創作発表板 ロボット物SS総合スレ まとめ@wiki

<5,本性>

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sousakurobo

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何者かがドアを叩いている。ギーシュは立ち上がり、ドアの付近まで歩み寄った。ロッファの妻が怯えた表情でギーシュを見つめる。
ギーシュは妻が声を出さぬように口元に人差し指を立てるジェスチャーをし、振り返ってドアの前に立った。
「俺だ、ギーシュだ。今ちょっと村長の代わりで留守番しててな。何か用があるなら、俺が村長に伝えておくよ」
ドアの前の何者かに、ギーシュはそう言った。すると、その何者かは低い声で返答した。

「その村長を返しに来た」
「なっ……」
その瞬間、ドアを吹き飛ばすほどの衝撃波がギーシュを襲った。ギーシュは両腕で防ごうとするが、抗えずに背中から壁にぶつかった。
妻は驚愕し、椅子から転げ落ちた。完全に腰が抜けたらしく、両膝を付いて震えている。ドアとその周りの壁は、衝撃波によってガラガラと崩れ巨大な穴を開けていた。
何者か――――否、シュワルツの取り巻きである二人組の大男、その片方が、1機の黒騎士を携えてロッファの自宅へと踏み入った。
ちなみにもう片方はタウエルンと対峙中である。

「シュワルツ様からの配達だ。受け取れ」
大男が指を鳴らすと、背後から黒騎士が手で吊り下げた何かを、妻の前にボトリと落とした。それは……。
「あ、貴方……」
妻はその何かに目を見開き、両手を口元で覆った。そこには額に穴を開け、目から光を失ったロッファの亡骸が転がっていた。

大男は壁にぶつかった際に頭を打ち、その痛みで意識が朦朧としているギーシュの方へ歩み、ギーシュの耳元にしゃがむと、用件を伝えた。
「見ての通り、お前達を束ねていた村長は死んだ。これでもう、お前達の支柱は無くなった訳だ。
 薄々感じてはいただろうが、この村は我々が掌握している。ここで村長の死により、この村は完全に我々が掌握した。俺が言っている意味が分かるな?

 明日、我々はこの村をある実験に使う。
 そこでだ、シュワルツ様は、お前達が明日までにこの村から立ち去ればお前達には一切干渉しないという慈悲を与えて下さった。
 俺の言っている言葉の意味が分かるならどうするべきか、よく考えろよ。まぁ……お前達が心中しても、我々は痛くも痒くもないがな」

大男は立ち上がり、踵を返して外へと向かう。黒騎士はその後ろを幽霊の様にゆったりと浮遊して付いていく。
がらんとした空間には、二度と起き上がらないロッファに寄り添いすすり泣く妻と、壁に寄り掛かり、頭から流血するギーシュしかいない。
朦朧とする頭をどうにか支えながら、ギーシュは立ち上がり、テーブルの上の受話器に手を掛けた。
大男の発言は朦朧とした意識の中ではっきりと聞こえた。一つはっきりしている事は――――もはやこの村で生きていく事は出来ないという事だ。

突如、タウエルンの動きが静止した。ショウイチはその様子をじっと見ているだけで、全く黒騎士達に意を示さない。
トニーはショウイチとタウエルンが微動だにしない事に、凄まじい不安を抱いた。距離がまだ遠いとはいえ、黒騎士達は背中にマウントしていた槍を構えて突進してくる。
というより、黒騎士達が扇型に一斉に突っ込んでくる。トニーはあわててタウエルンの背後に隠れ、ショウイチに声を掛けた。
「ショ、ショウイチ君! どうする!?」

「ショウイチ……君?」
返事を返さないショウイチに、トニーは首を傾げた。ショウイチはタウエルンの方を向いて何かぼそぼそと唱えている。
黒騎士達が目前まで迫ってくる。トニーが焦ってショウイチに取りすがる。が、ショウイチはトニーの事を忘れているようにタウエルンに何かを呟いている。
「ショウイチ君! もう敵が迫って……」

「ソーラーキャノン、展開」
ショウイチがそう呟いた瞬間、タウエルンの胸部が両端にスライドし、黒光りする武骨な砲口が姿を現した。
その砲口は上下左右すると、黒騎士達へと狙いを定めた。驚くべき事は、この武装が展開するまでの時間は――――僅か0.59秒である。

