薄暗い廊下の右奥から革靴の音が聞こえる。こんな牢獄に一体何のようなんだろう?
僕が鉄格子の向こうからそっとのぞくと茶色のローブを頭から被った人がやってきた。
そして牢の前に来ると鈍い金属音を響かせて扉が開く。
何も言わなくても誰なのか僕にはすぐ分かった。
「やぁ、久しぶりだね」
不思議と懐かしい気分になり、つい手を上げ気安く話しかけてしまう。
そういうことが出来る立場じゃないって分かっている。でも……僕にはあの頃と何も変わっていないってそ
う思えたんだ。
「ああ・・・」
ローブを被った……彼女は僕を見て弱弱しく笑うと重い鉄格子の扉を開けて中に入ってきた。
「隣、良い?」
「いいよ」
僕がそういうと彼女はベットにそっと座った。この殺風景な牢屋が少しだけ華やかに感じる。
「あの・・・な?」
彼女は僕の方を向くとおもむろに口を開いた。
今の世の中の事、新しく出来たケーキ屋さんの事、そして学校のみんなの事。
どこにでもある他愛のない話を彼女はしてくれた。そんな話が僕はとても嬉しかった。
話すことが無くなったのか、一旦話が途切れた。なんとも言えない沈黙が辺りを支配する。
彼女は眉間に皺を寄せながら僕の方を見つめると軽い調子で言葉をつむいだ。
「なあ、私の下で働かないか? もちろんそれなりの給料を出そう。どうだ?」
「ありがとう。でも、僕はここから出るわけには行かないんだ」
そう、これが僕のけじめだから。
「君はよく戦った、それを評価しているのだがな」
「評価しているならますます働けないな。裏切りをするつもりはさらさらないし」
僕が否定の言葉を口にすると彼女は奥の手だといわんばかりの言葉をぶつけてきた。
「お前を売ったのが国王でもか?」
「王の命令は絶対だ、それにメディアス王は愚かじゃないよ」
僕の言葉に彼女は苦々しい顔をした。
「一つだけ聞きたい、何故そこまで出来る?」
先ほどとは打って変わって重苦しい声で話を続けてくる。
「皆が大切だから……かな?」
僕がそういうと彼女は突然僕の胸倉を掴み顔を近づけてきた。瞳からは強い憎しみを感じる。
「大切だと! ふざけるな!」
「ふざけてなんていない!」
「嘘をつくな!」
「本当だ!」
「本当なら……それが本当なら…… あたしを大切にしてよ! 愛してよ!」
彼女がそう叫ぶと僕の胸で涙を流し始めた。そしてそんな彼女に僕は何も出来なかった。
優しい声をかけてあげることも、気の利いた言葉を言ってあげることも、何一つ出来ずに。
もし、一つだけ出来ることがあるとすれば……それは……。
「マリア」
僕の声に彼女は顔を上げる。涙で濡れた彼女の頬をそっと拭うと彼女の唇に自分の唇を重ねる。
暖かくて柔らかい感触が唇から伝わる。
「ありがとう、僕を愛してくれて……」
壊れるくらい思いっきり彼女を抱きしめた。
柔らかくて温かい温もりが僕の手から、胸から伝わってくる。彼女の匂いが頭に焼きつく。
「セイヤ・・・」
また彼女が泣き出した。サヨナラしか言えないこの牢獄で。
僕が鉄格子の向こうからそっとのぞくと茶色のローブを頭から被った人がやってきた。
そして牢の前に来ると鈍い金属音を響かせて扉が開く。
何も言わなくても誰なのか僕にはすぐ分かった。
「やぁ、久しぶりだね」
不思議と懐かしい気分になり、つい手を上げ気安く話しかけてしまう。
そういうことが出来る立場じゃないって分かっている。でも……僕にはあの頃と何も変わっていないってそ
う思えたんだ。
「ああ・・・」
ローブを被った……彼女は僕を見て弱弱しく笑うと重い鉄格子の扉を開けて中に入ってきた。
「隣、良い?」
「いいよ」
僕がそういうと彼女はベットにそっと座った。この殺風景な牢屋が少しだけ華やかに感じる。
「あの・・・な?」
彼女は僕の方を向くとおもむろに口を開いた。
今の世の中の事、新しく出来たケーキ屋さんの事、そして学校のみんなの事。
どこにでもある他愛のない話を彼女はしてくれた。そんな話が僕はとても嬉しかった。
話すことが無くなったのか、一旦話が途切れた。なんとも言えない沈黙が辺りを支配する。
彼女は眉間に皺を寄せながら僕の方を見つめると軽い調子で言葉をつむいだ。
「なあ、私の下で働かないか? もちろんそれなりの給料を出そう。どうだ?」
「ありがとう。でも、僕はここから出るわけには行かないんだ」
そう、これが僕のけじめだから。
「君はよく戦った、それを評価しているのだがな」
「評価しているならますます働けないな。裏切りをするつもりはさらさらないし」
僕が否定の言葉を口にすると彼女は奥の手だといわんばかりの言葉をぶつけてきた。
「お前を売ったのが国王でもか?」
「王の命令は絶対だ、それにメディアス王は愚かじゃないよ」
僕の言葉に彼女は苦々しい顔をした。
「一つだけ聞きたい、何故そこまで出来る?」
先ほどとは打って変わって重苦しい声で話を続けてくる。
「皆が大切だから……かな?」
僕がそういうと彼女は突然僕の胸倉を掴み顔を近づけてきた。瞳からは強い憎しみを感じる。
「大切だと! ふざけるな!」
「ふざけてなんていない!」
「嘘をつくな!」
「本当だ!」
「本当なら……それが本当なら…… あたしを大切にしてよ! 愛してよ!」
彼女がそう叫ぶと僕の胸で涙を流し始めた。そしてそんな彼女に僕は何も出来なかった。
優しい声をかけてあげることも、気の利いた言葉を言ってあげることも、何一つ出来ずに。
もし、一つだけ出来ることがあるとすれば……それは……。
「マリア」
僕の声に彼女は顔を上げる。涙で濡れた彼女の頬をそっと拭うと彼女の唇に自分の唇を重ねる。
暖かくて柔らかい感触が唇から伝わる。
「ありがとう、僕を愛してくれて……」
壊れるくらい思いっきり彼女を抱きしめた。
柔らかくて温かい温もりが僕の手から、胸から伝わってくる。彼女の匂いが頭に焼きつく。
「セイヤ・・・」
また彼女が泣き出した。サヨナラしか言えないこの牢獄で。
「セイヤ、三つほど誓わせてくれ」
涙を拭った彼女が突然こんな事を言ってきた。
「僕は神父じゃないよ」
「それでもいい……。 一つ目の誓いは君の志を受け継ぐこと、二つ目の誓いは死ぬまで君に忠誠を誓うこと、
そして最後は」
彼女の唇が僕の唇に触れる。
「あなたを夫として認めること」
涙を拭った彼女が突然こんな事を言ってきた。
「僕は神父じゃないよ」
「それでもいい……。 一つ目の誓いは君の志を受け継ぐこと、二つ目の誓いは死ぬまで君に忠誠を誓うこと、
そして最後は」
彼女の唇が僕の唇に触れる。
「あなたを夫として認めること」
「くぅぅぅ……」
祐一の隣でメアリーが泣いている。
相変わらず感情の起伏が激しいなぁ。
薄暗い映画館の中で映画が続いている。
「あの…メアリー?」
「おおおぉぉぉぉ……」
祐一が声をかけるとメアリーはますます声をあげて泣いた。思わず周りを見渡してしまう祐一。
冷たい視線はないもののやはり居心地が悪い。
「ノォォォ……」
再び悲しみの嗚咽をあげるメアリー。
結局メアリーの泣き声は映画が終わるまでずっと続いていた。
祐一の隣でメアリーが泣いている。
相変わらず感情の起伏が激しいなぁ。
薄暗い映画館の中で映画が続いている。
「あの…メアリー?」
「おおおぉぉぉぉ……」
祐一が声をかけるとメアリーはますます声をあげて泣いた。思わず周りを見渡してしまう祐一。
冷たい視線はないもののやはり居心地が悪い。
「ノォォォ……」
再び悲しみの嗚咽をあげるメアリー。
結局メアリーの泣き声は映画が終わるまでずっと続いていた。
二人は映画を見終わると近くにある喫茶店へと足を運んだ。
「ふぅ、映画、面白かったね」
メアリーがメロンソーダを飲みながら晴れやかな顔で言った。
「そうだね…」
メアリーの行いに苦笑いを浮かべる祐一。
悪い子じゃないんだけどやっぱり空気が読めない子だなぁ。
祐一はそう思いながらコーヒーを口に含む。
どうしてメアリーは僕と付き
合ってくれるんだろう?
