奴、早くこの村から出ていけばいいのに……自動人形さえ無きゃ、今すぐにでもウチの職場の奴らを引き連れて」
「駄目よクレフ。確かにシュワルツは許せないけど、トニーも貴方も、私の大切な人だから……」
「じょ、冗談だよ。ごめん」

メルティの性格からそう云った争い事は好まないという事を、クレフは分かっている。それでもシュワルツの独善には腹が立つ。
しかしだ。シュワルツにはあの兵器がある。銃も剣もあの兵器……自動人形には敵う訳が無い。
戦車だの戦闘機だの、もしくは……思い出すのもおぞましいが、自動人形があれば一矢報う事が出来るかもしれない。
……馬鹿馬鹿しい。そんな物騒な物がこんな村にあるはずがない。

「……何時まであたし達ってあいつの言いなりになるのかな。用心棒なんて言ってるけど、あいつら自体が侵略者だよ」
力無くそう呟くクレフの頭を、メルティは撫でる。メルティも言いたい事はたくさんある。
が、それを言い出すと感情のブレーキが利かなくなるのではないかと思って怖くなる。
「いつかまた、皆でのんびり暮らせる日が来るわよ。だから……」
メルティは励ますつもりで言ったが、自分自身何の励ましにもならない事は分かっている。それでも何か言わないと……自分に負けそうになる。

「ん……んん?」
重い空気を和ますように、間の抜けた声がした。クレフが運んできた男がゆっくりと目を開ける。
男に気付いたクレフが声を掛けた。
「お、気付いたみたいだね。大丈夫?」

男は今の状況を把握するかのように、周囲を見渡した。クレフもメルティも緊張した面持ちで、男の反応を待つ。
男は数秒その動作を続けると、髭に手を当てて目を瞑り、何回か小さく頷いた。そして言った。
「ええっと……申し訳無いのですが、牛乳か水を貰えますか?」
全く予想だにしなかった台詞に、クレフとメルティは顔を見合わせた。男は二人の反応にキョトンとしている。

「いやぁ~助かりましたよ。ホントあの時誰も助けてくれなかったら、今頃僕は地面に還る所でした。
 ホント、クレ、クレ……」
「クレフよ」
「そう、クレフさんがいなかったらと思うとホントにぞっとします」
メルティが持ってきた牛乳を一気に飲んだその男は、そう言って笑って見せた。
クレフが運んで来た時とはまるで別人の様に男は元気になった。飲み物のお陰なのかは分からないが。

「ここ数日仕事にあり付けなくて、口に付けた物と言えばこの水筒の水しか無かったんです。。
 その水も無くなっちゃって、もうすぐ三途の川が見える所でした……。いやほんと、感謝感激雨あられ畑の野菜よ良く育てーって……」  
明らかにメルティとクレフが引いているのを感じた男は、ゴホンッと咳払いをした。
「ごめんなさい、人と話す事が偉く久しぶりなもんで興奮気味になってしまって。
 僕の名前はショウイチ。本名はショウイチ・マーチマンと言います。働き口を探して世界……とまではいきませんが、そこら中を旅してます」
「働き口って?」
クレフがそう聞くと、ショウイチはうむと頷いた。そして顔を窓の外に向けた。

「あそこ……あぁ、もう暗くて見えないか。あそこに僕が作った特別なトラクターがありまして」
クレフとメルティは妙に嫌な予感を感じた。まさかと思うが、今は口に出さない。
「あぁ、あの緑でキャタピラの?」
「そうそう。けれど残念な事に……どうにも皆さんトラクターを怖がっちゃうんですよ。凄いんですよ、あれは」
「え、何何? 面白そうじゃない。どんだけ凄いのか聞かせてよ」
「もちろん! まずは」

ショウイチがクレフにあの物体に関しての説明をしようとした矢先、誰かがドアをノックした。はーいとメルティがドアまで向かう。
「メルティちゃん、ギーシュだ。馬鹿を運んで来た。すまない」
「あ、今開けま……」
「待って、姉ちゃん。えっと……」

クレフがショウイチに顔を向ける。その微妙な表情にショウイチは数秒考え込むと、小声で言った。
「学生時代の友人って事で」
クレフはショウイチの返答に無言で頷き、メルティに目配りした。メルティがドアを開ける。
すると肩にトニーを担いだギーシュが入ってきた。トニーは酒を仰いだのか顔が真っ赤でぐんなりとしている。