砲口より繰り出された眩い光のそれに、黒騎士達は巻き込まれた。ショウイチ達に向けていた槍が見る見るうちに融解していく。
レーザーともビームとも違うその攻撃は、まるでバーナーの様に黒騎士達を炙ると、ゆっくりと収束していった。
危険を察知したのか、攻撃範囲に至らなかったのか、2機が素早い動きで後方へとバックステップした。攻撃の余波を受けたのか、持っていた槍の先端が溶けている。
そこには上半身を失い、機能を停止した黒騎士達の脚部が一機、二機と倒れていく。得体の知れないパーツ群が露出したその姿は、どこかグロテスクである。

「ば、馬鹿な……な、何なんだ、おい!」
大男が驚愕と言った表情でタウエルンを見、そう叫んだ。トニーはと言うと、目の前で起こった事が理解できず、ポカンと口を開けている。

「あ……えっと」
首を振って呆けを覚まし、トニーはショウイチとタウエルンに目を向けた。何が何だか正直理解できないが、凄い。
タウエルンはあの黒騎士を一瞬で数機葬ったのだ。その証拠に、上半身を失った黒騎士達が地面に突っ伏している。その時だ。

「ショウイチ君! 上だ!」
空から黒騎士が、タウエルンに向かって襲いかかってきた。タウエルンを危険な存在と認知した事で、大男の命令より、破壊を優先する様だ。
タウエルンは黒騎士に対して顔さえ向けず、右腕を上げた。すると右腕の装甲が大きくスライドし、中からウエハース状の物体が飛び出した。

瞬間、ウエハースの隙間から、先程の光と同じ物質が黒騎士を貫いた。巨大な板の様に成形されたそれが、黒騎士を蒸発させるのに数秒掛からなかった。
連携攻撃のつもりか、正面から最後の黒騎士が小細工なしでぶつかってくる、が、タウエルンはただ空いている左腕を正面に向けただけだ。
そして、タウエルンは装甲を元の状態に戻し、上げていた右腕を下げると、左腕と同じく、黒騎士に向かって正面に向けた。
黒騎士が両手を広げ、タウエルンの両腕とぶつかる。黒騎士の腕部分が軋む音がする、がタウエルンは微動だにせず、反応もしない。

すると、タウエルンは体勢を低くし、一気に黒騎士の拳を叩き潰した。黒騎士が拳を失い、バランスが揺らいだ瞬間。
タウエルンは一気に黒騎士に接近し、密着すると、展開状態であるソーラーキャノンを押しつけた。そしてタウエルンは呟く。
「……許してくれ。君達に、罪は無い」
一瞬の閃光――――そこには黒騎士の姿は無く、ソーラーキャノンを露出させたままのタウエルンが立っていた。

「ま、マジかよ……」
大男は目の前の光景にただただ青ざめるしかなかった。ソーラーキャノンを収納したタウエルンが、一歩、二歩と大男に近づいてくる。
「来るな……来るんじゃない!」

腰元から大きなナイフを取り出し、大男はメルティの頬に当てた。自らを奮い立出せる為でも、最終的な自己防衛でもある。
「もしもこれ以上近づいてみろ。この女の顔に、一生物の傷が付くぞ」
「や、やめろ! メルティに手を出すな!」
トニーは慌てて、大男にそう叫んだ。が、大男は興奮状態で今にもメルティを斬りつけてしまいそうだ。

「ショウイチ君……」
トニーはショウイチに対して、タウエルンを元の状態に戻してほしいと言おうとした瞬間、大男のナイフが、宙に舞った。
気づけば、ショウイチの右手に拳銃が握られている。そしてショウイチは続いて、大男の肩に向かってトリガーを引いた。
大男が呻き声をあげて、抱えていたメルティを話す。ショウイチはトニーに向かって叫んだ。
「トニーさん、今です!」

ショウイチの言葉に、トニーはハッとすると、直にバランスを崩した大男からメルティを抱きかかえてその場から逃げだした。
「やった……」
黒騎士がいなくなった事で安心したのか、信じられないくらいに軽いフットワークで、トニーはメルティを救い出せた。
メルティはまだ気絶している様だ。早く家に、と言うより安全な場所に避難したい。……そうだ、先ずショウイチに礼を言わねばならない。そう思ってトニーは振り向いた。