腕を組みながら考え込む彼女を見ながらふとそんな事を思ってしまう。
別に彼女に不満があるわけでもない。でも普通ならもっといい人と付き合えるんじゃないのか?
そう思うと不思議でしょうがなかった。付き合いを提案してきたのは他ならぬメアリーの方からだった。
何故、僕と付き合ってくれるの? と聞いてみようと思ったことがある。
しかしそれを聞くのはあまりにもメアリーに失礼だろう。
「ユウイチ!」
「うわぁ!」
そんな事を考えている祐一に顔を近づけるメアリー。突然のドアップに思わず目を見開く。
「もう、可愛い彼女がいるんだから考え事はやめてよね」
「ごめんごめん」
彼女は少し不機嫌な顔をしている、まあ仕方ないだろう。
誰だって自分が話しているのに相手が別の事を考えているというのはいい気がしないのだから。
「次はここへ行こうよ!」
そう言ってテーブルの上のパンフレットの場所を示す、ご丁寧にチェックサインが描かれていることから絶
対に行きたい場所らしい。
「うん、そうだね」
二人は席を立つと会計を済ませ、彼女が行きたい場所へ向かうことにした。
「ふぅ、映画、面白かったね」
メアリーがメロンソーダを飲みながら晴れやかな顔で言った。
「そうだね…」
メアリーの行いに苦笑いを浮かべる祐一。
悪い子じゃないんだけどやっぱり空気が読めない子だなぁ。
祐一はそう思いながらコーヒーを口に含む。
どうしてメアリーは僕と付き
合ってくれるんだろう?
腕を組みながら考え込む彼女を見ながらふとそんな事を思ってしまう。
別に彼女に不満があるわけでもない。でも普通ならもっといい人と付き合えるんじゃないのか?
そう思うと不思議でしょうがなかった。付き合いを提案してきたのは他ならぬメアリーの方からだった。
何故、僕と付き合ってくれるの? と聞いてみようと思ったことがある。
しかしそれを聞くのはあまりにもメアリーに失礼だろう。
「ユウイチ!」
「うわぁ!」
そんな事を考えている祐一に顔を近づけるメアリー。突然のドアップに思わず目を見開く。
「もう、可愛い彼女がいるんだから考え事はやめてよね」
「ごめんごめん」
彼女は少し不機嫌な顔をしている、まあ仕方ないだろう。
誰だって自分が話しているのに相手が別の事を考えているというのはいい気がしないのだから。
「次はここへ行こうよ!」
そう言ってテーブルの上のパンフレットの場所を示す、ご丁寧にチェックサインが描かれていることから絶
対に行きたい場所らしい。
「うん、そうだね」
二人は席を立つと会計を済ませ、彼女が行きたい場所へ向かうことにした。
所変わって中国大陸南東部、江東州にある国防省のビル。
その会議室内では国防大臣のこめかみに血管が浮き上がっていた。
「これは何だね、ソウ将軍」
ヨウシンの目の前に分厚い書類が叩きつけられた。
これはヨウシンが希望している新型PM”黄龍”の追加予算書である。
その額はなんと三億、いくらなんでも法外すぎる予算であった。
「そのままですけれど、何かご不満な点でも?」
ヨウシンは眉を少しも上げずに目の前にいる国防大臣に言う。
「大有りだ! 新型開発費だけでは物足りず追加予算だぞ! しかも三億だ!これで納得するなというほう
がおかしい!」
大臣は思い切り机を叩くと机にあるものが大きく跳ねた。鉛筆が宙を舞い、消しゴムが机の上から転がり落ちる。
「しかし、必要なことなんですが」
「必要なら前もって通告してほしい物だ」
嫌味たっぷりにヨウシンの顔を見るがヨウシンのほうは微動だにしなかった。
「とにかく、金は出せん。これ以上出したら火の車だ」
「わかりました、では私はこれで」
ヨウシンは頭を下げると大臣の部屋から出て行く。
「ふん、荒鷹も地に落ちたものだ」
そんなヨウシンに対し侮蔑の言葉を投げかけた。
その会議室内では国防大臣のこめかみに血管が浮き上がっていた。
「これは何だね、ソウ将軍」
ヨウシンの目の前に分厚い書類が叩きつけられた。
これはヨウシンが希望している新型PM”黄龍”の追加予算書である。
その額はなんと三億、いくらなんでも法外すぎる予算であった。
「そのままですけれど、何かご不満な点でも?」
ヨウシンは眉を少しも上げずに目の前にいる国防大臣に言う。
「大有りだ! 新型開発費だけでは物足りず追加予算だぞ! しかも三億だ!これで納得するなというほう
がおかしい!」
大臣は思い切り机を叩くと机にあるものが大きく跳ねた。鉛筆が宙を舞い、消しゴムが机の上から転がり落ちる。
「しかし、必要なことなんですが」
「必要なら前もって通告してほしい物だ」
嫌味たっぷりにヨウシンの顔を見るがヨウシンのほうは微動だにしなかった。
「とにかく、金は出せん。これ以上出したら火の車だ」
「わかりました、では私はこれで」
ヨウシンは頭を下げると大臣の部屋から出て行く。
「ふん、荒鷹も地に落ちたものだ」
そんなヨウシンに対し侮蔑の言葉を投げかけた。
「お疲れ様です」
国防省ビルから出てくるヨウシンをナタリアが迎え入れる。入り口近くに軍用車が止まっていた。
「すみませんねぇ」
ヨウシンが軍用車に乗り込むとナタリアは車を発進させた。
「どうでしたか? 追加予算はいただけましたか?」
「いいえ、逆に使いすぎだと怒られましたよ」
ヨウシンは軽くため息を付く。
「そうですか…」
そんなヨウシンにナタリアは残念そうな声をあげる。
「フフフ、ナタリア君。あなたが落ち込む事は無いと思いますよ」
「ですが・・・」
「確かに追加予算がいただけなかったことは残念ですが仕方がないことでしょう。私自身の見通しが悪かった
のも原因です」
ヨウシンは社内から窓の外を眺める。道行く人々があっという間に過ぎ去っていく。
「だからと言って落ち込んではいません。軍が使えないなら別のところからお金を引き出すだけです」
「別の所…とは?」
「軍需産業以外のところから物を持って来ようと思います。武器以外の物ならば民間企業でも十分潰しが効き
ますしね」
「しかし、それは…」
「ルール違反と言いたいのでしょ?」
ヨウシンの言葉にナタリアは思わず黙る。
無理もないだろう、AUAでは基本的に軍費は徹底的に管理されているのだ。
これは軍備品や軍事機密の流出と裏金や使い込みと言った物を防ぐ為であり違反したのものはそれ相応の厳
罰を受けるのだ。最悪の場合銃殺もありうる。
その為、決められた業者以外での武器の売買は禁止されている。
しかし武器以外のものは個人の物、すなわちシャンプーやジュースと言った物に関していえば特に規定らし
い規定はない。ヨウシンはそこを突こうというのだ。
「違いますよ、これは節約術です。近くのスーパーばかりに通わず他の店を回って見るのも社会経験の一つですよ」
「屁理屈ですね」
「ですが誰も反論できません」
ヨウシンは普段とは違った顔を見せる。普段の穏やかな笑みとは違い鋭い顔だ。
「それに、やっておきたいことがあるんですよ」
「やっておきたいこと?」
「現在のAUA、いえ世界と言っても良いでしょう。 世界はバイラムを軽視しすぎています」
「確かにバイラムは脅威なのでしょうが現在の所、確認されたのは一機だけですよ」
ステイツに登場以後、バイラムは南アフリカ、中東、オーストラリア、インドなどにたびたび出現し戦闘を