「悪いなぁ、メルティちゃん。……ん? その人は?」
ショウイチに目を向けたギーシュがそう言うと、クレフはにこやかな笑みを浮かべて返答した。
「あたしの学生時代の友達。ちょっと旅しててね、偶然この村に来たの」
ショウイチは立ち上がり、小さく礼をした。ギーシュも礼を返すと、トニーを寝室まで運ぶ為、その場から離れた。

数分後、ギーシュは戻ってきて、メルティに言う。
「ちょっと酒場で揉めちゃってね。色々あって酔いつぶれちゃったんだよ。酒強くないのに無理してな」
そこまで言ってギーシュは苦笑を浮かべた。その意味にメルティは申し訳無さそうに俯いた。何故彼がそうなったのかは説明されずとも分かる。
「それじゃあ俺は帰るから。トニーが起きたら上手く説明しておいてくれ。またね」

ギーシュが帰った後、メルティは夕食であるクリームシチューをショウイチとクレフに振る舞った。トニーは明日まで起きないと判断した。
「いやぁ、凄く美味しいです! こんな美味いご飯を食べたのは……ええっと……」
「無理に思い出さなくていいわよ。にしても変わってるね、あんたって」
さっきとまるでテンションが変わらないショウイチに、クレフは苦笑する。料理を褒められたメルティはかすかに頬を染めた。
「結構言われます。。あぁ、そうそう。さっき聞きたかったんですけど」
何処から取り出したのか、ショウイチは口元をハンカチで拭くとメルティとクレフに目を合わせて、言った。

「ここらへんで農業関連の仕事ってありますか?」

「トニー・クロウスか……面白い男だったな」
飛行船の内部――――その男、シュワルツ・デントは高級な装飾が施されたリラックスチェアに座り、大きなデスクに眼鏡を置いた。
「しかし良いのですか? あの男をそのままにしておいて。触発された者が反旗を企てる可能性が無いとは言い切れません」

先程の酒場で従えていた2人組の1人がそう言うと、シュワルツはメガネを拭きながら返答した。
「良いんだよ。あーいうのがいないと面白くないだろ? まぁ……」
そう言いながら、シュワルツはデスクから黒光りする拳銃を取り出し、丹念に拭き始めた。
「彼奴等の制圧なんざ黒騎士共を使えば数分で完了する。お前が気にする事ではない。
 それよりもだ、あれの起動はどうなっている?」

「既に80%を切っておりますが、未だにエネルギーは不足しております。村人達から貢献された資源物はすべてつぎ込みましたが……」
フォルダを片手にもう一人が説明すると、シュワルツは含み笑いをした。その笑みには邪悪さが垣間見れる。
「そうか……やはりな。余興のつもりで生かしておいたが、もうその必要も無い」

銃をデスクに置き、シュワルツは再び眼鏡を拭き始めた。ふと視線を外に向けると、ガラス張りに鎧達が並んでいる。それも一機や二機では無い……。
その時、デスクの上の電話機が響いた。シュワルツは舌を鳴らして受話器を取る。

「私だ。……皆まで言わなくても分かっている。あれの目覚めはもうすぐだ。
 その時にはこの下らん独裁者ごっこも終わりにする。隠蔽も兼ねてな。心配するな、今日か明日に事態は動く。
乱暴に受話器を戻し、シュワルツはズボンのポケットから何かを取りだした。銀色が眩しい懐中時計だ。
「そう、明日か今日……な」

「農業関連って……」
クレフは一筋の汗を流した。目線はメルティに向いている。当のメルティはというと。
「んっと……私の所はそうなんですけど……」
「本当ですか! いやぁ~やっと僕にも運が向いてきたみたいです。宜しければ雇っていただけますか?」
ショウイチは立ち上がり、メルティに向かって深く頭を下げた。ポカンとした表情で、メルティはショウイチを見つめている。
「ってちょっと待ってよ! いくらなんでも飛躍しすぎでしょ。何で農業が良いのか、そこから説明しなさいよ」
クレフの発言に、ショウイチはそりゃそうだと呟いて椅子に座りなおした。