そこには、拳銃を構えて、大男の体を足で踏みつけながら、冷徹な表情を浮かべるショウイチがいた。
ショウイチ……いや、あそこに居るのはショウイチという青年だが、ショウイチに見えない。まるで、別の人間が乗り移ったかのようだ。
大男は撃たれた傷口が痛むのか息を荒くしている。が、ショウイチはお構いなく、大きな図体を踏みつけて問答する。
「誰からの命令だ? 黒騎士を所有してるって事はそこらのチンピラじゃないよな?」

「……何者だ、お前……あの自動人形と良い……射撃の……精密さと……」
ショウイチが大男の耳元を威嚇射撃する。その目、雰囲気、全てがさっきまでのショウイチと違う。
「俺は褒めろとは一言も言ってない。死にたくなきゃ吐け。お前をここに送り込んだのは誰だ?」

大男は息を荒げながらも、ショウイチに目を合わせた。その表情には何故だか、穏やかさが漂っていた。まるで死を待っていたかのように。
「……俺は、ただの、雇われた用心棒、だ。クライ、アントの事、何か、知らねえ……」
ショウイチは無言で大男に視線を合わせる。大男は観念したようため息をつくと、言葉を続けた。

「シュ……シュワルツっていう……元、帝国、軍人の野郎、だ。あんたと、同じように……な。場所は……」
その瞬間、大男の頭に風穴が開いた。ショウイチは銃弾が飛んできた方向に目をやると、何者かが逃げていくのが見えた。
大男は完全に撃ち抜かれた様だ。非常に凄惨な光景である。ショウイチは大男から足をどけた。
と、タウエルンがショウイチの肩に手をのせた。ショウイチは疲れたそぶりで、タウエルンの手に、自分の手を重ねた。

「ショウイチ……」
「悪いな、タウ……昔の癖が出ちまったみたいだ」

破壊された黒騎士達と、横たわる大男の死体。戦いはひとまず終わったようだ。
「取りあえず……トニーさん、メルティさんと一緒に家に帰りましょう。ここに居ると危ない」
「あ、あぁ……そうだな」
なるべく、大男の姿を見ない様に、トニーはメルティをおんぶし、自宅へと足を進めた。ショウイチもそれに続く。

と、ショウイチは振り向き、タウエルンに言った。
「タウ、悪いけど……頼むな」
ショウイチの言葉に、タウエルンは無言で背部のブースターを吹かし、あの機能を作動させた。

森の中を、もう一人の大男が疾走している。肩に狙撃用のライフルを引っ提げて。
「信じられん……あれほど、あれほど強力な自動人形だったとは……」
走りながら大男は腰のホルスターに引っかかっている無線機を取り、通信を入れた。

「レフトだ。シュワルツ様に繋げ。

 ……失礼します、シュワルツ様。異変の原因が分かりました。それと、ライトが……」

トニーは自宅のカギを開けた。幸運な事にこの家に危害は及んでいないようだ。
メルティを寝室に寝かせ、トニーは居間の椅子に座った。何故だが偉く疲れた。一気に疲労感が襲ってくる。
だが、妙な突っかかりが頭の中をぐるぐると回っている。それは全て……。

「……少しいいかい? ショウイチ君?」
目の前で座っている青年、ショウイチ・マーチマンの事だ。今更ながら実感する。この青年は普通じゃない。
あのタウエルンという自動人形も、正確に大男を倒した射撃技術にしても、何もかも普通じゃない

「はい、何でしょう?」
あっけらかんとした明るい口調で、ショウイチはトニーに顔を向けた。奇妙な緊張感が張り詰める。
「君は……君はいったい何者」

その時、激しくドアを叩く音が部屋に響いた。トニーは一瞬体を強張らせると、ショウイチに待っている様に言ってドアに向かった。
訪問者に声を掛ける。
「すまないが今取り込み中なんだ。またの機会にしてく」
「トニーさん、あたし! クレフよ! 早く開けて!」

馴染みのある声に、トニーはドアを開けた。すると目に涙を浮かべたクレフが飛び込んできた。
「ちょ、クレフちゃん!?」

「村長が……村長がシュワルツに殺された!」


続く

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