引き起こしては離脱する、という行動を行っていた。多数の目撃例はあってもバイラムが複数確認されたとい
う報告は全くなかった。
「確かにそうですが……どうも腑に落ちないところがあるのですよ」
「どこから来てどこへ行ったのか? ですか?」
「それもありますがそれ以上に謎なのが補給や整備の問題ですね。あの小型ビームガンはある意味脅威です」
「剣のほうではないのですか?」
バイラムと言えばあの右腕についている剣だ。普段使っているせいもありインパクトも強い。
「剣に関して言えば特にいうことはありません。しかしビーム兵器に関して言えばどうでしょうか?」
ナタリアはバイラムの戦闘動画を思い出す。
「……余り使っていませんね」
確かにヨウシンの言う通りビーム兵器は極力使っていない。
一撃で仕留める場合ならまだしもビスマルク、ナイツ、そしてコウシュンが乗った玄武には接近戦を仕掛け
てきた。
「そうです、何故バイラムはビーム兵器を使わないのでしょうか?」
コウシュンのデータ、ユニオンとステイツが公開した情報を分析して見るとバイラムはやたらと接近戦を好
む傾向があるとヨウシンは考えた。
無論、バイラム自身が接近戦に長けているというのもあるだろう。しかし空雷を突っ切ったことやネルソン
やポーンと言った複数の戦いでは銃器を使ったがボルスやコウシュンとの一対一との戦いではほとんど使用し
ていなかった。銃器を使えばかなり楽な戦いになるのだがバイラムは決してそれを行わないのがヨウシンには
疑問に感じる。
「これは私の仮説なのですがバイラムはビームが苦手なのではないでしょうか」
「ビームが苦手? しかし、ステイツではビーム兵器を搭載したナイツが負けたという話が出ていますが」
ビーム兵器は直撃したがバイラムは健在、破損らしい破損も見当たらなかった。
「ふむ、この仮説は違うようですね。しかしあまり使いたがらないことからビームガンを使うのは何らかの
デメリットが発生すると思った方がいいですね」
ヨウシンはバイラムの事を思い出す。
あの小型のビーム兵器は三強が所有しているビーム兵器とは全く違うのだ。
ビスマルク、青龍、ナイツ。各機が所有するビーム兵器はかなり大型であり、使用にも手間が掛かる物だ。
しかしバイラムのビーム兵器とはこれら全く違う。
何故ビーム兵器が大型になるかというとビーム兵器が安定しないからである。
強力なエンジンやエネルギーを使うことでようやくビーム兵器を使うことが出来るのだがバイラムにはそう
いった物が何一つ無い。その証拠にナイツのビーム兵器はチャージに時間がかかるのだがバイラムはトリガー
を引くだけでビーム兵器を使うことが出来た。
この差は一体なんなのでしょうか? それにあそこまで小型化するのにはかなりの技術力が必要なはず。
もしも、あれだけの技術を持つ相手と戦うには黄龍の力が必要ですね……早く黄龍の開発を急がなければ……。
だがすぐ目を細め自身の焦りを嘲笑した。
いけません、予定通りと行かなかったせいか少し余裕が無くなっていますね。 軽くジョークでも考えますか。
「ところで何故私なのでしょうか? 普段ならカン中佐に任せるはず」
ナタリアの言葉にヨウシンは目を前を向く。
普段ならこの役目はコウシュンが行うのが普通であった。しかし今日に限って何故かナタリアに白羽の矢がた
ったのだ。
「仕方ないでしょう、今日はカン君にとって特別な日なのですから」
「特別……ですか?」
「はい」
ヨウシンは再び窓の外を眺める。
「忘れようとすれば記憶に残り、消し去ろうをすれば艶やかに甦る。時間が流れても蒼天は変わらず、変わり
果てたのはわが身のみ、ですか」
まったくもって、世界とはなんと煩わしいのでしょう。
ヨウシンはフッ、と軽く笑うと外の人々を再び眺め始めた。
国防省ビルから出てくるヨウシンをナタリアが迎え入れる。入り口近くに軍用車が止まっていた。
「すみませんねぇ」
ヨウシンが軍用車に乗り込むとナタリアは車を発進させた。
「どうでしたか? 追加予算はいただけましたか?」
「いいえ、逆に使いすぎだと怒られましたよ」
ヨウシンは軽くため息を付く。
「そうですか…」
そんなヨウシンにナタリアは残念そうな声をあげる。
「フフフ、ナタリア君。あなたが落ち込む事は無いと思いますよ」
「ですが・・・」
「確かに追加予算がいただけなかったことは残念ですが仕方がないことでしょう。私自身の見通しが悪かった
のも原因です」
ヨウシンは社内から窓の外を眺める。道行く人々があっという間に過ぎ去っていく。
「だからと言って落ち込んではいません。軍が使えないなら別のところからお金を引き出すだけです」
「別の所…とは?」
「軍需産業以外のところから物を持って来ようと思います。武器以外の物ならば民間企業でも十分潰しが効き
ますしね」
「しかし、それは…」
「ルール違反と言いたいのでしょ?」
ヨウシンの言葉にナタリアは思わず黙る。
無理もないだろう、AUAでは基本的に軍費は徹底的に管理されているのだ。
これは軍備品や軍事機密の流出と裏金や使い込みと言った物を防ぐ為であり違反したのものはそれ相応の厳
罰を受けるのだ。最悪の場合銃殺もありうる。
その為、決められた業者以外での武器の売買は禁止されている。
しかし武器以外のものは個人の物、すなわちシャンプーやジュースと言った物に関していえば特に規定らし
い規定はない。ヨウシンはそこを突こうというのだ。
「違いますよ、これは節約術です。近くのスーパーばかりに通わず他の店を回って見るのも社会経験の一つですよ」
「屁理屈ですね」
「ですが誰も反論できません」
ヨウシンは普段とは違った顔を見せる。普段の穏やかな笑みとは違い鋭い顔だ。
「それに、やっておきたいことがあるんですよ」
「やっておきたいこと?」
「現在のAUA、いえ世界と言っても良いでしょう。 世界はバイラムを軽視しすぎています」
「確かにバイラムは脅威なのでしょうが現在の所、確認されたのは一機だけですよ」
ステイツに登場以後、バイラムは南アフリカ、中東、オーストラリア、インドなどにたびたび出現し戦闘を
引き起こしては離脱する、という行動を行っていた。多数の目撃例はあってもバイラムが複数確認されたとい
う報告は全くなかった。
「確かにそうですが……どうも腑に落ちないところがあるのですよ」
「どこから来てどこへ行ったのか? ですか?」
「それもありますがそれ以上に謎なのが補給や整備の問題ですね。あの小型ビームガンはある意味脅威です」
「剣のほうではないのですか?」
バイラムと言えばあの右腕についている剣だ。普段使っているせいもありインパクトも強い。
「剣に関して言えば特にいうことはありません。しかしビーム兵器に関して言えばどうでしょうか?」
ナタリアはバイラムの戦闘動画を思い出す。
「……余り使っていませんね」
確かにヨウシンの言う通りビーム兵器は極力使っていない。
一撃で仕留める場合ならまだしもビスマルク、ナイツ、そしてコウシュンが乗った玄武には接近戦を仕掛け
てきた。
「そうです、何故バイラムはビーム兵器を使わないのでしょうか?」
コウシュンのデータ、ユニオンとステイツが公開した情報を分析して見るとバイラムはやたらと接近戦を好
む傾向があるとヨウシンは考えた。