「……先程説明したように、外に置いてあるあのトラクターは、僕が昔から一緒に旅してきた相棒なんですよ。
 自惚れに聞こえると思いますが、僕はあのトラクターが農業に革命を起こすと信じています。けれど皆、それを認めようとはしない。果ては怖れまで抱く。
 ……あれは、いや、あいつはただ畑を耕したい。皆の笑顔を見たい。ただそれだけなんだ。
 ……お願いします、メルティさん。明日だけでも良いんです。あのトラクターの仕事を見てもらえませんか?」
そう言ってショウイチは立ち上がり、もう一度頭を下げた。そこにはさっきまでのちゃらんぽらんさは微塵もない。
「どうするの、お姉ちゃん? 悪い人じゃなさそうだけど、ちょっと強引というか……正直変な人じゃない? ここは丁重に断っておいた方が良い気がする」
メルティに近づき、クレフはそう耳打ちした。だがメルティはそうは思わない。

懇願するショウイチの目には、強い意志が感じられるからだ。伊達や冗談ではないと、メルティは思う。
しかし普通に考えれば、いや、普通に考えなくても目の前の男がどこかおかしいのは分かる。
行き倒れするほど食事に困窮していて、しかも職無しでかつ重機と共に旅をしており初対面の人間にこれほど馴れ馴れしい……は性格もかもしれないが、とにかく。
メルティにはどこか不思議な予感がしている。それはうまく言い表せないが、この普通では無い男が今の状況に何らかの変化をもたらしてくれるのではないかという予感だ。

「顔を上げて下さい、ショウイチさん」
メルティがそう言うと、ショウイチはゆっくりと顔を上げた。メルティは招致に目を合わせながら、二言を発した。
「貴方の採用云々は私自身の権限では決める事が出来ません。ですが、私自身としては貴方の熱意を買いたいと思います。
 明日、そのトラクターを私の家に持って来てください。そして、貴方が語るトラクターの力を責任者に見てもらい、その結果で合否を決めます。
 それで宜しいですか?」
「ちょ、お姉ちゃん!?」
「黙って」
突っ込みそうになったクレフを制して、メルティはショウイチの様子を伺う。
するとショウイチは次第に頬を緩ませた。そして嬉しさを隠しきれないといった感じのはにかむ様な笑顔で言った。
「ありがとうございます……! 明日、必ず来ますから、宜しくお願いします」

椅子に掛けたジャンパーを羽織り、ショウイチは玄関口へと足を進めた。
「ってショウイチさん!? この近くに宿なんて無いですから家に……」
「あぁ、大丈夫。野宿には慣れてますから。それじゃ、お休みなさい。メルティさん、クレフさん」
ショウイチは満面の笑みでそう言うと、手を振って静かにドアを閉めた。奇妙な闖入者が去ると妙に家が静かになる。

「……厄介な事になるかもよ? それに今の村の状況を考えれば、とても雇うなんて……ウチみたいな鉱山業ならともかく……」
「うん……でも、何故か断る気にはなれないのよ。彼の目を見てると。とにかく、ちゃんと事情は明日説明するわ。彼には申し訳ないけど……」
ショウイチを見送りながら、クレフの言葉にメルティはそう返した。トニーにもショウイチの事を説明しなければならないと思うと、少し気が重い。
それにしても……一体彼は何処で一夜を過ごすのだろう。様々な思念が浮かんで消えるが、メルティはそれだけが気になった。

「仕事の約束を取り付けたぜ。上手くいくさ、今回こそ」
「ショウイチ……その台詞、もう300回は聞いたよ」
「301回だ。そう最初から諦めるもんじゃないぜ、タウ」
「……ねぇ、ショウイチ。あの大戦で僕達……いや、僕は……」
「言うな。お前に罪は無い。お前達を生み出した、俺達が悪い」
「……取り繕わなくても良いよ。皆が僕を怖がる事は何も不思議じゃない。自動人形は兵器なんだ」
「それ以上言うな。お前がどれだけネガティブになろうと、俺は諦めないぞ。お前の事を俺以外に認めてくれる奴が出て来るまで」
「……ごめん。でも僕はもう、ショウイチが人から責められたり、咎められるのは見たくない。見たく……無いんだ」
<スリープモードに移行>
「……すまないな、タウ。だけど歩みは止める事は出来ない。それが俺の贖罪なんだ」

「お前という存在を作った、俺にはな」

続く

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