無論、バイラム自身が接近戦に長けているというのもあるだろう。しかし空雷を突っ切ったことやネルソン
やポーンと言った複数の戦いでは銃器を使ったがボルスやコウシュンとの一対一との戦いではほとんど使用し
ていなかった。銃器を使えばかなり楽な戦いになるのだがバイラムは決してそれを行わないのがヨウシンには
疑問に感じる。
「これは私の仮説なのですがバイラムはビームが苦手なのではないでしょうか」
「ビームが苦手? しかし、ステイツではビーム兵器を搭載したナイツが負けたという話が出ていますが」
ビーム兵器は直撃したがバイラムは健在、破損らしい破損も見当たらなかった。
「ふむ、この仮説は違うようですね。しかしあまり使いたがらないことからビームガンを使うのは何らかの
デメリットが発生すると思った方がいいですね」
ヨウシンはバイラムの事を思い出す。
あの小型のビーム兵器は三強が所有しているビーム兵器とは全く違うのだ。
ビスマルク、青龍、ナイツ。各機が所有するビーム兵器はかなり大型であり、使用にも手間が掛かる物だ。
しかしバイラムのビーム兵器とはこれら全く違う。
何故ビーム兵器が大型になるかというとビーム兵器が安定しないからである。
強力なエンジンやエネルギーを使うことでようやくビーム兵器を使うことが出来るのだがバイラムにはそう
いった物が何一つ無い。その証拠にナイツのビーム兵器はチャージに時間がかかるのだがバイラムはトリガー
を引くだけでビーム兵器を使うことが出来た。
この差は一体なんなのでしょうか? それにあそこまで小型化するのにはかなりの技術力が必要なはず。
もしも、あれだけの技術を持つ相手と戦うには黄龍の力が必要ですね……早く黄龍の開発を急がなければ……。
だがすぐ目を細め自身の焦りを嘲笑した。
いけません、予定通りと行かなかったせいか少し余裕が無くなっていますね。 軽くジョークでも考えますか。
「ところで何故私なのでしょうか? 普段ならカン中佐に任せるはず」
ナタリアの言葉にヨウシンは目を前を向く。
普段ならこの役目はコウシュンが行うのが普通であった。しかし今日に限って何故かナタリアに白羽の矢がた
ったのだ。
「仕方ないでしょう、今日はカン君にとって特別な日なのですから」
「特別……ですか?」
「はい」
ヨウシンは再び窓の外を眺める。
「忘れようとすれば記憶に残り、消し去ろうをすれば艶やかに甦る。時間が流れても蒼天は変わらず、変わり
果てたのはわが身のみ、ですか」
まったくもって、世界とはなんと煩わしいのでしょう。
ヨウシンはフッ、と軽く笑うと外の人々を再び眺め始めた。
所変わって中国北東部、河北。春が来たと言ってもここではまだ寒い冬の空気が残っていた。
辺りには無数の墓標が立っておりここが死者の眠る場所であるということ教えている。
その一つの墓標の前に一人の男が立っていた。コウシュンである。
コウシュンは花を置き両手を合わせる。
「トン…向こうはいい所か?」
聞いたとしても返事がない事は理解している、だが話しかけずに入られなかった。
コウシュンは懐から白い布を取り出し墓を磨こうとすると一人の女性がやってきた。
「久しぶりだな」
「ええ、本当に……」
女性も墓の前に花を置き線香に火をつけると両手を合わせた。赤い熱から発せられる白い煙が死者を弔う。
女性はかつてコウシュンと家族で”あった”。今はもう別れている。
お互い無言のまま目の前の墓を見つめる。何かを言うべきなのだろうが何も言うべき事が無い。
重苦しい空気の中、女性が呟くように言った。
「あの子の死に際の台詞、覚えている?」
「忘れようとも忘れられん、忘れようと努力すれば返って魂に残る」
コウシュンは遠い目で空を見つめる。
辺りには無数の墓標が立っておりここが死者の眠る場所であるということ教えている。
その一つの墓標の前に一人の男が立っていた。コウシュンである。
コウシュンは花を置き両手を合わせる。
「トン…向こうはいい所か?」
聞いたとしても返事がない事は理解している、だが話しかけずに入られなかった。
コウシュンは懐から白い布を取り出し墓を磨こうとすると一人の女性がやってきた。
「久しぶりだな」
「ええ、本当に……」
女性も墓の前に花を置き線香に火をつけると両手を合わせた。赤い熱から発せられる白い煙が死者を弔う。
女性はかつてコウシュンと家族で”あった”。今はもう別れている。
お互い無言のまま目の前の墓を見つめる。何かを言うべきなのだろうが何も言うべき事が無い。
重苦しい空気の中、女性が呟くように言った。
「あの子の死に際の台詞、覚えている?」
「忘れようとも忘れられん、忘れようと努力すれば返って魂に残る」
コウシュンは遠い目で空を見つめる。
この男、コウシュンには昔、一人の子供がいた。名前はトン。
子供が出来た事を二人は喜んだ。しかし、トンは短命であった。
生まれつきの病気がトンを苦しめていた。医者にもこう言われた。
十年、生きられれば良い方だ、と
だがコウシュンも彼女も彼に愛情を注いだ。どうせ死ぬなら楽しい思い出を残してやろうと。
しかし、運命とは皮肉な物である。
ある日、コウシュンに緊急の仕事が入った。テロリストによる立て篭もり事件が発生、彼に出動命令が出た。
その一方で彼の子供であるトンの様態が急変、一刻の猶予もなくなっていた。
子供が死にそうなので行くべきではない、と彼女は言うが彼は制止を振り切り現場へと向かった。
その日のコウシュンは色々な意味で運が良かった。
人質の救出、爆弾の解体、犯人の確保。まるで清流のように鮮やかに物事が進み、あっという間に終わった。
事件を解決したコウシュンは病院に急ぐ……が、病室の戸を開けると絶望が待っていた。
息子は、トンは生命維持装置が備え付けられたベットに横たわっていたのだった。
「トン、私だ。聞こえるか?」
コウシュンが手を握り、声をかけると目を覚ますトン。
「うん、聞こえます。お父さん。事件はどうなりましたか?」
「全て終わった、人質も救出した、爆弾も解体した、犯人も捕まった。お前が何も心配することもないぞ」
「そうですか」
コウシュンの言葉に微笑む。まるで全てを知っていたかのように。
そして最後の力を振り絞るかのように口を開いた。
「お父さん、僕はお父さんをとても誇りに思う、多くの命を救った偉大なる父を持てて僕はとても幸せです」
この言葉を吐き出したトンは両親に笑顔を見せたままその短い生涯を閉じた。
たった十年と五ヶ月しか生きられなかった。しかし残したものは両手では掴めぬほど大きい。
この日からコウシュンは自身をさらに磨き始めた。
誰かが課したわけでもない、必要だといわれたわけでもない。
時間が過ぎ去れば忘れ行く物、そう思っていたが……。いや、忘れよう意識するから忘れられないのだろう。
この不器用な男は……。
子供が出来た事を二人は喜んだ。しかし、トンは短命であった。
生まれつきの病気がトンを苦しめていた。医者にもこう言われた。
十年、生きられれば良い方だ、と
だがコウシュンも彼女も彼に愛情を注いだ。どうせ死ぬなら楽しい思い出を残してやろうと。
しかし、運命とは皮肉な物である。
ある日、コウシュンに緊急の仕事が入った。テロリストによる立て篭もり事件が発生、彼に出動命令が出た。
その一方で彼の子供であるトンの様態が急変、一刻の猶予もなくなっていた。
子供が死にそうなので行くべきではない、と彼女は言うが彼は制止を振り切り現場へと向かった。
その日のコウシュンは色々な意味で運が良かった。
人質の救出、爆弾の解体、犯人の確保。まるで清流のように鮮やかに物事が進み、あっという間に終わった。
事件を解決したコウシュンは病院に急ぐ……が、病室の戸を開けると絶望が待っていた。
息子は、トンは生命維持装置が備え付けられたベットに横たわっていたのだった。
「トン、私だ。聞こえるか?」
コウシュンが手を握り、声をかけると目を覚ますトン。
「うん、聞こえます。お父さん。事件はどうなりましたか?」
「全て終わった、人質も救出した、爆弾も解体した、犯人も捕まった。お前が何も心配することもないぞ」
「そうですか」
コウシュンの言葉に微笑む。まるで全てを知っていたかのように。
そして最後の力を振り絞るかのように口を開いた。
「お父さん、僕はお父さんをとても誇りに思う、多くの命を救った偉大なる父を持てて僕はとても幸せです」
この言葉を吐き出したトンは両親に笑顔を見せたままその短い生涯を閉じた。
たった十年と五ヶ月しか生きられなかった。しかし残したものは両手では掴めぬほど大きい。
この日からコウシュンは自身をさらに磨き始めた。
誰かが課したわけでもない、必要だといわれたわけでもない。
時間が過ぎ去れば忘れ行く物、そう思っていたが……。いや、忘れよう意識するから忘れられないのだろう。
この不器用な男は……。
「いくのね」
「ああ」
コウシュンは布をポケットにしまうと墓に背を向けた。
線香は既に短くなっておりその炎もゆっくり終わりそうだ。
「正直、あなたを今でも恨んでるわ」
「構わん」
「仕事の方がそんなに大事?」
「かもしれん」
「でも、そんなあなたが大好きだったのよね、トンは」
女性の言葉に対しコウシュンは無言で去っていく。
「相変わらず、自分の事は全部閉まって置く人ね」
彼女はため息と共に涙をこぼした。
今は亡き息子に彼は誓った、背中だけは父親であろうと。
それがこの男を軍人に仕立てるもの、なのかもしれない。
「ああ」
コウシュンは布をポケットにしまうと墓に背を向けた。
線香は既に短くなっておりその炎もゆっくり終わりそうだ。
「正直、あなたを今でも恨んでるわ」
「構わん」
「仕事の方がそんなに大事?」
「かもしれん」
「でも、そんなあなたが大好きだったのよね、トンは」
女性の言葉に対しコウシュンは無言で去っていく。
「相変わらず、自分の事は全部閉まって置く人ね」
彼女はため息と共に涙をこぼした。
今は亡き息子に彼は誓った、背中だけは父親であろうと。
それがこの男を軍人に仕立てるもの、なのかもしれない。
また所変わってアメリカ中部のケンタッキー州、街のはずれにある薄暗いバー。
そこのカウンター席に一人の男が少しも減ってないバーボンを見つめながら物思いに耽っていた。
男はケントだった。
「ふぅ」
ケントは軽くため息を付く。無理もないだろう、一向に進まないデータ解析に苛立ちを隠せなかった。
ありとあらゆる材料を検索してみるが結果はノーサイン。動画データのみの手探りが続くが感触は何も無い。
正に八方塞である。
「あら、進んでないわね」
突然後ろから一人の女性が声をかけてきた。女性はウェーブが掛かった藍色の髪を肩まで伸ばしており、紺
のスーツとタイトスカートを美しく、そして色っぽく着ている。顔には薄化粧しており唇には桜色のリップを
塗っていた。
「うん、セルじゃないか」
ケントは目の前の女性、セルを見つめる。
ケントとセルの付き合いは短いようで長い。
出会いは大学で一緒の班になったことから始まりであり、ディベートから卒業論文まで深い付き合いになった。
卒業後はそれぞれ自分の道を進んでいったがたまに会ってはこうやって一緒に酒を飲んでいた。
そこのカウンター席に一人の男が少しも減ってないバーボンを見つめながら物思いに耽っていた。
男はケントだった。
「ふぅ」
ケントは軽くため息を付く。無理もないだろう、一向に進まないデータ解析に苛立ちを隠せなかった。
ありとあらゆる材料を検索してみるが結果はノーサイン。動画データのみの手探りが続くが感触は何も無い。
正に八方塞である。
「あら、進んでないわね」
突然後ろから一人の女性が声をかけてきた。女性はウェーブが掛かった藍色の髪を肩まで伸ばしており、紺
のスーツとタイトスカートを美しく、そして色っぽく着ている。顔には薄化粧しており唇には桜色のリップを
塗っていた。
「うん、セルじゃないか」
ケントは目の前の女性、セルを見つめる。
ケントとセルの付き合いは短いようで長い。
出会いは大学で一緒の班になったことから始まりであり、ディベートから卒業論文まで深い付き合いになった。
卒業後はそれぞれ自分の道を進んでいったがたまに会ってはこうやって一緒に酒を飲んでいた。
恋愛とも友情というのも少し違った関係。悪く言えば腐れ縁的な関係。
ケントはこの不思議な関係に思わず噴き出していしまう。
「あら、やっぱり老けた?」
「いや、美しくなった」
ケントの言葉にセルは顔をほころばせるが出てきた答えはとても手厳しいものだった。
「お世辞? ならもう少し気が利いた言葉をいうべきね」
彼女がそういうとバーデンにライムジンを頼む。
「そうか、それば勉強になったよ」
ケントは疲れ気味の笑みを浮かべると再びバーボンを見つめ始めた。
「ねえ、何か悩み事?」
そんなケントにセルは声をかける。
「いや、そういうわけじゃないよ」
ケントは否定をするがセルは軽く笑う。
「そうかしら? あなた、自分の癖を理解している?」
セルの言葉にケントは身を硬くする。ケントの癖、思いつめると一点ばかり見るしまうのだ。
「でてたかい?」
「ええ、しかも重度のね」
セルは頼んだライムジンのグラスを手に取る。
「そうか…」
ケントは再びため息を吐き出した。だがため息と共に焦りは消えていった。
「ねえ、そんなに思いつめてるなら聞かせてよ。あなたの悩み」
セルがジンを飲みながらケントを見つめる。
「言っても理解してもらえるかどうか分からないと思うよ」
ケントは先ほどとは打って変わって軽快な声を出した。
「そう…じゃあ、何か奢らせてよ。どうせ何にもそれしか頼んでないんでしょ?」
彼女はそういうとマスターにおつまみを頼む。
まったく、かなわないな。
ケントは苦笑するとやってきたソーセージにかぶりついた。
ケントはこの不思議な関係に思わず噴き出していしまう。
「あら、やっぱり老けた?」
「いや、美しくなった」
ケントの言葉にセルは顔をほころばせるが出てきた答えはとても手厳しいものだった。
「お世辞? ならもう少し気が利いた言葉をいうべきね」
彼女がそういうとバーデンにライムジンを頼む。
「そうか、それば勉強になったよ」
ケントは疲れ気味の笑みを浮かべると再びバーボンを見つめ始めた。
「ねえ、何か悩み事?」
そんなケントにセルは声をかける。
「いや、そういうわけじゃないよ」
ケントは否定をするがセルは軽く笑う。
「そうかしら? あなた、自分の癖を理解している?」
セルの言葉にケントは身を硬くする。ケントの癖、思いつめると一点ばかり見るしまうのだ。
「でてたかい?」
「ええ、しかも重度のね」
セルは頼んだライムジンのグラスを手に取る。
「そうか…」
ケントは再びため息を吐き出した。だがため息と共に焦りは消えていった。
「ねえ、そんなに思いつめてるなら聞かせてよ。あなたの悩み」
セルがジンを飲みながらケントを見つめる。
「言っても理解してもらえるかどうか分からないと思うよ」
ケントは先ほどとは打って変わって軽快な声を出した。
「そう…じゃあ、何か奢らせてよ。どうせ何にもそれしか頼んでないんでしょ?」
彼女はそういうとマスターにおつまみを頼む。
まったく、かなわないな。
ケントは苦笑するとやってきたソーセージにかぶりついた。
さらに所変わってユニオンの西部、旧ドイツにてビスマルクは飛行訓練をしていた。
ビスマルクの背面にはバイラムと対峙した時とは違い別のパーツが組み込まれていた。
このパーツの名前は”Bパーツ”広域破壊用の武装である。Sパーツとの違いは接近戦闘用ではなく遠距離
戦を重視した砲戦仕様であった。腕部にガトリングガン、腰部にはレールガン、肩部には百八十ミリカノン砲
を搭載している。
腕部に仕込まれたガトリンクガンが激しく火を吹くとネルソンが次々と爆散していった。
「テスト終了、どうでしたか? Bパーツの調子は」
オペレーターがパイロットに向かって通信を送ると少し不機嫌な声が聞こえてくる。
「もうちょっと振動を抑えられない? 腕でこれなら腰の奴や肩の奴の反動が危なすぎるから」
「了解しました、技術部へ言っておきます」
オペレーターの言葉を聞くと彼女はゆっくりとビスマルクを格納庫へと運んでいった。
ビスマルクの背面にはバイラムと対峙した時とは違い別のパーツが組み込まれていた。
このパーツの名前は”Bパーツ”広域破壊用の武装である。Sパーツとの違いは接近戦闘用ではなく遠距離
戦を重視した砲戦仕様であった。腕部にガトリングガン、腰部にはレールガン、肩部には百八十ミリカノン砲
を搭載している。
腕部に仕込まれたガトリンクガンが激しく火を吹くとネルソンが次々と爆散していった。
「テスト終了、どうでしたか? Bパーツの調子は」
オペレーターがパイロットに向かって通信を送ると少し不機嫌な声が聞こえてくる。
「もうちょっと振動を抑えられない? 腕でこれなら腰の奴や肩の奴の反動が危なすぎるから」
「了解しました、技術部へ言っておきます」
オペレーターの言葉を聞くと彼女はゆっくりとビスマルクを格納庫へと運んでいった。
彼女が更衣室の椅子に座ると深呼吸をした。
SパーツとMパーツは無事ロールアウト。Bパーツは後は調整のみ、問題はXパーツだ。
Xパーツに関していえば何も聞かされていない。一体どんなパーツなのだろうか?
そんな疑問を浮かべながらファルはそっとロケットを開く。
そこには優しそうに微笑む二人の人物がいる。一人はたくましい男性、もう一人は小さな女の子だ。
一人がファルでもう一人が彼女の父親、エリウッド・ミスリーアである。
SパーツとMパーツは無事ロールアウト。Bパーツは後は調整のみ、問題はXパーツだ。
Xパーツに関していえば何も聞かされていない。一体どんなパーツなのだろうか?
そんな疑問を浮かべながらファルはそっとロケットを開く。
そこには優しそうに微笑む二人の人物がいる。一人はたくましい男性、もう一人は小さな女の子だ。
一人がファルでもう一人が彼女の父親、エリウッド・ミスリーアである。
エリウッドは軍人ではない。彼の職業は消防士である。
ただし、単なる消防士ではなくユニオン特別国民賞をもらったことがある凄腕の消防士であった。
レスキューの資格を持つ彼は様々な現場に赴き常にこう説いた。
「救う命は無数ある、しかしかける命はわが身一つのみ」
これは人を救うことに命をかけた男であった。
しかし、彼の娘は人の命を奪う軍人となってしまう。
彼女が軍人を目指した理由とは皮肉にもエリウッドの死が原因である。
エリウッドが命を懸けて救ったテロリストが数ヵ月後に皮肉にも彼を殺すことになったのだ。
父が死んだその日から彼女は強さを求めるようになり始めた。誰を頼ることなく強く生きる事を胸に秘めながら。
無論、彼女の才能が軍事的に向きすぎた部分も多数あった。
セオリーをベースに独自の戦術を作り出し無数の敵機を撃墜したエース。
彼女もまた父とは違った意味でユニオンの英雄となったのだった。
ただし、単なる消防士ではなくユニオン特別国民賞をもらったことがある凄腕の消防士であった。
レスキューの資格を持つ彼は様々な現場に赴き常にこう説いた。
「救う命は無数ある、しかしかける命はわが身一つのみ」
これは人を救うことに命をかけた男であった。
しかし、彼の娘は人の命を奪う軍人となってしまう。
彼女が軍人を目指した理由とは皮肉にもエリウッドの死が原因である。
エリウッドが命を懸けて救ったテロリストが数ヵ月後に皮肉にも彼を殺すことになったのだ。
父が死んだその日から彼女は強さを求めるようになり始めた。誰を頼ることなく強く生きる事を胸に秘めながら。
無論、彼女の才能が軍事的に向きすぎた部分も多数あった。
セオリーをベースに独自の戦術を作り出し無数の敵機を撃墜したエース。
彼女もまた父とは違った意味でユニオンの英雄となったのだった。
ファルはロケットを閉じてユニオンの軍服に着替える。
服を着るたびにロケットを見てた少女のような儚さは薄れ、軍人としてりりしい顔になっていく。
自分が選んだ道である以上後悔はしていない。復讐も考えてない。しかし、負けることだけは決して許されない。
ファルは着替えを終えるとブリーフィングルームに向かう。
扉を開けるとそこにはビスマルクを操るエリート部隊の面々がおり、ホワイトボードの前にはこの基地の司
令がいた。
ファルは前から2番目辺りの席に座ると司令はおもむろに口を開いた
「これよりブリーフィングを行う。全員楽にしてくれ」
司令はそう言うとホワイトボードに何かを書き出した。
議題であるビスマルクの意見交換をするようだ。
「まず、ビスマルクへの要望を聞いておこう、何かあるかね?」
「はい」
司令の言葉に一人の男が手を上げる。
「私は防御用に重視したDパーツが少し重すぎるような気がします。あれで機動性がかなり落ちているのでバ
ランスの再調整をお願いします」
「そうか? 防御用のパーツだから装甲が厚くなって飛べなくなるだけだろ?」
別の方向からこんな声も聞こえてくる。
「いや、確かに防御用だけどバランスが悪い部分もあるぞ、あれを積んだままステップ回避をしてコケたことがあるし」
「回避するなんておかしいだろ? あれは攻撃を受けて跳ね返すものなんだから」
「でも被弾しなけりゃ――」
部屋の中がざわざわしだした。全員が腕の立つパイロットである以上、操縦の仕方も運用方法も十人十色である。
そして騒がしさが頂点に達しようとした時、司令官が大声をあげた。
「そこまでだ! Dパーツの要望は一通り意見書に書いておいてくれ、つぎにBパーツだが……」
ミスリーアの方をちらりと見る。
「はい、腕部のガドリングガンの衝撃が少し激しく感じます。火薬を使う以上振動を低くしてもらわなくては
いけません。あとレールガンなのですがトリガーロスが酷く感じます。トリガーを引いてコンマ5秒は少し遅
過ぎますね」
ファルの言葉に全員が黙る。全員が感じていることなのだろう。
「そうか、他に意見は?」
司令が辺りを見渡すが誰も挙手をしない。みんな言いたい事を言ったので意見が出尽くしてしまったようだ。
「ないのか? ではこの議論を終わりにする。」
司令がそう言うと全員椅子に座りなおした。
「最後にこのビスマルク隊を指揮する隊長を紹介しておこう、入りたまえ」
司令がそう言うと一人の女性が入ってきた。
髪は長い赤毛気味のブロンド、顔は少し幼さを残しており十代に見える。そして当たり前のようにユニオン
の軍服を着ていて足にはストッキングと青のハイヒールを履いている。
「げげ!」
ファルはやってきた新隊長に対し思いっきり不機嫌な顔を露にした。
「本日よりビスマルク隊を指揮してもらう、マルネ・ラザフォード大佐だ」
「よろしくお願いしまーす! 気軽にマールって呼んでね!」
敬礼をしながら彼女は可愛らしくウィンクをする。
服を着るたびにロケットを見てた少女のような儚さは薄れ、軍人としてりりしい顔になっていく。
自分が選んだ道である以上後悔はしていない。復讐も考えてない。しかし、負けることだけは決して許されない。
ファルは着替えを終えるとブリーフィングルームに向かう。
扉を開けるとそこにはビスマルクを操るエリート部隊の面々がおり、ホワイトボードの前にはこの基地の司
令がいた。
ファルは前から2番目辺りの席に座ると司令はおもむろに口を開いた
「これよりブリーフィングを行う。全員楽にしてくれ」
司令はそう言うとホワイトボードに何かを書き出した。
議題であるビスマルクの意見交換をするようだ。
「まず、ビスマルクへの要望を聞いておこう、何かあるかね?」
「はい」
司令の言葉に一人の男が手を上げる。
「私は防御用に重視したDパーツが少し重すぎるような気がします。あれで機動性がかなり落ちているのでバ
ランスの再調整をお願いします」
「そうか? 防御用のパーツだから装甲が厚くなって飛べなくなるだけだろ?」
別の方向からこんな声も聞こえてくる。
「いや、確かに防御用だけどバランスが悪い部分もあるぞ、あれを積んだままステップ回避をしてコケたことがあるし」
「回避するなんておかしいだろ? あれは攻撃を受けて跳ね返すものなんだから」
「でも被弾しなけりゃ――」
部屋の中がざわざわしだした。全員が腕の立つパイロットである以上、操縦の仕方も運用方法も十人十色である。
そして騒がしさが頂点に達しようとした時、司令官が大声をあげた。
「そこまでだ! Dパーツの要望は一通り意見書に書いておいてくれ、つぎにBパーツだが……」
ミスリーアの方をちらりと見る。
「はい、腕部のガドリングガンの衝撃が少し激しく感じます。火薬を使う以上振動を低くしてもらわなくては
いけません。あとレールガンなのですがトリガーロスが酷く感じます。トリガーを引いてコンマ5秒は少し遅
過ぎますね」
ファルの言葉に全員が黙る。全員が感じていることなのだろう。
「そうか、他に意見は?」
司令が辺りを見渡すが誰も挙手をしない。みんな言いたい事を言ったので意見が出尽くしてしまったようだ。
「ないのか? ではこの議論を終わりにする。」
司令がそう言うと全員椅子に座りなおした。
「最後にこのビスマルク隊を指揮する隊長を紹介しておこう、入りたまえ」
司令がそう言うと一人の女性が入ってきた。
髪は長い赤毛気味のブロンド、顔は少し幼さを残しており十代に見える。そして当たり前のようにユニオン
の軍服を着ていて足にはストッキングと青のハイヒールを履いている。
「げげ!」
ファルはやってきた新隊長に対し思いっきり不機嫌な顔を露にした。
「本日よりビスマルク隊を指揮してもらう、マルネ・ラザフォード大佐だ」
「よろしくお願いしまーす! 気軽にマールって呼んでね!」
敬礼をしながら彼女は可愛らしくウィンクをする。
マルネ・ラザフォード。彼女の事を知っている人物はこう評価した。
「知恵はあるけど常識がない女傑」
これは彼女の戦術理論があまりにもセオリーを無視した物だからだ。
セオリーから独自の理論を組み立てたファルとは違いマールは最初から独自の理論を持っており、才能の一
片は南アフリカ戦争で見せ付けられていた。
エピソードを一つあげるとするなら南アフリカでの撤退戦の時である。
熱い砂漠の中を闊歩している最中に突如敵の襲撃を受けた。
こちらは負傷兵が多く満足に戦えなかったが彼女は違った。
なんと、爆薬を地中に埋め、砂塵を敵にばら撒く。
目くらましかに見えたが砂の中に微量の鉄粉が入っており擬似的ではあるがチャフの効果を挙げたのだ。
しかし所詮は間に合わせ、敵が銃口をこちらに向けようとしてた時、ちょうど砂嵐が巻き起こった。
凄まじい砂嵐の為、敵は後退して行く。だがその背面を攻撃し彼女は戦果を上げたのだった。
そして何よりも重要なことがある。
それはファルの幼なじみでもあることだ。
「知恵はあるけど常識がない女傑」
これは彼女の戦術理論があまりにもセオリーを無視した物だからだ。
セオリーから独自の理論を組み立てたファルとは違いマールは最初から独自の理論を持っており、才能の一
片は南アフリカ戦争で見せ付けられていた。
エピソードを一つあげるとするなら南アフリカでの撤退戦の時である。
熱い砂漠の中を闊歩している最中に突如敵の襲撃を受けた。
こちらは負傷兵が多く満足に戦えなかったが彼女は違った。
なんと、爆薬を地中に埋め、砂塵を敵にばら撒く。
目くらましかに見えたが砂の中に微量の鉄粉が入っており擬似的ではあるがチャフの効果を挙げたのだ。
しかし所詮は間に合わせ、敵が銃口をこちらに向けようとしてた時、ちょうど砂嵐が巻き起こった。
凄まじい砂嵐の為、敵は後退して行く。だがその背面を攻撃し彼女は戦果を上げたのだった。
そして何よりも重要なことがある。
それはファルの幼なじみでもあることだ。
ファルはしかめ面をしながらマールに向かって怒鳴り散らす。
「何であんたがこんな所にいるのよ!」
「だって、ここに来たがる士官が私しかいなかったんだもん」
連れてきた将校の方に向かいうんざりとした顔で挙手をした。
「……すみません、任務放棄してもいいですか?」
「ひどい! そんなだからファルちゃんのおっぱいは小さいのよ!」
頬を膨らませながらまるでこどものように駄々をこねるマールに対し、思わず自分の胸を見てしまう。
平らな平野がそこに広がっている。
「そ、そんな事を堂々と言わないでよ!」
彼女の言葉に顔を思わず赤くなる。周囲はヒソヒソ声で会話し始めた。
「やっぱり小さいと思ってたんだよな」
「少尉、気にしてたからな」
「大丈夫です。貧乳はステータスですよ、少尉」
応援なのか同意なのか分からない声がファルの背中にのしかかる。
「うるさいうるさいうるさい!」
「えー、二人ともすまんがもう少し落ち着いてくれないか?」
「すみません」
「はーい!」
ファルは謝るがマールの方はすっ呆けた声を出して返事をした。
こうしてビスマルク隊の準備は無事整った。
「何であんたがこんな所にいるのよ!」
「だって、ここに来たがる士官が私しかいなかったんだもん」
連れてきた将校の方に向かいうんざりとした顔で挙手をした。
「……すみません、任務放棄してもいいですか?」
「ひどい! そんなだからファルちゃんのおっぱいは小さいのよ!」
頬を膨らませながらまるでこどものように駄々をこねるマールに対し、思わず自分の胸を見てしまう。
平らな平野がそこに広がっている。
「そ、そんな事を堂々と言わないでよ!」
彼女の言葉に顔を思わず赤くなる。周囲はヒソヒソ声で会話し始めた。
「やっぱり小さいと思ってたんだよな」
「少尉、気にしてたからな」
「大丈夫です。貧乳はステータスですよ、少尉」
応援なのか同意なのか分からない声がファルの背中にのしかかる。
「うるさいうるさいうるさい!」
「えー、二人ともすまんがもう少し落ち着いてくれないか?」
「すみません」
「はーい!」
ファルは謝るがマールの方はすっ呆けた声を出して返事をした。
こうしてビスマルク隊の準備は無事整った。
薄暗い牢獄から出ると眩いばかりの太陽が僕を照らしていた。
「セイヤ様!」
「セイヤ様ァ!!」
みんな僕の名前を呼んでくれる。
僕はなんて幸せ者なのだろう……何でもないことなのにとても嬉しい。
「ベクス、ありがとう。最後まで僕に付き合ってくれて……」
僕は最後まで付き添ってくれた純白の勇者に感謝する。
僕と共にこの時代を駆け抜けてくれた”友”に
「あっ……」
その時、一陣の風が吹いた。空へと突き抜ける優しい風だ。
もし今日ベクスで空を翔れるならとても気持ち良いだろう。
「良い、風だな」
僕は思わず空を見上げてしまう。きっと僕が死んでもこの空はずっとこのままだろう。
そして僕のギロチンに首を固定される。
「何か言い残すことは無いか?」
目の前の女帝、マリアは冷たくそう言い放つ。
「では一言だけ」
心からの言葉を言おう。
「生まれてきて良かった、ありがとう」
その言葉を言った瞬間、彼女の手が振り下ろされた。
「セイヤ様!」
「セイヤ様ァ!!」
みんな僕の名前を呼んでくれる。
僕はなんて幸せ者なのだろう……何でもないことなのにとても嬉しい。
「ベクス、ありがとう。最後まで僕に付き合ってくれて……」
僕は最後まで付き添ってくれた純白の勇者に感謝する。
僕と共にこの時代を駆け抜けてくれた”友”に
「あっ……」
その時、一陣の風が吹いた。空へと突き抜ける優しい風だ。
もし今日ベクスで空を翔れるならとても気持ち良いだろう。
「良い、風だな」
僕は思わず空を見上げてしまう。きっと僕が死んでもこの空はずっとこのままだろう。
そして僕のギロチンに首を固定される。
「何か言い残すことは無いか?」
目の前の女帝、マリアは冷たくそう言い放つ。
「では一言だけ」
心からの言葉を言おう。
「生まれてきて良かった、ありがとう」
その言葉を言った瞬間、彼女の手が振り下ろされた。
「ユウイチー!早く早く!」
「メアリー、そんなに腕を引っ張らないで」
メアリーが祐一の腕を引っ張る。
二人は最後として海へと来ていた。
辺りは既に夕暮れになっており温かさを含んだ風と赤く柔らかな日差しが辺りを照らしている。
砂浜に誰も折らず二人だけの貸し切り状態であった。
「よっと!」
メアリーは靴を脱ぐとバシャバシャと波打ち際を走っていった。濡れることなど全く気にしないかのように
好き放題にはしゃぎまわっている。
「ユウイチもおいでよ! 気持ちいいよ!」
メアリーは祐一のほうに手を振ると彼はゆっくりと彼女の方へと向かっていく。
「待ってよ、メアリー」
祐一もメアリーの元へと駆けて行く。
「あははは!ここまでおいで!」
メアリーはバシャバシャと水音をたてて逃げていった。
「もう、しょうがないな…」
そんなメアリーを見ながら祐一は呆れながら砂浜に座った。
綺麗だな…
波と戯れるメアリーを見ながら祐一はふとこんな事を思い出していた。
かつて子供の頃、父親が言った言葉を…。
「綺麗だろう? 夕陽が綺麗だって感じるのは人間の心が美しいからだ。祐一、私はこの綺麗な夕陽をみんな
に教えて行こうと思う。だがお前が大きくなれば夕陽を見ることも無くなるだろう。でも覚えておいて欲しい、
たとえお前が大きくなって死んだとしても夕陽の美しさは変わらないという事をな」
暖かな潮風が祐一の頬に伝わっていく。
また、来てみようかな……。
「ユウイチ~!」
メアリーが祐一の近くにやってくる。足が砂だらけだけど気にしてないようだ。
「そろそろ帰る?」
「うん!」
祐一とメアリーは手を繋いでそれぞれの帰路についた。
「メアリー、そんなに腕を引っ張らないで」
メアリーが祐一の腕を引っ張る。
二人は最後として海へと来ていた。
辺りは既に夕暮れになっており温かさを含んだ風と赤く柔らかな日差しが辺りを照らしている。
砂浜に誰も折らず二人だけの貸し切り状態であった。
「よっと!」
メアリーは靴を脱ぐとバシャバシャと波打ち際を走っていった。濡れることなど全く気にしないかのように
好き放題にはしゃぎまわっている。
「ユウイチもおいでよ! 気持ちいいよ!」
メアリーは祐一のほうに手を振ると彼はゆっくりと彼女の方へと向かっていく。
「待ってよ、メアリー」
祐一もメアリーの元へと駆けて行く。
「あははは!ここまでおいで!」
メアリーはバシャバシャと水音をたてて逃げていった。
「もう、しょうがないな…」
そんなメアリーを見ながら祐一は呆れながら砂浜に座った。
綺麗だな…
波と戯れるメアリーを見ながら祐一はふとこんな事を思い出していた。
かつて子供の頃、父親が言った言葉を…。
「綺麗だろう? 夕陽が綺麗だって感じるのは人間の心が美しいからだ。祐一、私はこの綺麗な夕陽をみんな
に教えて行こうと思う。だがお前が大きくなれば夕陽を見ることも無くなるだろう。でも覚えておいて欲しい、
たとえお前が大きくなって死んだとしても夕陽の美しさは変わらないという事をな」
暖かな潮風が祐一の頬に伝わっていく。
また、来てみようかな……。
「ユウイチ~!」
メアリーが祐一の近くにやってくる。足が砂だらけだけど気にしてないようだ。
「そろそろ帰る?」
「うん!」
祐一とメアリーは手を繋いでそれぞれの帰路についた。
祐一が帰宅したのは夜遅く、時計の短針が七を示した頃だった。
「ふう、さてと夕飯を作らないとね」
祐一はテーブルにおいてあるテレビのリモコンを使ってテレビをつけると台所へと向かった。
「ニュースです。世界的テロリスト、バイラムに対しアジア統連、ユニオン、ステイツの三カ国は協力してこ
の事態に対応する共同声明分を発表。そしてバイラムを確保をするために西アジアで大規模な合同演習を行う
予定です」
祐一はふと手を休めテレビのほうを向く。
「奈央さん、大丈夫なのかな?」
祐一は軽くため息を付くとテレビのスイッチを切った。
「ふう、さてと夕飯を作らないとね」
祐一はテーブルにおいてあるテレビのリモコンを使ってテレビをつけると台所へと向かった。
「ニュースです。世界的テロリスト、バイラムに対しアジア統連、ユニオン、ステイツの三カ国は協力してこ
の事態に対応する共同声明分を発表。そしてバイラムを確保をするために西アジアで大規模な合同演習を行う
予定です」
祐一はふと手を休めテレビのほうを向く。
「奈央さん、大丈夫なのかな?」
祐一は軽くため息を付くとテレビのスイッチを切った。
第7話「人が生み出した業」に続く